JP2018196953A - 立体造形用サポート材、立体造形用モデル材及び立体造形用サポート材のセット、立体造形物の製造方法、並びに立体造形装置 - Google Patents

立体造形用サポート材、立体造形用モデル材及び立体造形用サポート材のセット、立体造形物の製造方法、並びに立体造形装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 エンプラ又はスーパーエンプラを含有するモデル材を用いて造形する際に、サポート部によりモデル部の形状を維持できなくなったり、モデル材とサポート材の融点が近いので、サポート部とモデル部の境界面が強固に融着し、サポート部の除去が困難になったりする。【解決手段】 立体造形用サポート材は、熱可塑性樹脂を含有し、前記熱可塑性樹脂の融点における複素粘弾性A(Pas)、及び前記熱可塑性樹脂の融点より30℃低い温度における複素粘弾性B(Pas)の比(B/A)の比が9以上である。【選択図】図2

Description

本発明は、立体造形用サポート材、立体造形用モデル材及び立体造形用サポート材のセット、立体造形物の製造方法、並びに立体造形装置に関する。
複雑な形状を、型を用いずに造形可能な立体造形方法として、積層造形(AM: Additive Manufacturing)が知られている。積層造形のうち、熱溶融積層法(FDM: Fused Deposition Modeling)は、熱可塑性樹脂を含有するフィラメントを溶融させ、3D(Dimensional)データに基づいて、溶融物をノズルから造形ステージの所定の位置に吐出する処理を繰り返して積層させて造形する方法である。熱溶融積層法は、立体造形装置が比較的安価であり、試作品を製造する場合にも製品と同じ素材を用いて造形できるので、応用範囲が広く、試作品の生産や少量多品種生産などで用いられている。
積層造形において、オーバーハング部を有する形状を造形する場合に、造形対象となるモデル部を、サポート部でサポートしながら造形し、造形後にサポート部を除去して立体造形物を得る方法が用いられている。モデル部を形成するためのモデル材、サポート部を形成するためのサポート材としては、PVA(Polyvinyl Alcohol)や、ポリアクリル酸などの汎用樹脂を含有するものが市販されている。近年では、工業製品で使用されるエンジンニアリングプラスティック(以下エンプラと記載する)や、スーパーエンジンニアリングプラスティック(以下スーパーエンプラと記載する)をモデル材に使用したいとの要望が高く、それを支持可能なサポート材も求められている。
エンプラ又はスーパーエンプラ用のサポート材としては、例えば、特許文献1には、PES(Polyethersulphone)、PEEK(Polyether ether ketone)などからなる基本ポリマーとシリコーン離型材とを含有するサポート材が提案されている。
エンプラ又はスーパーエンプラを含有するモデル材と、PVAやポリアクリル酸などの樹脂を含有するサポート材と、を用いて造形すると、サポート材により形成されるサポート部は、モデル材の溶融物の熱により溶融して変形する。これにより、モデル部の形状が維持されなくなる。PVAやポリアクリル酸などの樹脂に代えて、上記のPES等の樹脂とシリコーン離型材とを含有するサポート材を使用した場合、モデル部の形状の維持は可能であるが、モデル材とサポート材の融点が近いので、サポート部とモデル部の境界面が強固に融着し、サポート材の除去が困難になるという課題が生じる。
請求項1に係る発明は、熱可塑性樹脂を含有し、前記熱可塑性樹脂の融点における複素粘弾性A(Pas)、及び前記熱可塑性樹脂の融点より30℃低い温度における複素粘弾性B(Pas)の比(B/A)の比が9以上である立体造形用サポート材である。
本発明のサポート材によれば、エンプラ及びスーパーエンプラを含有するモデル材と組み合わせて造形するときに、モデル部の形状維持が可能であり、造形後には、サポート部がモデル部から容易に除去されるという効果を奏する。
図1は、押出成形の工程の一例を説明するための模式図である。 図2は、一実施形態に係る立体造形装置を説明するための模式図である。 図3は、造形物の一例を示す斜視図である。 図4は、モデル部からサポート部を抜き出す方向を示す説明図である。
以下、本発明の立体造形用サポート材、及び立体造形用モデル材を用いた熱溶融積層法による造形を示した実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下、立体造形用サポート材は、単に「サポート材」と表し、立体造形用モデル材は、単に「モデル材」と表す。また、サポート材およびモデル材のうち任意のものを立体造形用樹脂組成物と表す。
