JP2017199510A - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高容量で優れた充放電サイクル特性を発揮したリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】本発明は外装体内に電極体、および非水電解液を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極活物質を含む正極合剤層を有しており、前記負極は、負極集電体の片面または両面に負極活物質を含む負極合剤層を有しており、リチウム源を有する第3電極を準備する工程と、前記第3電極と前記負極とを電気的に短絡させて、前記負極にあらかじめリチウムを導入する工程とを含み、前記第3電極のリチウム質量の電気量に換算した値を(LiP)と、前記負極の負極不可逆容量(Ir)との比(LiP/Ir)が0.8〜1.2であり、前記正極の正極充電容量(Cc)、前記負極の負極充電容量(Ca)および前記(LiP)から算出されるCc/(Ca−LiP)が、0.82〜0.995であることを特徴とする。【選択図】 図7

Description

本発明は、高容量でサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池の製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、高電圧・高容量であることから、その発展に対して大きな期待が寄せられている。
ところで、最近では、小型化および多機能化した携帯機器用のリチウムイオン二次電池について更なる高容量化が望まれており、これを受けて、負極活物質を、従来から汎用されている黒鉛から、低結晶性炭素、Si(シリコン)、Sn(錫)などのように、より多くのLiを吸蔵可能な材料(以下、「高容量負極材料」ともいう)へ変更することも検討されている。
その一方で、こうした高容量負極材料は不可逆容量が大きく、電池の初期の充電によって正極から放出され、高容量負極材料に吸蔵されたLiのうちの比較的多くの量が、次回の放電時に負極から放出されず、電池の容量に関与できなくなるため、高容量負極材料の使用によって想定していた電池の高容量化を、十分に図ることができない場合があった。
ところで、正極活物質および負極活物質とは別にLi金属箔などを電池内に導入して電池の充放電に活用する、いわゆるプレドープを行う技術が検討されている(特許文献1)。かかる技術を高容量負極材料を使用するリチウムイオン二次電池に適用すれば、前記の不可逆容量による問題を回避できる可能性がある。
また、充放電サイクル特性をより高めるために、特定の正極活物質、負極活物質を用いてそれぞれの質量比を調整したり、正極活物質、負極活物質それぞれの単位質量当たりの容量比を調整したりする技術も開示されている(特許文献2 0025、0026段落)
特開2012−199216号公報 特開2010−034024号公報
しかし、特許文献1に記載されている方法では、金属リチウムに対して電位4.3Vに達したときの正極の初回充電容量を正極の容量とするので、高電圧電池に応用できない。また、負極が金属リチウムに対して電位0.02Vに達するまでに、負極に挿入されるリチウム量を負極の容量とするので、実際に使用される電池の負極はリチウムに対して電位0.01Vに達することもある。さらに、実際に電池を使用するときに、定電流充電容量だけではなく、定電圧充電容量も使用している。しかし、特許文献1に記載されている方法ではこのことを考慮に入れていない。
また、特許文献2には特定の活物質使用時の正負極それぞれの活物質の質量比や活物質の単位質量当たりの容量比については開示があるが、負極の不可逆容量までは考慮していないし、言及もしていない。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高容量でサイクル特性にも優れたリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することにある。
本発明は、外装体内に電極体、および非水電解液を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記電極体は、正極と負極とをセパレータを介して積層又は巻回されており、前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極活物質を含む正極合剤層を有しており、前記負極は、負極集電体の片面または両面に負極活物質を含む負極合剤層を有しており、リチウム源を有する第3電極を準備する工程と、前記第3電極と前記負極とを電気的に短絡させて、前記負極にあらかじめリチウムを導入する工程とを含み、前記第3電極のリチウム質量の電気量に換算した値(LiP)と、前記負極の負極不可逆容量(Ir)との比(LiP/Ir)が0.8〜1.2であり、前記正極の正極充電容量(Cc)、前記負極の負極充電容量(Ca)および前記(LiP)から算出されるCc/(Ca−LiP)が、0.82〜0.995であることを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、高容量であるとともにサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の正極の一例を表す平面図である。 本発明の負極の一例を表す平面図である。 本発明の積層電極体の一例を模式的に表す斜視図である。 本発明の第3電極の一例を表す斜視図である。 図3と図4を組み立てた斜視図である。 本発明の積層電極体の一例を表す斜視図である。 本発明のリチウムイオン二次電池の一例を表す平面図である。 図7のI−I断面図である。
<負極全体構成>
本発明の製造方法により得られるリチウムイオン二次電池に係る負極には、負極活物質やバインダなどを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用される。
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば、黒鉛〔鱗片状黒鉛などの天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;など〕、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、リチウムと合金化可能な金属(Si、Snなど)またはその合金、酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
<負極活物質(SiO、SiOC)>
本発明における負極活物質は、Siを含む負極材料である材料Sを含有していることが望ましい。Siを含む材料Sは、1000mAh/g以上の容量を示し、黒鉛の理論容量と言われる372mAh/gを大幅に上回ることが特徴である。
材料SはSiを含む負極材料である。例えばSi粉末と炭素とを複合化した材料やこれに更に炭素材料を被覆した材料、Si粉末をグラフェンまたは鱗片状黒鉛で挟み込んだ材料、SiとOを構成元素に含むSiO(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である)を含む材料が挙げられる。中でもSiOを含む材料を用いるのが好ましい。
上記SiOは、Siの微結晶又は非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶又は非晶質相のSiを含めた比率となる。即ち、SiOには、非晶質のSiOマトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiOと、その中に分散しているSiを合わせて、上記原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiOマトリックス中に、Siが分散した構造で、SiOとSiのモル比が1:1の材料の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。
