JP2017196028A - 再帰反射性能を有する面ファスナー - Google Patents

再帰反射性能を有する面ファスナー Download PDF

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Abstract

【課題】再帰反射性能を付与することにより面ファスナーの係合力を殆ど低下させることがなく、さらに面ファスナーの表面層及び裏面層ともに光再帰反射性能を有する面ファスナーを提供する。【解決手段】経糸2、緯糸3および係合素子用糸4からなる基布の表面に、同表面から立ち上がる多数の係合素子が存在しており、該緯糸が熱融着性繊維を含み、同熱融着性繊維により係合素子の根元が基布に固定されている面ファスナー1であって、該経糸に平行に再帰反射性糸5が基布に織り込まれており、基布の表裏両面に再帰反射性糸が露出している再帰反射性面ファスナー。【選択図】図1

Description

本発明は、再帰反射性能を有する面ファスナーに関し、詳しくは暗闇で面ファスナーに光が当たった場合に、光を入射方向に反射し、その存在を明示することができる面ファスナーに関する。特に、面ファスナーの表面側および裏面側の両面が共に光反射性能を有する面ファスナーに関する。
従来、物品を対象物表面に固定する手段として、フック状係合素子を有する面ファスナーとループ状係合素子を有する面ファスナーが広く用いられている。また、物品同士を結束するのに、フック状係合素子を表面に有し、ループ状係合素子を裏面に有する面ファスナーが結束ベルトとして使用されている。
さらに表面にフック状係合素子とループ状係合素子の両方を有する面ファスナーも、表面を折り返して重ね合せることにより係合力が得られることから、このようなものも結束ベルトとして使用されている。また表面にループ状係合素子を有する面ファスナーの長さ方向端部に、または長さ方向端部裏面にフック状係合素子を有する面ファスナーをつなぎ合わせたり、貼り合せたりすることにより、周回したループ状係合素子とフック状係合素子を重ね合せることにより係合力が得られることから、このようなものも結束ベルトとして使用されている。
そして、このような面ファスナーの要求性能のひとつとして、夜間に光反射性を有するものが求められている。例えば、面ファスナーで物品が固定されていたり結束された状態で物品が暗闇の路上に置かれている場合には、自動車や自転車や通行人等からは物品の存在が分かり難く、事故を引き起こす場合がある。もし、面ファスナーが光反射性能を有している場合には、そのような面ファスナーを用いて固定や結束した場合には、露出している面ファスナーが光反射して物品の存在を知らせることとなり、事故の防止に繋がる。さらに、光反射性能を有する面ファスナー製のバンド等を障害物となる物品の表面に取り付けることにより、障害物が原因で夜間に生じる事故等を解消することもできる。
また、最近は、健康や趣味のために、あるいは通勤・通学手段として、夜間に自転車に乗っている人やジョギングやウォーキングをしている人も多いが、そのような人の存在が分からず、自動車や自転車と衝突を起こす危険性がある。このような夜間の事故を防止する目的で、夜光たすきや夜光チョッキ等が用いられているが、運動性やスマート性に劣ることから、夜光たすきや夜光チョッキを敬遠する人も多く、それに代わる手段として、手首や足首や頭部等に、あるいは自転車のハンドルに光反射性能を有する面ファスナー製の安全バンドを取り付けている人もいる。
このような要求に応える光反射性能を有する面ファスナーとして、ベルト状の面ファスナーの長手方向中央部に存在している係合素子を全て除去して、その部分に広い光反射面を設けたものが知られている(例えば、特許文献1)。
確かに、この公知の光反射面ファスナーは、夜間の光反射能力に優れているが、光反射性能が高く、昼間には逆に太陽光等に反射して、自動車の運転者に支障を与える可能性もある。また、このような面ファスナーを用いて係合−剥離を繰り返すと、剥離時の力により光反射面が裂けたり、あるいは折れ曲がり、光反射性能が低下し、さらに光反射面には係合素子が存在しないことから係合力に劣るという問題点を有している。
そして、この公知の光反射面を有する面ファスナーは、洗濯した場合に光反射面が著しく傷つき損なわれることから、殆ど洗濯できないという問題点も有している。しかも、このような従来の面ファスナーを用いたベルトを手首や足首に巻き付けると、面ファスナー裏面には、剥離時の係合素子の引き抜きを阻止するために、バックコート樹脂層が付与されており、このバックコート樹脂層が通気性を有していないことから発汗を助長し、しかも上記したように洗濯性にも劣ることから、清潔性の点で実用上大きな問題を有することとなる。
さらに、面ファスナーをベルトとして使用する場合には、表面にフック状係合素子とループ状係合素子の両方が存在していると、鐶で折り返して使用することができることから、対象物表面に巻き付けて使用する際に極めて便利であるが、このような使用方法を用いる場合には、表裏両面が露出するため、両面に再帰反射性能を有していることが求められるが、上記公知の技術では、裏面側にも光反射性能を付与するためには、裏面の長さ方向中央部の係合素子も除去してその部分にも反射面を付与する必要があり、製造上、極めて複雑であるという問題を有している。
実開平5−46305号公報
