JP2017179695A - 砂防堰堤の閉塞防止構造および閉塞防止工法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記経時的に堆積する小礫や土砂による目詰まりや閉塞を防止する装置は、例えば、特許文献1、2に開示され、一応の効果は認められているものの、洪水時の土石による目詰まりや閉塞を防止して良好なグレーチング機能を発揮させるには、装置が無駄に大掛かりになり不経済であるほか、設置に難渋し、そもそも装置に課される目的が異なるなどあまりに不合理で、実用的、実効的ではないという問題があった。
この問題を解決する技術として、例えば、特許文献3には、スリット(2)の上流側開口部に、アンカーボルト(7c)を用いて横梁(6)を段状に設けることにより、洪水減水期の土砂、土石の流出を制御する発明が開示されている。
しかし、両端部がアンカーボルトで固定された単なる棒状の横梁では、(特には洪水減水期に)土石が衝突する際の衝撃力によりアンカーボルトに引き抜き方向の反力が作用し、当該アンカーボルトが引き抜かれることによる横梁のずれ、ひいては脱落の虞があった。よって、アンカーボルトへ作用する引き抜き力を低減できれば、横梁のずれ、脱落を極力防止でき、土砂や土石の流出をより確実に制御し、良好なグレーチング機能を発揮できることは明らかである。
前記柱材の側面には、軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットが突設され、各ブラケットは前記開口部の対応する内周面にそれぞれ当接されていることを特徴とする。
前記梁材の側面には、軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットが突設され、各ブラケットは前記開口部の対応する内側面にそれぞれ当接されていることを特徴とする。
軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットを側面に設けた複数の柱材を所要の間隔をあけて前記排水孔に縦向き方向又は横向き方向に設けるにあたり、
各柱材の前記掛止ブラケットを前記排水孔の上流側開口部の対応する内周面に掛け止めた後、当該柱材を同開口部に跨がるように位置決めし、前記位置決めした柱材を堰堤壁面にアンカーボルトで固定すると共に、前記位置調整ブラケットを前記開口部の対応する内周面に当接するように位置調整してなることを特徴とする。
軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットを側面に設けた複数の梁材を所要の間隔をあけて前記スリットに段状に設けるにあたり、
各梁材の前記掛止ブラケットを前記スリットの上流側開口部の対応する内側面に掛け止めた後、当該梁材を同開口部に跨がるように位置決めし、前記位置決めした梁材を堰堤壁面にアンカーボルトで固定すると共に、前記位置調整ブラケットを前記スリットの対応する内側面に当接するように位置調整してなることを特徴とする。
1)洪水時等、柱材(梁材)に礫(巨礫)が衝突する衝撃力により、その両端部を固定するアンカーボルトに引き抜き力が作用するが、当該柱材(梁材)の背面に設けた掛止ブラケット、位置調整ブラケットの前記内周面(内側面)に対する前記支圧効果により、前記引き抜き力、ひいてはアンカーボルトの荷重負担を大幅に低減することができる。
また、前記掛止ブラケット、及び位置調整ブラケットは、前記柱材(梁材)の背面に設けられているので、当該柱材(梁材)で保護され、前記礫(巨礫)が直接衝突する虞がない。よって、前記支圧効果を確実に発揮することができる。
さらに、前記掛止ブラケットが、位置決め機能、ガイド機能のほか、作業中の柱材の荷重負担機能を奏することができるので作業性に優れている。掛止ブラケットのこれらの機能は、高所作業の場合に特に有益である。
以上要するに、前記柱材(梁材)のずれ、脱落を極力防止でき、良好なグレーチング機能を長期的に発揮できる実効性、経済性、および作業性に非常に優れた砂防堰堤の閉塞防止構造を実現することができる。
付随的効果として、前記掛止ブラケット、及び位置調整ブラケットの支圧効果により、全体的に前記柱材(梁材)の見かけの強度・剛性を向上させたと云えるので、当該掛止ブラケット、及び位置調整ブラケットがない場合と比し、アンカーボルトのサイズを下げることもできる。アンカーボルトが一部破損した場合等、前記掛止ブラケット、及び位置調整ブラケットの支圧効果で補うこともできる。