本発明の立体造形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
<液晶樹脂>
サポート材、及びモデル材は、熱可塑性樹脂として液晶樹脂を含有することが好ましい。液晶樹脂(LCP: Liquid Crystal Polymer)は、溶融状態で分子の直鎖が規則正しく並んだ液晶様性質を示す熱可塑性樹脂である。液晶樹脂は、液晶様性質により、冷却時に、他の樹脂に比べ、速やかに液体から固体状態に変化する。液晶樹脂は、分子の直鎖が規則正しく並んだ状態で固化する。これらの性質により、液晶樹脂を含有するサポート材は、高融点のモデル材と組み合わせて用いた場合にも、耐熱性やモデル部を支持しうる強度を備え、モデル部の形状維持し、造形後の除去が容易である。
熱溶融積層法では、まずモデル部を支持するためのサポート部がサポート材により形成され、続いて、サポート部の上面にモデル部がモデル材により形成される。その際、サポート部の形成直後のサポート部の表面が高温で半溶融状態にあるときにモデル部が形成されるため、サポート部上面の接着性が高い状態でモデル部が形成される。そのため、サポート部とモデル部との境界面は強固に接着する。
しかしながら、液晶樹脂は融点から少し低い温度でも急激に溶融粘度が高くなり半固体状態となる。従って、液晶樹脂をサポート材に用いた場合には、他の樹脂を用いる場合と比べて、サポート部の上面の接着性が低い状態でモデル部が形成されるため、サポート部とモデル部の境界面の接着力が弱くなり、剥離性が向上する。
上記のように、固化速度が高いほど、すなわち融点から冷却するときの樹脂の複素粘弾性の温度依存性が高いほど、より剥離性に優れることになる。本発明では、複素粘弾性の温度依存性は、例えば、HAAKE社製 MARS IIIのレオメータを使用し、測定する樹脂の融点より50℃高い溶解状態から、融点より30℃低い温度までの複素粘弾性η*を測定して得られる。そして、融点における複素粘弾性に対する融点から30℃低い温度における複素粘弾性の比を、冷却時の樹脂の溶融粘度の変化の指標とする。以下、レオメータの測定条件を示す。
(測定条件)
コーン種:パラレルプレート20mmφ
コーンギャップ:1mm
振幅数f:1.00Hz(角速度ω6.2832rad/s)
温度範囲:融点+50℃から融点−30℃
冷却速度:5℃/分
サポート材の融点のおける複素粘弾性A(Pas)に対する、融点より30℃低い温度における複素粘弾性B(Pas)の比(B/A)は、好ましくは9以上であり、より好ましくは60以上であり、更に好ましくは700以上である。この比が大きいほど除去性が向上する。また、ノズルからのサポート材の吐出安定性の点から、サポート材の融点における複素弾性率は100Pas以上であることが好ましい。
液晶樹脂としては、例えば、公知のものから適宜選択され、I型、II型、III型またはその中間型のいずれかであってもよい。液晶樹脂としては、p−ヒドロキシ安息香酸、ビスフェノール、フタル酸、ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などの芳香族カルボン酸又は芳香族エーテルを基本骨格に有するものが例示される。液晶樹脂の市販品としては、住友化学株式会社製のスミカスーパー、ポリプラスチックス株式会社製のラペロス、東レ株式会社製のシベラス、上野製薬株式会社製のUENO LCP、セラニーズ社製のベクトラ等などが例示されるが、これらに限定されない。また、液晶樹脂は、構成単位としてパラヒドロキシ安息香酸を含むことが好ましい。
液晶樹脂の融点は、モデル材の耐熱性や融点によって異なるが、モデル材支持性の点から、220℃以上であることが好ましく、270℃以上であることがより好ましい。また、除去性の点から、液晶樹脂の融点は360℃以下であることが好ましく、279℃以上340℃以下であることが特に好ましい。
<その他の熱可塑性樹脂>
立体造形用樹脂組成物(モデル材、及びサポート材)に用いられるその他の熱可塑性樹脂としては、結晶性樹脂、非晶性樹脂等が例示される。サポート材においてその他の熱可塑性樹脂組成物を用いる場合、液晶樹脂とその他の熱可塑性樹脂との合計に対し、その他の熱可塑性樹脂の含有量は、40質量%未満であることが望ましい。
<結晶性樹脂>
