JP2017193784A - 溶鉄の精錬方法及びスラグの組成分析方法 - Google Patents

溶鉄の精錬方法及びスラグの組成分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スラグの一部を転炉型精錬炉に残留させた状態のまま、溶鉄の次工程の精錬または次のチャージの溶鉄の精錬を行う際に、炉内に残留させたスラグの成分を迅速且つ高精度に測定し、この測定結果に基づいて適切な造滓剤の添加量を決定する。【解決手段】本発明の溶鉄の精錬方法は、転炉型精錬炉1における溶鉄の精錬で生じたスラグ5の一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄または前記転炉型精錬炉に新たに装入した溶銑を精錬するに際し、溶鉄の精錬で生じた前記スラグの成分を、該スラグから分析試料を採取することなく定量分析し、その成分分析結果に基づいて、スラグを残留させた前記転炉型精錬炉で行う、炉内に残留させた溶鉄の次工程の精錬または炉内に新たに装入した溶銑を用いた次のチャージの溶鉄の精錬における精錬前及び/または精錬中に添加する造滓剤の量を決定する。【選択図】 図3

Description

本発明は、溶銑を原料として溶銑または溶鋼を製造する溶鉄の精錬方法、並びに、その際に使用する高温物質の組成分析方法及び組成分析装置に関し、詳しくは、溶鉄の精錬で生じたスラグの組成を定量分析し、組成が明らかとなったスラグの一部を転炉型精錬炉に残留させた状態のままで、溶鉄の次工程の精錬または次に行うチャージの溶鉄の精錬を、スラグを残留させた転炉型精錬炉で実施する精錬方法、並びに、その際に使用するスラグなどの高温物質の組成を精度良く定量分析することのできる組成分析方法及び組成分析装置に関する。ここで、溶鉄とは、溶銑または溶鋼を意味する。
近年、二酸化炭素ガスの排出規制などの環境への配慮と高い生産性とを両立させる必要性から、様々な溶銑予備処理技術及び溶銑の脱炭処理技術が開発されている。こうしたなか、新規な溶銑予備処理技術の一つとして、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続的に行う溶銑予備処理技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、先ず、スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))が0.3〜1.3の範囲内に入るようにCaO系媒溶剤の添加量を調節して転炉型精錬炉で脱珪処理を行った後、転炉型精錬炉を傾動して炉内で生成されたスラグを炉口から排滓し、次いで、CaO系媒溶剤を添加して炉内に残留させた溶銑の脱燐処理を行う溶銑予備処理技術が提案されている。
但し、一般的に、脱珪処理時のスラグの塩基度は、脱珪処理によって生成されるSiO2によって変化することから、特許文献1では、スラグの塩基度が上記範囲を外れ、途中の排滓時にスラグの排出が困難になる場合が起こり得る。また、特許文献1では、脱燐処理後にスラグを排滓しており、少ないとはいえども炉内には溶銑が残留し、この溶銑もスラグとともに排出し、鉄歩留まりの低下を招く。
また、溶銑から溶鋼を溶製する脱炭処理に関しても、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱燐処理と脱炭処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続的に行う処理技術が提案されている。
例えば、特許文献2には、1つの転炉型精錬炉を用い、先ず、溶銑の脱燐処理を行い、次いで炉体を傾動させて生成したスラグを排滓し、その後、炉内に残留させた溶銑の脱炭処理を行い、溶製した溶鋼の転炉型精錬炉からの出鋼後、脱炭処理で生成したスラグを残留させたまま、次のチャージの溶銑を転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の脱燐処理及び脱炭処理を、上記の順に行う精錬技術が提案されている。特許文献2によれば、脱炭処理後のスラグを意図的に残留させることにより、CaO系媒溶剤の削減、鉄歩留まりの向上及び脱燐処理での低温化及びスラグの低塩基度化が実現できるとしている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、排滓工程において、転炉型精錬炉を傾動させることによって炉内のスラグを排出しているが、転炉型精錬炉を傾動させるだけでは、スラグを十分に排出することはできない。このため、特許文献1及び特許文献2では、転炉型精錬炉内に残留したスラグの影響により、復燐などの好ましくない現象が生じる可能性がある。尚、「復燐」とは、スラグに含有されていた燐酸化物(P25)が分解して溶銑や溶鋼に移行し、溶銑や溶鋼の燐濃度が上昇する現象である。また、特許文献1及び特許文献2に開示されるような、1つの転炉型精錬における2つの精錬の間で行われる排滓は、「中間排滓」、「中間排滓工程」とも呼ばれる。
このような背景のなか、特許文献3には、1つの転炉型精錬炉を用い、脱燐処理、排滓工程、脱炭処理を行う際に、途中の排滓工程における排滓を十分に行うことを目的として、排滓工程において、転炉型精錬炉の炉腹に設置した羽口から不活性ガスを吹き込み、不活性ガスによって、スラグを炉口側へ移動させながら排出する技術が提案されている。
特許文献4には、1つの転炉型精錬炉を用い、脱燐処理で生成したスラグの一部を残留させて次のチャージの溶銑の脱燐処理を行う際に、脱燐処理で生成したスラグの所定量を炉内に残留させることを目的として、転炉型精錬炉の傾動角度とスラグの残留量との関係を予め測定しておき、この測定結果に基づいて炉体を傾動して所定量のスラグを残留させる技術が提案されている。
また、特許文献5には、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う際に、脱珪処理時の復燐を防止するために、脱珪処理時のスラグの組成がSiO2の飽和領域とならないように制御する技術が提案されている。
特開平10−152714号公報 特開平4−72007号公報 特開平5−140627号公報 特開平6−200311号公報 特開2013−227664号公報
本発明者らは、スラグの一部を残留させた転炉型精錬炉を用いて、溶鉄の次工程の精錬または次のチャージの溶鉄の精錬を実施する場合、次工程の精錬または次のチャージの精錬では、スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))の調整が容易でないこと、つまり、適正量のCaO系媒溶剤を添加することは容易でないことを確認している。一般的に、スラグの塩基度を1.20程度に制御することにより、溶銑に対して適正な脱燐処理を行うことが可能であるが、必要量以上のCaO系媒溶剤を添加することはコスト増加に繋がる。
即ち、これまでに提案されている溶鉄の精錬方法において、更なるコスト低減のためには、CaO系媒溶剤などの造滓剤の添加量を必要最低限な量に抑えることが必要である。そして、これを実現するためには、造滓剤を添加する前の炉内のスラグの組成及び残留量を正確に把握することが必要となる。
例えば、特許文献1において、脱珪処理後の排滓後にCaO系媒溶剤を添加する場合、適正なCaO系媒溶剤の添加量を計算するためには、炉内に残留するスラグの塩基度とスラグの残留量とを把握する必要があるが、両者を正確に測定することは困難である。
特許文献4は、炉内に所定量のスラグを残留させているが、炉内に溶銑が存在しないときの傾動角度とスラグ残留量との関係からスラグ残留量を求めており、特許文献1や特許文献2の途中の排滓工程のように、炉内に溶銑が存在する場合には、炉内の溶銑量自体が変化することから、特許文献4の技術を用いても、炉内のスラグ残留量を正確に把握することはできない。
また、炉内残留スラグの組成を正確に評価する方法については、特許文献1〜5を含めて過去の特許文献には、詳細な記載は見当たらない。スラグ組成を知ろうとした場合、実際にスラグの一部を採取し、機側で分析する、または分析室へ搬送後に分析する方法が考えられるが、いずれの方法でも、添加するCaO系媒溶剤の量を見積り、投入するのに間に合うだけの迅速性を有しているとは考えにくい。
そこで、スラグ組成を計算によって見積もる方法が一般的に行われている。しかし、計算による方法の場合には、生成したスラグの一部または全部を炉内に残留させたまま次工程の精錬または次のチャージの溶鉄の精錬を繰り返して行うことにより、見積られるスラグ組成やスラグ量の精度が次第に低下する。このため、実際のスラグ組成と計算値との乖離が大きくなって、状況によっては溶銑予備処理を連続的に行うことが困難な状況に陥る可能性がある。
また、塩基度以外でもスラグ組成を迅速に知るニーズは多岐にわたる。例えばスラグ中のMgO濃度は炉体の耐火物寿命と密接に関係する。これは、スラグ中のMgO濃度が低すぎると、炉壁耐火物の損傷が顕著となるためであるが、一方でスラグ中のMgO濃度が高すぎると、廃棄スラグを路盤材などに利用する場合に膨張などの懸念が生じることから、好ましくない。
したがって、スラグ中のMgO濃度にも適正な範囲があり、迅速なスラグ組成の分析が望まれている。精錬工程において迅速にスラグ中MgO濃度の評価ができれば、適切なMgO濃度の制御を通じて炉体寿命の延長が図れるだけでなく、仮に高濃度側に振れてしまった場合に、利材化可能なスラグとの仕分けを通じて生産性の向上に繋げることが可能となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶鉄の精錬で生じたスラグの一部を転炉型精錬炉に残留させた状態のまま、この転炉型精錬炉を用いて、溶鉄の次工程の精錬または次のチャージの溶鉄の精錬を行う際に、炉内に残留させたスラグの成分を迅速且つ高精度に測定し、この測定結果に基づいて適切な造滓剤の添加量を決定する、溶鉄の精錬方法を提供することであり、また、スラグなどの高温物質の組成を、高温物質から分析試料を採取することなく、精度良く定量分析することのできる高温物質の組成分析方法及び組成分析装置を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]転炉型精錬炉における溶鉄の精錬で生じたスラグを、該スラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄または前記転炉型精錬炉に新たに装入した溶銑を精錬するに際し、溶鉄の精錬で生じた前記スラグの成分を、該スラグから分析試料を採取することなく定量分析し、その成分分析結果に基づいて、スラグを残留させた前記転炉型精錬炉で行う、炉内に残留させた溶鉄の次工程の精錬または炉内に新たに装入した溶銑を用いた次のチャージの溶鉄の精錬における精錬前及び/または精錬中に添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、溶鉄の精錬方法。
[2]前記スラグの成分の分析は、前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくともカルシウム(Ca)及び珪素(Si)を含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの塩基度を評価することを含むことを特徴とする、上記[1]に記載の溶鉄の精錬方法。
[3]前記スラグの成分の分析は、前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくともカルシウム(Ca)及び珪素(Si)を含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの組成を評価することを含むことを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の溶鉄の精錬方法。
[4]前記転炉型精錬炉内のスラグ、前記転炉型精錬炉から排出中のスラグまたは排出後のスラグ収容容器内のスラグの表面にレーザ光を集光させて、前記プラズマをスラグ表面に発生させることを特徴とする、上記[2]または上記[3]に記載の溶鉄の精錬方法。
