JP2017213813A - 立体造形用フィラメント材料及びその製造方法、並びに立体造形用フィラメント材料セット、及び立体造形物の製造方法 - Google Patents

立体造形用フィラメント材料及びその製造方法、並びに立体造形用フィラメント材料セット、及び立体造形物の製造方法 Download PDF

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望 田元
鈴木 康夫
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成瀬 充
Mitsuru Naruse
充 成瀬
樋口 信三
Shinzo Higuchi
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Abstract

【課題】造形安定性及び造形品質が向上すると共に、造形速度を高めても造形安定性及び造形品質の向上効果が得られる立体造形用フィラメント材料の提供。【解決手段】熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含有する立体造形用フィラメント材料であって、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高い立体造形用フィラメント材料である。【選択図】なし

Description

本発明は、立体造形用フィラメント材料及びその製造方法、並びに立体造形用フィラメント材料セット、及び立体造形物の製造方法に関する。
近年、各種材料を積層させ、立体造形物を製造する立体造形技術に注目が集まっている。これらの方法は、従来の型を利用して成形物を得る方法に比べて、型が不要になるためコスト削減が可能であり、特に試作用途や少量多品種生産用途に対しメリットが大きい。また、従来の方法では作製できないような複雑な形状を有する立体造形物を作製できる点もメリットとして挙げられる。
前記立体造形技術は、様々な方式が開発されているが、これらの中でも、熱溶融積層法(Fused deposition modeling;FDM(登録商標))は、装置が比較的安価で、実際の製品と同じ素材を用いた造形が可能であるため、応用範囲が広い。前記熱溶融積層法の原理は、熱可塑性樹脂からなるフィラメント材料を熱で溶融させ半液状化させた後、3Dデータに基づいてヘッドノズルから所定の位置に吐出し、それを繰り返して積層させて立体造形を行う方法であり、他の方式に比べてシンプルであるという特徴がある。
前記熱溶融積層法に用いられるフィラメント材料は、実際に立体造形物に使用する樹脂からなるモデル材と、造形中モデルを支持する目的で使用され、造形後に除去されるサポート材とに分類される。前記サポート材がない場合、造形できる形状やデザインが大幅に制限されるため、サポート材を併用することが好ましい。
従来技術として、例えば、矩形の断面プロファイルを有する非円筒形フィラメント(リボンフィラメント)(例えば、特許文献1参照)、リボンフィラメントを溶融するリボン液化機(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
また、フィラーの添加により熱可塑性マトリックス樹脂だけでは得られない所望の機能が備わった造形物を得ることができる熱溶解積層型3Dプリンタ用フィラメント及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
本発明は、造形安定性及び造形品質が向上すると共に、造形速度を高めても造形安定性及び造形品質の向上効果が得られる立体造形用フィラメント材料を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の立体造形用フィラメント材料は、熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含有する立体造形用フィラメント材料であって、
前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いものである。
本発明によると、造形安定性及び造形品質が向上すると共に、造形速度を高めても造形安定性及び造形品質の向上効果が得られる立体造形用フィラメント材料を提供することができる。
図1は、ノズルからフィラメント材料が吐出される様子を示す概略図である。 図2は、非球状熱伝導性フィラーが長さ方向に配向した立体造形用フィラメント材料の断面の概略図である。 図3は、非球状熱伝導性フィラーが軸方向に配向した立体造形用フィラメント材料の断面の概略図である。 図4は、球状熱伝導性フィラーと、軸方向に配向した非球状熱伝導性フィラーを含む立体造形用フィラメント材料の断面の概略図である。 図5は、押出成形の工程、あるいは装置を示す概略図である。 図6は、熱伝導性フィラーが軸方向に配向したフィラメント材料を製造する一手段を示す概略図である。 図7Aは、本発明の立体造形用材料を用いて造形した立体造形物の一例を示す平面図である。 図7Bは、図7Aの立体造形物のA−A線断面図である。 図7Cは、図7Bの立体造形物の支持体の除去工程の一例を示す断面概略図である。
(立体造形用フィラメント材料)
本発明の立体造形用フィラメント材料は、熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含有する立体造形用フィラメント材料であって、
前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いものであり、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記立体造形用フィラメント材料は、熱溶融積層法(FDM)によって立体造形物を製造する場合に用いられる材料であり、「フィラメント」とは、例えば、樹脂組成物を紐状あるいは糸状に押し出し成形した材料を意味し、「ストランド」と称する場合もある。
本発明の立体造形用フィラメント材料は、前記特許文献1及び2に記載の技術では、フィラメントの強度が低下し、破断しやすくなる問題がある。特に、矩形型の断面形状の場合、短軸方向に折れが集中するため、円筒型に比べて強度が低下しやすい。造形途中におけるフィラメントの破断は、造形安定性を低下させる要因を増やすことになり、本発明の効果が得られなくなる。一方、破断を防止するために短軸を太くすると、溶融時間の増加に繋がり、本来の効果が低減することになるという知見に基づくものである。
また、本発明の立体造形用フィラメント材料は、前記特許文献3に記載の技術では、フィラーがフィラメントの長さ方向に配向されているが、長さ方向に熱伝導性を高めることに効果はないという知見に基づくものである。
本発明においては、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。このような立体造形用フィラメント材料を用いることによって、造形安定性及び造形品質が向上できる理由について、図面を参照して説明する。
図1に、ヒーター2を有するノズルヘッド1から立体造形用フィラメント材料3が吐出される様子を図示した。立体造形用フィラメント材料3は、図示していない搬送用ギアにより、ノズルヘッド1内に搬送され、ヒーター2によって溶融温度にまで加熱されることにより半液状化し、ノズルヘッド1の先端から吐出される。
この時、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いことによって、より早く立体造形用フィラメント材料の芯まで軟化し、所定の溶融粘度に達することができる。これにより、ノズル詰まりの影響が低減され、造形速度を高めても安定に吐出させることが可能になる。軸方向への熱伝導率が低下し、立体造形用フィラメント材料の芯の部分の軟化が不十分になると、固化するのが早くなり、ノズル詰まりのリスクが高まったり、所望の形状を造形する動きに追従できず、造形品質の低下を招いたりする場合がある。特に、造形速度が高くなると、その影響が更に強くなり、ノズルから吐出されたまま固化が開始され、造形ができなくなる場合もある。それを回避するために、ノズル温度を高くすると、立体造形用フィラメント材料の表面部分の溶融粘度が下がりすぎて、固化に時間がかかり、糸引きが発生しやすくなる場合がある。
