JP2017185483A - 低温作動可能なペロブスカイト型酸化物酸素吸着材およびその製造方法並びに酸素分離方法 - Google Patents

低温作動可能なペロブスカイト型酸化物酸素吸着材およびその製造方法並びに酸素分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】300〜400℃の低作動温度で酸素混合ガスから酸素分離が可能な微粒子化/高比表面積化されたペロブスカイト型酸化物酸素吸着材、およびそのペロブスカイト型酸化物酸素吸着材の製造法、その酸素吸着材を用いた酸素分離方法を提供する。
【解決手段】300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着する、ペロブスカイト型酸化物から成る酸素吸着材であって、ペロブスカイト型酸化物が粉砕によって得られた粒子であり、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が150nm以上300nm以下であり、BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲であることを特徴とする酸素吸着材。このペロブスカイト型酸化物粒子がさらにアニールされていることを特徴とする酸素吸着材。
【選択図】図3

Description

本発明は、300〜400℃の低作動温度で酸素混合ガスから酸素分離が可能なペロブスカイト型酸化物酸素吸着材、およびそのペロブスカイト型酸化物酸素吸着材の製造方法、その酸素吸着材を用いた酸素分離方法に関する。
空気のような酸素含有ガス流から酸素を分離し、除去しまたは濃縮するプロセスは、重要な工業的技術である。このようなプロセスは通常、原料を空気に求めるため、原料コストがかからないことから、酸素に付加される価格は、(1)分離・濃縮設備の設備費、(2)設備の稼動電力費、(3)分離媒体が必要な場合はその価格に依存するのが通常である。
純酸素を分離し製造する場合、製造法の主流は深冷分離法である。深冷分離法は上記(1)設備費および(2)電力費が高いが、スケールメリットが大きいため、純酸素を多量に必要とする製鉄、化学工業などにおいて操業する場合に適している。
酸素富化空気(酸素濃度が20%以上、100%未満の空気)を少量必要とする場合には、吸着分離法が適している。現在、吸着分離法で通常用いられている吸着材はゼオライトである。
純酸素を少量必要とする場合に適応可能な酸素の製造法として、ペロブスカイト型酸化物を酸素分離用吸着材として用いる吸着分離法が検討されている。ペロブスカイト型酸化物を酸素分離用吸着材として用いた酸素製造装置の場合、酸素を吸着/脱着させる効率の観点から、700℃〜800℃またはそれ以上の比較的高温で、運転される。
特許文献1には、250〜800℃の高温で、酸素をペロブスカイト型吸着材に吸着させて、酸素を分離する方法が記載されている。使用するペロブスカイト型吸着材は、構造式がLa1-xSrxCo1-yFey3-z、BaxSr1-xFeO3-z(式中、xは0.0〜1.0であり、yは0.0〜1.0であり、そしてzは>0であって化学量論から決定される)で表され、空気中800℃で、1時間保持して活性化して用いられる。特許文献1には、このペロブスカイト型吸着材は、直径1.6mmφのペレットであることが記載されているが、その比表面積に関しては記載が無い。
特許文献2には、200〜800℃の高温で酸素をペロブスカイト型吸着材に吸着させて酸素を分離する方法が記載されている。使用するペロブスカイト型吸着材は、BaFeO3-δにYまたはInをドーピングしたペロブスカイト型酸化物あり、空気中800℃で、1時間保持して活性化して用いられる。特許文献2には、このペロブスカイト型吸着材は、直径1.6mmφのペレットであることが記載されているが、その比表面積に関しては記載が無い。
特許文献3には、300℃以上800℃以下の温度環境下で、酸素をペロブスカイト型吸着材に吸着させて酸素を製造する方法が記載されている。使用するペロブスカイト型吸着材は、組成式:SrCoxFe1-x3-σ(但し、0.6≦x<0.9、0≦σ≦0.5)で示され、特許文献3には、このペロブスカイト型吸着材の形状、比表面積に関しては記載が無い。
特許文献4には、ペロブスカイト類似酸化物をPSA(Pressure Swing Adsorption)プロセスにおいて酸素吸着材として用い、200〜700℃の温度で作動させることが記載されている。使用するペロブスカイト型吸着材は、構造式が、La1-xSrxCo1-yFey3-z(式中、xは0.5〜1.0であり、yは0.0〜0.5であり、そしてZは>0である)によって表される立方晶ペロブスカイト型酸化物である。特許文献4には、酸素吸着材として使用するペロブスカイト類似酸化物は、粒子が小さくて比表面積が大きいのが望ましいとの記載があり、成形体を切断、切り出し、研磨、粉砕等の加工を施すことによってペレット、顆粒、球等の粒子、粉末等の所望の形状にするとの記載がある。しかし、粒子の表面積に関して具体的な説明は記載されていない。
上述したように、特許文献1〜4には、酸素分離作動温度は200℃〜700℃、800℃と記載されている。下限の200℃は、ペロブスカイト型酸化物を吸着材として用いる酸素分離作動温度としては低温であるものの、上限の700℃、800℃は高温である。また、これらの特許文献に記載の酸素分離作動温度は、酸素分離を行う前の活性化処理としての800℃への加熱を前提としている。従って酸素分離作動温度の下限が200℃であったとしても低作動温度での酸素分離を実現できているとは言えない。
従来技術における、ペロブスカイト型酸化物の酸素分離用吸着材としての検討では、ペロブスカイト型酸化物の組成を変える事による酸素分離能力向上にフォーカスして議論がなされており、ペロブスカイト型酸化物の比表面積に着目した検討はなされてこなかった。
従来のペロブスカイト型酸素分離用吸着材の開発において、ペロブスカイト型酸化物の高比表面積化による低温動作化の検討がなされてこなかった理由は、
(1)ペロブスカイト型酸化物の比表面積の増加は、一般的には吸着材の性能向上に意義があるであろうと漠然とは考えられていても、それが具体的に、吸着材の低温動作化に有効であるとの知見が従来無かった事、
(2)通常、比表面積を増加させる方法は、液相合成法を用いる微粒子合成方法であると考えられる。しかし、液相合成法による低温合成化、それに伴う微粒子化において、吸着材として高特性が期待される高Sr、高Co含有組成のペロブスカイト型酸化物を純度高く製造する事が困難であり、比表面積増加の効果を確認する事が容易では無かった事、
(3)一方、もし高比表面積化に思い至り、そのための手段として、液相合成法ではなく粉砕法を採用したとしても、従来の触媒開発などからの類推で、ペロブスカイト型酸素分離用吸着材を、サブミクロン粒径を狙って粉砕法で調整すると、ペロブスカイト型酸化物は粉砕容易な材料であるので、容易に比表面積10m2/gを超える微粉砕粉末を得ることができる。これは、粉砕のしすぎとなってしまい、この結果、通常の酸素吸着材で検討が進められている600℃程度の作動温度においては、粉砕による高比表面積化は特性の向上ではなく、むしろ特性低下につながるとの結果が得られ、それ以上の検討が進められなかった可能性がある事、
などが推測される。
本願発明者は、ペロブスカイト型酸素分離用吸着材の表面積の、酸素吸着特性に及ぼす影響に着目し検討を行った。そして、ペロブスカイト型酸素分離用吸着材を微粒子化/高比表面積化させる事が、動作温度の低温化に有効ではないかとの着想を得て、当該着想に基づく開発を行った。
特開2008−012439号公報 特開2010−012367号公報 特開2015−093251号公報 特開2005−087941号公報
本発明は、300〜400℃の低作動温度で酸素混合ガスから酸素分離が可能な微粒子化/高比表面積化されたペロブスカイト型酸化物酸素吸着材、およびそのペロブスカイト型酸化物酸素吸着材の製造法を提供する。
