JP2017180408A - スクロール型流体機械 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者等は、これら接触部での摺動による摩耗によって、動力伝達機構の信頼性が損なわれるおそれがあることに着目し、鋭意検討したところ、ピンとリングを有する動力伝達機構の構造によって、これら接触部のうち相対的に面圧が高い方が存在し、高い面圧となる接触部が摺動することによって動力伝達機構の信頼性が損なわれるおそれがあることを見出した。
すなわち、本発明にかかるスクロール型流体機械は、渦巻状の第一壁体を有する第一スクロール部材と、前記第一壁体に対して噛み合わされて圧縮空間を形成する渦巻状の第二壁体を有する第二スクロール部材と、両前記スクロール部材を同期して回転させるとともに相対的に公転旋回運動を行うように動力を伝達する動力伝達機構とを備え、前記動力伝達機構は、一方の前記スクロール部材に取り付けられたピン部材と、他方の前記スクロール部材に設けられ、内周が前記ピン部材の外周と接触するリング部材と、前記他方の前記スクロール部材に形成され、前記リング部材を収容するとともに内周が該リング部材の外周に接触する円形溝とを備え、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部の面圧と、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部の面圧とのうち、面圧が高い方の前記接触部が、摩擦トルクが大きいことを特徴とする。
動力伝達機構は、ピン部材と、リング部材と、リング部材を収容する円形溝とを備えている。ピン部材の外周とリング部材の内周との接触、及び、リング部材の外周と円形溝の内周との接触を介して、両スクロール部材間で動力の伝達が行われる。
ピン部材の外周とリング部材の内周との接触部の面圧と、リング部材の外周と円形溝の内周との接触部の面圧とのうち、面圧が高い方の接触部が、摩擦トルクが大きくなるようになっている。これにより、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせ、かつ、面圧が低い方の接触部に相対的な滑りを生じさせることによって、動力を伝達することができる。したがって、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせずに転がり接触が行われるように管理できるので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを発生させる可能性がある場合に比べて、動力伝達機構の摩耗に対する信頼性を確保することができる。
リング部材としては、無端円環状のリング体や、玉軸受等の転がり軸受が挙げられる。
なお、ピン部材と転がり軸受との接触部および円形溝と転がり軸受との接触部よりも、転がり軸受の摩擦トルクを小さくしておき、優先的に転がり軸受自身が転動するようにしておくことが好ましい。
高摩擦材としては、例えば、滑り止めとしての性質を有する材料として弾性を有する高分子材(エラストマー)が挙げられ、例えばゴム等が用いられる。
低摩擦材としては、例えば、滑り易くする材質を有する材料として、DLC(Diamond−Like Carbon)コーティング、テフロン等のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コーティング(「テフロン」は登録商標)、二硫化モリブデンコーティング、表面マイクロテクスチャー等が挙げられる。
高摩擦材および低摩擦材は、例えば、ピン部材、リング部材及び円形溝の母材に対して貼り付けたり、表面処理したりすることによって設けることができる。
また、母材に比べて弾性を有する材料を高摩擦材や低摩擦材に用いた場合には、母材よりも先に高摩擦材や低摩擦材を接触させるようにすれば、接触時のダンピング効果を得ることができ、騒音振動を低減することができる。
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るスクロール型圧縮機(スクロール型流体機械)1の縦断面が示されている。同図に示されているように、スクロール型圧縮機1は、ハウジング9内に、駆動部3と、圧縮機構部5とを備えている。
回転軸15は、両端が軸受17,19によって支持されている。回転軸15の一端(図1において左端)には、駆動スクロール部材20の軸部20aが接続されている。したがって、回転軸15と駆動スクロール部材20とが回転する駆動側中心軸線L1は一致している。
軸部22aの外周には、ハウジング9との間に軸受24が取り付けられている。これにより、従動スクロール部材22は、従動側中心軸線L2回りに回転する。駆動側中心軸線L1と従動側中心軸線L2とは所定距離ρだけオフセットされており、この所定距離ρが、駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22とが相対的に公転旋回運動する際の旋回半径となる。
