JP2017192952A - 極細鋼線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.90〜1.20%、Si:0.20〜1.50%、Mn:0.30〜1.50%、Al:0.0030%以下(0%を含む)、固溶N:0.0050〜0.020%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、パーライト組織の面積率が95%以上である鋼線材を素材とし、ダイスを用いた伸線加工により線径0.05mm〜0.10mmの極細鋼線まで伸線する際に、前記ダイスと被伸線材間の摩擦係数が0.10以下、ダイスアプローチ角度(全角)が8度以下、引抜プーリーと被伸線材との間で滑りが発生しないノンスリップ伸線機を用いて伸線し、前記被伸線材に負荷する後方逆張力を前記極細鋼線の破断荷重の1.0〜10.0%にすることを特徴とする極細鋼線の製造方法を採用する。
【選択図】なし
Description
また、伸線加工では、加工時に歪み時効が起こり、延性が劣化することがある。このために、伸線材の延性を確保するために歪み時効を抑制することが種々検討されている。
前記ダイスと被伸線材間の摩擦係数が0.10以下、ダイスアプローチ角度(全角)が8度以下、引抜プーリーと被伸線材との間で滑りが発生しないノンスリップ伸線機を用いて伸線し、前記被伸線材に負荷する後方逆張力を前記極細鋼線の破断荷重の1.0〜10.0%にすることを特徴とする極細鋼線の製造方法。
(2) 前記鋼線材が、Cr:0.01〜0.50%、Ti:0.003%未満(0%を含む)、B:0.0003%未満(0%を含む)を更に含有することを特徴とする(1)記載の極細鋼線の製造方法。
(3) 任意の伸線加工とそれに続く伸線加工の間において、前記被伸線材にCuとZnからなるブラスをめっきすることにより、最終伸線後の被伸線材の表面に平均厚さ50〜400nmのブラスめっき層を形成することを特徴とする、(1)または(2)記載の極細鋼線の製造方法。
1)ダイスと被伸線材間の摩擦係数を0.10以下にすることで、摩擦発熱を低減する。摩擦係数を低減する手段としては例えば、低温の湿式潤滑剤の利用やダイス材質の最適化が有効である。
2)被伸線材へのダメージを低減するために低アプローチ角度ダイスを用いる。
3)被伸線材と回転プーリーの間にスリップが発生しないノンスリップ伸線を行い、被伸線材への逆張力を安定的に負荷することで、被伸線材の発熱による温度上昇を抑制するとともに、被伸線材に作用する応力も低減し、伸線材へのダメージを低減する。
以下、素材として用いる鋼線材の化学成分を説明する。なお、化学成分の含有率の単位は質量%である。
C:0.90〜1.20%
Cは、パーライト組織のラメラー間隔微細化に有効な元素であり、ラメラー間隔の微細化に伴い強度が増加する。C量が0.90%未満では高強度化が得がたく、またC量が1.20%を超えると初析セメンタイトが生成し、伸線加工性の低下、伸線材の脆化が避けられないため、0.90〜1.20%とする。より好ましいC量は0.98〜1.07%である。
Siは、フェライト相に固溶し、固溶強化による高強度化に寄与する。また、パーライト組織のフェライトとセメンタイト界面に濃化しセメンタイトの分解を抑制する効果がある。Si量が0.20%未満ではそれらの効果は小さく、Si量が1.50%を超えると脆化により延性が低下するためSi量を0.20〜1.50%とする。好ましいSi量は0.50〜1.00%であり、より好ましいSi量は0.65〜1.00%である。
Mnは、脱硫剤として有効な元素であり、また、焼き入れ性を向上してパーライト組織を高強度化するのに有効な元素である。Mn量が0.30%以下ではこれらの効果が得にくくなる。一方、Mn量が1.50%を越えるとパーライト変態時に過冷組織が生成し易くなり、延性と伸線加工性を著しく低下するためMn量は1.50%以下に制限する。より好ましいMn量は0.30〜1.00%である。
Alは、製鋼工程で、脱酸剤として添加されることが多いが、本発明の鋼には積極的に添加せず、Al量をなるべく低減する。Alが酸化物として鋼材内部に存在すると、伸線時に断線の起点となる。特に0.10mm以下の極細線の伸線加工では、Al酸化物が微細であっても断線の原因となる。また、Alは窒化物を生成し、強化に寄与するフェライト中の固溶Nを低減させる。よって、Alは0.0030%以下に制限する。好ましいAl量は0.0010%以下である。
固溶Nはフェライトに固溶し、加工により導入された転位に固着することで、歪み時効により強度を上昇させる元素である。また、固溶Nは、700℃前後の高温域では鋼の変態速度を低減させるため、伸線加工性を低下させる初析セメンタイトの析出が抑制される。歪み時効による強化のため、固溶N量は0.0050%以上とする。しかし、固溶N量が0.020%を超えると高温脆化現象が起き、鋳造における鋼材内部割れが起きるため固溶N量は0.020%以下とする。より好ましくは固溶N量を0.0050〜0.015%にする。
Cr:0.01〜0.50%
