JP3989701B2 - 再帰反射糸条、再帰反射布帛及びそれを用いた衣服 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、再帰反射糸条、再帰反射布帛及びそれを用いた衣服に関する。さらに詳しくは、夜間及び暗闇での視認性に優れた作業服等に好適な再帰反射糸条、再帰反射布帛及びそれを用いた衣服に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、夜間及び暗闇での作業者や、交通取締、交通整理の警察官あるいはガードマン等の安全を確保するため、再帰反射素材を使用した視認作業服が使用されてきた。
【0003】
該再帰反射素材としては、一般に、織編物等の布帛に、透明微小ガラス球を含む樹脂をコーティングあるいはプリントした素材が用いられていたが、ある程度の面積をコーティングあるいはプリントしなければ接着強度が不足するために、デザイン上の制約が大きいという問題があった。そこで特開平2−140703号公報には、透明微小ガラス球を含む樹脂をコーティングしたテープ状の連続体を織物状に組み交わした素材が開示されている。しかし、この素材は強度が弱く、通常の糸条と同時に織編等の加工をすることができないという問題があった。また、いずれの素材も洗濯時や着用時に、摩擦によって透明微小球が脱落し易く、再帰反射性が大幅に低下するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、通常の糸条と同時に加工することができる再帰反射糸条、再帰反射布帛及びそれを用いた衣服を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の再帰反射糸条は、再帰反射性を有するスリットヤーンを含む糸条であって、該糸条の幅が0.1〜0.4mmであり、かつその糸条の強力が340cN以上であり、かつ該糸条が、前記スリットヤーンが芯部に配置されているカバリング糸条であり、該カバリング糸条の被覆糸が、繊度が30〜200dtexの2本の糸条から構成され、一方の糸条がS撚り、他方の糸条がZ撚りの撚糸であり、それぞれのカバリング撚数が100〜1000T/mであることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の再帰反射布帛は、上記の再帰反射糸条と、該再帰反射糸条以外の糸条とが交編織されていることを特徴とする。さらに該再帰反射糸条が1〜30mmの間隔で布帛に配置されていることが好ましい。
さらにもう一つの本発明の衣服は、上記の再帰反射布帛を用いることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の再帰反射糸条は、再帰反射性を有するスリットヤーンを含む糸条である。該糸条の幅は0.1〜0.4mmであることが必要であり、さらには0.20〜0.35mmであることが好ましい。幅が細すぎると使用するスリットヤーンが細くなり、再帰反射性が低下するばかりか、生産性も低下する。逆に広すぎると通常の糸条と同時に加工できない。なお、ここで糸条の幅とは長さ方向に変動がある場合、一番幅の広い部分のことである。糸条の厚さについては強度を満たせば特に制限は無い。
【0008】
同時に、本発明の再帰反射糸条の強力は340cN以上であることが必要である。さらには400〜1000cNであることが好ましい。強力が340cN未満であると、断糸が発生するなどし、通常の糸条と同時に加工することができない。加工する上での好ましい該糸条の繊度としては600〜1500dtexであり、さらには800〜1000dtexが好ましい。また、伸度としては10〜40%であることが好ましく、さらには15〜30%であることが好ましい。
【0009】
本発明に用いられる再帰反射性を有するスリットヤーンとしては、公知のものが用いられ、例えば表層にある透明微小球等によって光を再帰反射させるスリットヤーンである。さらに具体的には平らな光の反射面を有する基材シートに無色または有色の透明層を介して透明微小球を配列し、裁断することによって得られるスリットヤーンなどである。該スリットヤーンが透明微小ガラス球が固着されてなるスリットヤーンであることが、製造コスト面などからもっとも好ましい。
【0010】
使用するスリットヤーンはその伸度が10〜50%であることが好ましい。この範囲であると糸条の伸びに追随し、加工性が向上する。また幅は0.1〜0.3mm、繊度換算の長さあたり重量は500〜1000dtexであることが好ましい。
【0011】
