JP6298385B2 - 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材 - Google Patents

金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材 Download PDF

Info

Publication number
JP6298385B2
JP6298385B2 JP2014168402A JP2014168402A JP6298385B2 JP 6298385 B2 JP6298385 B2 JP 6298385B2 JP 2014168402 A JP2014168402 A JP 2014168402A JP 2014168402 A JP2014168402 A JP 2014168402A JP 6298385 B2 JP6298385 B2 JP 6298385B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal oxide
fine particles
metal
oxide fine
hydrolysis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014168402A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016044089A (ja
Inventor
田中 宏幸
宏幸 田中
淳司 村松
淳司 村松
澄志 蟹江
澄志 蟹江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tohoku University NUC
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Tohoku University NUC
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tohoku University NUC, Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Tohoku University NUC
Priority to JP2014168402A priority Critical patent/JP6298385B2/ja
Publication of JP2016044089A publication Critical patent/JP2016044089A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6298385B2 publication Critical patent/JP6298385B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)

Description

本発明は、金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材に関するものである。
ペロブスカイト型の結晶構造(以降、単にペロブスカイト構造と言う。)を有する金属酸化物微粒子は、様々な用途に用いられている。
例えば、当該金属酸化物微粒子は、特許文献1に記載のような無機蛍光材料として用いられたり、特許文献2に記載のような強誘電体として使用されている。また、特許文献3においては、当該金属酸化物微粒子が圧電体、誘電体として使用されている。この特許文献3においては、ゲル−ゾル法と呼ばれる技術を採用している。具体的に言うと、Ti錯体に対してBiの水酸化物、そしてNaやKの水酸化物を混合し、加水分解を行い、ゲル化およびゾル化を経て金属酸化物微粒子を作製している。
特開2013−053279号公報 特開2004−111789号公報 特開2007−290887号公報
特許文献1においては高温固相反応法により当該金属酸化物微粒子を作製している。また、特許文献2においては所定の金属からなるスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、当該金属酸化物微粒子を作製している。
しかしながら、高温固相反応法だと酸化物を融解させるくらいの高温条件にしなけらばならない。また、スパッタリングを行う場合、そもそも所定の金属からなるスパッタリングターゲットを用意しなければならない。別の言い方をすると、所定の金属がドープされたペロブスカイト構造の金属酸化物微粒子を所望したとしても、所定の金属に対応するスパッタリングターゲットを用意しなければならない。そうなると、スパッタリングターゲットが自ずと高価となるおそれもあるし、そもそもスパッタリングターゲットを入手できないという事態も考えられる。
本発明は、上記の課題を鑑み、ペロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物微粒子を、他の金属を良好にドープさせつつも比較的簡素に作製可能な手法を提供し、さらには当該他の金属が加えられたことにより発現する機能を向上させた金属酸化物微粒子およびその関連物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題について鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者は、特許文献3に記載のようなゲル−ゾル法と呼ばれる画期的な技術を採用するという知見を得た。このゲル−ゾル法に基づき鋭意検討を行った結果、ゲル−ゾル法において用いていた金属aの錯体αに対し、ドープ対象となる金属bの原料においても錯体を使用する、つまり金属bの錯体βを使用するという手法を想到した。詳しく言うと、
(1)金属を錯化することにより加水分解の速度を抑えつつ、
(2)金属aも金属bも錯化することにより両者の加水分解の速度を近づける
その上で、
(3)錯体αと錯体βとを共存させた状態で加水分解を開始する。
という3つのステップを踏襲する手法を想到した。
そして、上記のステップを行う際に、別の金属cの水酸化物を、錯体αおよび錯体βとを共存させた状態とすることにより、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物微粒子を作製するという手法を想到した。
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
ぺロブスカイト型の結晶構造を有する金属aの酸化物であって、金属aとは異なる金属b、および金属aとは異なる金属cを含有する金属酸化物微粒子を製造する方法であって、
前記金属aの錯体α、前記金属bの錯体β、金属cの水酸化物および水を含む溶液を加熱することにより錯体に対して加水分解を生じさせる加水分解工程と、
前記加水分解工程後、析出物である前記金属酸化物微粒子を回収する回収工程と、
を有し、
前記加水分解工程は、
前記加水分解を進行させることにより前記溶液をゲル化させるゲル化工程と、
