JP6657619B2 - 成形体 - Google Patents
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Description
前記成形体の表面に1μm以上の厚さの被覆層を有さず、
前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値が0.4以下であり、且つ
前記成形体の内部ヘイズ値が2.5%以下である成形体。
本発明に係る成形体は、単量体単位としてメチルメタクリレートを、80質量%を超えて含む重合体(X)を含むアクリル系樹脂成形材料からなる。前記成形体の表面には1μm以上の厚さの被覆層を有さない。前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値は0.4以下である。また、前記成形体の内部ヘイズ値は2.5%以下である。
本発明において動摩擦係数は、後述する往復摩擦試験により得られる値である。該往復摩擦試験で測定した動摩擦係数によって、実使用環境下での耐擦傷性を正確に数値化することが可能になった。具体的には、金属製や樹脂製の摺動子を使用した動摩擦係数の測定方法では、実使用環境での接触が想定される衣類等とは材質が大きく異なる上に、繰り返し接触させたときの摩擦状態の変化をとらえることができなかった。本発明では、新たに見出した往復摩擦試験方法で測定した動摩擦係数によって、耐擦傷性に優れる成形体を特定するに至った。
本発明において内部ヘイズは、後述する方法により測定される値である。本発明に係る成形体の内部ヘイズ値は2.5%以下であり、1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下が更に好ましい。内部ヘイズ値が低い方が透明性に優れる成形体が得られる。成形体が優れた透明性を有することで、ライトガイド、ランプカバー、導光板などの導光体を含む光学部品に該成形体を使用することが可能になる。また、成形体が優れた透明性を有することで着色時の発色性も良好となることから、別工程での塗装や染色による着色が不要になり、また少ない顔料で良好な発色性を実現することができる。例えば、ピアノブラックと呼ばれるような艶のある黒色を実現するためには、内部ヘイズ値が低く透明性が高い材料と黒色顔料とを組み合せることが有効であり、内部ヘイズを低く抑えることでより高級感のあるピアノブラック調の成形体を得ることができる。
本発明においてマルテンス硬さは、後述する方法により測定される値である。該方法で測定されるマルテンス硬さは、成形体表面の硬さを表しており、硬い物が成形体表面に接触した際に凹み傷として跡が残るかどうかを判断する指標となる。本発明に係る成形体の表面のマルテンス硬さは、140〜250N/mm2が好ましく、160〜230N/mm2がより好ましく、170〜210N/mm2が更に好ましい。該マルテンス硬さが140N/mm2以上であれば、成形体表面が柔らかすぎて傷付きやすくなる現象を防ぐことができる。また、該マルテンス硬さが250N/mm2以下であれば、成形体表面が硬く脆くなって傷付きやすくなる現象を防ぐことができる。
本発明においてビカット軟化温度は、後述する方法により測定される値である。該ビカット軟化温度はアクリル系樹脂成形材料の耐熱変形温度を表す指標である。本発明に係るアクリル系樹脂成形材料のビカット軟化温度は、108℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、112℃以上が更に好ましい。該ビカット軟化温度が108℃以上であれば、PMMAと同等の耐熱変形温度を有する材料として扱うことができる。なお、該ビカット軟化温度の上限は特に限定されない。
本発明において算術平均粗さRaは、後述する方法により測定される値である。本発明に係る成形体は、その表面が平滑であることが好ましい。表面が平滑であり、実質的に鏡面で光沢や艶があるものは、アクリル系樹脂成形材料からなる成形体の特徴である外観の高級感や良好な発色性が発揮される。該算術平均粗さRaは、成形体表面の平滑性を表す指標である。本発明に係る成形体の表面の算術平均粗さRaは、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましい。該算術平均粗さRaが5.0以下であることにより、成形体の外観の高級感や良好な発色性が発揮される。なお、該算術平均粗さRaの下限は特に限定されない。
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は重合体(X)を含む。重合体(X)は単量体単位として、メチルメタクリレートを、80質量%を超えて含み、その他の単量体(x1)を含むことができる。
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は、重合体(X)の改質剤として、重合体(X)以外の重合体(Y)を含むことができる。重合体(Y)は、単量体単位として、メチルメタクリレートと、炭素数が8以上30以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)と示す)とを含む。重合体(Y)は、単量体単位として、マクロモノマー(y2)、その他の単量体(y3)を含んでもよい。
長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)は、成形体の表面改質機能を有する。重合体(Y)が単量体単位として長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)を含むことにより、成形体表面が高い水接触角を示し、防汚性及び耐擦傷性が向上する。長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)が有する炭素数が8以上30以下の長鎖アルキル基は、直鎖と分岐のいずれでもよく、両者の混合でも良い。ただし、耐擦傷性向上に寄与する表面の滑り性付与の観点から直鎖の方が好ましい。また、前記長鎖アルキル基は、飽和と不飽和のいずれでもよく、両者の混合物でも良い。飽和の方が重合体(X)との相溶性に優れる傾向にあるが、不飽和の方が結晶性が低いため低温域での透明性に優れる傾向にある。前記長鎖アルキル基の炭素数は8以上30以下であり、10以上24以下が好ましく、11以上22以下がより好ましく、12以上18以下がさらに好ましい。該炭素数が8以上であれば水接触角が向上し、炭素数が30以下であれば相溶性や取扱い性に優れる。