[5]前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて複数の精錬工程を行う溶銑の予備処理であり、前記複数の精錬工程の間で、溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出して、溶銑に予備処理を施すにあたり、前記スラグの残部を排出する際に、前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、次工程の精錬工程において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[6]前記溶銑の予備処理が脱珪処理工程と脱燐処理工程とを含み、脱珪処理工程と脱燐処理工程との間で、溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出する際に、前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、前記脱燐処理工程において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、上記[5]に記載の溶鉄の精錬方法。
[7]前記溶鉄の精錬が溶銑の予備処理であり、前記転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の脱燐処理で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の予備処理を行うことを特徴とする、上記[1]ないし上記[6]の何れか1項に記載の溶銑の精錬方法。
[8]1つの転炉型精錬炉を用い、転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉内の溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、前記転炉型精錬炉を傾動して、脱燐処理工程後の溶銑及び脱燐処理工程で生成したスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記スラグの残部を排出する中間排滓工程と、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉に残留させた溶銑を脱炭処理して溶鋼にする溶鉄の脱炭処理工程と、脱炭処理工程後の溶鋼を前記転炉型精錬炉から出鋼する出鋼工程とを、この順に行って溶銑から溶鋼を溶製するにあたり、前記中間排滓工程での前記スラグの残部を排出する際に、前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、前記脱炭精錬工程において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[9]前記転炉型精錬炉における前チャージの溶鉄の脱炭処理工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の脱燐処理工程を行うことを特徴とする、上記[8]に記載の溶鉄の精錬方法。
[10]転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉内の溶銑を脱炭処理して溶鋼にする脱炭処理工程で生成したスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に次のチャージの溶銑を装入して精錬するにあたり、脱炭処理工程で生成した前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、次のチャージの溶鉄の精錬において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[11]転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉内の溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程で生成したスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に次のチャージの溶銑を装入して溶銑に脱燐処理を施すにあたり、脱燐処理工程で生成した前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、次のチャージの溶鉄の精錬において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、上記[1]ないし上記[6]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[12]前記スラグの成分分析結果に基づいて添加量を決定する前記造滓剤がCaO系媒溶剤であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[11]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[13]前記スラグの成分分析結果がスラグ中のMgO含有量を含み、前記スラグの成分分析結果に基づいて添加量を決定する前記造滓剤がMgO系媒溶剤を含むことを特徴とする、上記[1]ないし上記[12]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[14]前記スラグの成分分析結果がスラグ中の酸化鉄含有量を含み、前記スラグの成分分析結果に基づいて添加量を決定する前記造滓剤が酸化鉄系媒溶剤を含むことを特徴とする、上記[1]ないし上記[13]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[15]転炉型精錬炉における溶鉄の精錬で生じたスラグを、該スラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄または前記転炉型精錬炉に新たに装入した溶銑を精錬するに際し、溶鉄の精錬で生じた前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくとも鉄(Fe)を含む元素の発光強度を測定し、測定された発光強度に基づいて前記スラグの酸化鉄含有量を定量分析し、その分析結果に基づいて、スラグを残留させた前記転炉型精錬炉で行う、炉内に残留させた溶鉄の次工程の精錬または炉内に新たに装入した溶銑を用いた次のチャージの溶鉄の精錬におけるスラグの酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、溶鉄の精錬方法。
[16]前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬であり、前記一次吹錬工程と前記二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出し、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施すにあたり、前記スラグの残部を排出する際に、前記一次吹錬工程にて発生したスラグの表面にレーザ光を集光させて酸化鉄含有量を定量分析し、その酸化鉄含有量の定量分析結果に基づいて、二次吹錬工程におけるスラグの酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、上記[15]に記載の溶鉄の精錬方法。
[17]前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬であり、前記一次吹錬工程と前記二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたままスラグの残部を排出し、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施す精錬方法を、連続する2チャージ以上の溶銑に施すにあたり、前記転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の二次吹錬工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の一次吹錬工程を行う際に、前チャージの溶銑の前記二次吹錬工程で生じたスラグの表面にレーザ光を集光させて酸化鉄含有量を定量分析し、酸化鉄含有量の定量分析結果に基づいて、次のチャージの溶銑の前記一次吹錬工程におけるスラグの酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、上記[15]または上記[16]に記載の溶鉄の精錬方法。
[18]前記一次吹錬工程または前記二次吹錬工程でスラグの酸化鉄含有量を制御する際に、気体酸素の供給速度、気体酸素を供給するための上吹きランスのランス高さ、底吹きガス流量のうちのいずれか1種以上の条件を調整して酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、上記[16]または上記[17]に記載の溶鉄の精錬方法。
[19]前記一次吹錬工程が溶銑の脱珪処理であり、且つ、前記二次吹錬工程が溶銑の脱燐処理であることを特徴とする、上記[16]ないし上記[18]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[20]前記一次吹錬工程が溶銑の脱燐処理であり、且つ、前記二次吹錬工程が溶銑を脱炭して溶鋼とする脱炭処理であることを特徴とする、上記[16]ないし上記[18]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[21]前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬であり、前記一次吹錬工程と前記二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出し、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施す精錬方法を、連続する2チャージ以上の溶銑に施すにあたり、前記転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の二次吹錬工程で生じたスラグを、炉外に排出することなく前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の一次吹錬工程を行う際に、前チャージの溶銑の前記二次吹錬工程の前後においてスラグの成分を定量分析し、前記二次吹錬工程の前後におけるスラグの成分の定量分析結果と前記二次吹錬工程における造滓剤の使用量とに基づいて前記二次吹錬工程後のスラグ量を求め、得られたスラグ量を次チャージの溶銑の一次吹錬工程におけるスラグの制御に利用することを特徴とする、上記[1]ないし上記[20]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[22]前記スラグの成分の定量分析方法が、スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの成分を定量分析する方法を含み、前記レーザ光をスラグの表面に集光させるための集光レンズとレーザ光を集光させるスラグ表面との距離を測定し、前記集光レンズと前記スラグ表面との距離を所定の値とするように前記集光レンズの位置を調整することを特徴とする、上記[1]ないし上記[21]のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
[23]800℃以上の高温の分析対象物の表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記分析対象物の組成を評価する高温物質の組成分析方法であって、前記レーザ光を集光させる集光レンズの光軸から所定距離離れ、且つ、前記集光レンズに対して相対的な位置が固定された撮像装置により、前記分析対象物の表面の前記レーザ光の集光位置の発光を撮像し、前記撮像装置により採取された前記レーザ光の集光位置の発光の位置情報に基づいて、前記集光レンズと前記スラグ表面との距離を所定の値とするように前記集光レンズの位置を調整することを特徴とする、高温物質の組成分析方法。
[24]800℃以上の高温の分析対象物の表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記分析対象物の組成を評価する高温物質の組成分析装置であって、前記分析対象物に対して前記集光レンズの光軸の方向に移動可能な、前記レーザ光を集光させるための集光レンズと、前記集光レンズの光軸から所定距離だけ離れ、且つ、前記集光レンズに対して相対的に固定された位置に配置される、前記分析対象物の表面の前記レーザ光の集光位置の発光を撮像するための撮像装置と、前記撮像装置により採取された前記レーザ光の集光位置の発光の位置情報に基づいて、前記集光レンズと前記スラグ表面との距離を所定の値とするように前記集光レンズの位置を調整する機構と、を有することを特徴とする、高温物質の組成分析装置。