前記ゲル化工程によりゲル化された前記溶液を、前記加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、
を有する、金属酸化物微粒子の製造方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記金属aはTiであり、前記金属bはNb、Ta、Mo、WおよびVのうち少なくともいずれかであり、前記金属cはSrである。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、
前記加水分解工程においては、
Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体、Sr水酸化物および水を含む溶液を加熱することにより各錯体に対して加水分解を生じさせる。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の発明において、
前記Ti含有化合物はTiアルコキシドであり、前記Nb含有化合物はNbアルコキシドである。
本発明の第5の態様は、第3または第4の態様に記載の発明において、
前記錯化剤Aおよび前記錯化剤Bのうち少なくともいずれかはトリエタノールアミンである。
本発明の第6の態様は、第3〜第5のいずれかの態様に記載の発明において、
前記加水分解工程においては還元性化合物を溶液の少なくとも一部として用いる、
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の発明において、
前記還元性化合物はジエチレングリコールである。
本発明の第8の態様は、
ぺロブスカイト型の結晶構造を有する金属aの酸化物であって、金属aとは異なる金属b、および金属aとは異なる金属cを含有するぺロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物において、以下の条件のうち少なくとも1つの条件を満たす、金属酸化物微粒子である。
(1)当該微粒子の体積平均径をD90で除した値(Mv/D90)が0.65〜1.00である。
(2)当該微粒子のD10を体積平均径で除した値(D10/Mv)が0.70〜1.00である。
(3)当該微粒子のD10をD90で除した値(D10/D90)が0.50〜1.00である。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の発明において、
前記金属酸化物微粒子の体積平均径が結晶子径の1.0倍〜2.0倍である。
本発明の第10の態様は、第8または第9の態様に記載の発明において、
ぺロブスカイト型の結晶構造を有しかつNbおよびSrを含有するTiの酸化物において、a軸の格子定数が3.905Åを超えた値である。
本発明の第11の態様は、第8〜第10のいずれかの態様に記載の金属酸化物微粒子を乾燥して得られる、金属酸化物微粒子粉末である。
本発明の第12の態様は、第8〜第10のいずれかの態様に記載の金属酸化物微粒子が液体媒質中に分散している、金属酸化物微粒子分散液である。
本発明の第13の態様は、第8〜第10のいずれかの態様に記載の金属酸化物微粒子が固体媒質中に分散している、金属酸化物微粒子分散体である。
本発明の第14の態様は、第8〜第10のいずれかの態様に記載の金属酸化物微粒子を含有する被膜が基材表面に設けられている、被覆基材である。
本発明によれば、ペロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物微粒子を、他の金属を良好にドープさせつつも比較的簡素に作製可能な手法を提供し、さらには当該他の金属が加えられたことにより発現する機能を向上させた金属酸化物微粒子およびその関連物を提供することを可能とする。
本実施形態における金属酸化物微粒子の製造方法を示すフローチャートである。 ゲル−ゾル法のメカニズムを説明するための概念図である。 本実施例におけるTEM観察の結果を示す写真である。 本実施例におけるXRD測定の結果を示すグラフである。 本実施例におけるXRD測定により得られたa軸の格子定数および結晶子径を示す表である。 本実施例において、試料をトルエンに分散させたときの、動的光散乱法による粒度分布測定の結果を示すものであり、(a)はグラフ、(b)は表である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.金属酸化物微粒子の製造方法
1−A)準備工程
1−B)加水分解工程
1−B−a)ゲル化工程
1−B−b)ゾル化工程
1−C)回収工程
1−D)その他
2.金属酸化物微粒子
3.金属酸化物微粒子の関連物
なお、本実施形態は、ゲル−ゾル法をベースとした手法である。そのため、以下の内容において特記の無い事項に対しては、ゲル−ゾル法に関する公知の技術(例えば特許文献3や公知の論文など)を適宜用いても構わないし、ペロブスカイト構造の金属酸化物微粒子の製造の際に適宜必要な技術についても、公知の技術を適宜用いても構わない。
<1.金属酸化物微粒子の製造方法>
以下、本実施形態における金属酸化物微粒子の製造方法について説明する。図1は本実施形態における金属酸化物微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
1−A)準備工程
本工程においては、まず、金属a含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られる錯体α、および、金属b含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られる錯体βを準備する。それと共に、金属cの水酸化物を準備する。
なお、金属aと金属bとは互いに異なる金属である。それ以外には、各金属の種類に対する制限は特にない。詳しくは後述するが、錯体を形成可能であり、両錯体が共存する状況で加水分解を行った際にゲル化が生じ、金属酸化物微粒子が析出する条件を満たせば、特に制限はない。
また、金属a含有化合物および錯化剤Aの具体的な化合物としては、錯体αが得られれば特に限定は無い。最終的に錯体αが加水分解して金属a水酸化物となるように、金属a含有化合物および錯化剤Aを選択すればよい。金属b含有化合物および錯化剤Bについても同様である。
本実施形態においては、金属aをTi、金属bをNbとした場合について述べる。
金属a(Ti)含有化合物の具体例としては、Tiアルコキシドが挙げられる。Tiアルコキシドとしては、例えばチタンテトライソプロポキシド(TIPO)が挙げられるが、これに限定されない。それ以外にも、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキスジエチルアミノチタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(ジピバロイルメタナト)チタン等を用いることができる。チタンアルコキシドは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
