JP2009144230A - 鋼線材およびボルト、ならびに鋼線材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋼線材の表層部を細粒化することで、線材まま、あるいは調質処理を行わずに冷間加工後の製品の疲労強度を向上させる。
【解決手段】 表層部分における第1相がフェライト、第2相がパーライトおよび/またはセメンタイトであって、両相についてアスペクト比が2.0以下、平均結晶粒径が3μm以下、最大粒径が10μm以下となるようにする。C=0.1〜0.3%、Si=0.01〜0.5%、 Mn=0.05〜2.0%を含み、残部は鉄および不可避的不純物とするのがよい。鋼片を鋼線材とする圧延に係る仕上温度等をコントロールして製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】 表層部分における第1相がフェライト、第2相がパーライトおよび/またはセメンタイトであって、両相についてアスペクト比が2.0以下、平均結晶粒径が3μm以下、最大粒径が10μm以下となるようにする。C=0.1〜0.3%、Si=0.01〜0.5%、 Mn=0.05〜2.0%を含み、残部は鉄および不可避的不純物とするのがよい。鋼片を鋼線材とする圧延に係る仕上温度等をコントロールして製造する。
【選択図】 図1
Description
本発明は疲労特性に優れた鋼線材に関するもので、冷間鍛造、冷間引抜、冷間転造等の冷間塑性加工のみで熱処理を行わないで、特性の優れたボルト、ピン等を製造できる技術に関するものである。
ボルト、ピン等の特性の中で、疲労に関する特性は極めて重要である。疲労特性を向上させるには、冷間鍛造後に焼入れ焼き戻し、もしくは浸炭処理等の熱処理を必要としていた。また焼入れ焼き戻しや浸炭処理等を行わない場合でも、製品の表層にかかる応力を予測し、特殊な合金元素を添加した高強度な線材から高強度ボルト、高強度ピン等を製造している。また下記の特許文献1には、表層部の硬度を、550℃〜Ar3+30℃の低温域で減面率5〜40%の圧延を行うことによって向上させ、疲労特性を向上させる技術が示されている。しかしこの方法は圧延速度の遅い棒鋼では可能であるが、圧延速度の速い線材では不可能である。なお線材(鋼線材)とは仕上圧延後の径がφ5.5〜φ16(mm)の鋼材をさし、棒鋼は仕上圧延後の径がφ16(mm)以上の鋼材を示す。
特開2005-232570号公報
しかしながら焼入れ焼き戻しや浸炭処理には付加的な工程を要し、エネルギー等に関する製造コストの増大が大きい。また高強度な線材は一般に希少な合金元素を添加することが必要なため、これも製造コストが高価である。そこで、熱間圧延ままであって特殊な元素を添加せず、優れた疲労特性を有する鋼線材、およびその様な鋼線材を製造する為の有用な方法を提供することは、工業的に大きな意味がある。
請求項に係る発明は、鋼線材の表層部を細粒化することで、線材まま、あるいは調質処理を行わずに冷間加工後の製品の疲労強度を向上させるものである。
請求項に係る発明は、鋼線材の表層部を細粒化することで、線材まま、あるいは調質処理を行わずに冷間加工後の製品の疲労強度を向上させるものである。
発明者らは、鋼線材の表層部分の金属組織、硬度と線材の疲労特性の関係を調査し、たとえばC=0.1〜0.3%、Si=0.01〜0.5%、 Mn=0.05〜2.0%を含み、表層の結晶粒のアスペクト比が2.0以下という等軸性のあるポリゴナル組織を有し、平均結晶粒径が3μm以下で最大粒径が10μm以下の等軸な細粒を有する鋼線材は優れた疲労特性を有することを見出した。ここで表層とは、鋼線材の最表層から直径の5%までの領域をいう。
更に本鋼線材を用いて、冷間で加工したボルト等の製品についても、同様な優れた疲労特性を有することを確認した。
本鋼線材は、表面温度1000℃以下の鋼片から圧延し、50℃/秒以上の冷却(圧延スタンド間での冷却等)を断続的に繰り返し、表面の仕上温度をAr3直上とする。更に仕上圧延後の水冷速度を50℃/秒以上、水冷終了温度をAr3〜Ar3−50℃とし、続いて空冷での冷却速度を1.5℃/秒以上3.0℃/秒以下とすることで製造できる。なお、鋼片とは製鋼段階で製造した中間製品をさし、仕上温度とは圧延終了時の温度を示す。また、Ar3は、オーステナイトからフェライトへの変態温度を指す。
更に本鋼線材を用いて、冷間で加工したボルト等の製品についても、同様な優れた疲労特性を有することを確認した。
