JP2017209114A - 上皮および/または内皮層を通過するscFv抗体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】選択した抗原に特異的に結合し、そして(i)可溶性でそして安定な抗体フレームワークのプールから、抗原に対して特定の結合特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチする、可溶性でそして安定なフレームワークを選択し、(ii)前記の可溶性でそして安定なフレームワークに、前記抗原に特異的に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかで、scFv抗体を生成し、(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして生成した抗体を、抗原結合に関して試験し、そして(iv)可溶性で、安定で、そして抗原に特異的に結合する、scFVを選択する工程を含む方法によって得られうる、scFv抗体。
【選択図】なし
Description
本発明は、選択した抗原の過剰発現に依存する疾患の診断および治療における、組織浸透および局所適用のための改善された特徴を持つ、scFv抗体に関する。特に、本発明は、前記の選択した抗原に特異的に結合し、そして該抗原を不活性化する抗体に関する。
本明細書全体で引用するいかなる特許、特許出願、および参考文献の内容も、その全体が本明細書に援用される。
多くの疾患の局部治療は、上皮組織に浸透することが可能でなければならない薬剤の局所適用によって起こりうる。隣接する上皮細胞は、密着結合によって封印され、大部分の溶解した分子が、上皮シートの一方から他方に通過するのを防止する(Albertsら, Molecular Biology of the Cell, 第2版)。密着結合は、単純な上皮および内皮において、傍細胞関門の形成および維持に、そして細胞極性に決定的である。これらはまた、血液脳関門にも重要な役割を果たし、該関門は、脳から出て行くかまたは脳に進入する物質を制御する。巨大分子量薬剤は、作用部位に到達するために、これらの組織関門を通過する必要がある。一般的に、抗体は、上皮細胞層の密着結合を横断するには大きすぎる。
局部適用は、特定の場所に現れ、そして全身治療を必要としない障害、例えば眼の疾患の治療に特に望ましい。
ブドウ膜炎は、100,000人あたり、30〜40人の有病率を持つ、ブドウ膜の急性または慢性炎症である(LightmanおよびKok 2002)。ブドウ膜炎は、ブドウ膜前部、中間部または後部の位置によって細分される。治療せずに放置すれば、前部ブドウ膜炎は後部ブドウ膜炎に発展し、その後、白内障、網膜炎およびさらに盲目などの合併症を伴う(KokおよびLightman 2004)。<65歳では、ブドウ膜炎の結果として法律上盲目となった個人が、糖尿病性網膜症と同じだけ多くいる(KokおよびLightman 2004)。前部ブドウ膜炎は、眼内炎症性疾患の最も一般的な型であり、症例の50%で、組織適合遺伝子座AアレルB27(HLA−B27)と関連する(Powerら 1998)。これらの患者のうち、約半分のみが、強直性脊椎炎または慢性炎症性腸疾患などのさらなる全身性疾患を患う(El−ShabrawiおよびHermann 2002)。ブドウ膜炎の治療は、主に、炎症プロセスを制御することを目指す(KokおよびLightman 2004)。現在、コルチコステロイドは、ブドウ膜炎の主力療法である(KokおよびLightman 2004)。重要なことに、局部および全身性コルチコステロイド治療は、緑内障および白内障のリスクを有意に増加させ、したがって、その反復使用は制限される(El−ShabrawiおよびHermann 2002)。メトトレキセート、シクロスポリンまたはアザチオプリンを含む他の治療は、効果を生じるために最低6週間の治療を必要とし、患者を、生活の質が非常に制約された状態で長期間放置する(El−ShabrawiおよびHermann
2002、Dickら 1997)。
ベーチェット病は、特発性、多臓器性、慢性および再発性疾患であり、古典的には一時的な眼性攻撃的炎症性発作、尿生殖器(orogenital)潰瘍および皮膚病変によって特徴付けられた。まれに、ベーチェット病の重症例では、さらに、関節、内耳前庭(audio−vestibular)、胸部、胃腸、心臓血管、腎またはCNS関与もまた観察されうる。眼は、ベーチェット病において、最も一般的に関与がある臓器であり、そして患者における慢性病的状態の主因である。眼性疾患は、片側性(20%)または両側性(80%)虹彩毛様体炎、前房蓄膿、あるいは慢性および再発経過をたどる汎ブドウ膜炎からなる。一般的に、初期の悪化は、より前部および片側性である傾向があり、一方、続く発作は、眼の硝子体腔および後部部分を伴い、両側性になる傾向がある(Evereklioglu 2005)。重度ブドウ膜炎は、日本人およびトルコ人患者などの流行地の患者の間でより一般的に観察され、この集団の70〜90%に影響を及ぼす(Oezen 1999; Tursenら、2003; Tugal−Tutkunら、2004; Yurdakulら、2004; Evereklioglu 2005)。視覚喪失リスクは、進行性に増加し、10年の時点では症例の1/4に達する。さらに、日本などの、該疾患の有病率および重症度が高い国では、法律上の盲目が有意であり、そして症例の50%以上で、最終的に結果として生じる(Boydら、2001; Evereklioglu 2005)。
ここで、説明が進むにつれてより容易に明らかになるであろう本発明のこれらの目的、およびさらにさらなる目的を遂行するため、前記抗体は、
(i)可溶性でそして安定なフレームワークのプールから、選択した抗原に結合する特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチするフレームワークを選択し、
(ii)前記フレームワークに、前記抗原に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかを行い、
(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして
(iv)生成した抗体を、抗原結合に関して試験する
工程を含む方法によって得られうるという特徴によって明示される。
