本明細書では複数の種類の温度について記載しているため、それぞれの意味を以下に示す。
作動温度とは、空気を原料として酸素を分離し製造する際に、吸着剤であるペロブスカイト型酸化物を加熱する温度である。すなわち、酸素を分離するときの温度を指す。熱処理温度とは、ペロブスカイト型酸化物製造時の温度である。仮焼温度、本焼成温度両者をまとめて、最終的にペロブスカイト型酸化物が経験する最も高い温度熱処理温度とする。仮焼温度とは、ペロブスカイト型酸化物製造時の温度であって、一回目の熱処理(仮焼)を行う温度を指す。本焼成温度とは、ペロブスカイト型酸化物製造時の温度であって二回目の熱処理(本焼成)を行う温度を指し、この操作を行うことによって、ペロブスカイト型酸化物構造が形成される。仮焼温度よりも高温である。
本発明において酸素吸着特性とは、酸素吸着容量および酸素吸着速度のふたつの要素を含む。酸素吸着容量は、ある時間内で酸素が吸着可能な量を示し、ペロブスカイト型酸化物の酸素空孔量δに依存するため、酸素吸着容量にはペロブスカイト型酸化物の組成が大きく影響する。酸素吸着容量が大きいほど、吸着可能な酸素量が多いことを表す。一方酸素吸着速度は、酸素吸着開始から一分経過時点での酸素吸着量を示し、酸素吸着速度が大きいほど、短時間で多量の酸素を吸着可能であることを表す。酸素吸着速度には、ペロブスカイト型酸化物の組成、立方晶ペロブスカイト相の純度、および比表面積や結晶子径、粒子形状が影響を及ぼす。
本発明において、粒界とは、結晶子同士の接する界面を指す。「結晶子」は、XRD(X‐ray diffraction)測定によりそのサイズ(直径)が観測され、単結晶とみなすことのできる最大単位である。本発明において「粒径」とは、結晶子が多数集合することよりなる一次粒子が間隙を含む状態でさらに複数集まってなる粒子集合体の直径を指す。この「粒径」は、SEM(Scanning Electron Microscope)観察および粒度分布測定によりそのサイズが観測される。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物およびその粒子集合体は、立方晶ペロブスカイト相の割合が高く、比表面積が高く、小さな結晶子径、すなわち多量の粒界を有し、さらに気孔率が大きくガス拡散性の高い形状を有するため、低作動温度(300〜400℃)でも優れた酸素分離特性を示す。
作動温度を低下させることにより酸素分離時にかかる電力コストが低減し、安価な酸素分離が可能となることはこれまでも知られていたが、本発明で実現する300〜400℃という低温でも酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物は存在しなかった。さらに本発明に係るペロブスカイト型酸化物は300℃において15×10-3O2mmolg-1min-1という酸素吸着速度を有するが、これは、従来、酸素分離用吸着材として知られていたペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度と比較して10倍もの大きな値であり、従来の高温で熱処理することにより製造したペロブスカイト型酸化物を酸素分離用吸着材として用いた場合から予想され得ない非常に大きな値である。
特許文献1では、La、Sr、Co、Feからなるペロブスカイト型酸化物の製造法として、1000℃という高温での熱処理を行う方法が記載されている。従って、600〜700℃の低い熱処理温度でLa0.1Sr0.9Co0.9Fe0.1O3-δペロブスカイト型酸化物を製造する方法は記載されていない。
特許文献2および3記載のペロブスカイト型酸化物は、SrおよびCoを高い割合で含む組成であることを必要としていない。特許文献2および3の実施例に記載のペロブスカイト型酸化物のうち、SrおよびCoの割合の比較的高い組成は(La0.7Sr0.3)CoO3およびLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3であり、それぞれ熱処理温度700℃および600℃で製造可能と記載されている。これよりも高い割合でSrおよびCoを含む組成のペロブスカイト型酸化物の製造法については、記載されていない。従って本発明とは全く異なるペロブスカイト型酸化物に関するものである。
特許文献4記載のペロブスカイト型酸化物は、排ガス浄化触媒やNOx吸着材を用途として想定しているため、Pt、Pdを構成元素として含むことが必須であるのに対し、本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、これらを構成元素として含まない。従って本発明のような、SrおよびCoを高い割合で含む組成のペロブスカイト型酸化物を低温での熱処理で得る方法は記載されていない。また特許文献4に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法は、金属硝酸塩およびクエン酸を原料としているものの、一回目の熱処理をクエン酸の分解温度以上である350℃以上、500℃以下、真空中あるいは不活性ガス中で行い、二回目の熱処理を700℃以上、950℃以下、大気中で行う製造法であり、当該製造法では本発明の提供する300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
特許文献5記載のペロブスカイト型酸化物は、SrおよびCoを高い割合で含む組成であることを必要としていない。特許文献5の実施例に記載のペロブスカイト型酸化物の組成はLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3であり、熱処理温度500℃で製造可能と記載されている。これよりも高い割合でSrおよびCoを含む組成のペロブスカイト型酸化物の製造法については、記載されていない。従って当該製造法では、本発明の提供する300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
特許文献6記載のペロブスカイト型酸化物は、圧電素子として用いるため、Pb、Zr、Tiを構成元素として含むことが必須であるのに対し、本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、これらを構成元素として含まない。従って本発明のような、SrおよびCoを高い割合で含む組成のペロブスカイト型酸化物を製造する方法は記載されていない。また特許文献6に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法は、Pb、Zr、Tiからなる金属化合物に加え、キレート剤(EDTA、NTA、DCTA、DTPA、EGTA、PDTA、BDTA、など)を原料として用いているものの、目的のペロブスカイト型酸化物の組成は本発明とは全く異なるため、当該製造法では、本発明の提供する300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
特許文献7記載のペロブスカイト型酸化物は、BaTiO3、SrTiO3、PbTiO3、BaZrO3、BaSnO3、PbZrO3、SrZrO3、等が好ましい組成として挙げられており、特に好ましい組成はBaTiO3、SrTiO3と記載されている。本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、SrおよびCoを高い割合で含み、これらとは全く異なる組成であるため、特許文献7記載のペロブスカイト型酸化物は、本発明とは全く異なるものである。
また特許文献7には、細孔径が結晶子径よりも大きい多孔質なペロブスカイト型酸化物を製造する方法が記載されている。好ましい結晶子径の範囲として1〜50nmの結晶子を有し、さらにこれよりも大きな細孔径を有する多孔質なペロブスカイト型酸化物の製造法が示されている。本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型酸化物自体は多孔質ではなく、上述したようにペロブスカイト型酸化物の組成も異なるため、特許文献7に記載のペロブスカイト型酸化物は、本発明とは全く異なる。従って、特許文献7記載のペロブスカイト型酸化物の製造法を用いても、本発明の提供する、5nm以上、30nm以下、という精密に制御された結晶子径であって、気孔率75%以上のガス拡散性が高い形状を有するペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。従って、300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
特許文献8記載のペロブスカイト型酸化物は燃料電池用触媒として用いるためのものであり、ペロブスカイト型酸化物の構成元素としてLa、Sr、Ca、Co、Fe、が含まれているものの、SrおよびCoを高い割合で含む組成であることを必要としていない。特許文献8の実施例に記載のペロブスカイト型酸化物の組成はLaFeO3、La(Fe0.7Co0.3)O3であり、これよりも高い割合でSr、Coを含む組成のペロブスカイト型酸化物の製造法は記載されていない。
さらに特許文献8には、結晶子径20nm以下のペロブスカイト型酸化物粒子の製造法が記載されているが、このペロブスカイト型酸化物粒子はカーボン担体に担持された状態で得られるものであり、単独のペロブスカイト型酸化物粒子の結晶子径を20nm以下にコントロールする製造法は記載されていない。従って、特許文献8に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法を用いても、本発明の提供する、5nm以上、30nm以下、という精密に制御された結晶子径であって、気孔率75%以上のガス拡散性が高い形状を有するペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。従って、300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