そして、SiOを含む材料Sは、炭素材料と複合化した複合体であることが好ましく、例えば、SiOの表面が炭素材料で被覆されていることが望ましい。通常、SiOは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電性材料(導電助剤)を使用し、負極内におけるSiOと導電性材料との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成する必要がある。SiOを炭素材料と複合化した複合体であれば、例えば、単にSiOと炭素材料などの導電性材料とを混合して得られた材料を用いた場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
即ち、SiOの比抵抗値は、通常、10〜10kΩcmであるのに対して、上記例示の炭素材料の比抵抗値は、通常、10-5〜10kΩcmであり、SiOと炭素材料とを複合化することにより、SiOの導電性を向上できる。
上記SiOと炭素材料との複合体としては、上記のように、SiOの表面を炭素材料で被覆したものの他、SiOと炭素材料との造粒体等が挙げられる。
上記SiOとの複合体の形成に用い得る上記炭素材料としては、例えば、低結晶性炭素、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維等の炭素材料が好ましいものとして挙げられる。
上記炭素材料の詳細としては、繊維状又はコイル状の炭素材料、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む。)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素及び難黒鉛化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。繊維状又はコイル状の炭素材料は、導電ネットワークを形成し易く、且つ表面積の大きい点において好ましい。カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む。)、易黒鉛化炭素及び難黒鉛化炭素は、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、更に、SiO粒子が膨張・収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有している点において好ましい。
上記例示の炭素材料の中でも、SiOとの複合体が造粒体である場合に用いるものとしては、繊維状の炭素材料が特に好ましい。繊維状の炭素材料は、その形状が細い糸状であり柔軟性が高いために電池の充放電に伴うSiOの膨張・収縮に追従でき、また、嵩密度が大きいために、SiO粒子と多くの接合点を持つことができるからである。繊維状の炭素としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらの何れを用いてもよい。
上記負極にSiOと炭素材料との複合体を使用する場合、SiOと炭素材料との比率は、炭素材料との複合化による作用を良好に発揮させる観点から、SiO:100重量部に対して、炭素材料が、5重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましい。また、上記複合体において、SiOと複合化する炭素材料の比率が多すぎると、負極合剤層中のSiO量の低下に繋がり、高容量化の効果が小さくなる虞があることから、SiO:100重量部に対して、炭素材料は、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましい。
上記負極においては、SiOを使用することによる高容量化の効果を良好に確保する観点から、負極活物質中におけるSiOと炭素材料との複合体の含有量が、3重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。
負極合剤層中の、全負極活物質に対する材料Sの含有比率は、好ましくは1%以上、更に好ましくは10質量%以上とし、50質量%以上とすることが最も好ましい。材料Sは上述した通り、黒鉛と比べて飛躍的に高容量化を実現できる材料なので、負極活物質中に少量でも材料Sを含むと、電池の容量向上効果が得られる。一方で更に飛躍的に電池の高容量化を実現するには、前負極活物質に対して材料Sは10質量%以上が好ましい。種々の電池の用途、求められる特性に合わせて材料Sの含有量を調整すると良い。なお、後述する黒鉛Aおよび黒鉛BによるLiの導入効果(Liと負極との電気化学的接触による)を発揮させるために、材料Sの割合は99質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
本発明の負極には、前述した材料Sの他に、黒鉛など、Liの電気化学的な吸蔵および放出が可能な炭素材料と併用してもよい。特に、平均粒子径が15μmを超え25μm以下の黒鉛Aと、平均粒子径が8μm以上15μm以下であり、黒鉛粒子の表面が非晶質炭素で被覆されている黒鉛Bと併用することが望ましい。
黒鉛Aは、通常のリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる、天然黒鉛や人造黒鉛があげられる。人造黒鉛としてたとえば、コークスあるいは有機物を2800℃以上で焼成したもの、または天然黒鉛と前記コークスあるいは有機物とを混合し、2800℃以上で熱処理を施したもの、さらにはコークスあるいは有機物を2800℃以上で焼成したものを前記天然黒鉛の表面に被覆させたものなどがあげられ、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1570〜1590cm−1に現れるピーク強度に対する1340〜1370cm−1に現れるピーク強度比であるR値が0.05〜0.2となる黒鉛を使用出来る。また、平均粒子径が前述の範囲にあれば、前記黒鉛Aには2種以上の黒鉛を併用しても構わない。
黒鉛Bは、母粒子となる黒鉛粒子と、その表面を被覆する非晶質炭素とで構成されている。具体的には、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1570〜1590cm−1に現れるピーク強度に対する1340〜1370cm−1に現れるピーク強度比であるR値が0.1〜0.7となる黒鉛である。R値は、非晶質炭素の十分な被覆量を確保するため、0.3以上がより好ましい。また、R値は、非晶質炭素の被覆量が多すぎると不可逆容量が増大するので、0.6以下が好ましい。このような黒鉛Bは、例えばd002が0.338nm以下である天然黒鉛または人造黒鉛を球状に賦形した黒鉛を母材(母粒子)とし、その表面を有機化合物で被覆し、800〜1500℃で焼成した後、解砕し、篩を通して整粒することによって得ることができる。なお、前記母材を被覆する有機化合物としては、芳香族炭化水素;芳香族炭化水素を加熱加圧下で重縮合して得られるタールまたはピッチ類;芳香族炭化水素の混合物を主成分とするタール、ピッチまたはアスファルト類;などが挙げられる。前記母材を前記有機化合物で被覆するには、前記有機化合物に前記母材を含浸・混捏する方法が採用できる。また、プロパンやアセチレンなどの炭化水素ガスを熱分解により炭素化し、これをd002が0.338nm以下の黒鉛の表面に堆積させる気相法によっても、黒鉛Bを作製することができる。
更に、前記の黒鉛Bは、Liイオンの受容性(例えば、全充電容量に対する、定電流充電容量の割合で数値化できる)が高い。よって、黒鉛Bを併用した場合のリチウムイオン二次電池は、Liイオンの受容性が良好であり、充放電サイクル特性も良好なものとなる。前述したように、電気化学的接触(短絡)をさせることで材料Sを含む負極にLi源を導入させる場合、前記黒鉛Bを併用すれば、Li導入の不均一化を抑制することができ電池特性の改善が図れるものと考えた。