−選択した1以上のCDRおよび/またはフレームワークの部位特異的またはランダム突然変異誘発によって、前記scFv抗体を突然変異させる工程。
いくつかの態様において、ポリペプチドは、少なくとも10E−6Mまたはそれより優れたKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有する。
Y;または
Z;または
Y−L−Z;または
Z−L−Y
式中、Yは[F1−CDR1−F2−CDR2−F3−CDR3 F4]であり、そしてZは[F5−CDR1−F6−CDR2−F7−CDR3 F8]であり;
Yのフレームワーク領域(F1−F4)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;Zのフレームワーク領域(F5−F6)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;YのCDR(CDR1−3)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;ZのCDR(CDR4−6)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;そしてLは柔軟なポリペプチドリンカーである
によって表される、抗原結合性ポリペプチドも提供する。いくつかの態様において、YおよびZは、本明細書に開示する任意の配列またはそのコンセンサスによって表される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
可溶性の抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、前記ポリペプチドが、8時間未満で、特に4時間未満で、損なわれていない(intact)角膜の少なくとも1つの層を通過する、前記組成物。
(項目2)
ポリペプチドが、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして組成物のpHが8未満である、項目1の組成物。
(項目3)
可溶性の抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該ポリペプチドが、8時間未満で、特に4時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして該組成物が8未満のpHを有する、前記組成物。
(項目4)
1以上の浸透増進剤をさらに含む、先行する項目のいずれか1項記載の組成物。
(項目5)
浸透増進剤が、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩、特にカプリン酸ナトリウムからなる群より選択される、項目
4の組成物。
(項目6)
損なわれていない角膜が、哺乳動物、特にヒト、ウサギまたはブタである、先行する請求項いずれか1項記載の組成物。
(項目7)
ポリペプチドが、少なくとも10E−6M以下のKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有する、先行する項目のいずれか1項記載の組成物。
(項目8)
抗原結合性ポリペプチドが、8時間未満で、損なわれていない角膜を通過する、先行する項目のいずれか1項記載の組成物。
(項目9)
2.5mg/mlより高い濃度で抗原結合性ポリペプチドを含み、該ポリペプチドが、8時間未満で、特に4時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である、先行する項目のいずれか記載の組成物。
(項目10)
抗原結合性ポリペプチドを含み、該抗原結合性ポリペプチドが、摂氏−80度から摂氏37度の温度で安定である、先行する項目のいずれか1項記載の組成物。
(項目11)
抗原結合性ポリペプチドが、少なくとも8週間安定である、項目10の組成物。
(項目12)
抗原結合性ポリペプチドが、摂氏4度で、少なくとも6週間安定である、項目10の
組成物。
(項目13)
抗原結合性ポリペプチドが、本明細書に開示する図のいずれかの中に実験的に示すような薬力学的または薬物動態学的特徴を有する、先行する項目のいずれか1項記載の組成物。
(項目14)
少なくとも10E−6M以下のKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有し、そして上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、抗原結合性ポリペプチド。
(項目15)
以下の基準:
a)ポリペプチドが、生理学的条件下で単量体型のままである
b)ポリペプチドが、8時間未満で、好ましくは4時間未満で、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である
c)ポリペプチドが、8時間未満で上皮密着結合を横断可能な抗原結合性ポリペプチドの通過動態に対応する1/2 Vmax値を有する
の1以上を満たす、項目14のポリペプチド。
(項目16)
療法で使用するのに適しているように、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である項目14または15記載のポリペプチドであって、可溶性が、標準的Caco−2上
皮細胞単層アッセイで測定され、そして/または標準的細胞内1ハイブリッドまたは2ハイブリッド可溶性アッセイによって予測され、そして/または標準的マウス十二指腸透過性アッセイにおいて測定される、前記ポリペプチド。
(項目17)
療法で使用するのに適しているように、標準的PEG沈殿アッセイまたは自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)アッセイによって予測されるとおりに、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、項目14または15記載のポリペプチド。
(項目18)
8時間未満で上皮密着結合を渡る抗原結合性ポリペプチドの通過に対応する1/2 Vmax値を有する抗原結合性ポリペプチドを同定するための方法であって
(i)誘導可能なレポーター遺伝子系を有する宿主細胞において、抗原結合性ポリペプチド候補を細胞内で発現させる工程であって、前記通過動態を有する抗原結合性ポリペプチドが存在する際に、レポーター遺伝子系が記録可能なシグナルを生じるものである当該工程、
