JP2017206627A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法、ならびに成形体 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法、ならびに成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた流動性と、成形後の優れた耐衝撃性を併せ持つ芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の提供。【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)60〜99質量%、及びマクロモノマー共重合体(B)1〜40質量%を含み、マクロモノマー共重合体(B)が、式(1)で表されるマクロモノマーに由来する単位と、マクロモノマーと共重合可能なコモノマーに由来する単位とを有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。(R及びR1〜Rnは夫々独立にH、アルキル、シクロアルキル、アリール又は複素環;X1〜Xnは夫々独立にH又メチル;Zは末端基;nは2〜10000の整数)【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネートとマクロモノマー共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、芳香族ポリカーボネートとマクロモノマー共重合体を含み、流動性、耐衝撃性に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、およびその製造方法、ならびに前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形体に関する。
衝撃特性を改良する目的で衝撃改良剤により強化された熱可塑性樹脂は機械的強度、加工性に優れているため広く利用されている。特に、ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、寸法安定性および難燃性といったその優れた特性から機械部品、自動車部品、電気・電子部品、事務機器部品などの多くの用途に用いられている。近年、スマートフォンやタブレット型端末といった携帯情報端末の普及により、従来の据え置き型の情報端末に比べて様々な環境下での機械的強度、特に耐衝撃性が必要となってきている。
特許文献1では、芳香族ポリカーボネート系樹脂の低温衝撃強さを改善するために、特定のアクリル系弾性共重合体およびポリオレフィン系樹脂を配合したポリカーボネート樹脂組成物が報告されている。
特許文献2には、フィルムの成形に好適な材料としてマクロモノマー共重合体が記載されているが、耐衝撃性に関する記載は無い。
特開平4−249576号公報 特開2015−157903号公報
特許文献1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物は流動性が不充分であり、材料の流動性と、成形後の耐衝撃性との両立は容易ではない。
本発明の目的は、優れた流動性と、成形後の優れた耐衝撃性を併せ持つ芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法、ならびに該樹脂組成物からなる成形体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、芳香族ポリカーボネート樹脂と特定のマクロモノマー共重合体を配合することにより、良好な流動性を持ち、かつ成形後の耐衝撃性が良好なポリカーボネート樹脂組成物を見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の態様を有する。
[1] 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)60〜99質量%、およびマクロモノマー共重合体(B)1〜40質量%を含み、前記マクロモノマー共重合体(B)が、下記式(1)で表されるマクロモノマー(B1)に由来する単位と、前記マクロモノマー(B1)と共重合可能なコモノマー(B2)に由来する単位とを有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 2017206627
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
[2] 前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)75〜85質量%、および前記マクロモノマー共重合体(B)15〜25質量%を含む、[1]の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[3] 前記コモノマー(B2)が、アルキルメタ(アクリレート)を含む、[1]または[2]の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]のいずれかの芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
[5] 車両用部材である、[4]の成形体。
[6] 上記式(1)で表されるマクロモノマー(B1)と、前記マクロモノマー(B1)と共重合可能なコモノマー(B2)からなる重合性成分(X)を重合反応させてマクロモノマー共重合体(B)を得る工程と前記マクロモノマー共重合体(B)1〜40質量%と、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)60〜99質量%を含む組成物を調製する工程を有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、流動性が良好で、且つ成形後の耐衝撃性も良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれからなる成形体が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施できる。
なお、以下において重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」という。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とマクロモノマー共重合体(B)と、必要に応じて添加される添加剤(E)を混合することで得られる。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)(以下、(A)成分ともいう。)は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも靭性に優れる点からビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が特に好ましく、汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の二価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トを(A)成分として使用することが可能である。
例えば、二価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)からなる群(P)から選ばれる1種以上を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これら群(P)から選ばれる二価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
特に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、二価フェノールと、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物の溶融張力を増加させ、かかる特性に基づいて押出成形、発泡成形およびブロー成形における成形加工性を改善できる。結果として寸法精度により優れた、これらの成形法による成形体が得られる。
かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、および4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。その他の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、並びにトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が例示される。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、二価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03〜1モル%、より好ましくは0.07〜0.7モル%、特に好ましくは0.1〜0.4モル%である。
また、かかる分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
一方、脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましく、その具体例としては、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールが好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。さらに、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、二価フェノール成分の異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等を2種以上混合したものであってもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合したものを使用することもできる。
界面重縮合法による重合反応は、通常、二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。通常、反応温度は0〜40℃、反応時間は10分〜5時間が好ましく、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等が好ましいが、この他にも、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、トリアコンチルフェノール等を挙げることができる。これらの末端停止剤は単独で使用しても2種以上併用してもよい。
溶融エステル交換法による反応は、二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、通常、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコール又はフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコール又はフェノールの沸点等により異なるが、ほぼ120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコール又はフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
反応には重合触媒を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;等の触媒を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等の通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。これらの触媒は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合触媒は、通常、原料の二価フェノール1モルに対し1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で使用される。
溶融エステル交換法では、得られる重合体中のフェノール性末端基を減少する目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることもできる。また、溶融エステル交換法では、触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の使用量は、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合が好ましい。重合後の芳香族ポリカーボネートに対しては好ましくは0.01〜500ppm、より好ましくは0.01〜300ppm、さらに好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用される。好適な失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩等が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては防音壁、ガラス窓、透光屋根材、および自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂などを含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体などは上記の粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため好ましい態様として挙げられる。尚、上記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料である。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、好ましくは10,000〜50,000、より好ましくは14,000〜30,000、更に好ましくは18,000〜25,000である。18,000〜25,000の範囲においては、特に良好な耐衝撃性と流動性との両立に優れる。最も好適には、21,000〜24,000である。尚、かかる粘度平均分子量は(A)成分全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求める。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)に対して、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の割合は、60〜99質量%が好ましく、70〜95質量%がさらに好ましく、75〜90質量%が特に好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の割合が上記の範囲内であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が持つ優れた耐衝撃性を発揮できる。
[マクロモノマー共重合体(B)]
本発明に係るマクロモノマー共重合体(B)は、下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(B1)と、マクロモノマー(B1)と共重合可能な他の重合性単量体単位であるコモノマー(B2)からなる重合性成分(X)を共重合して得られる。
Figure 2017206627
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
[マクロモノマー(B1)]
マクロモノマー(B1)は、ポリ(メタ)アクリレートセグメントの片末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基を持つ。ここで、マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持ったポリマーであり、別名マクロマーとも呼ばれる。
[R・R〜R
一般式(1)において、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基は、置換基を有することができる。