軸部22aは円筒形状とされており、軸部22aの中心側に形成された貫通孔22a1を介して圧縮後の流体(例えば空気)が吐出される。
渦巻状壁体22cは、図2に示されているように、中央側に巻き始め部22c1を有し、外周側に巻き終わり部22c2を有する渦巻き形状とされている。渦巻状壁体22cの内周面および外周面の形状は、駆動スクロール部材20の渦巻状壁体20cに噛み合うように、例えばインボリュート曲線によって形成されている。ただし、巻き始め部22c1の部分は、種々の曲線を用いて形成されている。
ピン30は、金属製とされており、駆動スクロール部材20の端板20bに対向する従動スクロール部材22の外周壁部22dに固定されている。ピン30は、一端が外周壁部22dに埋め込まれ、他端がリング体34の内周側に突出するように設けられている。
図1に示されているように、ピン30の外周とリング体34の内周との間に接触部が形成され、リング体34の外周と円形溝32の内周との間に接触部が形成されている。これら接触部を介して、動力が伝達される。
このような動力伝達機構26によって、駆動スクロール部材20に入力された回転駆動力が従動スクロール部材22に伝達される。
図示しない電力源からの供給電力によって電動モータ7が駆動され、ロータ13が回転することによって、回転軸15が駆動側中心軸線L1回りに回転する。回転軸15の回転駆動力は、軸部20aを介して駆動スクロール部材20に伝達され、駆動スクロール部材20が駆動側中心軸線L1回りに回転する。駆動スクロール部材20の回転力は、動力伝達機構26によって従動スクロール部材22に伝達される。このとき、動力伝達機構26のピン30がリング体34の内周に沿って接触しながら回転することで、駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22とが相対的に公転旋回運動する。
駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22とが相対的に公転旋回運動することによって、駆動スクロール部材20の渦巻状壁体20cと従動スクロール部材22の渦巻状壁体22cとの間に形成された圧縮空間が外周側から中心側に移動するにしたがって縮小されて、スクロール部材20,22の外周側から吸い込んだ流体の圧縮が行われる。圧縮された流体は、従動スクロール部材22の軸部22aに形成された貫通孔22a1から外部へと吐出される。
ピン30の外周とリング体34の内周との間に接触部における摩擦トルクが、リング体34の外周と円形溝32の内周との間に接触部よりも摩擦トルクが大きくされている。これにより、面圧が高い方の接触部であるピン30の外周とリング体34の内周との間に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせ、かつ、面圧が低い方の接触部であるリング体34の外周と円形溝32の内周との間に相対的な滑りを生じさせることによって、動力を伝達することができる。したがって、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせずに転がり接触が行われるように管理できるので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを発生させる可能性がある場合に比べて、動力伝達機構26の摩耗に対する信頼性を確保することができる。
本実施形態の変形例として、図4に示すように、リング体34に代えて、玉軸受(転がり軸受)35としてもよい。玉軸受35とした場合でも、ピン30の外周と玉軸受35の内輪の内周との接触部における摩擦トルクが、玉軸受35の外輪の外周と円形溝32の内周との接触部よりも摩擦トルクが大きくなるように表面粗さが調整されている。そして、玉軸受35の摩擦トルクは、ピン30の外周と玉軸受35の内輪の内周との接触部における摩擦トルクよりも小さくされている。これにより、上述と同じような作用効果を奏することができる。特に、玉軸受35の外輪と円形溝32との嵌め合いが相対的な滑りを許容しないタイトな嵌め合いとされている場合には、玉軸受35自身が転がるため、玉軸受35の外輪の外周と円形溝32の内周との滑り接触がなくなり、信頼性がさらに向上する。また、玉軸受35の外輪と円形溝32との嵌め合いが相対的な滑りを許容するルーズな嵌め合いとされている場合でも、玉軸受35の外輪の外周と円形溝32の内周との滑り接触が軽減され、摩耗に対する信頼性がさらに向上する。
本実施形態の変形例として、接触部の表面粗さを調整する方法に代えて、面圧が高い方の接触部には、面圧が低い方の接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材を設けても良い。これにより、面圧が高い方の接触部の摩擦トルクを大きくすることができる。高摩擦材としては、例えば、滑り止めとしての性質を有しかつ弾性を有する高分子材(エラストマー)が挙げられ、例えばゴム等が用いられる。