2)図2、図7に示すように、前記複数の柱材を同形同大で、かつ縦向き方向に揃えて実施する場合には、洪水時等に頻繁に発生する絡み合った巨礫、流木等のアーチアクションにより、巨礫、流木等が一塊の状態のまま当該柱材により効果的に捕捉することができる。
図示例に係る砂防堰堤10は、コンクリート砂防堰堤を想定しているが、コンクリート製に限らない。砂防堰堤10の形態も勿論、図示例に限定されない。例えば、堰堤壁面11の傾斜角度や排水孔8の水勾配は、設置する河川の性状等に応じて適宜設計変更されるが、本発明は、これら種々の形態の砂防堰堤を問わず、自在に適用できる(一例として、掛止ブラケット2、位置調整ブラケット3の形態の相違等について、図3Aと図10とを対比して参照)。
また、図示例の排水孔8の形態は、一例として、開口部9の断面を方形状で実施しているが、これに限定されず、円形断面の場合もある。ちなみに、本実施例1に係る排水孔8の開口部断面の大きさは排水孔8としては比較的大きい、縦横2.0m程度の略正方形に形成されている。
なお、図示例では、一対のベースプレート4、4で実施しているがこれに限定されない。もとよりベースプレート4の形態(形状、大きさ)は構造設計に応じて適宜設計変更されるが、後述するアンカーボルト12への設置作業を考慮し、前記柱材1の径よりも幅広で実施され、アンカーボルト12を通す部位にはボルト通し孔(ルーズ孔)が予め穿設されている。
前記掛止ブラケット2は、図3A、Dに示したように、鋼製プレートと鋼製リブとを組み合わせて柱材1の曲面に対して3点支持可能な安定した構成で溶接接合してなり、前記柱材1を縦向き方向にバランス良く位置決めしたとき、当該掛止ブラケット2の鋼製プレートの下面が、開口部9の内側面9aへぴったり当接する位置に配設されている。
ちなみに、本実施例1に係る前記掛止ブラケット2は、一例として、せいが150mm程度、開口部9内への挿入寸法(突出寸法)が、もっとも長い開口部9の内側面9aとの当接部で150mm程度で実施されている。
なお、前記掛止ブラケット2の形態(形状、大きさ)はもちろん図示例に限定されず、例えば、図6Bに示したように、前記掛止ブラケット2の内部の補強リブが無いバリエーションでも実施可能である等、要は、前記柱材1に作用する荷重(衝撃力)を前記開口部9の内側面9aへ確実に伝達可能な形態であればよい。
なお、前記長孔3cは、開口部9の内周面9bに対する可動ブラケット3bの当接状態を良好に保持するべく、所定の間隔をあけて上下方向に2箇所ずつ設けて実施されている。前記長孔3cのサイズは、一例として長軸が60mm程度で実施しているがこれに限定されず、当該長孔3cを利用して上下に移動する可動ブラケット3bの上側の鋼製プレートが、開口部9の内周面9bへ十分に当接するように接近又は離反可能な長さに設定される。
ちなみに、前記可動ブラケット3bは、一例として、縦寸法が280mm程度、開口部9内への挿入寸法(突出寸法)は、もっとも長い開口部9の内側面9bとの当接部で150mm程度で実施されている。
この閉塞防止工法は、大要、図4、図5に段階的に示したように、軸方向に間隔をあけて掛止ブラケット2と位置調整ブラケット3を側面に設けた複数の柱材1を所要の間隔をあけて前記排水孔8に縦向き方向に設けるにあたり、各柱材1の前記掛止ブラケット2を前記排水孔8の上流側開口部9の対応する内周面9aに掛け止めた後、当該柱材1を同開口部8にバランスよく跨がるように位置決めし、前記位置決めした柱材1を堰堤壁面11にアンカーボルト12で固定すると共に、前記位置調整ブラケット3を前記開口部9の対応する内周面9bに当接するように位置調整して施工する。
本実施例1では、構造設計に基づき、縦横2.0m四方の正方形状の開口部9に対し、長さ3066mm、外径318.5mm、肉厚12.7mmの同形同大の柱材(金属製鋼管)1を3本用意し、柱1、1同士の間隔を450mm程度、端部の柱1と開口部9の側壁との隙間を50〜60mm程度確保する部位に配設する。なお、3本の柱材1を堰堤壁面11に固定する順は問わない。
前記柱材1は、図4Aに示したように、予め、前記固定ブラケット2、前記位置調整ブラケット3、および前記ベースプレート4、4を前記した所定部位に備え付けておく。前記位置調整ブラケット3の可動ブラケット3bは、この段階では、固定ブラケット3aの長孔3cにボルト、ナットを利用して下側に吊り支持させておく。また、砂防堰堤10側には、堰堤壁面11の所定部位に、あと施工アンカー工法により所定本数(本実施例では1本の柱材1あたり上下に4本ずつの計8本)のアンカーボルト(一例として、M22)12を埋め込んでおく。