R及びR〜Rのアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基が挙げられる。これらの中で、入手しやすさから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びt−ブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R及びR〜Rのシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、アダマンチル基、等が挙げられる。入手しやすさから、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びアダマンチル基が好ましい。
R及びR〜Rのアリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
R及びR〜Rの複素環基としては、例えば、炭素数5〜18の複素環基が挙げられる。具体例としては、例えば、γ−ラクトン基、ε−カプロラクトン基、モルフォリン基、等が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としては、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(−COOR’)、カルバモイル基(−CONR’R’’)、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基(−NR’R’’)、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(−OR’)、及び親水性もしくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。なお、R’又はR’’の例としてはは、それぞれ独立して、Rと同様の基(ただし複素環基を除く。)が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのカルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル基及びN,N−ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアミド基としては、例えば、ジメチルアミド基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としての親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
R及びR〜Rは、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル基がより好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はi−プロピル基が好ましく、入手のしやすさの観点から、メチル基がより好ましい。
[X〜X
一般式(1)において、X〜Xは、それぞれ水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましい。さらに、マクロモノマー(B1)の合成し易さの観点から、X〜Xの半数以上がメチル基であることが好ましい。
[Z]
一般式(1)において、Zは、マクロモノマー(B1)の末端基である。マクロモノマー(B1)の末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
マクロモノマー(B1)の数平均分子量(Mn)は、マクロモノマー共重合体(B)を含有する成形材料から得られる成形体の機械物性及びミクロ相分離構造制御の点で、1,000以上1,000,000以下が好ましい。マクロモノマー(B1)のMnの下限値は、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、マクロモノマー(B1)のMnの上限値は、500,000以下が好ましく、300,000以下がさらに好ましい。Mnが下限値以上であればマクロモノマー共重合体(B)が含有するマクロモノマー(B1)由来のセグメントの重量比を大きくすることができ、ミクロ相分離構造制御が容易になると共に、マクロモノマー共重合体(B)の機械物性が良好になる。Mnが上限値以下であればマクロモノマー共重合体(B)が含有するコモノマー(B2)由来のセグメントの重量比を大きくすることができ、ミクロ相分離構造制御が容易になると共にマクロモノマー共重合体(B)を合成する際の混合物粘度が取扱い容易な範囲内となる。
マクロモノマー(B1)の数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の検量線から算出した値を意味する。
[マクロモノマー(B1)の原料モノマー]
マクロモノマー(B1)を得るための原料モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
これらの中で、モノマーの入手のし易さの点で、メタクリレートが好ましい。
メタクリレートとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び4−ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートがより好ましい。
また、マクロモノマー(B1)を得るための原料モノマーとしては、生成物であるマクロモノマー共重合体(B)及びこれを含有する成形体の耐熱性の点から、上記のメタクリレート又はアクリレートを含有するモノマー組成物が好ましい。
アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートが挙げられる。これらの中で、入手しやすさの点で、メチルアクリレートが好ましい。
マクロモノマー(B1)を得るためのモノマー組成物中のメタクリレートの含有量としては、生成物であるマクロモノマー共重合体(A)及びこれを含有する成形体の耐熱性の点から、80質量%以上100質量%以下が好ましい。メタクリレートの含有量は、82質量%以上99質量%以下がより好ましく、84質量%以上98質量%以下がさらに好ましい。マクロモノマー(B1)を得るためのモノマー組成物中のアクリレートの含有量としては、0質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上18質量%以下がより好ましく、2質量%以上16質量%以下がさらに好ましい。
[マクロモノマー(B1)の製造方法]
マクロモノマー(B1)は、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許第4680352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報、米国特許第5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(B1)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数が高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(B1)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。これらの中で、マクロモノマー(B1)の回収工程の簡略化の点から水系分散重合法が好ましい。また、溶液重合法であれば、マクロモノマー(B1)を回収せずにそのままコモノマー(B2)及び熱重合開始剤を追添加してマクロモノマー共重合体(B)を重合反応によって得ることも可能である。
本発明において使用されるコバルト連鎖移動剤としては、式(2)に示されるコバルト連鎖移動剤が使用でき、例えば、特許第3587530号公報、特開平6−23209号公報、特開平7−35411号公報、米国特許第45269945号明細書、同第4694054号明細書、同第4834326号明細書、同第4886861号明細書、同第5324879号明細書、国際公開第95/17435号、特表平9−510499号公報等に記載されているものを使用することができる。
Figure 2017206627
[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基;Xは、それぞれ独立して、F原子、Cl原子、Br原子、OH基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基及びアリール基である。]
