JP2017014395A - 成形体 - Google Patents

成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP2017014395A
JP2017014395A JP2015132684A JP2015132684A JP2017014395A JP 2017014395 A JP2017014395 A JP 2017014395A JP 2015132684 A JP2015132684 A JP 2015132684A JP 2015132684 A JP2015132684 A JP 2015132684A JP 2017014395 A JP2017014395 A JP 2017014395A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
polymer
molded body
acrylic resin
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015132684A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6657619B2 (ja
Inventor
大谷 剛
Takeshi Otani
剛 大谷
英子 岡本
Hideko Okamoto
英子 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP2015132684A priority Critical patent/JP6657619B2/ja
Publication of JP2017014395A publication Critical patent/JP2017014395A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6657619B2 publication Critical patent/JP6657619B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Abstract

【課題】耐擦傷性が良好であり、且つ透明性に優れる成形体を提供する。
【解決手段】単量体単位としてメチルメタクリレートを、80質量%を超えて含む重合体(X)を含むアクリル系樹脂成形材料からなる成形体であって、前記成形体の表面に1μm以上の厚さの被覆層を有さず、前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値が0.4以下であり、且つ前記成形体の内部ヘイズ値が2.5%以下である成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は成形体に関する。
ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂は、高い透明性を有していることから、光学材料、車両用部品、建築材料、レンズ、家庭用品、OA機器、照明機器等の分野で幅広く使用されている。特に近年では、車両用途、導光板、液晶ディスプレイ用フィルムなどへの応用が進んでいるが、公知のアクリル系樹脂では、用途によっては防汚性や耐擦傷性が課題となる場合がある。
例えば、車両外装用の成形品では、成形品を車体に組み付ける際の傷付き防止性能や、車両の洗車時の傷付き防止性能が求められる。また、洗面器や便器などのサニタリー用途では、陶器から、より軽量で外観品位も良好なアクリル樹脂への置き換えが進んでいるが、防汚性や耐擦傷性が課題となっている。
アクリル系樹脂成形品の耐擦傷性や防汚性を改良する方法として、成形品の表面に別工程でコーティングを行う方法が知られている。アクリル系樹脂成形品の耐擦傷性を改良する方法としては、例えば、UV硬化型の多官能アクリル系樹脂を主成分とする塗工液でハードコートする方法(例えば、特許文献1)や、ハードコートを施したフィルムをインサート成型する方法等(例えば、特許文献2)が挙げられる。また、アクリル系樹脂成形品の防汚性を改良する方法としては、ハードコートにシリコーン系又はフッ素系の添加剤を加える方法(例えば、特許文献1)や、成形体にフッ素系の防汚コーティングを施す方法が挙げられる(例えば、特許文献3)。
特開2008−138165号公報 特開2011−126921号公報 特開平10−7950号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載のようにアクリル系樹脂成形体に別工程でコーティングを施して被覆層を形成する方法はコスト面で不利である。アクリル系樹脂成形体を成形後にそのまま製品として用いる場合には、耐擦傷性及び透明性が良好であることが求められる。
本発明は耐擦傷性が良好であり、且つ透明性に優れる成形体を提供することを目的とする。
本発明は以下の[1]〜[5]である。
[1]単量体単位としてメチルメタクリレートを、80質量%を超えて含む重合体(X)を含むアクリル系樹脂成形材料からなる成形体であって、
前記成形体の表面に1μm以上の厚さの被覆層を有さず、
前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値が0.4以下であり、且つ
前記成形体の内部ヘイズ値が2.5%以下である成形体。
[2]前記成形体の表面のマルテンス硬さが140〜250N/mmである[1]に記載の成形体。
[3]前記アクリル系樹脂成形材料のビカット軟化温度が108℃以上である[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]前記成形体の表面の算術平均粗さRaが5.0以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の成形体。
[5]前記アクリル系樹脂成形材料が、単量体単位として、メチルメタクリレートと、炭素数が8以上30以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとを含む重合体(Y)を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の成形体。
本発明によれば、耐擦傷性が良好であり、且つ透明性に優れる成形体を提供できる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、以下において、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」という。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを示す。
[成形体]
本発明に係る成形体は、単量体単位としてメチルメタクリレートを、80質量%を超えて含む重合体(X)を含むアクリル系樹脂成形材料からなる。前記成形体の表面には1μm以上の厚さの被覆層を有さない。前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値は0.4以下である。また、前記成形体の内部ヘイズ値は2.5%以下である。
前記成形体は、その表面に1μm以上の厚さの被覆層を有さない。ここで、「被覆層」とは成形体とは異なる材料で構成される、成形体表面に形成された膜を示す。例えば、前記成形体は、被覆層を有するアクリル板を熱成形して得られる成形体、表面に別工程で被覆層が配置された成形体、膜を有するフィルム等を積層させて得られる成形体などを含まない。一般的に、被覆層によって耐擦傷性を付与しようとすると、被覆層の厚さは1μm以上である必要がある。一方、アクリル系樹脂成形材料に含まれる添加剤の一部が、成形後の成形体表面に偏析したりブリードしたりにじみ出てきたりしているものについては本発明に係る成形体に含まれる。被覆層としては、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したハードコート等が挙げられる。
[動摩擦係数]
本発明において動摩擦係数は、後述する往復摩擦試験により得られる値である。該往復摩擦試験で測定した動摩擦係数によって、実使用環境下での耐擦傷性を正確に数値化することが可能になった。具体的には、金属製や樹脂製の摺動子を使用した動摩擦係数の測定方法では、実使用環境での接触が想定される衣類等とは材質が大きく異なる上に、繰り返し接触させたときの摩擦状態の変化をとらえることができなかった。本発明では、新たに見出した往復摩擦試験方法で測定した動摩擦係数によって、耐擦傷性に優れる成形体を特定するに至った。
すなわち、本発明に係る往復摩擦試験において動摩擦係数の最大値が0.4以下の領域にあることで、実使用環境で優れた耐擦傷性を発揮できることを見出した。該動摩擦係数は低いほど表面の滑り性が高く、傷が付きにくい。該動摩擦係数の最大値は0.35以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることが更に好ましい。