本発明は、上記のような、長さ方向中央部に存在している係合素子を除去し、その部分に反射面を設けた面ファスナーの問題点を解消する光反射性能を有する面ファスナーを供給すること、すなわち、光反射性能が激し過ぎず、長期使用しても、光反射性能が殆ど劣化せず、しかも光反射性能を付与することにより面ファスナーの係合力を殆ど低下させることがなく、さらに面ファスナーの表面層及び裏面層ともに光反射性能を有する面ファスナーを提供することにある。
また、本発明は、従来の夜光たすき等の代替として、例えばズボンの裾固定ベルトや手首バンドや鉢巻として使用すると、自転車に乗っているときであっても、あるいはランニングやウォーキング等をしている時であっても、夜間に遠くから存在を認識してもらうことができ、事故の発生を防ぐことができ、しかも、好ましくは明るい場合には光反射物の存在が余り目立つことなく審美性に優れる光反射性面ファスナーを提供することにある。
さらに、繰り返しの洗濯が可能であり、従来の光反射面を有する面ファスナーが洗濯により光反射面が損なわれることから洗濯が殆どできなかったことと比べると極めて清潔で、さらに手首や足首に取り付けても、通気性に優れることから発汗し難い光反射性面ファスナーを提供することにある。
すなわち本発明は、経糸、緯糸および係合素子用糸からなる基布の表面に、同表面から立ち上がる多数の係合素子が存在しており、該緯糸が熱融着性繊維を含み、同熱融着性繊維により係合素子の根元が基布に固定されている面ファスナーにおいて、該経糸に平行に再帰反射性糸が基布に織り込まれており、基布の表裏両面に再帰反射性糸が露出していることを特徴とする再帰反射性面ファスナーである。
そして上記再帰反射性糸が、樹脂シートのスリットヤーンとその表面を覆う被覆糸からなり、該スリットヤーンは、多数の透明微小球が樹脂表面から一部露出して存在しており、該微小球が埋没している部分の樹脂表面には反射層が存在していることが好ましい。
また、上記再帰反射性糸が、スリットヤーンとその表面にS撚の糸とZ撚の糸が巻き付けられている被覆糸からなることが好ましい。
また、基布を構成する経糸、緯糸、係合素子用糸およびスリットヤーンに巻き付けられている被覆糸が共にポリエステル系の糸であることが好ましく、上記の再帰反射性面ファスナーであり、これら基布を構成する経糸、緯糸、係合素子用糸およびスリットヤーンに巻き付けられている被覆糸が共に同一色に着色されていることが好ましい。
さらには、基布裏面には、基布を構成する糸を固定するためのバックコート樹脂層が存在してないことが好ましく、基布を構成する経糸10〜200本に一本の割合で再帰反射性糸が基布に織り込まれていることが好ましい。
また、係合素子が、マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子またはモノフィラメント糸からなるフック状係合素子であることが好ましい。
そして、基布の表面と裏面のいずれか一方の面にループ状係合素子を有し、他方の面にフック状係合素子を有している、あるいは基布の表面にループ状係合素子とフック状係合素子の両方を有していることが好ましい。
本発明の再帰反射性面ファスナーは、経糸に平行に再帰反射性糸を基布に織り込むだけで再帰反射性を得ており、したがって前記従来技術のように、長さ方向中央部に存在している係合素子を全て除去してその部分に広い光反射面を設けた面ファスナーと相違して、光反射性能が激し過ぎず、長期使用しても、光反射性が損なわれることが殆どない。
しかも本発明の再帰反射性面ファスナーは、光反射性能を付与することにより面ファスナーの係合力を低下させることが殆どなく、さらに面ファスナーを構成する基布に再帰反射性糸が織り込まれ、この糸が基布の表面及び裏面に露出しているため、さらに係合素子の根元が緯糸の融着により基布に固定された状態であることから、従来一般的な面ファスナーのように基布裏面に係合素子固定用のバックコート樹脂層を付与する必要がなく、裏面に露出している再帰反射性糸がバックコート樹脂に覆われ再帰反射性が消失することもない。
また、本発明の再帰反射性面ファスナーをズボンの裾固定ベルトや鉢巻や手首締め付け具等として使用すると、自転車に乗っているときであっても、あるいはランニング等をしている時であっても、夜間に遠くから、人の存在を認識してもらうことができ、事故の発生を防ぐことができ、そして、好ましくは、再帰反射性糸の表面を被覆する被覆糸と面ファスナーを構成している糸がいずれもポリエステル系のものであることから、同色に着色することが容易であり、これにより、昼間は再帰反射性糸の存在が、表面を覆う同色に着色された被覆糸により、余り目立つことがなく、違和感を与えず、したがって審美性にも優れる。
さらに、本発明の再帰反射性面ファスナーは、用いられている再帰反射性糸の表面が被覆糸で部分的に覆われているため、再帰反射性を付与する透明微小球が表面から脱落し難く、したがって繰り返しの洗濯が可能であり、従来の光反射面を有する面ファスナーが洗濯により光反射面が損なわれることから洗濯が殆どできなかったことと比べると極めて清潔である。
さらに手首や足首に取り付けても、従来の面ファスナーのように通気性を損なうバックコート樹脂層や広い光反射面が存在していないことから通気性に優れ、さらに従来の面ファスナーでは裏面を覆うバックコート樹脂層が存在し、この層が肌に密着して通気性を損なっていたのに対して、本発明の面ファスナーではこのようなバックコート樹脂層が存在しないことから、蒸れることがなく快適性に優れる。
本発明の再帰反射性ループ面ファスナーの一例の裏面を模式的に示した図である。 本発明の面ファスナーを構成する再帰反射性糸の一例を模式的に示した図である。