(ペロブスカイト型酸化物の組成の説明)
本発明に係るペロブスカイト型酸化物はAサイト中にSrを0.7以上、1以下(SrをCaで置換している場合には、SrとCaの合計比率が0.7以上、1以下)、Bサイト中にCoを0.6以上、1未満含む、SrおよびCoを高い割合で含む組成である。SrおよびCoの割合がこれより低い、つまりAサイト中Srが0.7未満、Bサイト中にCoが0.6未満の場合、酸素空孔量δが小さくなるため酸素吸着特性が悪い。酸素空孔はペロブスカイト型酸化物の結晶格子中に含まれる酸化物イオンの欠損で、この欠損(空孔)の量こそが吸着可能な酸素量であり、またこの空孔を介して酸素が拡散するため、酸素空孔量δが大きいと酸素吸着特性が高くなる。ペロブスカイト型酸化物中、LaおよびFeは3価、SrおよびCoは2価の陽イオンとしてそれぞれ存在している。2価のSrおよびCoによってAサイト、Bサイトがそれぞれ多量に置換されていると、Aサイト、Bサイトが低価数状態となる。すると酸化物イオンは、欠損することによって電気的に中性になろうとし、結晶格子中に多量の酸素空孔δが生じる。以下に記載するようにSrの一部はCaで置換されていてもよい。この場合は、組成式(I)のAサイト中Sr対応部分は、(Sr1-αCaα)xとなり、Aサイト中でSrとCaとの合計比率が、0.7以上、1以下となる。Srの一部はCaで置換されていてもよいが、されていなくてもよい。
しかしSrおよびCoの割合が本発明の範囲より高いもののうち、ペロブスカイト型酸化物がAサイトにLaのみしか含まない場合には、Coの割合が高くとも酸素吸着特性は低下する。これはSrよりもイオン半径の小さいLaにAサイトが全量置き換わることで、ペロブスカイト型酸化物の単位胞が小さくなり、酸化物イオンが拡散しづらくなるためである。
またSrおよびCoの割合が本発明の範囲より高いもののうち、ペロブスカイト型酸化物の組成がSrCoO3-δの場合、ペロブスカイト型酸化物は六方晶ペロブスカイト構造となり、立方晶ペロブスカイト相の割合が非常に低くなる。酸素吸着特性に影響を及ぼすのは、ブラウンミラライト型や六方晶といったペロブスカイト類似構造を有する相ではなく、立方晶構造を有するペロブスカイト相である。従って立方晶ペロブスカイト相の割合が低い場合、酸素吸着特性が著しく低下する。結果として、300〜400℃という低作動温度での酸素分離が不可能となる。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物では、Srの一部はCaで置換されていてもよい。置換する割合(α)は、Srに対して0以上、0.5以下である。Srはペロブスカイト型酸化物製造段階で周囲の二酸化炭素と容易に結合し、炭酸ストロンチウムを不純物として生ずる。またSrの原料である硝酸ストロンチウムはその他の金属硝酸塩と比較して融点が高い(硝酸ストロンチウムの融点570℃、その他La、Co、Feの融点は100℃以下)ため分解しづらく、熱処理しても硝酸塩が残留しやすい。残留すると金属イオンの均質性が低下し、金属イオンが均質な状態で一斉にペロブスカイト型酸化物を形成するのを阻害し、不純物を生じやすくなるため、立方晶ペロブスカイト相の純度が低下する。そこで硝酸ストロンチウムよりも融点の低い硝酸カルシウム(融点561℃)に一部置換することで、硝酸ストロンチウムの残留による金属イオンの均質性低下を抑え、立方晶相の生成を促進可能である。また硝酸カルシウムも周囲の二酸化炭素と結合し炭酸カルシウムを生ずるが、炭酸カルシウムの融点(825℃)は炭酸ストロンチウム(1497℃)よりも低く、炭酸塩が生成してしまったとしても分解しやすいことから、立方晶ペロブスカイト相の割合を向上させることが可能である。通常、CaはSrよりも酸素吸着特性を低下させるため、Srを置換する元素としては用いられなかった元素である。これは、CaはSrと価数は同じであるがイオン半径が小さく、SrがCaに置き換わるとペロブスカイト型酸化物の単位胞が小さくなり、酸化物イオンが拡散しづらくなるためである。しかしながら、置換する割合をSrの数の半分以下とすることで、酸化物イオンが拡散しづらくなる効果よりも立方晶ペロブスカイト相の割合を高める効果が勝り、酸素吸着特性を損なわずに立方晶ペロブスカイト相を高い割合で含むペロブスカイト型酸化物を得ることが可能である。置換する割合は、上述した範囲を下回っても、つまりCaを全く含まなくてもよい。しかし上回る場合、つまりCaの割合がSrに対して0.5を超える場合、立方晶ペロブスカイト相の割合を向上させる効果をCa置換による酸素吸着特性低下の効果が上回るため、得られるペロブスカイト型酸化物の酸素吸着特性が不足となり、300〜400℃という低作動温度での酸素分離が不可能となる。
(粒子形状の説明)
本発明に係るペロブスカイト型酸化物に含まれる立方晶ペロブスカイト相の割合は70重量%以上である。70重量%未満では、ペロブスカイト型酸化物製造段階で二酸化炭素とストロンチウムが反応することにより生ずる炭酸ストロンチウム、立方晶構造以外のブラウンミラライト型、六方晶などのペロブスカイト類似構造を有する相、といった不純物が過多となり、酸素吸着特性が不足する。このため、300〜400℃という低作動温度での酸素分離が不可能となる。立方晶ペロブスカイト相の割合のより好ましい範囲は80重量%以上であり、100重量%であることが最も好ましい。
得られたペロブスカイト型酸化物中に含まれる立方晶ペロブスカイト相の割合は、XRD測定により算出した。まず、測定したいペロブスカイト型酸化物粉末に、高温で熱処理したピュアな立方晶ペロブスカイト型酸化物を内部標準として添加した混合粉末を作成した。添加した立方晶ペロブスカイト相の割合に対してX線積分強度をプロットし、非特許文献1(長島弘三、富田功著「分析化学」、裳華房、2008年6月10日発行、p.303―306)記載の標準添加法を用いて定量した。
本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体の比表面積は15m2/g以上である。比表面積が15m2/gを下回る場合、比表面積が低すぎるため、ペロブスカイト型酸化物表面で酸素分子が酸化物イオンに解離する表面反応を起こすための場が不足し、なおかつ、比表面積が小さいということは粒子が粗大であるということであるから、ペロブスカイト型酸化物内部への距離が長くなり、内部拡散に時間を要してしまう。従って比表面積が小さく、15m2/g未満の場合、表面反応を起こす場が過少であり、さらに充分な酸化物イオンの拡散速度が得られないため、酸素吸着速度が不足し、300〜400℃という低作動温度での酸素製造が不可能となる。ペロブスカイト型酸化物の粒子集合体の比表面積が大きいほど大きな酸素吸着速度が得られるため、比表面積の上限は問わないが、100m2/g以上の大きな比表面積では酸素吸着速度が飽和するため、これ以上の比表面積は不要である。本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体の比表面積は、25m2/g以上であることがより好ましい。比表面積は、BET測定によって確認した。
本願発明者は、低作動温度(300〜400℃)における酸素吸着特性を向上させるため、ペロブスカイト型酸化物の有する特徴のなかでも、特に結晶子径に着目する必要があることを見出した。粒径が同じである場合、結晶子径が小さいほどひとつの粒子に含まれる結晶子の数が多く、結晶子同士の界面である粒界の量が多くなる。粒界ではペロブスカイト構造が乱れて欠陥が生じているため、間隙が生じている部分が存在している。この間隙のため、結晶格子中を酸化物イオンが拡散するのに比べ、粒界では酸化物イオンの拡散が容易となる。従って、結晶子径を小さくし、粒界を増やすことができれば、粒界での酸化物イオンの拡散を早められ、酸素吸着特性が向上可能であることを見出した。特に、本発明で作動温度としている低温(300〜400℃)領域での酸素分離では、酸化物イオンの拡散が酸素吸着の律速となっているため、これを改善(酸化物イオンの拡散を早める)することで、酸素吸着特性を飛躍的に向上させることができると考えられる。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物の結晶子径は5nm以上、30nm以下である。結晶子径が5nmを下回る場合、結晶子径が小さすぎるため、ペロブスカイト構造を維持することができない。従って、結晶子径が5nm以下のペロブスカイト型酸化物は製造することができない。結晶子径が30nmを上回る場合、結晶子径が大きすぎるため、ひとつの粒子に含まれる粒界が少なくなり、粒子内の酸化物イオンの拡散が遅くなってしまう。その結果、同じ粒径を有する粒子であっても、30nmよりも小さい結晶子径を有するものと比較して、酸素吸着速度が著しく低くなってしまう。尚且つ、結晶子径が30nmを上回る場合、結晶子径が大きすぎるために比表面積が小さくなる。これは、結晶子径が大きい場合、ペロブスカイト型酸化物粒子が表面に有する、結晶子径に起因した微細な凹凸構造が減じてしまい、また、粒子が同じ数の結晶子から構成される場合、結晶子径が大きいほど粒子は粗大となるためである。従って結晶子径が30nmを上回る場合、比表面積が小さく、充分な酸素吸着速度が得られない。従って結晶子径が5nm以上、30nm以下でない場合、300〜400℃という低作動温度での酸素製造が不可能となる。