結晶性樹脂とは、分子鎖が規則正しく並んだ結晶を有し、明確な融点を有する樹脂である。結晶性樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により特定できる。その他の樹脂のうち結晶性樹脂は、高い機械強度および耐薬品性を有するため立体造形用樹脂組成物として好適である。また、結晶性樹脂は、収縮率が高いという特性も有する。
結晶性樹脂の種類はとくに制限されず、公知の結晶性樹脂を適宜使用することができ、スーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA9T、PA6T、PA46)等が例示される。また、汎用エンプラ(エンジニアリングプラスチック)である結晶性樹脂として、ポリアミド(PA66、PA6)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリアセタール(POM)等が例示される。また、汎用樹脂である結晶性樹脂として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ酢酸ビニル(EVOH)、及びポリ乳酸(PLA)等が例示される。
これらの中でも本発明の効果をさらに高めるという観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)がより好ましい。
なお、エンプラは、特に限定されないが、100℃以上の耐熱性を有し、49MPa以上の引張強度と、2.5GPa以上の曲げ弾性率を持つ樹脂である。スーパーエンプラは、特に限定されないが、150℃以上の耐熱性を有する樹脂である。
<非晶性樹脂>
非晶性樹脂とは、分子鎖がランダムに並んだ状態であり、明確な融点をもたない樹脂である。非晶性樹脂は、良好な透明性、耐衝撃性及び成形収縮率を有する。一方、耐薬品性、耐疲労性は結晶性樹脂の方が高い。
立体造形用樹脂組成物に用いられる非晶性樹脂としては、とくに制限されず、スーパーエンプラとして、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSU)等の公知の非晶性樹脂が例示される。また、非晶性樹脂である汎用エンプラでとして、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)等が例示される。また、非晶性樹脂である汎用樹脂として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が例示される。
これらの中でも本発明の効果をさらに高めるという点から、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)が好ましい。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、50,000以上1,000,000以下が好ましく、75,000以上500,000以下がより好ましく、100,000以上400,000以下が更に好ましい。重量平均分子量がこの範囲内であると、ノズルからの吐出安定性が高まり、得られた立体造形物の品質や精度が高まるという効果を奏する。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
<その他の成分>
立体造形用樹脂組成物に用いられるその他の成分としては、可塑剤、充填剤、補強剤、安定剤、分散剤、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、顔料、及び各種高分子改質剤等が例示される。これらの成分を添加することにより、流動性改善によるフィラメント成形安定性の向上、フィラメントの寸法精度の向上、フィラメントの機械的特性の改善、フィラメントの劣化防止、さらに3Dプリンタによる造形安定性や立体造形物の品質や精度の向上等の効果が得られる。
<モデル材及びサポート材のセット>
本発明におけるモデル材及びサポート材のセットは、上記の熱可塑性樹脂を含有するモデル材と、上記の熱可塑性樹脂を含有するサポート材と、を有する。モデル材は、熱可塑性樹脂として、PEEKなどのスーパーエンプラを含む。このため、造形時にモデル材を高温に加熱して溶融させる。この場合でも、セットにおけるサポート材を組み合わせて用いることで、造形時に優れた形状維持性、及び除去性が得られる。
<立体造形用フィラメントおよびその製造方法>
上記の立体造形用樹脂組成物は、立体造形用フィラメントとして熱溶融積層方式の立体造形装置に好適に用いられる。以下、立体造形用フィラメントを単に「フィラメント」と表す。フィラメントとは、例えば、立体造形用樹脂組成物を紐状あるいは糸状に押し出して成形したものであり、ストランドと称する場合もある。