立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導性が高いことは、ノズルから吐出された後の冷却速度も高まるため、吐出後立体造形物の固化が早くなり、造形品質や精度の向上に有効である。軸方向への熱伝導率が低く、立体造形物の固化が遅くなると、糸引きや突起といった造形不良が発生しやすくなったり、積層直後の造形物が経時で変形したり、動くノズルに触れて変形することがある。
更に、前記立体造形用フィラメント材料の長さ方向の熱伝導率が、軸方向の熱伝導率よりも高い場合には、より深刻な結果を招くことになる。長さ方向の熱伝導率がより高い立体造形用フィラメント材料を用いた場合、軸方向への熱伝導性が低下し、上記の問題を引き起こすだけでなく、熱が立体造形用フィラメント材料の長さ方向に拡散することにより、本来軟化してはいけない領域まで軟化が始まってしまう場合がある。これにより、フィラメントを送り出す力がフィラメントの先端にまで十分に届かなくなり、搬送不良となり更に吐出不良が引き起こされる。このような状態になると、溶融したフィラメントがノズル内に堆積し、長時間堆積したままの立体造形用フィラメント材料は、樹脂によっては熱分解され、ノズル詰まりは深刻化することになる。
本発明の立体造形用フィラメント材料は、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いため、前記立体造形用フィラメント材料を加熱溶融すべき領域に芯まで素早く熱を伝えることができ、造形後は素早く冷却し固化することができ、更に、立体造形用フィラメント材料の長さ方向に対する熱伝導率を抑制することができる。その結果、ノズル詰まりや糸引き、突起といった吐出不良、フィラメントの搬送不良、更に造形後の立体造形物の変形を防止することができ、造形安定性、及び造形品質や精度の向上を実現することができる。
<熱可塑性樹脂>
本発明の立体造形用フィラメント材料は、熱可塑性樹脂を含有する。
前記熱可塑性樹脂とは、加熱することによりある温度以上で軟化し、固体から液体状に変化し、冷却すると固化し、液状から固体に変化する樹脂のことを示す。
前記熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有すれば特に制限はなく、従来公知の樹脂をいずれも使用することが可能である。
前記熱可塑性樹脂は、非水溶性と水溶性の2つに大別でき、いずれも有効に使用できる。本発明において、前者の非水溶性樹脂はモデル材として、後者の水溶性樹脂はサポート材として用いることが好ましい。これにより、モデル材とサポート材を用いて造形した立体造形物を冷水又は温水に浸漬するだけの簡便な方法により、サポート材のみが溶解して除去され、モデル材からなる立体造形物を得ることが可能になる。
−非水溶性の熱可塑性樹脂−
前記非水溶性の熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の汎用プラスチック、エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアプラスチックなどが挙げられる。
前記汎用プラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸(PLA)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリル(PMMA)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂などが挙げられる。
前記エンジニアプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂などが挙げられる。
前記スーパーエンジニアプラスチックとしては、例えば、ポリスルホン(PSU)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
前記非水溶性の熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記非水溶性の熱可塑性樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
また、熱可塑性を有する熱可塑性エラストマーも使用することができる。前記熱可塑性エラストマーは、加熱することによって軟化して流動性を示すが、冷却することによりゴム状に戻る性質も有しており、これらをモデル材に使用することにより、軟質のモデルを造形することができる。前記熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
これらは、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいし、ヘテロポリマー(共重合体)であってもよく、また変性されていてもよいし、公知の官能基が導入されていてもよい。また、これらの樹脂を混合したポリマーアロイも樹脂の改質が可能であることから、有効に使用することができる。
−水溶性の熱可塑性樹脂−
前記水溶性の熱可塑性樹脂としては、水に対し溶解性を示す熱可塑性樹脂はもちろん、水に溶けなくとも分解性あるいは崩壊性を示す熱可塑性樹脂も有効に使用することができる。前記崩壊とは、樹脂が細かく分解され、当初有していた形状や性質を維持できなくなった状態をいう。このように、水に付着することにより溶解したり、分解あるいは崩壊したり、軟化して容易に除去できるように変化した熱可塑性樹脂は、すべて有効に使用することができる。
前記水溶性の熱可塑性樹脂としては、親水性の置換基や構造単位を有する樹脂が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、セルロース、デンプン、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいし、ヘテロポリマー(共重合体)であってもよく、また変性されていてもよいし、公知の官能基が導入されていてもよく、更に塩の形態であってもよい。ただし、サポート材として用いる場合、これらの水溶性樹脂の中でも除去時間短縮の観点から、水溶解性が高い樹脂が好ましく、ポリビニルアルコール樹脂やポリアルキレンオキサイドが好ましく、ポリビニルアルコール樹脂が特に好ましい。
前記水溶性の熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水溶性の熱可塑性樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50,000以上1,000,000以下が好ましく、75,000以上500,000以下がより好ましく、100,000以上400,000以下が更に好ましい。前記重量平均分子量が上記範囲内であると、ノズルからの吐出安定性が高まることや得られた立体造形物の品質や精度が高まる傾向が見られる。
前記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
<熱伝導性フィラー>
本発明の立体造形用フィラメント材料には、熱伝導性フィラーが含有される。前記熱伝導性フィラーとは、熱可塑性樹脂に含有させることにより、樹脂の熱伝導率を高めることが可能な材料であり、充填材とも称される。一般に、熱可塑性樹脂の熱伝導率は、0.1W/m・K以上0.3W/m・K以下と低く、断熱材として使用されるのが一般的である。これらの熱可塑性樹脂に、熱伝導性フィラーを複合することにより、樹脂の熱伝導率を高められることが知られている。
前記熱伝導性フィラーとしては、前記熱伝導性フィラーを含有することにより、熱可塑性樹脂単独よりも熱伝導率を向上させることができ、かつ立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高ければ、特に制限はなく、従来公知の熱伝導性フィラー、充填材等をいずれも使用することができる。
前記熱伝導性フィラーとしては、例えば、黒鉛(グラファイト)、カーボンファイバー、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物;金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、ニッケル、鉄等の金属又は合金;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の金属窒化物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化チタン等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素等の金属炭化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱伝導率が高い点から、カーボンファイバー、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウムが好ましい。