(ii)そして記録可能なシグナルに関して前記細胞をスクリーニングする工程であって、前記シグナルの存在により候補ポリペプチドが前記通過動態を有する抗原結合性ポリペプチドであると同定する当該工程
を含む、前記方法。
(項目19)
項目18の方法によって同定される、抗原結合性ポリペプチド。
(項目20)
項目18の方法を実行するためのキット。
(項目21)
治療が達成されるように、本明細書の項目のいずれか1項記載の抗原結合性ポリペプ
チドの療法的有効量を局所投与することによって、眼の病気を持つ患者を治療する方法。
(項目22)
眼の病気がブドウ膜炎である、項目21の方法。
(項目23)
眼の病気が、加齢性黄斑変性症である、項目22の方法。
(項目24)
少なくとも1つの足場領域が隣接した少なくとも1つの抗原結合性モチーフを有するポリペプチド領域を含み、そして8時間未満で上皮密着結合を横断するのに十分な通過動態を有する、抗原結合性ポリペプチド。
(項目25)
2つの足場領域が隣接した1つの抗原結合性モチーフ、3つの足場領域が隣接した2つの抗原結合性モチーフ、4つの足場領域が隣接した3つの抗原結合性モチーフ、または4番目および5番目の足場領域の間に介在するリンカー領域を伴う8つの足場領域が隣接した6つの抗原結合性モチーフを含む、項目24のポリペプチド。
(項目26)
抗原結合性モチーフがCDRであり、そして足場領域が免疫グロブリンフレームワーク領域である、項目24または25のポリペプチド。
(項目27)
3つのCDRおよび4つの介在フレームワーク領域、または6つのCDRおよび8つのフレームワーク領域および1つの介在リンカー領域を含む、項目26のポリペプチド。
(項目28)
式:
Y;または
Z;または
Y−L−Z;または
Z−L−Y
式中、Yは[F1−CDR1−F2−CDR2−F3−CDR3 F4]であり、そしてZは[F5−CDR1−F6−CDR2−F7−CDR3 F8]であり;Yのフレームワーク領域(F1−F4)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;
Zのフレームワーク領域(F5−F6)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;
YのCDR(CDR1−3)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;
ZのCDR(CDR4−6)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;そして
Lは柔軟なポリペプチドリンカーである
によって表される、項目14〜17、19、24〜27のいずれか1項の抗原結合性ポ
リペプチド。
(項目29)
YおよびZが、本明細書に開示する任意の配列またはそのコンセンサスによって表される、項目28のポリペプチド。
(項目30)
少なくとも100ng/ml以上の眼内濃度を達成するように製剤化された、項目2
8〜29のいずれか1項記載の抗原結合性ポリペプチドを含む、組成物。
(項目31)
本明細書に開示するような細胞または動物モデル系に基づいて、100ng/ml以上の眼内濃度を生じる局所投与用に製剤化された、項目30記載の組成物。
(項目32)
高濃度で可溶性のままであるように製剤化された、項目30記載の組成物。
(項目33)
眼への局所適用用に製剤化され、そして浸透増進剤の非存在下で、角膜を通じて、そして眼内空間内に通過することが可能な、項目30〜32記載の製剤。
(項目34)
項目のいずれか1項のポリペプチドを用いて、眼の疾患または障害を治療するか、予
防するかまたは診断するための方法。
(項目35)
(1)配列番号1、2、3、4、5、6、および7からなる群より選択されるVLフレームワークに少なくとも約85%の類似性を持つ、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク;ならびに
(2)配列番号8、9、10および11を含む群より選択されるVHフレームワークに少なくとも約85%の類似性を持つ、重鎖可変ドメイン(VH)フレームワーク
の少なくとも1つを含む抗体。
(項目36)
配列番号2に少なくとも約85%の類似性を持つ軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク、および配列番号8に少なくとも約85%の類似性を持つ重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークを含む、項目35の抗体。
(項目37)
配列番号4に少なくとも約85%の類似性を持つ軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク、および配列番号10に少なくとも約85%の類似性を持つ重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークを含む、項目35の抗体。
(項目38)
配列番号7または配列番号8、あるいは配列番号7および配列番号8に、少なくとも約95%の配列類似性を含む、項目35〜36のいずれか1項記載の抗体。
(項目39)
抗原に対する親和性が、約100nM未満の解離定数KDによって特徴付けられる、請求項35〜38のいずれか1項記載の抗体。
(項目40)
ヒトTNFαに特異性を有する、項目35〜39のいずれか1項記載の抗体。
(項目41)
化学的に修飾されている、先行する項目のいずれか1項記載の抗体。
(項目42)
項目35〜40のいずれか1項記載の抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチ
ド分子。
(項目43)
項目42記載の単離されたポリヌクレオチド分子を含む、クローニングまたは発現ベ
クター。
(項目44)
項目43記載の発現ベクターで形質転換された適切な宿主細胞。
(項目45)
原核細胞または真核細胞、特に大腸菌(E. coli)、酵母、植物、昆虫または哺乳動物細胞である、項目43の宿主細胞。
(項目46)
項目35〜41のいずれか1項記載の抗体または抗体誘導体を産生するための方法で
あって、前記抗体分子の合成を可能にする条件下で、項目44または45の宿主細胞を
培養し、そして前記培養から前記抗体分子を回収する工程を含む、前記方法。
(項目47)
薬剤としての、項目35〜41のいずれか1項記載の抗体または抗体誘導体。
(項目48)
項目35〜41のいずれか1項記載の抗体を含む、医薬組成物。
(項目49)
薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤または賦形剤をさらに含む、項目48の医
薬組成物。
(項目50)
賦形剤が、塩化ベンザルコニウム、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80およびクロルヘキシジンを含む群より選択される、項目49の医薬組成物。
(項目51)
局部適用用の、特に局所適用用の組成物である、項目48〜50のいずれか1項記載
の医薬組成物。
(項目52)
抗体が>2mg/mlの濃度で存在する、項目48〜51のいずれか1項記載の医薬
組成物。
(項目53)
抗原−抗体相互作用部位への項目35〜41のいずれか1項記載の抗体の送達が、密
着結合を含む組織への浸透を必要とする、抗原関連疾患の治療のための方法。
(項目54)
薬剤としてのまたは診断用の、項目35〜41のいずれか1項記載の抗体の使用。
(項目55)
抗原に特異的に結合するscFv抗体を同定するための方法であって:
(i)可溶性でそして安定な抗体フレームワークのプールから、抗原に対して特定の結合特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチする、可溶性でそして安定なフレームワークを選択し、
(ii)前記の可溶性でそして安定なフレームワークに、前記抗原に特異的に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかで、scFv抗体を生成し、(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして生成した抗体を、抗原結合に関して試験し、そして
(iv)安定で、可溶性で、そして抗原に特異的に結合する、scFVを選択する
工程を含む、前記方法。
(項目56)
工程(ii)および(iii)の間に
−選択した1以上のCDRおよび/またはフレームワークの部位特異的またはランダム突然変異誘発によって、前記scFv抗体を突然変異させる
工程をさらに含む、項目55の方法。
(項目57)
酵母系において選択を行う、項目56の方法。
(項目58)
PBS中、37℃で、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間安定である、項目56〜57のいずれか1項記載の方法。
(項目59)
生理学的条件下で単量体のままである、項目56〜57のいずれか1項記載の方法。
(項目60)
抗体が、以下の基準:
a)>1mg/mlの濃度で、PBS中、周囲温度で可溶性である;
b)塩酸グアニジン滴定において、少なくとも1.5Mの転移中点を示す;
c)>1mg/mlの濃度で、PBS中の生理学的条件下で単量体のままである
の1以上を満たす、先行する項目のいずれか1項記載の方法。
(項目61)
抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該ポリペプチドが、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして該組成物が8未満のpHを有する、前記組成物。
(項目62)
可溶性抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該抗原結合性ポリペプチドが、8時間未満で、損なわれていない角膜の1以上の層を通過する、前記組成物。
(項目63)
療法で使用するのに適しているように、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチドであって、可溶性が、標準的Caco−2上皮細胞単層アッセイで測定され、そして/または標準的細胞内1ハイブリッドまたは2ハイブリッド可溶性アッセイによって予測され、そして/または標準的マウス十二指腸透過性アッセイにおいて測定される、前記ポリペプチド。
(項目64)
療法で使用するのに適しているように、標準的PEG沈殿アッセイまたは自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)アッセイによって予測されるとおりに、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、抗原結合性ポリペプチド。
(項目65)
眼への局所適用用に製剤化され、そして浸透増進剤の非存在下で、角膜を通じて、そして眼内空間内に通過することが可能な、抗原結合性ポリペプチドを含む組成物。
明細書および請求項の明らかな理解を提供するため、以下の定義を好適に提供する。
定義
用語「抗体」は、全抗体および任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」、「抗原結合性ポリペプチド」、または「免疫結合剤」)またはその一本鎖を指す。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された、少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合性部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、VHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、VLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域をさらに、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域に細分してもよい。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一構成要素(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介しうる。
Sci. USA 85:5879−5883を参照されたい)。当業者に知られる慣用的技術を用いてこれらの抗体断片を得て、そして損なわれていない抗体と同じ方式で、有用性に関して断片をスクリーニングする。
(ii)前記フレームワークに、前記抗原に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかを行い、
(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして
(iv)生成した抗体を、抗原結合に関して試験する
工程を含む方法によって得られうる点で特徴付けられる。