結晶子径が5nm〜10nmの範囲の場合、ペロブスカイト構造を維持することは可能であるが、結晶子が非常に小さいため酸素空孔量は少なく、本来ペロブスカイト構造中の酸素空孔が担うべき酸素吸着可能な容積が不足となり、これ以上の結晶子径を有する場合と比較すると、酸素吸着特性は低くなる。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物の結晶子径のうち、好ましい範囲は10nm以上、25nm以下である。結晶子径がこの範囲である場合、結晶子の微細化による粒界の増大と、ペロブスカイト構造中の酸素空孔量がバランスし、高い酸素吸着特性が得られる。さらに好ましい結晶子径の範囲は、15nm以上、20nm以下である。
結晶子径が25nm〜30nmの範囲の場合、ペロブスカイト構造中の酸素空孔量は充分となるが、粒界が不足となる。従って、同じ比表面積のペロブスカイト型酸化物粒子であって、これよりも小さな結晶子径を有する場合と比較すると、酸素吸着特性は低くなる。
結晶子径の算出は、XRD測定により行った。XRD測定の結果より、以下のシェラーの式を用いて結晶子径を算出した。
シェラーの式:D=Kλ/βcosθ
式中、D:結晶子径、K:シェラー定数(0.94)、λ:CuKαのX線波長、β:半値幅、θ:Bragg角である。
ペロブスカイト型酸化物の結晶子径に関する特許文献7および特許文献8は、いずれも酸素分離用吸着材として用いるためのペロブスカイト型酸化物に関するものではなく、本発明のようなSrおよびCoを高い割合で含む、酸素吸着特性の高い組成のものでもない。SrおよびCoの含有率が高く、酸素吸着特性の優れた組成では、通常、高比表面積化のために低熱処理温度で合成する場合、ペロブスカイト型酸化物製造段階で二酸化炭素とストロンチウムが反応することにより生ずる炭酸ストロンチウム、立方晶構造以外のブラウンミラライト型、六方晶などのペロブスカイト類似構造を有する相、といった不純物が生成しやすく、そもそも低い熱処理温度(600〜700℃)で立方晶ペロブスカイト相を高い割合で含むペロブスカイト型酸化物を得ること自身が非常に難しい。そのため、SrおよびCoの含有率の高い組成のペロブスカイト型酸化物の、立方晶ペロブスカイト相の割合を高めるのと同時に、立方晶ペロブスカイト相の結晶子径までをも制御することは、実現不可能であった。
結晶子同士の界面である粒界では、結晶構造が乱れ、欠陥がある状態のため、結晶格子中と比較し、粒界における物質の拡散速度が大きいことは、これまでも知られていた。従って酸素吸着材のペロブスカイト型酸化物の粒径が同じ程度である場合、結晶子径を小さくし粒界を増やすことによって、粒子内の酸化物イオンの拡散が容易となり、酸素吸着速度を向上させられることは、これまでも知られていた。しかし本発明で実現する、酸素吸着特性の高いSrおよびCoを高い割合で含む組成であって、5nm以上、30nm以下の結晶子径を有するペロブスカイト型酸化物は、これまで存在しなかった。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、単に結晶子径を微細にすればいい、というわけではない。結晶子径を微細に制御すると特性が向上する理由は、粒界における酸化物イオンの拡散が容易となるためである。しかしながら、結晶子があまりに小さすぎる場合、ペロブスカイト構造を有する部分が減少し、そもそも酸素吸脱着を担う部分である酸素空孔の量が不足してしまう。ペロブスカイト型酸化物が優れた酸素吸着特性を発現できるのは、結晶格子中に多量の酸素空孔を有するためであって、結晶子径を小さくしすぎて酸素空孔量が不足となってしまっては、本末転倒である。従って本発明においては、結晶子径の微細化により粒界が増え、酸化物イオンの拡散が容易になる効果と、ペロブスカイト構造を有する部分が多く、多量の酸素空孔が存在し、酸素吸脱着可能な点が多くなる効果との両者がバランスするような領域でのみ、結晶子径の微細化による酸素吸着特性の向上がみられる。これまでのペロブスカイト型酸化物の結晶子径に関する報告では、好ましい結晶子径の領域が記載されているものの、これらはその範囲が数十nmと広く、単に結晶子径の小さいペロブスカイト型酸化物の製造法に関するものであった。従って本発明のように、得られる結晶子径の範囲を配慮し、緻密に制御することは、これまで実現し得なかった。
粒界が多ければ、ペロブスカイト型酸化物粒子内の酸化物イオンの拡散が容易になることは上述の通りであるが、一般的に知られているように、高比表面積な粒子ほど酸素吸着特性が高い傾向にあるため、結晶子径および粒径がともに小さければ、粒界が多く、さらに比表面積も高いため、酸素吸着特性の優れる粒子が得られる。しかし本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、結晶子径、粒径が単に小さければよい、というわけではない。結晶子径、粒径が小さければよいのであれば、ペロブスカイト型酸化物の微細な単結晶粒子を製造すればよい、ということになる。酸素吸着材として用いるペロブスカイト型酸化物が微細な単結晶粒子である場合、粒子が微細すぎるために、吸着材として用いる際、ハンドリング性が悪いのみならず、粒子が吸着塔に密に充填されてしまう。すると粒子間の間隙が非常に小さくなり、粒子間のガス拡散性が悪くなるため、酸素吸着特性は逆に低下してしまう。その結果として、300〜400℃という低温での酸素分離が実現不可能となる。本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、結晶子径が小さく、比表面積は高いが、一次粒径はある程度の大きさを有し、粒子集合体の内部および粒子間に間隙が存在するガス拡散性の高い形状であって、気孔率が高い。そのようなペロブスカイト型酸化物を得る方法は、これまで存在しなかった。結晶子径の小さいペロブスカイト型酸化物の製造法に関するこれまでの報告では、粒子集合体の気孔率が高く、ガス拡散性の高い形状を有するペロブスカイト型酸化物を得ることはできなかった。
特許文献7には、細孔径が結晶子径よりも大きい多孔質なペロブスカイト型酸化物を製造する方法が記載されている。好ましい結晶子径の範囲として1〜50nmの結晶子を有し、さらにこれよりも大きな細孔径を有する多孔質なペロブスカイト型酸化物の製造法が示されている。本発明のペロブスカイト型酸化物は多孔質ではなく、より精密に結晶子径の範囲を制御する必要があるため、特許文献7記載のペロブスカイト型酸化物の製造法を用いても、本発明の実現する、5nm以上、30nm以下、という精密に制御された結晶子径であって、気孔率が高く、ガス拡散性の高い形状を有するペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。従って、300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
特許文献8には、結晶子径20nm以下のペロブスカイト型酸化物粒子の製造法が記載されているが、このペロブスカイト型酸化物粒子はカーボン担体に担持された状態で得られるものであり、単独のペロブスカイト型酸化物粒子の結晶子径を20nm以下にコントロールする製造法は記載されていない。従って、特許文献8に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法を用いても、本発明の提供する、5nm以上、30nm以下、という精密に制御された結晶子径と、ガス拡散性の高い形状とを両立するペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。従って、300〜400℃の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物を製造することはできない。
本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体は、ガス拡散性の高い形状を有する。ガス拡散性の高い形状とは、粒子集合体の気孔率が75%以上であることを指す。
本発明のペロブスカイト型酸化物は、結晶子に起因した微細な凹凸を表面に有し、また結晶子が集まって成る一次粒子の、集合体の立体構造は三次元的に発達しており、単なる球体や多面体ではなく、かさ高い形状をもつ。そのため、ペロブスカイト型酸化物が同程度の粒径を有する球体である場合と比較して、表面や粒子間に多数の空隙が存在することとなる。空隙が多数存在すれば、ガス拡散性が高く、空隙を活用して酸素吸脱着を効率的に行うことができる。従って、本発明のペロブスカイト型酸化物粒子集合体はガス拡散性の高い形状を有し、粒子集合体の気孔率が75%以上であるため、300〜400℃という低作動温度での酸素製造が可能となる。
気孔率が75%を下回る場合、粒子表面の凹凸や粒子間の空隙が過少となる。空隙が少ない場合、ガス拡散性が不足し、空隙を利用した効率的な酸素吸脱着を行うことができず、酸素吸着速度が不足となる。従って、300〜400℃という低作動温度での酸素製造が不可能となる。
気孔率の算出は、水銀ポロシメータ測定により行った。測定したいペロブスカイト型酸化物粉末に水銀を圧力0.007〜414MPaの範囲で圧入し、圧入した水銀の体積からかさ密度、見掛け密度を算出し、以下の式を用いて気孔率を求めた。尚、本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体は、結晶子が集まってなる一次粒子がさらにいくつか集まって集合体となった粉末である。
気孔率={1−(かさ密度/見掛け密度)}×100