前記熱伝導性フィラーの形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、球状のものよりも非球状のものが好ましく、板状、鱗片状、針状又は繊維状などのアスペクト比が高いものほどより好ましい。これにより、熱伝導性フィラー間の接触確率が高まり、より少ない含有量でも立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導率を効率よく高めることが可能になる。ただし、図2に示すように、立体造形用フィラメント材料10において、アスペクト比の高い熱伝導性フィラー11は、押出成形等によって立体造形用フィラメント材料を作製すると、通常樹脂が流れる方向、即ちフィラメントの長さ方向に配向する。本発明においては、図3に示すように、アスペクト比の高い熱伝導性フィラー11を主としてフィラメントの軸方向に配向させる必要がある。
また、前記熱伝導性フィラーにすべて球状のフィラーを使用すると、立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率より高めることが困難になる場合があるため、球状のフィラーを使用したとしても、アスペクト比が高く、立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向可能な熱伝導性フィラーと混合して用いることが好ましい。本発明においては、図4に示すように、立体造形用フィラメント材料10において、アスペクト比が高いフィラー11と球状のフィラー12を混合することにより、立体造形用フィラメント材料の中に球状のフィラーが均一に分散され、これらが起点となって立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導率を高める上で有効な場合がある。特に、針状又は繊維状の細いフィラーの場合は、フィラー11が立体造形用フィラメント材料10の軸方向に配向したとしても、フィラーの含有量をある程度増加させないと、熱伝導性フィラー同士の接点が制限される場合がある。この時、繊維状フィラー11に比べて、最小軸長が大きな球形フィラー12を混合することにより、繊維状フィラーの熱伝導経路を増加させる役割を果たすことが可能になるため、立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導率を向上できる場合があり、有効である。
本発明に用いられる熱伝導性フィラーのアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。前記アスペクト比が高いことにより、立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導率を高めることが可能になる。ただし、熱伝導率から見ると、前記アスペクト比は高いほど好ましいが、アスペクト比が高すぎると、熱伝導性フィラーが折れる場合がある。以上のことから、前記アスペクト比は500以下が好ましく、100以下がより好ましい。
前記アスペクト比とは、熱伝導性フィラーの最大軸長/最小軸長の平均から求めることができる。前記最大軸長とは、熱伝導性フィラーの最も長い軸における最大の長さであり、前記最小軸長とは、熱伝導性フィラーの最も短い軸における最大の長さである。例えば、球状の場合は、最大軸長と最小軸長が同じであるため、アスペクト比は1である。板状、鱗片状の場合は、最大軸長は長軸、最小軸長は最大軸長に直交する幅、即ち、厚みになり、最大軸長/厚みから求められる。また、針状又は繊維状の場合は、最大軸長は繊維長、最小軸長は最大軸長に直交する幅、即ち、直径になり、最大軸長/直径から求められる。
前記アスペクト比は、例えば、立体造形用フィラメント材料の長さ方向に対し平行方向に切断した断面について、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの形状観察によって求めることができる。この場合、立体造形用フィラメント材料の断面写真観察から、例えば、50個の熱伝導性フィラーについて最大軸長及び最小軸長を測定してアスペクト比(最大軸長/最小軸長)を求め、平均値を算出することで得ることができる。また、フィラメント材料から樹脂を溶かすなどして、熱伝導性フィラーを抽出できる場合は、抽出した熱伝導性フィラーを粒度・形状分布測定装置などを用いて測定することも可能である。この装置は、溶媒等に分散させた熱伝導性フィラーを連続撮影し、画像解析を行うことによって、最大軸長や最小軸長、アスペクト比、円形度等を求めることができる装置であり、短時間で測定できることから有効である。
前記熱伝導性フィラーの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、球状の熱伝導性フィラーの場合の平均粒子径としては、1μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましい。
非球状の熱伝導性フィラーの場合、前記最大軸長は、1μm以上300μm以下が好ましく、5μm以上200μm以下がより好ましく、20μm以上100μm以下が更に好ましい。前記最小軸長は、0.1μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。
前記熱伝導性フィラーの大きさが、上記範囲内であることにより、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導性を高める効果が得られ、かつ熱伝導性フィラーの配向制御も可能な範囲であると考えられる。
前記熱伝導性フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記立体造形用フィラメント材料全量に対し、1質量%以上75質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。前記熱伝導性フィラーの含有量が、上記範囲内であることにより、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向への熱伝導性を高める効果が得られ、立体造形用フィラメント材料の強度に及ぼす副作用が少ないことから好ましい。ただし、効果が得られる熱伝導性フィラーの含有量は、熱伝導性フィラーの軸方向への配向性や分散状態等によっても変わることから、効果や副作用を見極めて適宜決定されるものである。
<その他の成分>
本発明の立体造形用フィラメント材料は、前記熱可塑性樹脂及び前記熱伝導性フィラー以外に、その他の成分を含むことも可能であり、有用である。
前記その他の成分としては、例えば、可塑剤、充填剤、補強剤、安定剤、分散剤、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、顔料、各種高分子改質剤などが挙げられる。これらを添加することにより、流動性改善によるフィラメント成形安定性の向上、立体造形用フィラメント材料の寸法精度の向上、立体造形用フィラメント材料の機械的特性の改善、立体造形用フィラメント材料の劣化防止、更に、三次元(3D)プリンタによる造形安定性や得られる立体造形物の品質や精度の向上等の効果が得られることから、非常に有効である。
(立体造形用フィラメント材料セット)
本発明の立体造形用フィラメント材料セットは、熱可塑性樹脂が非水溶性である本発明の立体造形用フィラメント材料と、
熱可塑性樹脂が水溶性である本発明の立体造形用フィラメント材料と、を有し、更に必要に応じてその他の材料を有してなる。
前記熱可塑性樹脂が非水溶性である本発明の立体造形用フィラメント材料はモデル材として、前記熱可塑性樹脂が水溶性である本発明の立体造形用フィラメント材料はサポート材として用いることが好ましい。これにより、モデル材とサポート材を用いて造形した立体造形物を冷水又は温水に浸漬するだけの簡便な方法により、サポート材のみが溶解して除去され、モデル材からなる立体造形物を得ることが可能になる。