同様に、金属b(Nb)含有化合物の具体例としては、Nbアルコキシドが挙げられる。Nbアルコキシドとしては、例えばニオブエトキシドが挙げられるが、これに限定されない。それ以外にも、ペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタ−i−プロポキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−i−ブトキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−sec−ブトキシニオブ等を用いることができる。ニオブアルコキシドは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
錯化剤Aの具体例としては、トリエタノールアミン(TEOA)が挙げられる。それ以外にも、アミンとしては、トリエチレンジアミン(TMD)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(DMED)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、トリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)などが挙げられる。アミノ酸としては、L−アスパラギン酸(AA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(EDTA)などが挙げられる。これらの化合物のうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
同様に、錯化剤Bの具体例としては、トリエタノールアミンが挙げられる。それ以外にも、上記に列挙したアミンやアミノ酸が挙げられる。
なお、後述の実施例が示すように、錯化剤Aおよび錯化剤Bのうち少なくともいずれかはトリエタノールアミンであるのが好ましく、両方ともトリエタノールアミンであるのが非常に好ましい。
一方、金属cは、任意のものでも構わない。本実施形態においてはSrを用いた例について述べるが、金属bと同じ種類の金属を用いても構わない。最終的にペロブスカイト構造の金属酸化物微粒子が析出すれば、特に制限はない。Sr以外には、Ba、Ca、Mgなどが挙げられる。
本実施形態においては、金属cをSrとし、Sr水酸化物を準備する。
1−B)加水分解工程
本工程においては、Ti錯体およびNb錯体、Sr水酸化物、水、そして溶媒を還元性化合物とした溶液を用意する。本発明の知見として述べたように、本実施形態においては、酸化物となる金属の錯体と、ドープする金属の錯体とを準備することが特に重要である。これらの金属錯体を準備した後、当該溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらすソルボサーマル合成を行う。本明細書における「ソルボサーマル合成」とは、溶媒を水100%とするもの以外、すなわち水以外の溶媒が存在する状況で加熱を行い、加水分解を行うことを指す。好ましくは、水の体積%が50体積%未満、または、溶媒としての還元性化合物の体積%が50体積%以上とする。本実施形態においては溶液(ここで言う溶媒)の少なくとも一部として還元性化合物を使用する。本明細書においては、単に還元性化合物のことを溶媒と呼ぶこともあるが、この表現には還元性化合物に水が含有されている場合も含まれるものとする。
なお、ソルボサーマル合成の具体的な手法については、以下に特記の無い内容については、公知の手法を用いても構わない。また、以下に特記する本工程の条件はあくまで好ましい例であり、本発明の効果を奏する限り、以下の例以外の条件で本工程を行ってももちろん構わない。また、本実施形態においてはソルボサーマル合成を行うが、水溶液中の水の体積%は50体積%を超えたものとする水熱合成を行っても構わない。
また、加水分解工程前の溶液におけるTiとNbのモル比は、[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40とするのが好ましい。別の言い方をすると、[Nb]/([Ti]+[Nb])を0.1以上0.4以下とするのが好ましい。もちろん、当該範囲の上限値が更に大きくなっても構わない可能性は十分にある。
なお、以降「〜」は所定の数値以上かつ所定の数値以下のことを表すものとする。
Srのモル比については、任意のもので構わないが、例えば、ペロブスカイト構造におけるBサイトを占有するTiをNbで置換する場合には、[Sr]/([Ti]+[Nb]+[Sr])を0.5とすることが好ましい。
以上の内容を踏まえて、加水分解工程を行う。そして、本実施形態においては、加水分解工程中、加水分解を進行させることにより溶液をゲル化させるゲル化工程、そしてさらに加水分解を進行させて、ゲル化した溶液をゾル化させるゾル化工程を行う。
1−B−a)ゲル化工程
ここで、ゲル化工程において生じる反応機構について、推測を含むところもあるが、説明する。
このゲル−ゾル法と呼ばれる技術としては、例えば、本発明者が成した発明(特許文献3)が挙げられる。ゲル−ゾル法とは、掻い摘んで言うと、金属酸化物微粒子を作製するための技術であって、ゲル混濁液を出発にして最終的には金属酸化物のゾル(コロイド)を得る方法である。そのメカニズムとしては、特許文献3の[0017]〜[0020]に記載のものが挙げられる。
本実施形態においてはTi錯体とNb錯体とを用いるが、まず、Nb−SrTiOのベースとなるTi錯体に着目して説明する。
Srイオンの存在下でTi錯体を形成し、これを加水分解することで、得るべき金属酸化物微粒子の生成に必要な前駆体物質を、当該錯体から徐々に放出することが可能となる。詳しく言うと、Srイオンの存在下でTi錯体に対して加水分解を行うことにより、SrとTiからなるアモルファス(非晶質)の複合水酸化物が形成される。この非晶質複合水酸化物がゲル化の基となる。加水分解を続行することにより、非晶質複合水酸化物の濃度が上昇し、各々の間で水素結合が形成されることで非晶質複合水酸化物がゲルとして析出する。一方、溶存する非晶質複合水酸化物の濃度の上昇はペロブスカイト構造を有するチタン酸ストロンチウムの核生成をもたらす。生じた核はゲルから前駆体モノマーの供給を受け、ペロブスカイト構造をを有するチタン酸ストロンチウムが得られる。
上述の通り、非晶質複合水酸化物によりゲル化が行われ、ゲル網が形成される。その様子を図2に示す。ゲル−ゾル法においては、非晶質複合水酸化物の濃度が高くなった部分から「非晶質複合水酸化物→前駆体モノマー→チタン酸ストロンチウム(SrTiO)」という流れの反応が起き、当該部分からSrTiOの結晶核が生じることになる。ただ、ゲル−ゾル法においては、ゲル網上、またはその網目であって非晶質複合水酸化物の濃度が高くなった部分においてSrTiOの結晶核が生じることになる。その場合、結晶核が生成して微粒子が成長するとしても、当該微粒子は、隣接するゲル網の網上または網目に同様に存在する微粒子とは、網目が邪魔することにより接触困難となり、各微粒子の成長過程を妨害する要因がほとんど存在しなくなる。つまり、非晶質複合水酸化物によるゲル状態を経るおかげで、溶液内のブラウン運動が抑制される。その結果、微粒子同士での衝突機会が著しく減少し、各微粒子が同様に成長することが可能となり、形状や大きさが均一な微粒子が得られ、ひいては極端に径が大きなまたは小さな微粒子がほとんど存在しないという単分散ないしそれに近い微粒子が得られる。しかも、微粒子同士の凝集の発生も著しく抑制される。