[内部ヘイズ]
本発明において内部ヘイズは、後述する方法により測定される値である。本発明に係る成形体の内部ヘイズ値は2.5%以下であり、1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下が更に好ましい。内部ヘイズ値が低い方が透明性に優れる成形体が得られる。成形体が優れた透明性を有することで、ライトガイド、ランプカバー、導光板などの導光体を含む光学部品に該成形体を使用することが可能になる。また、成形体が優れた透明性を有することで着色時の発色性も良好となることから、別工程での塗装や染色による着色が不要になり、また少ない顔料で良好な発色性を実現することができる。例えば、ピアノブラックと呼ばれるような艶のある黒色を実現するためには、内部ヘイズ値が低く透明性が高い材料と黒色顔料とを組み合せることが有効であり、内部ヘイズを低く抑えることでより高級感のあるピアノブラック調の成形体を得ることができる。
[マルテンス硬さ]
本発明においてマルテンス硬さは、後述する方法により測定される値である。該方法で測定されるマルテンス硬さは、成形体表面の硬さを表しており、硬い物が成形体表面に接触した際に凹み傷として跡が残るかどうかを判断する指標となる。本発明に係る成形体の表面のマルテンス硬さは、140〜250N/mmが好ましく、160〜230N/mmがより好ましく、170〜210N/mmが更に好ましい。該マルテンス硬さが140N/mm以上であれば、成形体表面が柔らかすぎて傷付きやすくなる現象を防ぐことができる。また、該マルテンス硬さが250N/mm以下であれば、成形体表面が硬く脆くなって傷付きやすくなる現象を防ぐことができる。
[ビカット軟化温度(VST)]
本発明においてビカット軟化温度は、後述する方法により測定される値である。該ビカット軟化温度はアクリル系樹脂成形材料の耐熱変形温度を表す指標である。本発明に係るアクリル系樹脂成形材料のビカット軟化温度は、108℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、112℃以上が更に好ましい。該ビカット軟化温度が108℃以上であれば、PMMAと同等の耐熱変形温度を有する材料として扱うことができる。なお、該ビカット軟化温度の上限は特に限定されない。
[算術平均粗さRa]
本発明において算術平均粗さRaは、後述する方法により測定される値である。本発明に係る成形体は、その表面が平滑であることが好ましい。表面が平滑であり、実質的に鏡面で光沢や艶があるものは、アクリル系樹脂成形材料からなる成形体の特徴である外観の高級感や良好な発色性が発揮される。該算術平均粗さRaは、成形体表面の平滑性を表す指標である。本発明に係る成形体の表面の算術平均粗さRaは、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましい。該算術平均粗さRaが5.0以下であることにより、成形体の外観の高級感や良好な発色性が発揮される。なお、該算術平均粗さRaの下限は特に限定されない。
[重合体(X)]
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は重合体(X)を含む。重合体(X)は単量体単位として、メチルメタクリレートを、80質量%を超えて含み、その他の単量体(x1)を含むことができる。
その他の単量体(x1)は、メチルメタクリレート以外の単量体であり、メチルメタクリレートと共重合性を有するものであれば特に制限されるものではないが、重合体(X)の耐熱分解性を向上させることができるため、単官能アクリレートであることが好ましい。メチルメタクリレートに単官能アクリレートを共重合させることで、ポリメチルメタクリレートの解重合反応(ジッパー開裂)を防ぐことができる。単量体(x1)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性とコストとのバランスから、メチルアクリレートが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合体(X)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量は、80質量%を超え、85〜100質量%が好ましく、90〜99.5質量%がより好ましく、95〜99質量%が更に好ましい。重合体(X)に含まれる単量体単位としてのその他の単量体(x1)の量は、0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%以下が更に好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。各単量体単位の含有量が前記範囲内を満たせば、成形体が十分な耐熱性、耐候性、耐熱分解性、透明性、機械物性等を示すことができる。
重合体(X)の質量平均分子量(Mw)は、50,000〜200,000であることが好ましく、60,000〜150,000であることがより好ましく、70,000〜100,000であることが更に好ましい。Mwが前記範囲を満たすことにより、成形体が十分な耐熱性、耐候性、耐熱分解性、透明性、機械物性、流動性、成形性等を発揮することができる。また、重合体(X)の数平均分子量(Mn)は、25,000〜200,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることがより好ましく、35,000〜100,000であることが更に好ましい。Mnが前記範囲を満たすことにより、成形体が十分な耐熱性、耐候性、耐熱分解性、透明性、機械物性、流動性、成形性等を発揮することができる。また、Mw/Mnは1.0〜2.0であることが好ましい。なお、Mw及びMnは後述する方法により測定した値である。
重合体(X)の製造方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法等、公知の方法を用いることができる。これらの方法の中でも塊状重合法と懸濁重合法が好ましく、塊状重合法がより好ましい。塊状重合法は大量生産に向く方法であり、生産速度(生産量)、製造コストなどの点で有利である。
アクリル系樹脂成形材料に含まれる重合体(X)の割合は、重合体(X)と後述する重合体(Y)との合計100質量部に対して、51〜99質量部が好ましく、60〜98質量部がより好ましく、70〜95質量部が更に好ましい。該割合が前記範囲内にあれば、PMMAが有する特性を維持しつつ、防汚性や耐擦傷性を付与することができる。
[重合体(Y)]
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は、重合体(X)の改質剤として、重合体(X)以外の重合体(Y)を含むことができる。重合体(Y)は、単量体単位として、メチルメタクリレートと、炭素数が8以上30以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)と示す)とを含む。重合体(Y)は、単量体単位として、マクロモノマー(y2)、その他の単量体(y3)を含んでもよい。
重合体(Y)が単量体単位として含むメチルメタクリレートは、重合体(X)との相溶性を確保する役割を果たす。重合体(Y)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量は、51〜99質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜90質量%が更に好ましい。前記重合体(Y)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量が51質量%以上の場合、重合体(X)との相溶性が十分確保され、相分離サイズが十分小さくなることから、成形体が十分な透明性を維持できる。なお、前記重合体(Y)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量は、後述するマクロモノマー(y2)由来のメチルメタクリレートを含む。また、前記重合体(Y)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量は、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)が重合体(X)との相溶性に与える影響の大きさによって適宜調整される。
(長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1))