(立体造形用フィラメント材料の製造方法)
本発明の立体造形用フィラメント材料の製造方法は、熱可塑性樹脂と、熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物を溶融混練し、磁場を印加しながら押出成形することによって製造する。
ここで、図5に押出成形の一般的な工程の模式図を示す。
例えば、前記熱可塑性樹脂及び前記熱伝導性フィラー、あるいはその他の成分を含有する樹脂組成物をホッパー203より入れ、押出機201のシリンダー(バレルとも称する)内でスクリュー204により溶融混練しながら押出し、所定のフィラメント直径になるように選択した金型202を通すことにより、フィラメントが成形される。その後、冷却機210により冷却することにより固化させ、引取機220にて引取り、巻取機230にて巻き取りを行い、切断機により切断することによって、本発明の立体造形用フィラメント材料を製造することができる。なお、巻取機と切断機とは一体に構成しても構わない。
前記押出機201は、一般にスクリュー式が用いられる。前記スクリュー式には、単軸押出機の他に、二軸以上の多軸押出機、又は特殊押出機がある。
前記単軸押出機は、シリンダーに1本のスクリューを装着した押出機であり、例えば、ホッパー、モーター等の駆動装置、減速機、スクリュー、シリンダー、ヒーター、ブロワー、温度制御装置などから構成されている。シリンダーの先端には金型を取り付けて成形を行う。
前記二軸(多軸)押出機は、シリンダー内に2本あるいはそれ以上のスクリューを装着した押出機である。一般的に2本スクリューのものが主に用いられ、2本の軸が平行なものや軸を斜交させたもの、更にスクリューフライトのかみ合い型と非かみ合い型、スクリュー回転方向が同方向のものと異方向のものなどがある。
前記特殊押出機は、2種類の押出機を2段に組み合せたもの、スクリュー及びバレルが特殊な形状のもの、非スクリュー型の3つに分類される。
前記樹脂組成物を溶融混練する方法としては、上記の押出機を用いる以外に、ニーダーやミキサー等を用いて、バッチ毎に溶融混練する方法も挙げられる。
冷却機210は、押し出されたフィラメントを冷却固化させる装置であるが、フィラメントの寸法や品質を決定する上で重要な工程である。一般に水冷及び空冷に大分され、水槽、水シャワー、冷却ロール、冷却盤などの手段が用いられる。本発明の非水溶性の立体造形用フィラメント材料は、水冷の方法を用いることができるが、水溶性の立体造形用フィラメント材料については空冷の方法が用いられる。
引取機220は、フィラメントの引き取りを行う装置であるが、高い寸法精度や品質を維持するためには、適切な引張力と均一でかつ脈動のない引張速度が必要になる。
巻取機及び切断機230は、フィラメントをボビンなどに巻取り、切断するための装置である。
上記の工程以外に、冷却した後、再度加熱して延伸加工することも可能であり、強度を高める上で有効な場合がある。
本発明に用いられる前記熱伝導性フィラーは、立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。本発明においては、立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向のそれを上回れば効果が得られるが、その差が大きいほど軸方向への熱伝導性が高まることから、高い効果を得ることができる。具体的には、立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が長さ方向の熱伝導率に対し、2倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましく、10倍以上が更に好ましい。これを実現するためには、熱伝導性フィラーが、立体造形用フィラメント材料の長さ方向よりも軸方向に多くの熱伝導経路が形成されていることが必要になる。そのためには、前記アスペクト比の高い非球状の熱伝導性フィラーを、立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向させることが有効である。
前記熱伝導性フィラーを前記立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向させる方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、磁場あるいは電場を印加して、熱伝導性フィラーを配向させる方法が知られている。例えば、特許第4686274号公報には、熱伝導性充填材に固有な磁気異方性を利用し、外部から磁場或いは電場を印加して熱伝導性充填材を磁力線と平行方向或いは垂直方向に配向させる方法が開示されている。また、特開2005−101437号公報には、成形金型の周囲に強力で均一な磁場を印加することが可能なハルバッハ時期回路を用いた磁場発生装置を備えた磁場中押出し成形装置が開示されている。
このように、従来の押出成形方法に上記の磁場発生装置を組み合わせ、高磁場を印加しながら、溶融軟化した樹脂組成物のフィラメント成形を行うことで、本発明における軸方向に配向した熱伝導性フィラーを含有した立体造形用フィラメント材料を製造することができる。ただし、磁場を印加する際は、樹脂組成物が十分に溶融され、粘度が低い状態であることが好ましい。粘度が低いほど、熱伝導性フィラーの配向制御は容易になる。
前記熱伝導性フィラーの磁場配向は、熱伝導性フィラーの磁気異方性を利用するものであり、磁気異方性が高い材料が好ましく用いられる。磁気異方性を有する結晶に磁場を印加すると、磁気トルクが働き、磁化率が最も大きい結晶軸が磁場と平行になるように結晶が回転する。この点から、磁場配向させる場合は、前記熱伝導性フィラーの中でも、比較的磁気異方性が高い、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、カーボンファイバー等が好ましく用いられる。しかし、近年は数テスラを超える強磁場を発生できる磁場発生手段が広く用いられており、この場合は磁気トルクが増大するため、磁気異方性が小さい結晶でも磁場配向させることが可能になっている。そのため、前記熱伝導性フィラーは、いずれも磁場によって配向させることは可能である。
前記熱伝導性フィラーを配向させるための磁場発生手段は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、永久磁石、コイル、電磁石などが挙げられる。これらの中でも、20テスラ以上の磁場発生が可能な超電導マグネットや、30テスラの大電力水冷マグネット、更にこれらを組み合わせた40テスラを超えるハイブリッドマグネットが開発されており、好ましく用いられる。本発明において、磁束密度は1テスラ以上が好ましく、5テスラ以上がより好ましい。
また、磁場や電場を印加しないで、前記熱伝導性フィラーを軸方向に配向させる方法としては、以下の方法も適用可能である。
本発明の立体造形用フィラメント材料の製造方法は、前記熱可塑性樹脂と、前記熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物を溶融混練し、押出成形した立体造形用フィラメント材料を長さ方向に対し垂直にカットしてペレット化し、前記ペレットを再度溶融し接合させることによって製造する。
例えば、押出成形したシート状の樹脂組成物を、立体造形用フィラメントが軸方向に配向するようにカットし、それらの先端をつなぎ合わせる方法である。具体的には、図6に示すように、熱可塑性樹脂と熱伝導性フィラー31を溶融混練し、押出成形によってフィラメント径以上の厚みを有するシート状樹脂成形物30を作製する。この時、前記熱伝導性フィラーは押し出し方向に配向されている。このシート状樹脂成形物30を、フィラーの向きと垂直になるように、フィラメント径に合わせてカットし、断面が円形になるように不要部分をカットあるいは溶融成形し、最後にこれらの端部を加熱溶融してつなぎ合わせることにより、本発明の立体造形用フィラメント材料を得ることができる。類似の方法は、熱伝導性樹脂シートの製造方法として、例えば、特開2010−050240号公報に開示されている。
本発明においては、前記熱可塑性樹脂と、前記熱伝導性フィラーとを含有し、立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高い立体造形用フィラメント材料を作製できれば、如何なる方法を用いることも可能であるが、製造効率の面から磁場発生装置を用いる手段がより好ましい。