また、このゲル網は、上記の役割に加え、SrTiOの原料を供給する供給源(いわばリザーバー)の役割も担う。図2に示すように、加水分解が進行すると、ゲル網を構成する非晶質複合水酸化物から、中間生成物である前駆体モノマーが形成される。この前駆体モノマーがSrTiOの結晶核と接触することにより、SrTiOの微粒子が成長していく。
ここで、本実施形態においては、Ti錯体に加え、ドープ対象となるNbの原料においても錯体を使用する、つまりNb錯体を使用する。詳しく言うと、
(1)金属を錯化することにより加水分解の速度を抑えつつ、
(2)TiもNbも錯化することにより両者の加水分解の速度を近づける
その上で、
(3)Ti錯体とNb錯体とを共存させた状態で加水分解を開始する。
という3つのステップを踏襲する。
上記の手法を採用することにより、以下の効果を奏する。
まず、加水分解工程(ゲル化工程)「非晶質複合水酸化物→前駆体モノマー→SrTiO」という流れ自体の速度を抑えることが可能になり、水の添加部近傍のみで不均一に加水分解が生じることがなくなり、得られる微粒子の粒径分布が広がるおそれもなくなる。しかも、加水分解工程自体の速度を抑えられるため、室温での作業が可能となる。具体的に言うと、加水分解工程前に、室温において、Ti錯体とNb錯体とを共存させた溶液を準備することが可能となる。そして、当該溶液を加熱することにより加水分解工程を開始、逆に当該溶液を冷却することにより加水分解工程を停止させることが可能となる。つまり、作業者の意図通りに加水分解工程を制御することが可能となる。その結果、Nb−SrTiOを作製する際の作業性が著しく向上する。
また、TiとNbとを共に錯化したものを用いることにより、Tiの非晶質水酸化、前駆体モノマー化、酸化物生成のタイミングに、Nbの非晶質水酸化、Nb前駆体モノマー化、酸化物生成のタイミングを近づけることが可能となる。それにより、例えばTiとNbの非晶質水酸化が同じタイミングで生じ、非晶質水酸化物にはTiとNbが混在した状態となる。その結果、最終的に得られる金属酸化物においては、元素またはイオンレベルで両金属を混合することが可能となる。しかも、本実施形態の手法を採用することにより、結晶内における元素レベルでの均一性(分散性)を獲得することができる。その上、原料の仕込み量におけるNb比率とNb−SrTiOにおけるNb比率を極めて近い値とすることが可能となる。その結果、Nbアルコキシドを過剰に用意する必要がなくなり、Nb−SrTiOの生産効率を著しく向上させられる。
以上の効果を奏しつつ、さらに加水分解を進行させて、ゲル化した溶液をゾル化させる。
1−B−b)ゾル化工程
加水分解を進行させると、ゲルはゾル(コロイド)に相転移していくので反応の最終段階では、微粒子が成長し、全てゾルに変化する。そして、ゲル状混合物を加熱、冷却することによりゾル状混合物が得られ、遠心分離機等を用いた固液分離操作によりNb−SrTiO微粒子を得る。加水分解(ゲル化)を進行させた後に、ゲルはゾルに相転移していくため、この相転移のことをゾル化工程、ゲル化緩和工程、またはゾルへの相転移工程と呼んでも構わない。つまり、加水分解工程内においてゲル化工程の後でゾル化工程が行われる。
上記の手法ならば、核生成を抑制しつつ、Nb−SrTiO微粒子の成長を行うことが可能となり均一な粒子径を有する微粒子を合成することができる。、また、結晶子径を大きくすることが可能となる。また、高温固相反応法やスパッタリングのような大掛かりな手法を行う必要がなくなる。しかも、Nb錯体が高濃度であっても、ペロブスカイト構造を有するNb−SrTiOを安定して作製可能である。
さらに、本実施形態においては、比較的大きな結晶子径のNb−SrTiOの微粒子が得られる一方、得られるNb−SrTiOの微粒子は、単分散ないしそれに近い状態となっている。つまり、Nb−SrTiOの微粒子において径が極端に大きいもの(それに加えて、逆に極端に小さいもの)はほとんど含まれておらず、微粒子全体を見ても径がほぼ一定であり、いわゆる単分散ないしそれに近い状態となっている。
また、凝集度合いについても、結晶子径に対し、液体媒質中での体積平均径Mvはあまり大きくなっておらず、凝集度合いが極めて小さくなっている。
上記の効果を追補する形であるが、上記の手法を採用すると、以下の効果も奏する。
凝集を抑制するゲル網を構成する非晶質水酸化チタンは、元を正せばTi錯体である。そのため、Ti源として塩化物やアルコキシドをそのまま用いる場合に比べ、加水分解の速度を適度に抑えることが可能となる。その結果、非晶質水酸化チタンの濃度が、LaMerの原理で言うところの過飽和度(結晶核が生成するための物質の濃度)へと急激に到達することがない。しかも、温度や時間などの諸条件を適宜設定することにより、非晶質水酸化チタンの濃度が過飽和度を超えるタイミングや超える度合いを制御することが可能となり、微粒子成長中の新たな核生成を抑制することが可能となる。これは、核生成期と微粒子成長期を分離することが可能であることを意味する。この分離が可能となると、ごく初期に生成した結晶核からのみ微粒子が成長し、結果として凝集度合いを相当小さくした状態、かつ、極端に径が大きなまたは小さな微粒子がほとんど存在しないという単分散ないしそれに近い状態であるNb−SrTiO微粒子を生成することが可能となる。
また、ゲル−ゾル法を採用すれば、金属酸化物微粒子を大量に合成できる。また、当該微粒子に形状異方性を導入でき、当該微粒子の結晶子径を制御できる。また、固相法に比較し低温焼結が可能となり、成長微粒子の凝集を抑制可能となる。
なお、ゲル化工程およびゾル化工程を含めた加水分解工程を行うための温度条件としては140℃〜250℃が好ましい。140℃以上なら、十分に加水分解を生じさせることが可能である。250℃以下ならば、ゲル状態を十分長く維持することが可能となる。
また、時間条件としては、十分に加水分解を生じさせること、および作業効率を鑑みると、3h〜72hで行うのが好ましい。
また、Nb比率を高める場合、長時間過ぎず適度な時間の加熱分解工程を行うためには、溶媒に対する水の量を調整する必要がある。そのため、本実施形態においては、水と溶媒との体積比は、ゲル化工程においてゲル化した溶液を、加水分解を進行させることによりゾル化することが可能な値に設定する。