コバルト連鎖移動剤としては、具体的には、ビス(ボロンジフルオロジメチルジオキシイミノシクロヘキサン)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビシナルイミノヒドロキシイミノ化合物のコバルト(II)錯体、テトラアザテトラアルキルシクロテトラデカテトラエンのコバルト(II)錯体、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミノコバルト(II)錯体、ジアルキルジアザジオキソジアルキルドデカジエンのコバルト(II)錯体、コバルト(II)ポルフィリン錯体などがあげられる。中でも、水性媒体中に安定に存在し、連鎖移動効果が高いビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)(R〜R:フェニル基、X:F原子)が好ましい。これらは一種以上を適宜選択して使用することができる。
コバルト連鎖移動剤の使用量は、マクロモノマー(B1)を得るためのモノマー100部に対し20ppmから350ppmが好ましい。コバルト連鎖移動剤の使用量が20ppm未満であれば分子量の低下が不十分となりやすく、350ppmを超えると得られるマクロモノマー(B1)が着色しやすい。
マクロモノマー(B1)を溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[コモノマー(B2)]
コモノマー(B2)は、マクロモノマー(B1)と共重合可能であれば特に限定されず、必要に応じて各種の重合性単量体を使用できる。具体的には、マクロモノマー(B1)を得るためのモノマーと同様のものが挙げられる。コモノマー(B2)は、マクロモノマー(B1)との共重合性が良好であることから、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
コモノマー(B2)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[マクロモノマー共重合体(B)]
マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(B1)とコモノマー(B2)からなる重合性成分(X)を重合して得られる重合体である。マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(B1)に由来する単位と、コモノマー(B2)に由来する単位を有する。
マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(B1)単位とコモノマー(B2)単位を有するブロックコポリマー、並びに側鎖にマクロモノマー(A)単位を有する、コモノマー(B2)のグラフトコポリマーから選ばれる少なくとも一種を含む。
さらに、マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(B1)単位のみを有するポリマー、コモノマー(B2)のみからなるポリマー、未反応のマクロモノマー(B1)、未反応のコモノマー(B2)から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。
マクロモノマー共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、マクロモノマー共重合体(B)を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)から得られる成形体の機械強度及び熱安定性の観点から、30,000以上5,000,000以下が好ましく、100,000以上、1,000,000以下がより好ましい。
[マクロモノマー共重合体(B)の製造方法]
マクロモノマー共重合体(B)の製造方法は、特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の各種の方法を用いることができる。重合発熱の制御が容易で、生産性に優れることから、懸濁重合又は乳化重合のような水系重合が好ましく、重合、回収操作がより簡便であることから、懸濁重合がより好ましい。
懸濁重合による、マクロモノマー共重合体(B)の製造方法としては、例えば、以下の[I]又は[II]が挙げられる。
[I]マクロモノマー(B1)をコモノマー(B2)に溶解し、ラジカル重合開始剤を添加する。このマクロモノマー(B1)溶液を、分散剤を溶解させた水溶液に分散させ、シラップ分散液を得る。そして、得られたシラップ分散液を懸濁重合する。
[II]マクロモノマー(B1)を懸濁重合で合成して得られる水性懸濁液にコモノマー(B2)を添加し、シラップ懸濁液として、マクロモノマー(B1)を溶解させたコモノマー(B2)の分散体を得る。そして、得られたシラップ懸濁液を懸濁重合する。
[I]の製造方法で得られるマクロモノマー共重合体(B)は、優れた光学特性を有する傾向にある。また、[II]の製造方法では、マクロモノマー(B1)の回収工程を省くことができるため製造工程を短縮できる。
[I]、[II]のいずれの方法においても、マクロモノマー(B1)をコモノマー(B2)に溶解させる際には加温することが好ましい。加熱温度は30〜90℃が好ましい。加熱温度が30℃以上で、マクロモノマー(B1)の溶解性を良好とすることができる。また、加熱温度が90℃以下で、コモノマー(B2)の揮発を抑制できる。加熱温度の下限値は、35℃以上がより好ましい。また、加熱温度の上限値は、75℃以下がより好ましい。
[I]の製造方法において、マクロモノマー(B1)を溶解したコモノマー(B2)へのラジカル重合開始剤の添加時期は、マクロモノマー(B1)をコモノマー(B2)に溶解した後に添加することが好ましい。
ラジカル重合開始剤を添加する際の温度は、0℃〜(ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度+15℃)が好ましい。ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が0℃以上で、ラジカル重合開始剤のモノマーへの溶解性が良好となる。また、ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が(ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度+15℃)で安定な重合を行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が挙げられる。
入手しやすさの点で、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。
ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合開始剤の添加量は、重合発熱制御の点で、マクロモノマー(B1)、コモノマー(B2)の合計量100質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下が好ましい。
懸濁重合における重合温度としては特に制限はなく、一般的には50〜120℃である。懸濁重合に際しては、目的に応じて連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルペノイドが挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)に含まれるマクロモノマー共重合体(B)は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)に対して、マクロモノマー共重合体(B)の割合は、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がさらに好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。マクロモノマー共重合体(B)の割合が上記の範囲内であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)は、優れた流動性と、成形後の優れた耐衝撃性を発揮できる。
[添加剤(E)]