上記のようにして作製した本発明の立体造形用フィラメント材料の熱伝導率の測定は、従来公知の方法や装置を用いて測定することができる。なお、前記熱伝導率とは、フィラメント材料内の熱の伝わりやすさを示す物性値であり、単位厚みのサンプルの両端に単位温度の差がある時、その板の単位面積に、単位時間あたり流れる熱量として定義される。
前記熱伝導率の測定は、特に制限はなく、従来公知の方法あるいは装置を用いて測定することができる。前記測定方法としては、一般的に、ホットディスクセンサーに一定電流を通電することによって発熱させ、その時のセンサーの電圧変化の測定するホットディスク法、熱線(ヒーター線)の発熱量と温度上昇量から、熱伝導率を直接測定する熱線(プローブ)法、試験片両端の温度差と、基準熱量計の出力から、熱伝導率を算出する熱流量法、円板状試料の表面をパルス幅0.5ms以下のレーザー光により瞬間的に均一加熱し、試料裏面の温度変化を測定するレーザーフラッシュ法などが挙げられる。これ以外に、温度波熱分析法の原理に基づき、マイクロヒーターとセンサーの間にサンプルを挟んで測定を行うアイフェイズシステム(株式会社アイフェイズ製)や、熱源に接触させた試料を反対面からサーモグラフィを用いて動画観察を行う方法も適用でき、サイズが小さなサンプルを用いて測定する場合は特に有効である。
上記の方法を用い、本発明の立体造形用フィラメント材料を適当な長さにカットし、立体造形用フィラメント材料の軸方向及び長さ方向について、それぞれの熱伝導率を測定する。本発明においては、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いことが確認できれば、本発明の範疇に含まれる。
本発明の立体造形用フィラメント材料は、前記熱伝導性フィラーが非球状を有し、前記熱伝導性フィラーの最大軸が、前記熱伝導性フィラーの最小軸よりも、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向していることを特徴とする。
ここで、前記最大軸とは熱伝導性フィラーの最も長い軸であり、前記最小軸とは最大軸と直交する最も短い軸である。本発明の立体造形用フィラメント材料の軸方向への配向とは、前記熱伝導性フィラーの最大軸が、最小軸よりも立体造形用フィラメント材料の軸方向に近い状態として定義される。即ち、前記熱伝導性フィラーの最大軸が、立体造形用フィラメント材料の軸方向を0°として、前後左右45°未満(最大軸と直交する最小軸は45°以上)の傾きであれば、前記熱伝導性フィラーは軸方向に配向していると見なすことができる。一方、前記熱伝導性フィラーの最大軸が、立体造形用フィラメント材料の軸方向を0°として、前後左右45°以上(最大軸と直交する最小軸は45°未満)の傾きであれば、前記熱伝導性フィラーは長さ方向に配向していると見なされる。
また、前記熱伝導性フィラーの配向性にバラツキが見られる場合は、立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向している熱伝導性フィラーが、全体の50%を超えている場合は、立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向していると見なすことができる。一方、立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向している熱伝導性フィラーが、全体の50%以下の場合は、立体造形用フィラメント材料の平行方向に配向していると見なされる。
前記立体造形用フィラメント材料の配向性は、前記アスペクト比を求める場合と同様に、例えば、立体造形用フィラメント材料の長さ方向に対し平行方向に切断した断面について、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの断面観察によって求めることができる。この場合、立体造形用フィラメント材料の断面写真観察から、単位面積あたりの熱伝導性フィラーについて、上記の定義に基づいて各々のフィラーの配向が軸方向か否かを判定し、それらの合計が50%を超えている場合は、立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向していると見なし、50%以下の場合は、立体造形用フィラメント材料の平行方向に配向していると見なされる。本発明においては、軸方向に配向している熱伝導性フィラーが70%以上であることが好ましく、高いほど熱伝導性を高めることから有効である。
以上のようにして、作製された立体造形用フィラメント材料の直径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5mm以上10mm以下が好ましく、1.5mm以上3.5mm以下がより好ましい。
(立体造形物の製造方法及び立体造形装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の立体造形用フィラメント材料を、従来公知の立体造形装置を用いて造形し、得られる立体造形物の製造方法である。前記立体造形用フィラメント材料は、モデル材でもよいし、サポート材でもよいし、その両方であってもよい。
前記立体造形装置は、例えば、入力された三次元形状のデータに基づいて、前記熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含む立体造形用フィラメント材料を加熱溶融し、それを任意の位置に吐出する手段(ノズルヘッド)と、吐出された樹脂組成物を堆積させる手段(ベッド)とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。具体的には、公知の熱溶融積層方式の立体造形装置(3Dプリンタ―)が好適に用いられる。これらの立体造形装置は、本発明の立体造形用フィラメント材料を所定の速度でノズルヘッドに向けて搬送し、ノズルヘッド部では前記立体造形用フィラメント材料は加熱溶融されるとともに、任意の位置に吐出される。吐出された立体造形用フィラメント材料はベッド上に堆積される。これら一連の操作が終わると、ベッドが下降し、同様の操作を繰り返すことによりノズルヘッドより吐出された立体造形用フィラメント材料が積層され、立体造形物を製造することが可能になる。
前記ノズルヘッドの加熱温度としては、立体造形用フィラメント材料を溶融できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、立体造形用フィラメント材料に含有される熱可塑性樹脂の分解温度を超えないことが好ましい。熱可塑性樹脂の分解温度を超えると、分解物によってノズル詰まりを起こし、造形安定性を低下させることに繋がる。
前記ベッドは、立体造形用フィラメント材料が造形中に剥がれないよう、加熱手段を設けることが可能であり、有効である。加熱温度は、立体造形用フィラメント材料が造形中ベッドから剥がれたり、あるいはベッド上で立体造形物が溶融変形したりしなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、立体造形用フィラメント材料に含有される熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましい。また、ベッド上にフィラメント材料との密着性を高めるためのシートやステッカー等を貼る方法も有効である。ただし、密着性が強すぎると、造形が終わった後、立体造形物を取り出しにくくなることがあるため、造形中剥がれない程度に留めることが肝要である。
これらの立体造形用フィラメント材料は、直接立体造形物を作製するものであるため、一般に非水溶性の熱可塑性樹脂からなるモデル材が用いられるが、水溶性の熱可塑性樹脂からなるサポート材をモデル材として用い造形することも可能である。一方、サポート材は本来、モデル材による造形を支持するために用いられる。そのため、立体造形物を作製する際は、通常モデル材用とサポート材用の少なくとも二つのノズルヘッドを有する立体造形装置が用いられる。このようにしてモデル材とサポート材からなる立体造形物を作製した後、サポート材のみを除去することによって、モデル材からなる立体造形物を得ることができる。この時、水溶性の熱可塑性樹脂からなるサポート材を用いると、水に溶かすことで簡単に除去することができるため、有用である。