ただ、上記の各種の数値範囲に本実施形態は限定されるものではない。本実施形態においては、加水分解工程すなわちゲル化工程およびゾル化工程を行う。両工程を行うということはすなわち、加水分解工程前の原料の仕込みにおける各元素の比率、還元性化合物と水との体積比、加水分解工程の温度条件および時間条件が適切に設定されていることを意味する。つまり本実施形態において上記の各条件は、加水分解を進行させることによりゲル化およびゾル化をもたらすことが可能な値に設定されている。
1−C)回収工程
本工程においては、加水分解工程後、以上のメカニズムによりゾルとして析出した金属酸化物微粒子を回収する。回収手法としては、ゾルを回収する公知の手法を用いても構わない。例えば、遠心分離により金属酸化物微粒子を回収しても構わない。また、適宜、回収した金属酸化物微粒子に対して洗浄および乾燥処理を行っても構わない。
1−D)その他
また、加水分解工程(ゲル化工程)において、結晶核の生成のタイミングや結晶核から微粒子が成長するタイミングを制御するための化合物を溶液に添加しても構わない。この化合物としては、アンモニアまたはその化合物が挙げられる。また、加水分解工程(ゲル化工程)において、Nb−SrTiOに対して酸素欠損をもたらす還元性化合物(例えばグリコール類)を溶液に添加しても構わない。
<2.金属酸化物微粒子>
本実施形態の金属酸化物微粒子の製造方法により製造された金属酸化物微粒子自体にも大きな特徴がある。以下、詳述する。
まず、凝集度合いの観点から見ると、当該微粒子を液体媒質(例えばトルエン)に分散させたときの体積平均径Mv(分散粒子径)は当該結晶子径の1.0倍〜2.0倍(好ましくは1.0倍〜1.6倍)の範囲に留まる。つまり、本実施形態の金属酸化物微粒子は、XRD測定の際においても当該微粒子の凝集度合いが非常に低い。そのため、所定の溶液に当該微粒子を分散させたとしても、体積平均径Mvは結晶子径と同程度に保たれているのである。所定の溶液に当該微粒子を分散させた当該微粒子の体積平均径Mvが結晶子径の1.6倍以下というのは、シンプルに考えると、ナノレベルの微小な結晶子同士が平均で2個程度しか互いに固着していない状態を指す。このことは、1つまたは2つの結晶子が1つの微粒子を形成するという驚くべき分散性を備えていることを意味する。
さらに、極端に大きなまたは小さな径の微粒子がほとんど存在しない(すなわち単分散ないしそれに近い状態)という観点から見ると、当該微粒子を液体媒質(例えばトルエン)に分散させたとき、Mv/D90が0.65〜1.00(好ましくは0.70〜1.00)の範囲に留まる。このように、Mv/D90が1に近い値となるということは、当該微粒子が、液体媒質に分散させたときに粒径が揃う微粒子であるのは当然として、元を正せば、液体媒質に分散させる前の段階でも粒径が揃っている微粒子であることを意味する。なぜなら、微粒子の段階において粒径が揃っていなければ、液体媒質に分散させた場合に粒径が揃わないためである。そのため、当該微粒子においては、液体媒質に分散させない状態であってもMv/D90が0.65〜1.00の範囲に留まる。
D10/MvやD10/D90についても、Mv/D90と同様に規定することが可能である。すなわち、極端に大きなまたは小さな径の微粒子がほとんど存在しない(すなわち単分散ないしそれに近い状態)という観点から見ると、当該微粒子を液体媒質(例えばトルエン)に分散させたとき、D10/Mvが0.70〜1.00(好ましくは0.73〜1.00)の範囲に留まる。また、D10/D90は0.50〜1.00の範囲に留まる。D10/MvやD10/D90が1に近い値となるということは、当該微粒子が、液体媒質に分散させたときに粒径が揃う微粒子であるのは当然として、元を正せば、液体媒質に分散させる前の段階でも粒径が揃っている微粒子であることを意味する。
なお、上記の各規定を適宜組み合わせるのが好ましい。なお、条件次第では上記の各種の数値範囲が変動する可能性もあるが、その点については本発明者が鋭意検討中である。
また、SrTiOがペロブスカイト構造を有することに倣い、Nbがドープされた後においてもペロブスカイト構造を有する必要がある。ペロブスカイト構造においてはTiはTi4+イオン状態である。なお、Nbがドープされると、NbはNb5+イオン状態となる。イオン半径の大きさにおける互いの関係としては、Ti4+<Nb5+である。そのため、Srの比率はそのままで、Nbが多量にドープされてTiの比率が下がった状態となるたびに、結晶構造においてa軸の格子定数は増加する。言い方を変えると、Nbがドープされた場合であってもa軸の格子定数が測定されるということは、ペロブスカイトの結晶構造が形成されていること、すなわちSrTiOにNbが元素またはイオンレベルで良好にドープされていることを指す。そのため、SrTiOにNbが良好にドープされていることを指し示すための規定としては「結晶構造においてa軸の格子定数が3.905Å(SrTiO単体の場合の値)を超えた値である」となる。
<3.金属酸化物微粒子の関連物>
本実施形態の金属酸化物微粒子から得られる関連物にも本発明の思想が適用されており、当該関連物にも大きな技術的特徴が存在する。
例えば、上記の金属酸化物微粒子を乾燥して得られる金属酸化物微粒子粉末も挙げられる。
また、上記の金属酸化物微粒子が液体媒質中に分散している金属酸化物微粒子分散液が挙げられる。当該分散液は、上記の解砕処理工程を行った上で作製してもよい。ここで挙げた液体媒質としては、金属酸化物微粒子を分散可能なものならば特に制限はなく、公知のものを用いても構わない。
また、上記の金属酸化物微粒子が固体媒質中に分散している金属酸化物微粒子分散体も挙げられる。この固体媒質としては、金属酸化物微粒子を分散可能なものならば特に制限はなく、公知のもの(ガラスや樹脂)を用いても構わない。
また、上記の金属酸化物微粒子を含有する被膜が基材表面に設けられている被覆基材も挙げられる。この基材としては、当該皮膜を形成可能なものならば特に制限はなく、公知の基材(ガラス基体や樹脂基体(基板またはフィルム))を用いても構わない。
以上の結果、本実施形態ならば上記で挙げた効果を奏する。これらの効果をまとめると、ペロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物微粒子を、他の金属を良好にドープさせつつも比較的簡素に作製可能な手法、さらには当該他の金属が加えられたことにより発現する機能を向上させた金属酸化物微粒子およびその関連物を提供可能となる。
なお、本実施形態においてはSrTiOに対してNbをドープする例について述べたが、Nbに加え、他の金属をドープする場合にも本実施形態を適用可能である。例えば、Ti錯体、Nb錯体と同様に、他の金属の錯体を作製しておき、これらの錯体が共存した状態で加水分解を行えばよい。なお、当該他の金属は1種でなくともよく、2種の金属について各々錯体を作製しておいても構わない。なお、錯体化するまでの具体例(当該他の金属を含有する化合物(アルコキシド等)、錯化剤)については、上記で列挙したものの中から適宜選択しても構わない。