本発明の再帰反射性面ファスナーを、図面を用いて説明する。まず、本発明の再帰反射性面ファスナーは、経糸、緯糸、係合素子用糸および再帰反射性糸からなる。図1は、このような面ファスナー(1)の基布を裏面から見た場合の模式図であり、図中、斜線を引いた2は経糸、横線を引いた3は緯糸、縦線を引いた4は係合素子用糸、丸と斜め線を引いた5は再帰反射性糸を表す。これら経糸(2)、係合素子用糸(4)、再帰反射性糸がそれぞれ途切れている個所は緯糸の下に沈み込んでいることを示す。
この図から明らかなように、基布の裏面は、経糸(2)と係合素子用糸(4)と再帰反射性糸(5)で覆われており、緯糸(3)は僅かしか裏面に露出していない。基布の表面も同様である。
本発明の面ファスナーにおいて、係合素子用糸(4)および再帰反射性糸(5)は経糸(2)に平行に基布に織り込まれている。そして係合素子用糸(4)は基布の表面側で基布面から所々ループ状に突出し、フック状係合素子の場合には、ループの片脚側が切られて、フック形状となっている。ループ状係合素子の場合には、切られることなく、ループ形状を保ち、面ファスナーとして使用される。
フック状係合素子はフック状係合素子用モノフィラメント糸から、またフック状係合素子の係合相手となるループ状係合素子はマルチフィラメント糸から形成される。
これらの糸は、熱や吸水・吸湿により波打ち(面ファスナーの基布面が不規則に上下して、水平な面とならない状態)を生じない点から、また優れた熱融着性の点から、さらに熱による優れた形状固定性の点で、いずれも、実質的にポリエステル系の樹脂から構成されているのが好ましい。同時に、再帰反射性糸を構成する被覆糸に関してもポリエステル系の樹脂から構成されているのが、同時に同色に染色できることから好ましい。
従来から、織物を基布とする面ファスナーに関しては、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系の繊維からなる糸が広く一般的に用いられているが、ポリアミド系繊維の糸を用いた場合には、吸水・吸湿や熱により基布の形状が変化し、場合によっては、吸湿や吸水、熱処理により基布が波打ったりして形態が損なわれるという現象が生じ、その結果、面ファスナーを取り付けた製品の品質や高級感が損なわれるという大きな問題点を有しており、また面ファスナーとして最も重要な係合力に関しても必ずしも高くないという問題点も有しており、さらに熱により融着させ難いという問題点も有している。
さらに、本発明の再帰反射性面ファスナーの場合、面ファスナーを構成する繊維がポリエステル系のものである場合には、基布に織り込んだ再帰反射性糸の周りの糸が弾性により曲がりにくく、その結果、再帰反射性糸を構成する微小球が保護され、スリットヤーン表面から微小球が脱落し難く、その結果、再帰性能に耐久性が得られる。
このような理由により、経糸、緯糸、係合素子用糸および再帰反射性糸の被覆糸を構成する繊維は、主としてポリエステル系樹脂からなるのが好ましい。ポリエステル系樹脂とは、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルまたはブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであり、主としてテレフタル酸とエチレングリコールからの縮合反応またはテレフタル酸とブタンジオールからの縮合反応により得られるポリエステルである。より好ましくは、緯糸以外の経糸と係合素子用糸と再帰反射性糸の被覆糸は、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーまたはポリブチレンテレフタレートホモポリマーから形成されている場合である。
いずれにしても、後述する緯糸を構成する芯鞘型熱融着性繊維の鞘成分を融着させるための熱処理温度で、溶融しない融点を有するポリエチレンテレフタレート系ポリエステルやポリブチレンテレフタレート系ポリエステルが糸を構成する主成分であるのが好ましい。また、上記ポリエステル系繊維には、必要により、他の繊維が混綿や混繊、引き揃えられていてもよい。
経糸としてはマルチフィラメント糸が好ましく、そして経糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、16〜96本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜250デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に24〜48本のフィラメントからなるトータルデシテックスが100〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。
緯糸としてはマルチフィラメント糸が好ましく、緯糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、24〜72本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜300デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に24〜48本のフィラメントからなるトータルデシテックスが75〜200デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。
そして、緯糸には熱融着性繊維を含んでいることが重要である。熱融着性繊維の代表例として、鞘成分を熱融着成分とする芯鞘型断面の熱融着性繊維が挙げられる。緯糸が熱融着性繊維を含んでいることにより、係合素子用糸を基布に強固に固定することが可能となり、従来の面ファスナーのように係合素子用糸が基布から引き抜かれることを防ぐためにポリウレタン系やアクリル系のバックコート樹脂を面ファスナー基布裏面に塗布する必要もなくなる。