本発明に係る溶鉄の精錬方法によれば、溶鉄の精錬で生じたスラグの一部を転炉型精錬炉に残留させた状態のまま、この転炉型精錬炉を用いて、溶鉄の次工程の精錬または次のチャージの溶鉄の精錬を行う際に、スラグから分析試料を採取することなく、炉内に残留させたスラグの成分を迅速且つ高精度に定量分析するので、この分析結果に基づいて造滓剤の適切な添加量、或いは、酸化鉄の生成量を適切に制御するための吹錬条件を決定することが可能となる。
また、本発明に係る高温物質の組成分析方法及び組成分析装置によれば、スラグなどの高温物質の組成を、高温物質から分析試料を採取することなく、精度良く定量分析することが実現される。
塩基度の低いスラグAと塩基度の高いスラグBとを、波長が271nmの鉄、288nmの珪素及び318nmのカルシウムのそれぞれの発光線で評価した場合のスペクトルのピーク強度を示す図である。 LIBS法に基づくスラグ成分分析システムの構成例を示す概略図である。 LIBS法によって求められたスラグ塩基度と蛍光X線分析法によって求められたスラグ塩基度との関係を示す図である。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、溶鉄の精錬によって生成したスラグを意図的に残留させ、残留させたスラグを次工程の精錬または次のチャージの溶鉄の精錬に活用する工程を含む溶銑の精錬工程について、その特徴や環境を精査した。その結果、本発明者らは、上記課題を解決する手段として、炉中または排滓時のスラグを採取することなく、スラグ組成を非接触の分光計測で迅速に定量分析する方法を考えついた。ここで、「スラグを意図的に残留させる」とは、炉口を真下に向けて炉体を倒立させる排滓操作を行わずに、炉体の傾動角度を調整してスラグを炉内に残留させることであるが、スラグを固化させて炉体の内壁にスラグを付着・残留させ、次チャージの精錬に造滓剤として利用する場合も含む。但し、炉体の内壁を保護する目的でスラグを付着させ、少なくとも一部を2チャージ以上にわたって付着したまま残留させる場合は含まない。
即ち、例えば、特許文献1に開示されるように、溶銑予備処理における脱珪処理終了後には、転炉型精錬炉を傾動させることによってスラグを炉口から排出する排滓工程が存在し、この排滓工程中であればスラグを比較的容易に観察できることを知見した。精錬中は、一酸化炭素ガスの燃焼による火炎や大量のダストなどによる妨害のために、測定対象物であるスラグを非接触の分光計測で分析することは難しいが、排滓処理工程の前後においては、火炎やダストの発生がなく、非接触の分光計測を好適に適用することができる。
スラグ組成の中でも、スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))は精錬中のスラグ粘性や脱燐効率などに大きな影響を与えるので、分析ニーズが大きい。スラグから試料を採取することなく、その場で迅速にスラグの塩基度を定量的に評価することが可能になることで、添加する造滓剤を必要最低限とした上で効率的な脱燐処理などが行えることから、工業的な意義が大きい。
スラグの塩基度を定量的に評価するためには、スラグのCaO含有量及びSiO2含有量を定量分析する必要がある。通常、排滓時のスラグ中では、カルシウム(Ca)及び珪素(Si)は酸化物の形態で存在し、排滓時のスラグ中にはカルシウム及び珪素の酸化物以外の別形態は存在しない。このため、発光法を用いて分析する場合、カルシウム及び珪素の元素組成を定量化すれば、スラグのCaO含有量及びSiO2含有量を定量分析することができる。
例えば、遠隔位置からの分析に適したレーザ発光分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy;「LIBS法」という)を利用することで、スラグ中のカルシウム及び珪素を容易に励起・発光させ、スラグの塩基度の定量評価が可能となる。つまり、LIBS法を用い、スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中のカルシウム及び珪素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいてスラグのCaO含有量及びSiO2含有量を定量分析することで、スラグの塩基度を把握することが可能となる。
炉内から採取したスラグを室温まで冷却した後にLIBS法で分析を行ったところ、小型の分光器でも検出が容易な可視領域に、カルシウム及び珪素の明瞭なスペクトルが確認できた。また、化学量論比が既知の試料を分析した結果、試料中のカルシウム及び珪素の含有量に応じてスペクトルのピーク強度が変化する状況が確認できた。実際のスラグでは、カルシウム、珪素以外にも様々な共存元素が存在するので、状況によっては予め共存元素補正を考慮した検量線を作成し、スラグ塩基度を算出することが必要な場合もある。
図1に、塩基度の低いスラグA(塩基度=0.80)と塩基度の高いスラグB(塩基度=4.00)とを、波長が271nmの鉄(Fe)、288nmの珪素(Si)、及び、318nmのカルシウム(Ca)のそれぞれの発光線で評価した場合のスペクトルのピーク強度を示す。図1に示すように、スラグA及びスラグBにおいて、十分なピーク強度のスペクトルが検出できることがわかる。
一方、スラグ中のMgO及びFeOxも、その含有率の制御ができれば生産性の向上に繋がることから、分析要求が高い。スラグ中のMgO含有量及びFeOx含有量も、LIBS法を用いれば、CaO及びSiO2と同様に定量化可能である。また、スラグ中のP25もLIBS法を用いることで、CaO及びSiO2と同様に定量分析が可能である。尚、FeOxとは、FeOやFe23などの鉄酸化物の全てを指す。
ここで、LIBS法のスラグ分析への応用については、過去にも幾つかの言及が認められるが、製鋼プロセスに適用するに際しては、適切な手段を用いてスラグ組成を定量化する必要がある。本発明者らは過去の検討結果も踏まえ、実用に耐えうる方法とするためには、大きく分けて2つの課題があることを認識している。
具体的には、(A)スラグと溶鉄との識別、及び、(B)スラグ組成(絶対値)の評価の2つである。課題(A)はレーザ光を集光する分析点において、実際の製造プロセスでは常にスラグのみが存在するとは限らないために、分析点が溶鉄となった場合の識別が必要となる。課題(B)については、LIBS分析で得られる一次情報は発光強度であり、これを濃度に換算するには信頼できる検量線を用いる必要がある。しかし、実際の製造現場での測定において、検量線作成時と同じ測定条件を保証できない場合には、検量線を利用して正確な濃度に換算することが困難となる。
上記(A)、(B)の課題を解消し、実際の製造現場に適用できる一案として、本発明者らは以下の方法に想到した。尚、説明の簡略化のために、以下では、CaO、SiO2、FeOxの3元系のスラグ分析の場合について説明する。
初めに、分析対象とするスラグの組成範囲に近い、分析対象とする酸化物濃度を変更した、含有量既知の標準試料として利用する数種のスラグを準備し、実際に現場で分析する条件に極力近い状態で標準試料として準備したスラグのLIBS分析を行なう。次に、各元素の発光強度と予め分析した含有量とから、仮の検量線を作成し、各酸化物の単位濃度あたりの発光強度I(X)0を求める。ここで、Xは各金属酸化物中の金属元素を表す。
例えば40質量%のCaOを含有したスラグについて、LIBS分析で得られる発光強度が5000cpsだった場合には、CaOの単位濃度あたりの発光強度I(Ca)0は125cps/質量%と計算される。同様に、SiO2の単位濃度あたりの発光強度I(Si)0及びFeOxの単位濃度あたりの発光強度I(Fe)0も求めておく。実際に現場でスラグ分析を行なった際に得られた各元素の発光強度I(Ca)、I(Si)、I(Fe)を、それぞれI(Ca)0、I(Si)0、I(Fe)0で除算することにより、各酸化物の仮の濃度(%CaO)’、(%SiO2)’、(%FeOx)’をそれぞれ計算して求める。得られた各酸化物の仮の濃度の合計は、検量線作成時と実際のスラグ分析時の計測条件との差異などから、一般的には100質量%とはならないが、合計が100質量%となるものとして換算すれば、実際の含有量を求めることができる。つまり、CaOであれば、「(%CaO)’×100/{(%CaO)’+(%SiO2)’+(%FeOx)’}」を実際のスラグ中のCaO濃度(質量%)として求めることができる。
スラグ中に含有される酸化物としては、その他にもAl23、TiO2、MgO、MnO、P25などが考えられることから、含有される可能性のある、これらの酸化物を網羅するようにして上記と同様の方法を行えば、上記の3成分系以外の多成分系のスラグに拡張して定量分析を行うことが可能となる。また、標準試料としても現場で想定される元素を含有しているものを準備することが望ましく、実スラグに近い組成のものを準備する方が高精度の分析が可能となる。尚、元素によっては、共存する成分の濃度が大きく変化すると単位濃度あたりの発光強度が変化する可能性があるので、濃度範囲ごとに分割して標準試料を準備し定量分析を行なうことも有効な手段である。また、実際の分析現場において溶鉄上のスラグの温度は1000℃以上であると考えられ、各元素のLIBSの発光強度を室温で分析する場合とは異なることも考えられる。したがって、標準試料を予め分析し、単位濃度あたりの発光強度を算出する場合にも、加熱炉などを用意し、実際に分析を行なうスラグ温度に近い状態で分析しておくことが望ましい。
ここで、スラグ塩基度のように特定の元素の組成比を知ることが重要な場合には余り問題とならないが、MgOやFeOxの分析では、組成比ではなく含有量そのものを知ることが重要であるケースが多く、更に、FeOxを分析する場合には、スラグと溶鉄との識別(課題(A))も行なうことが必要である。
これを行なう手段として幾つかの方法が考えられるが、例えば、溶鉄とスラグでは輻射光の強度が大きくことなる点を利用し、分析ポイントの輻射光強度を別途測定し、判別する方法が考えられる。より簡便な方法としては、スラグ中に多く含まれ、溶鉄中にはほとんど含まれない成分の発光強度を利用して、スラグに対応する発光か、溶鉄に対応する発光かを識別することができる。この方法は、例えば、スラグ塩基度を分析する際のCa発光強度で好適に利用できる。予めCaの発光強度で閾値を設定し、閾値以上の発光強度が得られた場合を、スラグに対応する発光強度として識別が可能である。LIBS分析の場合、レーザ集光領域は数十μmオーダーであり、分析領域に溶鉄とスラグとが混在する可能性は低い。しかし、仮に両者が混在しても、Ca及びFeの発光強度の両者を閾値に基いて判定することにより、異常値として判別することができる。
FeはFeOとしてスラグ中にも存在するが、溶鉄との発光強度の差が大きいため、Caの発光強度との組み合わせにより、高い確度で溶鉄とスラグとの混在を判別でき、スラグ分析から除外することが可能である。通常、LIBS分析で用いられるパルスレーザは数十Hzの周波数であり、低頻度で生じる非スラグ成分の分析による発光を除去しても、数秒から数十秒の短時間で統計精度を有する情報を得ることができる。
また、スラグ中に濃化し、溶鉄中にはほとんど存在しないCa(CaO)やMg(MgO)の分析時には、スラグと溶鉄との識別は問題にならないが、Si、Mn、Pなどのスラグと溶鉄との両方に含有され得る元素の場合には、発光源がスラグであるのか、溶鉄であるのかを判別することが必要となる。これに対しては、上記のスラグに対応する発光と溶鉄に対応する発光とを識別する方法の他、同じ温度におけるスラグと溶鉄との輝度の違いを利用することでも実現し得る。その他、カメラなどを設置してレーザ照射位置を直接観察し、レーザ照射位置がスラグなのか溶銑または溶鋼なのか、判別する方法なども利用することができる。
スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))の代替として、({(質量%CaO)+(質量%MgO)}/(質量%SiO2))を利用することで、炉体耐火物の管理やスラグの膨張性の管理を行うことができる。また、スラグの塩基度の代替として、((質量%CaO)/{(質量%SiO2)+(質量%P25)})を利用することで、スラグの脱燐能余力を知ることができる。
以下、上記技術思想から想到される、中間排滓を挟んで溶銑の予備処理を行う精錬工程を含む本発明の一実施形態、及び、中間排滓を挟んで溶銑から溶鋼を溶製する精錬工程を含む本発明の一実施形態について説明する。
中間排滓を挟んで脱珪処理及び脱燐処理を行う溶銑予備処理では、過不足のない適切なCaO系媒溶剤の添加量を決定するためには、脱燐処理前の時点で炉内に残留するスラグの組成及び量を把握しておくことが必要である。尚、スラグ中のCaO含有量を制御するためのCaO系媒溶剤としては、生石灰、石灰石、消石灰、ドロマイト、溶銑の脱炭処理時に生成する脱炭スラグ(「転炉滓」、「脱炭炉滓」ともいう)などが挙げられる。