図7Aから図7Cにサポート材を用いて立体造形物を製造する方法の一例を示す概略図を示す。図7Aは、モデル材20及びサポート材(図示しない)を用いて造形した立体造形物の一例を示す平面図である。図7Bは、図7Aの立体造形物のA−A線断面図である。図7B中の持ち手の部分は、下から積層して造形する方法ではきれいに造形ができないため、持ち手の部分を支持するためにサポート材21を積層する。
図7Cは、図7Bの立体造形物からサポート材21を除去する工程の一例を示す断面概略図である。サポート材21は水溶性の熱可塑性樹脂で作製されているため、図7Bで得られた立体造形物を、冷水あるいは温水で満たした容器内に浸漬させると、サポート材21のみが溶解し、除去され、モデル材20で造形した立体造形物を容易に得ることができる。
上記の形態は、モデル材20としての非水溶性の熱可塑性樹脂を含む本発明の立体造形用フィラメント材料と、サポート材21としての水溶性の熱可塑性樹脂を含む本発明の立体造形用フィラメント材料を組み合わせて使用することによって、モデル材及びサポート材ともに造形安定性あるいは造形品質の向上を実現することができることから、本発明においてはこれらの組み合わせを立体造形用フィラメント材料セットとして定義される。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−立体造形用フィラメント材料1の作製−
熱可塑性樹脂としてポリ乳酸樹脂(3001D、ネイチャーワークス社製)70質量部、及び熱伝導性フィラーとして六方晶窒化ホウ素(SHOBN UHP−2、鱗片状、平均粒子径約11μm、昭和電工株式会社製)30質量部を、磁場発生装置を備えた二軸押出機を用いて溶融混練した後、5テスラの磁場を印加しながら押出成形を行い、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料1を作製した。
−熱伝導率の測定−
得られた立体造形用フィラメント材料1を切断し、立体造形用フィラメント材料の軸方向と長さ方向で、熱伝導率の比較を行った。前記熱伝導率の測定は、アイフェイズ社製のアイフェイズモバイル1を用い、直径1.75μmに切断した立体造形用フィラメント材料1をセンサー上に固定し、軸方向及び長さ方向の熱伝導率を測定し、同様にして20点の測定を行い、平均値を算出したところ、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。
−最大軸長及び最小軸長の測定−
得られた立体造形用フィラメント材料1について、長さ方向の断面SEM観察を走査型電子顕微鏡(ULTRA55、ZEISS社製)を用いて行った結果、最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ9.4μm及び1.5μmであった。
(比較例1)
−立体造形用フィラメント材料2の作製−
実施例1において、磁場を印加しなかった以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料2を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料2について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、長さ方向の方が軸方向よりも高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ9.5μm及び1.5μmであった。
(実施例2)
−立体造形用フィラメント材料3の作製−
実施例1において、熱伝導性フィラーを、酸化アルミニウム(セラフ、板状、平均粒子径10μm、キンセイマテック社製)40質量部とし、ポリ乳酸樹脂(3001D、ネイチャーワークス社製)を60質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料3を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料3について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ9.3μm及び1.0μmであった。
(実施例3)
−立体造形用フィラメント材料4の作製−
実施例1において、熱伝導性フィラーとしてグラファイト(CB150、鱗片状、平均粒子径40μm、日本黒鉛株式会社製)を25質量部とし、ポリ乳酸樹脂(3001D、ネイチャーワークス社製)を75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料4を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料4について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ35μm及び5.0μmであった。
(実施例4)
−立体造形用フィラメント材料5の作製−
実施例2において、熱可塑性樹脂をポリビニルアルコール樹脂(GポリマーOKS−8164P、日本合成化学工業株式会社製)に変更した以外は、実施例2と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料5を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料5について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ9.0μm及び0.9μmであった。
(実施例5)
−立体造形用フィラメント材料6の作製−
実施例3において、熱可塑性樹脂をポリカーボネート樹脂(ユーピロンS−3000N、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料6を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料6について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ36μm及び5.5μmであった。
(実施例6)
−立体造形用フィラメント材料7の作製−
実施例1において、熱可塑性樹脂をポリブチレンテレフタレート樹脂(ノバレックス5008、三菱エンジニアリングプラスティック株式会社社製)75質量部、熱伝導性フィラーをピッチ系炭素繊維(ダイアリードK6371M、繊維状、繊維長約50μm、三菱樹脂株式会社製)を20質量部、及び窒化アルミニウム粉末(球状、平均粒子径約50μm、株式会社トクヤマ製)を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料7を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料7について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ44μm及び10μmであった。
(実施例7)
−立体造形用フィラメント材料8の作製−
実施例1において、熱可塑性樹脂を、ポリアミド樹脂(6ナイロン、アミランCM1021FS、融点225℃、東レ株式会社製)70質量部、熱伝導性フィラーを、ベーマイト粉末(BMI、針状、平均粒子径約5μm、河合石灰工業株式会社製)20質量部、及び窒化アルミニウム粉末(ALN200SF、略球形、平均粒子径約20μm、巴工業株式会社製)10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料8を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料8について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、軸方向の方が長さ方向より高い熱伝導率を示した。また、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値は、それぞれ5μm及び0.2μmであった。
(比較例2)
−立体造形用フィラメント材料9の作製−
