JP2017203137A - コーティング材、及びガスバリア性フィルム - Google Patents

コーティング材、及びガスバリア性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 金属蒸着フィルム又は金属箔面のガスバリア機能を向上させつつ、ラミネート後に高い接着力を持つコーティング材を提供することにある。加えて、該コーティング材を金属蒸着フィルム又は金属箔面に塗布したガスバリア性フィルム、および該フィルムからなる包装材を提供すること。【解決手段】ポリオールを含有する金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材において、さらに一般式(1)で表される特定の構造を有するリン化合物を含有することを特徴とする、アルミ蒸着フィルム又はアルミ箔面保護用コーティング材による。【選択図】 なし

Description

本発明は、金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材、及びそれを用いたガスバリア性フィルムに関する。
食品や飲料等の包装材料は、内容物の保護のため水蒸気、酸素バリア等のガスバリア性が求められることが多い。包装材料にガスバリアを付与する方法はガスバリアコーティングを延伸フィルムに施す方法や、ガスバリア性の樹脂を共押し出しにより多層フィルム中の層に設けるなどの方法が広く用いられているが、中でもフィルムへの蒸着法は、ガスの種類によらずに容易にバリア機能を付与できる優れた方法である。
蒸着を行うフィルムとしては延伸フィルムと、未延伸フィルムとがあり、特にアルミニウム等の金属蒸着フィルムでは、これら両種類の基材がよく使用されている。しかし、蒸着層の厚みは一般に10〜50nmと薄いため、ピンホールが生じやすく、ガスバリア機能が安定しないことがある。特に、基材フィルムが未延伸フィルムの場合では延伸フィルムに比べて、フィルムが伸びやすいこと、および基材フィルム自体のガスバリア性が乏しい事により特にガスバリアが不安定である。そのため、安定したガスバリア性を必要とする包装には、未延伸フィルムに蒸着したフィルムは使用しにくい。一方、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層をガスバリア層として設けた透明蒸着フィルムは蒸着層が金属に比べて脆いため、未延伸フィルムでは殆ど量産化されていない。そのため、寸法安定性が高い延伸フィルムへの蒸着が主体であるが、依然としてクラック、ピンホールによりバリア性能がばらつく問題点がある。
以上のガスバリアが不安定な問題の解決のため、蒸着層をオーバーコート層により保護することが、特に透明蒸着では広く行われている。この理由は、透明蒸着は一般的に脆い金属酸化物層をフィルム上に設置するため、オーバーコート層がないとバリア性能が安定しないためである。透明蒸着へのオーバーコート技術は、例えば、特許文献1、特許文献2には無機酸化物層、いわゆる透明蒸着層上に、水溶性高分子並びに、(a)1種以上の金属アルコキシド、(b)1種以上の金属アルコキシドの加水分解物、または(c)塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液、あるいは、水/アルコール混合溶液を主成分とするガスバリア被覆液を塗布してなるガスバリア被覆層を持つ透明ガスバリア積層体について記載されている。これの技術で用いられるオーバーコート層は一般に水溶性高分子を用いているため塗工乾燥性がわるい上、反応制御が困難なゾルゲルプロセスを含むためオーバーコート液の反応管理、再利用が困難などの、オーバーコートプロセスが煩雑な問題がある。
一方、アルミニウム等の金属蒸着層は、透明蒸着に較べて曲げへの追随性が良好である金属層であるため、透明蒸着に較べるとオーバーコート層が設置されているケースが少ない。しかし、金属蒸着層でもピンホール等が一定割合で存在しているためこれらを基点としてバリア性能が悪くなることがある。またこのような現象は特に耐熱性やフィルムの寸法安定性が劣るために生じるため、この解決のために特許文献3では、基材層が少なくとも2層からなり、ポリプロピレンからなる樹脂組成物Aと、ノルボルネンとエチレンの共重合体からなる環状ポリオレフィン系高分子とポリオレフィンの混合物である樹脂組成物Bとを積層した構成からなる該基材層の上に、アルミ蒸着層を設けた無延伸アルミ蒸着フィルムが例示されている。本方法は耐熱性、寸法安定性がポリプロピレン単独よりも高い、環状ポリオレフィン系高分子を含むフィルム基材上に蒸着することでバリア性等の安定性を付与している。しかし本方法は、基材フィルムとして2層構成のフィルムを用いる必要があるため、製法が煩雑で高コスト化する問題がある。
特許文献4には、ポリエステルフィルム基材の少なくとも一面に、アンカー蒸着層、アルミニウム蒸着層、ガスバリア樹脂層が順次積層されているガスバリア性蒸着フィルムが記載されている。しかしながら、コーティングする蒸着面は金属表面であるので、これまでの接着剤・保護用コーティング材では密着性がなく、接着強度が著しく低くなる問題が生じうる。
特開2012−101505号公報 特開2012−250470号公報 特開2011−224921号公報 特開2015−193140号公報