スラグの組成を分析する方法として、従来、例えば脱珪処理終了後にスラグを採取し、採取したスラグを分析室に送付して蛍光X線分析法などの分析装置を利用してスラグ組成を分析する方法が考えられている。しかしながら、この方法では、スラグは試料調整された後に分析に供されるので、スラグの組成が決定されるまでに多くの時間を要し、脱燐処理でのCaO系媒溶剤の添加量決定には間に合わない。その結果、必要以上にCaO系媒溶剤を添加してしまった場合や、逆に、CaO系媒溶剤の添加量が不足して、スラグ塩基度が低くなり、脱燐能が低下して、充分な脱燐が行えなかったり、所定の燐(P)濃度に到達するのに時間を要したりする場合が多発した。
中間排滓を挟んで溶銑の予備処理を行う精錬工程を含む本発明の一実施形態では、スラグ組成を迅速に分析するために、スラグを採取しないでスラグ組成を定量分析する。具体的には、1つの転炉型精錬炉を用いて、高炉から出銑された溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、脱珪処理した溶銑を前記転炉型精錬炉内に残留させた状態で、前記脱珪処理工程で生成された脱珪スラグを前記転炉型精錬炉から排滓する中間排滓工程と、前記転炉型精錬炉に残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、脱燐処理された溶銑を前記転炉型精錬炉から出湯する出湯工程と、をこの順に行う溶銑の予備処理方法において、中間排滓時のスラグ表面にレーザ光を集光させるようにレーザ光を照射し、レーザ光の照射によって生成されたプラズマ中の各元素に応じた光強度を測光することで、スラグ組成及びスラグ塩基度を定量評価する。
つまり、転炉型精錬炉内の溶銑に、CaO系媒溶剤、及び、気体酸素(「気酸」ともいう)や酸化鉄を酸素源として供給して行う、従来行っている脱珪処理を行った後、炉を出湯時とは反対側に、つまり出湯口が設置されている側の反対側に傾動させて、炉口を介してスラグを排出(中間排滓)する。この中間排滓工程において、LIBS法によってスラグ組成を直接定量分析する。例えば、転炉型精錬炉からスラグ収容容器にスラグを排出する直前、排滓中、または排滓後に、スラグに対してレーザを照射することで、スラグの組成分析を行うことが可能である。以下、LIBS法を用いて好適にスラグ組成の分析を行うための方法の例について説明する。
図2は、LIBS法に基づくスラグ成分分析システムの構成例を示す概略図である。図2において、符号1は転炉型精錬炉、2は炉口、3は底吹き羽口、4は溶銑、5はスラグ、6はレーザ光発生器、7は集光レンズ、8はレーザ光、9は受光部、10は光ファイバ、11は分光・測光器、12は演算用計算機、13は撮像装置、14はスラグ収容容器である。
例えば、脱珪処理後の中間排滓時に、転炉型精錬炉1を傾動させ、溶銑4の上に存在するスラグ5を炉口2から、転炉型精錬炉1の直下に配置されたスラグ収容容器14に排出する。その際に、レーザ光発生器6で発生させたレーザ光8を、集光レンズ7を介して排出中のスラグ5の表面で集光させ、スラグ5の表面にプラズマを発生させる。このプラズマの光を受光部9で観測し、受光部9は光ファイバ10を介して、観測したプラズマの光を分光・測光器11に導光する。分光・測光器11は、受光したプラズマの光のなかから、少なくともカルシウム及び珪素を含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、測定した発光強度及び/または発光強度比に基づいてスラグのCaO含有量及びSiO2含有量を定量分析する。定量分析結果は、演算用計算機12に送信され、記憶される。
尚、図2では、転炉型精錬炉1から中間排出中のスラグ5の表面にレーザ光8を集光させて、スラグ5の成分を分析しているが、中間排滓中である限り、転炉型精錬炉内のスラグ5または排出後のスラグ収容容器14内のスラグ5の表面にレーザ光8を集光させて、スラグ5の成分を分析するようにしても構わない。
レーザ光発生器6や受光部9などを輻射熱及びスプラッシュなどから保護する観点からは、分析対象であるスラグ5からの距離を大きくするほど有利となるが、反対に長距離になると、集光や測定感度の面で不利となる。したがって、排滓中のスラグから1〜10m離れた距離からのレーザ照射・集光によって、スラグ表面にプラズマを生成させることが望ましい。
プラズマの光は、レーザ光発生器6の直近に配置した受光部9で受光した後、10〜15m離れた位置に設定した分光・測光器11に導光される。レーザ光発生器6及び受光部9については、耐熱保護を行った上で適切な場所に配置し、近傍から不活性ガスを吹き付けたりすることで防塵することが好ましい。
ここで、レーザ光の照射については、転炉型精錬炉から離れた場所にレーザ光発生器を配置して光ファイバを通じて測定部近傍までレーザ光を導き、光学部品を用いてレーザ光を集光・照射しても構わない。また、分光・測光システムについても適切な感度を得られるシステムであれば、転炉型精錬炉近傍における熱影響を回避するために十分に離れた場所に配置しても構わない。
実際のスラグ表面の位置は常に一定とは限らないので、集光ポイントを逐次的に検知・修正可能な光学装置を備えることが望ましい。即ち、装置としては、レーザ光を集光させる集光レンズ7を、プラズマの発光を測定するための受光部9(受光レンズ)及びプラズマの発光位置を計測するための撮像装置13とともに結合させて、測定装置の先端部として一体に構成したうえで、少なくともこの先端部をスラグ表面に対して集光レンズ7の光軸の方向に移動可能な機構(図示せず)を備えるようにする。この場合、先端部だけでなく、装置全体を支持架台(図示せず)の上で移動させるようにしても構わない。
ここで、プラズマの発光位置を計測するための撮像装置13は、集光レンズ7の光軸から所定距離だけ離れ、且つ、前記集光レンズ7に対して相対的に固定された位置とすることにより、三角測量の原理によって、撮像装置13により採取されたプラズマの発光の位置情報に基づいて、集光レンズ7などの測定装置の先端部とスラグ表面との距離を、演算用計算機12などを用いて算出できる。算出された、集光レンズとスラグ表面との距離を所定の値とするように、演算用計算機12などを用いて測定装置の先端部の駆動装置(図示せず)を制御して集光レンズの位置を調整する。
このようにすることで、スラグ表面の位置が変動する場合においても、測定装置の先端部をこれに追随させて移動させることで、プラズマの生成効率やプラズマの発光の検出感度などの変動を抑制して、比較的一定した条件での測定が可能となり、分析精度が向上するとともに、測定の自動化による省力も可能となる。
尚、上記では、中間排滓時に排出される溶融スラグを分析対象とした場合について説明したが、上記の測定装置及び測定方法は、この場合に限らず、分析対象とする高温物質の位置が変動したり、容易に特定できなかったりする場合に有用である。この際、分析対象とする物質の温度が低ければ、集光レンズ7と分析対象物との距離を測定するのに市販のレーザ距離計などを用いることもできるが、800℃以上の高温では上記のようなプラズマ生成用の高エネルギー密度のレーザ光を用いないと発光位置を精度良く検出することが困難となる。また、長期間にわたり分析を続ける場合には、定期的に装置の状態をチェックできる構成とすることが好ましい。
分光・測光器11は、測定された各元素の光強度をもとに、予め準備した検量線に基づいてスラグの各成分を分析する。
図3は、LIBS法によって求められたスラグ塩基度と蛍光X線分析法によって求められたスラグ塩基度との関係を示す図である。図3に示すように、両者の間には良好な直線関係があることが確認された。即ち、LIBS法を適用することにより、蛍光X線分析法などの工程分析で実施している方法とほぼ等しい精度・正確さでスラグの塩基度を評価することが可能であることがわかる。
その後、次工程の脱燐処理におけるCaO系媒溶剤の添加量を、LIBS法を利用して求められたスラグ塩基度と炉内の残留スラグ量とから、炉内に残留させた溶銑の脱燐処理に必要なスラグ塩基度となるように決定し、決定した添加量のCaO系媒溶剤を炉内に添加して脱燐処理工程を実施する。炉内の残留スラグ量は、中間排滓によって排出されたスラグを収納したスラグ収容容器の質量測定値から推定されるスラグ排出量と、中間排滓前の推定される炉内スラグ質量との差分として算出する。
脱燐処理工程については、気体酸素や酸化鉄を酸素源として炉内に供給して行う、従来行っている脱燐処理方法と変える必要はなく、脱燐処理前の溶銑の燐濃度や溶鉄温度、脱燐処理後の溶銑の燐濃度の目標値などから予め決定されたパターンで脱燐処理を行えばよい。各チャージで脱燐処理前のスラグを採取しておき、後に、蛍光X線分析法などの分析方法で組成を確認すれば、実際に脱燐処理前のスラグの塩基度がどの程度であったのかを確認することができる。
脱燐処理後の溶銑は、転炉型精錬炉を傾動させて、転炉型精錬炉に設置された出湯口から溶銑収容容器に出湯し、一方、脱燐処理後のスラグ(脱燐処理工程で生成するスラグを「脱燐スラグ」という)の一部または全部を転炉型精錬炉に残留させる。その後、新たな溶銑(次のチャージで使用する溶銑)を転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の脱珪処理を開始する。次のチャージ以降では、転炉型精錬炉内に前チャージのスラグが残留しているので、CaO系媒溶剤を添加しなくても、脱珪処理を行うことができるが、スラグ塩基度が低くなる場合には、CaO系媒溶剤を添加する。
上記説明から明らかなように、中間排滓を挟んで溶銑の予備処理を行う精錬工程を含む本発明の一実施形態によれば、中間排滓におけるスラグ塩基度を精度良く把握することができ、これにより、脱燐処理に適したCaO系媒溶剤の添加量を決定することができ、CaO系媒溶剤の添加量を最小限にすることが可能となる。その結果、生産性を低下させることなく、低コストで溶銑予備処理を行うことが実現される。
上記説明では、中間排滓を挟んで脱珪処理及び脱燐処理を行う溶銑予備処理の場合について説明したが、更に脱硫処理を組み合わせて実施する溶銑の予備処理についても、同様に本発明の精錬方法を適用することで、スラグ組成制御の精度向上が可能である。
また、溶銑から溶鋼を溶製する場合にも、上記の溶銑予備処理と類似した以下の手順により、本発明を適用可能である。
即ち、転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して転炉型精錬炉内の溶銑に対して脱燐処理(脱珪処理も行われる)を行った後、転炉型精錬炉を傾動させて中間排滓を行う。この中間排滓工程において、LIBS法によりスラグ組成を直接測定する。次工程の脱炭処理工程については、炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して行う、従来行っている脱炭処理方法と変える必要はなく、処理後の溶鋼温度及び溶鋼の燐濃度の目標値などからスラグ塩基度の目標値を設定し、LIBS法にて測定したスラグの成分分析結果と、中間排滓で排出されたスラグを収容するスラグ収容容器の質量測定値から推定される残留スラグ量とから、物質収支に基づいてCaO系媒溶剤の添加量を決定する。
脱炭処理後、生成した溶鋼を、転炉型精錬炉を傾動させて、転炉型精錬炉に設置された出湯口から溶鋼収容容器に出鋼し、脱炭処理後のスラグ(脱炭スラグ)の一部または全部を転炉型精錬炉に残留させる。その後、新たな溶銑(次のチャージで使用する溶銑)を転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の脱燐処理を開始する。
尚、同様の手順によってスラグ中のその他の成分も分析できることは明らかであり、例えば、スラグ中のMgO含有率を測定し、且つ、制御することにより、炉体寿命の延命及び路盤材として膨張の少ない適正な組成のスラグに調製することができる。炉体寿命がスラグ中のMgO含有率に影響する理由は、転炉型精錬炉の内張耐火物はMgO系耐火物で形成されており、スラグ中のMgO含有量が低下すると、内張耐火物であるMgO系耐火物からMgOの溶出が起こり、MgO系耐火物の寿命が低下するからである。スラグ中のMgO含有率を制御するためのMgO系媒溶剤としては、ドロマイト(MgCO3−CaCO3)、MgO系煉瓦の破砕品、マグネシアクリンカなどが挙げられる。
また、スラグ中のFeOx含有量を測定し、且つ、制御することにより、効率的な脱燐処理を行うことができる。脱燐処理において、スラグ中のFeOxは溶銑中の燐の酸化及びスラグの滓化に寄与しており、効率的な脱燐処理のためには、スラグ中に5〜15質量%のFeOxが存在することが望まれている。スラグ中のFeOx含有量を制御するための酸化鉄系媒溶剤としては、鉄鉱石粉、鉄鉱石と生石灰との混合体である焼結鉱粉、製鉄工程における集塵ダストなどが挙げられる。