実施例6において、熱伝導性フィラーを、窒化アルミニウム粉末(球状、平均粒子径約50μm、株式会社トクヤマ製)25質量部に変更した以外は、実施例6と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料9を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料9について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、長さ方向の方が軸方向より若干高い熱伝導率を示した。また、窒化アルミニウム粉末は球状であり、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値はいずれも50μmであった(アスペクト比は1.0)。
(比較例3)
−立体造形用フィラメント材料10の作製−
実施例1において、熱伝導性フィラーを、炭化珪素粉末(SSC−A15、球状、平均粒子径約18μm、信濃電気製錬株式会社製)30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料10を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料10について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、長さ方向の方が軸方向より若干高い熱伝導率を示した。また、炭化珪素粉末は球状であり、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値はいずれも18μmであった(アスペクト比は1.0)。
(比較例4)
−立体造形用フィラメント材料11の作製−
実施例1において、熱伝導性フィラーを断熱性(非熱伝導性)の中空アクリル粒子(アドバンセルHB、球状、平均粒子径10μm、積水化学工業株式会社製)30質量部とし、ポリ乳酸樹脂(3001D、ネイチャーワークス社製)70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、直径1.75mmの立体造形用フィラメント材料11を作製した。
得られた立体造形用フィラメント材料11について、実施例1と同様にして熱伝導率を測定した結果、長さ方向の方が軸方向より高い熱伝導率を示した。また、中空アクリル粒子は球状であり、実施例1と同様にして測定した最大軸長及び最小軸長の平均値はいずれも10μmであった(アスペクト比は1.0)。
次に、作製した実施例1〜7及び比較例1〜4の立体造形用フィラメント材料1〜11について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1に示した。
<造形安定性>
各立体造形用フィラメント材料を、熱溶融積層方式の立体造形装置を用いて立体造形物の製造を行った。ノズル温度は200℃〜260℃に、ベッド温度は45℃〜100℃に設定した。また、造形速度は、60mm/secとした。
造形中フィラメントの搬送不良、吐出不良、ベッドからの剥離等により、造形が途中で停止するか否かについて判定し、下記基準に従って、造形安定性を評価した。
[評価基準]
◎:最初から最後まで一度も造形が止まることなく、立体造形物を完成した
○:造形の停止が数回あったが、復活することができ、立体造形物を完成した
△:造形が50%以上進んだ後に造形の停止が頻発し、立体造形物の完成に至らなかった
×:造形の初期段階から造形の停止が頻発し、造形は10%にも達しなかった
<造形品質>
前記造形安定性評価で完成できた立体造形物について、造形品質評価を行った。造形品質は、得られた立体造形物を目視で観察し、欠陥の有無や寸法精度について評価を行った。欠陥については、特に空隙の有無、突起や糸引きの有無、反りの有無、ピッチ間の剥がれの有無を中心にして判定し、下記基準に従って造形品質を評価した。
[評価基準]
◎:立体造形物に目立つ欠陥は認められず、目的の立体造形物が得られた
○:目立たない小さな欠陥が数カ所見つかったが、問題ないと判断できる
△:目立つ欠陥が多数あり、明らかに品質が低いことがわかる
×:目的の形状とは大きくかけ離れている
<熱伝導率>
各立体造形用フィラメント材料について、軸方向の熱伝導率λ1、及び長さ方向の熱伝導率λ2の測定結果から、下記の基準で評価した。
[評価基準]
○:軸方向の熱伝導率λ1>長さ方向の熱伝導率λ2
×:軸方向の熱伝導率λ1≦長さ方向の熱伝導率λ2
<アスペクト比>
各立体造形用フィラメント材料について、長さ方向の査型電子顕微鏡(ULTRA55、ZEISS社製)を用いた断面SEM観察により、最大軸長及び最小軸長の平均値を求め、平均最大軸長/平均最小軸長から、アスペクト比を算出した。
(実施例8)
実施例6の立体造形用フィラメント材料7を用い、造形速度を60mm/secから100mm/secに変更した以外は、実施例6と同様にして、立体造形物の製造を行った。得られた立体造形物を、上記と同様にして評価を行った。結果を表2に示した。
(比較例5)
比較例2の立体造形用フィラメント材料9を用い、造形速度を60mm/secから100mm/secに変更した以外は、比較例2と同様にして、立体造形物の製造を行った。得られた立体造形物を、上記と同様にして評価を行った。結果を表2に示した。
(実施例9)
実施例2の立体造形用フィラメント材料3をモデル材として、実施例4の立体造形用フィラメント材料5をサポート材として用い、2ヘッドの熱溶融方式の立体造形装置を用いて図7に示す立体造形物の製造を行った。ノズル温度はモデル材及びサポート材ともに200℃に、ベッド温度は60℃に設定した。造形速度は、モデル材は60mm/sec、サポート材は30mm/secとした。
(実施例10)
実施例9において、造形速度をモデル材及びサポート材ともに100mm/secに変更した以外は、実施例9と同様にして、立体造形物の製造を行った。
(比較例6)
実施例9において、モデル材を、比較例3の立体造形用フィラメント材料10に変更した以外は、実施例9と同様にして、立体造形物の製造を行った。
(比較例7)
比較例6において、造形速度をモデル材及びサポート材ともに100mm/secに変更した以外は、比較例6と同様にして、立体造形物の製造を行った。
次に、得られた各立体造形物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表3に示した。
<サポート材除去試験>
得られた各立体造形物を20℃の水を入れた容器に浸し、マグネチックスターラーを用いて撹拌を行った。経時で目視観察を行い、サポート材がきれいに除去できた時間を測定し、下記基準で評価した。
[評価基準]
◎:浸漬させてから1時間以内に、完全に除去できた
○:浸漬させてから1時間超3時間以内に、完全に除去できた
△:浸漬させてから3時間超5時間経過してもサポート材が残存し、こすり落とすことで除去できた
×:浸漬させてから24時間経過しても、サポート材は残存した
<造形品質>
サポート材を除去し、完成した立体造形物について、造形品質評価を行った。造形品質は、得られた立体造形物を目視で観察し、欠陥の有無や寸法精度について評価を行った。欠陥については、特に空隙の有無、突起や糸引きの有無、反りの有無、ピッチ間の剥がれの有無を中心に評価を行い、下記基準に従って造形品質を評価した。
[評価基準]
◎:立体造形物に目立つ欠陥は認められず、目的の立体造形物が得られた
○:目立たない小さな欠陥が数カ所見つかったが、問題ないと判断できる
△:目立つ欠陥が多数あり、明らかに品質が低いことがわかる
×:目的の形状とは大きくかけ離れている
以上の結果より、長さ方向よりも軸方向に熱伝導率が高い本発明の立体造形用フィラメント材料を用いることにより、造形が途中で止まることがなく安定に造形でき、更に完成した立体造形物の品質や精度も向上することが確認された。また、これらの効果は、造形速度を高めても有効であり、造形速度アップが可能になった。更に、本発明の立体造形用フィラメント材料は、モデル材とサポート材の両方に用いることが可能であり、短い除去時間で高品質な立体造形物を得ることができ、生産性を高めることができた。
一方、軸方向よりも長さ方向に熱伝導率が高い立体造形用フィラメント材料を用いると、造形中にフィラメントが、本来溶融すべき領域よりも手前から軟化し始め、フィラメントがノズルから吐出されなくなった。軸方向と長さ方向の熱伝導率がほぼ同等であると、造形安定性や造形品質に対するフィラー添加の効果が殆ど認められなかった。更に、造形速度を高めると、造形安定性が大幅に低下し、立体造形物を完成させることができなかった。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含有する立体造形用フィラメント材料であって、