フィラメントは、従来公知の押出成形の方法を用いて製造することができる。押出成形とは、樹脂組成物を溶融混練しながら押出し、所定の断面形状を持つプラスチック長尺物を連続成形する方法である。図1は、押出成形の工程の一例を説明するための模式図である。原料として上記の立体造形用樹脂組成物は、ホッパー203より投入され、押出機201のシリンダー(バレルとも称する)内でスクリュー204により溶融混練しながら押出され、所定のフィラメント径になるように選択した金型202を通過することで、成形される。成形された溶融混練物は、その後、冷却機210により冷却されて固化し、引取機220にて引取られ、巻取機にて巻き取られ、切断機230にて切断されることによって、フィラメントが得られる。
押出機201は、一般にスクリュー式が用いられる。スクリュー式としては、単軸押出機の他に、二軸以上の多軸押出機、あるいは特殊押出機などが例示される。単軸押出機は、シリンダーに1本のスクリューを装着した押出機であり、例えばホッパー、モーターなどの駆動装置、減速機、スクリュー、シリンダー、ヒータ、ブロワー、温度制御装置などを備える。シリンダーの先端には成形用の金型が取り付けられている。二軸(多軸)押出機は、シリンダー内に2本あるいはそれ以上のスクリューを装着した押出機である。多軸押出機として、一般的に2本スクリューのものが用いられ、2本の軸が平行なものや軸を斜交させたもの、さらにスクリューフライトのかみ合い型と非かみ合い型、スクリュー回転方向が同方向のもの、異方向のものなどがある。特殊押出機は、2種類の押出機を2段に組み合せたもの、スクリュー及びバレルが特殊な形状のもの、非スクリュー型の3つに分類される。なお、立体造形用樹脂組成物の原料を溶融混練する方法としては、上記の押出機を用いる以外に、ニーダーやミキサー等を用いて、バッチ毎に溶融混練する方法もある。
冷却機210は、押し出されたフィラメントを冷却固化させる装置である。冷却は、フィラメントの寸法や品質の決定に影響を及ぼす。冷却機210による冷却方法としては、一般に水冷及び空冷などがあり、冷却手段としては、水槽、水シャワー、冷却ロール、冷却盤などがある。また、フィラメントを冷却した後、再度加熱して延伸加工してもよい。この処理は、立体造形用樹脂組成物の強度を高める上で有効な場合がある。
引取機220は、フィラメントの引き取りを行う装置である。引取機220は、高い寸法精度や品質を維持するために、材料に応じて、適切な引張力と均一でかつ脈動のない引張速度となるように調整される。
巻取機および切断機230は、フィラメントをボビンなどに巻取り、切断するための装
置である。フィラメントの直径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、例えば0.5mm以上10mm以下が好ましく、1.5mm以上3.5mm以下がより好ましい。
<立体造形装置>
立体造形装置は、例えば、入力された三次元形状のデータに基づいて、上記の立体造形用樹脂組成物を加熱溶融し、それを任意の位置に吐出する手段としてのノズルヘッドと、吐出された組成物を堆積させる手段としてのステージとを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。立体造形装置として、公知の熱溶融積層方式の立体造形装置(3Dプリンタ)を用いてもよい。
図2は、一実施形態に係る立体造形装置を説明するための模式図である。なお、図2において、鉛直方向は、Z軸の負の方向である。また、図2において、各手段を結ぶ矢印は、電気的な信号または駆動力を表す。
立体造形装置1は、本体フレーム2の内部にチャンバー3を備えている。チャンバー3は、断熱材料によって構成されており、あるいは、断熱材が設けられた部材によって構成されており、チャンバー3内の熱が外部へ逃げることを抑制する。チャンバー3の内部は、三次元造形物を造形するための処理空間となっている。その処理空間内、すなわちチャンバー3の内部には、載置台としてのステージ(基体)4が設けられている。このステージ4上に立体造形物が造形される。
ステージ4には、フィラメントが造形中に剥がれないよう、加熱手段が設けられていることが好ましい。加熱手段による加熱温度はフィラメントが、造形中にステージ4から剥がれたり、あるいはステージ4上で立体造形物が溶融変形したりしなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、フィラメントに含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましい。また、ステージ4上にフィラメントとの密着性を高めるためのシートやステッカー等が貼付されていることが好ましい。但し、密着性が強すぎると、造形が終わった後、立体造形物を取り出しにくくなることがあるため、シートやステッカーによる接着力は、造形中剥がれない程度が好ましい。