マクロモノマー(y2)は、単量体単位としてメチルメタクリレートを80質量%以上含み、且つ、末端に重合性不飽和基を有する高分子量の単量体(モノマー)である。重合体(Y)が単量体単位としてマクロモノマー(y2)を含むことで、重合体(Y)に、重合体(X)との相溶性確保と表面改質効果の向上という2つの相反する機能を付与することができる。重合体(Y)にマクロモノマー(y2)を共重合することで、マクロモノマー(y2)は重合体(X)に近い組成を有するため相溶性が確保できる。さらに、重合体(Y)の主鎖においては長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)の密度を大きくすることができ、表面改質効果を高めることができる。すなわち、マクロモノマー(y2)の単量体単位が相溶性を担い、長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)の単量体単位を含む主鎖が表面改質効果を担うことで、機能分離することができる。
マクロモノマー(y2)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4,680,352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04,304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報及び米国特許5,147,952号明細書)並びに熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
その他の単量体(y3)は、メチルメタクリレートと長鎖アルキル(メタ)アクリレート(y1)及びマクロモノマー(y2)以外の単量体であり、これらの単量体と共重合性を有するものであれば特に制限されるものではないが、重合体(Y)の耐熱分解性を向上することができるため、単官能アクリレートであることが好ましい。これらの単量体に単官能アクリレートを共重合させることで、ポリメチルメタクリレートの解重合反応(ジッパー開裂)を防ぐことができる。
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は、重合体(X)及び重合体(Y)以外に、その他の成分(Z)として、その他の樹脂や添加剤を含むことができる。
その他の樹脂としては、重合体(X)及び重合体(Y)以外であれば特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を使用できる。
本発明に係るアクリル系樹脂成形材料は、剛性や寸法安定性等の各種特性を付与するため、所定の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等)、難燃剤(有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等のリン系、ハロゲン系、シリカ系、シリコーン系等)、難燃助剤(酸化アンチモン類、金属酸化物、金属水酸化物等)、硬化剤(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等のアミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂類、液状ポリメルカプタン、ポリサルファイド等のポリメルカプタン、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデシル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水クロレンディック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)等の酸無水物等)、硬化促進剤(2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、ベンジルジメチルアミン、2−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、テトラメチルヘキサンジアミン等の三級アミン類、トリフェニルホスファインテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアミンテトラフェニルボレート等のボロン塩、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン等のキノイド化合物等)、帯電防止剤(ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体等)、導電性付与剤、応力緩和剤、離型剤(アルコール、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等)、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤(ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛等)、衝撃付与剤、相溶化剤、核剤、強化剤、流動調整剤、染料(ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等)、増感剤、着色剤(酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等の無機顔料、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタリシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等の有機系顔料、リン片状のアルミニウムのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミニウム顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属メッキやスパッタリングで被覆したものなどのメタリック顔料等)、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等)、消泡剤(シリコーン系消泡剤、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤等)、カップリング剤、光拡散性粒子、防錆剤、抗菌・防カビ剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記光拡散性粒子としては、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、ガラスビーズ等の無機粒子、スチレン架橋ビーズ、MS(メチルメタクリレート−スチレン)架橋ビーズ、シロキサン系架橋ビーズ等の有機粒子等が挙げられる。また、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、MS樹脂、環状オレフィン樹脂等の透明性の高い樹脂材料からなる中空架橋粒子及びガラスからなる中空粒子等も挙げられる。無機粒子においては、アルミナ又は酸化チタンの無機粒子が好ましい。これらの光拡散性粒子は単独で用いることができ、又は複数を併用することもできる。