本発明者は、ペロブスカイト型酸素分離用吸着材の高比表面積化による低温動作化の検討として、まず初めに、液相合成法によるLSCF1991系のペロブスカイト型複合酸化物の、微粒子化・高比表面積化の検討を進め、合成方法の工夫の結果、ペロブスカイト型酸化物の純度が高く、高比表面積な酸素分離剤を得る事に成功し、当該酸素分離剤の酸素吸着特性を調べる事によって、高比表面積化が、ペロブスカイト型酸素吸着材の低温動作化に大きな効果を有する事を見出した(特願2016−022206号)。しかし、ペロブスカイト型複合酸化物の液相合成法は、合成するペロブスカイト型酸素分離用吸着材の組成毎に、合成のプロセスを調整する必要が有る。より広い組成範囲のペロブスカイト型酸素分離用吸着材を製造する場合においても、微粒子化・高比表面積化された吸着材をより容易に製造可能とする方法の必要性が求められている。検討の結果、本発明では、製造方法として、粉砕法を用いて、低温作動可能なペロブスカイト型酸化物酸素吸着材を得ることができた。
通常は、比表面積の低下、ひいてはせっかく向上させた低温特性の低下につながってしまうと考えて、粉砕後にアニールを組み合わせようとは考えないが、さらに検討の結果、粉砕法によって微粒子化・高比表面積化されたペロブスカイト型酸化物から成る酸素吸着材を、粉砕後に更にアニールすると、適切なアニール条件を選択した場合、意外な事に、単に粉砕したペロブスカイト型酸化物の吸着剤の低温での吸着特性を維持しつつ、耐久性が顕著に向上できる事を見出した。
これらの検討に基づき、本発明は、300〜400℃の低作動温度で酸素混合ガスから酸素分離が可能な微粒子化/高比表面積化されたペロブスカイト型酸化物、およびそのペロブスカイト型酸化物を低熱処理温度で合成するための製造方法、その酸素吸着材を用いた酸素分離方法を提供するものである。
かくして、本発明によれば、下記を提供する:
(1) 300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着するペロブスカイト型酸化物から成る酸素吸着材であって、
前記ペロブスカイト型酸化物が粉砕によって得られた粒子であり、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が150nm以上300nm以下であり、BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲であることを特徴とする酸素吸着材。
(2) 前記ペロブスカイト型酸化物が、下記組成式(A)、
{La(1-x1)Srx1}{Co(1-y1)Fey1}O3-δ(A)
(但し0.7≦x1≦1.0、0.1≦y1≦0.2、δは0<δ<3である)
または下記組成式(B)、
{La(1-x2)Srx2}CoO3-δ(B)
(但し0.7≦x2≦0.9、δは0<δ<3である)
を有するペロブスカイト型酸化物から選択される前記(1)に記載の酸素吸着材。
(3) 300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着するペロブスカイト型酸化物から成る酸素吸着材であって、
前記ペロブスカイト型酸化物が粉砕によって得られた粒子であり、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が100nm以上400nm以下であり、BET比表面積Sが、3≦S≦9(m2/g)の範囲であり、
300℃に加熱し、CO2を30分、水をバブリングさせた空気を30分交互に流通させる事を1サイクルとし、150サイクル繰り返した耐久試験後の質量当たりの酸素吸着速度が、35×10-3mmol−O2/g/分以上であることを特徴とする酸素吸着材。
(4) 前記ペロブスカイト型酸化物が、
下記組成式(A)、
{La(1-x1)Srx1}{Co(1-y1)Fey1}O3-δ(A)
(但し0.7≦x1≦1.0、0.1≦y1≦0.2、δは0<δ<3である)、または
下記組成式(B)、
{La(1-x2)Srx2}CoO3-δ(B)
(但し0.7≦x2≦0.9、δは0<δ<3である)
を有するペロブスカイト型酸化物から選択される前記(3)に記載の酸素吸着材。
(5) 少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末およびFeの粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末aを得る工程、または
少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末bを得る工程、
前記混合粉末aまたはbを、900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成し、ペロブスカイト型構造の相を有する、BET比表面積Sが、1m2/g以下の焼成体を得る工程、
前記焼成体を粉砕し、
BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲であるペロブスカイト型酸化物粒子を得る工程
を含むことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の酸素吸着材の製造方法。
(6) 前記混合粉末aまたはbが、Laの酸化物の粉末をさらに含む前記(5)に記載の製造方法。
(7) 前記900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成する工程が、仮焼と、本焼成から成り、仮焼成を本焼成よりも100℃〜300℃程度だけ低い温度で行う前記(4)または(5)に記載の製造方法。
(8) 少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末およびFeの粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末aを得る工程、または
少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末bを得る工程、
前記混合粉末aまたはbを、900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成し、ペロブスカイト型構造の相を有する、BET比表面積Sが、1m2/g以下の焼成体を得る工程、
前記焼成体を粉砕する工程、
前記粉砕された焼成体粒子を大気中で、700℃〜900℃の温度でアニールし、BET比表面積Sが、3≦S≦9(m2/g)の範囲であるペロブスカイト型酸化物粒子を得ることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載の酸素吸着材の製造方法。
(9) 前記混合粉末aまたはbが、Laの酸化物の粉末をさらに含む前記(8)に記載の製造方法。
(10) 前記900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成する工程が、仮焼と、本焼成から成り、仮焼成を本焼成よりも100℃〜300℃程度だけ低い温度で行う前記(8)または(9)に記載の製造方法。
(11) 前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の酸素吸着剤に、酸素含有ガスを、300℃〜400℃の温度で、接触させて、酸素を選択的に分離する、酸素分離方法。
本発明の第一の態様によれば、300℃〜400℃の非常に低い作動温度で、優れた酸素吸着速度を有して、効率良く酸素を選択的に吸着し、分離する、BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲にあるペロブスカイト型酸化物酸素吸着材が提供される。本発明のペロブスカイト型酸化物酸素吸着材は、作動温度が低く低コストの酸素分離が可能であると同時に、使用後の劣化が低く、その結果耐久性の高く、長寿命の吸着材を提供することができる。