本発明の場合には、バックコート樹脂を基布裏面に塗布すると裏面の再帰反射性が消失してしまうことから、基布の表裏両面に再帰反射性糸が露出していることが必須であるが、その点から、バックコート樹脂を塗布することなく係合素子を基布に固定できる、緯糸に熱融着性繊維を用いる技術が用いられる。
緯糸に代えて経糸に熱融着性繊維を用いることにより係合素子用糸を基布に固定することも考えられるが、係合素子用糸は経糸に平行に基布に打ち込まれることから、経糸は係合素子用糸と交差する箇所が緯糸に比べてはるかに少なく、したがって熱融着性繊維を経糸にのみ用いた場合には係合素子用糸が基布に強固に固定され難い。
また経糸に熱融着性繊維を用いた場合には、面ファスナーを連続生産する上で、走行する基布に掛かる張力を一定に保つことが難しく、一定品質の面ファスナーを安定に連続生産することが困難となり易い。
さらに、緯糸に熱融着性繊維を用いることにより、経糸に平行に織り込まれた再帰反射性糸が確実に基布に固定されることから、再帰反射性能が損なわれることが阻止できる。
上記した芯鞘型の熱融着性繊維としては、鞘成分を溶融させてフック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸の根元を基布に強固に固定できるポリエステル系の樹脂からなるものが好ましく、例えば、芯成分は熱処理条件下では溶融しないが鞘成分は溶融する芯鞘型の断面を有するポリエステル系繊維が挙げられる。
具体的には、ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、イソフタル酸やアジピン酸等で代表される共重合成分を多量に共重合、例えば20〜30モル%共重合することにより融点又は軟化点を大きく低下させた共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分とする芯鞘型ポリエステル繊維が代表例として挙げられる。
鞘成分の融点または軟化点としては100〜200℃であり、かつ経糸や芯成分やフック状係合素子用モノフィラメント糸あるいはループ状係合素子用マルチフィラメント糸や再帰反射性糸の被覆糸の融点より20〜150℃低いのが好ましい。芯鞘型熱融着性繊維の断面形状としては、同心芯鞘であっても、偏芯芯鞘であっても、あるいは1芯芯鞘であっても、多芯芯鞘であってもよい。
さらには、緯糸を構成する繊維中に占める芯鞘型熱融着性繊維の割合は、特に緯糸の全てが実質的に芯鞘型の熱融着性繊維で形成されている場合、つまり緯糸が芯鞘型の熱融着性のフィラメントからなるマルチフィラメント糸である場合には、フック状係合素子用糸、ループ状係合素子用糸および再帰反射性糸がともに強固に基布に固定されることとなるため好ましい。
緯糸を構成する繊維が芯鞘断面形状ではなく、繊維断面の全てが熱融着性のポリマーで形成されている場合には、溶けて再度固まった熱融着性ポリマーは脆く割れやすくなり、縫製した場合等は縫糸部分から基布が裂け易くなる。したがって、熱融着性繊維は、熱融着されない樹脂を含んでいることが必要で、芯鞘の断面形状を有していることが好ましいということになる。そして、芯成分と鞘成分の重量比率は20:80〜80:20の範囲、特に30:70〜70:30の範囲が好ましい。
さらに、フック状係合素子用糸およびループ状係合素子用糸を共に強固に基布に固定するためには、緯糸として用いられた熱融着性繊維が熱融着すると共に、繊維自身が収縮してフック状係合素子およびループ状係合素子の根元を両側から締め付けるのが好ましく、そのためには、緯糸として用いられる熱融着性繊維は熱処理条件下で大きく熱収縮を生じる繊維が好ましい。具体的には、200℃での乾熱収縮率が8〜20%である繊維が好適に用いられ、特に同収縮率が11〜18%である繊維が好適である。
フック状係合素子には、軽い力ではフック形状が伸展されない、いわゆるフック形状保持性と剛直性が求められ、そのために太い合成繊維製のモノフィラメント糸が用いられる。本発明では、このモノフィラメント糸として、特にフック形状保持性に優れたポリエチレンテレフタレート系ポリエステルまたはポリブチレンテレフタレート系ポリエステルから形成され、かつ上記熱融着性繊維を熱融着させる際の温度では溶融しないポリエステルからなるモノフィラメント糸が用いられる。
このようなポリエチレンテレフタレート系ポリエステルまたはポリブチレンテレフタレート系ポリエステルからなるフック状係合素子用モノフィラメント糸の太さとしては、直径0.13〜0.40mmのものが好ましく、より好ましくは直径0.18〜0.35mmのものである。
ループ状係合素子用糸も、フック状係合素子と同様にポリエチレンテレフタレート系ポリエステルまたはポリブチレンテレフタレート系ポリエステルから構成され、かつ上記熱融着性繊維を熱融着させる際の温度では溶融しないポリエステルからなるマルチフィラメント糸が好ましい。ループ状係合素子用糸を構成するマルチフィラメント糸の太さとしては、5〜15本のフィラメントからなるトータルデシテックスが150〜300デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましく、特に8〜12本のフィラメントからなるトータルデシテックスが160〜280デシテックスであるマルチフィラメント糸が好ましい。