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系樹脂成形材料が重合体(X)と重合体(Y)を含む場合、アクリル系樹脂成形材料の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
1)重合体(X)と重合体(Y)を別々に製造し、溶融混練する。
2)重合体(X)の原料である単量体と重合体(Y)からなるシラップを調製した後に重合し、重合体(X)と重合体(Y)の混合物を得る。
3)重合体(Y)の原料である単量体と重合体(X)からなるシラップを調製した後に重合し、重合体(X)と重合体(Y)の混合物を得る。
前記アクリル系樹脂成形材料の製造方法においては、製造する重合体の重合度を調整する目的で、重合開始剤を用いてもよい。該重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系のラジカル重合開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として使用してもよい。
前記アクリル系樹脂成形材料の製造方法においては、本発明の目的を損なわない範囲で、連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤は、分子量制御や末端二重結合の封止による耐熱分解性向上を目的に添加される。連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等が挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でも、取扱性や安定性の点からアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。アルキルメルカプタン類としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの連鎖移動剤は、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、例えば使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001〜3質量部の範囲内で用いることができる。
本発明に係る成形体は、本発明に係るアクリル系樹脂成形材料を成形することにより得られる。成形方法としては、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、Tダイ成型、プレス成形、押出成形、発泡成形、流延法によるフィルム成形等が挙げられる。また、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。
本発明に係る成形体は、例えば、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用途、照明機器、ハウジング用途、サニタリー用途、弾性遊戯機器用途、ヘッドランプカバー、リアランプカバー、リアコンビランプカバー、バイザー、バグガード、計器カバー、メータパネル等の車両用部品、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。該成形体は、その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。また、該成形体は、他の樹脂の改質材として用いることもできる。
往復摩擦試験による動摩擦係数の測定は、以下の条件で実施した。
装置:HEiDON HHS2000(商品名、新東科学社製)
解析ソフト:トライボソフト(商品名、新東科学社製)
測定モード:一定荷重往復測定
移動距離:30mm
移動速度:50mm/秒
一定荷重:2.45N(250gf)
サンプリング周期:10ms
摺動子:半径200mm以上300mm以下の球体表面に相当する曲面上に、両面テープ(ニチバン社製、商品名:ナイスタック、20mm幅)を使用し、金巾(東洋紡社製、綿100%、色名:サラシ、品名:6570)を2cm角の大きさで貼付した。
・動摩擦係数の最大値の算出
動摩擦係数の最大値は、往復回数が10回目から400回目の間で最も高かった動摩擦係数の値とした。なお、往復回数が少ない0〜9回目の範囲では、摺動子と試験片表面とが徐々に馴染んでいる段階であり、動摩擦係数が安定しないため算出範囲外とした。また、長期にわたる使用での耐擦傷性能の変化を明らかにするため、往復回数は400回を上限とした。
内部ヘイズは、成形体のヘイズ全体から表面形状に起因する外部ヘイズを除くことで求められる。本発明における内部ヘイズは、PMMA(三菱レイヨン社製、製品名:VH001)の内部ヘイズがゼロであると仮定し、本実施例と同じ方法で作製した成形体とのヘイズの差を算出することで求めた。ヘイズは、JIS K7165:1981に準拠し、ヘイズメーター(日本電色社製、製品名:NDH2000)を使用し、D65光源で測定した。
JIS B0601:2001に準拠し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、製品名VK−X100)を使用して、成形体の表面の算術平均粗さRaを評価した。具体的には、10倍の対物レンズを使用し、撮像領域全体を使用して算術平均粗さRaを求めた。
本発明では、下記の条件で測定した数値をマルテンス硬さとして扱った。
装置:FISCHERSCOPE HM2000(商品名、ヘルムートフィシャー社製、微小硬度計)
圧子:ビッカース圧子(四面ダイヤモンド錐体)
評価プログラム:[押込み(100mN/5秒)]→[クリープ(100mN、5秒)→[除荷(100mN/5秒)]。