本実施形態の変形例として、図5に示すように、ピン30の外周とリング体34の内周との接触部の一部に高摩擦材40を設けても良い。これにより、接触力を高摩擦材40のみで受けずにピン30の母材と共に負担させることができる。これにより、高摩擦材40の耐久性を向上させることができる。好ましくは、ピン30の外径よりも高摩擦材40の外径を大きくしておき、ピン30の母材よりも先に高摩擦材40がリング体34に接触するようにする。これにより、接触時のダンピング効果を得ることができ、騒音振動を低減することができる。
なお、リング体34の内周側に、接触部の一部を構成するように高摩擦材を設けても良い。
また、図示しないが、リング体34の外周または円形溝32の内周に、接触部の一部を構成するように低摩擦材を設けても良い。
上記変形例1−3の変形例として、図6に示すように、リング体34に代えて、玉軸受(転がり軸受)35としてもよい。リング体34に代えて玉軸受35を設けた場合の作用効果は、上記変形例1−1に説明した通りである。
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。以下の説明では、上述した第1実施形態およびその変形例に対して相違する点のみを説明する。したがって、第1実施形態およびその変形例と共通する事項については説明を省略する。
これにより、面圧が高い方の接触部であるリング体34’の外周と円形溝32の内周との間に相対的な滑りを生じさせない転がり接触を行わせ、かつ、面圧が低い方の接触部であるピン30の外周とリング体34’の内周との間に相対的な滑りを生じさせることによって、動力を伝達することができる。したがって、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを生じさせずに転がり接触が行われるように管理できるので、面圧が高い方の接触部に相対的な滑りを発生させる可能性がある場合に比べて、動力伝達機構26の摩耗に対する信頼性を確保することができる。
本実施形態の変形例として、図8に示すように、リング体34’に代えて、玉軸受(転がり軸受)35’としてもよい、玉軸受35’とした場合でも、玉軸受35’の外輪の外周と円形溝32の内周との間の接触部における摩擦トルクが、ピン30の外周と玉軸受35’の内輪の内周との間に接触部よりも摩擦トルクが大きくなるように表面粗さが調整されている。そして、玉軸受35の摩擦トルクは、玉軸受35’の外輪の外周と円形溝32の内周との間の接触部における摩擦トルクよりも小さくされている。これにより、上述と同じような作用効果を奏することができる。特に、玉軸受35’の内輪とピン30の外周との嵌め合いが相対的な滑りを許容しないタイトな嵌め合いとされている場合には、玉軸受35’自身が転がるため、玉軸受35の内輪の内周とピン30の外周との滑り接触がなくなり、摩耗に対する信頼性がさらに向上する。また、玉軸受35’の内輪とピン30の外周との嵌め合いが相対的な滑りを許容するルーズな嵌め合いとされている場合でも、玉軸受35’の内輪とピン30の外周との滑り接触が軽減され、摩耗に対する信頼性がさらに向上する。
本実施形態の変形例として、接触部の表面粗さを調整する方法に代えて、面圧が高い方の接触部には、面圧が低い方の接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材を設けても良い。これにより、面圧が高い方の接触部の摩擦トルクを大きくすることができる。高摩擦材としては、例えば、滑り止めとしての性質を有しかつ弾性を有する高分子材(エラストマー)が挙げられ、例えばゴム等が用いられる。
さらに、面圧が低い方の接触部には、面圧が高い方の接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材が設けても良い。これにより、面圧が低い方の接触部の摩擦トルクを小さくすることができる。低摩擦材としては、例えば、滑り易い性質を有する材料として、DLC(Diamond−Like Carbon)コーティング、テフロン等のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コーティング(「テフロン」は登録商標)、二硫化モリブデンコーティング、表面マイクロテクスチャー等が挙げられる。
高摩擦材および低摩擦材は、例えば、ピン部材、リング部材及び円形溝の母材に対して貼り付けたり、表面処理したりすることによって設けることができる。
本実施形態の変形例として、図9に示すように、ピン30の外周とリング体34’の内周との接触部の一部に低摩擦材42を設けても良い。これにより、接触力を低摩擦材42のみで受けずにピン30の母材と共に負担させることができる。これにより、低摩擦材42の耐久性を向上させることができる。好ましくは、低摩擦材42が弾性を有する場合には、ピン30の外径よりも低摩擦材42の外径を大きくしておき、ピン30の母材よりも先に低摩擦材42がリング体34’に接触するようにする。これにより、接触時のダンピング効果を得ることができ、騒音振動を低減することができる。