再帰反射性糸としては、図2に示すように、樹脂シートのスリットヤーン(6)とその表面を覆う被覆糸(8)からなり、該スリットヤーンは、多数の透明微小球(7)が、図2に示すように樹脂シート(スリットヤーン:6)表面から一部露出して存在しており、該微小球が埋没している部分の樹脂表面または微小球表面には反射層が存在している糸が好ましい。多数の透明微小球が樹脂シート表面から一部露出して存在しており、該微小球が埋没している部分の樹脂表面または微小球表面には反射層が存在しているような樹脂シートは再帰反射性シートとして、現在一般に広く市販されている。
本発明では、このようなシートを幅0.15〜0.4mm幅でスリットしたものが用いられる。微小球としては、直径200μm以下で、屈折率が1.7以上の透明球体、特にガラス製の微小球が挙げられ、また反射層としては金属膜を蒸着、スパッタリング、メッキ等の方法で設けられる。
このようなスリットヤーンの周りにポリエステル系繊維からなる被覆糸(8)が巻き付けられる。被覆糸(8)は、30〜120dtexの2本のマルチフィラメント糸が、一方がS撚で、もう一方がZ撚で上記スリットヤーンに巻き付けられているのが好ましい。このようなS撚とZ撚の両撚が存在することにより、スリットヤーンの表面から被覆糸が移動し難く、微小球を保護し、微小球が樹脂シート表面から脱落することを防止し、再帰反射性能を長期間保持できることとなる。
本発明で使用する再帰反射性糸は公知であり、例えば特開2003−20535号公報には、上記スリットヤーンの周囲を、2本の被覆糸で、一方がS撚で他方がZ撚で被覆した再帰反射性糸が記載されている。
以上述べた経糸、緯糸、フック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸、さらに再帰反射性糸から、まず面ファスナー用の織物を織成する。
織物の織組織としては、フック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸、そして再帰反射性糸を経糸の一部とした平織が好ましく、これら係合素子用糸は、経糸と平行に存在しつつ、組織の途中で基布面から立ち上がり、フック面ファスナーの場合にはループを形成しつつ経糸を1〜3本飛び越えて経糸間にもぐり込むような織組織で、一方、ループ型面ファスナーの場合には経糸を跨ぐことなくループを形成し、経糸に平行に存在している織組織が、さらにフック・ループ混在面ファスナーの場合にはこれら両者をともに満足するような織組織が、フック状係合素子用ループの片足側部を効率的に切断でき、さらにフック状係合素子とループ状係合素子が係合し易いことから好ましい。
そして、経糸の織密度としては、熱処理後の織密度で45〜90本/cmが、また緯糸の織密度としては、熱処理後の織密度で15〜30本/cmが好ましい。そして、緯糸の重量割合としては、面ファスナーを構成するフック状係合素子用糸あるいはループ状係合素子用糸と経糸および緯糸の合計重量に対して15〜40%が好ましい。
またフック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸の打ち込み本数は、それぞれ、経糸20本(フック状係合素子用モノフィラメント糸またはループ状係合素子用マルチフィラメント糸を含む)に対して3〜8本程度が好ましい。フック・ループ混在面ファスナーの場合には、フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸の合計で経糸20本(フック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸を含む)に対して3〜8本が好ましく、そしてフック状係合素子用モノフィラメント糸およびループ状係合素子用マルチフィラメント糸の本数比が33:67〜67:33の範囲が好ましい。
そして、再帰反射性糸(5)を図1に示すように経糸と平行に基布に織り込む。経糸と平行に織り込むことにより、基布の表面および裏面に再帰反射性糸(5)が十分に露出し、表面と裏面の両面が再帰反射性を有することとなる。緯糸の一部として緯糸に平行に基布に織り込むことも考えられるが、この方法の場合には、基布の表面および裏面が主として経糸および係合素子用糸で覆われることから、織り込んだ再帰反射性糸は表面および裏面に露出することが少なく、再帰反射性能は殆ど得られない。
再帰反射性糸の織り込み本数としては、面ファスナーに少なくとも1本の再帰反射性糸が面ファスナー長さ方向に連続して織り込まれている程度で十分である。具体的な織り込み本数としては、基布を構成する経糸10〜200本に一本程度の割合で再帰反射性糸が基布に織り込まれているのが好ましい。より高度な再帰反射性能が必要な場合には、織り込み本数を増やすことにより容易に達成される。
再帰反射性糸は、図1に示すように、隣り合う経糸の一本と緯糸に対する浮き沈みが同一となるように基布に織り込むことが再帰反射性糸の耐久性、さらに製織性を高め、製織時の再帰反射性糸への損傷を軽減を高める上で好ましい。
このようにして得られた面ファスナー用織物に、次に熱処理して緯糸を構成する芯鞘型熱融着性繊維の鞘成分を溶融させると同時に緯糸を収縮させて係合素子用のモノフィラメント糸やマルチフィラメント糸を基布に強固に固定させる。これにより、従来の面ファスナーで行われていたバックコート処理が不要となり、バックコート用接着剤による通気性や裏面に存在する再帰反射性糸が再帰反射性能を消失するという問題点や面ファスナーの柔軟性が損なわれるという問題点が生じることを防ぐことができる。さらに、この熱処理の際の熱によりフック状係合素子のループ形状が固定され、フック状係合素子の片足を切断してフック状係合素子とした後においても、フック形状を保ち、十分な係合強度が得られることとなる。