チャンバー3の内部には、ステージ4に対しZ軸方向に、造形手段としての造形ヘッド10が設けられている。造形ヘッド10は、ステージ4に向けて、モデル材またはサポート材のフィラメントを射出する射出ノズル11を有する。本実施形態では、造形ヘッド10に4つの射出ノズル11が設けられているが、射出ノズル11の数は任意である。ただし、造形ヘッド10には、モデル材、及びサポート材のそれぞれを吐出するため、少なくとも二つの射出ノズル11が設けられていることが好ましい。造形ヘッド10には、各射出ノズル11に供給されるフィラメントを加熱するヘッド加熱部12が設けられている。
フィラメントは、細長いワイヤー形状であり、巻き回された状態にてフィラメント供給部6(供給手段の一例)にセットされており、フィラメント供給部6により造形ヘッド10上の各射出ノズル11へ、それぞれ供給される。なお、フィラメントは、射出ノズル11ごとに同じものであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、フィラメント供給部6により供給されるフィラメントをヘッド加熱部12にて加熱溶融し、溶融状態のフィラメントを射出ノズル11(吐出手段の一例)から押し出すようにして射出することにより、ステージ4上に層を形成し、これを繰り返すことにより立体物を造形する。
立体造形装置1には、射出ノズル11に対するステージ4の相対位置を、X軸、Y軸、又はZ軸方向に変更させるためのX軸駆動機構21、Y軸駆動機構22、Z軸駆動機構23が設けられている。X軸駆動機構21、Y軸駆動機構22、Z軸駆動機構23は、チャンバー3内の高温に曝されず、安定した駆動制御を実現するため、チャンバー3の外部に配置されている。
造形ヘッド10は、装置左右方向に延びるX軸駆動機構21に対し、連結部材を介してその長手方向(X軸方向)に沿って移動可能に保持されている。造形ヘッド10は、X軸駆動機構21の駆動力により装置左右方向(X軸方向)へ移動する。造形ヘッド10は、ヘッド加熱部によって加熱されて高温になるため、その熱がX軸駆動機構21に伝わりにくいように、連結部材を低伝熱性のものとすることが好ましい。
X軸駆動機構21の両端は、Y軸方向に延びるY軸駆動機構22に対し、そのY軸駆動機構22の長手方向(Y軸方向)に沿ってスライド移動可能に保持されている。Y軸駆動機構22の駆動力によって、造形ヘッド10は、Y軸方向に沿って移動する。
一方、ステージ4は、本体フレーム2に固定されZ軸方向に延びるZ軸駆動機構23に対し、そのZ軸駆動機構23の長手方向(Z軸方向)に沿って移動可能に保持されている。ステージ4は、Z軸駆動機構23の駆動力により、Z軸方向へ移動する。
チャンバー3の内部(処理空間)には、チャンバー3内を加熱する処理空間加熱手段としてのチャンバー用ヒータ7が設けられている。また、チャンバー3の内部(処理空間)には、造形ヘッド10の射出ノズル11を清掃するためのノズル清掃部9が設けられている。チャンバー3の外部には、立体造形装置1の外部の空間を冷却させるための装置内冷却装置8が設けられている。
立体造形装置1は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより構築される制御部100を有する。制御部100は、各機構に電気信号を送信することで、X軸駆動機構21、Y軸駆動機構22、Z軸駆動機構23、フィラメント供給部6、ノズル清掃部9の駆動、又はチャンバー用ヒータ、装置内冷却装置8のON/OFFを制御する。
<立体造形物の製造方法>
一実施形態の立体造形物の製造方法は、上記の立体造形用樹脂組成物を含有するフィラメントを溶融し、その溶融物を繰り返し積層し、入力されたデータに応じた形状に造形する工程を有する。上記のフィラメントを液晶樹脂の融点以上の温度で加熱溶融することにより、高強度であり、かつ反り等の歪みの少ない立体造形物が得られる。以下、立体造形物の製造方法の一例として、立体造形装置1を用いた方法について説明する。
立体造形装置1は、三次元モデルを示す三次元データに基づいて造形する。造形用の三次元データは、例えば、三次元CADで設計された三次元形状、或いは三次元スキャナやディジタイザで取り込んだ三次元形状のサーフェイスデータ、ソリッドデータ等の三次元データである。三次元データは、例えば、三次元モデルの表面が三角形の集合体として表現されたSTLフォーマット(Standard Triangulated Language)に変換されていてもよい。