また、スラグ中の酸化鉄含有量の制御は、気体酸素の供給速度(「送酸速度」ともいう)、気体酸素を供給するための上吹きランスのランス高さ(ランス高さとは、静止状態の炉内溶鉄浴面とランス先端との距離)、攪拌用底吹きガス流量のうちのいずれか1種または2種以上を調整することも有効である。例えば、脱珪スラグ中の酸化鉄の含有量が5質量%未満と低位であった場合は、次の脱燐工程にて、通常の脱燐工程の条件と比較して、ランス高さを増加させ、且つ底吹きガス流量を低下させることなどにより酸化鉄含有量を増大させることが望まれる。また、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量が25質量%超えと高位であった場合は、次の脱燐工程にて、通常の脱燐工程の条件と比較して、ランス高さを低下させ、且つ底吹きガス流量を増加させることなどにより酸化鉄含有量を減少させることが望まれる。
脱珪スラグ中の酸化鉄含有量は、脱燐を促進させるには高位であることが望ましいが、耐火物の溶損を防止するには低位であることが望ましい。上記を考慮すると、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量は5質量%以上25質量%以下に制御することが望ましい。前チャージの脱燐スラグを炉内に残留させたまま次チャージの溶銑の脱珪処理を行う精錬方法において、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量を制御するには、前チャージの脱燐処理で生じる脱燐スラグ中の酸化鉄含有量を測定する必要がある。LIBS法による脱燐スラグ中の酸化鉄含有量の測定値を用いれば、脱珪処理における気体酸素の供給量及び酸化鉄系媒溶剤の使用量を調整し、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量を制御することが可能となる。
また、前チャージの脱燐スラグ中の酸化鉄含有量が、気体酸素の供給量及び酸化鉄系媒溶剤の使用量の和に対して高位であった場合は、当該チャージの脱珪処理のランス高さを低下させ、且つ底吹きガス流量を増加させることで酸化鉄生成を抑制し、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量を低下させることができる。逆に、前チャージの脱燐スラグ中の酸化鉄含有量が、気体酸素の供給量及び酸化鉄系媒溶剤の使用量の和に対して低位であった場合は、当該チャージの脱珪処理のランス高さを増加させ、且つ底吹き流量を低下させることで酸化鉄の生成を促進し、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量を増加させることができる。
上記の方法により、脱珪スラグ中の酸化鉄含有量を制御することができる。上記のスラグ中の酸化鉄含有量を制御する方法においては、精錬処理前のスラグ中の酸化鉄含有量は迅速に測定する必要があり、上記のLIBS法によるスラグの分析を適用する。
更に、酸化鉄含有量を炉内の酸素収支から推定する場合においても、精錬処理前のスラグ中の酸化鉄含有量をLIBS法によって分析することにより、作業能率を犠牲にすることなく、処理中のスラグ中酸化鉄含有量の推定精度の向上が図られる。炉内の酸素収支から酸化鉄含有量を算出する方法は、例えば刊行物1(刊行物1;特開2013−136831号公報)に記載されている。
刊行物1では、炉内に供給した酸素源の合計量からスラグ中及び炉外に排出した酸素量を減ずることにより炉内の不明酸素量を求める。スラグ中に排出される酸素量はSi、Mn、P濃度の成分変化を仮定して計算する。また、炉外に排出される酸素量は排ガス流量及び排ガス中のCO、CO2濃度より算出される。このようにして得られた炉内の不明酸素量が全て溶鉄の燃焼に消費されたとして、酸化鉄生成量を算出する。酸化鉄生成量を、投入した副原料及び生成する酸化物の量の和として算出されるスラグ量で除すれば、スラグ中の酸化鉄含有濃度が求まる。
但し、刊行物1に記載の方法では、前工程の炉内残留スラグの量及び酸化鉄含有濃度が考慮されていないので、LIBS法にて測定したスラグ組成から、前工程の炉内残留スラグの量及び酸化鉄含有濃度を算出し、これを起点として酸化鉄含有濃度を算出する必要がある。
このようにして算出すれば、前工程で発生したスラグの一部或いは全量を炉内に残留させた場合においても、スラグ中のFeOx含有量を逐次算出することが可能となる。そして、このようにして算出されるスラグ中のFeOx含有量を、気体酸素の供給速度、上吹きランスのランス高さ、底吹きガス流量のうちの少なくとも1種類以上を調整することで制御する。脱珪吹錬中は、スラグ中のFeOx含有量を5〜25質量%の間に制御するのが望ましく、また、脱燐吹錬中は、スラグ中のFeOx含有量を5〜15質量%の間に制御するのが望ましい。
上記説明では、脱珪処理を行う一次吹錬工程と、脱燐処理を行う二次吹錬工程とを、間に中間排滓工程を挟んで続けて行う溶銑の予備処理方法、或いは、この溶銑の予備処理方法において、前チャージの脱燐処理を行った二次吹錬工程後のスラグの少なくとも一部を排出することなく炉内に残留させたまま、次のチャージの溶銑の処理を行う溶銑の予備処理方法において、LIBS法によるスラグ中酸化鉄含有量の測定を利用して、吹錬中のスラグ中酸化鉄含有量を精度良く制御する方法について説明した。
しかし、本発明の実施形態はこれに留まらず、例えば、一次吹錬工程が溶銑の脱燐処理(この場合は脱珪処理も同じ一次吹錬工程に含まれる)であり、二次吹錬工程が溶銑を脱炭して溶鋼とする脱炭処理である場合にも同様に適用することが可能である。その場合には、各吹錬工程におけるスラグ中酸化鉄含有量が精度良く制御され、精錬剤の効率向上、吹錬制御の精度向上、鉄歩留りや合金鉄歩留りの向上などの効果を得ることが可能となる。
本発明は、スラグを意図的に残留させ、残留させたスラグを次のチャージの溶銑の処理に活用する精錬工程においても、適用可能である。
例えば、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱燐処理(脱珪・脱燐処理を含む)を繰り返して行う場合、或いは、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑を脱炭して溶鋼とする脱炭処理を繰り返して行う場合、処理後のスラグが残有する脱燐能を次のチャージの溶銑の脱燐処理及び脱炭処理に活用するために、出湯(出鋼)後、スラグの少なくとも一部を炉内に残留させたまま、転炉型精錬炉に新たに溶銑を装入して次のチャージの溶鉄の精錬を行うことがある。この場合に、LIBS法を用いて処理後のスラグ成分を分析して評価することで、スラグの脱燐能などを評価して、スラグの残留量を調整したり、次のチャージの精錬用の造滓剤添加量を調整したりすることが可能となる。
この場合には、出湯時に傾動させた転炉型精錬炉の炉内のスラグの表面にレーザ光を集光させて、スラグの成分を分析するようにしても構わないし、このスラグの一部を排出する場合には、排出中のスラグの表面または排出後のスラグ収容容器内のスラグの表面にレーザ光を集光させるようにしても構わない。
また、1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬において、一次吹錬工程と二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を転炉型精錬炉内に残留させたままスラグの残部を排出し、転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施す精錬方法を、連続する2チャージ以上の溶銑に施すにあたり、転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の二次吹錬工程で生じたスラグを炉外に排出することなく全量転炉型精錬炉内に残留させたまま、次のチャージの溶銑を転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の一次吹錬工程を行う方法を続けて行う場合に、各一次吹錬及び各二次吹錬を効率良く実施するためには、各吹錬前に炉内に残留するスラグ量を精度良く推定することが望ましい。この際、装入した溶銑の成分や炉内に投入した精錬剤に基づくスラグ量の増減やスラグ成分の変化は或る程度正確に評価することができるが、中間排滓におけるスラグ排出量の評価については比較的大きな誤差を含みやすい。
これは、中間排滓で炉内からスラグ収容容器14に排出したスラグ質量を炉下に配した台車上に設置した秤量装置で秤量する際に、スラグ中に混入することが避けられない相当量の溶銑の量が不明であることとともに、多量の粉塵が堆積するなどして秤量装置を正常な状態に維持できない場合もあることに起因する。この中間排滓におけるスラグ排出量推定値の誤差は、その後の二次吹錬工程におけるスラグ量及びスラグ組成の推定、更には次チャージ以後の一次吹錬工程及び二次吹錬工程におけるスラグ量及びスラグ組成の推定の誤差の原因となり得るとともに、上記のような精錬方法を繰り返すことにより、次第に誤差の蓄積を招くおそれがある。
本発明のように、スラグ組成の迅速分析を利用する場合には、下記に示すように、スラグ排出量の秤量値に拠らずに炉内に残留するスラグ量を推定することが可能であり、上記のスラグ量及びスラグ組成の推定の誤差の要因を軽減して、精錬効率の向上を図ることが可能となる。
これは、前チャージの溶銑の二次吹錬工程の前後においてスラグの成分を定量分析し、二次吹錬工程の前後におけるスラグの成分の定量分析結果と二次吹錬工程における造滓剤の使用量とに基づいて二次吹錬工程後のスラグ量を求め、得られたスラグ量を次チャージの溶銑の一次吹錬工程におけるスラグの制御に利用することにより実現される。この際、二次吹錬工程の前及び後におけるスラグ成分の定量分析方法としては、必ずしもLIBS法に限定されるものではないが、特に二次吹錬工程後のスラグの分析方法には迅速性が要求されることから、LIBS法を適用することが望ましい。
即ち、二次吹錬工程前後のスラグ量をそれぞれWS,2i、WS,2fとすると、下記の(1)式及び(2)式に示す次の2つの方程式が成り立ち、これらを連立させて解くことにより、二次吹錬工程後のスラグ量WS,2fを求めることができる。
WS,2i×(%CaO)m,2i/100+WCaO,2=WS,2f×(%CaO)m,2f/100…(1)
WS,2i×(%SiO2)m,2i/100+WSiO2,2+WHM×(XSi,2i-XSi,2f)×(60/28)/100=WS,2f×(%SiO2)m,2f/100…(2)
但し、(1)式、(2)式において、各記号は以下のとおりである。
WS,2i:二次吹錬工程前のスラグ質量(t)
WS,2f:二次吹錬工程後のスラグ質量(t)
WCaO,2:二次吹錬工程において添加した造滓剤中のCaO質量(t)
WSiO2,2:二次吹錬工程において添加した造滓剤中のSiO2質量(t)
WHM:二次吹錬工程前の溶銑質量(t)
(%CaO)m,2i:二次吹錬工程前のスラグのCaO濃度測定値(質量%)
(%CaO)m,2f:二次吹錬工程後のスラグのCaO濃度測定値(質量%)
(%SiO2)m,2i:二次吹錬工程前のスラグのSiO2濃度測定値(質量%)
(%SiO2)m,2f:二次吹錬工程後のスラグのSiO2濃度測定値(質量%)
XSi,2i:二次吹錬工程前の溶銑の珪素濃度(質量%)
XSi,2f:二次吹錬工程後の溶銑の珪素濃度(質量%)
上記により求めた二次吹錬工程後のスラグ量WS,2fに基づいて、次チャージの溶銑の一次吹錬工程におけるスラグ量及びスラグ組成を推定し、これに基づいて一次吹錬工程における造滓剤の添加量を調整すること、或いは、酸化鉄の生成量を適切に制御するための吹錬条件を調整することにより、効率良く目標とするスラグ組成に調整することができる。
[試験1]
容量330トンの1基の転炉型精錬炉を用い、脱珪処理(一次吹錬)、中間排滓、脱燐処理(二次吹錬)を、この順に行って溶銑に予備処理を施す際に、図2に示した構成の装置により、LIBS法を用いて中間排滓時にスラグ組成を測定した。この際、集光レンズと測定するスラグ表面との距離がほぼ集光レンズの焦点距離となるように、集光レンズ7、受光部9及び撮像装置13を一体に構成した測定装置の先端部の位置を、撮像装置13による集光位置の計測画像に基づいて、集光レンズの光軸の方向に自動調節するよう構成した。スラグ成分分析結果に基づいて、その後の脱燐処理におけるCaO系媒溶剤の添加量を算出し、算出された量のCaO系媒溶剤を添加して行う溶銑予備処理(本発明例)と、脱珪処理後にスラグ組成を測定しない従来法による溶銑予備処理(比較例)とを、それぞれ10チャージずつ連続して実施した。
