最初に、参考例によるエレクトロデポジション素子(ED素子)を参照して、ED素子の基本的な動作について説明する。
図1Aは、参考例によるED素子110を示す断面図である。ED素子110は、主に、対向配置される下側および上側基板10r,20rと、下側および上側基板10r,20rに挟持される電解質層(電解液)50およびシール枠部材70と、を備える。
下側基板10rは、支持基板11の表面全面に、透明電極12rおよび装飾電極13rが順次積層する構造を有する。また、上側基板20rは、支持基板21の表面全面に、透明電極22rが積層する構造を有する。透明電極12r(ないし装飾電極13r)および透明電極22rは、相互に対向するように配置されている。
支持基板11,21には、透光性を有する基板が用いられ、たとえば、青板ガラスなどのプレート基板や、ポリカーボネートなどにより構成されるフィルム基板などが用いられる。透明電極12r,22rは、たとえばインジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)など、透光性および導電性を有する部材により構成される。
装飾電極13rは、ナノメートルサイズの微粒子が堆積することにより構成される。装飾電極13rの表面は、微細な凹凸形状を有しており、少なくとも透明電極12r,22rの表面よりも粗くなっている。装飾電極13rを構成する微粒子は、透光性および導電性を有する部材、たとえばITO等を含む。
シール枠部材70は、樹脂などで構成され、下側ないし上側基板10r,20r面内において、下側および上側基板10r,20rの周縁に沿って閉じた形状で設けられている。電解質層50は、溶媒中にエレクトロデポジション(ED)材料(たとえば銀)が溶解しているものであり、下側および上側基板10r,20r、ならびに、シール枠部材70により画定される空間50aに充填されている。なお、電源装置60が、透明電極12r,22rに接続されており、透明電極12r,22r(ないし装飾電極13r)を介して、電解質層50に種々の電圧を印加することができる。
図1Bおよび図1Cは、定常時(電圧無印加時)若しくは電圧印加時におけるED素子110の光透過スペクトルおよび光反射スペクトルを示すグラフである。図1Bおよび図1Cにおいて、横軸は、ED素子に入射される光の波長(nm)を示し、縦軸は、それぞれ入射光の波長に対する透過率(%)および反射率(%)を示す。
なお、図1Bにおいて、スペクトルToffは、定常時(電圧無印加時)におけるED素子の光透過スペクトルである。スペクトルTonuは、下側基板10r(透明電極12r)に対して上側基板20r(透明電極22r)に負の直流電圧(−2.5V)を印加したときのED素子の光透過スペクトルである。スペクトルTonlは、上側基板20r(透明電極22r)に対して下側基板10r(透明電極12r)に負の直流電圧(−2.5V)を印加したときのED素子の光透過スペクトルである。
また、図1Cにおいて、スペクトルRoffは、定常時(電圧無印加時)におけるED素子の光反射スペクトルである。スペクトルRonuは、下側基板10r(透明電極12r)に対して上側基板20r(透明電極22r)に負の直流電圧(−2.5V)を印加したときのED素子の光反射スペクトルである。スペクトルRonlは、上側基板20r(透明電極22r)に対して下側基板10r(透明電極12r)に負の直流電圧(−2.5V)を印加したときのED素子の光反射スペクトルである。
図1BのスペクトルToffに示されるように、定常時、ED素子の光透過率は極めて高く、ED素子は高光透過状態(透明状態)を実現する。これは、電解質層が概ね透明なためである。なお、電解質層の溶媒の種類を変更する、または、電解質層の厚みを薄くする(下側基板と上側基板との間隔を狭くする)、等により、定常時における光透過スペクトルをよりフラットに近づけることができる。
また、図1CのスペクトルRonuに示されるように、下側基板に対して上側基板に負電圧を印加すると、ED素子の光反射率は極めて高くなり、ED素子は高光反射状態(鏡面状態)を実現する。これは、電解質層中のED材料(たとえば銀)が、電圧印加により、比較的平坦な上側基板の透明電極表面に析出し、その析出したED材料が鏡面を構成するためである。