前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いことを特徴とする立体造形用フィラメント材料である。
<2> 前記熱伝導性フィラーが非球状を有し、前記熱伝導性フィラーの最大軸が、前記熱伝導性フィラーの最小軸よりも、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向している前記<1>に記載の立体造形用フィラメント材料である。
<3> 前記非球状の熱伝導性フィラーのアスペクト比(最大軸長/最小軸長)が、2以上である前記<2>に記載の立体造形用フィラメント材料である。
<4> 前記非球状の熱伝導性フィラーの最大軸長が、1μm以上300μm以下である前記<2>から<3>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<5> 前記熱伝導性フィラーが、前記非球状のフィラーと球状のフィラーの混合物である前記<2>から<4>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<6> 前記熱伝導性フィラーが、金属、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、及び炭素化合物から選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<7> 前記熱伝導性フィラーが、カーボンファイバー、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種である前記<1>から<6>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<8> 前記熱伝導性フィラーの含有量が、1質量%以上75質量%以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<9> 直径が、0.5mm以上10mm以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<10> 立体造形物形成材料及び支持体形成材料の少なくともいずれかである前記<1>から<9>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料である。
<11> 前記熱可塑性樹脂が、非水溶性である前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料と、
前記熱可塑性樹脂が、水溶性である前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料と、
を有する立体造形用フィラメント材料セットである。
<12> 前記熱可塑性樹脂と、前記熱伝導性フィラーを含有した樹脂組成物を溶融混練し、磁場を印加しながら押出成形することによって製造することを特徴とする前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料の製造方法である。
<13> 前記熱可塑性樹脂と、前記熱伝導性フィラーを含有した樹脂組成物を溶融混練し、押出成形したフィラメント材料を長さ方向に対し垂直にカットしてペレット化し、前記ペレットを再度溶融し接合させることによって製造することを特徴とする前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料の製造方法である。
<14> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料を用いて、加熱溶融する工程を経て、立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<15> 前記熱可塑性樹脂が水溶性である立体造形用フィラメント材料をサポート材として用い、所定の立体造形物を形成した後に、該サポート材からなる部分を除去する工程を含む前記<14>に記載の立体造形物の製造方法である。
前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料、前記<11>に記載の立体造形用フィラメント材料セット、前記<12>から<13>のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料の製造方法、及び前記<14>から<15>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
1 ノズルヘッド
2 ヒーター
3 立体造形用フィラメント材料
10 立体造形用フィラメント材料
11 非球状熱伝導性フィラー
12 球状熱伝導性フィラー
30 シート状樹脂組成物
31 非球状熱伝導性フィラー
20 モデル材
21 サポート材
203 ホッパー
204 スクリュー
W 水
特表2013−506580号公報 特表2013−506579号公報 特開2016−028887号公報

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを含有する立体造形用フィラメント材料であって、
    前記立体造形用フィラメント材料の軸方向の熱伝導率が、長さ方向の熱伝導率よりも高いことを特徴とする立体造形用フィラメント材料。
  2. 前記熱伝導性フィラーが非球状を有し、前記熱伝導性フィラーの最大軸が、前記熱伝導性フィラーの最小軸よりも、前記立体造形用フィラメント材料の軸方向に配向している請求項1に記載の立体造形用フィラメント材料。
  3. 前記非球状の熱伝導性フィラーのアスペクト比(最大軸長/最小軸長)が、2以上である請求項2に記載の立体造形用フィラメント材料。
  4. 前記非球状の熱伝導性フィラーの最大軸長が、1μm以上300μm以下である請求項2から3のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料。
  5. 前記熱伝導性フィラーが、前記非球状のフィラーと球状のフィラーの混合物である請求項2から4のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料。
  6. 前記熱伝導性フィラーが、金属、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、及び炭素化合物から選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、非水溶性である請求項1から6のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料と、
    前記熱可塑性樹脂が、水溶性である請求項1から6のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料と、
    を有する立体造形用フィラメント材料セット。
  8. 前記熱可塑性樹脂と、前記熱伝導性フィラーを含有した樹脂組成物を溶融混練し、磁場を印加しながら押出成形することによって製造することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料の製造方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂と、前記熱伝導性フィラーを含有した樹脂組成物を溶融混練し、押出成形したフィラメント材料を長さ方向に対し垂直にカットしてペレット化し、前記ペレットを再度溶融し接合させることによって製造することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料の製造方法。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の立体造形用フィラメント材料を用いて、加熱溶融する工程を経て、立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物の製造方法。
  11. 前記熱可塑性樹脂が水溶性である立体造形用フィラメント材料をサポート材として用い、所定の立体造形物を形成した後に、該サポート材からなる部分を除去する工程を含む請求項10に記載の立体造形物の製造方法。

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