脱燐処理終了時の溶銑中燐濃度の目標値は、いずれも0.030質量%とした。本発明例及び比較例とも、前チャージの脱燐処理後のスラグを排滓せずに炉内に残留させたまま、次のチャージの溶銑を装入し、中間排滓を挟んで溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを行う溶銑の予備処理を繰り返して実施した。また、脱珪処理時に鉄源として鉄屑を配合した。
脱珪処理工程では、CaO系媒溶剤として脱炭スラグを使用し、脱珪処理後のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))の計算値(計算塩基度)が目標値の1.20となるように、脱炭スラグの使用量を調整した。脱炭スラグを使用しなくても計算塩基度が目標値の1.20を確保できる場合には、脱炭スラグを使用せずに脱珪処理を行った。酸素源は溶銑中の珪素濃度に応じて供給した。
脱珪処理後のスラグ(脱珪スラグ)の塩基度は、比較例においては(3)式によって計算し、本発明例においては(4)式によって計算した。
Bc,Si1(n)=[WS,P1(n-1)×α1×Bc,P1(n-1)/{Bc,P1(n-1)+1}+WSL,Si1(n)×β1]/
[WS,P1(n-1)×α1/{Bc,P1(n-1)+1}+WSL,Si1(n)×γ1
+(XSi1(n)/100)×WHM1(n)×60/28]…(3)
Bm,Si1(n)=(%CaO)m,Si1(n)/(%SiO2)m,Si1(n)…(4)
但し、(3)式、(4)式において、各記号は以下のとおりである。
Bc,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理終了時のスラグの計算塩基度
Bc,P1(n-1):n−1チャージ目の予備処理の脱燐処理終了時のスラグの計算塩基度
WS,P1(n-1):n−1チャージ目の予備処理の脱燐処理終了時の計算スラグ質量(t)
WSL,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理工程における脱炭スラグの添加量(t)
XSi1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理前の溶銑中の珪素濃度(質量%)
WHM1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理前の溶銑質量(t)
Bm,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理終了後のスラグのLIBS法によるスラグ塩基度の測定値
(%CaO)m,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理終了後のスラグのLIBS法で測定されたCaO濃度(質量%)
(%SiO2)m,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理終了後のスラグのLIBS法で測定されたSiO2濃度(質量%)
α1:脱燐処理後のスラグ中のCaO及びSiO2の質量比率の平均値の和
β1:脱珪処理及び脱燐処理中に添加する脱炭スラグ中のCaOの質量比率の平均値
γ1:脱珪処理及び脱燐処理中に添加する脱炭スラグ中のSiO2の質量比率の平均値
尚、本実施例ではα1=0.6、β1=0.4、γ1=0.1とした。また、Bc,P1(n-1)及びWS,P1(n-1)の算出方法については後述するが、1チャージ目の予備処理においては、Bc,P1(0)は0(ゼロ)でない定数とし、WS,P1(0)=0とした。
脱珪処理終了時のスラグ量は、比較例においては(5)式を用いて計算し、本発明例においては(6)式を用いて計算した。
WS,Si1(n)={WS,P1(n-1)×α1+WSL,Si1(n)×(β11)+XSi1(n)/
100×WHM1(n)×60/28}/δ1…(5)
WS,Si1(n)={WS,P1(n-1)×α1+WSL,Si1(n)×(β11)+XSi1(n)/100×WHM1(n)×60/28}/
{((%CaO)m,Si1(n)+(%SiO2)m,Si1(n))/100}…(6)
但し、(5)式、(6)式において、各記号は以下のとおりである。
WS,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理終了時の計算スラグ質量(t)
δ1:脱珪処理後のスラグ中のCaO及びSiO2の質量比率の平均値の和
上記以外の(3)式及び(4)式で説明した記号は、上記説明のとおりである。尚、本実施例では、δ1=0.5とした。
上記(3)式〜(6)式の計算式は、脱珪処理後の溶銑中の珪素含有量がほぼ0(ゼロ)であるような操業条件を前提とするものであるが、所定の溶銑中の珪素含有量を残留させるような操業においては、各式中のXSi1(n)として、脱珪処理前の溶銑中の珪素濃度の代わりに、脱珪処理前後での溶銑中の珪素濃度変化の測定値或いは推定値を用いればよい。
中間排滓工程では、脱珪処理後の計算スラグ質量に対する排滓量が目標値の50質量%以上となるように、排滓されるスラグを収容するスラグ収容容器を積載するための移動台車に設置したスラグ収容容器の秤量器による秤量値を確認しつつ行った。
ここで、中間排滓では、大きな排滓速度を得ようとしたり、脱珪スラグのフォーミングが低位な場合に炉内のスラグ残留量を低減しようとしたりして、転炉型精錬炉の傾動角度を大きくすると、脱珪スラグとともにスラグ中に混入する溶銑が炉口から或る程度排出される。この場合、溶銑の排出量は必ずしも一定ではない。しかし、多くの場合に、脱珪スラグ中に混入する溶銑の質量比率は、脱燐処理後のスラグ(脱燐スラグ)に混入する場合に比べて比較的低位で且つ安定したレベルである。したがって、排出された脱珪スラグの試料から求めた銑鉄の質量比率などを代表値として用い、排出物の秤量値に基づいて、排出した脱珪スラグの質量を算出しても、多くの場合には問題がない。そこで、本実施例では、中間排滓における排出物の秤量値の0.9倍を脱珪処理後に排滓されたスラグ質量(=WO,Si1(n))として算出した。
脱燐処理工程では、CaO系媒溶剤として生石灰と脱炭スラグとを使用し、そのうち、生石灰の添加量をいずれのチャージでも所定量(=2トン)とし、脱燐処理後のスラグの計算塩基度が目標値の2.00以上となるように、脱炭スラグの使用量を調整した。脱炭スラグを使用しなくても計算塩基度が目標値の2.00以上となる場合には、脱炭スラグを用いずに脱燐処理を行った。気体酸素(気酸)の使用量は、いずれのチャージにおいても所定量(2600Nm3)とした。
脱燐処理後のスラグ(脱燐スラグ)の計算塩基度は、比較例においては(7)式を用いて計算し、本発明例においては(8)式を用いて計算した。
Bc,P1(n)=[{WS,Si1(n)-WO,Si1(n)}×δ1×Bc,Si1(n)/{Bc,Si1(n)+1}+WSL,P1(n)×β1+
WCaO,P1(n)]/[{WS,Si1(n)-WO,Si1(n)}×δ1/{Bc,Si1(n)+1}+WSL,P1(n)×γ1]…(7)
Bc,P1(n)=[{WS,Si1(n)-WO,Si1(n)}×(%CaO)m,Si1(n)/100+WSL,P1(n)×β1+WCaO,P1(n)]/
[{WS,Si1(n)-WO,Si1(n)}×(%SiO2)m,Si1(n)/100+WSL,P1(n)×γ1]…(8)
但し、(7)式、(8)式において、各記号は以下のとおりである。
Bc,P1(n):nチャージ目の予備処理の脱燐処理後のスラグの計算塩基度
WO,Si1(n):nチャージ目の予備処理の脱珪処理後に排滓されるスラグ質量(t)
WSL,P1(n):nチャージの予備処理の脱燐処理工程における脱炭スラグの添加量(t)
WCaO,P1(n):nチャージ目の予備処理の脱燐処理工程における生石灰の添加量(t)
上記以外の(3)式〜(6)式で説明した記号は、上記説明のとおりである。
脱燐処理終了時の計算スラグ質量は、比較例においては(9)式を用いて計算し、本発明例においては(10)式を用いて計算した。
WS,P1(n)=[{WS,Si1(n)-WO,Si1(n)}×δ1+WSL,P1(n)×(β11)+WCaO,P1(n)]/α1…(9)
WS,P1(n)=[{WS,Si1(n)-WO,Si1(n)}×{(%CaO)m,Si1(n)+(%SiO2)m,Si1(n)}/100+
WSL,P1(n)×(β11)+WCaO,P1(n)]/α1…(10)
但し、(9)式、(10)式において、WS,P1(n)は、nチャージ目の予備処理の脱燐処理終了時の計算スラグ質量(t)である。それ以外の(3)式〜(8)式で説明した記号は、上記説明のとおりである。
脱燐処理後の溶銑を出湯した後、脱燐スラグを排滓せずに、全量を炉内に残留させたまま次のチャージに持ち越した。
比較例及び本発明例における精錬結果を表1に示す。尚、表1において、各スラグの塩基度のうちで、塩基度(LIBS値)として示す値はLIBS法による測定値であり、一方、塩基度(試料分析値)として示す値は、採取した少量のスラグ試料を粉砕、酸溶解して作製した水溶液試料をICP発光分光分析法によって分析して得たスラグ成分の分析値に基づくものである。塩基度(試料分析値)は、分析に長時間を要するために、この分析結果を当該チャージ或いは次のチャージの精錬条件を調整するためのデータとして用いることは困難である。
比較例においては、脱珪処理後のスラグの塩基度の推定精度が低く、スラグ塩基度が目標値の1.20から大きくばらついていた。また、脱珪スラグ量の推定誤差も大きいと考えられ、脱燐処理後のスラグの塩基度(試料分析値)が目標値の2.00から大きくばらつく結果となった。その結果、脱燐処理後の燐濃度が目標の0.030質量%より高くなるチャージが発生した。
これに対して、本発明例では、脱珪スラグの塩基度をLIBS法で測定することで、精度良く把握することができた。具体的には、中間排滓時の脱珪スラグの塩基度の測定値(Bm,Si1(n))は、標準偏差0.03程度の誤差で、実際の塩基度である塩基度(試料分析値)と一致していた。また、脱珪スラグの塩基度(試料分析値)の目標値(1.20)からのばらつきも表1の比較例の場合よりも大幅に低減していた。これは、炉内に残留させた前チャージの脱燐スラグの組成及び量の推定精度が向上したことによると考えられる。更に、脱珪処理後のスラグの(質量%CaO)及び(質量%SiO2)の定量分析も可能あることから、脱珪スラグの残留量の推定精度も向上したと考えられる。
これらの結果、脱燐処理後のスラグの塩基度が目標値に近い値で制御でき、これにより、脱燐処理後の溶銑の燐濃度は全チャージともに目標値の0.030質量%以下に低減することができた。
比較例及び本発明例による予備処理後の溶銑を転炉に装入して脱炭処理し、溶鋼を溶製した。その結果、本発明を適用して予備処理を行った溶銑は、従来法を適用して予備処理を行った溶銑に比べて脱炭処理前の溶銑の燐濃度が低減したことから、転炉におけるCaO系媒溶剤の使用量の削減及びマンガン歩留りの向上が可能となり、マンガン系合金鉄の使用量を低減できたことから、製造コストの低減が可能となった。
尚、上記(3)〜(10)式は、[試験1]で用いた副原料などの操業条件に対応する計算式であるが、他の操業条件においても、物質収支を考慮してこれらの計算式を変更することによって、同様に算出することが可能である。
[試験2]
容量330トンの1基の転炉型精錬炉を用い、脱燐処理(一次吹錬)、中間排滓、脱炭処理(二次吹錬)をこの順に行って、溶銑から溶鋼を溶製する際に、図2に示した構成の装置により、LIBS法を用いて中間排滓時にスラグ組成を測定し、スラグ成分分析結果に基づいて、その後の脱炭処理におけるCaO系媒溶剤の添加量を算出し、算出された量のCaO系媒溶剤を添加して行う溶鉄の精錬方法(本発明例)と、脱燐処理後にスラグ組成を測定しない従来法による溶鉄の精錬方法(比較例)とを、それぞれ5チャージずつ連続して実施した。一次吹錬の脱燐処理では、脱珪処理も同時に行われる。
脱炭処理終了時の溶鋼中燐濃度の目標値は、いずれも0.020質量%とした。本発明例及び比較例とも、前チャージの脱炭処理後のスラグを排滓せずに炉内に残留させたまま、次のチャージで使用する溶銑を装入し、中間排滓を挟んで脱燐処理と脱炭処理とを行う溶鉄の精錬方法を繰り返して実施した。また、脱燐処理時に鉄源として鉄屑を配合した。