本発明の再帰反射糸条を構成するスリットヤーン以外の繊維は、上記条件を満足する再帰反射糸条となるならばいかなる繊維でも良く、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、およびアセテート繊維などの合成あるいは半合成繊維や、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維などが挙げられ、いずれの繊維単独でも複数の繊維を混合して用いても良いが、物性や生産性などの面からは、合成繊維が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維がもっとも好ましい。また、これらの繊維の形状にも特に制限は無く、風合等を向上させるために異形断面繊維として用いることも好ましい。これらの糸条における繊維の単糸繊度は1〜3dtex程度が柔らかい風合を得るために適当である。さらには、再帰反射糸条を構成するスリットヤーン以外の繊維は、繊維単独の強力は150cN以上であることが好ましく、最適には200〜250cNであることが好ましい。
【0012】
また、該再帰反射糸条を構成するスリットヤーン以外の糸条が先染めされたものであることが好ましい。再帰反射糸条とした後に後染めした場合には、高温下の浸染で染色されるなど、摩擦と熱にさらされるため透明微小球等の接着力が低下し、洗濯時の摩擦によって透明微小球が脱落し易くなる傾向がある。さらに再帰反射糸条がスリットヤーン以外に導電性繊維を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の再帰反射糸条は、該再帰反射糸条がカバリング糸条であって、該スリットヤーンがカバリング糸条の芯部に配置されているカバリング糸条であることが好ましい。さらには該カバリング糸条の被覆糸が、繊度が30〜200dtexの2本の糸条から構成され、一方の糸条がS撚り、他方の糸条がZ撚りの撚糸であり、それぞれのカバリング撚数が100〜1000T/mであることが好ましい。さらに繊度は50〜100dtexであることが好ましい。またカバリング撚数が200〜400T/mであることがより好ましい。このような構成をとることにより摩擦による透明微小球の脱落をさらに少なくし、糸条の物性を向上させ加工性がさらに向上させることができる。
【0014】
このようにして得られた本発明の再帰反射糸条は、再帰反射性を有する糸条が他の糸条によって補強されているためにゆるみが無く織編等の加工に適した糸条である。なおここでのゆるみとは、加工工程での張力により再帰反射性を有するスリットヤーンが伸び、その他の繊維が収縮してもスリットヤーンのみが元に戻らなくなることによって生じる欠点である。
【0015】
また本発明の再帰反射布帛は、上述の再帰反射糸条と、該再帰反射糸条以外の糸条とが交編織されているものである。布帛に占める再帰反射糸条の割合は重量で5〜20%位が適当である。さらには再帰反射糸条が1〜30mmの間隔で布帛に配置されていることが好ましい。もっと好ましくは5〜20mmの間隔で配置されることである。この間隔が狭いと通常の糸条の量が減り、強度が減少する傾向にある。またこれより間隔が大きいと、再帰反射の効果が現象する傾向にある。また、再帰反射糸条以外の糸条として導電性繊維を含むことが、制服等の用途に好ましく用いられる。
【0016】
再帰反射布帛の再帰反射性としては、後に述べる測定法での輝度が0.3cd/lx・m2以上であることが好ましく、さらには0.5cd/lx・m2以上であることがさらに好ましい。布帛に占める再帰反射糸条の割合によって再帰反射性は容易に調整できる。さらに洗濯50回後の再帰反射性が40%以上保持することが好ましく、さらには60%以上であることが好ましい。ユニフォーム等の繰り返し洗濯し使用するものでは、初期の再帰反射性をできるだけ保持することが好ましい。
【0017】
このようにして得られた本発明の再帰反射布帛は強力が高く、再帰反射性とゆるみの無い美しい外観を持つものである。さらにカバリング糸条の芯部に再帰反射性を有するスリットヤーンが配置された再帰反射糸条を用いた場合、特にスナッキング性、耐磨耗性に優れ、強度や耐久性が求められる制服等の用途に好ましく用いられる。
【0018】
さらにもう一つの本発明の衣服は、上記の再帰反射布帛を用いたものである。この衣服は再帰反射性とともに強度に優れるため、夜間等の視認作業服として最適である。また、再帰反射糸条にゆるみが無いため、得られる衣服は見栄え、風合、肌への触感が良いものである。
【0019】
【実施例】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中に記載した物性値の測定方法は以下のとおりである。
【0020】
(1)再帰反射性の評価
再帰反射性の評価はJIS Z 9117(保安用反射シート及びテープ)の7.3に基づき、投光部から生地までの距離を20mとして生地にあたる照度が3lxになるように調整し、観測角を0.2度、入射角を5.0度としたときの輝度を測定した。(単位、cd/lx・m2)洗濯処理をせずに評価したものをL0、洗濯処理を50回繰返した後に評価したものをL50とした。このとき洗濯処理は作成した生地を試料とし、JIS L 0217 103法に基づいて行った。
【0021】
(2)スナッキング性
スナッキング性の評価はJIS L 1058(織編物のスナッグ試験方法)のD−4法に基づいた方法で上述のL0、L50の洗濯処理をした生地を評価した。
【0022】
(3)磨耗性
磨耗性評価はJIS L 1096 E法(マーチンデール法)を用いて磨耗回数5000回後の磨耗変退色をJIS L 0805のグレースケールを用いて評価した。