また、本発明の第二の態様によれば、上記ペロブスカイト型酸化物を、アニールすることにより、300℃〜400℃の作動温度で、さらに、優れた酸素吸着速度を有して、効率良く酸素を選択的に吸着し、分離する、BET比表面積Sが、3≦S≦9(m2/g)の範囲であり、耐久試験後の質量当たりの酸素吸着速度が、35×10-3mmol−O2/g/分以上のペロブスカイト型酸化物酸素吸着材が提供される。この酸素吸着剤は、さらに高い耐久性を有しており、特性劣化が大きく抑制できる。
従来、ペロブスカイト型酸化物を酸素分離用吸着材として用いる場合、600℃程度の高温で作動させる必要があり、設備費とランニングコストが共に高価であった。本発明によれば、300〜400℃というペロブスカイト型酸化物の酸素分離作動温度としては非常に低い作動温度で効率良く酸素を選択的に吸着し、分離するので、低コストの酸素分離を行うことができる。
また、優れた酸素吸着特性を示すペロブスカイト型酸化物を、粉砕処理で容易に製造することができ、製造コスト的観点からも優れている。
また、粉砕処理後に、さらにアニールを行うと、単に粉砕しただけよりもさらに高い耐久性を有する吸着剤を得ることができる。
第一の態様の本発明の粉砕によるペロブスカイト型酸化物粒子を、300℃で酸素吸着させた比表面積−吸着速度の関係を示すグラフ。 第一の態様の本発明の粉砕によるペロブスカイト型酸化物粒子を、耐久試験の後で、300℃で酸素吸着させた比表面積−吸着速度の関係を示すグラフ。 第一の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物粒子の顕微鏡写真。 第二の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物粒子のアニール直前の顕微鏡写真。 第二の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物粒子のアニール後の顕微鏡写真。 第二の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物粒子を、耐久試験の後で、300℃で酸素吸着させた比表面積−吸着速度の関係を示すグラフ。
本明細書で用いた用語の意味を以下に示す。
「作動温度」とは、空気を原料として酸素を分離し製造する際に、吸着材であるペロブスカイト型酸化物を加熱する温度である。すなわち、酸素を分離するときの温度を指す。 「熱処理温度」とは、ペロブスカイト型酸化物製造時の温度である。仮焼温度、本焼成温度両者をまとめて、最終的にペロブスカイト型酸化物が経験する最も高い温度を熱処理温度とする。
「仮焼温度」とは、ペロブスカイト型酸化物製造時の温度であって、一回目の熱処理(仮焼)を行う温度を指す。
「本焼成温度」とは、ペロブスカイト型酸化物製造時の温度であって二回目の熱処理(本焼成)を行う温度を指し、この操作を行うことによって、ペロブスカイト型酸化物構造が形成される。仮焼温度よりも高温である。
本明細書で用いる用語「アニール」とは、粉砕されたペロブスカイト型酸化物粒子を、大気中で、200℃/時程度の昇温速度で700℃〜900℃まで加熱し、この温度で一定時間保持する熱処理をいう。保持時間は、アニールによる酸素吸着速度の向上効果が得られる範囲で決めればよいが、通常は1時間程度である。
「酸素吸着特性」とは、「酸素吸着容量」および「酸素吸着速度」の2つの要素を含む。
「酸素吸着容量」は、ある時間内で酸素が吸着可能な量を示し、酸素吸着容量が大きいほど、吸着可能な酸素量が多いことを表す。
「酸素吸着速度」は、酸素吸着開始から1分経過時点での酸素吸着量を示し、酸素吸着速度が大きいほど、短時間で多量の酸素を吸着可能であることを表す。酸素吸着特性は、ペロブスカイト型酸化物の組成、立方晶ペロブスカイト相の純度、および比表面積や粒子形状によって変わる。
本発明のペロブスカイト型酸化物を用いる酸素吸着材においては、酸素分離特性として吸着容量だけではなく、吸着速度も重視している。これは酸素製造時に、吸着/再生切り替え直後の吸着量の立ち上がりが速い方が吸着、再生のサイクルを短時間で行うことが出来て単位時間当たりの酸素製造量を多くすることができるためである。本発明のペロブスカイト型酸化物は、吸着速度が非常に大きいので、酸素分離作動温度300℃において、酸素分圧切り替え後1分程度でほぼ飽和量の酸素を吸着させることが可能である。
本発明で提供する第一の態様のペロブスカイト型酸化物は、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が150nm以上300nm以下であり、BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲にあり、300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着する。
本発明で提供する第二の態様のペロブスカイト型酸化物は、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が100nm以上400nm以下であり、BET比表面積Sが、3≦S≦9(m2/g)の範囲であり、耐久試験後の質量当たりの酸素吸着速度が、35×10-3mmol−O2/g/分以上である。この第二の態様のペロブスカイト型酸化物も300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着する。
(第一の態様のペロブスカイト型酸化物の組成の説明)
第一の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物は、Aサイト中に少なくともSrを含み、Bサイト中に少なくともCoを含む組成であって、規定する平均粒径と、比表面積を有し、300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に効率良く吸着する物であれば、特に限定されないが、SrおよびCoの割合が本発明の範囲より高いもののうち、ペロブスカイト型酸化物の組成がSrCoO3-δの場合、ペロブスカイト型酸化物は六方晶ペロブスカイト構造となり、立方晶ペロブスカイト相の割合が非常に低くなる。酸素吸着特性に影響を及ぼすのは、ブラウンミラライト型や六方晶といったペロブスカイト類似構造を有する相ではなく、立方晶構造を有するペロブスカイト相である。従って立方晶ペロブスカイト相の割合が低い場合、酸素吸着特性が著しく低下する。結果として、300〜400℃という低作動温度での酸素分離が不可能となる。
好ましくは、Aサイト中SrがAサイト中の比率で約70〜100%、Bサイト中にCoがBサイト中の比率で約80〜100%であるペロブスカイト型酸化物である。SrおよびCoの比率がこの範囲外であると、酸素空孔量δが小さくなるため酸素吸着特性が悪い。酸素空孔はペロブスカイト型酸化物の結晶格子中に含まれる酸化物イオンの欠損で、この欠損(空孔)の量こそが吸着可能な酸素量であり、またこの空孔を介して酸素が拡散するため、酸素空孔量δが大きいと酸素吸着特性が高くなる。
本発明のペロブスカイト型酸化物は、AサイトにSrに加えて、Laを含んでいてもよく、またBサイトにCoに加えて、Feを含んでいてもよい。Laは3価、Srは2価、FeおよびCoは4価から3価の間の価数をとる陽イオンとしてそれぞれ存在している。2価のSrによってAサイトが一定量置換されていると、Aサイトが低価数状態となる。すると、BサイトのCoとFeはこれを補う様に価数が変化するが、これと同時に酸化物イオンも、欠損することによって電気的に中性になろうとし、結晶格子中に多量の酸素空孔が生じる。
本発明において好ましいペロブスカイト型酸化物の一つ目の組成範囲は、組成式(A):
{La(1-x1)Srx1}{Co(1-y1)Fey1}O3-δ(A)
但し上式中、0.7≦x1≦1.0、0.1≦y1≦0.2、0<δ<3、で表される。
また本発明において好ましいペロブスカイト型酸化物の二つ目の組成範囲は、組成式(B):
{La(1-x2)Srx2}CoO3-δ(B)
但し上式中、0.7<=x2<=0.9、0<δ<3、で表される。