発明が解決しようとする課題は、金属蒸着フィルム又は金属箔面のガスバリア機能を向上させつつ、ラミネート後に高い接着力を持つコーティング材を提供することにある。加えて、該コーティング材を金属蒸着フィルム又は金属箔面に塗布したガスバリア性フィルム、および該フィルムからなる包装材を提供することにある。
本発明者らは、ポリオールを含有する、金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材において、さらに特定のリン化合物を含有するコーティング材を見出すことにより前記課題を解決した。
本発明によれば、各種金属蒸着フィルム又は金属箔での酸素バリア性及び水蒸気バリア性の向上能力に優れ、金属蒸着フィルム又は金属箔面をラミネートした際に高い接着力を持つ保護用コーティング材を提供することができる。
本発明では、金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材の成分として、ポリオール、特にオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオールを含有することに特徴を有する。
即ち、本発明は以下の項目から構成される。
1.ポリオールを含有する金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材において、
さらに一般式(1)で表されるリン化合物を含有することを特徴とする、アルミ蒸着フィルム又はアルミ箔面保護用コーティング材、
Figure 2017203137
(Rは、置換基としてアルキル基を有しても良い炭素数2〜6のアルキレン基、lは0又は1、mは10〜10000、nは1〜20の整数を表す。)
2.金属がアルミニウムである1.に記載のコーティング材、
3.ポリオールのガラス転移点が15℃以上である、1.又は2.に記載のコーティング材、
4.ポリオールが、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオールである、1.〜3.の何れかに記載のコーティング材、
5.オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の、多価カルボン酸全成分に対する含有率が70〜100質量%である、4.に記載のコーティング材、
6.前記オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物が、オルトフタル酸またはその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸またはその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸またはその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸またはその無水物、及び2,3−アントラセンジカルボン酸またはその無水物から成る群から選ばれる少なくとも1つの多価カルボン酸またはその無水物である4.又は5.に記載のコーティング材、
7.前記多価アルコール成分が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分である4.〜6.の何れかに記載のコーティング材。
8.コーティング材がポリイソシアネート化合物を含有する、1.〜7.の何れかに記載のコーティング材、
9.コーティング材のポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる1種である、8.に記載のコーティング材、
10.1.〜9.の何れかに記載のコーティング材を金属蒸着フィルム又は金属箔面にコーティングした、ガスバリア性積層体、
11.金属がアルミニウムである10.に記載のガスバリア性積層体、
12.10.又は11.に記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材。
本発明で用いられるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオールなどを挙げることができ、コーティング材として使用できるポリオールであれば特に制限はない。
本発明では、各種ポリオールの中でも、バリア性に優れることから、特に以下のポリエステルポリオールが好ましい。
[ポリエステルポリオール]
本発明でコーティング材として用いるポリエステルポリオールは、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合することにより製造される。ポリエステルの分子量としては、コーティング材として十分な膜の靭性や塗工適性、溶媒溶解性が付与できるのであれば特に制限はないが数平均分子量で1000〜50000、さらに好ましくは、1500〜30000である。ポリエステル末端の官能基としても特に制限はなく、アルコール末端でも、カルボン酸末端でも、これらの両方を持っていても良い。但し、イソシアネート系硬化剤を併用する場合には、アルコール末端が主体であるポリエステルポリオールとする必要がある。
[ポリエステルのガラス転移温度(Tg)]
本発明で用いるポリエステルのTgは15℃以上である必要がある。これ以上温度が低いと、樹脂がコーティング操作後に粘着性を持ち、ブロッキングを生じやすくなり、コーティング後の巻き取り操作がしにくくなるためである。Tgが15℃以下になるとブロッキング防止材の添加によっても巻き芯付近の圧力が高い状況下でもブロッキング防止対応が困難になるためである。Tgのより好ましい温度は18℃以上、さらに好ましくは25℃以上である。