長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)は、成形体の表面改質機能を有する。重合体(Y)が単量体単位として長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)を含むことにより、成形体表面が高い水接触角を示し、防汚性及び耐擦傷性が向上する。長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)が有する炭素数が8以上30以下の長鎖アルキル基は、直鎖と分岐のいずれでもよく、両者の混合でも良い。ただし、耐擦傷性向上に寄与する表面の滑り性付与の観点から直鎖の方が好ましい。また、前記長鎖アルキル基は、飽和と不飽和のいずれでもよく、両者の混合物でも良い。飽和の方が重合体(X)との相溶性に優れる傾向にあるが、不飽和の方が結晶性が低いため低温域での透明性に優れる傾向にある。前記長鎖アルキル基の炭素数は8以上30以下であり、10以上24以下が好ましく、11以上22以下がより好ましく、12以上18以下がさらに好ましい。該炭素数が8以上であれば水接触角が向上し、炭素数が30以下であれば相溶性や取扱い性に優れる。
長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)としては、例えば、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、合成ラウリル(C12〜C13)(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
重合体(Y)に含まれる単量体単位としての長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)の量は、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。前記量が1質量%以上であることにより、長鎖アルキル基による表面改質効果が十分に得られる。前記量が50質量%以下であることにより、メチルメタクリレートの量が相対的に少なくならず、重合体(X)との相溶性を確保できる。
(マクロモノマー(y2))
マクロモノマー(y2)は、単量体単位としてメチルメタクリレートを80質量%以上含み、且つ、末端に重合性不飽和基を有する高分子量の単量体(モノマー)である。重合体(Y)が単量体単位としてマクロモノマー(y2)を含むことで、重合体(Y)に、重合体(X)との相溶性確保と表面改質効果の向上という2つの相反する機能を付与することができる。重合体(Y)にマクロモノマー(y2)を共重合することで、マクロモノマー(y2)は重合体(X)に近い組成を有するため相溶性が確保できる。さらに、重合体(Y)の主鎖においては長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)の密度を大きくすることができ、表面改質効果を高めることができる。すなわち、マクロモノマー(y2)の単量体単位が相溶性を担い、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)の単量体単位を含む主鎖が表面改質効果を担うことで、機能分離することができる。
マクロモノマー(y2)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量は80質量%以上であり、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。該量が80質量%以上の場合、重合体(X)との相溶性を確保しやすくなる。
また、マクロモノマー(y2)は単量体単位としてメチルメタクリレート以外の単量体を含むことができる。該単量体としては、重合体(X)が単量体単位として含むその他の単量体(x1)と同じ単量体であることが相溶性の点で好ましい。したがって、該単量体としては単官能アクリレートが好ましく、メチルアクリレートがより好ましい。
マクロモノマー(y2)の質量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000が好ましく、3,000〜500,000がより好ましく、5,000〜300,000が更に好ましく、10,000〜50,000以下が特に好ましい。Mwが1,000以上の場合、成形体の物性が良好となる傾向にある。
重合体(Y)に含まれる単量体単位としてのマクロモノマー(y2)の量は、1〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。該量が50質量%以下であれば、重合体(Y)の製造時に未反応で残るマクロモノマー(y2)の量を十分少なく抑えることができる。
(マクロモノマー(y2)の製造方法)
マクロモノマー(y2)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4,680,352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04,304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報及び米国特許5,147,952号明細書)並びに熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
これらの中でも、マクロモノマー(y2)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(y2)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。これらの中でも、マクロモノマー(y2)の回収工程の簡略化の点から、水系分散重合法が好ましい。
マクロモノマー(y2)を溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(その他の単量体(y3))
その他の単量体(y3)は、メチルメタクリレートと長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)及びマクロモノマー(y2)以外の単量体であり、これらの単量体と共重合性を有するものであれば特に制限されるものではないが、重合体(Y)の耐熱分解性を向上することができるため、単官能アクリレートであることが好ましい。これらの単量体に単官能アクリレートを共重合させることで、ポリメチルメタクリレートの解重合反応(ジッパー開裂)を防ぐことができる。
その他の単量体(y3)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性とコストとのバランスから、メチルアクリレートが好ましい。これらは単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
重合体(Y)の製造方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法等、公知の方法を用いることができる。これらの方法の中でも塊状重合法と懸濁重合法が好ましく、塊状重合法がより好ましい。塊状重合法は大量生産に向く方法であり、生産速度(生産量)、製造コストなどの点で有利である。
アクリル系樹脂成形材料に含まれる重合体(Y)の割合は、重合体(X)と重合体(Y)の合計100質量部に対して、1〜49質量部が好ましく、2〜40質量部がより好ましく、5〜30質量部が更に好ましい。該割合が前記範囲内にあれば、十分な表面改質効果を得ることができる。
[その他の成分(Z)]
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は、重合体(X)及び重合体(Y)以外に、その他の成分(Z)として、その他の樹脂や添加剤を含むことができる。
<その他の樹脂>
その他の樹脂としては、重合体(X)及び重合体(Y)以外であれば特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を使用できる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、シンジオタクテックポリスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、アクリル樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、BAAS(スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート)樹脂、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン)樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、AS樹脂、BAAS樹脂は流動性を向上させるのに好ましい。また、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるのに好ましい。また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるのに好ましい。また、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノール樹脂は難燃性を向上させる効果が期待できる。
硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、キシレン樹脂、トリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、スチリルピリジン樹脂、シリコーン樹脂、合成ゴム等が挙げられる。これらのその他の樹脂は、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
<添加剤>
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は、剛性や寸法安定性等の各種特性を付与するため、所定の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等)、難燃剤(有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等のリン系、ハロゲン系、シリカ系、シリコーン系等)、難燃助剤(酸化アンチモン類、金属酸化物、金属水酸化物等)、硬化剤(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等のアミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂類、液状ポリメルカプタン、ポリサルファイド等のポリメルカプタン、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデシル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水クロレンディック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)等の酸無水物等)、硬化促進剤(2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、ベンジルジメチルアミン、2−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、テトラメチルヘキサンジアミン等の三級アミン類、トリフェニルホスファインテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアミンテトラフェニルボレート等のボロン塩、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン等のキノイド化合物等)、帯電防止剤(ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体等)、導電性付与剤、応力緩和剤、離型剤(アルコール、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等)、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤(ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛等)、衝撃付与剤、相溶化剤、核剤、強化剤、流動調整剤、染料(ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等)、増感剤、着色剤(酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等の無機顔料、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタリシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等の有機系顔料、リン片状のアルミニウムのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミニウム顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属メッキやスパッタリングで被覆したものなどのメタリック顔料等)、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等)、消泡剤(シリコーン系消泡剤、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤等)、カップリング剤、光拡散性粒子、防錆剤、抗菌・防カビ剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(光拡散性粒子)
前記光拡散性粒子としては、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、ガラスビーズ等の無機粒子、スチレン架橋ビーズ、MS(メチルメタクリレート−スチレン)架橋ビーズ、シロキサン系架橋ビーズ等の有機粒子等が挙げられる。また、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、MS樹脂、環状オレフィン樹脂等の透明性の高い樹脂材料からなる中空架橋粒子及びガラスからなる中空粒子等も挙げられる。無機粒子においては、アルミナ又は酸化チタンの無機粒子が好ましい。これらの光拡散性粒子は単独で用いることができ、又は複数を併用することもできる。
前記光拡散性粒子の屈折率は、1.7〜3.0が好ましく、1.7〜2.5がより好ましく、1.7〜2.0がさらに好ましい。該屈折率が1.7以上であることにより、十分な散乱性が得られる。該屈折率が3.0以下であることにより、ランプ近傍での散乱が抑制され、輝度ムラ及び出射光色調のムラが生じにくくなる。なお、前記屈折率は、D線(589nm)に基づく温度20℃での値である。前記屈折率の測定方法としては、具体的には、光拡散性粒子を、屈折率を少しずつ変化させることのできる液体に浸し、液体の屈折率を変化させながら光拡散性粒子の界面を観察し、光拡散性粒子の界面が不明確になった時の液体の屈折率を測定する。なお、液体の屈折率の測定にはアッベの屈折計を用いる。
前記光拡散性粒子の平均粒子径は0.1〜20μmが好ましく、0.2〜15μmがより好ましく、0.3〜10μmがさらに好ましく、0.4〜5μmが特に好ましい。該平均粒子径が20μm以下であると後方反射等による光損失が抑えられ、入光した光を効率的に発光面側に拡散させることができる。また、該平均粒子径が0.1μm以上であると出射光を拡散させることができ、所望の面発光輝度、拡散性を得ることができる。
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料中の光拡散性粒子の含有量は、光拡散効果の発現、面発光の均一性の観点から、アクリル系樹脂成形材料に含まれる重合体100質量部に対して0.0001〜0.03質量部が好ましく、0.0001〜0.01質量部がより好ましい。
(酸化防止剤)
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられる。特に、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよい。市販のフェノール系酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス1010(Irganox 1010、商品名、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF製)、イルガノックス1076(Irganox 1076、商品名、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF製)、イルガノックス1330(Irganox 1330、商品名、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、BASF製)、イルガノックス3114(Irganox 3114、商品名、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、BASF製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、商品名、BASF製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、商品名、住友化学工業製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、商品名、サイテック製)、スミライザーGA−80(Sumilizer GA−80、商品名、住友化学工業製)、スミライザーGS(Sumilizer GS、商品名、住友化学製)、ビタミンE(エーザイ製)等が挙げられる。これらの中でも、イルガノックス1010、イルガノックス1076、スミライザーGSが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト等が挙げられる。