これらの組成範囲のペロブスカイト型酸化物が好ましい理由は、これらの組成範囲のペロブスカイト型酸化物が、大きな酸素吸着速度を有して優れた酸素吸脱着特性を示すと同時に、ペロブスカイト型構造の安定性が高く、耐久特性に優れているためである。
上記の一つ目の好ましい組成範囲(A)においては、Aサイト中にSrを0.7以上、1以下、Bサイト中にCoを0.8以上、0.9以下含む、SrおよびCoを高い割合で含む組成である。SrまたはCoの割合がこれより低い場合、酸素空孔量δが小さくなり、また酸素の結晶中での拡散速度が低下するため、酸素吸着特性が低下する。またCoの割合がこの範囲よりも外れ、0.9を超える場合には、Feによるペロブスカイト型結晶構造の安定化効果が不足し、耐久性が不足して使用中に吸着特性が低下する場合が生じ得る。この課題を解決するために、二つ目の好ましい組成範囲(B)を提示する。
組成範囲(B)においては、BサイトはCoのみであり、上記の如く、Feによるペロブスカイト型構造の安定化効果が期待できない。このため、組成範囲(B)においては、Aサイト中のSr含有量は0.7以上、0.9以下と、一つ目の組成範囲(A)よりもより限定された範囲となっている。これは、組成範囲(B)においてはペロブスカイト型構造の安定化効果をAサイトのLaのみに負っているためであり、本範囲を外れてSrの量が増え、Laの含有量が低下すると、ペロブスカイト型結晶構造の安定性が不足し、耐久性が不足して使用中に吸着特性が低下する問題を生じる。
組成式(A)および(B)中のδは酸素空孔量を示す。本発明のペロブスカイト型酸化物がとりうるδの値の範囲は0<δ<3である。δ=0では単位格子中に酸素欠損を含まない。δ=0のペロブスカイト型酸化物は存在するが、本発明のペロブスカイト型酸化物の組成では酸素欠損を持たなければ電気的に中性になれないため、δ=0とはならない。δ<0は酸化物イオンが過剰な状態である。そのようなペロブスカイト型酸化物は存在するが、本発明のペロブスカイト型酸化物の組成では主成分の一つであるコバルトの価数が、δ<0とはならないように変化するため、δは常に0以上の値である。
(粒子形状の説明)
第一の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子は、焼成されたペブロスカイト型酸化物を粉砕した粒子であって、4≦S≦6(m2/g)の範囲のBET比表面積を有している。図1は、後述する実施例での実験において説明する、本発明の粉砕によるペロブスカイト型酸化物粒子を、300℃で酸素吸着させた場合の、比表面積−吸着速度の関係を示す。「吸着速度」とは、ガスが切り替わって最初の1分間における酸素吸着量である。図1から分かるように、比表面積が4m2/g以上になると吸着速度が0.03mmol−O2/g/minを超えている。
一方、比表面積が5m2/g以上においては、酸素吸着速度はほぼ0.04mmol−O2/g/min程度で安定化している。このため本発明において、酸素吸着材の比表面積の好適な範囲の下限は、4m2/gとしている。この範囲を下回って比表面積が小さくなると、酸素吸着速度は低下し、酸素分離に必要な時間が長時間化して、好ましくない。
図2は、後述する実施例での実験において説明する、本発明の粉砕によるペロブスカイト型酸化物粒子を、耐久試験の後で、300℃において酸素吸着させた場合の、比表面積−吸着速度の関係を示すグラフである。耐久試験は、酸素吸着材の使用中における吸着特性の劣化現象を、加速して調べるためのものであり、本発明においては、試料を300℃に保持しつつ、CO2を30分流通させ、続いて水をバブリングさせた空気を30分流通させる雰囲気サイクル(1サイクル1時間)を、合計で150サイクル繰り返す。当該耐久試験の後、通常の酸素吸脱着評価を実施して、劣化試験前との変化を調べる。図2から分かるように、比表面積が6m2/gを超えると、耐久試験後では吸着容量の低下が顕著になる事を示している。
図1と図2に示す結果から、本発明のペロブスカイト型酸化物は、BET比表面積が4≦S≦6(m2/g)の範囲で顕著な酸素吸着特性が得られることが分かった。
4m2/gよりも比表面積が低いと、300℃における吸着速度が十分に向上したものが得られない。一方、6m2/gの範囲を超えて比表面積が増加すると、耐久試験前における吸着速度は好ましい値に到達し得るが、上記の耐久試験の結果が示唆する様に、空気中の水分やCO2との反応性が高かったり、使用中に比表面積が早く低下したりして、より材料劣化が早く進むなどの問題が生じる。この材料劣化の原因は、はっきりとはしていないが、製造時にペロブスカイト型酸化物の粉砕が進み過ぎると次のような欠陥が生じると考えられる。
即ち、粉砕によって、ペロブスカイト型酸化物にX線回折による異相の生成などで検出される様な、ペロブスカイト相の分解や変質は生じてはいないものの、酸化物中のカチオンの位置が不正となる、転位などの格子欠陥が多量に導入される。この様な材料を酸素吸脱着に供していると、元々材料中に内在する粉砕に伴う欠陥のエネルギーを解消するために、カチオンの拡散が促進され、これによって酸素吸着材が粒成長して比表面積が低下したり、空気中の水分やCO2との反応性が高くなって材料の分解が生じ、吸着特性の劣化が生じる。
本発明のペロブスカイト型酸化物は、300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に効率良く吸着することができる。従って、本発明の酸素吸着材を用いる事により、300℃〜400℃の温度で、空気などの酸素含有ガス流から酸素を選択的に分離する、優れた酸素分離方法を提供する事が出来る。この酸素吸着材を備えた酸素分離装置を300℃〜400℃の温度で稼働させる事によって、空気などの酸素含有ガス流から酸素を効率よく分離する事が出来る。
上述したように、本発明の酸素分離作動温度は300〜400℃である。本発明のペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度は400℃で飽和するため、これ以上の高温に加熱しても意味がない。さらに本発明のペロブスカイト型酸化物は、低い作動温度域において、特に優れた酸素吸着速度を示す。400℃を超える温度では、特許文献4に記載されているような高い熱処理温度で製造したペロブスカイト型酸化物に対する優位性が失われてしまう。従って、酸素分離作動温度の上限は400℃である。
酸素分離作動温度を徐々に高めた場合、300℃付近までは酸素吸着速度が急激に増大し、その後の増加は比較的緩やかである。300℃を下回る温度では急激に酸素吸着速度が減少し、本発明で酸素吸着速度として定義している一分間の酸素吸着量が読み取れないほど小さくなってしまう。従って、酸素分離作動温度の下限は300℃である。
本発明のペロブスカイト型酸化物は、特許文献4に記載されているような高い熱処理温度で製造したペロブスカイト型酸化物と比べて優れた酸素吸着特性を示すが、特に両者の差が顕著に現れるのは低作動温度においてである。従って酸素分離作動温度の範囲は300〜400℃であるが、好ましくは300〜350℃、より好ましくは300〜320℃である。
粉砕によって得られたペロブスカイト型酸化物粒子のサイズをレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所製SALD−3000S)で測定した。目的のペロブスカイト型酸化物粒子を超音波によって0.2wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させた状態で測定を行い、粒径分布における最大出現比率をとる粒径(モード径)を粒子のサイズ、すなわち等価円直径とした。レーザー回折式粒子径分布測定装置で測定されるサイズは、測定対象物を球体として近似したときの値である。本発明の粒子は必ずしも球体ではなく、板状構造のものも多く見られるが、等価円直径はこの値と同じ程度と考えて差し支えないとし、レーザー回折式粒子径分布測定装置で測定されるサイズを等価円直径とした。
