JP2017169476A - ロールイン用水中油型乳化組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、乳由来の蛋白質、15℃のときの固体脂指数(SFC)が10%以上である油脂、増粘剤及び水を含む水中油型乳化組成物であって、油脂の含有量が15〜50重量%であるロールイン用フィリング材が開示されている。このロールイン用フィリング材を用いることによって、食感が滑らかで口溶けの良いパンを作製することができる。しかしながら、このロールイン用フィリング材は油脂の含油量が少ないため、パンの層状膨化構造の形成が不十分である。
特許文献2には、特定の脂肪酸鎖長組成を有する油脂を特定量含むことを特徴とするロールイン用油脂組成物が開示されている。しかし、このロールイン用組成物は、口溶けと伸展性を両立させることを目的としており、油脂を含む油相部の口溶けを良好にすることによってペストリーの口溶けを改善するものの、歯切れのよさの付与は達成できない。
特許文献4には、油脂50〜65質量%、糖類5〜20質量%、蛋白質1〜5質量%を含むロールイン用水中油型乳化組成物が開示されているが、これは油っぽさの抑制としっとりさを付与する内容であり、歯切れのよさについては達成できていない。また、乳化安定性付与のため蛋白質を必須成分としているため、酸などを添加してpHを低くした配合では蛋白質が変性、凝集してしまうため、十分な乳化力を維持することが難しく、安定した乳化状態が維持できないと考えられる。
特許文献6には、低pH成分を油中水型に乳化したロールイン用油中水型油脂組成物が開示されている。このロールイン用油中水型油脂組成物を用いることにより、サクサクとして歯切れのよい食感のベイカリー食品を得ることができる。しかしながら、マーガリン、ファットスプレッドと同じく油中水型の乳化物であり、油っぽさの改善は達成できない。
すなわち、本発明は下記の〔1〕〜〔2〕である。
〔2〕上記〔1〕に記載のロールイン用水中油型乳化組成物を含有する、ペストリー。
具体的にはペストリー作製時の展延性に問題がなく、かつ焼成品の層状膨化構造、油っぽさ、歯切れのよさの項目における官能評価で53%以上のパネラーが良好であると判定されるペストリーが作製できる。
本発明のロールイン用水中油型乳化組成物は、油脂、HLB8.0〜16.0の多価アルコール脂肪酸エステル、増粘多糖類を含む。
本発明のロールイン用水中油型乳化組成物に使用する油脂は、ロールイン用水中油型乳化組成物の展延性および層状膨化構造形成のために必須の成分であり、使用できるものとしては、食用に適する油脂が該当し、牛脂、豚脂、魚油、乳脂、パーム油、ナタネ油、大豆油、綿実油、コーン油、ヤシ油、パーム核油、等の天然の動物植物油脂、またはこれら単独あるいは組み合わせの硬化油、極度硬化油、分別油、エステル交換油が挙げられ、2種類以上の油脂の組み合わせが好ましい。
本発明のロールイン用水中油型乳化組成物には、乳化安定化のために乳化剤として、HLB8.0〜16.0の多価アルコール脂肪酸エステルを用いる。多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を有する乳化剤である。
多価アルコール脂肪酸エステルは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、HLBは、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化物のエステル化度により調整される。本発明におけるHLB値は、下記式で示されるグリフィン法によって求めるHLBである。
HLB値=20×(親水基の分子量/全体の分子量)
増粘多糖類は、ロールイン用水中油型乳化組成物の乳化安定化のために必要な成分であり、使用できる増粘多糖類としては、カラギーナン、ペクチン、ジェランガム、サイリウムシードガム、ゼラチン、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、グアガム、キサンタンガム等が挙げられる。増粘多糖類の含有量は0.1〜1質量%であり、含有量が0.1質量%より少ないと乳化不良を起こし、含有量が1質量%より多いと水相部の粘度上昇によって乳化不良を生ずる。
本発明における水の含有量は15〜49.6質量%であり、含有量が15質量%より少ないと、水中油型乳化を維持できず、乳化破壊による状態不良を起こし、製品化できなくなる。49.6質量%以上では油脂含量が少なくなり、折り込みに必要な硬さを付与するのが難しくなる。
本発明のロールイン用水中油型乳化組成物は、pHが2.0〜5.5であり、好ましくは2.2〜5.0であり、より好ましくは2.6〜4.0である。pHが2.0未満では得られるペストリー製品の内層が荒れたものとなる恐れがあり、また、酸味が強すぎる恐れがある。一方、pHが5.5を超えると本発明の効果が得られない。