それと同様に、ぺロブスカイト構造のAサイトを占有する金属源としてSr以外の水酸化物を使用しても構わない。こうすることにより、ぺロブスカイト構造を有するチタン系酸化物に対して複数の金属をドープすることが可能となる。
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(金属酸化物微粒子粉末の製造)
本実施例においては以下のものを用いた。
Ti含有化合物…チタンテトライソプロポキシド(TIPO)
錯化剤A…トリエタノールアミン(TEOA)
Nb含有化合物…ニオブエトキシド
錯化剤B…トリエタノールアミン(TEOA)
金属cの水酸化物…水酸化ストロンチウム八水和物(Sr(OH)・8HO)
溶媒…ジエチレングリコール(DEG)
まず、窒素雰囲気下において、TIPO(14.21g)とTEOA(14.92g)とを混合し、室温で一晩撹拌することで、Ti錯体を作製した。そして、イオン交換水を加えて全量を100mLとすることにより、Tiの金属濃度が0.5MとなるTi錯体溶液を準備した。
同様に、窒素雰囲気下において、ニオブエトキシド(15.90g)とTEOA(14.92g)とを混合し、50℃で一晩撹拌することで、Nb錯体を作製した。そして、イオン交換水を加えて全量を100mLとすることにより、Nbの金属濃度が0.5MとなるNb錯体溶液を準備した。
そして、Ti錯体溶液(4mL)とNb錯体溶液(1mL)およびイオン交換水(5mL)、水酸化ストロンチウム八水和物(0.664g)を混合し、[Ti]+[Nb]=0.25M、SrとTiとNbのモル比を[Sr]:[Ti]:[Nb]=50:40:10、ジエチレングリコールと水の体積比を(DEG):(水)=50:50とした溶液に対し、加水分解(ソルボサーマル合成)を行った。以降、(DEG):(水)はDEGと水との体積比を表す。
なお、溶媒をDEGとした場合の、DEGと水の体積比の好ましい範囲は、現在鋭意検討中である。本実施例の場合、溶媒はDEGに水を含有するものを使用する。
加水分解としては、具体的には、テフロン(登録商標)ライナー付きのオートクレーブを用い、140℃で24時間加熱し続けた。こうして加水分解工程を行った後、析出した金属酸化物微粒子を、遠心分離による固液分離により回収した。回収した当該微粒子に対し、エタノールおよびイオン交換水により複数回洗浄した。そして、60℃で一晩乾燥させ、金属酸化物微粒子粉末を得た。
なお、以降に述べる実施例の結果においては、特記が無い限り、上記の条件で作製した試料に関する結果である。
ちなみに、加水分解工程前の溶液におけるSrとTiとNbのモル比を[Sr]:[Ti]:[Nb]=50:50:0〜50:35:15の間で[Ti]:[Nb]の比を変動(50:0、45:5、・・・)させて、同様の試験を行った。
(測定)
まず、当該粉末に対し、透過型電子顕微鏡(TEM,日立ハイテクノロジーズ社製HF−2200)を用いて微粒子形状を観察した。
また、X線回折装置(PANalytical製X’Pert Pro MRD)を用いてXRD測定を行い、結晶構造および格子定数を評価した。
また、当該粉末と当量の不揮発成分を含有する酸性ポリエステル系分散剤の存在下で、Nb−SrTiOの濃度を4wt%とし、当該粉末をトルエン中に分散させた。その際、当該微粒子に対する解砕処理としてペイントシェーカを用いた。その際、解砕処理時間を3hとした。そして、動的光散乱式粒径分布測定装置(日機装製 UPA150)を用い、当該分散液に対して動的光散乱法による粒度分布測定を行い、微粒子の分散状態を評価した。
(結果)
まず、TEM観察の結果について述べる。図3に、[Sr]:[Ti]:[Nb]比を(a)50:50:0(参考例)、(b)50:45:5、(c)50:40:10、(d)50:35:15とした溶液に対して加水分解を行った後に得られた当該微粒子のTEM像を示す。なお、(a)においてはニオブエトキシドとTEOAとを混合したものを用意しなかった以外は、上記の手法で試料を作製した。
その結果、(a)〜(d)いずれも均質な粒子が生成していた。
次に、XRD測定の結果について述べる。図4に、当該微粒子のXRD回折パターンを示す。その結果、本実施例の金属酸化物微粒子はペロブスカイト構造を有することが示された。
格子定数については、図5にその結果を示す。図5は、本実施例におけるXRD測定により得られた結果(a軸の格子定数および結晶子径)を示す表である。図5の数値を見ると、Nb比率が高くなるほどa軸の格子定数がほぼ線形型に増加した。これはVegard則に従った挙動である。先ほど述べたように、結晶子においてはTiがTi4+となっており、かつ、NbがNb5+となっている。Ti4+のイオン半径は0.061nmであり、Nb5+のイオン半径はそれよりもわずかに大きい0.064nmである。両者のイオン半径が極めて近い数値であることから、上記の結果は、NbがTiサイトに置換固溶していることを示している。その結果、本実施例においては、結晶構造において格子定数が3.905Å(Nbがドープされていない、ペロブスカイト型のチタン酸ストロンチウムの場合の値)を超えた値となっており、SrTiOにNbが良好にドープされていることがわかった。
なお、[Sr]:[Ti]:[Nb]比を50:50:0とした参考例の段階において既に、格子定数は3.905Åを超えた値となっている。これはジエチレングリコールの還元作用によりチタン酸ストロンチウムに酸素欠損が導入されたためであると考えられる。いずれにしても、本発明の手法を適用してNbをドープした場合(すなわち本実施例)においては、ペロブスカイト型のチタン酸ストロンチウムにおいて公知である格子定数3.905Åよりも大きな値の格子定数を有し、しかも格子定数はNbのドープ量に対して直線的に増大しており、NbがTiサイトに置換固溶していることは明らかである。
また、結晶子径については、Tiに対するNb比率が高くなるほど結晶子径は大きくなっていた。
また、TiとNbのモル比に関しては、[Ti]:[Nb]が35:15またはそれよりも少ないNb量(但しゼロではない)である場合に、ペロブスカイト構造を有しつつNbがドープされた金属酸化物微粒子が得られることが、今のところ確認できた。
次に、動的光散乱法による粒度分布測定の結果について述べる。図6は、ペイントシェーカによる解砕処理時間を3hとしたときの粒度分布測定結果を示すグラフ(a)および表(b)である。その結果、Mv/D90は0.65〜1.00の範囲に収まっていた。さらに、D10/Mvが0.70〜1.00の範囲に留まり、D10/D90は0.50〜1.00の範囲に留まっていた。つまり、本来ならば大きい値となるはずのD90や小さい値となるはずのD10が、体積平均径Mvに対して極めて近い値を示しており、本実施例における微粒子は、凝集度合いが著しく小さく、かつ、単分散ないしそれに近い状態となっていることがわかった。
また、トルエンに分散させた際の体積平均径Mvは、XRD測定で得られた結晶子径の1.0倍〜2.0倍の範囲に収まっていた。つまり、本実施例の試料においては、ナノレベルの微小な結晶子同士が平均で2個程度しか互いに固着しておらず、驚くべき分散性を備えていた。