本測定によれば、粉砕前の焼成体の粒度分布は、例えば1μm以下から、10μm程度もしくはそれ以上まで広く分布している。一方、これに粉砕を施すと、本発明の比表面積範囲に到達するまで粉砕をした場合、粒径5μm以上の粒子はほぼ検出されなくなる。
粉砕によって得られたペロブスカイト型酸化物粒子のサイズおよび構造をSEM(Scanning Electron Microscope、JEOL製JSM−6500F)により確認した。本法によれば、本発明の比表面積範囲に到達するまで粉砕された試料においては、粒径5μmを超える粒子はほぼ検出されず、レーザー回折式粒子径分布測定装置の結果と一致した。本法において、10000〜50000倍で3視野以上観察し、1視野あたり5個以上の粒子の厚みおよびサイズをカウントすることにより粒子の等価円直径および構造を求めた。なお、板状粒子の等価円直径を粒子のサイズとした。
比表面積はガス吸着装置(マイクロトラック・ベル製、BELsorp−max)により測定した。測定結果はBET法によって解析し、比表面積を算出した。
本発明においては、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物粉末を合成した上で、これを粉砕法によって適切な表面積の範囲まで微細化させ、優れた特性の酸素吸着材を得る事が特徴である。ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物粉末を合成するための方法としては、機能性セラミックスの分野で広く用いられている、粉末原料を用いる、いわゆる固相合成法に依る事が、原料も安価であり、大量製造も容易で、低コスト化に好ましい。
原料としては、Srについては炭酸塩、もしくは水酸化物から選ぶ事が好ましい。またLa、Co、Feについては、酸化物を用いる事が好ましい。上記の各化合物粉末の平均粒径は、例えば0.5μm〜3μm程度である事が、良好な混合物を得て、均一なペロブスカイト型酸化物を得る上で好ましい。ここで平均粒径とは、原料粉末の粒度分布におけるD50(メジアン径)をいう。固相合成法においては、各原料粉末を所定の配合割合で混合する。この混合物を酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気下で、900℃〜1200℃の温度範囲内の温度で焼成することにより、所望の組成を有するペロブスカイト型酸化物の単一相から構成される原料粉を作製する。
上記の焼成は、1回で行うことも可能であるが、より好ましくは複数回に分けて行い、間に乳鉢、乾式ボールミル、湿式ボールミル、ジェットミルなどによる粉砕過程を挿入する。この粉砕過程を焼成過程の間に挿入することにより、均質で良好な特性の原料粉を得ることが可能となる。焼成を、例えば仮焼成、本焼成の2回に分け、仮焼成は本焼成よりも100℃〜300℃程度だけ低温で行うことが好ましい。
900℃よりも低温の範囲で焼成すると、ペロブスカイト相の形成が不十分な場合が生じる。ペロブスカイト相の形成が不十分であると、酸素吸着特性が低下する。1200℃を超えた温度で熱処理をすると、ペロブスカイトの成分の揮発が生じて組成ずれを起こしたり、後工程の粉砕が行い難くなるなどの問題を生じ得る。
本発明の実施では、複数回の焼成後、乳鉢による粉砕などによって調整し、比表面積が1m2/g以下の焼成体としておく事が好ましい。上述の温度範囲で焼成し、さらに比表面積が1m2/g以下に焼成体を調整しておけば、後工程の粉砕を容易に行うことができ、本発明の提供する優れた特性の酸素吸着材を製造する事が可能となる。
粉砕に供するペロブスカイト型酸化物粉末は、上記の固相合成法で製造したものが、容易にペロブスカイト型酸化物単相の粉末が得られ、原料が比較的安価であり、製造も容易であり、コスト的観点から優れている。一方、液相合成法で製造した粉末であって、ペロブスカイト型酸化物単相の得られている物を用意し、本発明の提供する方法で酸素吸着材を製造する事も可能である。ペロブスカイト型酸化物単相を確実に得るために、液相合成における本焼成温度は1000℃以上とし、比表面積が1m2/g以下に低下している焼成物を、粉砕に供して、本発明の吸着材を得る事が出来る。液相法で合成した粉末において、粉砕前の比表面積の範囲を規定するのは、十分な熱処理を受けて、ペロブスカイト型酸化物の組織が発達した粉末を確保するためであり、また粉砕による比表面積向上によって、十分な酸素吸着速度の向上が得られるようにするためである。比表面積が1m2/gを超える液相合成法によるペロブスカイト型酸化物を粉砕に供した場合、粉砕法による比表面積向上が進み難くなり、本発明の範囲の比表面積を得るために要する時間が長時間になったり、吸着特性の劣化が進みやすくなってしまう問題が生じる。
本願の製造方法においては、粉砕に、直径0.5mm〜0.1mm程度のセラミックスボールを用いる、ビーズミル等の媒体撹拌型粉砕装置を用いることで、容易に前記の微粉化が可能である。粉砕に用いるセラミックスのボールとしては、ボールの摩耗による不純物混入が少ないとの観点から、ジルコニア製のボールを用いることが好ましい。粉砕は水やアルコールを分散媒体に用いた湿式で行う事が好ましい。好ましい粒径の粉末を得るのに必要な粉砕時間は、粉砕装置の方式にも依って変化するが、ビーズミルを用いた場合にはBET比表面積が4.0≦S≦6.0(m2/g)の範囲に調整するのに必要なプロセス時間は15分以上25分以下程度である。粉砕工程の後、分散媒を蒸発させる事で、容易にペロブスカイト型の酸素吸着材を回収する事が可能である。
酸素吸着特性はTG−DTA(熱重量−示差熱分析装置)(Rigaku製Thermo Plus2)により測定した。吸着ガスを空気、脱着ガスを窒素として酸素分圧を変化させ、雰囲気を30分毎に切り替えた際の、増加質量から、単位吸着材であるペロブスカイト型酸化物の質量当たりの酸素吸着速度を算出した。酸素吸着速度は、雰囲気切り替え後1分経過時点での質量変化から算出した。
(第二の態様のペロブスカイト型酸化物の組成の説明)
第二の態様の本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子は、上記第一の態様のペロブスカイト型酸化物の粒子と同様に、焼成されたペブロスカイト型酸化物を粉砕し、この粉砕されたペロブスカイト型酸化物粒子を大気中で、700℃〜900℃の温度でアニールした粒子である。本発明者は、上記の第一の態様のペロブスカイト型酸化物粒子を、更にアニールすると、適切なアニール条件を選択した場合、意外な事に、単に粉砕したペロブスカイト型酸化物の吸着剤の低温での吸着特性を維持しつつ、耐久性が顕著に向上できる事を見出した。
ここで用いる用語「アニール」とは、粉砕されたペロブスカイト型酸化物粒子を、大気中で、200℃/時程度の昇温速度で700℃〜900℃まで加熱し、この温度で一定時間保持する熱処理をいう。保持時間は、アニールによる酸素吸着速度の向上効果が得られる範囲で決めればよいが、通常は1時間程度である。
本発明の第二の態様のペロブスカイト型酸化物は、前記第一の態様と同じ組成(A)または(B)を有する。
第二の態様のペロブスカイト型酸化物の粒子は、3≦S≦9(m2/g)の範囲のBET比表面積を有している。アニールを実施する前の第一の態様のペロブスカイト型酸化物の粒子は、4≦S≦6(m2/g)の範囲のBET比表面積を有していたが、有効な酸素吸着特性を提供するBET比表面積は、3≦S≦9(m2/g)の範囲に拡張された。これは、アニールを実施することにより、第一の態様の粒子が有していた粉砕に伴う上述した欠陥が修復されたことによると考えられる。また、この範囲の平均粒径は100nm以上400nm以下であった。アニールを実施することにより、粉砕したままよりも粒径のより大きい、400nmまで優れた特性の得られる範囲が広がり、有効な酸素吸着特性を提供する平均粒径範囲も拡大した。