【0023】
[実施例1]
再帰反射性を有するスリットヤーンとして、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面にポリエステル系合成樹脂溶液をコーティングし、平均直径が約30μmで屈折率が1.93の透明微小ガラス球を固着し、余分な透明ガラス球をバキュームで除去して、その面に再度ポリエステル系合成樹脂溶液をコーティングし、次に再帰反射面が表裏両面になるようにポリエステル系合成接着剤にてラミネーティングし、マイクロスリッターで約0.3mm巾に連続状に細断した再帰反射スリットヤーンを使用した。
【0024】
次にその再帰反射スリットヤーンを芯部にし、鞘部に繊度56dtex、強力220cN、伸度30%のポリエステルフィラメントを一方がS撚で他方がZ撚でそれぞれ芯部に200T/mでカバリングした再帰反射糸条を作成した。再帰反射糸条の太さはもっとも幅の太い部分で0.35mm、細い部分でも0.30mmあり、繊度は930dtex、強力は440cN、伸度は17%であった。
【0025】
さらにポリエステルウーリー糸(84dtex72fil双糸、Z撚り450T/m)を130℃浸染にて紺色に糸染めし、このポリエステルウーリー糸をベースとして経糸及び緯糸に使用し、先の無染色の再帰反射糸条を2cmの間隔に2本経糸に挿入した2/1右綾ツイルの再帰反射布帛を作成した。このものの仕上密度は経112本/2.54cm(インチ)、緯83本/2.54cm(インチ)であった。またL*値は22であった(GretagMacbeth タイプCE−3100、D65光源で測定)。
【0026】
得られた再帰反射布帛のスナッキング性はL0、L50ともに4級であり、磨耗性も3−4級と耐久性に優れた布帛であった。その他の評価の結果を表1に示す。
【0027】
[実施例2]
ポリエステル系合成樹脂溶液をカーボンブラックにて黒色に着色した以外は、実施例1と同様にして再帰反射性を有するスリットヤーンを作成した。
【0028】
次に鞘部のポリエステルフィラメントを黒色に糸染めした後にカバリングした以外は実施例1と同様にして再帰反射糸条を作成し、その再帰反射糸条を用いた以外は実施例1と同様に再帰反射布帛を作成した。またL*値は22になるように合わせた。
【0029】
得られた再帰反射布帛のスナッキング性はL0、L50ともに4級であり、磨耗性も3−4級と耐久性に優れた布帛であった。その他の評価の結果を表1に併せて示す。
【0030】
[実施例3]
ベースのポリエステルウーリー糸を糸染めしなかった以外は、実施例1と同様に布帛を作成し、精練後130℃浸染で紺色に後染めし、再帰反射性布帛とした。L*値は22になるように合わせた。
【0031】
得られた再帰反射布帛のスナッキング性はL0、L50ともに4級であり、磨耗性も3−4級と耐久性に優れた布帛であったが、初期の再帰反射性は0.50cd/lx・m2と若干低い値であった。評価の結果を表1に併せて示す。
【0032】
[比較例1]
再帰反射糸条を用いない以外は、実施例1と同様に2/1右綾ツイルの布帛を作成した。
その結果を表1に併せて示す。
【0033】
【表1】
【0034】
また、各々の生地を用いて製品(以下ブルゾン)を作成し、ブルゾンを着用した被験者に暗室の中で3lxの照度の光を投光し全体の再帰反射性を確認した。
【0035】
実施例1〜3記載の生地で作成した製品は全体が視認でき、審美性にも富んだものであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、通常の糸条と同時に加工することができる再帰反射糸条、再帰反射布帛及びそれを用いた衣服を提供することができる。
Claims (7)
- 再帰反射性を有するスリットヤーンを含む糸条であって、該糸条の幅が0.1〜0.4mmであり、かつその糸条の強力が340cN以上であり、かつ該糸条が、前記スリットヤーンが芯部に配置されているカバリング糸条であり、該カバリング糸条の被覆糸が、繊度が30〜200dtexの2本の糸条から構成され、一方の糸条がS撚り、他方の糸条がZ撚りの撚糸であり、それぞれのカバリング撚数が100〜1000T/mであることを特徴とする再帰反射糸条。
- 該スリットヤーンが透明微小ガラス球が固着されてなるスリットヤーンである請求項1記載の再帰反射糸条。
- 該再帰反射糸条を構成するスリットヤーン以外の糸条が先染めされたものである請求項1または請求項2に記載の再帰反射糸条。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の再帰反射糸条と、該再帰反射糸条以外の糸条とが交編織されていることを特徴とする再帰反射布帛。
- 該再帰反射糸条が1〜30mmの間隔で布帛に配置されている請求項4記載の再帰反射布帛。
- 洗濯50回後の再帰反射性の保持率が40%以上である請求項4または5記載の再帰反射布帛。
- 請求項4〜6のいずれか1項に記載の再帰反射布帛を用いた衣服。
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