しかし、黒鉛Bを単体で用いるだけでは、十分な電池特性の改善が得られないことがわかった。それは黒鉛Bが前述の通り球状に賦活した黒鉛を母材としているため、黒鉛B単体では粒子間の接点が十分に確保できない箇所が存在し、これが原因でLiの導入にムラが発生し、負極全体のLiイオンの受容性が向上せず、電池特性の大きな改善に至らなかったと推察する。そこで、平均粒子径が黒鉛Bより高い、具体的には15μmを超え25μm以下である黒鉛Aを黒鉛Bと併用することにより電池特性が大幅に改善されることを見出した。具体的には、負極が含有する全負極活物質中における黒鉛Aおよび黒鉛Bの合計含有量を、20質量%以上99質量%以下とし、負極が含有する全負極活物質中における黒鉛Bに対する黒鉛Aの含有割合(A/B)が、0.5以上4.5以下とする。このように黒鉛Aと黒鉛Bを併用することで、黒鉛Bの接点が確保できない箇所が減少し、つまり負極へのLiイオンの導入ムラが減ることで、黒鉛Bを単体で用いるよりもLiイオンの受容性が高まったことが理由と推察する。
なお、黒鉛Aは、粒径が小さすぎると、比表面積が過度に高まる(不可逆容量が増大する)ことから、その粒径が、あまり小さくないことが好ましい。よって、黒鉛Aとして、平均粒子径が15μm超のものを使用すると好ましい。また、黒鉛Bも、粒径が小さすぎると、表面を被覆する非晶質炭素の被覆量などがばらつき、黒鉛Bの特長が十分に発揮できなくなるなどの理由があることから、その粒径が、あまり小さくないことが好ましい。よって、黒鉛Bとして、平均粒子径が8μm以上のものを使用することが好ましい。
黒鉛(黒鉛A、黒鉛B、およびこれら以外の黒鉛)の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」)を用い、黒鉛を溶解したり膨潤したりしない媒体に、黒鉛を分散させて測定した粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(D50%)メディアン径である。
黒鉛Aおよび黒鉛Bの比表面積(BET法による。装置例は日本ベル社製「ベルソープミニ」など。)は、1.0m/g以上であることが好ましく、また、5.0m/g以下であることが好ましい。
また、黒鉛Aおよび黒鉛Bの結晶構造におけるc軸方向の結晶子の大きさ:Lcは、3nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることが更に好ましい。この範囲であればリチウムイオンの吸蔵・脱離がより容易になるからである。黒鉛のLcの上限値は特に限定されないが、通常200nm程度である。
また、負極活物質には、前述した材料Sや黒鉛Aおよび黒鉛B以外の負極活物質(例えば、黒鉛Aと同種のもので、平均粒子径が15μm未満であるか、または25μmを超える黒鉛のように、黒鉛Aおよび黒鉛Bに該当しない黒鉛など)や、SiまたはSnの単体、SiまたはSnを含む合金、SiまたはSnを含む酸化物を、本発明の効果を阻害しない程度に使用することもできる。
<負極バインダ>
負極合剤層に係るバインダとしては、例えば、負極の使用電位範囲において、Liに対して電気化学的に不活性であり、他の物質にできるだけ影響を及ぼさない材料が選択される。具体的には、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、およびこれらの誘導体や共重合体などが好適なものとして挙げられる。これらのバインダは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<負極導電材>
上記負極合剤層には、更に導電助剤として導電性材料を添加してもよい。このような導電性材料としては、電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、炭素繊維、金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の粉末)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号公報に記載のもの)等の材料を、1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましく、ケッチェンブラックやアセチレンブラックがより好ましい。
<負極製法>
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水などの溶剤に分散させた負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極の製造方法は、前記の方法に制限される訳ではなく、他の製造方法で製造してもよい。
<負極合剤層>
負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましく、負極合剤層の密度(集電体に積層した単位面積あたりの負極合剤層の質量と、厚みから算出される)は、電池の高容量化を図る意味で1.0g/cm以上とすることが望ましく、さらに好ましくは1.2g/cm以上である。また、負極合剤層の密度が高すぎると非水電解液の浸透性が低下するなどの悪影響が生じるので、1.6g/cm以下とすることが望ましい。また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質の量が80〜99質量%であることが好ましく、バインダの量が0.5〜10質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、その量が1〜10質量%であることが好ましい。
<負極集電体>
負極の集電と負極合剤層を支持するための支持体(負極集電体)としては、例えば銅製やニッケル製の箔などを用い得る。また、負極集電体の一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔を有した銅製やニッケル製の箔や、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルを用いても良い。負極集電体の厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は4μmであることが望ましい。
集電体が貫通孔のない箔を用いると、負極合剤層と負極集電体の接触面積が確保できるため、負極合剤層が膨張収縮してもより脱落を防ぐことが出来る上、機械的強度を確保することが出来るため、好ましい。
<正極全体構造>
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を、正極集電体の片面または両面に有する構造のものを使用することができる。
<正極活物質>
上記正極に用いる正極活物質は、特に限定されず、リチウム含有遷移金属酸化物等の一般に用いることのできる活物質を使用すればよい。リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMnNiCo1−y−z、LiMn、LiMn2−y等が例示される。但し、上記の各構造式中において、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、Ge及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。
<正極導電助剤>
上記正極に用いる導電助剤としては、電池内で化学的に安定なものであればよい。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;アルミニウム粉等の金属粉末;フッ化炭素;酸化亜鉛;チタン酸カリウム等からなる導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性の高いグラファイトと、吸液性に優れたカーボンブラックが好ましい。また、導電助剤の形態としては、一次粒子に限定されず、二次凝集体や、チェーンストラクチャー等の集合体の形態のものも用いることができる。このような集合体の方が、取り扱いが容易であり、生産性が良好となる。