Claims (13)

  1. ぺロブスカイト型の結晶構造を有する金属aの酸化物であって、金属aとは異なる金属b、および金属aとは異なる金属cを含有する金属酸化物微粒子を製造する方法であって、
    前記金属aの錯体α、前記金属bの錯体β、金属cの水酸化物および水を含む溶液を加熱することにより錯体に対して加水分解を生じさせる加水分解工程と、
    前記加水分解工程後、析出物である前記金属酸化物微粒子を回収する回収工程と、
    を有し、
    前記加水分解工程は、
    前記加水分解を進行させることにより前記溶液をゲル化させるゲル化工程と、
    前記ゲル化工程によりゲル化された前記溶液を、前記加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、
    を有する、金属酸化物微粒子の製造方法。
  2. 前記金属aはTiであり、前記金属bはNb、Ta、Mo、WおよびVのうち少なくともいずれかであり、前記金属cはSrである、請求項1に記載の金属酸化物微粒子の製造方法。
  3. 前記加水分解工程においては、
    Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体、Sr水酸化物および水を含む溶液を加熱することにより各錯体に対して加水分解を生じさせる、請求項1または2に記載の金属酸化物微粒子の製造方法。
  4. 前記Ti含有化合物はTiアルコキシドであり、前記Nb含有化合物はNbアルコキシドである、請求項3に記載の金属酸化物微粒子の製造方法。
  5. 前記錯化剤Aおよび前記錯化剤Bのうち少なくともいずれかはトリエタノールアミンである、請求項3または4に記載の金属酸化物微粒子の製造方法。
  6. 前記加水分解工程においては還元性化合物を溶液の少なくとも一部として用いる、請求項3〜5のいずれかに記載の金属酸化物微粒子の製造方法。
  7. 前記還元性化合物はジエチレングリコールである、請求項6に記載の金属酸化物微粒子の製造方法。
  8. ぺロブスカイト型の結晶構造を有する金属aの酸化物であって、金属aとは異なる金属b、および金属aとは異なる金属cを含有するぺロブスカイト型の結晶構造を有する金属酸化物において、以下の条件のうち少なくとも1つの条件を満たし、
    金属酸化物微粒子の体積平均径が結晶子径の1.0倍〜2.0倍である、金属酸化物微粒子。
    (1)当該微粒子の体積平均径をD90で除した値(Mv/D90)が0.65〜1.00である。
    (2)当該微粒子のD10を体積平均径で除した値(D10/Mv)が0.70〜1.00である。
    (3)当該微粒子のD10をD90で除した値(D10/D90)が0.50〜1.00である。
  9. ぺロブスカイト型の結晶構造を有しかつNbおよびSrを含有するTiの酸化物において、格子定数が3.905Åを超えた値である、請求項8記載の金属酸化物微粒子。
  10. 請求項8または9に記載の金属酸化物微粒子を乾燥して得られる、金属酸化物微粒子粉末。
  11. 請求項8または9に記載の金属酸化物微粒子が液体媒質中に分散している、金属酸化物微粒子分散液。
  12. 請求項8または9に記載の金属酸化物微粒子が固体媒質中に分散している、金属酸化物微粒子分散体。
  13. 請求項8または9に記載の金属酸化物微粒子を含有する被膜が基材表面に設けられている、被覆基材。
JP2014168402A 2014-08-21 2014-08-21 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材 Active JP6298385B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014168402A JP6298385B2 (ja) 2014-08-21 2014-08-21 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014168402A JP6298385B2 (ja) 2014-08-21 2014-08-21 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016044089A JP2016044089A (ja) 2016-04-04
JP6298385B2 true JP6298385B2 (ja) 2018-03-20