本発明で用いるポリエステルポリオールは、多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分とを重縮合して用いる。
[多価カルボン酸成分]
本発明の多価カルボン酸成分は、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含むことに特徴を有する。
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3−アントラセンカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していてもよい。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。また、これらのポリカルボン酸全成分に対する使用率が70〜100質量%であるポリエステルポリオールであると、バリア性の向上効果が高い上に、コーティング材として必須の溶媒溶解性に優れることから特に好ましい。
本発明では発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその無水物、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、有機溶剤溶解性とガスバリア性の観点からコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。
[多価アルコール成分]
本発明で用いる多価アルコール成分はガスバリア補填の性能を示すポリエステルを合成することができれば特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分を含有することが好ましい。中でも、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを主成分として使用することが最も好ましい。
本発明では前述の多価アルコール成分を用いることが好ましいが、このほか、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、ジオールとしては1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが、三価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられる。特に、三価のアルコールの内、グリセリン及び、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを併用したポリエステルは、分岐構造に由来して架橋密度も適度に高いことにより有機溶媒溶解性が良好な上、バリア機能も優れており、特に好ましく用いられる。
本発明のポリエステルを得る反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等のチタン系触媒、テトラ−ブチル−ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1〜1000ppm用いられ、より好ましくは10〜100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回るとイソシアネート硬化剤を用いる場合にウレタン化反応を阻害する問題が生じる場合がある。
[リン化合物]
本発明のコーティング材は、一般式(1)で表されるリン化合物を含有することに特徴を有する。
Figure 2017203137
(Rは、置換基としてアルキル基を有しても良い炭素数2〜6のアルキレン基、lは0又は1、mは5〜10000、nは1〜20の整数を表す。)
一般式(1)のリン化合物を含有することにより、従来技術では困難であった、金属蒸着フィルム又は金属箔面への接着性の高いコーティング材とすることができる。一般式(1)で表されるリン化合物は、発明の課題を解決する限り、特に制限はない。
[高分子量のリン酸化合物がよい推定理由]
本発明で用いるリン酸化合物は、側鎖末端にリン酸基を持つ高分子量の化合物である。これは、リン酸、ポリリン酸、リン酸基をもつが低分子量である化合物とは異なりコーティング層を形成する樹脂と、リン酸基をもつ高分子量化合物とが強い絡み合いを生じることにより、リン酸が結合したアルミ層とコーティングの樹脂層とが強く接着できるため、高い接着力を持つと推定される。従って、一般式(1)で表されるリン化合物の好ましい分子量としては数平均分子量で3000以上、更に好ましくは10000以上である。
[リン化合物のコーティング材中での含有率]
本発明で用いるリン酸化合物のコーティング材固形成分中での含有率は特に制限はないが、好ましくは0.1質量%〜10質量%、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。コーティング材中でのリン酸化合物の含有率が少なすぎると、金属蒸着面、金属箔との接着力が充分ではなくなる恐れがある。多すぎるとブロキング性能の悪化などのコーティング特性に対する問題が生じる虞がある。
[コーティング材としてポリエステルのみを用いた場合の特徴]