なお、電圧印加を停止すると、透明電極表面に析出したED材料は、再度、電解質層(溶媒)中に溶解して、透明電極表面から消失する。これによりED素子は再度高光透過状態を実現する。
さらに、図1BのスペクトルTonlおよび図1CのスペクトルRonlに示されるように、上側基板に対して下側基板に負電圧を印加すると、ED素子の光透過率および光反射率は極めて低くなり、ED素子は光吸収状態(遮光状態)を実現する。これは、電解質層中のED材料(たとえば銀)が、電圧印加により、比較的凸凹な下側基板の装飾電極表面に析出するためであり、その析出したED材料に光が入射するとプラズモン吸収(ないし乱反射)が起こるためである。
なお、電圧印加を停止すると、装飾電極表面に析出したED材料は、再度、電解質層(溶媒)中に溶解して、装飾電極表面から消失する。これによりED素子は再度高光透過状態を実現する。
以上のように、ED材料が平坦な面(つまり透明電極表面)に析出すると、そのED材料が析出する領域は鏡面(光反射)領域となり、ED材料が凸凹な面(つまり装飾電極表面)に析出すると、そのED材料が析出する領域は遮光(光吸収)領域となる。ED素子110は、少なくとも、透明状態(光透過状態),鏡面状態(光反射状態)および遮光状態(光吸収状態)の3つの状態を実現し得る。なお、電極間に印加する電圧を、ステップ電圧にすることにより、さらに着色状態(たとえば赤色着色状態および青色着色状態)をも実現することができる。
次に、図2および図3を参照して、第1の実施例によるED素子101の製造方法および基本構造について説明する。
図2Aは、第1の実施例によるED素子101を示す断面図である。このED素子101は、主に、参考例によるED素子110の透明電極の配置や形状等を変更したものである。なお、図2Aでは、シール枠部材や電源装置等の図示を省略している。
ED素子101は、主に、対向配置される下側および上側基板10,20と、下側および上側基板10,20に挟持される電解質層(電解液)50と、を備える。また、下側および上側基板10,20は、それぞれ、支持基板11,21、および、複数の領域に区分される透明電極(導電性膜)12,22を含む構成である。
以下、ED素子101の製造方法について説明する。
まず、下側基板10を作製する。青板ガラスなどの支持基板11を準備する。そして、支持基板11の表面全面に、スパッタリング法や真空蒸着法などにより、透明電極12を形成する。透明電極12は、たとえばITOなどにより形成される。続いて、フォトリソグラフィ法などを用いて、透明電極12を相互に離隔する複数の領域に分割する。
次に、上側基板20を作製する。下側基板10と同様の工程で、支持基板21(青板ガラス等)の表面全面に透明電極22(ITO等)を形成し、さらに透明電極22を複数の領域に分割する。
図2Bおよび図2Cは、それぞれ下側基板10および上側基板20を示す平面図である。下側基板10および上側基板20の平面形状は、たとえば一辺2cmの正方形状である。
図2Bに示すように、下側電極12は、たとえば、主要領域15と、周囲領域17と、に分割される。主要領域15は、たとえば「○」形状の表示領域15aと、表示領域15aに連続し、支持基板11の周縁まで延在する配線領域15bと、を含む。周囲領域17は、たとえば主要領域15と10μmの間隔を空けて、主要領域15を取り囲むように形成されている。なお、周囲領域17には、下側基板10と上側基板20とを対向配置したときに、平面視において上側電極22の配線領域25b(図2C)と重ならないようにするための切欠きパターン17xが設けられている(図2D参照)。
図2Cに示すように、上側電極22は、下側電極12と同様に、たとえば、主要領域25と、周囲領域27と、に分割される。主要領域25は、たとえば「×」形状の表示領域25aと、表示領域25aに連続し、支持基板21の周縁まで延在する配線領域25bと、を含む。周囲領域27は、たとえば主要領域25と10μmの間隔を空けて、主要領域25を取り囲むように形成されている。なお、周囲領域27には、下側基板10と上側基板20とを対向配置したときに、平面視において下側電極12の配線領域15b(図2B)と重ならないようにするための切欠きパターン27xが設けられている(図2D参照)。