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)は、必要に応じて添加剤(E)を添加することができる。添加剤(E)としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の各種安定剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤;無機充填剤;滑材;離型剤;可塑剤;有機過酸化物;中和剤;架橋剤;等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)の総重量に対して、添加剤(E)の割合は0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)が含む芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とマクロモノマー共重合体(B)、および必要に応じて添加される添加剤(E)を混合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等の物理的混合方法及び押出機等の溶融混合法が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)は、成形材料として使用できる。公知の方法で種々の形状を付与して、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)からなる成形体を得ることができる。成形体の形状としては、例えば、シート状及び3次元形状が挙げられる。成形体を得るための成形方法としては、溶融成形法が好ましく、例えば、射出成形法、圧縮成形法、中空成形法、押出成形法、回転成形法、ブロー成形法、流延法、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、及び溶剤キャスト法等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)を用いて成形された本発明の成形体は、成形材料の優れた流動性と、成形後の優れた耐衝撃性とを併せ持つことから、種々の用途に適用することができる。前記成形体の具体的な用途としては、例えば、電子機器端末;パソコン、プリンター、コピー機などのOA機器;液晶テレビ、DVAプレーヤー等の家電;ラジエーターグリル、ミラーハウジングなどの自動車外装材;インパネ等の自動車内装材として有用である。特に、流動性と耐衝撃性に優れることから、車両用部材(車両の外装または内装に用いられる部材)、OA機器用部材などの大型成形部材に有用である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の例によって制限されるものではない。
実施例において「部」は「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
BA:ノルマルブチルアクリレート
AMBN:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
ABS:RB(UMG AMS(株)製ABS樹脂、商品名)とAP−H(UMG ABS(株)製AS樹脂、商品名)を重量比80/20の組成比で溶融混練して得たABS系樹脂組成物
[マクロモノマー共重合体(B)の解析法]
[GPC測定]
Mw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して求めた。以下に測定条件を示す。
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H−H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK−GEL SUPER HM−H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速: 0.6mL/分
Mw(質量平均分子量)及びMn(数平均分子量)は、Polymer Laboratories製のポリメチルメタクリレート(Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して算出した。分子量分布は、式「分子量分布=(質量平均分子量)/(数平均分子量)」により算出した。
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z)の評価法]
[シャルピー衝撃試験]
射出成形で作成したシャルピー試験片(ノッチ有り)を用いてシャルピー衝撃試験機(東洋精機(株)製、商品名:DG−CP)によりシャルピー衝撃強さ(衝撃強度)を測定した。室温23℃、湿度50%、15J錘で5本ずつ試験し、平均値を求めた。試験片が破壊しなかった場合は評価結果を「NB」とした。
[引張試験]
射出成形で得たダンベル試験片を用いて、JIS K6251に従ってテンシロン万能試験機((株)オリエンテック製、商品名:RTC−1250A)で引張試験を実施した。室温23℃及び引張速度20mm/分の条件で引張試験を実施し、その時の応力ひずみ曲線から破断点伸度、弾性率を求めた。
[溶融粘度(流動性)評価]
得られた成形材料について、(株)テクノ・セブン製のメルトインデクサー(L243)を用いて、JIS K7210(A法)に従い、加熱時間4分でのMFR(メルトフローレート)を測定した。MFRの測定条件は、温度を230℃又は260℃、荷重を49Nとし、試料切り取り時間間隔は試料のMFR値に応じ10秒〜120秒とした。
<製造例1:分散剤(1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中に、17質量%水酸化カリウム水溶液61.6部、メチルメタクリレート19.1部及び脱イオン水19.3部を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、4時間撹拌した。この後、反応装置中の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。
次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、42質量%メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム水溶液(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルSEM−Na)70部、上記のメタクリル酸カリウム水溶液16部及びメチルメタクリレート7部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、反応装置内の液を50℃に昇温した。重合装置中に、重合開始剤としてV−50(和光純薬工業社製、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、商品名)0.053部を添加し、反応装置内の液を60℃に昇温した。重合開始剤投入後、15分毎にメチルメタクリレート1.4部を計5回(メチルメタクリレートの合計量7部)、分割添加した。この後、重合装置内の液を撹拌しながら60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分8質量%の分散剤(1)を得た。
<製造例2:連鎖移動剤(1)の合成>
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬工業社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成社製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。得られたものをろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体の連鎖移動剤(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