一般的に、本発明の抗体は、VLおよび/またはVHドメインを含むフレームワークを含み、前記フレームワークは、酵母細胞において、高い細胞内安定性および可溶性に関して、抗原非異存性の方法によって、天然ヒト抗体レパートリーの少なくとも一部から選択される。前記方法はまた、抗体フレームワークの「品質管理」スクリーニングとして知られ、そして高い細胞内安定性および可溶性によって特徴付けられる、特に安定でそして可溶性である抗体フレームワークの選択を生じている。例えば、抗原特異性に関する、第二の、酵母に基づくスクリーニング系において、これらのフレームワークを用いてもよい。この場合、特に安定でそして可溶性である抗体のCDRをランダム化して、そして生じた抗体を、ありうる最適の抗原認識に関してスクリーニングしてもよい。あるいは、選択した抗原に強い結合親和性を持つ抗体の既知の抗体CDRを、前記の特に安定でそして可溶性であるフレームワーク上に移植してもよい。場合によって、選択したCDR(単数または複数)および/またはフレームワークを突然変異誘発し、「品質管理系」(WO0148017、Auf der Maurら 2004)において、改善されたクローンを選択することによって、前記抗体をさらに改善してしてもよく、すなわち、1以上の選択したCDRおよび/またはフレームワークの部位特異的またはランダム突然変異誘発によって、前記scFv抗体を突然変異させ、そして同じかまたはよりストリンジェントな条件下で、安定でそして可溶性である抗体を選択することによって、前記抗体をさらに改善してもよい。選択を、酵母品質管理系において、in vivoで行ってもよい。
−酵母相互作用アッセイにおいて測定した際、還元条件下で安定であり、該アッセイにおいて、前記scFvに融合した選択可能マーカータンパク質の活性は、細胞内環境における前記scFvの高い安定性および可溶性と相関する。前記酵母相互作用アッセイ、いわゆる「品質管理」は、詳細に記載された(Auf der Maurら(2001); Auf der Maurら、2004;該参考文献はその全体が本明細書に援用される)。
−PBS中、20℃〜40℃、好ましくは37℃で、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間、最も好ましくは少なくとも6ヶ月間安定である。
−生理学的条件下で、単量体のままである。
−>約1mg/ml、好ましくは>約4mg/ml、より好ましくは>約10mg/ml、さらにより好ましくは>約25mg/ml、そして最も好ましくは>約50mg/mlの濃度で、PBS中、周囲温度で可溶性である。
−塩酸グアニジン滴定において、少なくとも1.5M、好ましくは少なくとも1.75M、より好ましくは少なくとも1.9M、最も好ましくは少なくとも2Mの転移中点を示し、すなわち変性に耐性である。
A.組成および投与
大部分の場合、本発明の抗体は、医薬組成物中で用いられ、前記医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる化合物を含む。好ましくは、これは、薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤または賦形剤と組み合わせられるであろう。賦形剤は、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、密着結合開放ペプチドおよびペプチド誘導体、密着結合開放タンパク質およびタンパク質誘導体を含む群より選択されてもよい。好ましくは、賦形剤は、塩化ベンザルコニウム、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、およびクロルヘキシジンを含む群より選択される。カプリン酸塩もまた使用可能である。こうした物質は、浸透増進剤として作用しうる。
本発明における使用のための局所眼性薬剤送達系の限定されない例には、浸透増進剤、角膜コラーゲンシールド、眼性イオントフォレーシス、マイクロ粒子またはナノ粒子、眼性挿入物、粘膜接着性ポリマー、in situゲル化系、デンドリマー、脂質エマルジョン、および眼性挿入物が含まれる(Sultanaら(2007)Future Drugs, 2(2), 309−323(2007)iを参照されたい)。
本発明の医薬組成物には、浸透増進剤が含まれてもよい。浸透増進剤の例は当該技術分野に周知であり、そしてこれには、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、シクロデキストリン、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、メタゾールアミド、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、Pz−ペプチド、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩が含まれてもよい(Sultanaら(2007)Future Drugs, 2(2), 309−323(2007)を参照されたい)。別の態様において、浸透増進剤は、カプリン酸ナトリウムである。さらに別の態様において、浸透増進剤には、コロイド系、ポリアクリレートおよび生体接着性ポリマーが含まれる。U.S.S.N. 60/___,___(2007年7月10日出願の「Improved penetration Enhancers for the Delivery of Therapeutic Proteins」と題される代理人整理番号第ES5−016−1号)もまた参照されたい。
本発明の抗体はまた、角膜コラーゲンシールドを用いても投与可能である。いくつかの態様において、12、24および72時間の溶解時間のコラーゲンシールドを用いてもよい。他の態様において、コラーゲンシールドを、ガチフロキサシンおよび/またはモキシフロキサシンの溶液中にあらかじめ浸しておく。
本発明の抗体はまた、眼性イオントフォレーシスによっても送達可能である。1つの態様において、経角膜イオントフォレーシスによって、眼の前部に抗体を送達してもよい。別の態様において、高くそして持続される濃度の本発明の抗体を、経強膜イオントフォレーシスによって、硝子体および網膜に送達してもよい。所望の期間、イオントフォレーシスを適用する。いくつかの態様において、約1〜約4分間、イオントフォレーシスを適用する。他の態様において、1分間未満、イオントフォレーシスを適用する。別の態様において、4分間より長く、イオントフォレーシスを適用する。