本発明では、コーティング材にポリエステル単独を用いてもよいし、ポリエステルと反応する硬化剤を添加しても良い。ポリエステル単独をコーティング材として用いた場合は、利点として単純なオーバーコートワニスとして例えば、塗工液の増粘の恐れがなく塗工製造の管理が容易、コーティング液を希釈再利用可能であり、加えて硬化工程(いわゆるエージング工程)が不要である点が例示できる。このとき、使用するポリエステルの末端は、ポリオールでもポリカルボン酸でも、この両者の混合物であっても問題なく用いることができる。その一方で、コーティング層の樹脂が直鎖であるため耐熱性や、耐摩耗性が十分ではない場合や、ボイルやレトルト包装に使用しにくい問題が生じる場合がある。
[コーティング材として硬化剤を併用した場合の特徴]
一方、コーティング層に硬化剤を用いる場合にはフィルムへのコーティングであるためフィルムの耐熱性の観点からイソシアネート硬化系が好ましく、この場合にはコーティング材の樹脂成分がポリエステルポリオールである必要がある。
一方、エポキシ系化合物を硬化剤として用いる場合にはポリエステルポリカルボン酸である必要がある。これらの場合ではコーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。
従って、本発明のコーティング剤の使用の際の硬化剤の有無は、これらの利点、欠点を踏まえた上で適宜決定すると良い。
[ポリイソシアネート化合物]
本発明のコーティング材は、前述の通りポリイソシアネート化合物を含有してもよい。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物は、ポリエステルが水酸基を有する場合、少なくとも一部が反応し、ウレタン構造を作ることで樹脂成分として高極性化し、ポリマー鎖間を凝集させることでガスバリア機能を更に強化できる。また、コーティング材の樹脂が直鎖型の樹脂である場合に、3価以上のポリイソシアネートで架橋することで、耐熱性や、耐摩耗性を付与することができる。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物としてはジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよいが、骨格の一部に芳香族環、または脂肪族環を含有するとガスバリア向上機能の観点から好ましい。たとえば、芳香族環を持つイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、脂肪族環を持つイソシアネートとしては、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルンジイソシアネート、あるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
[ポリイソシアネート化合物の3官能化部分の構造]
ラミネート用接着剤の主成分である直鎖型のポリオールの硬化剤としては3官能のポリイソシアネートが広く用いられている。これらの3官能化のための分岐構造を付与する骨格としては、アロファネート、ヌレート、ビュレット、アダクト体が挙げられる。本発明ではいずれの3官能化部分の構造をもつポリイソシアネートを用いてもよいが、中でもヌレート骨格はコーティング塗膜に乾燥後の粘着性がでにくくコーティング材に適しているため特に好ましく用いられる。
(ブロックイソシアネート)
また、芳香族環、脂肪族環を含有しているポリイソシアネート化合物であれば、ブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えば芳香族を含有しているものであれば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
[ポリエステルポリウレタン型コーティング材]
本発明のコーティング材では、ポリエステルとポリイソシアネート化合物とは、ガスバリアコーティング材料としての諸特性を満たせば、2液混合型として使用してもよいし、予めポリエステルとポリイソシアネート化合物とを反応させた、ポリエステルポリウレタンを予め合成した上で使用してもよい。
(コーティングに用いる溶媒)
本発明で用いるコーティング材は、速乾燥性や水蒸気バリア機能も補填する観点から非水系であり、有機溶媒を主成分とする必要がある。また、主成分であるポリエステルを溶解させる必要がある。加えて、残留溶媒や即乾燥性の観点から沸点が100℃以下である方が好ましい。好ましく用いられる溶媒としては、エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ケトン系溶媒としては、アセトン、4−ブタノン、エーテル系としてはテトラヒドロフラン、脂肪族系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、芳香族系溶媒としてはトルエン等を例示することができる。アルコール系溶媒や水を混合しても差し支えないが、イソシアネート化合物を硬化剤として併用する場合はこれらを含有させることに注意を要する。
[コーティング材への添加材]
(板状無機化合物)
本発明のコーティング剤用樹脂組成物では、板状無機化合物を含有させてもよい。
本発明に板状無機化合物が用いられる場合には、粘着性の低減によるコーティング後の巻き取り適性の向上とガスバリア性を向上させる効果を有する。