脱燐処理工程では、生石灰または珪石の添加量を調整し、スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))の計算値(計算塩基度)が目標値の1.60となるように調整した。生石灰及び珪石を使用せずに計算塩基度が目標値の1.60となる場合は、生石灰及び珪石を用いずに脱燐処理を行った。気体酸素(気酸)の使用量は溶銑中の珪素濃度に応じて供給した。
脱燐処理後のスラグの塩基度は、比較例においては(11)式によって計算し、本発明例においては(12)式によって計算した。
Bc,P2(n)=[WS,C2(n-1)×ε2×Bc,C2(n-1)/{Bc,C2(n-1)+1}+WCaO,P2(n)]/
[WS,C2(n-1)×ε2/{Bc,C2(n-1)+1}+{XSi2(n)/100}×WHM2(n)×60/28
+WSiO2,P2(n)]…(11)
Bm,P2(n)=(%CaO)m,P2(n)/(%SiO2)m,P2(n)…(12)
但し、(11)式、(12)式において、各記号は以下のとおりである。
Bc,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理終了時のスラグの計算塩基度
Bc,C2(n-1):n−1チャージ目の精錬の脱炭処理終了時のスラグの計算塩基度
WS,C2(n-1):n−1チャージ目の精錬の脱炭処理終了時の計算スラグ質量(t)
WCaO,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理工程における生石灰の添加量(t)
WSiO2,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理工程における珪石の添加量(t)
XSi2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理前の溶銑中の珪素濃度(質量%)
WHM2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理前の溶銑量(t)
Bm,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理終了後のスラグのLIBS法によるスラグ塩基度の測定値
(%CaO)m,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理後のスラグのLIBS法で測定されたCaO濃度(質量%)
(%SiO2)m,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理後のスラグのLIBS法で測定されたSiO2濃度(質量%)
ε2:脱炭処理後のスラグ中のCaO及びSiO2の質量比率の平均値の和
尚、本実施例ではε2=0.5とした。また、Bc,C2(n-1)及びWS,C2(n-1)の算出方法については後述するが、1チャージ目の精錬においては、Bc,C2(0)は0(ゼロ)でない定数とし、WS,C2(0)=0とした。
脱燐処理終了時のスラグ質量は、従来法においては(13)式を用いて計算し、本発明例においては(14)式を用いて計算した。
WS,P2(n)=[WS,C2(n-1)×ε2+{XSi2(n)/100}×WHM2(n)×60/28+WCaO,P2(n)+
WSiO2,P2(n)]/α2…(13)
WS,P2(n)=[WS,C2(n-1)×ε2+{XSi2(n)/100}×WHM2(n)×60/28+WCaO,P2(n)+WSiO2,P2(n)]/
[{(%CaO)m,P2(n)+(%SiO2)m,P2(n)}/100] …(14)
但し、(13)式、(14)式において、各記号は以下のとおりである。
WS,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理終了時の計算スラグ質量(t)
α2:脱燐処理後のスラグ中のCaO及びSiO2の質量比率の平均値の和
上記以外の(11)式及び(12)式で説明した記号は、上記説明のとおりである。尚、本実施例ではα2=0.6とした。
中間排滓工程では、脱燐処理後の計算スラグ質量に対する排滓量が目標値の50質量%以上となるように、排滓されるスラグを収容するスラグ収容容器を積載するための移動台車に設置したスラグ収容容器の秤量器による秤量値を確認しつつ行った。
ここで、脱燐処理後の中間排滓では、前述した脱珪処理後の中間排滓の場合よりも、スラグ中に混入する溶銑の質量比率が高く、ばらつきも大きくなる。そこで、本実施例では、排出された脱燐スラグから採取した複数の試料における銑鉄の質量比率の平均値を、脱燐スラグ中に混入する溶銑の質量比率として定め、この値に基づいて中間排滓における排出物中の脱燐スラグの質量比率を設定した。具体的には、中間排滓における排出物の秤量値の0.8倍を排滓された脱燐スラグの質量(=WO,P2(n))として算出した。
脱炭処理工程では、脱炭処理後のスラグの塩基度の計算値(計算塩基度)が、脱炭処理終了時の目標溶鋼温度に応じて設定した目標値となるように生石灰の使用量を調整した。脱炭処理後のスラグについては全量炉内に残留させ、次のチャージで使用する溶銑を装入して次のチャージの精錬を行った。
脱炭処理後のスラグ(脱炭スラグ)の計算塩基度は、比較例においては(15)式を用いて計算し、本発明例においては(16)式を用いて計算した。
Bc,C2(n)=[{WS,P2(n)-WO,P2(n)}×α2×Bc,P2(n)/{Bc,P2(n)+1}+WCaO,C2(n)]/
[{WS,P2(n)-WO,P2(n)}×α2/{Bc,P2(n)+1}]…(15)
Bc,C2(n)=[{WS,P2(n)-WO,P2(n)}×{(%CaO)m,P2(n)/100}+WCaO,C2(n)]/
[{WS,P2(n)-WO,P2(n)}×(%SiO2)m,P2(n)/100]…(16)
但し、(15)式、(16)式において、各記号は以下のとおりである。
Bc,C2(n):nチャージ目の精錬の脱炭処理後のスラグの計算塩基度
WO,P2(n):nチャージ目の精錬の脱燐処理後に排滓されるスラグ質量(t)
WCaO,C2(n):nチャージ目の精錬の脱炭処理工程おける生石灰の添加量(t)
上記以外の(11)式〜(14)式で説明した記号は、上記説明のとおりである。
脱炭処理終了時のスラグの計算質量は、比較例においては(17)式を用いて計算し、本発明例においては(18)式を用いて計算した。
WS,C2(n)=[{WS,P2(n)-WO,P2(n)}×α2+WCaO,C2(n)]/ε2…(17)
WS,C2(n)=[{WS,P2(n)-WO,P2(n)}×{(%CaO)m,P2(n)+(%SiO2)m,P2(n)}/100
+WCaO,C2(n)]/ε2…(18)
但し、(17)式、(18)式において、WS,C2(n)は、nチャージ目の精錬の脱炭処理終了時の計算スラグ質量(t)である。それ以外の(11)式〜(16)式で説明した記号は、上記説明のとおりである。
脱炭処理後の溶鋼を出鋼した後、脱炭スラグを排滓せずに、全量を炉内に残留させたまま次のチャージに持ち越した。
比較例及び本発明例における精錬結果を表2に示す。尚、表2において、各スラグの塩基度のうちで、塩基度(LIBS値)として示す値はLIBS法による測定値で、塩基度(試料分析値)として示す値は、採取した少量のスラグ試料を粉砕、酸溶解して作製した水溶液試料をICP発光分光分析法によって分析して得たスラグ成分の分析値に基づくものである。
比較例においては、脱燐スラグの塩基度の推定精度が低く、塩基度(試料分析値)が目標値の1.60から大きくばらついていた。また、脱燐処理後のスラグ量の推定誤差も大きいと考えられ、脱炭処理後のスラグの塩基度(試料分析値)が目標値から大きくばらつく結果となった。
即ち、脱燐処理後のスラグの塩基度(試料分析値)が計算塩基度つまり目標値の1.60より低い場合には、脱炭処理後のスラグの塩基度(試料分析値)が、目標の塩基度を下回る結果となり、その結果、脱炭処理終了後の溶鋼の燐濃度が目標の0.020質量%より高く、燐規格上限値を超えるチャージが発生した。一方、脱燐処理後のスラグの塩基度(試料分析値)が計算塩基度つまり目標値の1.60よりも高い場合には、脱炭処理におけるスラグの塩基度(試料分析値)が目標より高くなるが、スラグの滓化が悪化して流動性が低下し、脱炭スラグの燐分配比が低下する場合がある。そのために、精錬終了後の溶鋼の燐濃度が目標値の0.020質量%より高くなるおそれがある。
これに対して、本発明例では、脱燐処理終了時のスラグの(質量%CaO)及び(質量%SiO2)を定量分析することで、脱燐処理終了時のスラグの塩基度を精度良く把握することができた。具体的には、脱燐処理終了時のスラグ塩基度の測定値(Bm,P2(n))は、標準偏差0.03程度の誤差で塩基度(試料分析値)と一致していた。また、脱燐処理終了時のスラグ塩基度(試料分析値)の目標値(1.60)からのばらつきも表2の比較例の場合よりも大幅に低減していた。これは、炉内に残留させた前チャージの脱炭スラグの組成及び量の推定精度が向上したことによると考えられる。更に、脱燐処理後のスラグの(質量%CaO)及び(質量%SiO2)の定量分析も可能あることから、脱燐スラグの残留量の推定精度も向上したと考えられる。
これらの結果、脱炭処理においても実際のスラグの塩基度を目標値に近い値で制御可能となり、これにより、脱炭処理後の溶鋼の燐濃度は全チャージにおいて目標の0.020質量%以下に低減することができた。
比較例及び本発明例によって溶製した溶鋼を、更に二次精錬設備で脱酸するなどして成分及び温度を調整した後、連続鋳造して鋳片を製造し、この鋳片を通常の方法によって熱間圧延して鋼材製品を製造した。本発明例では、比較例に比べて脱炭処理前の溶銑の燐濃度が低減したことから、転炉におけるCaO系媒溶剤の使用量の削減及びマンガン歩留りの向上が可能となり、マンガン系合金鉄の使用量も低減できたことから、製造コストの低減が可能となった。
尚、上記(11)〜(18)式は、[試験2]で用いた副原料などの操業条件に対応する計算式であるが、他の操業条件においても、物質収支を考慮してこれらの計算式を変更することによって、同様に算出することが可能である。
1 転炉型精錬炉
2 炉口
3 底吹き羽口
4 溶銑
5 スラグ
6 レーザ光発生器
7 集光レンズ
8 レーザ光
9 受光部
10 光ファイバ
11 分光・測光器
12 演算用計算機
13 撮像装置
14 スラグ収容容器

Claims (23)

  1. 転炉型精錬炉における溶鉄の精錬で生じたスラグを、該スラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄または前記転炉型精錬炉に新たに装入した溶銑を精錬するに際し、
    溶鉄の精錬で生じた前記スラグの成分を、該スラグから分析試料を採取することなく定量分析するにあたり、前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくともカルシウムを含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、カルシウムの発光強度を利用してスラグに対応する発光か、溶鉄に対応する発光かを識別し、識別されたスラグに対応する発光の各元素の発光強度に基づいて前記スラグの成分を定量分析し、その成分分析結果に基づいて、スラグを残留させた前記転炉型精錬炉で行う、炉内に残留させた溶鉄の次工程の精錬または炉内に新たに装入した溶銑を用いた次のチャージの溶鉄の精錬における精錬前及び/または精錬中に添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、溶鉄の精錬方法。
  2. 前記スラグの成分の分析は、前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくともカルシウム(Ca)及び珪素(Si)を含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの塩基度を評価することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の溶鉄の精錬方法。
  3. 前記スラグの成分の分析は、前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくともカルシウム(Ca)及び珪素(Si)を含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの組成を評価することを含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の溶鉄の精錬方法。