本鋼線材は、表面温度1000℃以下の鋼片から圧延し、50℃/秒以上の冷却(圧延スタンド間での冷却等)を断続的に繰り返し、表面の仕上温度をAr3直上とする。更に仕上圧延後の水冷速度を50℃/秒以上、水冷終了温度をAr3〜Ar3−50℃とし、続いて空冷での冷却速度を1.5℃/秒以上3.0℃/秒以下とすることで製造できる。なお、鋼片とは製鋼段階で製造した中間製品をさし、仕上温度とは圧延終了時の温度を示す。また、Ar3は、オーステナイトからフェライトへの変態温度を指す。
表層結晶粒のアスペクト比が2.0以下、表層結晶粒径が3μm以下、最大粒径が10μm以下の細粒である鋼線材を冷間鍛造・冷間引抜・冷間転造した製品の表層は、線材表層の細粒がそのまま残るか、冷間加工により超細粒になっている。細粒組織は、クラック発生とクラックの伸展を遅くし疲労特性を向上させる効果がある(川田雄一「金属の疲労と設計」オーム社、1959年)。一般の製品は、表層を起点にクラックが発生し拡大して破断につながるため、表層が細粒な鋼線材から冷間成形した製品の寿命は、通常の鋼線材から冷間成形した製品と比較して長くなる。なおアスペクト比とは、結晶粒を楕円と認識し、その長軸と短軸の比を画像解析により測定したものである。
本発明は以上のように構成されており、熱間圧延ままであっても優れた疲労特性を有する鋼線材が実現できる。また、冷間引抜等によって高特性のボルトを成形できる。
以下に発明の実施例を示す。ボルト等の製造用素材としての鋼線材を、下記の工程にしたがって製造する。
加熱炉→粗圧延→中間圧延→水冷帯1→仕上圧延→水冷帯2→空冷帯
その製造工程を図1に、減面率推移を表1に、実施例および比較例の温度履歴をそれぞれ図2・図3に示す。
また成分の実績は表2の通りであって特殊元素の添加はない。表3に、冷却速度等の試験条件について実施例と比較例とを示す。なお本成分のAr3温度は831℃である。
加熱炉→粗圧延→中間圧延→水冷帯1→仕上圧延→水冷帯2→空冷帯
その製造工程を図1に、減面率推移を表1に、実施例および比較例の温度履歴をそれぞれ図2・図3に示す。
また成分の実績は表2の通りであって特殊元素の添加はない。表3に、冷却速度等の試験条件について実施例と比較例とを示す。なお本成分のAr3温度は831℃である。
鋼片の断面サイズは135mm×135mmで、表1に示すようにそれを22パスによりφ9の鋼線材にしており、トータルの減面率は99.7%である。
ここで、実施例の加熱炉抽出温度を表3のとおり1000℃以下としたのは、1000℃以上では粗圧延、中間圧延、仕上圧延で充分冷却できず、仕上温度をAr3〜Ar3+30℃にできないためである。
仕上温度をAr3変態以下にした場合、混粒組織になり、鋼線材の加工性を損ねる。また仕上温度をAr3+30℃以上にした場合、鋼線材の表層は細粒にならず疲労特性向上効果が期待できない。そのため、仕上温度はAr3からAr3+30℃とする。
ここで、実施例の加熱炉抽出温度を表3のとおり1000℃以下としたのは、1000℃以上では粗圧延、中間圧延、仕上圧延で充分冷却できず、仕上温度をAr3〜Ar3+30℃にできないためである。
仕上温度をAr3変態以下にした場合、混粒組織になり、鋼線材の加工性を損ねる。また仕上温度をAr3+30℃以上にした場合、鋼線材の表層は細粒にならず疲労特性向上効果が期待できない。そのため、仕上温度はAr3からAr3+30℃とする。
なお、C=0.10mass%以下では、表層は充分に細粒化せず、C=0.30mass%以上では表層部はベイナイト等の硬質層になり、熱処理なしで冷間鍛造、冷間転造することできない。そのためCの範囲は0.10〜0.30mass%とする。
仕上圧延後の水冷速度を50℃/秒以上としながら水冷終了温度の最低値をAr3−50℃とした理由は、水冷終了温度をそれ以下にする冷却を加えると、鋼線材の表層がベイナイト等の硬質層になり、熱処理なしでは冷間鍛造、冷間引抜、冷間転造することできないためである。
続いて空冷帯での冷却速度を1.5℃/秒以上3.0℃/秒以下とする理由は、1.5℃/秒以下では冷却帯上で粒が成長し、表層の粒径を3μm以下とできないからである。一方、冷却帯での冷却速度が3.0℃/秒以上になると、同様に鋼線材表層がベイナイト等の硬質層になり、熱処理なしでは冷間鍛造、冷間引抜、冷間転造することできないためである。
仕上圧延後の水冷速度を50℃/秒以上としながら水冷終了温度の最低値をAr3−50℃とした理由は、水冷終了温度をそれ以下にする冷却を加えると、鋼線材の表層がベイナイト等の硬質層になり、熱処理なしでは冷間鍛造、冷間引抜、冷間転造することできないためである。
続いて空冷帯での冷却速度を1.5℃/秒以上3.0℃/秒以下とする理由は、1.5℃/秒以下では冷却帯上で粒が成長し、表層の粒径を3μm以下とできないからである。一方、冷却帯での冷却速度が3.0℃/秒以上になると、同様に鋼線材表層がベイナイト等の硬質層になり、熱処理なしでは冷間鍛造、冷間引抜、冷間転造することできないためである。