<正極バインダ>
また、正極合剤層に係るバインダには、PVDF、P(VDF−CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、SBRなどを用いることができる。
<正極製法>
上記正極は、例えば、前述した正極活物質、導電助剤及びバインダを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(但し、バインダは溶剤に溶解していてもよい。)、これを集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理を施す工程を経て製造することができる。正極の製造方法は、上記の方法に制限されるわけではなく、他の製造方法で製造することもできる。
<正極合剤層>
正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が65〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
<正極集電体>
正極集電体は、例えばアルミニウム製などがあげられる。また、正極集電体の一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔を有したアルミニウム製の箔や、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルを用いても良い。正極集電体の厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は4μmであることが望ましい。
<正極その他>
また、正極には、必要に応じて、リチウムイオン二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
<セパレータ>
セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。なお、セパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、セパレータは、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を成分とするものがより好ましく、ポリエチレンを主成分とする単層の多孔質膜であるか、ポリエチレンとポリプロピレンとを2〜5層積層した積層多孔質膜などの多孔質膜を構成要素とする積層多孔質膜であることが好ましい。ポリエチレンとポリプロピレンなどのポリエチレンより融点の高い樹脂を混合または積層して用いる場合には、多孔質膜を構成する樹脂としてポリエチレンが30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
このような樹脂多孔質膜としては、例えば、従来から知られているリチウムイオン二次電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
セパレータの平均孔径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であって、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
また、セパレータの特性としては、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、10〜500secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。更に、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。
<電解液 全体構成>
本発明のリチウムイオン二次電池に係る非水電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解液を使用できる。
<電解液 溶媒>
上記非水電解液に用いる有機溶媒としては、上記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;プロピオン酸メチル等の鎖状エステル;γ−ブチロラクトン等の環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;エチレングリコールサルファイト等の亜硫酸エステル類等が挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒等、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
<電解液 塩>
上記非水電解液に用いるリチウム塩としては、溶媒中で解離してリチウムイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機リチウム塩、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(2≦n≦7)、LiN(RfOSO〔ここで、Rfはフルオロアルキル基〕等の有機リチウム塩等を用いることができる。
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
<電解液 添加剤>
また、非水電解液には、充放電サイクル特性の更なる改善や、高温貯蔵性や過充電防止などの安全性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、無水酸、スルホン酸エステル、ジニトリル、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、ホスホノアセテート類化合物、1,3−ジオキサンなどの添加剤(これらの誘導体も含む)を適宜加えることもできる。
更に、非水電解液には、ポリマーなどの公知のゲル化剤を添加してゲル化したもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
<電池構成>
本発明における負極活物質は、Siを含む負極材料である材料Sを含有していることが望ましい。Siを含む材料Sは、1000mAh/g以上の容量を示し、黒鉛の理論容量と言われる372mAh/gを大幅に上回ることが特徴である。一方、一般的な黒鉛の充放電効率(90%以上)と比較し、Siを含む材料Sでは初回の充放電効率が80%を下回るものが多く、不可逆容量が増えるためサイクル特性に問題があった。そこであらかじめLi源を負極に導入することが望まれる。
負極活物質にLiを導入する方法としては、リチウム源を有する第3電極と、負極とを電気的に短絡させることが出来れば特に制限はない。例えば負極合剤層に金属リチウム箔貼り付け・Li蒸着層形成したり、負極合剤層を形成した後に合剤層と面対向するようにLi源を配置し、電気化学的接触(短絡)させてLiを導入する方法、また、電極体の端面にLi源を配置し、電気化学的接触(短絡)させてLiを導入する方法等があげられる。
本発明の製造方法に係るリチウムイオン二次電池においては、Liから負極活物質中に導入されたリチウムプリドープ量(LiP)と、負極不可逆容量(Ir)との比(LiP/Ir)が0.8〜1.2である。
リチウムプリドープ量(LiP)とは、あらかじめ負極に導入するための第3電極のLi質量を電気量(mAh)に換算したものである。なお本発明では、Liの1グラム当たりの電気容量を3861mAh/gとしている。
負極を作用極、Liを対極とし、さらにLi塩を含む電解液を少なくとも加えた電気化学セルにおいて、1サイクル目の充放電容量の差から負極不可逆容量(Ir)が求められる。具体的には、負極面積当たりの電流密度を0.3mA/cmとした定電流放電を0.01Vの電位となるまで行い、さらに電流密度が0.03mA/cmに減衰するまで0.01Vの定電圧放電を行うことで、負極の比放電容量mAh/g(負極活物質1グラム当たりの放電電気量)を求める。