図2Dは、下側基板および上側基板を対向配置したときの透視平面図である。下側基板10に設けられる透明電極12のパターンは破線で示されており、上側電極20に設けられる透明電極22のパターンは実線(細線)で示されている。
下側基板10と上側基板20とを対向配置したときに、下側電極12の表示領域15aは、上側電極22(主要領域25と周囲領域27とを合わせた領域)に包含される。なお、下側電極12の配線領域15bは、上側電極22の主要領域25および周囲領域27に重ならない。
また、上側電極22の表示領域25aは、下側電極12(主要領域15と周囲領域17とを合わせた領域)に包含される。なお、上側電極22の配線領域25bは、下側電極12の主要領域15および周囲領域17に重ならない。
再度、図2Aを参照する。
次に、下側または上側基板10,20、たとえば下側基板10に、粒径が数十μm〜数百μm、たとえば50μmであるギャップコントロール剤を散布する。ギャップコントロール剤の密度は、たとえば1〜3個/mm2程度である。なお、ギャップコントロール剤を散布するかわりに、柱状の突起体(リブ)を形成してもかまわない。また、ギャップコントロール剤は、上側基板20に散布してもかまわない。
続いて、下側または上側基板10,20、たとえば下側基板10に、シール枠部材70(図1A参照)を形成する。シール枠部材は、たとえば、矩形枠状の全体的平面形状を有し、紫外線硬化性樹脂により構成される。なお、シール枠部材は、熱硬化性樹脂により構成されていてもかまわない。
次に、電解液(電解質層)50を準備する。そして、その電解液50を、ディスペンサなどを用いて、下側基板10のシール枠部材内側に滴下する。
電解液50は、たとえば、ED材料(AgNO3等)、電解質(TBABr等)、メディエータ(CuCl2等)、電解質の支持塩(LiBr等)、溶媒(DMSO:dimethyl―sulfoxide 等)などにより構成される。なお、さらにゲル化用ポリマ(PVB:polyvinyl―butyral等)などを添加して、ゲル状(ゼリー状)にしてもよい。実施例においては、溶媒であるDMSO中に、ED材料としてAgNO3を50mM、支持電解質としてLiBrを250mM、メディエータとしてCuCl2を10mM、ゲル化用ポリマとして10wt%のPVBを添加したものを用いた。
ED材料は、AgNO3以外にも、たとえば銀を含むAgClO4やAgBrなどを用いることができる。ここで、ED材料とは、透明電極(ないし装飾電極)の表面において、酸化還元反応などにより、その一部が析出・堆積、または、消失する材料をいう。
支持電解質は、ED材料の酸化還元反応等を促進するものであれば限定されない。たとえば、リチウム塩(LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4等)、カリウム塩(KCl、KBr、KI等)、ナトリウム塩(NaCl、NaBr、NaI等)を好適に用いることができる。
メディエータは、銅を含むCuCl2以外にも、たとえば銅を含むCuSO4やCuBr2などを用いることができる。ここで、メディエータとは、銀よりも電気化学的に低いエネルギで酸化・還元する材料をいう。
溶媒は、ED材料等を安定的に保持することができるものであれば限定されない。たとえば、水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、更にはイオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を用いることができる。具体的には、DMSOの他、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を好適に用いることができる。