Family

ID=55634982

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014168402A Active JP6298385B2 (ja) 2014-08-21 2014-08-21 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6298385B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6680180B2 (ja) * 2016-10-26 2020-04-15 日本製鉄株式会社 低温作動可能なペロブスカイト型酸化物およびその製造法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03115106A (ja) * 1990-08-10 1991-05-16 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 複合酸化物の製造法
JP2006206363A (ja) * 2005-01-27 2006-08-10 Kyocera Corp チタン酸バリウム粉末およびその製法
KR100674846B1 (ko) * 2005-03-29 2007-01-26 삼성전기주식회사 유전체용 세라믹분말의 제조방법, 및 그 세라믹분말을이용하여 제조된 적층세라믹커패시터
JP2007290887A (ja) * 2006-04-24 2007-11-08 Fuji Ceramics:Kk ビスマスチタン酸系ナノ粒子、それを用いた圧電セラミックス、それらの製造方法
JP5448673B2 (ja) * 2009-09-24 2014-03-19 株式会社トクヤマ 複合酸化物ナノ粒子の製造方法
JP5637389B2 (ja) * 2011-03-14 2014-12-10 独立行政法人産業技術総合研究所 チタン酸バリウムナノ結晶の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016044089A (ja) 2016-04-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4118818B2 (ja) 単結晶酸化セリウム粉末の製造方法
Demoisson et al. Hydrothermal synthesis of ZnO crystals from Zn (OH) 2 metastable phases at room to supercritical conditions
Uekawa et al. Low-temperature synthesis of niobium oxide nanoparticles from peroxo niobic acid sol
JP3936986B2 (ja) 蛍光体用単結晶硫化亜鉛粉末の製造方法
JP4102872B2 (ja) 高結晶性チタン酸バリウム超微粒子とその製造方法
Ziva et al. Recent progress on the production of aluminum oxide (Al2O3) nanoparticles: A review
CN114477273A (zh) 一种四方相纳米钛酸钡粉末的水热法制备工艺
JP2010105892A (ja) ジルコニア微粒子及びその製造方法
Mazlan et al. Role of ionic and nonionic surfactant on the phase formation and morphology of Ba (Ce, Zr) O 3 solid solution
EP2488452A1 (en) Re-dispersible metal oxide nanoparticles and method of making them
KR20130070092A (ko) 산화 이트륨 분말의 제조방법 및 이에 의해 제조된 산화 이트륨 분말
JP6159284B2 (ja) 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材
JP6298385B2 (ja) 金属酸化物微粒子の製造方法および金属酸化物微粒子、ならびにその粉末、分散液、分散体および被覆基材
JP6167069B2 (ja) 赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法および赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法
JP2008239461A (ja) 金属酸化物微粒子分散物及びその製造方法
JP6124832B2 (ja) 赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子、赤外線遮蔽材料微粒子粉末、赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽材料微粒子分散体および被覆基材
KR101288194B1 (ko) 고결정성 티탄산바륨의 제조방법 및 그 방법으로 제조한 고결정성 티탄산바륨 분말
JP6202749B2 (ja) 赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子、赤外線遮蔽材料微粒子粉末、赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽材料微粒子分散体および被覆基材
JP2005289737A (ja) チタン酸バリウム微粒子及びその製造方法
CN111333100A (zh) 一种硫化铜微粒晶型的制备方法
JP2012122122A (ja) 硫黄含有ニッケル粒子とその製造方法
CN108975415B (zh) 一种氧化亚钴纳米晶的制备方法及其制备的氧化亚钴纳米晶
JPH06345518A (ja) 電子セラミックス原料粉体の製造方法
KR100503858B1 (ko) 무기산으로 제조한 사염화티타늄 수용액과 스트론튬카보네이트 수용액으로부터 나노크기의 결정성 티탄산스트론튬 분말을 제조하는 방법
JP2007223881A (ja) 結晶質ハフニアゾルおよびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161213

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20161213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170711

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170725

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170911

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180223

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6298385

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250