また、リン系酸化防止剤として市販のリン系酸化防止剤を使用してもよい。市販のリン系酸化防止剤としては、例えば、イルガフォス168(Irgafos 168、商品名、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、BASF製)、イルガフォス12(Irgafos 12、商品名、トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製)、イルガフォス38(Irgafos 38、商品名、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、BASF製)、アデカスタブ329K(ADEKA STAB 329K、商品名、ADEKA製)、アデカスタブPEP36(ADEKA STAB PEP36、商品名、ADEKA製)、アデカスタブPEP−8(ADEKA STAB PEP−8、商品名、ADEKA製)、Sandstab P−EPQ(商品名、クラリアント製)、ウェストン618(Weston 618、商品名、GE製)、ウェストン619G(Weston 619G、商品名、GE製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、商品名、GE製)、スミライザーGP(Sumilizer GP、商品名、住友化学工業製)等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の配合量は、本発明の効果を発揮できる量であれば特に限定されない。しかし、成形時のブリードアウトを抑制する観点から、本発明に係るアクリル系樹脂成形材料中の酸化防止剤の含有量は、アクリル系樹脂成形材料に含まれる重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0.01質量部以上0.8質量部以下であることが特に好ましい。
(紫外線吸収剤)
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤は、アクリル系樹脂成形材料の良好な成形加工性を確保する観点から、20℃における蒸気圧(P)が1.0×10−4Pa以下であることが好ましく、1.0×10−6Pa以下であることがより好ましく、1.0×10−8Pa以下であることがさらに好ましい。ここで、良好な成形加工性とは、例えば、フィルム状に成形する際、低分子化合物のロールへの付着が少ないこと等を意味する。低分子化合物がロールへ付着すると、さらに成形体表面に再付着するため、外観が劣化したり、光学特性が低下したりする場合がある。
前記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることが特に好ましい。
前記紫外線吸収剤は、23〜260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の質量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
前記紫外線吸収剤の配合量は、本発明の効果を発揮する量であれば特に限定されない。しかし、成形時のブリードアウトを抑制する観点から、本発明に係るアクリル系樹脂成形材料中の紫外線吸収剤の含有量は、アクリル系樹脂成形材料に含まれる重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることが更に好ましく、0.01質量部以上0.8質量部以下であることが特に好ましい。
[アクリル系樹脂成形材料の製造方法]
アクリル系樹脂成形材料が重合体(X)と重合体(Y)を含む場合、アクリル系樹脂成形材料の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
1)重合体(X)と重合体(Y)を別々に製造し、溶融混練する。
2)重合体(X)の原料である単量体と重合体(Y)からなるシラップを調製した後に重合し、重合体(X)と重合体(Y)の混合物を得る。
3)重合体(Y)の原料である単量体と重合体(X)からなるシラップを調製した後に重合し、重合体(X)と重合体(Y)の混合物を得る。
前記1)の方法の場合、溶融混練は公知の方法で行うことができる。例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することができる。これらの中でも押出機による混練が、生産性の点で好ましい。混練温度は、アクリル系樹脂成形材料に含まれる各成分の好ましい加工温度に従えばよく、例えば140〜300℃が好ましく、180〜280℃がより好ましい。
[重合開始剤]
前記アクリル系樹脂成形材料の製造方法においては、製造する重合体の重合度を調整する目的で、重合開始剤を用いてもよい。該重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系のラジカル重合開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として使用してもよい。
前記重合開始剤は、使用する全単量体の総量100質量部に対して0〜1質量部の範囲内で用いることが好ましいが、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。また、塊状重合法、キャスト重合法、懸濁重合法等を選択する場合、重合体の着色を防止する観点から、重合開始剤としては、例えば、過酸化系開始剤であるラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を用いることができる。これらの中でも、ラウロイルパーオキサイドが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
[連鎖移動剤]
前記アクリル系樹脂成形材料の製造方法においては、本発明の目的を損なわない範囲で、連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤は、分子量制御や末端二重結合の封止による耐熱分解性向上を目的に添加される。連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等が挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でも、取扱性や安定性の点からアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。アルキルメルカプタン類としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの連鎖移動剤は、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、例えば使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001〜3質量部の範囲内で用いることができる。
[成形体の製造方法]
本発明に係る成形体は、本発明に係るアクリル系樹脂成形材料を成形することにより得られる。成形方法としては、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、Tダイ成型、プレス成形、押出成形、発泡成形、流延法によるフィルム成形等が挙げられる。また、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。
また、アクリル系樹脂成形材料がその他の樹脂として硬化性樹脂を含む場合には、アクリル系樹脂成形材料の原料を無溶媒で、又は必要に応じて均一に混合できる溶媒を用いて混合した後、溶媒を除去してアクリル系樹脂成形材料を得た後、これを金型内へ注形し硬化させた後冷却し、型から取り出すことにより成形体を得ることができる。また、アクリル系樹脂成形材料を型に注形し、熱プレスにより硬化させることもできる。原料を溶解させるための溶媒としては、各種材料を均一に混合することができ、かつ使用することによって本発明の効果が損なわれないものを使用できる。該溶媒として、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサン、n−ペンタン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等の混練機を用いてアクリル系樹脂成形材料を混練製造した後、冷却、粉砕し、さらにトランスファー成形、射出成形、圧縮成形等により成形を行う方法も用いることができる。また、硬化方法としては熱硬化、光硬化、UV硬化、圧力による硬化、湿気による硬化等が挙げられる。各成分を混合させる順序は、本発明の効果を達成できる順序を適宜選択できる。