次に、透明電極12,22が相対するように、上側基板20を、電解液50を滴下した下側基板10に貼合する(図2D参照)。なお、下側および上側基板10,20の貼合は、大気中、真空中ないし窒素雰囲気中で行うことができる。その後、シール枠部材に紫外線を照射して、シール枠部材を硬化させる。
図2Eおよび図2Fは、下側電極12および上側電極22と、電源装置61〜64と、の接続例を示す模式図である。下側電極12の主要領域15および周囲領域17、ならびに、上側電極22の主要領域25および周囲領域27は、それぞれ独立に電源装置61〜64に接続され、それぞれ独立に電源制御(ON/OFF制御)される。電源装置61〜64各々は、たとえば−2.5Vの直流電圧を出力する。以上により、ED素子101が完成する。
図3Aおよび図3Bは、ED素子101に所定の電圧を印加した際の表示パターンを示す平面図である。
上側電極22の主要領域25および周囲領域27を基準電位(コモン電位)とし(図2F)、下側電極12の主要領域15に−2.5Vの負電圧を印加する(電源装置61を接続する,図2E)と、下側電極12の表示領域15aにED材料(銀)が堆積し、図3Aに示すように、表示領域15aの形状に対応する「○」パターンが鏡面状態で表示される。このとき、配線領域15bには、相対する電極が存在しないため(図2D)、ED材料(銀)は堆積せず、配線領域15bに対応するパターンは表示されない。
また、下側電極12の主要領域15および周囲領域17を基準電位(コモン電位)とし(図2E)、上側電極22の主要領域25に−2.5Vの負電圧を印加する(電源装置63に接続する,図2F)と、上側電極22の表示領域25aにED材料(銀)が堆積し、図3Bに示すように、表示領域25aの形状に対応する「×」パターンが鏡面状態で表示される。このとき、配線領域25bには、相対する電極が存在しないため(図2D)、ED材料(銀)は堆積せず、配線領域25bに対応するパターンは表示されない。
透明電極の主要領域と周囲領域との間隔が比較的広い場合、それらの間隙のパターンが視認できるようになり、表示品質が低下しうる。各領域の間隙のパターンを目立たないようにするためには、それらの間隔を50μm以下にすることが好ましく、さらには10μm以下にすることがより望ましい。
なお、下側または上側基板には、さらに装飾電極を設けてもかまわない。装飾電極を設けた場合、表示パターンを遮光状態(黒色状態)で表示することができる。また、ステップ電圧を出力する電源装置を用いて、表示パターンを着色状態で表示することも可能であろう。
装飾電極を設ける場合、基板表面に透明電極を形成した後に、たとえば、ITO微粒子分散液(SIGMA−ALDRICH社製700460)を、スピンコート法やフレキソ印刷法、インクジェット法などを用いて、電極表面(基板表面)に塗布し、その後、250℃で60分間焼成する。これにより、透明電極の表面に、たとえば粒径100nm以下のITO微粒子が堆積してなる装飾電極を形成することができる。
以上のように、上下基板各々において、表示パターンに対応する電極(透明電極の表示領域)と、当該表示電極を取り囲む電極(透明電極の周囲領域)と、を設け、それらの電極間に所定の電圧を印加することにより、少なくとも2種の表示パターンを別々に表示することができる。なお、このような電極の構成は、ED素子のみならず、エレクトロクロミック素子(EC素子)にも適用可能である。
図4Aは、第2の実施例によるEC素子102を示す断面図であり、図4Bおよび図4Cは、それぞれEC素子102の下側基板80および上側基板90を示す平面図である。このEC素子102は、主に、第1の実施例によるED素子101の透明電極の構造(導電性膜の構造)および電解質層の構成を変更したものである。
図4Aに示すように、EC素子102は、主に、対向配置される下側および上側基板80,90と、下側および上側基板80,90に挟持される電解質層(電解液)51と、を備える。また、下側および上側基板80,90は、それぞれ、支持基板11,21、透明電極(導電層)12,22およびエレクトロクロミック層(EC層)81,91を含む構成である。ここでは、導電層(透明電極)とEC層とを含む構成を、導電性膜と見なすことができる。