板状無機化合物を併用した場合には形状が板状であることによりバリア性が向上する特徴がある。板状無機化合物の層間の電荷はバリア性に直接大きく影響しないが、樹脂組成物に対する分散性が、イオン性無機化合物、或いは水に対して膨潤性無機化合物では大幅に劣り、添加量を増加させると樹脂組成物の増粘やチキソ性となることより塗工適性が課題となる。これに対して、無電荷(非イオン性)、或いは水に対して非膨潤性の場合は、添加量を増加させても、増粘やチキソ性となり難く塗工適性が確保できる。本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば、板状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。板状無機化合物は単独又は二種以上組み合わせて使用される。これら板状無機化合物のアスペクト比、コーティング材内での含有率、粒子径、粒径分布としては、バリア向上機能や、耐ブロッキング適性が付与できていれば特に制限はない。
本発明で使用される板状無機化合物を、ポリエステルを主成分とするコーティング材に分散させる方法としては公知の分散方法が利用できる。例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、更により好ましくは、高い剪断力を発生させることのできる機器として、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二本ロール、三本ロール等が上げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
(酸無水物)
本発明では、コーティング材層の耐酸性を向上させる方法として公知の酸無水物を添加剤として併用することもできる。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの酸無水物の原料として非石油由来成分が含有されていると、非石油由来成分比率を高くできることから好ましい。こうした化合物の例としてコハク酸無水物が挙げられる。
(ガス捕捉成分)
また、必要に応じて、更にガス捕捉機能を有する材料を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する材料としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。水蒸気補足機能を有する材料としては、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、炭酸カルシウム等の材料を挙げることができる。これら以外にも遮断したい対象ガスの捕捉成分を添加することができる。
(その他の成分)
本発明のコーティング材は、ガスバリア補助機能を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、無機材料を用いる場合には分散剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、レベリング剤、スリップ向上剤等が例示できる。
[蒸着フィルム]
本発明のコーティン材は、金属蒸着フィルムや金属箔が持つガスバリア性を向上させつつ、ラミネートした際に強い接着力を担保するために使用する。そのためコーティング材を塗布する対象としては金属蒸着フィルムや金属箔を用いる。本材料をコーティングしたフィルムは、通常の蒸着フィルムよりも更にガスバリア性に優れるため、ハイガスバリアフィルムとして使用できる。
(蒸着層の種類)
本発明で用いるコーティング材が塗布される蒸着フィルムの蒸着層の種類としては、ガスバリア性を付与できるものであれば特に限定されない。現在包装用に広く用いられている金属蒸着、または金属酸化物蒸着が好適に例示される。金属蒸着としては各種金属が例示できるが、特に安価で広く用いられているアルミニウムが好ましい。蒸着方法としては特に制限はなく物理的蒸着法である真空蒸着法や、化学的蒸着法であるCVD法が例示できる。蒸着層の厚みは蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できこれにコーティング層が設置されることでさらに高バリアフィルムとできれば特に制限はない。しかし、あまりに蒸着層が薄いとガスバリアに対する蒸着層の寄与が少なくなり本発明のコーティングを用いても十分なガスバリア機能が発現できなくなり、厚すぎても一定厚み以上ではバリア向上機能が少ないため、好ましくは3〜70nmさらに好ましくは5〜60nmである。また、これら蒸着フィルムには蒸着の保護として、オーバーコートやアンダーコートが予め施されていても、施されていなくても用いることができる。しかし特に、コーティング層が無い蒸着フィルムでは、本発明のコーティングのバリア向上機能を十分に発揮することができるため好ましく用いられる。
(フィルムの種類)