  4. 前記転炉型精錬炉内のスラグ、前記転炉型精錬炉から排出中のスラグまたは排出後のスラグ収容容器内のスラグの表面にレーザ光を集光させて、前記プラズマをスラグ表面に発生させることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の溶鉄の精錬方法。
  5. 前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて複数の精錬工程を行う溶銑の予備処理であり、前記複数の精錬工程の間で、溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出して、溶銑に予備処理を施すにあたり、前記スラグの残部を排出する際に、前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、次工程の精錬工程において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  6. 前記溶銑の予備処理が脱珪処理工程と脱燐処理工程とを含み、脱珪処理工程と脱燐処理工程との間で、溶銑及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出する際に、前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、前記脱燐処理工程において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、請求項5に記載の溶鉄の精錬方法。
  7. 前記溶鉄の精錬が溶銑の予備処理であり、前記転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の脱燐処理で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の予備処理を行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  8. 1つの転炉型精錬炉を用い、転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉内の溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、前記転炉型精錬炉を傾動して、脱燐処理工程後の溶銑及び脱燐処理工程で生成したスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記スラグの残部を排出する中間排滓工程と、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉に残留させた溶銑を脱炭処理して溶鋼にする溶鉄の脱炭処理工程と、脱炭処理工程後の溶鋼を前記転炉型精錬炉から出鋼する出鋼工程とを、この順に行って溶銑から溶鋼を溶製するにあたり、前記中間排滓工程での前記スラグの残部を排出する際に、前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、前記脱炭処理工程において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  9. 前記転炉型精錬炉における前チャージの溶鉄の脱炭処理工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の脱燐処理工程を行うことを特徴とする、請求項8に記載の溶鉄の精錬方法。
  10. 転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉内の溶銑を脱炭処理して溶鋼にする脱炭処理工程で生成したスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に次のチャージの溶銑を装入して精錬するにあたり、脱炭処理工程で生成した前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、次のチャージの溶鉄の精錬において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項4、請求項8及び請求項9のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  11. 転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して前記転炉型精錬炉内の溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程で生成したスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に次のチャージの溶銑を装入して溶銑に脱燐処理を施すにあたり、脱燐処理工程で生成した前記スラグの成分を分析し、その成分分析結果に基づいて、次のチャージの溶鉄の精錬において添加する造滓剤の量を決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  12. 前記スラグの成分分析結果に基づいて添加量を決定する前記造滓剤がCaO系媒溶剤であることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  13. 前記スラグの成分分析結果がスラグ中のMgO含有量を含み、前記スラグの成分分析結果に基づいて添加量を決定する前記造滓剤がMgO系媒溶剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  14. 前記スラグの成分分析結果がスラグ中の酸化鉄含有量を含み、前記スラグの成分分析結果に基づいて添加量を決定する前記造滓剤が酸化鉄系媒溶剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  15. 転炉型精錬炉における溶鉄の精錬で生じたスラグを、該スラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄または前記転炉型精錬炉に新たに装入した溶銑を精錬するに際し、
    溶鉄の精錬で生じた前記スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の少なくともカルシウム及び鉄(Fe)を含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、少なくともカルシウムの発光強度を利用してスラグに対応する発光か、溶鉄に対応する発光かを識別し、識別されたスラグに対応する発光の各元素の発光強度の測定結果に基づいて前記スラグの酸化鉄含有量を定量分析し、
    その分析結果に基づいて、スラグを残留させた前記転炉型精錬炉で行う、炉内に残留させた溶鉄の次工程の精錬または炉内に新たに装入した溶銑を用いた次のチャージの溶鉄の精錬におけるスラグの酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、溶鉄の精錬方法。
  16. 前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬であり、前記一次吹錬工程と前記二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出し、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施すにあたり、前記スラグの残部を排出する際に、前記一次吹錬工程にて発生したスラグの表面にレーザ光を集光させて酸化鉄含有量を定量分析し、その酸化鉄含有量の定量分析結果に基づいて、二次吹錬工程におけるスラグの酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、請求項15に記載の溶鉄の精錬方法。
  17. 前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬であり、前記一次吹錬工程と前記二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたままスラグの残部を排出し、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施す精錬方法を、連続する2チャージ以上の溶銑に施すにあたり、前記転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の二次吹錬工程で生じたスラグの一部または全部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の一次吹錬工程を行う際に、前チャージの溶銑の前記二次吹錬工程で生じたスラグの表面にレーザ光を集光させて酸化鉄含有量を定量分析し、酸化鉄含有量の定量分析結果に基づいて、次のチャージの溶銑の前記一次吹錬工程におけるスラグの酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、請求項15または請求項16に記載の溶鉄の精錬方法。
  18. 前記一次吹錬工程または前記二次吹錬工程でスラグの酸化鉄含有量を制御する際に、気体酸素の供給速度、気体酸素を供給するための上吹きランスのランス高さ、底吹きガス流量のうちのいずれか1種以上の条件を調整して酸化鉄含有量を制御することを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の溶鉄の精錬方法。
  19. 前記一次吹錬工程が溶銑の脱珪処理であり、且つ、前記二次吹錬工程が溶銑の脱燐処理であることを特徴とする、請求項16ないし請求項18のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  20. 前記一次吹錬工程が溶銑の脱燐処理であり、且つ、前記二次吹錬工程が溶銑を脱炭して溶鋼とする脱炭処理であることを特徴とする、請求項16ないし請求項18のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  21. 前記溶鉄の精錬が1つの転炉型精錬炉を用いて一次吹錬工程と二次吹錬工程とを行う溶鉄の精錬であり、前記一次吹錬工程と前記二次吹錬工程との間で、溶鉄及びスラグの一部を前記転炉型精錬炉に残留させたまま、スラグの残部を排出し、前記転炉型精錬炉に残留させた溶鉄に精錬を施す精錬方法を、連続する2チャージ以上の溶銑に施すにあたり、前記転炉型精錬炉における前チャージの溶銑の二次吹錬工程で生じたスラグを、炉外に排出することなく前記転炉型精錬炉に残留させたまま、次のチャージの溶銑を前記転炉型精錬炉に装入し、次のチャージの溶銑の一次吹錬工程を行う際に、前チャージの溶銑の前記二次吹錬工程の前後においてスラグの成分を定量分析し、前記二次吹錬工程の前後におけるスラグの成分の定量分析結果と前記二次吹錬工程における造滓剤の使用量とに基づいて前記二次吹錬工程後のスラグ量を求め、得られたスラグ量を次チャージの溶銑の一次吹錬工程におけるスラグの制御に利用することを特徴とする、請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  22. 前記スラグの成分の定量分析方法が、スラグの表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの成分を定量分析する方法を含み、前記レーザ光をスラグの表面に集光させるための集光レンズとレーザ光を集光させるスラグ表面との距離を測定し、前記集光レンズと前記スラグ表面との距離を所定の値とするように前記集光レンズの位置を調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項21のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  23. 800℃以上の高温のスラグと溶鉄とを含む分析対象物の表面にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光に伴い発生するプラズマ中の元素の発光強度を測定し、測定された発光強度及び/または発光強度比に基づいて前記スラグの組成を分析するスラグの組成分析方法であって、
    前記プラズマ中の少なくともカルシウムを含む2種類以上の元素の発光強度を測定し、カルシウムの発光強度を利用してスラグに対応する発光か、溶鉄に対応する発光かを識別し、識別されたスラグに対応する発光の各元素の発光強度に基づいて前記スラグの組成を定量分析することを特徴とする、スラグの組成分析方法。
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