第二の態様のペロブスカイト型酸化物も、第一の態様のペロブスカイト型酸化物と同様に、300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に効率良く吸着することができた。ペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度は400℃で飽和するため、これ以上の高温に加熱しても意味がない。さらに本発明のペロブスカイト型酸化物は、低い作動温度域において、特に優れた酸素吸着速度を示す。400℃を超える温度では、特許文献4に記載されているような高い熱処理温度で製造したペロブスカイト型酸化物に対する優位性が失われてしまう。従って、第二の態様のペロブスカイト型酸化物の酸素分離作動温度の上限も400℃である。
第二の態様のペロブスカイト型酸化物も、300℃を下回る温度では急激に酸素吸着速度が減少し、本発明で酸素吸着速度として定義している一分間の酸素吸着量が読み取れないほど小さくなってしまう。従って、酸素分離作動温度の下限は300℃である。
本発明の第二の態様のペロブスカイト型酸化物も、特許文献4に記載されているような高い熱処理温度で製造したペロブスカイト型酸化物と比べて優れた酸素吸着特性を示すが、特に両者の差が顕著に現れるのは低作動温度においてである。従って酸素分離作動温度の範囲は300〜400℃であるが、好ましくは300〜350℃、より好ましくは300〜320℃である。
アニールを実施した後の、第二の態様のペロブスカイト型酸化物粒子のサイズをレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所製SALD−3000S)で測定した。目的のペロブスカイト型酸化物粒子を超音波によって0.2wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させた状態で測定を行い、粒径分布における最大出現比率をとる粒径(モード径)を粒子のサイズ、すなわち等価円直径とした。レーザー回折式粒子径分布測定装置で測定されるサイズは、測定対象物を球体として近似したときの値である。本発明の粒子は必ずしも球体ではなく、板状構造のものも多く見られるが、等価円直径はこの値と同じ程度と考えて差し支えないとし、レーザー回折式粒子径分布測定装置で測定されるサイズを等価円直径とした。
アニールを実施した後の、第二の態様のペロブスカイト型酸化物粒子のサイズおよび構造をSEM(Scanning Electron Microscope、JEOL製JSM−6500F)により確認した。本法によれば、本発明の第二の態様のペロブスカイト型酸化物粒子の比表面積範囲に到達するまで粉砕された試料においては、粒径5μmを超える粒子はほぼ検出されず、レーザー回折式粒子径分布測定装置の結果と一致した。本法において、10000〜50000倍で3視野以上観察し、1視野あたり5個以上の粒子の厚みおよびサイズをカウントすることにより粒子の等価円直径および構造を求めた。なお、板状粒子の等価円直径を粒子のサイズとした。
比表面積も、第一の態様のペロブスカイト型酸化物粒子と同じように、ガス吸着装置(マイクロトラック・ベル製、BELsorp−max)により測定した。測定結果はBET法によって解析し、比表面積を算出した。
本発明の第二の態様のペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物粉末を合成した上で、これを粉砕法によって適切な表面積の範囲まで微細化させ、その後、アニールすることで、優れた耐久性を有する酸素吸着材を得る事が特徴である。
第二の態様のペロブスカイト型酸化物粒子の酸素吸着剤の低温特性が、粉砕の後のアニールによって向上できるメカニズムは、いまだ明らかではない。現状では推定の域を出ないが、下記の如く予想している。粉砕によって比表面積が向上すると同時に、粉砕後の粒子には酸素吸着特性を低下させる要因として働く欠陥が導入されていると考えられる。この欠陥の導入の程度は、600℃での吸着量の、粉砕前に対する粉砕後での低下を目安として知ることが出来る。この欠陥の実態も現時点明確ではないが、たとえば、酸素吸着剤の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察すると、粉砕後の粒子の表面はガサガサに荒れており、比表面積の向上にはつながっていても、ペロブスカイト型構造が部分的に壊れてしまっているのではないかと予想される状態となっている。このような表面領域が、欠陥の例として上げられる。またこのような欠陥は材料として活性な部分であり、第一の態様で記述した耐久試験においては、水蒸気や二酸化炭素と反応し、ペロブスカイトが分解する起点として働くと考えられる。
第一の態様では、このような欠陥の影響は低温特性には現れにくく、長期間使用や、その目安である耐久試験をして初めて知ることが出来ると考えた。また適切な(少量の)粉砕であれば、長期間使用しも悪影響は避けられ、問題にならないと考えていた。しかし第二の態様のアニールの効果に鑑みて、このような欠陥は、実は低温での吸着特性においても影響しているのではないかと考えるべきである。即ち、粉砕後の粒子の表面の荒れた領域では、ペロブスカイト型構造が部分的に壊れてしまって、酸素吸着に寄与していないと予想される。
図4は、アニールを実施する直前の粒子の顕微鏡写真である。図5は、アニール実施後の第二の態様の粒子の写真である。図4では粉砕によって粒子の表面が荒れ、粒子形状も角ばっていて、表面領域に欠陥を多く含んでいることが分かる。一方、図5では粒子表面は滑らかであり、粒子形状も丸みを帯びて、表面領域の欠陥が少なくなっていることが分かる。
粉砕法によるペロブスカイト型酸化物の微粉砕化によって得られた第一の態様の粒子は、低温での吸着特性においては、粉砕に伴う上記欠陥導入、酸素吸着に対して不活性な表面領域の発生による酸素吸着特性に対する損失よりも、粉砕に伴う比表面積向上の効果が勝っていたため、粉砕によって低温特性が向上したと推定できる。一方、粉砕したペロブスカイト型酸化物粒子に対して、比表面積があまり低下しない適切な条件でアニールを行うことによって得られた第二の態様の粒子は、上記の粉砕で導入された欠陥が回復していると考えられる。
走査型電子顕微鏡で観察すると、粒子表面のガサガサに荒れた領域が大幅に減少し、欠陥が回復して平滑になった表面領域が増加している(図5)。これによって、ペロブスカイト型構造が粉砕によって部分的に壊れていた領域も修復され、酸素吸着に有効に働くようになり、比表面積向上による本来の低温特性の向上を、より一層引き出すことが出来る。
第二の態様のペロブスカイト型酸化物粒子は、第一の態様の粉砕されたペロブスカイト型酸化物粒子を大気中で、700℃〜900℃の温度でアニールすることによって得られる。
アニールは、例えば、第一の態様の粉砕された粒子を、アルミナ、ジルコニアなどで出来た容器に入れ、大気中で熱処理を行うことによって実施される。熱処理の加熱と冷却は200℃毎時程度の速度で行い、保持温度は700℃〜900℃の温度とする、保持時間は熱処理による耐久性の向上効果が得られる範囲で決めればよく、通常は1時間程度で十分である。
図6は、後述する実施例での実験において説明する、本発明の粉砕によるペロブスカイト型酸化物粒子を、さらにアニールした後のペロブスカイト型酸化物粒子、耐久試験の後で、300℃において酸素吸着させた場合の、比表面積−吸着速度の関係を示すグラフである。耐久試験は、酸素吸着材の使用中における吸着特性の劣化現象を、加速して調べるためのものであり、本発明においては、試料を300℃に保持しつつ、CO2を30分流通させ、続いて水をバブリングさせた空気を30分流通させる雰囲気サイクル(1サイクル1時間)を、合計で150サイクル繰り返す。当該耐久試験の後、通常の酸素吸脱着評価を実施して、劣化試験前との変化を調べる。図6から分かるように、比表面積が9m2/gを超えると、耐久試験後では吸着容量の低下が顕著になる事を示している。
図6に示す結果から、本発明のペロブスカイト型酸化物は、BET比表面積が3≦S≦9(m2/g)の範囲で耐久試験後においても顕著な35×10-3mmol−O2/g/分以上の酸素吸着特性が得られることが分かった。
(第一の態様のペロブスカイト型酸化物を用いる酸素吸着剤)