さらに本発明では、SrおよびCoの割合が高い酸素分離特性の優れた組成であって、比表面積が高く、結晶子径が小さく、さらに粒子集合体として気孔率が高くガス拡散性の高い形状を提供するペロブスカイト型酸化物を、低い熱処理温度で得る製造法をも提供している。比表面積が高く、結晶子径が小さく、尚且つ粒子集合体として気孔率が高くガス拡散性の高い形状を有する、SrおよびCo含有率の高い組成のペロブスカイト型酸化物を、今回低い熱処理温度で製造可能になったのは、キレート剤を加えキレート錯体化した金属をキレート剤の酸化分解温度以下である180℃以上、300℃以下で仮焼し、その後600℃以上、700℃以下で本焼成するという、従来存在しなかった製造法を見出したためである。このとき、本発明の方法のポイントは、用いるキレート剤の種類に着目したことであり、上述のSrおよびCo含有率の高い組成のペロブスカイト型酸化物を低い熱処理温度で製造するため、用いるキレート剤が「キレート剤一分子中に含まれる炭素数が17原子以下、キレート安定度定数が6以上」という特徴を有する必要があるという、従来にない知見を見出したことである。キレート剤は水溶液中でペロブスカイト型酸化物構成金属元素に配位し、金属元素同士の均質性を向上させるため、低い熱処理温度でペロブスカイト型酸化物を製造するのを助けるが、本願発明者は、それ以外にもキレート剤が、結晶子径をコントロールする役割をも有することを見出した。
具体的には、熱処理条件が同じであれば、キレート剤が本焼成時に発生する二酸化炭素の量が多いほど、すなわちキレート剤一分子中に含まれる炭素原子数が多いほど、結晶子径が小さくなる。これは、キレート剤の酸化分解により発生する二酸化炭素量が多い場合、ペロブスカイト型酸化物の核となる金属イオン同士の間隙をぬって排出される二酸化炭素量が多いため、金属イオンの集合が分断されやすくなり、核が微細化するためである。しかし一方で、キレート剤の酸化分解により生じる二酸化炭素は、不純物である炭酸ストロンチウムの生成の原因ともなるため、キレート剤一分子中に含まれる炭素原子数が多すぎる場合、立方晶ペロブスカイト相の割合が低下してしまうことを見出した。
本発明では、こうした従来検討されていなかった試みを鋭意検討することにより、上記の酸素分離特性の優れたペロブスカイト型酸化物を低い熱処理温度で製造する方法をも提供するに至った。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物においては、単に結晶子径が小さければよいというのではなく、5nm以上、30nm以下に精密に制御されている必要がある。従って特許文献7、特許文献8に開示されているペロブスカイト型酸化物と本発明に係るペロブスカイト型酸化物とは、全く異なるものである。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、結晶子径が5nm以上、30nm以下であり、また本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体は、比表面積が15m2/g以上であって、尚且つ気孔率が高くガス拡散性の高い形状を有する。従って本発明に係るペロブスカイト型酸化物は結晶子径が小さいために粒界が多く存在し、さらに粒子集合体として比表面積が高く、ガス拡散性の高い形状を有するため、300〜400℃というペロブスカイト型酸化物としては非常に低い作動温度であっても、優れた酸素吸着特性を示す。従って本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、特許文献1にあるような高温(800℃)での活性化処理は不要であるため、本当の意味での低温作動での酸素製造が実現可能であり、酸素製造時の設備稼働電力費低減が可能である。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物を用いる酸素吸着材においては、酸素分離特性として吸着容量だけではなく、吸着速度も重視している。これは酸素製造時、吸着/再生切り替え直後の吸着量の立ち上がりが速いほうが吸着、再生のサイクルを短時間で行うことが出来て単位時間当たりの酸素製造量を多くすることができるためである。本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、酸素分離作動温度300℃において、酸素分圧切り替え後1分程度でほぼ飽和量の酸素を吸着させることが可能である。
上述したように、本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体では、酸素吸着材の酸素分離作動温度は300〜400℃である。本発明に係るペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度は400℃で飽和するため、これ以上の高温に加熱しても意味がない。さらに本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体は、低い作動温度域において、特に優れた酸素吸着速度を示す。400℃を超える温度では、特許文献1に記載されているような高い熱処理温度で製造したペロブスカイト型酸化物に対する優位性が失われてしまう。従って、酸素分離作動温度の上限は400℃である。
酸素分離作動温度を徐々に高めた場合、300℃付近までは酸素吸着速度が急激に増大し、その後の増加は比較的緩やかである。300℃を下回る温度では急激に酸素吸着速度が減少し、本明細書で酸素吸着速度として定義している一分間の酸素吸着量が読み取れないほど小さくなってしまう。従って、酸素分離作動温度の下限は300℃である。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、特許文献1に記載されているような高い熱処理温度で製造したペロブスカイト型酸化物と比べて優れた酸素吸着特性を示すが、特に両者の差が顕著に現れるのは低作動温度においてである。従って酸素分離作動温度の範囲は300〜400℃であるが、好ましくは300〜350℃、より好ましくは300〜320℃である。
特許文献1の酸素分離作動温度は200〜700℃と記載されているが、作動温度の下限が200℃という低温であったとしても、前処理で、800℃という高温で活性化処理を行うことを前提としており、低作動温度での酸素分離を実現できているとは言えない。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物の酸素分離作動温度(300〜400℃、好ましくは300〜350℃、より好ましくは300〜320℃)は、特許文献1に記載されているような従来の酸素分離作動温度と比較して低温である。本発明に係るペロブスカイト型酸化物は、特許文献1のように800℃といった高温の活性化処理なしに、あるいは高温の事前処理なしに、低温(300〜400℃、好ましくは300〜350℃、より好ましくは300〜320℃)での酸素分離を実現できるものである。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度は、300℃において15×10-3O2mmolg-1min-1以上である。酸素吸着速度が15×10-3O2mmolg-1min-1未満の場合、酸素吸着速度が低すぎる。特許文献1に記載されているような高温の熱処理を行う製造法によって得られたペロブスカイト型酸化物が示す酸素吸着速度と比較して、本発明に係るペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度15×10-3O2mmolg-1min-1は、10倍以上の非常に優れた値である。従って本発明に係るペロブスカイト型酸化物の酸素吸着速度未満の速度しか示さないペロブスカイト型酸化物では、300℃という低作動温度での安価な酸素製造が不可能となる。酸素吸着速度が大きいほど、短時間で多量の酸素を製造可能となるため、酸素吸着速度の上限は問わないが、現実的に得られる酸素吸着速度の上限としては、25×10-2O2mmolg-1min-1程度である。
本発明に係るペロブスカイト型酸化物の酸素吸着特性は、TG−DTA(Thermo Gravimetry-Differential Thermal Analysis)により測定した。吸着ガスを空気、脱着ガスを窒素として酸素分圧を変化させ、雰囲気を30分毎に切り替えた際の、30分間での合計の質量変化を酸素吸着容量とした。また増加質量から、単位吸着材であるペロブスカイト型酸化物の質量当たりの酸素吸着速度を算出した。酸素吸着速度は、雰囲気切り替え後1分経過時点での質量変化から算出した。
(ペロブスカイト型酸化物の粒子集合体の製造法の説明)
本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体の製造法では、ペロブスカイト型酸化物を構成する金属元素の塩とキレート剤とを溶解した水溶液を調製し(第一工程)、該水溶液を乾燥して得られる固体を大気中、またはアルゴン、ヘリウム、窒素、もしくは水素から成る雰囲気中、もしくは真空中で、前記キレート剤の酸化分解温度以下で仮焼し(第二工程)、その後該固体を大気中、またはアルゴン、ヘリウム、もしくは窒素からなる雰囲気中で、もしくは真空中で、600℃以上、700℃以下で本焼成する(第三工程)。これらの工程を経て得られたペロブスカイト型酸化物は、結晶子が多数集合することよりなる一次粒子が、間隙を含む状態でさらに複数集まった粒子集合体を形成している。また、本発明の方法で製造したペロブスカイト型酸化物の粒子集合体は、本発明の方法の範囲であればどのような条件であっても、本発明のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体の性質を示す。
第一工程において、金属元素の塩とキレート剤とを溶解した水溶液を調製する。金属元素の塩は、{La1-x(Sr1-αCaα)x}{Co1-yFey}O3-δ(0.7≦x≦1、0<y≦0.4、0≦α≦0.5、0<δ<3)を形成するような配合割合である。