まず、情報処理装置により、三次元データから三次元モデルの底面を特定する。底面を特定する方法は、特に限定されないが、三次元モデルを三次元座標系に配置したときに、長さが最も短くなる方向をZ軸とし、Z軸に直交する面と三次元モデルとの接点を底面とする方法が例示される。情報処理装置は、Z軸方向の所定間隔ごとに、底面と平行方向に三次元モデルがスライスされた切断面を示す二次元データを生成する。
三次元モデルがオーバーハング部を有する場合、情報処理装置は、生成された各二次元データに対し、オーバーハング部の底面側に、サポート部を示す画素を追加する。最終的に生成される二次元データは、造形物の一断面を示し、モデル部を示す画素、及びサポート部を示す画素が含まれている。
立体造形装置1により造形する際に、チャンバー3内は、造形安定性を確保するため、所定の目標温度に維持されていることが好ましい。チャンバー用ヒータ7は、予熱処理として、予めチャンバー3内の温度を加熱し、目標温度まで昇温させて維持する。
立体造形装置1の制御部100は、情報処理装置によって生成された二次元データを入力する。制御部100は、フィラメント供給部6を駆動して、フィラメント供給部6にセットされたフィラメント、すなわち、モデル材、及びサポート材の少なくとも一方を所定の速度で搬送させ、造形ヘッド10へ供給させる。供給されたフィラメントは、射出ノズル11において、ヘッド加熱部12によって加熱され溶融する。射出ノズル11の加熱温度としては、立体造形用樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の分解温度を超えないことが好ましい。熱可塑性樹脂の分解温度を超えると、分解物によってノズル詰まりを起こし、造形安定性を低下させることがある。
立体造形装置1の制御部100は、最も底面側の断面を示す二次元画像データに基づいてX軸駆動機構21及びY軸駆動機構22を駆動して、造形ヘッド10をX軸又はY軸方向に移動させながら、射出ノズル11から溶融したフィラメント、すなわち、モデル材、及びサポート材の少なくとも一方を吐出させる。これにより、最も底面側の断面を示す二次元データにおけるモデル部を示す画素に対応する位置にモデル材の溶融物が配され、サポート部を示す画素に対応する位置にサポート材の溶融物が配された液膜が形成される。液膜は冷却して固化することで層が形成される。
最も底面側の層の形成後、立体造形装置1の制御部100は、Z軸駆動機構23を駆動して、ステージ4を一層分、下降させる。立体造形装置1の制御部100は、最も底面側から二つ目の二次元データに基づいてX軸駆動機構21及びY軸駆動機構22を駆動して、射出ノズル11から溶融したフィラメント、すなわち、モデル材、及びサポート材の少なくとも一方を吐出させる。これにより、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の二次元データが示す断面形状の液膜が形成される。液膜は冷却して固化することで層が形成される。
立体造形装置1は、入力された二次元データのうち底面側に近いものから順に利用して、上記と同様に、層の形成を繰り返し、積層させる。繰り返しの回数は、入力された二次元画像データの数に応じて異なる。すべての二次元画像データを用いた造形が完了すると、サポート部に支持された状態のモデル部からなる造形物が得られる。
サポート部は、造形後にモデル部から除去される。除去方法には、造形物に機械的な力を加えて除去する物理的除去、及び造形物に溶媒を加えてサポート部を溶融させることにより除去する化学的除去などがある。フィラメントは、造形後立体造形物になるので、一般に非水溶性の熱可塑性樹脂であるが、化学的除去を用いる場合には、サポート材のフィラメントは、水溶性の熱可塑性樹脂であってもよい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
<モデル材フィラメントの製造>
(PEEKフィラメント)
ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製、381G、融点343℃)99.5質量部および液晶樹脂(上野製薬製、UENOLCP A−2000、融点334℃)0.5質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmのモデル材フィラメント1を作製した。