Crは、変態時にパーライトのラメラー間隔を微細化し、強度を高める元素である。この効果を得るため、Cr量は0.01%以上とする。しかし、Cr量が0.50%を越えると変態時間が長くなり、過冷組織を生成し易く、伸線加工性を著しく悪化させるため、0.50%以下とするのが好ましい。より好ましいCr量は0.25〜0.35%である。
Tiは窒素との親和力が強く、窒化物を生成し、固溶窒素を低減する元素である。このためTi量は0.003%未満とするのが好ましい。
Bは窒素との親和力が強く、窒化物を生成し、固溶窒素を低減する元素である。このためB量は0.0003%未満とするのが好ましい。
鋼がAl、Ti等の窒素との親和力が強い元素を含有している場合、NはAl、Ti等と窒化物を形成する結果、固溶N量が低減する。固溶N量は鋼材の温度により変化し、高温ほど固溶量は多くなる。従って、伸線加工前の熱間圧延時の冷却を10℃/s以上に制御し、高温状態から急速に冷却することで、鋼線材の固溶N量を増加させることができる。また、本発明ではAl、Ti、B含有量を制限することで有効に固溶Nを確保する。
パーライト組織は強加工が可能な組織であって、かつ高い加工硬化率を示す組織である。このため、鋼線材のパーライト組織の面積率は95%以上が必要である。好ましくは98%以上である。なお、パーライト組織の面積率は、鋼線材の長手方向と直交する断面における面積率である。
本実施形態の極細鋼線の製造方法では、製造する極細鋼線の線径を0.05〜0.10mmの範囲とする。極細鋼線の線径が0.05mm未満になると、伸線条件を適正化しても断線が発生し、工業的な生産は著しく低下し、コストが増加する。また、線径が0.10mmを超えると、極細鋼線の用途の一つであるソーワイヤーに適用した場合に、シリコンインゴットや半導体インゴットを切断する場合の切断ロスが大きくなりコストアップを招くことになる。よって、極細線の線径は0.05mm〜0.10mmとする。好ましくは0.05〜0.08mmである。
本実施形態では、伸線加工により極細鋼線を製造するにあたって、ダイスを用いて線径を順次縮径する。この時、ダイスと被伸線材との間の摩擦係数を小さくすることで摩擦発熱が低減され、伸線材の温度を低くすることが出来る。これにより、セメンタイトの分解を抑制できる。摩擦係数が0.10を越えると摩擦発熱によりセメンタイト分解が進行し、延性が低下するため、摩擦係数は0.10以下とする。好ましくは0.08以下である。
Km=(Kfm(1−0.385α)/(1+1/2(F0/F0−1)/(1+μ/α) … (2)
F0:変形前の被伸線材の断面積(単位:mm2)
F1:変形後の被伸線材の断面積(単位:mm2)
μ:ダイスと被伸線材間の摩擦係数
α:ダイス半角(単位:rad)
Kfm:伸線材の平均変形抵抗(伸線前後の降伏応力の平均値)(単位:N/mm2)
被伸線材の表面にブラスめっき(CuZn合金)を施すことで、伸線時のダイスと被伸線材間の潤滑性能を改善できる。この潤滑作用による摩擦係数低減効果を得るには、ブラスめっきの厚さは50nm以上であることが好ましい。ブラスめっき厚さを400nm以上にしても、めっき剥離が増加し、潤滑性能の改善効果が飽和するために400nm以下のめっき厚が好ましい。より好ましいめっき厚は100〜300nmである。ブラスめっき厚さは、極細鋼線のめっき付着量をアルカリ溶液に浸漬して除去した重量変化から求め、溶解液をICPあるいは原子吸光分析によりCu、Zn比率を算出し、その比重からめっき厚さを計算で求めることができる。
潤滑剤温度は特に限定しないが、被伸線材はダイスを出た直後に冷却することでセメンタイト分解を少なくすることが可能であるから、湿式潤滑剤の温度を極力低くすることが有効である。そのため、潤滑剤の温度は、25℃以下に制御することが好ましい。しかし、潤滑剤の温度を10℃未満にすると、潤滑性能が低下することがあるため、10℃以上に制御するのが好ましい。より好ましくは15〜20℃である。湿式潤滑剤としては、O/W型のエマルジョン潤滑剤が好ましい。
ダイスによる湿式伸線では、ダイスアプローチ角度を小さくすることで、被伸線材に発生する静水圧応力、および被伸線材表面に作用する軸方向(伸線方向)の応力が低減されるため、被伸線材の断線が抑制される。このことから、本実施形態ではダイスアプローチ角度を8度以下とする。好ましくは7度以下であるが、6度以下のダイスは製造が難しいため、実用上のダイス角度の下限は7度である。
極細鋼線を製造するための一般的な湿式伸線であるスリップ式伸線では、伸線材に引き抜き駆動力を与えるコーンと伸線材の間でスリップが発生するため、接触部が摩擦により発熱し、伸線材の円周方向で不均一な加工状態となる。そのため、本実施形態では、巻き上げコーンと被伸線材の間にスリップが発生しないノンスリップ伸線を行う。コーンと被伸線材の間に滑りが発生しないノンスリップ伸線とすることで、被伸線材の加工はダイス通過時のみとなり、被伸線材が均一に加工できる。
伸線時の断線を抑制するために、低角度ダイスを用いるとともに被伸線材に作用する逆張力を制限する。逆張力を10.0%を超えて負荷すると、被伸線材の軸方向に発生する応力、特に被伸線材表面に発生する応力が過大になり断線が発生しやすくなるため、逆張力は被伸線材の引っ張り強さの10.0%以下に制限することが好ましい。一方、全く逆張力を与えないと、被伸線材表面とダイスの接触状況が安定せずにビビリが発生し易くなるとともに、均一加工性が低下し、被伸線材の延性低下を引き起こすため、少なくとも引張り強さの1.0%以上の逆張力を与えて伸線するのがより好ましい。