次に、電流密度を0.3mA/cmとした定電流充電を1.5Vの電位となるまで行うことで、負極の比充電容量mAh/g(負極活物質1グラム当たりの充電電気量)を求める。
負極の比放電容量から比充電容量を差し引いて負極比不可逆容量mAh/gを求める。
さらに本発明リチウムイオン二次電池においては、正極充電容量(Cc)、負極充電容量(Ca)およびリチウムプリドープ量(LiP)から算出されるCc/(Ca−LiP)が、0.82〜0.995である。
Cc/(Ca−LiP)などによって電極を設計、作製する際に、正極活物質の充電容量重量密度(mAh/g)を知る必要がある。正極活物質の充電容量重量密度(mAh/g)は、正極を作用極、Liを対極とし、さらにLi塩を含む電解液を少なくとも加えた電気化学セルにおいて求められる。具体的には、正極面積当たりの電流密度を0.3mA/cmとした定電流充電を、リチウムイオン二次電池の充電上限電圧に0.1V足した電位となるまで行い、さらに電流密度が0.03mA/cmに減衰するまでリチウムイオン二次電池の充電上限電圧に0.1V足した電位の定電圧充電を行うことで、正極活物質の充電容量重量密度(mAh/g)(正極活物質1グラム当たりの充電電気量)を求める。
例えば、充電上限電圧が4.4Vのリチウムイオン二次電池の場合は、4.5Vまでの定電流充電し、その後4.5Vで定電圧充電を行うことで、正極活物質の充電容量重量密度(mAh/g)を決定することが出来る。この0.1Vは電池充電末期の負極のリチウムに対する電位である。
正極充電容量(Cc)は、前記正極活物質の充電容量重量密度(mAh/g)に、リチウムイオン二次電池中に含む正極合剤層中含まれる正極活物質の総質量数グラムを乗算することで求められる。
負極充電容量(Ca)は、前述の電気化学セルで求められた1サイクル目の負極の比放電容量mAh/gに、リチウムイオン二次電池中に含む負極活物質の総質量グラム数(ただし、正極合剤層と対面していない負極合剤層中の負極活物質の質量は除く)を乗算することで求められる。
負極不可逆容量(Ir)は、前述の電気化学セルで求められた負極比不可逆容量mAh/gに、リチウムイオン二次電池中に含む負極活物質の総質量グラム数(ただし、正極合剤層と対面していない負極合剤層中の負極活物質の質量は除く)を乗算することで求められる。
本発明の製造方法によるリチウムイオン二次電池は、LiP/Irを適切な範囲に規定することにより、充電時、負極においては正極から来るリチウムを受け入れるサイトを確保し、正極においては過剰にリチウムを引き出すことが防止できる。このような効果を得るために、LiP/Irは0.8以上であり、0.9以上がより好ましい。また、1.2以下であり、1.05以下がより好ましい。
また、本発明の製造方法によると、負極にいわゆるプリドープを行う為、放電時、負極においては正極から来るリチウムを高い確率で正極に返し、充放電効率を高めることで放電容量を高めることが出来る。
更に、本発明の製造方法によるリチウムイオン二次電池は、Cc/(Ca−LiP)を適切な範囲に規定することにより、充放電サイクルを繰り返してもリチウムデンドライトの発生を防ぎ、正極においては過剰にリチウムを引き出すことが防止できる。このような効果を得るために、Cc/(Ca−LiP)は0.82以上であり、0.9以上がより好ましい。また、0.995以下であり、0.99以下がより好ましい。
本発明におけるリチウムイオン二次電池の形態においては特に制限はないが、従来のリチウムイオン二次電池で使用されるように、セパレータを介して負極および正極を重ね合わせた積層体(積層電極体)や、この積層体を更に渦巻状に巻回した巻回体(巻回電極体)が好適に用いられる。積層電極体の場合には、巻回電極体に比べて、電池の充放電によって負極の体積が変化しても、正極との間の距離を保ちやすいため、電池特性がより良好に維持される特長がある。
積層電極体を用いた場合の一例は以下の通りである。正極および負極を,セパレータを介して積層した積層電極体の合剤層と対面しない端面に、Liを配置するとともに前記負極と電気的に導通した第3電極を配置する。第3電極のLiは、負極合剤層にLiを導入するためのLi源である。
ここで、積層電極体について説明する。図1、図2に正極10と負極20の一例を示す。正極10は正極集電体であるアルミニウム製の金属箔の両面に正極合剤層11が塗布されている。正極10は正極タブ部13を有し、負極20は、負極集電体である銅製の金属箔の両面に負極合剤層21が塗布されている。
図3は、積層電極体50の一例を示す。積層電極体は、負極20、セパレータ40、正極10、セパレータ40、負極20・・・・・と、正極と負極とをセパレータを介して積層し形成する。この時、積層電極体の積層方向と平行な面を積層電極体の端面(例えば図3では点線の仮想面210で示している)と呼び、積層電極体の積層方向と垂直な面を積層電極体の平面(図3では211で示す)と呼ぶ。図3では積層電極体50のセパレータは、正極と負極の間に1枚ずつ配置しているが、長尺状のセパレータをZ字様に折り曲げて、その間に正極および負極を配置するようにしても良い。また、電極の枚数も図3のように3枚ずつには限るものではない。更に、複数の正極タブ部および負極タブ部は、それぞれ正極外部端子および負極外部端子に接続されていても良いが、図3および図5では割愛している。
図3では積層電極体の端面、平面はそれぞれ1面ずつしか示していないが、これに限られず、例えば積層電極体の端面は図3の点線仮想面の反対面にも存在し、積層電極体の平面もしかりである。積層電極体の端面は図3では平面を示しているが、電極の形状によっては曲面であっても良い。積層電極体の平面は、正極、負極、セパレータのいずれかの片面がそれに該当することになる。
図4には、Li源となる第3電極30を示す。第3電極30は、第3電極集電体32とLi源33とを有する。図4では第3電極集電体32は第3電極タブ部31を有する。
図5には、積層電極体50に第3電極30を合わせた状態を示す。第3電極集電体32を、積層電極体50の対向する2つの端面を覆う様に、アルファベットC字状に折り曲げている。この時、Li源33は、積層電極体50の端面に配置されるよう第3電極集電体32に張り付けられている。図4、5においては、Li源33を第3電極集電体32の両端面、にそれぞれ配置しているが、片方の面のみであってもよく、積層電極体50の上側(紙面上側)あるいは下側(紙面下側)の端面に配置してもよい。
負極活物質として材料Sを用いる場合、材料Sは不可逆容量が比較的高いため、あらかじめLiイオンを負極側に導入することが望ましく、本発明の製造方法において効果を発揮しやすい。積層型電極体より構成される電気化学素子では、通常、正負極の合剤層を貫通孔つき金属箔に設け、合剤層面とLiを対面するように配置(本発明で言うところの、積層電極体の平面にLi源を面対向)させることで、Liイオンが合剤層と貫通孔つき金属箔を通過して、積層電極体のすべての負極合剤層へLiイオンを導入させていた。その場合Liイオンは必ずLi源と最も近い負極を介して電池内の他の負極へと拡散していくことになる。材料SはLiイオンを多く受け入れることが出来る分、Liイオン受け入れに伴う膨張が顕著であるため、Liイオンの導入量が一番多い負極(多くはLi源に一番近い負極)の合剤層は、局所的にLiイオンが導入されて合剤層が大きく膨張しダメージを受ける。そして、最悪の場合負極集電体と接着状態を保てなくなり負極集電体から脱落するという問題があった。
Li源を積層電極体の端面に配置することで、負極合剤層中にLiイオンを導入できることを見出した。このような態様を採用すると、負極活物質に充放電に伴う膨張収縮の顕著な材料を用いても、1つの負極に局所的に多くのLiイオンが導入されることがないため、負極集電体からの負極合剤層の脱落を抑制することが出来、Li源と各負極との距離は同一で、極端に膨張のダメージを受ける負極がないため、充放電サイクル特性の劣化を抑制することが出来る。