熱処理の際の温度としては、熱融着性繊維が溶融または軟化するがそれ以外の糸は溶融しない温度で、かつフック状係合素子用モノフィラメント糸が熱固定される温度である150〜250℃が一般的に用いられ、より好ましくは185〜220℃の範囲、さらに好ましくは190〜210℃の範囲である
次に、このように熱処理した面ファスナー用織物の表面から突出しているフック状係合素子用ループ脚部の片脚側部を切断してフック状係合素子とする。フック状係合素子用ループの片側部を切断するために用いられる切断装置としては、地経糸方向に走行するフック面ファスナー用布のフック状係合素子用ループの片脚を2本の固定刃の間を可動切断刃の往復運動によって切断する構造となっている切断装置が好ましく、そのために、フック状係合素子用のループは、上記したように地経糸を跨ぐ場所で形成していると、ループの片足だけを容易に切断できることから好ましい。
またフック状係合素子の高さとしては基布面から1.3〜3.0mmが、またループ状係合素子の高さとしては基布面から1.8〜3.5mmが、係合力の点で、さらに係合素子の倒れにくさの点で好ましい。
フック面ファスナーにおけるフック状係合素子の密度、ループ面ファスナーにおけるループ状係合素子の密度、フック・ループ混在面ファスナーにおけるフック状係合素子とループ状係合素子の合計密度としては、係合素子が存在している基布部分基準でかつ熱収縮後の広さ基準で、それぞれ30〜80個/cm、30〜80個/cm、30〜80個/cmが好ましい。そして、フック・ループ混在面ファスナーにおいて、フック状係合素子の個数とループ状係合素子の個数の比率としては、40:60〜60:40の範囲が好ましい。
このようにして得られた再帰反射性面ファスナーを染色処理する。本発明を構成する面ファスナーは、基布を構成する経糸、緯糸、係合素子用糸およびスリットヤーンに巻き付けられている被覆糸が共にポリエステル系の糸であることから同一条件で同一に染色できる。特に本発明の場合は、再帰反射性糸が好ましくはポリエステル系の被覆糸で覆われていることから染色後の再帰反射性糸は基布と同色に染色された被覆糸で覆われることとなることから、昼間は、異色感を与える再帰反射性糸の存在が分かり難く、違和感を与えず審美性に優れることとなる。そして暗闇では再帰反射性糸が存在感を発揮し、面ファスナーおよび面ファスナーが取り付けられた物品や人の存在が目立つこととなる。
本発明の再帰反射性面ファスナーにおいて、基布の表面にフック状係合素子またはループ状係合素子を有しているフック面ファスナーまたはループ面ファスナーであっても、あるいは基布の表面と裏面のいずれか一方の面にループ状係合素子を有し、他方の面にフック状係合素子を有している両面面ファスナーであっても、あるいは基布の表面にループ状係合素子とフック状係合素子の両方を有しているフック・ループ混在型面ファスナーであってもよい。
また、ループ面ファスナーの長さ方向端部にフック面ファスナーを繋いだり、またループ面ファスナーの長さ方向端部の裏面にフック面ファスナーを貼り合せたものでもよい。またフック・ループ混在型面ファスナー同士を、係合素子面を外側にして貼り合せたものでもよい。
本発明の再帰反射性面ファスナーは、表面が係合素子で覆われていても、その下の基布に再帰反射性糸が織り込まれていれば、再帰反射性能は十分得られと同時に表面が係合素子で覆われていることから係合性(結束性)に優れる。
本発明の再帰反射性面ファスナーは、従来の一般的な面ファスナーが用いられている用途分野に用いることができるが、特に暗闇で存在を知らせる用途に適している。例えば、夜光脚バンド、夜光腕バンド、夜光ヘアバンド、工事現場を知らせる表示具、道路標識、結束テープ等に好適に使用される。
以下本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
面ファスナーの基布を構成する経糸および緯糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント、再帰反射性糸として次の糸を用意した。
[経糸]
・融点260℃のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:167dtexで30本
[緯糸(芯鞘型複合繊維からなるマルチフィラメント系熱融着糸)]
・芯成分:ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)
・鞘成分:イソフタル酸25モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
(軟化点:190℃)
・芯鞘比率(重量比): 70:30
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:99dtexで24本
・200℃での乾熱収縮率:13%
[ループ状係合素子用マルチフィラメント]
・ポリブチレンテレフタレート繊維(融点:220℃)
・トータルデシテックスおよびフィラメント本数:265dtexで7本
[再帰反射性糸]
・スリットヤーンとその表面を覆う被覆糸からなる。
・スリットヤーン:0.4mm幅のポリエチレンテレフタレート製フィルムで、その表面には、多数の平均粒子径30μmで屈折率1.93のガラス製透明微小球が該ヤーン表面から一部露出して存在しており、該微小球が埋没している部分の微小球表面にはアルミニウム蒸着させた反射層が存在している。