本発明の抗体はまた、マイクロ粒子またはナノ粒子送達系を用いても送達可能である。いくつかの態様において、マイクロ粒子はマイクロカプセルである。他の態様において、マイクロ粒子はマイクロスフェアである。さらなる態様において、マイクロ粒子は、浸食性、生体分解性、非浸食性、またはイオン交換樹脂である、ポリマーを含む。別の態様において、マイクロ粒子送達系は、ベタキソロール0.25%を含有するBetoptic
S(登録商標)である。
本発明の抗体はまた、眼性挿入物を用いても投与可能である。いくつかの態様において、眼性挿入物は、不溶性、可溶性または生体浸食性挿入物である。不溶性挿入物には、分散系、浸透系および親水性コンタクトレンズが含まれる。可溶性挿入物は、天然、合成、または半合成ポリマーで構成されてもよい。生体浸食性挿入物は、生体浸食性ポリマーで構成されてもよい。
本発明の医薬組成物には、粘膜接着性ポリマーが含まれてもよい。粘膜接着性ポリマーの例は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、キトサン(CS)、Ch−HCLおよびN−カルボキシメチルキトサン(CMCh)、N−トリメチルキトサン(TMC)ポリマー、ピロカルピン装填CS/Carbopol(登録商標)、ポリアクリル酸(PAA)、多糖、キシログルカン、タマリンド種子多糖(TSP)、およびチオール化ポリマーまたはチオマーが含まれる。
本発明の医薬組成物には、in situゲル化系が含まれてもよい。in situゲル化系の例は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、pH仲介性in situゲル化系、温度仲介性in situゲル化系およびイオン仲介性in situゲル化系が含まれる。pH仲介性in situゲル化系には、例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)およびCarbopol(登録商標)などのポリマーが含まれてもよい。温度仲介性in situゲル化系には、例えば、プルロニクス、テトラオニクスおよびエチルヒドロキシエチルセルロースが含まれてもよい。in situゲル化系にはまた、Gelrite(登録商標)(脱アセチル化ジェランガム(DCG))、アルギネート、例えばアルギネート−ポリ(L−リジン)、マレイン酸チモロール点眼剤、例えばTimoptol XEおよびLizmon TG(登録商標)、およびその組み合わせが含まれてもよい。
本発明の医薬組成物には、デンドリマーが含まれてもよい。デンドリマーの例は当該技術分野に周知であり、そしてこれにはTMポリアミドアミン(PAMAM)が含まれる。
別の態様において、製剤は、当業者に知られるような、遅延、延長、または時間放出製剤、マイクロスフェア、マイクロカプセル、リポソームなどのキャリアー製剤であってもよい。上述の送達系はいずれも、局所、眼内、結膜下に、または移植によって投与されて、長期にわたる剤の持続放出を生じることも可能である。製剤は、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ無水物、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリアミノ酸、ポリエチレンオキシド、アクリル末端ポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)などの生体適合性ポリマー、および各々、その全体が本明細書に明確に援用される、米国特許第6,667,371号;第6,613,355号;第6,596,296号;第6,413,536号;第5,968,543号;第4,079,038号;第4,093,709号;第4,131,648号;第4,138,344号;第4,180,646号;第4,304,767号;第4,946,931号に開示されるものなどの他のポリマーの、マイクロもしくはマクロカプセル、またはマトリックス、あるいはマイクロスフェアまたはリポソームとして製剤化されてもよい脂質などのビヒクルの形であってもよい。微視的または巨視的製剤を、局所的にまたは針を通じて投与してもよいし、あるいは移植してもよい。ビヒクルの多様な配合を通じて、遅延または延長放出特性を提供してもよい(被覆または非被覆マイクロスフェア、被覆または非被覆カプセル、脂質またはポリマー構成要素、単層または多層構造、および上記の組み合わせ等)。マイクロスフェア、マイクロカプセル、リポソームなど、およびその眼性移植物の製剤および装填が当業者に知られ、例えば、Vitreoretinal Surgical Techniques, Peymanら監修(Martin Dunitz, London 2001, 第45章); Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, Wise監修(Marcel Dekker, New York 2000)に開示される、サイトメガロウイルス網膜炎を治療するためのガンシクロビル持続放出移植物の使用があり、該文献の関連セクションは、その全体が本明細書に援用される。例えば、硝子体腔への移植のため毛様体扁平部を通じて、持続放出眼内移植物を挿入してもよい。眼内注射は硝子体内(硝子体内)、または結膜の下(結膜下)、または眼の後ろ(眼球後)、またはテノン嚢の下(テノン嚢下)であってもよく、そしてデポ型であってもよい。レンズ材料内に組成物が取り込まれた(例えば製造時に、またはレンズ溶液中に含有させて)眼の外表面に適用したコンタクトレンズを介して組成物を投与してもよい。眼に移植された眼内レンズ(IOL)を介して組成物を投与してもよい。移植可能レンズには、限定されるわけではないが、Bausch and Lomb(ニューヨーク州ロチェスター)、Alcon(テキサス州フォートワース)、Allergan(カリフォルニア州アービン)、およびAdvanced Medical Optics(カリフォルニア州サンタアナ)によって製造されたものを含む、白内障手術後、患者の罹患水晶体の代わりに用いられる、いかなるIOLも含まれる。Degim, I.TおよびCelebi, N.(2007), Current Pharmaceutical Design, 13, 99−117]もまた参照されたい。レンズを水晶体嚢内に移植すると、組成物が、所望の効果を眼に提供する。移植物(レンズおよび他のタイプ)およびコンタクトレンズ投与に適した濃度は、当業者に認識されるであろうように、多様でありうる。例えば、移植物を多量の剤とともに装填するが、上記範囲内の必要な濃度が持続的に放出されるように製剤化するかまたは制御してもよい(例えば遅延放出製剤)。