<製造例3:マクロモノマー(B1−1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.13部及び製造例1で製造した分散剤(1)(固形分10質量%)0.26部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、MMA95部、MA5部、製造例2で製造した連鎖移動剤(1)0.0030部(30ppm)及び重合開始剤としてパーオクタO(日油(株)製1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、商品名)0.1部を加え、水性分散液とした。
次いで、重合装置内を十分に窒素置換し、水性分散液を80℃に昇温してから4時間保持した後に92℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(B1−1)を得た。マクロモノマー(B1−1)のMnは9,000、及びMwは18,000、Mw/Mnは2.03であった。マクロモノマー(B1−1)の末端二重結合の導入率は、ほぼ100%であった。
<製造例4〜製造例5:マクロモノマー(B1−2〜B1−3)の合成>
連鎖移動剤(1)の添加量を0.0024部(24ppm)、0.0013部(13ppm)に変更した他は製造例3と同様の方法で、マクロモノマー(B1−2)、マクロモノマー(B1−3)を合成した。マクロモノマー(B1−1〜B1−3)の合成結果を表1にまとめた。
Figure 2017206627
<製造例6:マクロモノマー共重合体(B−1)の合成>
脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.13部及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26部を混合して懸濁重合用水分散媒を調製した。冷却管付きセパラブルフラスコに、マクロモノマー(B1−1)40部、コモノマー(B2)としてBA(三菱化学(株)製アクリル酸n−ブチル、商品名)36部及びMMA24部、計60部を仕込み、撹拌しながら50℃に加温し、原料シラップを得た。原料シラップを40℃以下に冷却した後、原料シラップにAMBN0.3部を溶解させ、シラップを得た。
次いで、シラップに懸濁重合用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、撹拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。シラップ分散液を75℃に昇温し、重合発熱ピークが出るまでセパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、シラップ分散液が75℃になったところで、シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。
懸濁液を40℃以下に冷却した後に、懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー共重合体(B−1)を得た。マクロモノマー共重合体(B−1)のMnは44,000、Mwは154,000、Mw/Mnは3.53であった。また、マクロモノマー共重合体(B−1)の組成は、MMA/MA/BA=62/2/36(質量比)であった。
<製造例7〜8:マクロモノマー共重合体(B−2〜B−3)の合成>
使用原料を表2に示すとおりに変更した以外は、製造例6と同様にして、マクロモノマー共重合体(B−1)〜(B−3)を得た。結果を表2に示す。
Figure 2017206627
<実施例1:芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z−1)及び成形体の製造>
芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)としてユーピロンS2000F(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールAタイプポリカーボネート、粘度平均分子量約22,000、商品名)80部、マクロモノマー共重合体(B−1)20部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、これを35mmφのスクリュー型2軸押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度240℃〜270℃、Tダイ温度270℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(Z−1)からなる成形材料を得た。得られた成形材料のMFR値を表3に示す。
得られた成形材料を用いて、射出成形機((株)東芝製、商品名:IS100)で厚さ3mmの成形体を得た。得られた成形体の引張試験結果とシャルピー衝撃試験結果を表3に示す。
<実施例2〜5、比較例1〜2>
使用する原料を表3に示すものに変更した以外は実施例1と同様の方法で成形材料及び成形体を得た。評価結果を表3に示す。
Figure 2017206627
実施例1〜3では、マクロモノマー共重合体(B)の合成に用いたマクロモノマー(B1)の分子量が異なる。実施例1〜3はいずれもシャルピー衝撃試験結果がNBとなり、良好な耐衝撃性を有することが確認できた。さらに、MFRの値を比較すると、いずれも比較例1の芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)のみの場合よりも値が大きく、十分な流動性改質効果が確認できた。
また、実施例4と実施例5は、実施例1〜3よりマクロモノマー共重合体(B)の添加量が少ない場合と多い場合である。マクロモノマー共重合体(B)の添加量が多いほど流動性改質効果が大きいことがわかる。実施例4、5の耐衝撃性は実施例1〜3に比べるとやや劣るものの、良好である。マクロモノマー共重合体(B)の添加量が多すぎても少なすぎても耐衝撃性が低下する傾向があることがわかる。
比較例2では、芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)にABS樹脂を添加した。その結果、MFRの値が大きくなって流動性が悪化した。

Claims (6)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)60〜99質量%、およびマクロモノマー共重合体(B)1〜40質量%を含み、
    前記マクロモノマー共重合体(B)が、下記式(1)で表されるマクロモノマー(B1)に由来する単位と、前記マクロモノマー(B1)と共重合可能なコモノマー(B2)に由来する単位とを有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2017206627
    (式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
  2. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)75〜85質量%、および前記マクロモノマー共重合体(B)15〜25質量%を含む、請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記コモノマー(B2)が、アルキルメタ(アクリレート)を含む、請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
  5. 車両用部材である、請求項4に記載の成形体。
  6. 下記式(1)で表されるマクロモノマー(B1)と、前記マクロモノマー(B1)と共重合可能なコモノマー(B2)からなる重合性成分(X)を重合反応させてマクロモノマー共重合体(B)を得る工程と
    前記マクロモノマー共重合体(B)1〜40質量%と、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)60〜99質量%を含む組成物を調製する工程を有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
    Figure 2017206627
    (式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
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