・被覆糸:2本のポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメント糸(56dtex/12フィラメント)がS撚とZ撚でスリットヤーン表面を被覆
上記経糸、緯糸、ループ状係合素子用マルチフィラメント、再帰反射性糸を用いて、織組織として平織を用い、織密度(熱収縮処理後)が経糸55本/cm、緯糸22本/cmとなるように織った。そして、経糸4本に1本の割合でループ状係合素子用マルチフィラメントを、経糸を跨ぐことなく経糸に平行に打ち込み、緯糸5本を浮沈したのちループを形成するように基布上にループを形成した。また再帰反射性糸は、面ファスナー幅方向2.5cmに1本の割合で、経糸に平行に、かつ隣り合う経糸1本と緯糸に対する浮き沈みが同一となるように織り込んだ。
上記条件にて織成されたループ面ファスナー用テープを、緯糸の鞘成分のみが熱溶融し、なおかつ、経糸、ループ係合素子用マルチフィラメント、再帰反射性糸、さらには緯糸の芯成分が熱溶融しない温度である200℃で熱処理を施した。その結果、緯糸は収縮し、基布を緯糸方向に12%収縮させるとともに鞘成分が溶融して近隣に存在する糸を融着させた。そして、得られた織物を冷却させた。得られたループ面ファスナーのループ状係合素子密度は44個/cmであり、さらにループ状係合素子の基布面からの高さは2.4mmであった。
このようにして得られたループ面ファスナーを、ポリエチレンテレフタレート繊維およびポリブチレンテレフタレート繊維が染色可能な高圧条件で分散染料で紺色に染色したところ、高級感ある濃紺色に染色できた。得られた着色面ファスナーを25mm幅でスリットして長尺のループ面ファスナーを得た。このループ面ファスナーの幅方向中央部には、再帰反射性糸が長さ方向に平行に織り込まれている。
染色されたループ面ファスナーは、従来の係合素子引き抜き防止用樹脂(バックコート用樹脂)を裏面に塗布した一般的な面ファスナーと比べて基布が極めて柔軟であり、表裏共に、明るい場所では光反射が殆どなく、再帰反射性糸の存在が余り目立たず、暗い場所では、光に反射して面ファスナーの存在が鮮明に分かるものであった。そして、この再帰反射性面ファスナーは、再帰反射性糸を折り込まなかった面ファスナーと同等の係合力を有していた。
この再帰反射性ループ面ファスナーを長さ30cmに切断してテープとし、その長さ方向片端部裏面に透明な成形フック面ファスナーを貼りつけた。そして、このテープを裏面が外側となるように巻き付けて、ループ面ファスナーと成形フック面ファスナーを係合させて、自転車に乗る際のズボンの裾固定ベルトとして使用した。
その結果、後方やサイドの遠くから自転車の存在が分かり、通行者や後方から近づく車の運転者に注意してもらうことできた。
このような裾固定用ベルトを5回洗濯したが、再帰反射性は殆ど低下することはなかった。また、直接足首や手首に巻き付けて使用しても、巻き付けている部分が蒸れて、発汗することもなかった。
実施例2
上記実施例1において、係合素子用糸を下記のモノフィラメントに変更し、織組織として平織を用い、織密度(熱収縮処理後)が経糸55本/cm、緯糸20本/cmとなるように織った。そして、経糸4本に1本の割合でフック状係合素子用モノフィラメントを経糸に平行に打ち込み、緯糸5本を浮沈したのちに経糸3本を跨ぐようにし、跨いだ箇所でループを形成するように基布上にループを形成した。また、再帰反射性糸は、面ファスナー幅方向2.5cmに1本の割合で、経糸に平行に、かつ隣り合う経糸1本と緯糸に対する浮き沈みが同一となるように織り込んだ。
[フック状係合素子用モノフィラメント]
・ポリエチレンテレフタレート繊維(融点:260℃)
・繊度:390dtex(直径:0.19mm)
このようにして、織成されたフック面ファスナー用テープに実施例1と同様に熱処理を施した。緯糸は収縮するとともに鞘成分が溶融して近隣に存在する糸を融着させた。その結果、基布は緯糸方向に9%収縮した。そして、得られた織物を冷却させたのち、フック状係合素子用ループの片脚部を切断してフック状係合素子を形成した。得られたフック面ファスナーのフック状係合素子密度は42個/cmであり、さらにフック状係合素子の基布面からの高さは1.8mmであった。
このようにして得られたフック面ファスナーを、実施例1と同一の染色条件で紺色に染色したところ、高級感ある濃紺色に染色できた。得られた着色面ファスナーを25mm幅でスリットして長尺のフック面ファスナーを得た。このフック面ファスナーは、その幅方向中央部に再帰反射性糸が長さ方向に平行に織り込まれていた。
染色されたフック面ファスナーは、従来の係合素子引き抜き防止用樹脂(バックコート用樹脂)を裏面に塗布した一般的なフック織面ファスナーと比べて基布が柔軟であり、表裏ともに、明るい場所では光反射が殆どなく、再帰反射性糸の存在が余り目立たないことから審美性に優れ、暗い場所では光に反射して面ファスナーの存在が鮮明に分かるものであった。そして、この再帰反射性面ファスナーは、再帰反射性糸を折り込まなかった面ファスナーと同等の係合力を有していた。
この再帰反射性フック面ファスナーを長さ24cmに切断してテープとし、その長さ方向片端部裏面に実施例1のループ面ファスナーを貼りつけた。そして、このテープをフック状係合素子面が外側となるように両手首に巻き付け、ランニングの際の安全ベルトとして使用した。