なお、リング体34’の内周側に、接触部の一部を構成するように低摩擦材を設けても良い。
また、図示しないが、リング体34’の外周または円形溝32の内周に、接触部の一部を構成するように高摩擦材を設けても良い。
上記変形例2−3の変形例として、図10に示すように、リング体34’に代えて、玉軸受(転がり軸受)35’としてもよい。リング体34’に代えて玉軸受35’を設けた場合の作用効果は、上記変形例2−1に説明した通りである。
なお、図10の低摩擦材42に代えて、玉軸受35’の外輪の外周または円形溝32の内周に、接触部の一部を構成するように高摩擦材を設けても良い。
さらには、駆動スクロール部材20と従動スクロール部材22との間で動力を伝達する部材にピン30やリング体34,34’、玉軸受35,35’等の動力伝達機構26を設ければよく、駆動スクロール部材20及び従動スクロール部材22に対して直接的に動力伝達機構26を設ける必要はない。
3 駆動部
5 圧縮機構部
7 電動モータ
9 ハウジング
11 ステータ
13 ロータ
15 回転軸
17 軸受
19 軸受
20 駆動スクロール部材(第一スクロール部材)
20a 軸部
20b 端板
20c 渦巻状壁体(第一壁体)
20c1 巻き始め部
20c2 巻き終わり部
22 従動スクロール部材(第二スクロール部材)
22a 軸部
22b 端板
22c 渦巻状壁体(第二壁体)
22c1 巻き始め部
22c2 巻き終わり部
24 軸受
26 動力伝達機構
30 ピン(ピン部材)
32 円形溝
34 リング体(リング部材)
35 玉軸受(転がり軸受)
40 高摩擦材
42 低摩擦材
L1 駆動側中心軸線
L2 従動側中心軸線
Claims (7)
- 渦巻状の第一壁体を有する第一スクロール部材と、
前記第一壁体に対して噛み合わされて圧縮空間を形成する渦巻状の第二壁体を有する第二スクロール部材と、
両前記スクロール部材を同期して回転させるとともに相対的に公転旋回運動を行うように動力を伝達する動力伝達機構と、
を備え、
前記動力伝達機構は、一方の前記スクロール部材に取り付けられたピン部材と、他方の前記スクロール部材に設けられ、内周が前記ピン部材の外周と接触するリング部材と、前記他方の前記スクロール部材に形成され、前記リング部材を収容するとともに内周が該リング部材の外周に接触する円形溝とを備え、
前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部の面圧と、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部の面圧とのうち、面圧が高い方の前記接触部が、摩擦トルクが大きいことを特徴とするスクロール型流体機械。 - 前記リング部材は、転がり軸受とされ、
前記面圧が高い方の前記接触部は、前記転がり軸受の摩擦トルクよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。 - 前記リング部材が前記円形溝に対して嵌合されている場合には、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部の方が、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部よりも、摩擦トルクが大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械。
- 前記ピン部材が前記リング部材に対して嵌合されている場合には、前記リング部材の外周と前記円形溝の内周とが接触する接触部の方が、前記ピン部材の外周と前記リング部材の内周とが接触する接触部よりも、摩擦トルクが大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械。
- 面圧が高い方の前記接触部の表面粗さが、面圧が低い方の前記接触部の表面粗さよりも大きくされていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスクロール型流体機械。
- 面圧が高い方の前記接触部には、面圧が低い方の前記接触部よりも摩擦力が大きくなる高摩擦材が設けられ、および/または、面圧が低い方の前記接触部には、面圧が高い方の前記接触部よりも摩擦力が小さくなる低摩擦材が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスクロール型流体機械。
- 前記接触部のうちの一部に前記高摩擦材、および/または、前記接触部のうちの一部に前記低摩擦材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のスクロール型流体機械。
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