JIS K7206:1999に準拠し、全自動ヒートデストーションテスター(安田精機製作所社製、製品名:No.148−HDA)を使用し、ビカット軟化温度を測定した。微量混練射出成型機(井元製作所社製、製品名:18D7)を使用し、240℃でアクリル系樹脂成形材料を射出して、2mmの厚さの試験片を作製し、これを測定に用いた。
実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
・メチルメタクリレート(MMA):三菱レイヨン社製、アクリエステルM(商品名)
・メチルアクリレート(MA):三菱化学社製
・ラウリルアクリレート(LA):大阪有機化学工業社製
・2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(V−60(AIBN)):和光純薬工業社製
・2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN):大塚化学社製
・1−オクタンチオール:和光純薬工業社製
・硫酸ナトリウム:和光純薬工業社製
・メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム:三菱レイヨン社製、アクリエステルSEM−Na(商品名)
・2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V−50):和光純薬工業社製
・酢酸コバルト(II)四水和物:和光純薬工業社製、和光特級
・ジフェニルグリオキシム:東京化成工業社製、EPグレード
・三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体:東京化成工業社製、EPグレード
・1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO):日油社製。
重合体のMw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220)を使用し、以下の条件にて測定した。
カラム:TSK GUARD コバルトLUMN SUPER HZ−L(4.6×35mm)と2本のTSK−GEL SUPER HZM−N(6.0×150mm)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:0.6mL/分
尚、重合体のMw及びMnは、Polymer Laboratories製のPMMA(Mp(ピークトップ分子量)=141,500、55,600、10,290及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して求めた。
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1200Lの反応容器内に、17質量%水酸化カリウム水溶液を61.6質量部、MMAを19.1質量部及び脱イオン水を19.3質量部仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、更に4時間撹拌した。この後、反応装置内の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1,050Lの反応容器内に、脱イオン水を900質量部、アクリエステルSEM−Naを60質量部、前記メタクリル酸カリウム水溶液を10質量部及びMMAを12質量部入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤としてV−50を0.08部添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを利用してMMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤(1)を得た。
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下、酢酸コバルト(II)四水和物を2.00g(8.03mmol)、ジフェニルグリオキシムを3.86g(16.1mmol)、及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテルを100ml入れ、室温で2時間攪拌した。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を20ml加え、更に6時間攪拌した。得られたものをろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄した。その後、これを100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体であるコバルト錯体(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水を145質量部、硫酸ナトリウムを0.1質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)(固形分10質量%)を0.26質量部入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレートを95質量部、メチルアクリレートを5質量部、製造例2で製造したコバルト錯体(1)を0.0016質量部、及び重合開始剤としてパーオクタOを0.1質量部加え、水性分散液とした。次いで、重合装置内を十分に窒素置換し、前記水性分散液を80℃に昇温してから4時間保持した後に92℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。マクロモノマーの水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。その後、これを40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(y2−1)を得た。マクロモノマー(y2−1)のMwは29,000、Mnは15,000であった。マクロモノマー(y2−1)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