[用途]
本発明に係る成形体は、例えば、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用途、照明機器、ハウジング用途、サニタリー用途、弾性遊戯機器用途、ヘッドランプカバー、リアランプカバー、リアコンビランプカバー、バイザー、バグガード、計器カバー、メータパネル等の車両用部品、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。該成形体は、その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。また、該成形体は、他の樹脂の改質材として用いることもできる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(往復摩擦試験)
往復摩擦試験による動摩擦係数の測定は、以下の条件で実施した。
装置:HEiDON HHS2000(商品名、新東科学社製)
解析ソフト:トライボソフト(商品名、新東科学社製)
測定モード:一定荷重往復測定
移動距離:30mm
移動速度:50mm/秒
一定荷重:2.45N(250gf)
サンプリング周期:10ms
摺動子:半径200mm以上300mm以下の球体表面に相当する曲面上に、両面テープ(ニチバン社製、商品名:ナイスタック、20mm幅)を使用し、金巾(東洋紡社製、綿100%、色名:サラシ、品名:6570)を2cm角の大きさで貼付した。
・動摩擦係数の最大値の算出
動摩擦係数の最大値は、往復回数が10回目から400回目の間で最も高かった動摩擦係数の値とした。なお、往復回数が少ない0〜9回目の範囲では、摺動子と試験片表面とが徐々に馴染んでいる段階であり、動摩擦係数が安定しないため算出範囲外とした。また、長期にわたる使用での耐擦傷性能の変化を明らかにするため、往復回数は400回を上限とした。
(内部ヘイズ)
内部ヘイズは、成形体のヘイズ全体から表面形状に起因する外部ヘイズを除くことで求められる。本発明における内部ヘイズは、PMMA(三菱レイヨン社製、製品名:VH001)の内部ヘイズがゼロであると仮定し、本実施例と同じ方法で作製した成形体とのヘイズの差を算出することで求めた。ヘイズは、JIS K7165:1981に準拠し、ヘイズメーター(日本電色社製、製品名:NDH2000)を使用し、D65光源で測定した。
(算術平均粗さRa)
JIS B0601:2001に準拠し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、製品名VK−X100)を使用して、成形体の表面の算術平均粗さRaを評価した。具体的には、10倍の対物レンズを使用し、撮像領域全体を使用して算術平均粗さRaを求めた。
(マルテンス硬さ)
本発明では、下記の条件で測定した数値をマルテンス硬さとして扱った。
装置:FISCHERSCOPE HM2000(商品名、ヘルムートフィシャー社製、微小硬度計)
圧子:ビッカース圧子(四面ダイヤモンド錐体)
評価プログラム:[押込み(100mN/5秒)]→[クリープ(100mN、5秒)→[除荷(100mN/5秒)]。
(ビカット軟化温度(VST))
JIS K7206:1999に準拠し、全自動ヒートデストーションテスター(安田精機製作所社製、製品名:No.148−HDA)を使用し、ビカット軟化温度を測定した。微量混練射出成型機(井元製作所社製、製品名:18D7)を使用し、240℃でアクリル系樹脂成形材料を射出して、2mmの厚さの試験片を作製し、これを測定に用いた。
(原料)
実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
・メチルメタクリレート(MMA):三菱レイヨン社製、アクリエステルM(商品名)
・メチルアクリレート(MA):三菱化学社製
・ラウリルアクリレート(LA):大阪有機化学工業社製
・2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(V−60(AIBN)):和光純薬工業社製
・2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN):大塚化学社製
・1−オクタンチオール:和光純薬工業社製
・硫酸ナトリウム:和光純薬工業社製
・メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム:三菱レイヨン社製、アクリエステルSEM−Na(商品名)
・2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V−50):和光純薬工業社製
・酢酸コバルト(II)四水和物:和光純薬工業社製、和光特級
・ジフェニルグリオキシム:東京化成工業社製、EPグレード
・三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体:東京化成工業社製、EPグレード
・1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO):日油社製。
(Mw及びMnの測定)
重合体のMw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220)を使用し、以下の条件にて測定した。
カラム:TSK GUARD コバルトLUMN SUPER HZ−L(4.6×35mm)と2本のTSK−GEL SUPER HZM−N(6.0×150mm)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:0.6mL/分
尚、重合体のMw及びMnは、Polymer Laboratories製のPMMA(Mp(ピークトップ分子量)=141,500、55,600、10,290及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して求めた。
[製造例1]分散剤(1)の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1200Lの反応容器内に、17質量%水酸化カリウム水溶液を61.6質量部、MMAを19.1質量部及び脱イオン水を19.3質量部仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、更に4時間撹拌した。この後、反応装置内の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1,050Lの反応容器内に、脱イオン水を900質量部、アクリエステルSEM−Naを60質量部、前記メタクリル酸カリウム水溶液を10質量部及びMMAを12質量部入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤としてV−50を0.08部添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを利用してMMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤(1)を得た。
[製造例2]コバルト錯体(1)の合成
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下、酢酸コバルト(II)四水和物を2.00g(8.03mmol)、ジフェニルグリオキシムを3.86g(16.1mmol)、及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテルを100ml入れ、室温で2時間攪拌した。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を20ml加え、更に6時間攪拌した。得られたものをろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄した。その後、これを100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体であるコバルト錯体(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