続いて、図5Aに示したように、柱材1の荷重を掛止ブラケット2を介して開口部9の内周面9aに預けながら、当該柱材1の姿勢を漸次倒伏(傾斜)させて、上部ベースプレート4に設けたボルト通し孔へ対応するアンカーボルト12の先端部を差し込み、当該柱材1の上下のベースプレート4が堰堤壁面11の法勾配に対し略平行になる前傾姿勢とする。
続いて、前記姿勢を保持しながら、作業者が柱材1を推し進めると、前記掛止ブラケット2(の下面)が前記内周面9aの上面を摺動し、ついには図5Bに示したように、前記掛止ブラケット2が前記内周面9aの上面に密着すると共に、当該柱材1の上下のベースプレート4、4も前記堰堤壁面11に密着する。この作業は、前記掛止ブラケット2はもとより前記アンカーボルト12もガイドの役割を果たすので、スムーズに行うことができる。なお、前記ベースプレート4に設けるボルト通し孔は、堰堤壁面11に対する柱材1の位置調整を容易ならしめるべく、長孔等の比較的大きい孔で実施することが好ましい。
この段階で前記アンカーボルト12の締結作業を行い、柱材1を堰堤壁面11に固定する。
しかる後、前記位置調整ブラケット3の可動ブラケット3bを、固定ブラケット3aに対して上方へ相対移動させると、ついには当該可動ブラケット3b(の鋼製プレート)の上面が前記開口部9の対応する内周面9bに当接する。この段階でボルト、ナットの締結作業(本締め作業)を行い、当該可動ブラケット3bを固定する(図3A参照)。
この一連の作業を複数(本実施例では3本)の柱材1に対してそれぞれ行い、砂防堰堤の閉塞防止構造を構築する。
1)洪水時等、柱材1に礫(巨礫)が衝突する衝撃力により、その両端部を固定するアンカーボルト12に引き抜き力が作用するが、当該柱材1の背面に設けた掛止ブラケット2、位置調整ブラケット3の前記内周面9a、9bに対する前記支圧効果により、前記引き抜き力、ひいてはアンカーボルト12の荷重負担を大幅に低減することができる。
また、前記掛止ブラケット2、及び位置調整ブラケット3は、前記柱材1の背面に設けられているので、当該柱材1で保護され、前記礫(巨礫)が直接衝突する虞がない。よって、前記支圧効果を確実に発揮することができる。
さらに、前記掛止ブラケット2が、位置決め機能、ガイド機能のほか、作業中の柱材1の荷重負担機能を奏することができるので作業性に優れている。掛止ブラケット2のこれらの機能は、高所作業の場合に特に有益である。
以上要するに、前記柱材1のずれ、脱落を極力防止でき、良好なグレーチング機能を長期的に発揮できる実効性、経済性、および作業性に非常に優れた砂防堰堤の閉塞防止構造を実現することができる。
付随的効果として、前記掛止ブラケット2、及び位置調整ブラケット3の支圧効果により、全体的に前記柱材1の見かけの強度・剛性を向上させたと云えるので、当該掛止ブラケット2、及び位置調整ブラケット3がない場合と比し、アンカーボルト12のサイズを下げることもできる。アンカーボルト12が一部破損した場合等、前記掛止ブラケット2、及び位置調整ブラケット3の支圧効果で補うこともできる。
2)前記複数の柱材1は同形同大で、かつ縦向き方向に揃えられた構成で実施しているので、洪水時等に頻繁に発生する絡み合った巨礫、流木等のアーチアクションにより、巨礫、流木等が一塊の状態のまま当該柱材1により効果的に捕捉することもできる。
この実施例2は、上記実施例1とコンセプトは同じで、施工対象となる排水孔8の開口部9の大きさ、これに伴う柱材1の長さ、及び使用本数が相違する。
すなわち、本実施例2に係る排水孔8の開口部9断面の大きさは、縦寸が横1.5m程度、横寸が1.2m程度の方形状であり、上記実施例1に係る開口部9と比して小さい。
これに伴い、前記柱材1は、長さ2300mm、外径318.5mm、肉厚12.7mmの同形同大の柱材(金属製鋼管)1を2本用意する。
ちなみに、柱1、1同士の間隔は450mm程度、端部の柱1と開口部9の側壁との隙間は50〜60mm程度確保する点は上記実施例1と同様である。その他の構成要素である、前記掛止ブラケット2、位置調整ブラケット3、及びベースプレート4の構成も上記実施例1と同様である。
この実施例2に係る閉塞防止工法の作業手順も上記実施例1と同様である。
この実施例3は、上記実施例1と比し、前記柱材1を横向き方向に設けて実施している点が相違する。