表4に、JIS G0551 鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法により鋼線材の表層部と中心部の圧延直角方向断面を測定して得た、第1相と第2相の平均粒径、最大粒径、アスペクト比を示す。表5には鋼線材の表層部と中心部の硬度をビッカース硬度計により測定した結果を示す。図4には、線材をJIS Z 2286 金属材料の回転曲げ疲労試験に処した結果を示す。実施例による鋼線材の疲労特性が高いことが確認される。
つづいて、上記実施例によって得た鋼線材をもとにボルトを製造した。その製造工程は次の通りである。
鋼線材(φ9)→酸洗→伸線(φ9→φ8)→冷間鍛造(ボルト頭加工)
→冷間転造(ねじ切り)→ボルト(M8)
実施例の線材を上記により成形したM8ボルトについて、ねじ底の光学顕微鏡画像を図5に示す。結晶粒径が1μm以下の超細粒になっている。なお、ねじ底とは図6(×印)に示す箇所である。
また、JIS B 1081ねじ部品-引張疲労試験-試験方法及び結果の評価にて測定した疲れ限度を表6に示す。疲れ限度とは1.0×107回繰り返し荷重を与え、破断しなくなった時点の応力振幅量を示す。実施例(開発例)のボルトにおける疲れ限度の高さが確認される。
鋼線材(φ9)→酸洗→伸線(φ9→φ8)→冷間鍛造(ボルト頭加工)
→冷間転造(ねじ切り)→ボルト(M8)
実施例の線材を上記により成形したM8ボルトについて、ねじ底の光学顕微鏡画像を図5に示す。結晶粒径が1μm以下の超細粒になっている。なお、ねじ底とは図6(×印)に示す箇所である。
また、JIS B 1081ねじ部品-引張疲労試験-試験方法及び結果の評価にて測定した疲れ限度を表6に示す。疲れ限度とは1.0×107回繰り返し荷重を与え、破断しなくなった時点の応力振幅量を示す。実施例(開発例)のボルトにおける疲れ限度の高さが確認される。
Claims (5)
- 表層部分における第1相がフェライト、第2相がパーライトおよび/またはセメンタイトであって、両相についてアスペクト比が2.0以下、平均結晶粒径が3μm以下、最大粒径が10μm以下であることを特徴とする鋼線材。
- C=0.1〜0.3%、Si=0.01〜0.5%、 Mn=0.05〜2.0%を含み、残部は鉄および不可避的不純物にてなることを特徴とする請求項1に記載の鋼線材。
- 表層部分の硬度が断面中心部の硬度の1.1倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼線材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼線材に冷間引抜または冷間転造を施して成形した、ねじ底の結晶粒径が1μm以下のボルト。
- 表面温度が1000℃以下の鋼片に、表面冷却速度が50℃/秒以上となる冷却を断続的に繰り返しながら減面率90%以上の圧延を行って鋼線材とし、その表面の仕上温度をAr3からAr3+30℃内とし、
その後、表面冷却速度が50℃/秒以上の水冷を施して水冷終了温度をAr3〜Ar3−50℃とし、
続いて、表面冷却速度が1.5℃/秒以上3.0℃/秒以下となる空冷を施す
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鋼線材の製造方法。
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JP2007325833A JP2009144230A (ja) | 2007-12-18 | 2007-12-18 | 鋼線材およびボルト、ならびに鋼線材の製造方法 |
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WO2011139117A3 (ko) * | 2010-05-06 | 2012-05-18 | 주식회사 포스코 | 초미세립 고강도 고인성 선재 및 그 제조방법 |
CN107557681A (zh) * | 2017-08-02 | 2018-01-09 | 邢台钢铁有限责任公司 | 一种具有优异变形性能的中低碳钢线材及其生产方法 |
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-
2007
- 2007-12-18 JP JP2007325833A patent/JP2009144230A/ja active Pending
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