[製造例3]マクロモノマー(y2−1)の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水を145質量部、硫酸ナトリウムを0.1質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)(固形分10質量%)を0.26質量部入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレートを95質量部、メチルアクリレートを5質量部、製造例2で製造したコバルト錯体(1)を0.0016質量部、及び重合開始剤としてパーオクタOを0.1質量部加え、水性分散液とした。次いで、重合装置内を十分に窒素置換し、前記水性分散液を80℃に昇温してから4時間保持した後に92℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。マクロモノマーの水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。その後、これを40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(y2−1)を得た。マクロモノマー(y2−1)のMwは29,000、Mnは15,000であった。マクロモノマー(y2−1)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
[製造例4]重合体(X−1)の合成
脱イオン水150質量部、硫酸ナトリウム0.3質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26質量部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。冷却管付セパラブルフラスコに、MMAを99質量部、MAを1質量部、連鎖移動剤としてn−オクタンチオールを0.2質量部、AIBNを0.1質量部仕込み、撹拌して均一な原料組成物を得た。次いで、該原料組成物に前記懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。該シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、該シラップ分散液が75℃になった時点で、該シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。該懸濁液を40℃以下に冷却した後に、該懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、重合体(X−1)を得た。重合体(X−1)のMwは86,000、Mnは47,000であった。重合体(X−1)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
[製造例5]重合体(Y−1)の合成
脱イオン水150質量部、硫酸ナトリウム0.3質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26質量部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。冷却管付セパラブルフラスコに、MMAを80質量部、LAを20質量部、連鎖移動剤としてn−オクタンチオールを0.2質量部、AIBNを0.1質量部仕込み、撹拌して均一な原料組成物を得た。次いで、該原料組成物に前記懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。該シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、該シラップ分散液が75℃になった時点で、該シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。該懸濁液を40℃以下に冷却した後に、該懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、重合体(Y−1)を得た。重合体(Y−1)のMwは126,000、Mnは70,000であった。重合体(Y−1)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
[製造例6]重合体(Y−2)の合成
脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム0.1質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26質量部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。冷却管付セパラブルフラスコに、マクロモノマー(y2−1)を40質量部、MMAを40質量部、LAを20質量部、連鎖移動剤としてn−オクタンチオールを0.1質量部仕込み、撹拌しながら50℃に加温し、シラップの状態の組成物を得た。該組成物を40℃以下に冷却した後、該組成物にAMBNを0.3質量部溶解させ、原料組成物を得た。次いで、該原料組成物に前記懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。該シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、該シラップ分散液が75℃になった時点で、該シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。該懸濁液を40℃以下に冷却した後に、該懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、重合体(Y−2)を得た。重合体(Y−2)のMwは93,000、Mnは33,000であった。重合体(Y−2)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
Figure 2017014395
[実施例1]
ラボプラストミル(東洋精機製)を使用し、製造例4で得た重合体(X−1)90質量部と、製造例5で得た重合体(Y−1)10質量部とを溶融混練し(230℃、10分間、30rpm)、アクリル系樹脂成形材料を得た。
鏡面仕上げで2mmの厚さの鉄板2枚の間に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の0.5mmの厚さのスペーサーを使用して、粉末状のアクリル系樹脂成形材料を2g挟持した。次いで熱プレス機(東洋精機社製、製品名:ミニテストプレス)を使用し、200℃の温度で3分間予熱後、1MPaの圧力で3分間プレスすることで、0.5mmの厚さの成形体を得た。
前記アクリル系樹脂成形材料及び前記成形体について、前記方法で評価した。結果を表2に示す。
[実施例2、比較例1〜4]
アクリル系樹脂成形材料の組成及び配合比を表2に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って行った。なお、比較例2では、耐擦傷性向上助剤として、ノフアロイKA832(商品名、日油社製)を5.0質量部添加した。結果を表2に示す。
Figure 2017014395
実施例1では、往復回数10回目〜400回目の間での動摩擦係数の最大値は0.33であり、十分な滑り性を発揮しており、耐擦傷性が良好なことが分かった。また、内部ヘイズ値は0.2%であり、高い透明性を有することが分かった。さらに、マルテンス硬さ及びビカット軟化温度は、PMMAを用いている比較例1と比較してほぼ同等の性能を保っていることが分かった。したがって、実施例1ではPMMAが有する透明性、硬度及び耐熱性を維持したまま、表面の動摩擦係数を低減していることが分かった。
実施例2では、実施例1における重合体(Y)を、重合体(Y−1)から重合体(Y−2)に変更したが、実施例1と同様に十分低い動摩擦係数を有しており、耐擦傷性が良好であることが確かめられた。また、内部ヘイズ値が0.1%であり、高い透明性を有することが分かった。
比較例1では、重合体(Y)を含まず、往復摩擦試験において動摩擦係数が常に0.4を超えており、実施例と比べて傷つきやすい表面であることが分かった。
比較例2では、重合体(Y)の代わりに、耐擦傷性向上助剤としてノフアロイKA832(商品名、日油社製)を添加したが、動摩擦係数は低く耐擦傷性は向上したものの、内部ヘイズ値は37.8%であり、成形体は白濁していた。また、マルテンス硬さ及びビカット軟化温度も実施例と比較して低下した。
比較例3では、重合体(X)を使用せず、重合体(Y−1)のみを使用したが、成形体が柔らかくなりすぎて傷付きやすくなり、動摩擦係数が高くなった。
比較例4では、実施例2において重合体(X−1)と重合体(Y−2)との質量比を50/50に変更したが、成形体が柔らかくなりすぎて傷付きやすくなり、動摩擦係数が高くなった。
本発明に係る成形体は優れた耐擦傷性及び透明性を有するため、車両外装用成形体、洗面器や便器などのサニタリー用途の成形体などとして利用できる。