肺における治療の場合、吸入を用いて、抗体を運び、肺上皮に本発明の抗体を適用しなければならない。
本発明の配列は、以下の通りである:
実施例全体で、別に記載しない限り、以下の材料および方法を用いる。
材料および方法
一般的に、本発明の実施は、別に示さない限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば免疫グロブリン技術)および畜産の慣用的な技術を使用する。例えば、Sambrook, FritschおよびManiatis, Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology), 510, Paul, S., Humana Pr(1996); Antibody Engineering: A Practical Approach(Practical Approach Series, 169), McCafferty監修, Irl Pr(1996); Antibodies: A Laboratory Manual, Harlowら, C.S.H.L. Press, Pub.(1999); Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら監修, John Wiley & Sons(1992)を参照されたい。
封入体として発現させ、その後、再フォールディングおよびクロマトグラフィー工程を行って、scFv抗体を産生した。3つの一本鎖抗体を産生した。これには、非常に可溶性であり、特に安定でそして単量体であるという基準をおそらく満たさない、2つの慣用的scFvが含まれる。このうち一方は、TB−wt(配列番号14)であり、ネズミ抗TNFαモノクローナル抗体Di62(Doringら、1994)の天然VLおよびVH配列を連結することによって構築された。もう一方のものは、ルセンティス−scFvであり、VEGF特異的Fab断片ラニビズマブのVLおよびVH配列を連結することによって構築された(配列番号15)。ESBA105は、Di62のCDRを所持し、そしてTNFαに対して、ナノモル範囲のKd値を示す、scFvである。いわゆる品質管理系(Auf der Maurら、2004)によって選択したscFvフレームワークを使用することによって、ESBA105の可溶性、安定性、および単量体性の振る舞いを最適化した。ESBA105のアミノ酸配列を配列番号13に開示する。
ESBA105を発現するためのプラスミドpGMP002の構築:
ESBA105コード配列を、pET−24d(+)(Novagen、カタログ番号69752−3)のNcoI−HindIII部位内に連結した。続いて、Bpu11021およびNotI消化によって生じた粘着端をT4ポリメラーゼ反応によって埋めた後、平滑端連結によって、生じた構築物のBpu11021−NotI断片を除去して、pGMP003を生じた。pET−24d(+)から、Bpu11021−NotIを直接除去することによって、pGMP002を産生した。
ESBA105を発現するため、大腸菌BL21(DE3)(Novagen)を発現プラスミドpGMP002で形質転換した。1%グルコース、1ml/lの微量元素溶液(WangおよびLee, Biotechnol. Bioeng 58:325−328)および50μg/mlカナマイシンを含有するM9培地(Sambrookら, Molecular Cloning, A laboratory manual)中で培養した単一コロニーから、グリセロールストック培養物を調製した。細胞を37℃で一晩増殖させ、グリセロールを20%まで添加して、そして1mlアリコットをグリセロールストックとして−80℃で保存した。
封入体を調製するため、1kgの湿細胞ペーストを、5lのTBS緩衝液(10mM Tris、150mM NaCl、pH7.3)中に再懸濁した。1gの固形リゾチームを添加し、そして細胞懸濁物を30〜60分間インキュベーションした。細胞を破壊するため、懸濁物を1,000バールの高圧ホモジナイザー(Niro Soavi, Panda 2K)に2回通過させた。破壊された細胞を4,600rpmで1時間遠心して、そして生じた封入体を、0.5% LDAO(N−,N−ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、Fluka)を含有する2lのTBS緩衝液中に再懸濁した。洗浄上清中に、有意な残渣タンパク質が検出されなくなるまで、封入体を繰り返して洗浄した。最後に、LDAOを含まないTBS緩衝液で封入体を2回洗浄した。
pH8.0で6Mグアニジン−HCl、100mM Tris、1mM EDTAおよび20mM DTTを含有する10倍体積の可溶化緩衝液中で封入体を可溶化し、そして室温で一晩インキュベーションした。次いで、pH8.5で3M尿素、100mM Tris、ならびに各2mMのシステインおよびシスチンを含有する再フォールディング緩衝液中に、1:50希釈することによって、可溶化タンパク質を再フォールディングした。再フォールディングを室温で24時間続けた。再フォールディング後、深層ろ過によって沈殿物を除去し、そして再フォールディング溶液を最初の体積の50%に濃縮した。次いで、濃縮した再フォールディング溶液を4倍体積のPBS緩衝液(50mMリン酸Na、150mM NaCl、pH6.5)に対して透析し、そしておよそ1mg/mlのタンパク質濃度になるまでさらに濃縮した。
ESBA105を2つのクロマトグラフィー工程で精製した:ゲルろ過および陽イオン交換クロマトグラフィー。AKTA精製系(GE Healthcare)によって、すべてのクロマトグラフィー工程を行った。
「薬剤らしさ(drug−likeness)」を調べるため、ESBA105およびその誘導体のいくつかを、生物物理的に性質決定した。性質決定には、(1)可溶性パラメーター(PEG沈殿およびB22値;B22値は、タンパク質自己相互作用の測定値であり、この値は、タンパク質結晶成長、可溶化および凝集に重要である。Valenteら, Biophys J. 2005 Dec;89(6):4211−8. Epub 2005 Sep 30を参照されたい)、(2)pI値、(3)熱およびカオトロピック変性、ならびに(4)オリゴマー分画と比較した際の単量体分画の定量化の決定が伴った。項目1〜3の結果を表1に要約し、該表にはまた、それぞれ、L929およびKYM−1アッセイによって決定した際の相対強度値も含まれる。