本発明でのコーティング材を使用するフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:リニア低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、シクロオレフィンコポリマフィルム等が挙げられる。これらのフィルムには延伸処理があっても、無くても好ましく用いることができる。延伸処理をほどこしているフィルム類は寸法安定性、剛性よりコーティング操作が容易で使いやすい利点がある。また、未延伸フィルムでは逆に基材の寸法安定性、剛性、耐熱性が劣るため蒸着層が欠陥を多く持ちガスバリアが安定しないことが多いので、本発明のコーティング材を用いることで、バリア機能の強化に大きな効果をだせる利点がある。これ以外に、本発明では金属箔も使用できる。金属箔の金属種類としては、特に制限は無いが、価格や汎用性の観点からアルミニウム箔が最も好ましく用いられる。
[コーティングを行う部分]
本発明では、コーティングを蒸着面側に施す必要がある。これは、本発明のコーティング材が蒸着のピンホールやクラック等の欠陥部分を効率よく穴埋めすることにより、極めて優れたバリア向上機能を付与するためである。コーティング材が蒸着面の逆側のフィルム面に設置された場合はこのような補強効果を付与することはできずバリアの向上効果が限定的となる。
本発明では、さらに高いバリア機能を付与するためにポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用して、より高いバリア機能を付与しても良い。
[コーティング方法]
本発明のコーティング材のコーティング方法としては、アルミなどの金属蒸着フィルムの蒸着面、又はアルミ箔などにコーティングができるのであれば特に制限はない。具体的な方法としては、コールコート、グラビアコート等の各種コーティング方法を例示することができる。また、コーティングに用いる装置についても特に限定はない。
[コーティング膜厚]
本発明のコーティング材を塗布する膜厚は特に制限はない。しかし、本発明のコーティング材は蒸着欠陥をふさぐことでガスバリアの補強効果を高める。そのため、コーティング膜厚は蒸着欠陥さえ塞ぐことができれば厚い必要がなく、0.1μm以上あればバリア向上効果を出すことができる。好ましい厚み範囲としては、コーティング欠陥が生じにくいことと、乾燥性とのバランスより好ましくは0.2μm〜5μmの範囲、さらに好ましくは0.3〜3μmの範囲である。
(透過を遮断できるガス成分種類)
本発明の蒸着面保護用コーティング材を利用したガスバリア用フィルムが遮断できるガスとしては、酸素、水蒸気の他、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、レモネン、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等の香り成分を例示することができる。
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
(製造例1)グリセロールと、エチレングリコールと無水フタル酸からなるポリエステルポリオールGly7EG5oPA11−2300の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸1850部、エチレングリコール352.4部、グリセロール731.9部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.34部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が10mgKOH/g以下になったところで減圧下100torrにて加熱を継続し、酸価が2mgKOH/g以下でエステル化反応を終了し、数平均分子量2300のポリエステルポリオールを得た。
(製造例2)無水フタル酸とエチレングリコールとからなるポリエステルポリカルボン酸のEGoPA3000Aの製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸157.8部、エチレングリコール67.7部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が35〜40の範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量3000のポリエステルポリカルボン酸を得た。
(実施例1〜9:コーティング液の調製、塗工方法)
実施例1〜8では、硬化剤を含有するコーティング材として製造例1、2で合成したポリエステルを酢酸エチルまたは2-ブタノンに表1、2の硬化剤を除いた配合で添加し、常温にてスターラーで撹拌した。いずれのポリエステル共溶媒に完全に溶解した溶液を調整することができた。得られた溶液に、一般式(1)で表されるリン化合物を表1、2の配合で添加し、常温にてスターラーで撹拌した。得られた溶液に引き続き表1の配合で硬化剤を添加し、常温にてスターラーで撹拌し均一のコーティング液を調製した。
実施例9では硬化剤を含有しないコーティング材として、実施例1〜8のコーティング液調整のうち硬化剤を入れない以外は同様の操作で調整した。
得られたコーティング材を、表1のフィルム欄に記した蒸着フィルムの蒸着面側、もしくはアルミ箔にバーコーター#4番で塗工し、ドライヤーで80℃の熱風により溶媒を揮発させた後、100℃設定の乾燥機中に30秒間設置した。いずれの実施例でも均一なコーティング塗膜が得られた。この時点で後述の塗膜乾燥性を評価したところ、各フィルムともコーティング面の塗膜乾燥性が良好でタック感(粘着性)は見られなかった。従ってこの状態でロールでの巻き取りを行っても問題がないと想定された。これを、さらに40℃で3日間エージングすることで、オーバーコートが施された積層体を得た。