更に、正極、負極の集電体に貫通孔が設けられていない金属箔を用いた場合、貫通孔を設けた場合と比べて強度が向上するし、負極集電体については合剤層との接着面積が増加するので負極合剤層の脱落の抑制に寄与する。
第3電極は、例えば銅やニッケルなどの金属箔(一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔を有したものも含む)、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを集電体とし、第3電極集電体に所定量のLi箔を圧着することで作製することができる。もちろん、第3電極集電体にLi箔を圧着した後、Liが所定量となるよう第3電極集電体を切り出すことで作製されてもよい。
第3電極集電体にLiを圧着した第3電極は、例えば第3電極集電体が有するタブ部と、積層型電極体の負極の有するタブ部とを溶接することで、積層型電極体の負極と電気的に導通することができる。第3電極は、積層型電極体の負極と電気的に導通されていれば、その手法や形態に制限はなく、溶接以外の方法で電気的導通が確保されていてもよい。
本発明の製造方法によるリチウムイオン二次電池に係る外装体には、金属ラミネートフィルム外装体を使用することが好ましい。金属ラミネートフィルム外装体は、例えば金属製の外装缶に比べて変形が容易であることから、電池の充電によって負極が膨張しても、負極合剤層や負極集電体の破壊が生じ難いからである。
金属ラミネートフィルム外装体を構成する金属ラミネートフィルムとしては、例えば、外装樹脂層/金属層/内装樹脂層からなる3層構造の金属ラミネートフィルムが使用される。
金属ラミネートフィルムにおける金属層としてはアルミニウムフィルム、ステンレス鋼フィルムなどが、内装樹脂層としては熱融着樹脂(例えば、110〜165℃程度の温度で熱融着性を発現する変性ポリオレフィンアイオノマーなど)で構成されたフィルムが挙げられる。また、金属ラミネートフィルムの外装樹脂層としては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム(ポチエチレンテレフタレートフィルムなど)などが挙げられる。
金属ラミネートフィルムにおいては、金属層の厚みは10〜150μmであることが好ましく、内装樹脂層の厚みは20〜100μmであることが好ましく、外装樹脂層の厚みは20〜100μmであることが好ましい。
外装体の形状については特に制限はないが、例えば、平面視で、3角形、4角形、5角形、6角形、7角形、8角形などの多角形であることが挙げられ、平面視で4角形(矩形または正方形)が一般的である。また、外装体のサイズについても特に制限はなく、所謂薄形や大型などの種々のサイズとすることができる。
金属ラミネートフィルム外装体は、1枚の金属ラミネートフィルムを二つ折りにして構成したものであってもよく、2枚の金属ラミネートフィルムを重ねて構成したものであってもよい。
なお、外装体の平面形状が多角形の場合、正極外部端子を引き出す辺と、負極外部端子を引き出す辺とは、同じ辺であってもよく、異なる辺であってもよい。
外装体における熱融着部の幅は、5〜20mmとすることが好ましい。
本発明の製造方法によるリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムイオン二次電池と同様に充電の上限電圧を4.2V程度として使用することもできるが、充電の上限電圧を、これよりも高い4.3V以上に設定して使用することも可能であり、これにより高容量化を図りつつ、長期にわたって繰り返し使用しても、安定して優れた特性を発揮することが可能である。なお、リチウムイオン二次電池の充電の上限電圧は、4.7V以下であることが好ましい。
本発明の製造方法によるリチウムイオン二次電池は、従来から知られているリチウムイオン二次電池と同様の用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<電気化学セルの作製>
正極活物質であるLiCoO:96.5質量部と、バインダであるP(VDF−CTFE)を10質量%の濃度で含むNMP溶液:20質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
正極合剤ペーストをアルミニウム箔(厚み12μm)の片面に塗布、乾燥、プレスし、2×2cmに切り出したものを作用極、3×3cmに切り出したLiを対極とし、さらに非水電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7の混合溶媒に、LiPFを1mol/lの濃度で溶解させ、更にビニレンカーボネートを3質量%となる量で添加した溶液)を加え、電気化学セルを作製した。
正極面積当たりの電流密度を0.3mA/cmとした定電流充電を4.5Vの電位となるまで行い、さらに電流密度が0.03mA/cmに減衰するまで4.5Vの定電圧充電を行うことで、正極活物質の充電容量重量密度mAh/g(正極活物質1グラム当たりの電気量)を求めた。
<正極の作製>
電気化学セルの作製で用いたものと同様の正極合剤ペーストをアルミニウム箔(厚み12μm)の両面に塗布し、乾燥を行って、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成し、プレス処理を行い、所定の大きさで切断して、帯状の正極を得た。なお、アルミニウム箔への正極合剤含有ペーストの塗布の際には、アルミニウム箔の一部が露出するようにし、アルミニウム箔の両面に正極合剤含有ペーストを塗布したものでは、表面で塗布部とした箇所は裏面も塗布部とした。得られた正極の正極合剤層の厚み(アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成したものでは、片面あたりの厚み)は、55μmであった。
アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した帯状の正極を、タブ部とするためにアルミニウム箔(正極集電体)の露出部の一部が突出するように、かつ正極合剤層の形成部が四隅を曲線状とした略四角形状になるようにトムソン刃で打ち抜いて、正極集電体の両面に正極合剤層を有する電池用正極とを得た。図1に、前記電池用正極を模式的に表す平面図を示している(ただし、正極の構造の理解を容易にするために、図1に示す正極のサイズは、必ずしも実際のものと一致していない)。正極10は、正極集電体12の露出部の一部が突出するように打ち抜いたタブ部13を有する形状とし、正極合剤層11の形成部の形状を四隅を曲線状にした略四角形とし、図中a、bおよびcの長さを、それぞれ8mm、37mmおよび2mmとした。
図1に示す正極における正極活物質の量は0.136gであった(0.136g×17枚=2.3106g)。
<負極の作製>
黒鉛A−1(表面を非晶質炭素で被覆していない黒鉛):10質量%と、黒鉛B−1(黒鉛からなる母粒子の表面を、ピッチを炭素源とした非晶質炭素で被覆した黒鉛):10質量%と、SiO表面を炭素材料で被覆した複合体Si−1(平均粒径が8μm、比表面積が7.9m/gで、複合体における炭素材料の量が20質量%):80質量%を、V型ブレンダーで12時間混合し、負極活物質を得た。
ポリアクリル酸:100質量部をイオン交換水:500質量部に投入して撹拌溶解させた後、NaOH:70質量部を加えてpHが7以下になるまで撹拌溶解させた。さらにイオン交換水を加えて、ポリアクリル酸のナトリウム塩の5質量%水溶液を調整した。この水溶液に、前記負極活物質と、CMCの1質量%水溶液と、カーボンブラックを加え、撹拌混合することで負極合剤用ペーストを得た。なお、本ペーストにおける,負極活物質:カーボンブラック:ポリアクリル酸のナトリウム塩:CMCの組成比(質量比)は、94:1.5:3:1.5とした。
負極合剤ペーストを銅箔(厚み8μm)の片面に塗布、乾燥、プレスし、2×2cmに切り出したものを作用極、3×3cmに切り出したLiを対極とし、さらに非水電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7の混合溶媒に、LiPFを1mol/lの濃度で溶解させ、更にビニレンカーボネートを3質量%となる量で添加した溶液)を加え、電気化学セルを作製した。