酸化ランタン(La23)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化コバルト(Co34)、酸化鉄(Fe23)を、表1に示した組成になる様に秤量し、5φのジルコニアボールを用い、エタノールを分散媒として湿式ボールミル混合した。得られた混合粉を角サヤに入れて空気雰囲気で、表1に示した仮焼温度で12時間焼成した。得られた仮焼粉をボールミルで解砕し、再び角サヤに入れて空気雰囲気で、表1に示した本焼成温度で5時間焼成した。得られた本焼成体を再度ボールミルで解砕して、微粉砕用のペロブスカイト型酸化物粉末とした。
得られたペロブスカイト型酸化物粉末を、直径0.2mmφのジルコニアボールを用い、エタノールを分散媒として、湿式ビーズミル粉砕を行った。粉砕後、分散媒を乾燥させ、目的とするペロブスカイト型酸化物粒子を回収し、特性評価に供した。表1に、湿式ビーズミル粉砕前と粉砕後でのBET比表面積、およびSEMによる湿式ビーズミル粉砕後の平均粒径を示す。粉砕後の比表面積は、湿式ビーズミルの粉砕時間や粉砕速度を調整する事で変化させた。
得られたペロブスカイト型酸化物粒子の300℃における酸素吸着速度を、TG−DTAにより測定した。また得られたペロブスカイト型酸化物粒子の一部を300℃に加熱し、CO2を30分、水をバブリングさせた空気を30分交互に流通させる事を1サイクルとし、合計150サイクルの雰囲気処理を行って、耐久試験とした。耐久試験の後、この耐久試験粉の300℃における酸素吸着速度を、TG−DTAにより測定した。表1に、湿式ビーズミル後の粉砕粉と、耐久試験後の耐久試験粉の酸素吸着速度を示した。
比較例1〜6と、実施例1〜3は、ペロブスカイト型酸化物の組成、仮焼温度、本焼成温度、粉砕前の比表面積を同一とし、湿式ビーズミルの粉砕条件を変えて粉砕後の比表面積を変化させた場合の結果である。実施例1〜3は、第一の態様の本発明の範囲内の比表面積であり、優れた酸素吸着速度を粉砕粉の段階と、耐久試験の後においても有している。これに対し、比較例1と2は、粉砕後の比表面積が低く、第一の態様の本発明の範囲外である。このため粉砕粉の酸素吸着速度が低く、性能が低い。一方、比較例3〜6は、第一の態様の本発明の範囲よりも湿式ビーズミルの微粉砕後の比表面積が高い例である。これらにおいては、粉砕粉の吸着速度は、実施例1〜3と遜色ない値となっているが、耐久試験の後の酸素吸着速度が大幅に低下してしまっており、第一の態様の本発明の範囲外である。比較例3〜6の耐久試験後の吸着速度の低下は、湿式ビーズミルの粉砕過程において粉砕を行い過ぎたため、酸素吸着材に多大な格子欠陥などが導入されてしまい、これらが耐久試験中の劣化を促進したためと考えている。
実施例4と5は、本発明の組成範囲内において、ペロブスカイト型酸化物の組成を、実施例1〜3と異なるように変化させた例である。いずれにおいても、粉砕粉と耐久試験粉の酸素吸着速度が高く保たれている。尚、実施例5においては、AサイトにLaを含有していないが、Feのペロブスカイト相の安定化効果によって、ペロブスカイト相が得られており、高い吸着特性が得られている。一方、比較例7は、本発明のペロブスカイト型酸化物の組成範囲を外れてSrの含有量が少なく、Feの含有量が多く、また粉砕後の比表面積も第一の態様の本発明の範囲を外れて小さい。このため、比較例の粉砕粉の酸素吸着速度は低く、耐久試験後の吸着速度は粉砕粉の値と大きく変化してはいないものの、低い値となっている。
実施例6と7は、本発明のペロブスカイト型酸化物の組成範囲内において、Feを含まないペロブスカイト型酸化物の組成を変化させた例である。Feを含んでいなくても、Laのペロブスカイト相の安定化効果によって、ペロブスカイト相が得られており、高い吸着特性が得られている。一方比較例8と9は、実施例6、7と同様にFeを含まないペロブスカイト型酸化物である。比較例8は本発明の組成範囲から外れてSrの含有量が少なくこのため、比較例8の粉砕粉の酸素吸着速度は低く、耐久試験後の吸着速度は粉砕粉の値と大きく変化してはいないものの、低い値となっている。一方、比較例9はSrの含有量が本発明の組成範囲を外れて多い。このため、ペロブスカイト相を安定化させる効果を有するカチオンを含有しておらず、ペロブスカイト相が得られにくい。また当該比較例では、本発明の製造条件を外れ、焼成を本発明の範囲よりも低温の800℃で1回だけ実施しており、粉砕も不足していて、第一の態様の本発明の範囲よりも酸素吸着材の比表面積が小さい値にとどまっている。このため比較例9においては、粉砕粉の吸着特性が極めて低く、耐久試験後においても同様の結果となっている。
比較例10では、組成は本発明の範囲内であるものの、本発明の製造方法の温度範囲を超えて本焼成の温度が高く、この結果として粉砕され難い粉末が出来てしまい、粉砕後の比表面積は第一の態様の本発明の範囲外で小さい。このため比較例10においては、粉砕粉の吸着特性が極めて低く、耐久試験後においても同様の低吸着速度特性の結果となっている。
上記の実施例は、TG−DTAにおいて吸着ガスを空気、脱着ガスを窒素として酸素分圧を変化させ、酸素吸着速度を評価している。これに対し実機として、実験用のPSAシステムを用い、実施例1で得られたペロブスカイト型酸化物粉末を用いて、300℃〜400℃の温度で、吸着分離試験を行った(実施例8)。この際、酸素の脱着を、窒素を流して酸素分圧を下げるのではなく、真空ポンプを利用して酸素分圧を低下させ、真空ポンプからの排気ガスを製品の酸素ガスとして回収して、酸素の脱着を、酸素分圧で確認した。実施例8で用いた吸着材は、第一の態様の本発明の範囲内の吸着材であり、これを用いて、高い酸素吸着速度が得られたことから、本発明の提供する酸素分離方法は、実稼働において効果が得られる事が確認された。
(第二の態様のペロブスカイト型酸化物を用いる酸素吸着剤)
酸化ランタン(La23)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化コバルト(Co34)、酸化鉄(Fe23)を、表2に示した組成になる様に秤量し、5φのジルコニアボールを用い、エタノールを分散媒として湿式ボールミル混合した。得られた混合粉を角サヤに入れて空気雰囲気で、表2に示した仮焼温度で12時間焼成した。得られた仮焼粉をボールミルで解砕し、再び角サヤに入れて空気雰囲気で、表2に示した本焼成温度で5時間焼成した。得られた本焼成体を再度ボールミルで解砕して、微粉砕用のペロブスカイト型酸化物粉末とした。
得られたペロブスカイト型酸化物粉末を、直径0.2mmφのジルコニアボールを用い、エタノールを分散媒として、湿式ビーズミル粉砕を行った。粉砕後、分散媒を乾燥させ、目的とするペロブスカイト型酸化物粒子を回収し、特性評価に供した。表2に、湿式ビーズミル粉砕前と粉砕後でのBET比表面積を示す。粉砕後の比表面積は、湿式ビーズミルの粉砕時間や粉砕速度を調整する事で変化させた。
得られた粉砕粉をジルコニア製の容器に入れ、表2に示すアニール温度で1時間熱処理した。
アニール後のペロブスカイト型酸化物粒子の300℃における酸素吸着速度を、TG−DTAにより測定した。またアニール後のペロブスカイト型酸化物粒子の一部を300℃に加熱し、CO2を30分、水をバブリングさせた空気を30分交互に流通させる事を1サイクルとし、合計150サイクルの雰囲気処理を行って、耐久試験とした。耐久試験の後、この耐久試験粉の300℃における酸素吸着速度を、TG−DTAにより測定した。表2に、アニール後の粉砕粉(耐久試験前)と、耐久試験粉(耐久試験後)の酸素吸着速度を示す。表2中、第一の態様の実施例、比較例と区別するために、実施例を実施例2−1〜2−7と表し、比較例を比較例2−1〜2−4と表す。
表2において、比較例2−1と参考例2−1、実施例2−2〜2−4は、ペロブスカイト型酸化物の組成、仮焼温度、本焼成温度、粉砕前と後の比表面積は、第一の態様の結果を示す表1の実施例3と同等であるが、アニール温度がそれぞれ異なっている。