(PEEK(90)/LCP(10)フィラメント)
ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製、381G)90.0質量部、液晶樹脂(上野製薬製、UENOLCP A−2000、融点330℃)10.0質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmのモデル材フィラメント2を作製した。
<サポート材フィラメントの製造>
(実施例1)
液晶樹脂(上野製薬社製LCP A−3000、融点340℃)100質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmのサポート材フィラメント1を作製した。
(実施例2)
液晶樹脂(上野製薬社製LCP A−5000、融点280℃)100質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmのサポート材フィラメント2を作製した。
(実施例3)
液晶樹脂(上野製薬社製LCP A−2000、融点330℃)100質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmのサポート材フィラメント3を作製した。
(実施例4)
液晶樹脂(上野製薬社製LCP A−6000、融点320℃)100質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmのサポート材フィラメント4を作製した。
(実施例5)
実施例4と同じサポート材フィラメント4を用いた。
(比較例1)
ポリエーテルスルホン(住友化学製PES4100G、融点309℃)100質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmの比較フィラメント1を作製した。
(比較例2)
ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製、381G、融点343℃)100質量部を、図1に示すような押出成形機を用いて溶融混練し、フィラメント成形して、直径1.75mmの比較フィラメント2を作製した。
(比較例3)
LeapFrog社製のサポートフィラメントMAXX Exotic PVAフィラメントを用いた。
[立体造形物の作製]
図2に示すような立体造形物の製造装置を用い、表1に示す実施例及び比較例の各フィラメントを用いて立体造形を行い、図3で示した試験片を作成した。図3は、試験片の斜視図である。図3における試験片は、モデル材フィラメントにより形成されるモデル部300、及びサポート材フィラメントにより形成されるサポート部350を有する。造形時の射出ノズルの温度は、PEEKの場合は380℃、ポリエーテルスルフォン(PES)の場合は360℃、液晶樹脂(LCP)の場合は融点より30℃高い温度に設定した。また、造形速度は、60mm/secとした。
<評価>
[融点]
実施例及び比較例のサポート材フィラメントについて、TAインスツルメント社製Q200温度変調DSCを使用し1回目の昇温(1st)(固体→溶融)を行った後、降温(溶融→固体)、更に2回目の昇温(2nd)(固体→溶融)を行い、2回目の昇温時のDSC曲線から融点を求めた。
(測定条件)
・測定試料量:5.0〜10.0mg
・昇温(1st)
昇温範囲 −60℃からX℃
昇温速度 10℃/分
維持時間 X℃で10分
・降温(冷却)
降温範囲 X℃から−60℃
降温速度 10℃/分
維持時間 −60℃で3分
・昇温(2nd)
昇温範囲 −60℃からX℃
昇温速度 10℃/分
維持時間 X℃で10分
X℃は測定対象のフィラメントの分解温度より20℃低い温度である。
(分解温度まで昇温すると、樹脂の変性が発生するため。)
[複素粘弾性]
実施例、比較例のサポート材フィラメントの複素粘弾性を測定した。測定には、レオメータHAAKE社製MARS IIIを使用し、フィラメントに含まれる熱可塑性樹脂の融点より50℃高い温度での溶解状態から融点より30℃低い温度までの複素粘弾性η*を測定した。測定の結果から、融点のおける複素粘弾性(A(Pas))に対する融点から30℃低い温度における複素粘弾性(B(Pas))の比(B/A)をとり、冷却時の樹脂の溶融粘度の変化の指標とした。
(測定条件)
コーン種:パラレルプレート20mmφ
コーンギャップ:1mm
振幅数f:1.00Hz(角速度ω6.2832rad/s)
温度範囲:融点+50℃から融点−30℃
冷却速度:5℃/分
[サポート性]