施工対象となる排水孔8の開口部9の大きさ、これに伴う柱材1の形態、及び使用本数、及びその他の構成要素である、前記掛止ブラケット2、位置調整ブラケット3、及びベースプレート4の構成も上記実施例1と同様である。
この実施例3に係る閉塞防止工法の作業性については、前記柱材1を横向き方向で実施する構成であるが故に、上記実施例1と比し、掛止ブラケット2に柱材1の荷重を預けて施工できる点については少し劣るものの、位置決め機能、ガイド的機能を発揮することに変わりはない。
この実施例4は、上記実施例1と比し、施工対象が異なるものの、前記柱材1を横向き方向に設けて実施する上記実施例3に倣って実施することができる。
要するに、この実施例4は、上記実施例1等と比し、施工対象が排水孔8とスリット18とで異なるので、梁材1’(柱材1)の使用本数は異なるものの、梁材1’の形態、及びその他の構成要素である、前記掛止ブラケット2、位置調整ブラケット3、及びベースプレート4の構成は上記実施例1と同様にして実施できる。
例えば、前記掛止ブラケット2、位置調整ブラケット3について、施工対象(排水孔8、スリット18)の内周面9a〜9d(内側面)に当接する側の鋼製プレートに緩衝材を貼着して実施する等の工夫は適宜行われるところである。
1’ 梁材
2 掛止ブラケット
3 位置調整ブラケット
3a 固定ブラケット
3b 可動ブラケット
3c 長孔
4 ベースプレート
4a 補強リブ
8 排水孔
9 開口部
9a、9b、9c、9d 内周面
10 砂防堰堤
10a 水通し部
11 堰堤壁面
12 アンカーボルト
13 通しボルト
14 鞘管
18 スリット
19 開口部
20 砂防堰堤
20a 水通し部
21 堰堤壁面
Claims (5)
- 砂防堰堤に上流側から下流側へ貫通して設けられる排水孔の閉塞防止構造であって、
複数の柱材が前記排水孔の上流側開口部に跨る配置で所要の間隔を開けて堰堤壁面に縦向き方向又は横向き方向に固定されていること、
前記柱材の側面には、軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットが突設され、各ブラケットは前記開口部の対応する内周面にそれぞれ当接されていることを特徴とする、砂防堰堤の閉塞防止構造。 - 砂防堰堤の水通し部に連通するように設けられるスリットの閉塞防止構造であって、
複数の梁材が前記スリットの上流側開口部に跨る配置で所要の間隔を開けて堰堤壁面に段状に固定されていること、
前記梁材の側面には、軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットが突設され、各ブラケットは前記開口部の対応する内側面にそれぞれ当接されていることを特徴とする、砂防堰堤の閉塞防止構造。 - 前記位置調整ブラケットは、固定ブラケットと可動ブラケットからなり、前記固定ブラケットは、前記柱材又は梁材の側面に設けられ、前記可動ブラケットは、前記柱材又は梁材の軸方向に移動可能な構成で前記固定ブラケットに支持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した砂防堰堤の閉塞防止構造。
- 砂防堰堤に上流側から下流側へ貫通して設けられる排水孔の閉塞防止工法であって、
軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットを側面に設けた複数の柱材を所要の間隔をあけて前記排水孔に縦向き方向又は横向き方向に設けるにあたり、
各柱材の前記掛止ブラケットを前記排水孔の上流側開口部の対応する内周面に掛け止めた後、当該柱材を同開口部に跨がるように位置決めし、前記位置決めした柱材を堰堤壁面にアンカーボルトで固定すると共に、前記位置調整ブラケットを前記開口部の対応する内周面に当接するように位置調整してなることを特徴とする、砂防堰堤の閉塞防止工法。 - 砂防堰堤の水通し部に連通するように設けられるスリットの閉塞防止工法であって、
軸方向に間隔をあけて掛止ブラケットと位置調整ブラケットを側面に設けた複数の梁材を所要の間隔をあけて前記スリットに段状に設けるにあたり、
各梁材の前記掛止ブラケットを前記スリットの上流側開口部の対応する内側面に掛け止めた後、当該梁材を同開口部に跨がるように位置決めし、前記位置決めした梁材を堰堤壁面にアンカーボルトで固定すると共に、前記位置調整ブラケットを前記開口部の対応する内側面に当接するように位置調整してなることを特徴とする、砂防堰堤の閉塞防止工法。
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