d0:最終熱処理材線経(mm)
d:伸線材の線経(mm)
また、伸線加工性については伸線長さ10km当たりの断線発生数をカウントし、従来のスリップ式伸線機で、WCダイス、10度、0.3dのダイスで伸線した伸線材の断線回数を100として指数化し、断線指数とした。断線指数が小さいほど伸線加工断線が少ないと評価される。
また、伸線速度は最終線径D(mm)と伸線速度V(m/min)の積が80となる条件とした。
No.29はC量が多く、粒界にセメンタイトが生成した素材で、ブラスめっき無しで伸線したため摩擦係数が0.15と高く、伸線材にビビリが発生し、逆張力を伸線材の20.0%と高い値に設定しないと伸線できなかったもので、伸線材の延性、伸線加工性が低下した例である。
No.30は固溶強化元素であるSi量が少なく、TSが低くなるとともに、逆張力を伸線材の破断荷重の15.0%としたため、延性、伸線性とも低下した例である。
No.31はADダイスを用いて摩擦係数は0.07と小さいものの、Si量が多く、固溶Siによる脆化が進行し、延性、伸線加工性が劣化した例である。
No.33はMnが多く、熱間圧延線材の組織にミクロマルテンサイトとベイナイトが混在し、延性、伸線加工性が低下した例である。
No.34は固溶Nが多く、鋼材が脆化し、WCダイスで伸線したため摩擦係数が0.12と高く、伸線材の延性低下、14度ダイス、15.0%の逆張力で伸線したため伸線加工性が劣化した例である。
No.35は固溶N量が著しく少なく、十分な固溶強化が得られず、強度低下とともに、延性が低下し、14度ダイスで高い逆張力で伸線したため伸線加工性が低下した例である。
No.36は、WCダイスで伸線し、摩擦係数が0.12と高く、加工発熱が大きくなり、強度は高くなったものの、延性と伸線加工性が低下した例である。
No.37は、ダイスのアプローチ角度は7度であるが、逆張力を20.0%と大きくしたために、内部に欠陥が発生し延性の低下とともに断線が発生し、伸線加工性が低下した例である。
No.38は、逆張力を0.5%と著しく小さくしたため、伸線時にビビリが発生し、強度、延性とも低下するとともにダイス角度が14度と大きいため、伸線性も低下した例である。
No.39は、ADダイスを用い、摩擦係数は0.09と小さいものの、伸線材線径が0.04mmと細く、14度ダイスで伸線したために、断線が多発し、伸線加工性が低下した例である。
No.42は伸線材の強度が低く、延性は確保できたものの、ダイス角度が大きく、断線が多く発生した例である。
No.43は伸線材の強度が高くなる高炭素成分鋼を高角度ダイスで、高逆張力で伸線したために延性と断線指数が高くなった例である。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.90〜1.2%、Si:0.20〜1.5%、Mn:0.30〜1.50%、Al:0.0030%以下(0%を含む)、固溶N:0.005〜0.020%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、パーライト組織の面積率が95%以上である鋼線材を素材とし、ダイスを用いた伸線加工により線径0.05mm〜0.10mmの極細鋼線まで伸線する際に、
前記ダイスと被伸線材間の摩擦係数が0.10以下、ダイスアプローチ角度(全角)が8度以下、引抜プーリーと被伸線材との間で滑りが発生しないノンスリップ伸線機を用いて伸線し、前記被伸線材に負荷する後方逆張力を前記極細鋼線の破断荷重の1.0〜10.0%にすることを特徴とする極細鋼線の製造方法。 - 前記鋼線材が、Cr:0.01〜0.50%、Ti:0.003%未満(0%を含む)、B:0.0003%未満(0%を含む)を更に含有することを特徴とする請求項1記載の極細鋼線の製造方法。
- 任意の伸線加工とそれに続く伸線加工の間において、前記被伸線材にCuとZnからなるブラスをめっきすることにより、最終伸線後の被伸線材の表面に平均厚さ50〜400nmのブラスめっき層を形成することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の極細鋼線の製造方法。
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CN115261108A (zh) * | 2022-08-24 | 2022-11-01 | 苏州襄行新材料有限公司 | 一种超微细丝拉伸润滑液及其制作方法 |
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2016
- 2016-04-19 JP JP2016083596A patent/JP6614006B2/ja active Active
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