(比較例1)
比較例1は、実施例1〜7で添加した一般式(1)で表されるリン化合物を添加しない以外は実施例と同様な方法で、コーティング液を調製した。
得られたコーティング材を、表3のフィルム欄に記した蒸着フィルムの蒸着面側、もしくはアルミ箔にバーコーター#4番で塗工し、ドライヤーで80℃の熱風により溶媒を揮発させた後、100℃設定の乾燥機中に30秒間設置した。いずれの比較例でも均一なコーティング塗膜が得られた。これを、さらに40℃で3日間エージングすることで、硬化剤の反応を促進させたオーバーコートが施された積層体を得た。
(比較例2〜5)
比較例2〜5は実施例とは異なり、リン酸基を持つが低分子量である化合物を添加した以外は実施例と同様な方法でコーティング液を調整し比較例1と同様な方法で積層体を得た。
(比較例6)
比較例6はリン酸化合物を添加しない以外には、実施例9と同様な方法でコーティング液を調整し比較例1と同様な方法で積層体を得た。
(接着剤の調製)
LX703VL(DIC(株)製)、KR−90(DIC(株)製)、希釈溶剤として2−ブタノンを配合し、不揮発分30%の接着剤溶液を得た。
(接着剤の塗工方法、及び積層体の製造1)
バーコーター#8を用いて、接着剤溶液をオーバーコートが施された12μmのアルミ蒸着PETフィルム(東レフィルム加工(株)製「VMPET1310」;VM−PETと表記の場合あり)の蒸着面側に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、この複合フィルムと厚さ70μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レフィルム加工(株)製「トレファンNO ZK93KM」)を温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートしてこの複合フィルムを40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、VMPET/オーバーコート/接着剤/CPP積層体を得た。表中ではこの多層フィルムをVMPET/CPPと表記した。
(接着剤の塗工方法、及び積層体の製造その2)
バーコーター#8を用いて、接着剤溶液を、厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製「E−5100」)に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、この複合フィルムとオーバーコートが施された厚さ25μmのアルミ蒸着CPPフィルム(東レフィルム加工(株)製「2203」、VMCPPとの表記の場合あり)の蒸着面側と温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートしてこの複合フィルムを40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、PET/接着剤/オーバーコート/VMCPP積層体を得た。表中ではこの多層フィルムをPET/VMCPPと表記した。
(接着剤の塗工方法、及び積層体の製造その3)
バーコーター#8を用いて、接着剤溶液を、厚さ9μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製「O材」)に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、この複合フィルムとオーバーコートが施された厚さ25μmのCPPフィルム(東レフィルム加工(株)製「ZK93K」)を温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートしてこの複合フィルムを40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、アルミ箔/オーバーコート/接着剤/CPP積層体を得た。表中ではこの多層フィルムをAl箔/CPPと表記した。
(使用硬化剤)
以上の実施例、比較例のいずれかで用いた硬化剤は以下の通りである。
・D−110N: 三井化学(株)製「タケネートD−110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分75.0%、NCO%11.5%、溶媒酢酸エチル)
・L―75: 住化バイエルウレタン(株)製「デスモジュールL−75」(2,6―トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分75.0%、NCO%13.4%、溶媒酢酸エチル)
(実施例に使用したリン酸化合物の説明)
ポリホスマーM−101:数平均分子量15万、一般式l=1、m=700、n=1
ポリホスマーPE−101:数平均分子量7万、一般式l=1、m=200、n=1
ポリホスマーMH−301:数平均分子量30万、一般式l=1、m=1100、n=1
ポリホスマーPP−401:数平均分子量1万、一般式l=1、m=20、n=1
いずれも、全てDAP株式会社製
(比較例に使用したリン酸化合物の説明)
リン酸:和光純薬試薬
ポリリン酸:和光純薬試薬
JP−502:エチルアシッドフォスフェート、城北化学製
JP−518−O:オレイルアシッドフォスフェート、城北化学製