参考例2−1は、本発明の第二の態様の製造方法のアニール温度の下限、700℃よりも低温の600℃にてアニールを行っているため、表1の実施例3とアニール前の比表面積は同等の特性となっている。アニール前のこれらの特性は第一の態様と同等であるが、アニール温度が低いため、アニールによる耐久試験後の酸素吸着速度の向上効果を発現できていない。
実施例2−2〜2−4は、第二の態様の本発明の製造方法の範囲内のアニール温度でアニールを行っているため、参考例2−1よりも更に優れた特性が、アニール粉の段階と、耐久試験の後の耐久試験粉おいて共に得られている。
比較例2−1は、アニール温度が第二の態様の本発明の製造方法の条件よりも高温であり、アニール後の比表面積は、アニール温度が600℃の参考例2−1で示す値よりも小さくなっている。このためアニール粉と、耐久試験後の耐久試験粉において共に、酸素吸着速度の特性が低下している。
比較例2−2は、アニール温度は800℃であるが、湿式ビーズミルの粉砕後とアニール後の比表面積が共に、アニール温度が600℃の参考例2−1の値よりも小さい。このためアニール粉と、耐久試験後の耐久試験粉において共に、酸素吸着速度の特性が低い。
実施例2−5は、湿式ビーズミル後の粉砕粉の比表面積が実施例2−2〜2−4よりも、更に増加しており、優れた酸素吸着速度がアニール粉と、耐久試験後の耐久試験粉において共に得られている。一方、比較例2−3は、実施例2−5よりも粉砕粉の比表面積が、本発明の第一の態様の範囲を超えてさらに増加している。しかし、この場合にはアニール後には逆に、比表面積が小さくなっている。このためアニール粉と、耐久試験後の耐久試験粉において共に、酸素吸着速度の特性が低い。
実施例2−6と2−7は、本発明の範囲内で組成を変化させた場合の例を示す。実施例2−2〜2−55と組成を変化させても、アニール粉と、耐久試験後の耐久試験粉において共に、本発明の範囲内の高い酸素吸着速度が得られている。
比較例2−4は、湿式ビーズミル後の粉砕粉の比表面積が大きく、アニール温度が400℃と低い例である。アニール後の比表面積は、本発明の第二の態様の範囲を超えて大きくなっている。この場合、アニール後の酸素吸着速度特性は高いものの、耐久試験後の耐久試験粉特性は大きく低下している。すなわち、優れた耐久性が得られていない。

Claims (11)

  1. 300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着するペロブスカイト型酸化物から成る酸素吸着材であって、
    前記ペロブスカイト型酸化物が粉砕によって得られた粒子であり、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が150nm以上300nm以下であり、BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲であることを特徴とする酸素吸着材。
  2. 前記ペロブスカイト型酸化物が、下記組成式(A)、
    {La(1-x1)Srx1}{Co(1-y1)Fey1}O3-δ(A)
    (但し0.7≦x1≦1.0、0.1≦y1≦0.2、δは0<δ<3である)
    または下記組成式(B)、
    {La(1-x2)Srx2}CoO3-δ(B)
    (但し0.7≦x2≦0.9、δは0<δ<3である)
    を有するペロブスカイト型酸化物から選択される請求項1に記載の酸素吸着材。
  3. 300℃〜400℃の作動温度で酸素を選択的に吸着するペロブスカイト型酸化物から成る酸素吸着材であって、
    前記ペロブスカイト型酸化物が粉砕によって得られた粒子であり、少なくともSrおよびCoを含んで成り、平均粒径が100nm以上400nm以下であり、BET比表面積Sが、3≦S≦9(m2/g)の範囲であり、
    300℃に加熱し、CO2を30分、水をバブリングさせた空気を30分交互に流通させる事を1サイクルとし、150サイクル繰り返した耐久試験後の質量当たりの酸素吸着速度が、35×10-3mmol−O2/g/分以上であることを特徴とする酸素吸着材。
  4. 前記ペロブスカイト型酸化物が、
    下記組成式(A)、
    {La(1-x1)Srx1}{Co(1-y1)Fey1}O3-δ(A)
    (但し0.7≦x1≦1.0、0.1≦y1≦0.2、δは0<δ<3である)、または
    下記組成式(B)、
    {La(1-x2)Srx2}CoO3-δ(B)
    (但し0.7≦x2≦0.9、δは0<δ<3である)
    を有するペロブスカイト型酸化物から選択される請求項3に記載の酸素吸着材。
  5. 少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末およびFeの粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末aを得る工程、または
    少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末bを得る工程、
    前記混合粉末aまたはbを、900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成し、ペロブスカイト型構造の相を有する、BET比表面積Sが、1m2/g以下の焼成体を得る工程、
    前記焼成体を粉砕し、BET比表面積Sが、4≦S≦6(m2/g)の範囲であるペロブスカイト型酸化物粒子を得る工程
    を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の酸素吸着材の製造方法。
  6. 前記混合粉末aまたはbが、Laの酸化物の粉末をさらに含む請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成する工程が、仮焼と、本焼成から成り、仮焼成を本焼成よりも100℃〜300℃程度だけ低い温度で行う請求項4または5に記載の製造方法。
  8. 少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末およびFeの粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末aを得る工程、または
    少なくともSrを含む炭酸塩、少なくともSrを含む水酸化物から選ばれる1種以上の粉末と、Coの酸化物の粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合して混合粉末bを得る工程、
    前記混合粉末aまたはbを、900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成し、ペロブスカイト型構造の相を有する、BET比表面積Sが、1m2/g以下の焼成体を得る工程、
    前記焼成体を粉砕する工程、
    前記粉砕された焼成体粒子を大気中で、700℃〜900℃の温度でアニールし、BET比表面積Sが、3≦S≦9(m2/g)の範囲であるペロブスカイト型酸化物粒子を得ることを特徴とする、請求項3または4に記載の酸素吸着材の製造方法。
  9. 前記混合粉末aまたはbが、Laの酸化物の粉末をさらに含む請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記900℃〜1200℃の温度範囲内で複数回焼成する工程が、仮焼と、本焼成から成り、仮焼成を本焼成よりも100℃〜300℃程度だけ低い温度で行う請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素吸着剤に、酸素含有ガスを、300℃〜400℃の温度で、接触させて、酸素を選択的に分離する、酸素分離方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109079149A (zh) * 2018-08-30 2018-12-25 深圳市晶莱新材料科技有限公司 一种生产Fe-Mn-Pt金属粉末的方法及设备

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