脱イオン水150質量部、硫酸ナトリウム0.3質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26質量部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。冷却管付セパラブルフラスコに、MMAを99質量部、MAを1質量部、連鎖移動剤としてn−オクタンチオールを0.2質量部、AIBNを0.1質量部仕込み、撹拌して均一な原料組成物を得た。次いで、該原料組成物に前記懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。該シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、該シラップ分散液が75℃になった時点で、該シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。該懸濁液を40℃以下に冷却した後に、該懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、重合体(X−1)を得た。重合体(X−1)のMwは86,000、Mnは47,000であった。重合体(X−1)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
脱イオン水150質量部、硫酸ナトリウム0.3質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26質量部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。冷却管付セパラブルフラスコに、MMAを80質量部、LAを20質量部、連鎖移動剤としてn−オクタンチオールを0.2質量部、AIBNを0.1質量部仕込み、撹拌して均一な原料組成物を得た。次いで、該原料組成物に前記懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。該シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、該シラップ分散液が75℃になった時点で、該シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。該懸濁液を40℃以下に冷却した後に、該懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、重合体(Y−1)を得た。重合体(Y−1)のMwは126,000、Mnは70,000であった。重合体(Y−1)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム0.1質量部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26質量部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。冷却管付セパラブルフラスコに、マクロモノマー(y2−1)を40質量部、MMAを40質量部、LAを20質量部、連鎖移動剤としてn−オクタンチオールを0.1質量部仕込み、撹拌しながら50℃に加温し、シラップの状態の組成物を得た。該組成物を40℃以下に冷却した後、該組成物にAMBNを0.3質量部溶解させ、原料組成物を得た。次いで、該原料組成物に前記懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。該シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、該シラップ分散液が75℃になった時点で、該シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。該懸濁液を40℃以下に冷却した後に、該懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、重合体(Y−2)を得た。重合体(Y−2)のMwは93,000、Mnは33,000であった。重合体(Y−2)の組成、Mw、Mn、Mw/Mnについて表1に示す。
ラボプラストミル(東洋精機製)を使用し、製造例4で得た重合体(X−1)90質量部と、製造例5で得た重合体(Y−1)10質量部とを溶融混練し(230℃、10分間、30rpm)、アクリル系樹脂成形材料を得た。
アクリル系樹脂成形材料の組成及び配合比を表2に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って行った。なお、比較例2では、耐擦傷性向上助剤として、ノフアロイKA832(商品名、日油社製)を5.0質量部添加した。結果を表2に示す。
Claims (5)
- 単量体単位としてメチルメタクリレートを80質量%を超えて含む重合体(X)(単量体単位として、炭素数が8以上30以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むものを除く)と、
単量体単位として、メチルメタクリレートと、炭素数が8以上30以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、を含む重合体(Y)と、
を含むアクリル系樹脂成形材料からなる成形体であって、
前記重合体(X)の割合は、前記重合体(X)と前記重合体(Y)との合計100質量部に対して、60〜98質量部であり、
前記成形体の表面に1μm以上の厚さの被覆層を有さず、
前記成形体の表面に2.45N(250gf)の一定荷重で綿布を摺動子として往復摩擦試験した時、往復回数10〜400回の範囲内で動摩擦係数の最大値が0.4以下であり、且つ
前記成形体の内部ヘイズ値が2.5%以下である成形体。 - 前記成形体の表面のマルテンス硬さが140〜250N/mm2である請求項1に記載の成形体。
- 前記アクリル系樹脂成形材料のビカット軟化温度が108℃以上である請求項1又は2に記載の成形体。
- 前記成形体の表面の算術平均粗さRaが5.0以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
- 前記重合体(Y)に含まれる単量体単位としてのメチルメタクリレートの量は、60〜90質量%であり、
前記重合体(Y)に含まれる単量体単位としての前記アルキル(メタ)アクリレートの量は、5〜40質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体。
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