この安全ベルトを両手首に巻き付け、夜間、ランニングを行った結果、遠くから存在を認識してもらうことができ、通行者や後方から近づく車の運転者に注意してもらうことできた。このような安全ベルトを5回洗濯したが、再帰反射性は殆ど低下することはなかった。また、巻き付けている部分が汗で蒸れることもなかった。
実施例3
上記実施例2において、フック状係合素子用糸の半数を、2本毎に実施例1に記載のループ状係合素子用糸に置き換え、かつループ状係合素子用糸は経糸を跨ぐことなく、経糸に平行に実施例1と同様に織り込み、そして実施例2と同様に熱処理し、フック用ループのみ片脚をカットして、フック状係合素子とループ状係合素子が表面に混在している面ファスナーを作製した。
得られた面ファスナーのループ状係合素子密度は22個/cmであり、さらにループ状係合素子の基布面からの高さは2.4mmで、フック状係合素子密度は21個/cmで、フック状係合素子の基布面からの高さは1.8mmであった。得られたフック・ループ混在型面ファスナーを実施例1と同様に染色し、更に25mm幅にスリットしてテープ状物を得た。このテープ状面ファスナーの幅方向中央部には再帰反射性糸がテープ長さ方向に連続して存在しており、基布が柔軟であり、表裏ともに、明るい場所では再帰反射性糸の光反射が殆どなく、再帰反射性糸の存在が余り目立たないことから審美性に優れ、暗い場所では表裏共に光に反射して面ファスナーの存在が鮮明に分かるものであった。そして、この再帰反射性面ファスナーは、再帰反射性糸を折り込まなかった面ファスナーと同等の係合力を有していた。
このテープ状面ファスナーを長さ32cmにカットし、一方の端部を鐶に通して折り返して係合素子面同士を係合させ、もう一方の端部をズボンの裾に係合素子面が表面側となるように巻き付けて、鐶に通して折り返して係合素子面同士を係合させて、ズボンの裾固定用ベルトとして使用した。この状態で夜間に自転車に乗ったところ、係合素子面および裏面ともに光反射して、後方から近づく自動車からあるいは通行者から自転車の存在を認識してもらうことができ、安全グッツとして適していた。
比較例1
上記実施例1において、再帰反射性糸を経糸に平行に織り込むのではなく、緯糸に平行に緯糸44本に一本の割合となるように織り込む以外は実施例1と同様にして、織成、熱処理、染色を行い、ループ面ファスナーを作製した。
得られたループ面ファスナーは、織り込んだ再帰反射糸は表面に殆ど露出しておらず、暗闇での再帰反射性能は殆ど得られなかった。
比較例2
上記実施例1において、経糸、緯糸、ループ状係合素子用糸としてナイロン66からなる、それぞれと同等の太さを有する糸を用い(但し緯糸はナイロン66単独からなる非熱融着性糸)、再帰反射性糸は実施例1と同一のものを使用し、実施例1と同様に織り、そして、裏面にバックコート液としてポリウレタン溶液を塗布して乾燥してループ面ファスナーを製造した。
得られた面ファスナーを紺色の酸性染料で染色したところ、明るいところでも再帰反射性糸の存在が目立ち、審美性の点で実施例1のものより劣った。そして、裏面はバックコート樹脂であるポリウレタンに覆われていることから再帰反射性能を全く有していなかった。したがって、手首用安全ベルトとして使用する際には、係合素子面が外側となるようにして巻き付けざるを得ず、その結果、バックコート樹脂層が肌に密着して蒸れて発汗を生じた。
1:再帰反射性面ファスナー
2:経糸
3:緯糸
4:係合素子用糸
5:再帰反射性糸
6:スリットヤーン
7:微小球
8:被覆糸

Claims (9)

  1. 経糸、緯糸および係合素子用糸からなる基布の表面に、同表面から立ち上がる多数の係合素子が存在しており、該緯糸が熱融着性繊維を含み、同熱融着性繊維により係合素子の根元が基布に固定されている面ファスナーにおいて、該経糸に平行に再帰反射性糸が基布に織り込まれており、基布の表裏両面に再帰反射性糸が露出していることを特徴とする再帰反射性面ファスナー。
  2. 再帰反射性糸が、樹脂シートのスリットヤーンとその表面を覆う被覆糸からなり、該スリットヤーンは、多数の透明微小球が樹脂表面から一部露出して存在しており、該微小球が埋没している部分の樹脂表面には反射層が存在している請求項1に記載の再帰反射性面ファスナー。
  3. 再帰反射性糸が、スリットヤーンとその表面にS撚の糸とZ撚の糸が巻き付けられている被覆糸からなる請求項2に記載の再帰反射性面ファスナー。
  4. 基布を構成する経糸、緯糸、係合素子用糸およびスリットヤーンに巻き付けられている被覆糸が共にポリエステル系の糸である請求項1〜3のいずれかに記載の再帰反射性面ファスナー。
  5. 基布を構成する経糸、緯糸、係合素子用糸およびスリットヤーンに巻き付けられている被覆糸が共に同一色に着色されている請求項4に記載の再帰反射性面ファスナー。
  6. 基布裏面には、基布を構成する糸を固定するためのバックコート樹脂層が存在してない請求項1〜5のいずれかに記載の再帰反射性面ファスナー。
  7. 基布を構成する経糸10〜200本に一本の割合で再帰反射性糸が基布に織り込まれている請求項1〜6のいずれかに記載の再帰反射性面ファスナー。
  8. 係合素子が、マルチフィラメント糸からなるループ状係合素子またはモノフィラメント糸からなるフック状係合素子である請求項1〜7のいずれかに記載の再帰反射性面ファスナー。
  9. 基布の表面と裏面のいずれか一方の面にループ状係合素子を有し、他方の面にフック状係合素子を有している、あるいは基布の表面にループ状係合素子とフック状係合素子の両方を有している請求項1〜8のいずれかに記載の再帰反射性面ファスナー。
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