いずれもリン酸基を持つ低分子量の化合物である。
(評価方法)
(1)酸素透過率
各種実施例、比較例で得られたフィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21MHを用いてJIS−K7126(等圧法)に準じ、23℃90%RHの雰囲気下で測定した。なお、RHは湿度を示す。
(2)水蒸気透過率
各種実施例、比較例で得られたフィルムを、Illinois社製水蒸気透過率測定装置7002を用いて、伝導度法「ISO−15106−3」に準じ、40℃90%RHの雰囲気下で測定した。
尚、酸素透過率、水蒸気透過率ともVMPET/CPPの構成のみ測定した。
(ラミネート強度)
エージングが終了した積層体を、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度をラミネート強度とした。ラミネート強度の単位はN/15mmとした。
結果を以下の表1〜表3に示した。
Figure 2017203137
Figure 2017203137
Figure 2017203137
以上、表1、2の各実施例に示したとおり、本発明で用いたリン酸化合物を添加したコーティング材を塗工した層を有する積層体は高いラミネート強度をしめすと同時に、酸素透過率、水蒸気透過率とも低く高バリア特性を示した。
一方、表3の各比較例に示したとおり、本発明の範囲と異なり低分子量のリン酸化合物を添加した場合や、リン酸化合物を添加しなかった場合は、実施例に比べてバリア機能に大きな差は無かったがラミネート強度が低く、特にVMPETではラミネート強度が極めて劣った。また剥離面はオーバーコート層と、蒸着面またはAl箔との界面であり、オーバーコート層の密着が悪いためであった。
本発明のコーティング材は、金属蒸着フィルム又は金属箔、特にアルミ蒸着フィルム又はアルミ箔に対する水蒸気、酸素のバリア性を強化した上で、ラミネートした際の高い接着力を有するので、各種包装材料に加えて、例えば太陽電池用保護フィルム用の接着剤や表示素子用水蒸気バリア性基板のコーティング剤等の電子材料用コーティング剤、建築材料用コーティング剤、工業材料用コーティング等、水蒸気、酸素のガスバリア性の強化を所望される用途であれば好適に使用できる。

Claims (12)

  1. ポリオールを含有する金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材において、
    さらに一般式(1)で表されるリン化合物を含有することを特徴とする、金属蒸着フィルム又は金属箔面保護用コーティング材。
    Figure 2017203137
    (Rは、置換基としてアルキル基を有しても良い炭素数2〜6のアルキレン基、lは0又は1、mは10〜10000、nは1〜20の整数を表す。)
  2. 金属がアルミニウムである請求項1に記載のコーティング材。
  3. ポリオールのガラス転移点が15℃以上である、請求項1又は2に記載のコーティング材。
  4. ポリオールが、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオールである、請求項1〜3の何れかに記載のコーティング材。
  5. オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の、多価カルボン酸全成分に対する含有率が70〜100質量%である、請求項4に記載のコーティング材。
  6. 前記オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物が、オルトフタル酸またはその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸またはその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸またはその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸またはその無水物、及び2,3−アントラセンジカルボン酸またはその無水物から成る群から選ばれる少なくとも1つの多価カルボン酸またはその無水物である請求項4又は5に記載のコーティング材。
  7. 前記多価アルコール成分が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分である請求項4〜6の何れかに記載のコーティング材。
  8. コーティング材がポリイソシアネート化合物を含有する、請求項1〜7の何れかに記載のコーティング材。
  9. コーティング材のポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる1種である、請求項8に記載のコーティング材。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載のコーティング材を金属蒸着フィルム又は金属箔面にコーティングした、ガスバリア性積層体。
  11. 金属がアルミニウムである請求項10に記載のガスバリア性積層体。
  12. 請求項10又は11に記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材。
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