EC層81,91には、たとえば高分子ビオロゲンなどのエレクトロクロミック材料が用いられる。また、電解質層51には、たとえば、炭酸プロピレンやアセトニトリルなどの溶媒に、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)などの支持塩を混合したものが用いられる。
図4Bに示すように、下側EC層81は、少なくとも透明電極(導電層)の表示領域15a上に形成される。なお、下側EC層81は、透明電極(主要領域15およぶ周囲領域17)の全面に設けてもかまわない。
また、図4Cに示すように、上側EC層91は、少なくとも透明電極(導電層)の表示領域25a上に形成される。なお、上側EC層91は、透明電極(主要領域25およぶ周囲領域27)の全面に設けてもかまわない。
上側電極22の主要領域25および周囲領域27を基準電位とし、下側電極12の主要領域15に負電圧を印加すると、下側EC層81表面の還元反応により、下側EC層81(表示領域15a)の形状に対応する「○」パターンが着色状態(赤紫)で表示される(図3A参照)。なお、下側電極12の主要領域15に正電圧を印加すると、下側EC層81表面の酸化反応により、下側EC層81の着色状態は解消する(下側EC層81は消色する)。
また、下側電極12の主要領域15および周囲領域17を基準電位とし、上側電極22の主要領域25に負電圧を印加すると、上側EC層91表面の還元反応により、下側EC層91(表示領域25a)の形状に対応する「×」パターンが着色状態(赤紫)で表示される(図3B参照)。なお、上側電極22の主要領域25に正電圧を印加すると、上側EC層91表面の酸化反応により、上側EC層91の着色状態は解消する(上側EC層91は消色する)。
次に、図5〜図8を参照して、第3の実施例によるED素子103の製造方法および基本構造について説明する。
図5Aは、第3の実施例によるED素子103を示す断面図である。このED素子103は、主に、第1の実施例によるED素子101の透明電極(特にその周囲領域)の構造(導電性膜の構造)等を変更したものである。
ED素子103は、主に、対向配置される下側および上側基板30,40と、下側および上側基板30,40に挟持される電解質層(電解液)50と、を備える。また、下側および上側基板30,40は、それぞれ、支持基板11,21、主要電極35,45、周囲電極37,47、および、絶縁層39,49を含む構成である。ここでは、導電層(主要電極および周囲電極)と絶縁層とを含む構成を、導電性膜と見なすことができる。
以下、ED素子103の製造方法について説明する。なお、以下では、主に、下側基板の製造方法について説明する。上側基板は、下側基板と同じ要領で製造することができる。
図5Bおよび図5Cは、支持基板11上に、主要電極(導電層)35を形成する様子を示す平面図および断面図である。図5Bに示されるVC−VC断面が、図5Cに示す断面図に対応する。
主要電極35は、たとえば「○」形状の表示電極35aと、表示電極35aに連続し、支持基板11の周縁まで延在する配線電極35bと、を含む。なお、第3の実施例では、主要電極35(表示電極35aおよび配線電極35b)は、対向配置される電極(上側基板に設けられる電極、特に配線電極)の形状や配置によらず、自由に設計することができる。主要電極35は、たとえば、スパッタリング法などにより、支持基板11の表面全面に、ITO膜を形成し、その後、フォトリソグラフィ法などにより、当該ITO膜を成形(パターニング)することで形成することができる。
図6A〜図6Cは、支持基板11および主要電極35の一部の上に、絶縁層39を形成する様子を示す平面図および断面図である。図6Aに示されるVIB−VIB断面が、図6Bに示す断面図に対応し、VIC−VIC断面が、図6Cに示す断面図に対応する。
絶縁層39は、支持基板11上に、表示電極35aを露出し(図6B)、配線電極35bを覆って(図6C)、形成される。また、配線電極35bは、電源装置と接続できるように、たとえば支持基板11の周縁に位置する部分で露出している(図6A)。なお、図6Aにおいて、配線電極35bの絶縁層39に覆われている部分(絶縁層39の中を通る部分)は、破線で示されている。