キレート剤の配合量としては、金属元素の合計モル数に対して1倍以上、5倍以下の範囲である。キレート剤は金属イオンに配位しキレート錯体を形成する。キレート錯体となることで、金属イオンの均質性が向上し、立方晶ペロブスカイト相の生成が促進される。該配合量が1倍未満では、全ての金属イオンにキレート剤が配位しきれず、金属イオンの均質性が低下し、立方晶ペロブスカイト相の割合が低下してしまう。5倍を超えると、不純物として炭酸ストロンチウムなどの炭酸塩を多量に生じてしまうため、立方晶ペロブスカイト相の割合が低下してしまう。
金属元素の塩とキレート剤とを溶解した水溶液を調製する方法としては、例えば、金属元素の塩をイオン交換水に溶解し、また、別のイオン交換水にキレート剤を溶解し、この両者を混合する方法がある。
本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法で用いることができる金属元素の塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物などがある。これらの中では、硝酸塩を用いることが最も好ましい。
第一工程で調製する水溶液の濃度は、特に限定されないが、例えば、合計の金属イオンのモル濃度が0.1〜1.0mol/Lの金属塩を溶解した水溶液と、キレート剤のモル濃度が0.1〜1.0mol/Lのキレート剤水溶液とを混合することによって得られるものでよい。
本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法で用いることができるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、CyDTA(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’−五酢酸)、GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、Methyl−EDTA(1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸)、EDTA−OH(ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸)、などが挙げられる。
キレート安定度定数は、金属イオンとキレート剤がキレート錯体を形成する反応の平衡定数であって、生成するキレート錯体の安定性を表す。キレート安定度定数が大きいキレート剤ほど、金属イオンに対する配位能力が高く、生成するキレート錯体は安定なものであることを意味する。
本発明の製造法において、キレート剤はペロブスカイト型酸化物を構成する金属イオンに配位し、キレート錯体を形成することで、第二工程以降においても金属イオン同士に偏りが生じるのを防ぐ効果があると考えられる。第一工程では、金属イオンは水溶液中に溶解しているから、均質性は非常に高い。しかし第二工程以降、第一工程で調製する水溶液を乾燥させて得られる、金属イオンを含む固体中では、含有率の高いSrやCoを中心に偏りが生じやすい状態となる。キレート剤は金属イオンの周囲を取り囲むように配位し、キレート錯体を形成するため、キレート錯体化していれば、金属イオン同士の偏りを防ぐことができ、固体中であっても、第一工程で調製する水溶液中のような、均質性の高い状態を保持することができるものと考えられる。該固体中の金属イオンの均質性が高ければ、ペロブスカイト構造を形成するために金属イオンが熱処理により移動しなければならない距離が短くなり、結果として、本発明のような低い熱処理温度であっても、立方晶ペロブスカイト相を高い割合で含むペロブスカイト型酸化物を製造することが可能となる。従って本発明で用いるキレート剤は、La、Sr、Ca、Co、Feとキレート錯体を形成可能であり、また生成するキレート錯体の安定性が大きい、すなわち、キレート安定度定数が大きいことが必要である。
従って、本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法で用いることができるキレート剤は、La、Sr、Ca、Co、Feに対するキレート安定度定数が6以上であることを特徴とするキレート剤である。好ましくは、キレート安定度定数が8以上、より好ましくは、キレート安定度定数が10以上、であることを特徴とするキレート剤である。
キレート安定度定数は、その測定方法によって値がわずかに異なる。本発明で基準としたキレート安定度定数は、株式会社同仁化学研究所のキレート安定度定数一覧表(http://www.dojindo.co.jp/download/che/che3.pdf)を参考にしたものである。
上述の通り、キレート剤はペロブスカイト型酸化物イオンを構成する金属イオンに配位しキレート錯体を形成することで、金属イオン同士の均質性を向上させ、低い熱処理温度であっても、立方晶ペロブスカイト相を高い割合で含むペロブスカイト型酸化物を製造することを実現させうるものである。
また、キレート剤一分子中に含まれる炭素原子数は、最終的に得られるペロブスカイト型酸化物の結晶子径をコントロールする役割も有する。
しかし一方で、有機分子であるキレート剤は、酸化分解により二酸化炭素が生ずるため、SrやCaと反応し、炭酸塩などの不純物を生ずる原因ともなっている。安定なキレート錯体を形成できるキレート剤の分子骨格はある程度の大きさ、すなわち炭素数を必要とするが、あまりに大きな分子骨格を有する、すなわちキレート剤一分子中に含まれる炭素数が多すぎる場合、酸化分解により生じる二酸化炭素量が過多となるため、炭酸塩などの不純物が多量に生成し、生成する立方晶ペロブスカイト相の割合を低減させてしまう要因となる。特に、キレート剤一分子中に含まれる炭素数が多すぎる場合、立方晶ペロブスカイト相の割合は顕著に低減してしまう。
従って、本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法で用いることができるキレート剤は、キレート剤一分子中に含まれる炭素原子数が17原子以下であることを特徴とするキレート剤である。好ましくは、炭素原子数が15原子以下、より好ましくは、炭素原子数が10原子以上、15原子以下であること、を特徴とするキレート剤である。
上記にあてはまるキレート剤としては、例えば、EDTA、EDTA−OH、GEDTA、DTPA、Methyl−EDTA、CyDTAなどが挙げられる。
キレート剤の種類によっては、水に対する溶解度が非常に低いものも存在する。そのような場合、キレート剤を含む水溶液にアルカリ性試薬を添加し、pHを調製することにより、溶解させることができる。このキレート剤を溶解させた水溶液と、金属イオンを含む水溶液を混合することにより、第一工程で調製する水溶液が得られる。用いるアルカリ性試薬としては、ペロブスカイト型酸化物の構成元素以外の金属イオンを含まないことが好ましい。例えば、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、有機塩基(ピリジンなど)を用いることができるが、アンモニア水を用いることが最も好ましい。
キレート剤を含む水溶液にアルカリ性試薬を添加すると、上述の通り、水に対する溶解度が低いキレート剤であっても溶解させることができる。さらに、この他の効果として、アルカリ性試薬を適量添加することにより、金属イオンがキレート錯体化するのを促進することができる。キレート剤が金属イオンに配位する際には、カルボキシル基や水酸基などの配位官能基が脱プロトン化する必要があり、脱プロトン化している配位官能基が多いほど、ルシャトリエの原理から、キレート剤はキレート錯体を形成しやすくなる。キレート剤および金属イオンが存在する溶液のpHがアルカリ性に近いほど、溶液中のプロトン量は少なくなるため、溶液のpHがアルカリ性に近いほどキレート剤の配位官能基の脱プロトン化が進行しやすく、結果として、全金属イオンおよびキレート剤のうち、キレート錯体化しているものの割合を高めることができる。より多くの金属イオンがキレート錯体化しているほど、金属イオン同士の均質性が向上し、低い熱処理温度であっても、立方晶ペロブスカイト相を高い割合で含むペロブスカイト型酸化物を製造しやすくすることが可能となる。従って本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法で用いるアルカリ性試薬は、キレート剤を溶解し水溶液化する役割の他に、キレート錯体化を促進する役割を担うものである。
キレート剤を含む水溶液にアルカリ性試薬を添加し、キレート剤を溶解させる方法として、キレート剤を含む水溶液を撹拌しながら、アルカリ性試薬を少量(0.5mL程度)ずつスポイトで滴下し、キレート剤を含む水溶液が透明になるまでアルカリ性試薬を加えるという方法がある。
特許文献2および3に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法では、アルカリ性の試薬を用いているものの、これらは、金属イオンを水酸化物化し、沈殿させることによって、ペロブスカイト型酸化物の前駆体を得るために添加するものである。従って本発明で用いるアルカリ性試薬とは、その働きは全く異なるものであって、特許文献2および3に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法は、本発明の製造法とは全く異なる。
特許文献4に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法では、クエン酸をキレート剤として用いているものの、その他のキレート剤についての記載はなく、またその効果について、「焼成時に金属元素が結晶格子中に入りやすくなる」としか記載されていない。