負極面積当たりの電流密度を0.3mA/cmとした定電流放電を0.01Vの電位となるまで行い、さらに電流密度が0.03mA/cmに減衰するまで0.01Vの定電圧放電を行うことで、負極の比放電容量mAh/g(負極活物質1グラム当たりの電気量)を求めた。
次に、電流密度を0.3mA/cmとした定電流充電を1.5Vの電位となるまで行うことで、負極の比充電容量mAh/g(負極活物質1グラム当たりの電気量)を求めた。また、負極の比放電容量から比充電容量を差し引いて負極比不可逆容量mAh/gを求めた。
前記負極合剤用ペーストを、厚みが8μmである銅箔の片面または両面に塗布し乾燥を行って、銅箔の片面または両面に負極合剤層を形成し、プレス処理を行って負極合剤層の密度を1.4g/cmに調整した後に所定の大きさで切断して、帯状の負極を得た。なお、銅箔への負極合剤含有ペーストの塗布の際には、銅箔の一部が露出するようにし、表面で塗布部とした箇所は裏面も塗布部とした。得られた負極の負極合剤層の厚み(負極集電体である銅箔の片面あたりの厚み)は、65μmであった。
前記帯状の負極を、タブ部とするために銅箔(負極集電体)の露出部の一部が突出するように、かつ負極合剤層の形成部が四隅を曲線状とした略四角形状になるようにトムソン刃で打ち抜いて、負極集電体の両面および片面に負極合剤層を有する電池用負極を得た。図2に、前記電池用負極を模式的に表す平面図を示している(ただし、負極の構造の理解を容易にするために、図2に示す負極のサイズは、必ずしも実際のものと一致していない)。負極20は、負極集電体22の露出部の一部が突出するように打ち抜いたタブ部23を有する形状とし、負極合剤層21の形成部の形状を四隅を曲線状にした略四角形とし、図中d、eおよびfの長さを、それぞれ9mm、38mmおよび2mmとした。
図2に示す負極(負極集電体の両面に負極合剤層を形成したもの)における負極活物質の量(ただし、正極合剤層と対面していない負極合剤層中の負極活物質は除く)は0.01934gであった。また、負極集電体の片面に負極合剤層を形成した負極における負極活物質の量は、負極集電体の両面に形成したものにおける負極活物質の量の1/2である。(0.01934g×16枚+0.01934×1/2×2枚=0.3288g)。
<第3電極の作製>
図4に示すように、第3電極30を以下の通り作製した。一方の面から他方の面へ貫通する貫通孔を有した銅箔(厚みが10μm、貫通孔の直径が0.1mm、気孔率が47%)を38×18mmの大きさに裁断し、2×13mm角の第3電極タブ部31を有する第3電極集電体32を作製した。さらに、厚さが200μmであり、質量が29.94mg(LiP=容量115.60mAh相当)であるLi箔33を、第3電極集電体32の両端面にそれぞれ圧着し、アルファベットのC字状に折りたたんで第3電極30を得た。
<電池の組み立て>
負極集電体の片面に負極合剤層を形成した電池用負極2枚、負極集電体の両面に負極合剤層を形成した電池用負極16枚、および正極集電体の両面に正極合剤層を形成した電池用正極17枚を用意した。
この時、前述した方法で測定した結果、本実施例に使用した負極におけるCa(負極充電容量)は565.55mAh、Ir(負極不可逆容量)は144.49mAhであり、本実施例に使用した正極のCc(正極充電容量)は427.46mAhであった。そして、Cc/(Ca―LiP)は0.95、LiP/Irは0.8であった。
負極集電体の片面に負極合剤層を形成した電池用負極と、正極集電体の両面に正極合剤層を形成した電池用正極と、両面に負極合剤層を形成した電池用負極とを交互に配置し、各正極と各負極との間にはポリオレフィン微多孔膜に板状のベーマイト微粒子をコーティングしたもの(厚み12μm)を1枚介在させ、正極同士のタブ部、負極同士のタブ部と、前述の通り作製した第3電極のタブ部を、それぞれ溶接して図6に示す形態である積層電極体50と第3電極30とを合わせた電極体102を作製した。そして、前記電極体102が収まるように窪みを形成した厚み:0.15mm、幅:34mm、高さ:50mmのアルミニウムラミネートフィルムの、前記窪みに前記積層電極体を挿入し、その上に前記と同じサイズのアルミニウムラミネートフィルムを置いて、両アルミニウムラミネートフィルムの3辺を熱溶着した。そして、両アルミニウムラミネートフィルムの残りの1辺から非水電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7の混合溶媒に、LiPFを1mol/lの濃度で溶解させ、更にビニレンカーボネートを3質量%となる量で添加した溶液)を注入した。その後、両アルミニウムラミネートフィルムの前記残りの1辺を真空熱封止して、図7に示す外観で、図8に示す断面構造のリチウムイオン二次電池を作製した。
ここで、図7および図8について説明すると、図7はリチウムイオン二次電池を模式的に表す平面図であり、図8は、図7のI−I線断面図である。リチウムイオン二次電池100は、2枚のアルミニウムラミネートフィルムで構成したアルミニウムラミネートフィルム外装体101内に、電極体102と、非水電解液(図示しない)とを収容しており、アルミニウムラミネートフィルム外装体101は、その外周部において、上下のアルミニウムラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。なお、図8では、図面が煩雑になることを避けるために、アルミニウムラミネートフィルム外装体101を構成している各層や、電極体を構成している正極、負極およびセパレータを区別して示していない。
電極体102の有する各正極は、タブ部同士を溶接して一体化し、この溶接したタブ部の一体化物を電池100内で正極外部端子103と接続しており、また、図示していないが、電極体102の有する各負極と第3電極も、タブ部同士を溶接して一体化し、この溶接したタブ部の一体化物を電池100内で負極外部端子104と接続している。そして、正極外部端子103および負極外部端子104は、外部の機器などと接続可能なように、片端側をアルミニウムラミネートフィルム外装体101の外側に引き出している。以上通り作製したリチウムイオン二次電池を、45℃の恒温槽内で1週間保管した。
(実施例2)
正極中の正極活物質の質量を合計で2.0138gに変更した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。また、LiP=173.40mAhとなるようにした以外は実施例1と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは372.6mAhであった。
(比較例1)
正極中の正極活物質の質量を合計で2.3848gに変更した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。また、LiP=101.1mAhとなるようにした以外は実施例1と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは441.2mAhであった。
(比較例2)
正極中の正極活物質の質量を合計で1.9396gに変更した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。また、LiP=187.8mAhとなるようにした以外は実施例1と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは358.8mAhであった。
(実施例3)
正極中の正極活物質の質量を合計で1.8663gに変更した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。また、LiP=144.5mAhとなるようにした以外は実施例1と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは345.3mAhであった。