試験片を目視により観察し、下記評価基準に基づいて、「サポート性」を評価した。
−評価基準−
A:モデル部の形状に歪みが見られない
B:モデル部に歪みが発生
C:サポート部が変形した、又はサポート部の溶融によりモデル部の造型ができない。
[除去性]
図4は、モデル部からサポート部を抜き出す方向を示す説明図である。図4の矢印が示す方向に、モデル部からサポート部を抜き出し、このときに要した強度をデジタルフォースゲージAD−4932A−50N(エー・アンド・ディー社製)で測定し下記評価基準で評価した。
−評価基準−
A:造型後、室温まで冷却した際に自然剥離した。
B:剥離強度が1N以上5N未満
C:剥離強度が5N以上10N未満
D:剥離強度が10N以上20N未満
E:剥離強度20N以上、又はモデル部にサポート部が残留し取り出せない。
上記の各評価の結果を表1に示す。
Figure 2018196953
表1の結果から、各実施例のサポート材は、融点が270℃以上の液晶樹脂を含み、液晶樹脂の融点における複素粘弾性に対する、融点より30℃低い温度における複素粘弾性の比が9以上である。これにより、各実施例は、各比較例に比べて、造型モデルの形状維持(サポート)にも優れ、サポート材の除去性に優れている。
1 立体造形装置
2 本体フレーム
3 チャンバー
4 ステージ
6 フィラメント供給部
7 チャンバー用ヒータ
8 装置内冷却装置
9 ノズル清掃部
10 造形ヘッド
11 射出ノズル
12 ヘッド加熱部
21 X軸駆動機構
22 Y軸駆動機構
23 Z軸駆動機構
100 制御部
120 水平面
201 押出機
202 金型
203 ホッパー
204 スクリュー
210 冷却機
220 引取機
230 切断機
300 モデル部
350 サポート部
特表2005−531439号公報

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂を含有し、
    前記熱可塑性樹脂の融点における複素粘弾性A(Pas)、及び前記熱可塑性樹脂の融点より30℃低い温度における複素粘弾性B(Pas)の比(B/A)の比が9以上である
    立体造形用サポート材。
  2. 前記B/Aの比が60以上である請求項1に記載の立体造形用サポート材。
  3. 前記B/Aの比が700以上である請求項2に記載の立体造形用サポート材。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、270℃以上の融点を有する液晶樹脂を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の立体造形用サポート材。
  5. スーパーエンジニアリングプラスチックを含有する立体造形用モデル材と、
    請求項1乃至4記載のいずれか一項に記載の立体造形用サポート材と、
    を有する立体造形用モデル材及び立体造形用サポート材のセット。
  6. 前記立体造形用モデル材は、前記スーパーエンジニアリングプラスチックとして、ポリエーテルエーテルケトンを含有する請求項5に記載の立体造形用モデル材及び立体造形用サポート材のセット。
  7. 立体造形用サポート材及び立体造形用モデル材は、フィラメントである請求項5又は6に記載の立体造形用モデル材及び立体造形用サポート材のセット。
  8. 立体造形用モデル材の溶融物、及び立体造形用サポート材の溶融物により層を形成する工程を繰り返し、前記層を積層させて造形する立体造形物の製造方法であって、
    前記立体造形用サポート材は、
    熱可塑性樹脂を含有し、
    前記熱可塑性樹脂の融点における複素粘弾性A(Pas)、及び前記熱可塑性樹脂の融点より30℃低い温度における複素粘弾性B(Pas)の比(B/A)の比が9以上である
    立体造形物の製造方法。
  9. 立体造形用モデル材、及び立体造形用サポート材がセットされ、前記立体造形用モデル材、及び前記立体造形用サポート材を供給する供給手段と、
    前記供給手段により供給される立体造形用モデル材、及び立体造形用サポート材を溶融させて吐出することにより層を形成する吐出手段と、を有し、
    前記立体造形用サポート材は、
    熱可塑性樹脂を含み、
    前記熱可塑性樹脂の融点における複素粘弾性A(Pas)、及び前記熱可塑性樹脂の融点より30℃低い温度における複素粘弾性B(Pas)の比(B/A)の比が9以上であり、
    前記層を積層させて造形する立体造形装置。
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