また、特許文献5に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法では、クエン酸などのキレート剤を用いているものの、キレート錯体化した金属元素は、その後難溶性粒子として沈殿させ、この沈殿がペロブスカイト型酸化物前駆体となっており、該製造法のキレート剤は、本発明の提供するペロブスカイト型酸化物の製造法におけるキレート剤のように、立方晶ペロブスカイト相の生成を促進するために用いられているのではない。
さらに、特許文献6に記載のペロブスカイト型酸化物の製造法では、EDTAやCyDTA(特許文献6にはDCTAと記載されているが、CyDTAと同じ分子を表す)などをキレート剤として用いているものの、その効果はペロブスカイト型酸化物の構成元素のひとつである鉛の蒸発を抑えることであり、本発明とは異なる。また、用いるキレート剤が、EDTA、NTA、CyDTA、DTPA、EGTA、PDTA、BDTAであると好ましい理由、それらでなければならない理由については、記載されていない。
以上から、特許文献4、特許文献5、特許文献6記載のペロブスカイト型酸化物の製造法のいずれにおいても、キレート安定度定数が高いほど金属元素の均質性を向上させ、立方晶ペロブスカイト型酸化物の生成を促進効果が高く、一方で分子構造が大きくキレート剤一分子中の炭素数が多すぎる場合、逆に立方晶ペロブスカイト型酸化物の生成を阻害してしまう、という、本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法に必要なキレート剤の役割は、全く記載されていない。従って、特許文献4、特許文献5、特許文献6記載のペロブスカイト型酸化物の製造法のいずれも、本発明の提供するペロブスカイト型酸化物の製造法とは全く異なるものであり、特許文献4、特許文献5、特許文献6記載のペロブスカイト型酸化物の製造法を用いても、本発明の提供するペロブスカイト型酸化物の粒子集合体を製造することはできない。
第二工程では、上記水溶液から水分を蒸発させることにより乾燥し、得られる固体を大気中、またはアルゴン、ヘリウム、窒素、もしくは水素、あるいはこれらから成る混合ガス雰囲気中で、もしくは真空中で、180℃以上、300℃以下で仮焼する。
水分を蒸発させることにより乾燥する方法として、該水溶液をロータリーエバポレーターにより蒸発乾固する方法がある。キレート剤が分解しない温度範囲で速やかに水分を除去するため、例えば、温度は60〜90℃、時間は1〜3時間の範囲内がよい。
仮焼は、キレート剤の酸化分解温度以下で行う。酸化分解温度はキレート剤の種類により異なるが、本発明で用いることのできる好ましいキレート剤の酸化分解温度は、いずれのキレート剤も180℃以上、300℃以下の範囲内である。雰囲気としては、大気中でなくとも良く、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素、水素などを用いることができ、もしくは真空中で行うこともできる。雰囲気の影響は小さいため、いずれのガスを用いてもよく、また任意の割合で混合したガスを用いてもよく、安価な大気中で行うことで充分であるが、金属硝酸塩が分解して生じるNOxを積極的に追い出し分解を促進するため、NOxを生じ得ないアルゴン、ヘリウムや水素、これらから成る混合ガスを用いてもよく、真空中で行ってもよい。
仮焼温度としては、キレート剤の分解温度以下の180℃以上、300℃以下である。180℃未満では、温度が低すぎるため金属元素の塩からの残存物(硝酸根など)を加熱分解できず残存してしまう。300℃を超えると、キレート剤の分解温度を超えてしまう。キレート剤の分解温度以上で仮焼を行った場合、キレート剤の分解時に生ずるガス、例えば、二酸化炭素のために、仮焼後の時点で不純物である炭酸ストロンチウムが多量に生成してしまう。その場合、仮焼の後に行う二回目の熱処理である本焼成を行ったとしても、多量の炭酸ストロンチウムが残存してしまい、最終的に得られるペロブスカイト型酸化物は、立方晶ペロブスカイト相の割合が非常に低いものとなってしまう。従って、キレート剤の分解温度を超えない300℃以下の範囲で仮焼を行うことが非常に重要である。
キレート剤の酸化分解温度を決定する方法としては、例えば、TG−DTA測定により、酸化分解による発熱ピークが生ずる温度を測定する方法がある。
ガスを用いて仮焼を行う場合、雰囲気の流量は、例えば100mL/min以上、300mL/min以下が好ましい。100mL/min未満では流量が少なすぎるため、キレート剤や硝酸ストロンチウムが分解して生じる炭化水素、硝酸根などのガスを充分に置換することができず、不純物である、例えば、炭酸ストロンチウムを生じやすくなってしまう。流量が300mL/minを超えると、反応物自身に問題は生じないが、流量が多すぎるため反応容器内で飛散するなどの問題が生ずる。
乾燥および仮焼成を行う工程は、連続して行ってもよい。具体的には、第一工程で得られた水溶液を角サヤに直接入れ、これを2時間以上かけてゆっくり90℃まで昇温し、10時間以上キープして充分に水を蒸発させたあと、再び2時間以上かけてゆっくりと温度を降下させ、室温に戻ったところで、そのまま上記第二工程に記載の方法と同様に仮焼を行う、という方法がある。
特許文献4記載のペロブスカイト型酸化物の製造法は、本発明の製造法とは全く異なり、クエン酸の分解温度以上で一回目の熱処理である仮焼成を行うことが肝要であるとされている。従って本発明のペロブスカイト型酸化物の製造法と、特許文献4記載のペロブスカイト型酸化物の製造法は、全く異なる製造法である。従って特許文献4記載のペロブスカイト型酸化物の製造法を用いて、本発明の構成金属元素からなるペロブスカイト型酸化物を合成しても、本発明記載の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物の粒子集合体は得られない。
第三工程では、第二工程により得られる固体を大気中、またはアルゴン、ヘリウム、窒素、あるいはこれらから成る混合ガス雰囲気中で、もしくは真空中で、600℃以上、700℃以下で本焼成する。
本発明のペロブスカイト型酸化物の製造方法において、本焼成を行う温度は、600℃以上、700℃以下である。600℃未満では、硝酸ストロンチウムの分解温度(570℃)に対して温度が不足するため、硝酸ストロンチウムがそのまま残留してしまい、ペロブスカイト型構造を形成できない。従って本焼成温度の下限は600℃である。硝酸ストロンチウム自身の分解温度よりも高くするのであれば、570℃以上であれば600℃以下でも良いということになるが、本発明では、硝酸ストロンチウムはキレート剤とキレート錯体を形成した状態で存在している。キレート錯体化した場合、金属塩の分解温度は安定性が向上するため高まる傾向にあるため、本焼成温度の下限は570℃ではなく、600℃である。また、本焼成温度が600℃未満の場合、粒成長が不十分であるため、結晶子径が過小となることからも、本焼成温度の下限は600℃である。700℃を超える温度では、結晶粒の成長が進みすぎるため、粒子が粗大となり低比表面積化、結晶子径は増大してしまう。また、結晶粒の融着により粒子表面の凹凸および粒子間の間隙が失われるため、粒子集合体の気孔率が小さくなり、ガス拡散性の低い形状となり、酸素吸着速度が低下する。従って本焼成温度の上限は700℃である。600〜700℃の間では、立方晶ペロブスカイト相の割合と比表面積、結晶子径がバランスし、優れた酸素吸着特性を得られる。
本焼成は、600℃以上、700℃以下で行う。雰囲気としては、大気中でなくとも良く、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素などを用いることができ、もしくは真空中で行うこともできる。雰囲気の影響は小さいため、いずれのガスを用いてもよく、また任意の割合で混合したガスを用いてもよく、安価な大気中で行うことで充分であるが、キレート剤の酸化分解により生じる二酸化炭素を積極的に追い出し分解を促進するため、酸素を含まないアルゴン、ヘリウム、窒素、これらから成る混合ガスを用いてもよく、真空中で行ってもよい。ただし、ペロブスカイト型酸化物構成元素が金属にまで還元されてしまうことを防ぐため、水素を5流量%以上含む混合ガスあるいは水素は用いない。
ガスを用いて本焼成を行う場合、雰囲気の流量は、例えば100mL/min以上、300mL/min以下が好ましい。100mL/min未満では流量が少なすぎるため、キレート剤や硝酸ストロンチウムが分解して生じる炭化水素、硝酸根などのガスを充分に置換することができず、不純物である、例えば、炭酸ストロンチウムを生じやすくなってしまう。流量が300mL/minを超えると、ペロブスカイト型酸化物自身に問題は生じないが、流量が多すぎるため反応容器内で飛散するなどの問題が生ずる。
特許文献1では、酸素吸着特性の優れたペロブスカイト型酸化物の組成が開示されているが、そのペロブスカイト型酸化物を低温での熱処理で得る方法は開示されていない。本発明の製造法によれば、特許文献1に記載されているような酸素吸着特性の優れたペロブスカイト型酸化物を低温での熱処理によって得ることができるため、分離媒体であるペロブスカイト型酸化物の製造にかかるコストを減ずることが可能である。
特許文献4記載の製造法では、二回目の熱処理の温度は700℃以上、950℃以下とされており、本発明の製造法における熱処理温度とは異なる領域である。本発明記載の低作動温度で酸素分離可能なペロブスカイト型酸化物は、700℃以上、950℃以下の熱処理温度では得られない。
(実施例1〜14、発明例)