Claims (5)

  1. 単量体単位としてメチルメタクリレートを、80質量%を超えて含む重合体(X)を含むアクリル系樹脂成形材料からなる成形体であって、
    前記成形体の表面に1μm以上の厚さの被覆層を有さず、
    前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値が0.4以下であり、且つ
    前記成形体の内部ヘイズ値が2.5%以下である成形体。
  2. 前記成形体の表面のマルテンス硬さが140〜250N/mmである請求項1に記載の成形体。
  3. 前記アクリル系樹脂成形材料のビカット軟化温度が108℃以上である請求項1又は2に記載の成形体。
  4. 前記成形体の表面の算術平均粗さRaが5.0以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
  5. 前記アクリル系樹脂成形材料が、単量体単位として、メチルメタクリレートと、炭素数が8以上30以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとを含む重合体(Y)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体。
JP2015132684A 2015-07-01 2015-07-01 成形体 Active JP6657619B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015132684A JP6657619B2 (ja) 2015-07-01 2015-07-01 成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015132684A JP6657619B2 (ja) 2015-07-01 2015-07-01 成形体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017014395A true JP2017014395A (ja) 2017-01-19
JP6657619B2 JP6657619B2 (ja) 2020-03-04

Family

ID=57835807

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015132684A Active JP6657619B2 (ja) 2015-07-01 2015-07-01 成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6657619B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017206627A (ja) * 2016-05-19 2017-11-24 三菱ケミカル株式会社 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法、ならびに成形体
KR20180099208A (ko) * 2017-02-28 2018-09-05 동우 화인켐 주식회사 편광판용 표면처리필름, 이를 포함하는 편광판 및 화상 표시 장치
JP2020016849A (ja) * 2018-07-27 2020-01-30 住友ベークライト株式会社 光学樹脂層および樹脂層付眼鏡レンズ
WO2023157793A1 (ja) * 2022-02-15 2023-08-24 三菱ケミカル株式会社 熱可塑性樹脂組成物、成形材料及び成形体

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS55164209A (en) * 1979-06-11 1980-12-20 Nippon Carbide Ind Co Ltd Thermoplastic resin lubricant and lubricating thermoplastic resin composition

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS55164209A (en) * 1979-06-11 1980-12-20 Nippon Carbide Ind Co Ltd Thermoplastic resin lubricant and lubricating thermoplastic resin composition

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017206627A (ja) * 2016-05-19 2017-11-24 三菱ケミカル株式会社 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法、ならびに成形体
KR20180099208A (ko) * 2017-02-28 2018-09-05 동우 화인켐 주식회사 편광판용 표면처리필름, 이를 포함하는 편광판 및 화상 표시 장치
WO2018159917A1 (ko) * 2017-02-28 2018-09-07 동우화인켐 주식회사 편광판용 표면처리필름, 이를 포함하는 편광판 및 화상 표시 장치
KR101971871B1 (ko) * 2017-02-28 2019-04-24 동우 화인켐 주식회사 편광판용 표면처리필름, 이를 포함하는 편광판 및 화상 표시 장치
JP2020016849A (ja) * 2018-07-27 2020-01-30 住友ベークライト株式会社 光学樹脂層および樹脂層付眼鏡レンズ
WO2023157793A1 (ja) * 2022-02-15 2023-08-24 三菱ケミカル株式会社 熱可塑性樹脂組成物、成形材料及び成形体

Also Published As

Publication number Publication date
JP6657619B2 (ja) 2020-03-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7411379B2 (ja) メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、フィルム
EP3438142B1 (en) Methacrylic resin composition and molded body
US9920148B2 (en) Vehicle part cover including methacrylic-based resin
JP6193465B2 (ja) アクリル系樹脂、及び成形体
JP6202805B2 (ja) メタクリル系樹脂を含むフィルム
JP6657619B2 (ja) 成形体
CN112154185B (zh) 甲基丙烯酸系树脂组合物和成型体
JP7365104B2 (ja) メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、フィルム
JP5650857B2 (ja) 成形体
JP2016169282A (ja) メタクリル系樹脂組成物
JP2012087251A (ja) 耐衝撃性アクリル系樹脂組成物、成形体及び車両用部材
JP2012233180A (ja) メタクリル系樹脂を含む計器カバー
KR20150003205A (ko) 광 확산성 수지 조성물 및 그의 성형품
JP2018104721A (ja) メタクリル系樹脂の製造方法、メタクリル系樹脂、及び成形体
JP6207230B2 (ja) メタクリル系樹脂の製造方法、メタクリル系樹脂、及び成形体
JP2014024361A (ja) メタクリル系樹脂を含む車両用部材
JP2010260987A (ja) アクリル系共重合体の製造方法
JP6326530B2 (ja) メタクリル系樹脂を含むフィルム
JP5008155B2 (ja) アクリル系樹脂の製造方法、アクリル系樹脂、および成形体
JP5505973B2 (ja) 熱可塑性樹脂の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180614

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190402

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190806

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191003

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200107

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200120

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6657619

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151