絶縁層39は、たとえば、フォトリソグラフィ法により成形が可能な有機系絶縁部材からなる。絶縁層39は、当該部材を、スピンコート法などにより、支持基板11上および主要電極35上に塗布し、フォトリソグラフィ法などによりパターニングした後に、熱処理することで形成することができる。
図7A〜図7Cは、絶縁層39の上に、周囲電極(導電層)37を形成する様子を示す平面図および断面図である。図7Aに示されるVIIB−VIIB断面が、図7Bに示す断面図に対応し、VIIC−VIIC断面が、図7Cに示す断面図に対応する。
周囲電極37は、たとえば、スパッタリング法などにより、支持基板11の表面全面に、ITO膜を形成し、その後、フォトリソグラフィ法などにより、当該ITO膜を絶縁層39上に残す(パターニングする)ことで形成することができる。なお、第3の実施例では、周囲電極37の形成において、対向配置される電極(上側基板に設けられる電極、特に配線電極)の形状や配置を考慮する必要はない。
以上により、下側基板30が完成する。同じ要領で、たとえば表示電極が「×」形状である上側基板40も作製する。その後、第1の実施例と同じように、ED材料(銀)を含有する電解液50を挟んで、下側基板30と上側基板40とを貼り合せる。このようにして、第3の実施例によるED素子103が完成する(図5A参照)。
上側基板の主要電極および周囲電極を基準電位とし、下側基板の主要電極に負電圧を印加すると、下側基板の表示電極表面にED材料(銀)が堆積し、当該表示電極の形状に対応する「○」パターン(乗せパターン)が表示される(図3A参照)。また、下側基板の主要電極および周囲電極を基準電位とし、上側基板の主要電極に負電圧を印加すると、上側基板の表示電極表面にED材料(銀)が堆積し、当該表示電極の形状に対応する「×」パターン(乗せパターン)が表示される(図3B参照)。なお、上下基板各々の配線電極には、絶縁層が覆われているため、ED材料(銀)は堆積せず、それらの配線電極に対応するパターンは表示されない。
以上のように、上下基板各々において、主要電極の表示電極部分を露出して配線電極部分を覆う絶縁層を形成し、当該絶縁層上に周囲電極を設けることで、主要電極および周囲電極を形成する際、対向配置される電極の形状や配置を考慮する必要がなくなる。つまり、主要電極および周囲電極の設計自由度が向上する。このような電極構造は、たとえば、7セグメント表示する場合など、主要電極および周囲電極の形状や配置がより複雑になる場合に、特に有用であろう。
図8Aおよび図8Bは、ED素子103に所定の電圧を印加した際の表示パターンを示す平面図である。第3の実施例では、図8Aおよび図8Bに示すような表示パターンも表示することができる。
上側基板の主要電極および周囲電極を基準電位とし、下側基板の周囲電極に負電圧を印加すると、下側基板の周囲電極表面にED材料(銀)が堆積し、図8Aに示すように、「○」状の縁取りパターン(抜きパターン)が表示される。つまり、「○」パターンが透明状態で表示される(その他の領域は鏡面状態で表示される)。
また、下側基板の主要電極および周囲電極を基準電位とし、上側基板の周囲電極に負電圧を印加すると、上側基板の周囲電極表面にED材料(銀)が堆積し、図8Bに示すように、「×」状の縁取りパターン(抜きパターン)が表示される。つまり、「×」パターンが透明状態で表示される(その他の領域は鏡面状態で表示される)。
第3の実施例では、周囲電極に、対向配置する配線電極との重畳を避けるようなパターン(図2Bないし図2Cにおける切欠きパターン17x,27x)を設ける必要がない。このため、所望の縁取りパターン(抜きパターン)も表示することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。たとえば、第3の実施例によるED素子において、表示電極の構造および電解質層の構成を変更し、第2の実施例で示したようなEC素子を形成してもかまわない。その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。