硝酸ランタン六水和物、硝酸ストロンチウム、硝酸カルシウム四水和物、硝酸コバルト六水和物、硝酸鉄九水和物を、実施例1〜14それぞれについて表1に示した質量で秤量し、イオン交換水約50mLに溶解し混合した。また実施例1〜14それぞれについて、キレート剤として、EDTA−OH(ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸)、GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、Methyl−EDTA(メチルエチレンジアミン四酢酸)、CyDTA(1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸)を表1に示した質量秤量し、イオン交換水約100mLに溶解した。溶解しなかったものについては、キレート剤が完全に溶解するまで該キレート剤とイオン交換水の混合液体にアンモニア水を加えることにより溶解させた。これら二種類の水溶液を混合し、約150mLの混合水溶液を作成した(第一工程)。
この混合水溶液をエバポレータで減圧しながら80℃の油浴中で約2時間かけて蒸発乾固させた。また、得られた固体を角サヤに入れて空気雰囲気中で180〜300℃の温度範囲で2時間仮焼した(第二工程)。仮焼を行った温度は、実施例1〜14のそれぞれについて、表1に示す通りであった。
仮焼した固体を粉末にした後、角サヤに入れて空気雰囲気中で600〜700℃の温度範囲で4時間本焼成した(第三工程)。本焼成を行った温度は、実施例1〜14のそれぞれについて、表1に示す通りであった。
これにより、実施例1〜14に記載のペロブスカイト型酸化物の粒子集合体を製造した。実施例1〜14それぞれの組成は、表1に記載の通りである。
(比較例1〜16)
実施例1〜14と同様にして、表1に示す組成の比較例1〜16のペロブスカイト型酸化物の集合体を製造した。用いたキレート剤は表1に示す通りで、比較例1〜16それぞれについて、EDTA−OH(ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)を用いた。第二工程における仮焼温度、第三工程における本焼成温度は、比較例1〜16のそれぞれについて、表1に示す通りであった。
各実施例、比較例について、TG−DTAによる300℃における酸素吸着速度測定を行った。これらの結果を表2に示す。
生成相の確認および立方晶ペロブスカイト相の定量はXRD(Rigaku製、Smart Lab)により測定した。立方晶ペロブスカイト相の定量方法は次の通りである。測定したいペロブスカイト型酸化物に、高温で熱処理したピュアな立方晶ペロブスカイト型酸化物を内部標準として添加した混合粉末を作成した。添加した立方晶ペロブスカイト相の割合に対して、直線性の良いピークを選んでX線積分強度をプロットし、非特許文献1(長島弘三、富田功著「分析化学」、裳華房、2008年6月10日発行、p.303−306)記載の標準添加法を用いて定量した。
比表面積はガス吸着装置(マイクロトラック ベル製、BELsorp−max)により測定した。測定結果はBET法によって解析し、比表面積を算出した。
結晶子径の算出も、XRD(Rigaku製、Smart Lab)測定により行った。XRD測定の結果より、以下のシェラーの式を用いて結晶子径を算出した。
シェラーの式:D=Kλ/βcosθ
D:結晶子径、K:シェラー定数(0.94)、λ:CuKαのX線波長、β:半値幅、θ:Bragg角
気孔率は、水銀ポロシメータ(Shimadzu製、オートポアIV9520/9505)により測定した。測定したいペロブスカイト型酸化物粉末に水銀を圧力0.007〜414MPaの範囲で圧入し、圧入した水銀の体積からかさ密度、見掛け密度を算出し、以下の式を用いて気孔率を求めた。
気孔率={1−(かさ密度/見掛け密度)}×100
酸素吸着特性はTG−DTA(Rigaku製、Thermo Plus2)により測定した。吸着ガスを空気、脱着ガスを窒素として酸素分圧を変化させ、雰囲気を30分毎に切り替えた際の、30分間での合計の質量変化を酸素吸着容量とした。また増加質量から、単位吸着材であるペロブスカイト型酸化物の質量当たりの酸素吸着速度を算出した。酸素吸着速度は、雰囲気切り替え後1分経過時点での質量変化から算出した。
実施例1〜3と比較例1〜2を比べると、立方晶相%他の数値は、本発明の範囲に入っているが、実施例1〜3の方が優れた酸素吸着速度を示す。これは、SrおよびCoの割合が高まるほど、ペロブスカイト型酸化物の結晶格子中に含まれる酸素空孔量δが大きくなり、酸素吸着速度が向上しているためである。またCaを導入することによって、立方晶ペロブスカイト相が生成しやすくなるため、立方晶ペロブスカイト相の割合がさらに高まり、酸素吸着速度が向上していることも理由である。比較例1〜2では、SrおよびCoの割合が不足であり、また、Caの導入割合が過多であるため、酸素吸着速度は低い。
Caの導入割合が多すぎる場合に酸素吸着速度が低下するのは、Caの方がSrと比較してイオン半径が小さいため、ペロブスカイト型酸化物の単位胞が小さくなり、酸化物イオンが拡散しづらくなるためである。
実施例4〜6と比較例3〜4を比べると、実施例4〜6の方が優れた酸素吸着速度を示す。これは、SrおよびCoの割合が高まるほど、ペロブスカイト型酸化物の結晶格子中に含まれる酸素空孔量δが大きくなり、酸素吸着速度が向上しているためである。一方、比較例3の組成は、異なる構造が生じてしまうものであり、比較例4ではCoの割合が低すぎるため、酸素吸着速度は低い。
実施例4の組成は(La0.1Sr0.9)(Co0.9Fe0.1)O3-δで、SrおよびCoが非常に高い割合で含まれている。ペロブスカイト型酸化物中、LaおよびFeは3価、SrおよびCoは2価の陽イオンとしてそれぞれ存在している。酸素は2価の陰イオンとして存在している。2価のSrおよびCoでAサイト、Bサイトがそれぞれ多量に置換されていると、Aサイト、Bサイトが低価数状態となる。すると酸化物イオンは、欠損することによって電気的に中性になろうとし、結晶格子中に多量の酸素空孔が生じる。従って実施例4は酸素空孔を非常に多く含む組成であるため、酸素吸着速度が優れている。実施例5〜6も酸素空孔を多く含む組成であるため、優れた酸素吸着速度を示す。
SrおよびCoの割合は高いほど酸素空孔ができやすく、酸素吸着速度が優れるが、比較例3のようにAサイトが全てSr、Bサイトが全てCoから成る場合、この組成のペロブスカイト型酸化物は立方晶ではなく、六方晶ペロブスカイト相となる。六方晶ペロブスカイト相は、酸素を頂点とする八面体が点共有ではなく面共有して連なる結晶構造を有し、立方晶ペロブスカイト相と比較して、酸化物イオンの空孔を介した移動が非常に起こりづらい。比較例3のペロブスカイト型酸化物は六方晶構造となるため、酸素吸着速度が低下している。表2に示す比較例3の立方晶ペロブスカイト相の割合は62重量%となっている。これは、XRD測定により観測される立方晶ペロブスカイト相および六方晶ペロブスカイト相それぞれに起因するピークが重なっている(両相は同じ2θで回折を起こす)ために、標準添加法により定量する際、六方晶ペロブスカイト相が立方晶ペロブスカイト相として見積もられてしまうためである。それにも関わらず、六方晶ペロブスカイト相の存在を確認できるのは、比較例3のXRDパターンにおいて、六方晶ペロブスカイト相でのみみられるピーク(2θ=28°付近)が存在するためである。比較例3は炭酸ストロンチウムなどの不純物以外の相を62重量%含み、その厳密な内訳はわからないものの、ほとんどが六方晶ペロブスカイト相として存在しているものと考えられる。
比較例4は、立方晶ペロブスカイト相を形成するが、Coの割合が不足のため、酸素空孔が小さく、酸素吸着速度が低下している。
実施例7〜14と比較例5〜8を比べると、実施例7〜14の方が優れた酸素吸着速度を示す。
実施例7〜8に示した本発明の範囲内の仮焼・本焼成温度では、優れた酸素吸着速度を有するペロブスカイト型酸化物が得られた。
仮焼温度はキレート剤の酸化分解温度以下で行う必要がある。そうすることにより、キレート剤の酸化分解時発生する多量の二酸化炭素が存在しない状態で硝酸根を充分分解させることができるため、不純物である炭酸ストロンチウムの発生が抑えられるためである。本焼成温度は、粗大粒が生じず高比表面積で、ガス拡散性の高い形状で気孔率の高いペロブスカイト型酸化物が得られる600〜700℃が好ましい。
また実施例7〜14に示したキレート剤を用いると、優れた酸素吸着速度を有するペロブスカイト型酸化物が得られた。
実施例7〜8に示したキレート剤はいずれも、La、Sr、Ca、Co、Feに対するキレート安定度定数が8以上であり、生成するキレート錯体の安定性が大きい。キレート剤一分子中に含まれる炭素原子数は実施例1〜6よりも多いため、これらよりもキレート剤の酸化分解時に生じる二酸化炭素量が多く、結晶子径をさらに小さくすることができた。同時に、キレート剤一分子中に含まれる炭素原子の数はいずれも15原子以下であるから、酸化分解時に生じる二酸化炭素量は過多とはならないため、Srが炭酸ストロンチウムとして不純物化する量を抑えることができた。従って、実施例7〜8に示したキレート剤を用いて製造したペロブスカイト型酸化物は、結晶子径が10〜25nmの範囲であり、また立方晶ペロブスカイト相の割合が高いため、優れた酸素吸着速度を示す。
実施例9〜14に示したキレート剤はいずれも、La、Sr、Ca、Co、Feに対するキレート安定度定数が10以上であり、生成するキレート錯体の安定性が大きい。また、キレート剤一分子中に含まれる炭素原子の数はいずれも10原子以上、15原子以下であり、酸化分解時に生じる二酸化炭素量が過多とならないため、Srが炭酸ストロンチウムとして不純物化する量を抑えることができた。従って実施例9〜14に示したキレート剤を用いて製造したペロブスカイト型酸化物は、結晶子径が10〜25nmの範囲であり、立方晶ペロブスカイト相の割合がさらに高いため、さらに優れた酸素吸着速度を示す。