(実施例4)
正極中の正極活物質の質量を合計で2.2532gに変更した以外は実施例3と同様にして正極を作製した。また、実施例3と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは416.8mAhであった。
(比較例3)
正極中の正極活物質の質量を合計で1.8436gに変更した以外は実施例3と同様にして正極を作製した。また、実施例3と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは341.1mAhであった。
(比較例4)
正極中の正極活物質の質量を合計で2.276gに変更した以外は実施例3と同様にして正極を作製した。また、実施例3と同様にして、第3電極を作製した。
この正極と第3電極を用いた以外は実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。この時のCcは421.1mAhであった。
(比較例5)
黒鉛A−1と黒鉛B−1を1:1で混合した混合黒鉛:97.3質量%と、SiO表面を炭素材料で被覆した複合体Si−1:2.7質量%を、V型ブレンダーで12時間混合し、負極活物質を得た。この負極活物質を用いたい以外は実施例1と同様にして負極を作製した。材料S(複合体Si−1)の負極活物質中の含有率が少ないため、リチウムのいわゆるプリドープの必要性がなかった。
この負極を用い、第3電極を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例および比較例の各リチウムイオン二次電池の構成を表1に示す。
<初回充放電効率と充放電サイクル特性評価>
45℃の恒温槽内で1週間保管した後の、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を、25℃の恒温槽内に5時間静置し、その後、各電池について、0.5Cの電流値で4.4Vまで定電流充電し、引き続いて4.4Vで定電圧充電し(定電流充電と定電圧充電との総充電時間が2.5時間)、この時の初回充電容量を求めた。その後に0.2Cの定電流で2.0Vまで放電を行って、初回放電容量を求めた。実施例および比較例のリチウムイオン二次電池の初回充放電効率を、初回放電容量を初回充電容量で除して百分率で表した。
次に、各電池について、1Cの電流値で4.4Vまで定電流充電し、引き続いて4.4Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電した後に、1Cの電流値で2.0Vまで放電する一連の操作を1サイクルとして、初回放電容量に対して60%の容量となるまでサイクルを繰り返し、この時のサイクル回数を求めた。
各評価結果を表2に示す。
Figure 2017199510
Figure 2017199510
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池では、実施例1と実施例2は正極充電容量(Cc)/(負極充電容量(Ca)―第3電極のリチウム質量を電気量に換算した値(LiP))を0.95に固定し、第3電極のリチウム質量を電気量に換算した値(LiP)/負極不可逆容量(Ir)をそれぞれ0.8及び1.2にした電池であり、比較例1と比較例2はCc/(Ca―LiP)を0.95に固定し、LiP/Irをそれぞれ下限0.8及び上限1.2から外れるようにした電池である。表に示すようにLiP/Irを上限を超えると、負極に正極から来るリチウムを受け入れるサイトが少なくなり、電池の容量は減少しサイクル寿命も短くなる。一方、LiP/Irを下限を超えるようにすると、正極からリチウムを過剰に引き出されて、電池の初回充電容量は少し多くなるが、正極は常に過充電の状態になるため劣化が進みやすくなり、サイクル寿命が短くなる。
実施例3と実施例4はLiP/Irを1.0に固定し、Cc/(Ca―LiP)をそれぞれ0.82及び0.99にした電池であり、比較例1と比較例2はLiP/Irを1.0に固定し、Cc/(Ca―LiP)をそれぞれ下限0.82及び上限0.995を超えるにした電池である。表に示すようにCc/(Ca―LiP)を上限0.995を超えるようにすると、リチウムが負極上または負極の周辺に析出しやすくなり、析出したリチウムは容量及びサイクル寿命に悪影響を与える。一方、Cc/(Ca―LiP)を下限0.82を超えるようにすると、正極からリチウムを過剰に引き出されて、電池の初回充電容量は少し多くなるが、正極は常に過充電の状態になるため劣化が進みやすくなり、サイクル寿命が短くなる。
比較例5は負極活物質中の材料Sの質量比は2.7%である電池である。この場合リチウムのプリドープは不要であるが、電池容量はかなり減少し、高容量電池には相応しくないである。
以上示したように、本実施形態によれば、サイクル特性を損なうことなく、高容量のリチウムイオン二次電池を得ることができる。
以上、実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
10 正極
11 正極合剤層
12 正極集電体
13 タブ部
20 負極
21 負極合剤層
22 負極集電体
23 タブ部
30 第3電極
31 第3電極タブ部
32 第3電極集電体
33 Li箔
40 セパレータ
50 積層電極体
100 リチウムイオン二次電池
101 金属ラミネートフィルム外装体
102 電極体
103 正極外部端子
104 負極外部端子

Claims (4)

  1. 外装体内に電極体、および非水電解液を有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記電極体は、正極と負極とをセパレータを介して積層又は巻回されており、
    前記正極は、正極集電体の片面または両面に正極活物質を含む正極合剤層を有しており、
    前記負極は、負極集電体の片面または両面に負極活物質を含む負極合剤層を有しており、
    リチウム源を有する第3電極を準備する工程と、
    前記第3電極と前記負極とを電気的に短絡させて、前記負極にあらかじめリチウムを導入する工程とを含み、
    前記第3電極のリチウム質量を電気量に換算した値(LiP)と、前記負極の負極不可逆容量(Ir)との比(LiP/Ir)が0.8〜1.2であり、
    前記正極の正極充電容量(Cc)、前記負極の負極充電容量(Ca)および前記(LiP)から算出されるCc/(Ca−LiP)が、0.82〜0.995であることを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
  2. 前記正極充電容量(Cc)、負極充電容量(Ca)および負極不可逆容量(Ir)、第3電極のリチウム質量を電気量に換算した値(LiP)から算出される(LiP/Ir)が、0.9〜1.05であり、Cc/(Ca−LiP)が、0.9〜0.99である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  3. 前記負極活物質は、Siを含む負極材料である材料Sを少なくとも含有している請求項1〜2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  4. 前記負極材料である材料Sは、SiとOとを構成元素に含む材料(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である)であり、前記負極は、SiとOとを構成元素に含む材料を負極活物質とし、前記負極が含有する全負極活物質の合計を100質量%としたとき、SiとOとを構成元素に含む前記材料の割合が、10質量%以上である請求項1〜3に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
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