経時的なscFvの安定性は、薬剤との関連で、重要な特徴である。図4は、異なる温度(−80℃:レーン1、3、5、7、9、および11)または40℃:レーン2、4、6、8、10および12)および濃度(20mg/ml:レーン1、2、7および8; 10mg/ml;レーン3、4、9および10; 1mg/ml:レーン5、6、11および12)で2週間保存した後、SDS−PAGEによって分離し、そしてクーマシーで染色した、ESBA105 scFv(レーン1〜6)およびQC15.2 scFv(レーン7〜12)の分析を示す。抗体は、温度全範囲に渡って、そして試験したすべての濃度で安定のままであり、そして分解または凝集の徴候はまったく見られなかった。
ex vivo設定において、多様な条件下で、ウサギの眼全体の異なる区画内に浸透したESBA105の量を試験した。これらの一連の実験に関して、表面にくぼみを有するインキュベーション試験プレート上に、ウサギの眼を置いた。くぼみはESBA105試験溶液を含有し、そして角膜が試験溶液と接触するように、試験プレート上にウサギの眼を置いた。37℃で4時間インキュベーションした後、ESBA105含量に関して、異なる眼の区画を分析した。この分析のため、シリンジを用いて、目的の区画からプローブを除去して(図6を参照されたい)、そしてELISAによって、プローブのESBA105濃度を決定した。
実施例5:ESBA105による、Caco−2細胞単層への浸透
ヒト結腸腺癌(Caco−2)細胞を、24トランスウェルプレートの透過可能支持体上に植え付け、そして5%CO2大気中、37℃で21日間培養して、密着単層の形成を可能にした。透過性アッセイを行う前に、各ウェルにおいて、経上皮電気抵抗を測定して、単層の完全性を検証した。次いで、Caco−2単層を生理食塩水溶液(HBSS)で3回洗浄して、そしてカプリン酸塩を含むまたは含まない1μMのESBA105のいずれかを含有する混合物、あるいはアッセイ培地のみを、対照としてトランスウェルの上部区画に添加した。明示した時点後、下部区画の内容物を収集し、そして新鮮なアッセイ培地と交換した。続いて、収集した試料を、定量的ELISAによって分析して、Caco−2上皮単層に浸透したESBA105の量を決定した(図9)。
動物を安楽死させた直後に、およそ5cmのマウス十二指腸を切除し、そして酸素飽和リンガー−クレブス緩衝液中でインキュベーションし、そしてリンガー−クレブス緩衝液で3回フラッシュした。3.5cmのセクションを、外科絹糸で結紮し、そして1mg/mlの各抗体形式(インフリキシマブおよびESBA105)を含有する200mcl抗体混合物で満たした。反転嚢区画のおよそ1cm遠位で、第二の結紮を加えて、区画が堅固であることを確実にした。最初の結紮のみが緩衝液と接触するように、10mlの酸素飽和リンガー−クレブス緩衝液10mlを含有するビーカーガラス内に、反転嚢を入れた。プロテアーゼ阻害剤をこのレセプター区画に添加して、抗体の分解を防止した。腸組織に浸透した各抗体の量を決定するため、明示した時点後、レセプター区画から200mclプローブを採取し、そして続いて定量的ELISAによって分析した。
ウサギの眼における、in vivoでの可溶性抗原結合性ポリペプチド、ESBA105の局所適用の薬力学および薬物動態学を研究した。4つの異なる製剤を調製した。第一の製剤(本明細書において、「B15」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸緩衝液中の9.6mg/mlのESBA105で構成された。第二の製剤(本明細書において、「B16」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸ナトリウム緩衝液中の10.3mg/mlのESBA105および0.01%(w/v)クロルヘキシジンで構成された。第一の対照(本明細書において、「B15−0」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸ナトリウム緩衝液で構成された。第二の対照(本明細書において、「B16−0」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸ナトリウム緩衝液中の0.01%(w/v)クロルヘキシジンで構成された。すべての製剤を使用前に滅菌し、そして4℃で保存した。本明細書において、「OTT」は、未治療を示す。
用量反応を研究するため、図17に示すようにESBA105を投与した。比較として、図17に示すように、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)を投与した。この実験のため、TNFαをESBA105またはインフリキシマブの3つの異なる投薬量(156μg、45μg、または11μg)とともに投与した。対照として、PBS、およびTNFのみ(10μg i.a.)、またはscFvのみを用いた。結果を図17に示す。
局所投与の1日の間の最大全身曝露および局部薬剤レベルを決定するため、10時間の期間に渡って20分ごとに1滴を投与した。ELISAによって房水、硝子体および血清中の薬剤レベルを測定した。ESBA105をPBS、pH6.5中、10mg/mlとして処方した。各滴に関して、30mclを瞳孔の最上部に適用し、そして次いでまぶたを圧迫して過剰な液体を取り除いた。結果を図18および表2に示す。
長期局所低頻度治療中の最大全身曝露および局部薬剤レベルを決定するため、最大6日間、1滴を1日5回、2匹のウサギ(4つの眼)に適用した。各滴に関して、30mclのESBA105を眼の下部の嚢内に適用し(主に強膜に薬剤を提示する)、30mclすべてが眼球表面上に残った。
表3:投与第6日後に見られる中央値scFv ESBA105濃度
本発明は、多様な態様および実施例と組み合わせて記載されているが、本解説がこうした態様または実施例に限定されるとは意図されない。逆に、当業者に認識されるであろうように、本発明は、多様な代替物、修飾、および同等物を含む。
Claims (1)
- 上皮および/または内皮層を通過するscFv抗体など。
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