特に、実施例11〜14に示したキレート剤は、La、Sr、Ca、Co、Feに対するキレート安定度定数が10以上であり、全ての金属イオンに対するキレート安定度定数が非常に大きいことから、生成するキレート錯体の安定性は、本発明の実施例の中で最も大きい。さらにキレート剤一分子中に含まれる炭素原子の数は10原子以上、15原子以下であり、キレート安定度定数の大きさと炭素原子数がバランスすることから、実施例11〜14に示したキレート剤を用いて製造したペロブスカイト型酸化物は、結晶子径が15〜20nmの範囲であり、立方晶ペロブスカイト相の割合が高いため、非常に優れた酸素吸着速度を示す。
比較例5は、仮焼温度および本焼成温度が本発明の範囲よりも低い。仮焼および本焼成では、硝酸塩の分解、キレート剤の分解、およびペロブスカイト型酸化物の形成が起こるが、仮焼温度および本焼成温度が低すぎるため、分解反応およびペロブスカイト型酸化物の形成反応が進行せず、生成する立方晶ペロブスカイト型酸化物の割合は非常に低いものとなっている。
比較例6は、仮焼温度および本焼成温度が本発明の範囲よりも高い。比較例8では仮焼温度が本発明の範囲を超えているため、キレート剤の酸化分解温度以上となり、仮焼段階で多量の二酸化炭素が生じる。すると不純物である炭酸ストロンチウムが多量に生成するため、立方晶ペロブスカイト相の割合が低くなり、酸素吸着速度が低下する。また比較例6は、本焼成温度も本発明の範囲を超えているため、結晶粒成長が促進され粗大な粒子が生じ、粒子の比表面積は低下しており、結晶子径は増大している。また結晶粒の融着により一次粒子表面の凹凸が失われ、また粒子集合体内部の間隙も失われるため、気孔率が小さくなり、ガス拡散性の低い形状となっている。本焼成温度が高いため不純物は分解され、立方晶ペロブスカイト相の割合は高いが、比表面積、結晶子径、気孔率の影響から、酸素吸着速度は低い。
比較例7は、用いたキレート剤のキレート安定度定数が本発明の範囲よりも低い。キレート剤はペロブスカイト型酸化物を構成する金属イオンに配位し、均質性を向上させることで、立方晶ペロブスカイト相の割合を高める。比較例7で用いたキレート剤では、キレート安定度定数が本発明の範囲よりも低いため、金属イオンがキレート錯体化しづらく、また生成したキレート錯体の安定性が不足である。結果として金属イオンの均質性が不足し、立方晶ペロブスカイト相の割合が低下している。従って比較例7は、用いたキレート剤のキレート安定度定数が低く、立方晶ペロブスカイト相の割合が不足することから、酸素吸着速度が低い。
比較例8は、用いたキレート剤一分子中に含まれる炭素原子数が、本発明の範囲よりも多い。キレート剤は、金属イオンの均質性向上により立方晶ペロブスカイト相の割合を高めるが、一方で、キレート剤の酸化分解時に生じる二酸化炭素が不純物である炭酸ストロンチウムの生成原因ともなっており、発生する二酸化炭素量が多すぎるので、立方晶ペロブスカイト相の割合は逆に低下している。比較例8で用いたキレート剤は、一分子中に含まれる炭素原子数が18であり、本発明の範囲を超えている。従って比較例8は、用いたキレート剤の一分子中に含まれる炭素原子数が多く、酸化分解時に生じる多量の二酸化炭素のために不純物、特に炭酸ストロンチウムの生成を促進してしまい、立方晶ペロブスカイト相の割合が不足していることから、酸素吸着速度は低い。
比較例9〜16は、特許文献1〜5のペロブスカイト型酸化物の組成および製造法をトレースし、本発明で行った酸素吸着速度の測定法を適応したものである。
比較例9は特許文献1に対応している。比較例9の組成は(La0.1Sr0.9)(Co0.9Fe0.1)O3-δでSrおよびCo含有率が高く、酸素吸着特性の優れた組成である。しかしながら、本焼成を1000℃という高温で行っているため結晶粒が粗大化し、得られたペロブスカイト型酸化物は低比表面積である。これは、結晶粒の融着により一次粒子表面の凹凸が失われ、また粒子集合体内部の空隙も失われるためである。これに伴い、気孔率が小さくなり、ガス拡散性の低い形状となっている。従って、本発明の製造法で得た同様の組成のペロブスカイト型酸化物(実施例4、7〜10、14)と比較して、酸素吸着速度が非常に小さい。
比較例10〜11は特許文献2に対応している。比較例10は、特許文献2の実施例に記載のペロブスカイト型酸化物のうち、最もSrおよびCoの割合が高い組成である。比較例10のペロブスカイト型酸化物は、特許文献2記載の製造法により得られるが、本発明に係るペロブスカイト型酸化物と比較してSrの含有率が低く酸素吸着特性の劣る組成であるため、酸素吸着速度は非常に小さな値しか得られていない。比較例11のペロブスカイト型酸化物は、実施例4、7〜10、14と同様にSrおよびCoの含有率が高い、酸素吸着特性の優れた組成であり、これを特許文献2記載の製造法により得たものである。特許文献2記載の製造法では、仮焼・本焼成という二段階の熱処理を行っていないため、不純物が残留しやすい。さらに本焼成温度は500℃と低く、不純物が残留しやすい。従って比較例11のペロブスカイト型酸化物は、立方晶ペロブスカイト相の割合が非常に低い。それゆえ、SrおよびCoの含有率の高い組成であったとしても、比較例11のペロブスカイト型酸化物では非常に小さな酸素吸着速度しか得られていない。
比較例12〜13は特許文献3に対応している。上述した比較例10〜11と同様、比較例12は、特許文献3の実施例に記載のペロブスカイト型酸化物のうち、最もSrおよびCoの割合が高い組成である。比較例12のペロブスカイト型酸化物は、特許文献3記載の製造法により得られるが、本発明のペロブスカイト型酸化物と比較してSrおよびCoの含有率が低く酸素吸着特性の劣る組成であるため、酸素吸着速度は非常に小さな値しか得られていない。比較例13のペロブスカイト型酸化物は、実施例4、7〜10、14と同様にSrおよびCoの含有率が高い、酸素吸着特性の優れた組成であり、これを特許文献3記載の製造法により得たものである。特許文献3記載の製造法では、仮焼・本焼成という二段階の熱処理を行っておらず、不純物が残留しやすい。従って比較例13のペロブスカイト型酸化物は、立方晶ペロブスカイト相の割合が非常に低い。それゆえ、SrおよびCoの含有率の高い組成であったとしても、比較例13のペロブスカイト酸化物では非常に小さな酸素吸着速度しか得られていない。
また、比較例9〜13のペロブスカイト型酸化物の製造法では、キレート剤を用いていない。キレート剤を用いない場合、不純物である炭酸ストロンチウムは生成しないものの、ペロブスカイト化する前の金属イオンの均質性が悪く、ペロブスカイト構造を形成するために金属イオンが移動しなければならない距離が長いことから、キレート剤を使用した場合と比較して立方晶ペロブスカイト相が生成しづらい。また、キレート剤を用いなければ酸化分解は起こらないため、当然二酸化炭素は発生しない。従ってペロブスカイト型酸化物の核となる金属イオンの集合は分断されないため、結果として、得られるペロブスカイト型酸化物の結晶子径はコントロールされていない。
比較例9に関しては、本焼成温度が高いため、不純物は分解されており、キレート剤の使用の有無に関わらず立方晶ペロブスカイト相の割合は高い。しかし、比表面積が小さく、結晶子径を本発明の範囲にコントロールすることができず、ガス拡散性の低い形状となっているため、酸素吸着速度は低い。
比較例14は、特許文献4に対応している。比較例14のペロブスカイト型酸化物は、実施例4、7〜10、14と同様にSrおよびCoの含有率が高い、酸素吸着特性の優れた組成であり、これを特許文献4記載の製造法により得たものである。特許文献4記載の製造法では、仮焼・本焼成という二段階の熱処理を行っているものの、仮焼温度がキレート剤であるクエン酸の酸化分解温度以上であり、仮焼段階で多量の二酸化炭素が生じた。その結果不純物である炭酸ストロンチウムが多量に生成したため、立方晶ペロブスカイト相の割合が低くなり、酸素吸着速度は低い。また比較例14は、本焼成温度も本発明の範囲を超えているため、結晶粒成長が促進され粗大な粒子が生じ、粒子の比表面積は低下、結晶子径は増大している。また結晶粒の融着により一次粒子表面の凹凸が失われ、また粒子集合体内部の間隙も失われているため、ガス拡散性の低い形状となって、気孔率が小さくなっている。本焼成温度が高いため不純物は分解されており、立方晶ペロブスカイト相の割合は高いが、比表面積、結晶子径、粒子形状の影響から、酸素吸着速度は低い。
比較例15〜16は、特許文献5に対応している。比較例15は、特許文献5の実施例に記載のものと同じ組成のペロブスカイト型酸化物である。比較例15のペロブスカイト型酸化物は、特許文献5記載の製造法により得られるが、本発明のペロブスカイト型酸化物と比較してSrおよびCoの割合が低く酸素吸着特性の劣る組成であるため、酸素吸着速度は非常に小さな値しか得られていない。比較例16のペロブスカイト型酸化物は、実施例4、7〜10、14と同様にSrおよびCoの含有率が高い、酸素吸着特性の優れた組成であり、これを特許文献5記載の製造法により得たものである。特許文献5記載の製造法では、仮焼・本焼成という二段階の熱処理を行っているものの、本焼成温度は500℃と低く、不純物が残留しやすい。従って比較例16のペロブスカイト型酸化物は、立方晶ペロブスカイト相の割合が非常に低い。それゆえ、SrおよびCoの含有率の高い組成であったとしても、比較例16のペロブスカイト酸化物では非常に小さな酸素吸着速度しか得られていない。