また、本発明のロールイン用水中油型乳化組成物を用いて焼成したペストリーにおいては、粘性を有する水相部中に乳化させた油脂の存在によって、焼成したペストリー中で層状膨化構造が形成される。
この際、乳化破壊が生じて油脂分離が発生していた場合は、層状膨化構造は形成されるものの、焼成後のペストリーにおいて油っぽさを感じることとなるため、乳化安定性が重要となる。
(デニッシュの作製)
表1のデニッシュ配合に従って、パンの作製を行った。ミキサーボールに全ての原料を入れ、低速3分、中高速4分ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は25℃とし、−3℃の恒温庫に生地を入れ2時間のリタードを取った。生地に対して22.5%の割合で実施例および比較例で得たロールイン用水中油型乳化組成物を使用し、重ねて3つ折りを2回行い、−3℃の恒温庫で一晩寝かせて中間リタードを取った。中間リタード後、3つ折りを1回行い2.5mmまで圧延した後、一定の大きさに分割、成型し、33℃のホイロに90分間入れた後、200℃のオーブンで10分間焼成してデニッシュを得た。
油脂粒径の測定には偏光顕微鏡を用いた。スライドグラスにサンプルを少量塗布したプレパラートを作製し、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製BX−60)にて100〜250倍の倍率で観察した。食品の場合、蛋白質や澱粉などの油脂以外の固形粒子を含有していることがあるため、偏光機能を持たない光学顕微鏡では油滴のみを見分けることが難しくなる。偏光顕微鏡を使用することで偏光特性を持つ油脂結晶を可視化し、偏光特性を持たない蛋白質や澱粉などは可視化できないため油滴を容易に観察することができる。本発明においては任意の視野の任意の粒子20個について、長軸と短軸との相加平均を粒径とみなした。接眼レンズにマイクロメーターを装着して直接肉眼で測定したが、着色料や呈味成分の影響によって確認しにくい場合には、写真や画像データとして保存してから測定した。結果を表2、3の「油脂粒径(μm)」の欄に示す。
上記方法にてデニッシュを作製する際に、3つ折りおよび成型時のロールイン組成物の展延性について次の4段階で評価した。結果を表2、3の「展延性」の欄に示す。
◎: 問題なく作業できる。
○: 展延に抵抗はあるが、支障なく作業ができる。
△: かろうじて作業できる。
×: 展延性に劣り作業できない。
焼成後1日間、一定条件下で保管したデニッシュを15名のパネラーにて層状膨化構造、油っぽさ、歯切れの良さの3項目について官能評価を行った。結果を表2、3の「層状膨化構造」、「油っぽさ」、「歯切れの良さ」の欄に示す。
◎: 15名中13名以上が良好であると判断
○: 15名中8〜12名が良好であると判断
△: 15名中3〜7名が良好であると判断
×: 15名中2名以下が良好であると判断
表2の配合に従って、以下のようにしてロールイン用水中油型乳化組成物を得た。水相部の原料が均一になるよう攪拌、混合しながら70℃まで昇温し、同様に70℃まで昇温した油相部を添加し攪拌を続けた。その後、ホモジナイザーを用いて10MPaの圧力で均質化した。得られた乳化液をシート状に充填包装し、品温が7℃になるまで更に冷却しロールイン用水中油型乳化組成物を得た。得られたロールイン用水中油型乳化組成物を折り込んだデニッシュを作製し、展延性、層状膨化構造、油っぽさ、歯切れのよさを評価し、評価結果を表2にまとめた。
実施例1と同じ方法で、配合の一部を変更してロールイン用水中油型乳化組成物を得た。得られたロールイン用水中油型乳化組成物を折り込んだデニッシュを作成し、性能の評価を行った。評価結果を配合と共に表2に示す。
実施例1と同じ方法で、配合の一部を変更してロールイン用水中油型乳化組成物を得た。ロールイン用水中油型乳化組成物が得られた場合には、これを折り込んだデニッシュを作成し、性能の評価を行った。評価結果を配合と共に表3に示す。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13.0): 太陽化学(株)製「A−181E」、平均グリセリン重合度:5、主要構成脂肪酸;ステアリン酸、エステル化度;1
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB8.4): 坂本薬品工業(株)製「MS−3S」、平均グリセリン重合度:4、主要構成脂肪酸;ステアリン酸、エステル化度;1
ショ糖脂肪酸エステル(HLB15.0): 三菱化学フーズ(株)製「S−1570」、主要構成脂肪酸;ステアリン酸、エステル組成;モノエステル70%、ジ・トリ・ポリエステル30%
ショ糖脂肪酸エステル(HLB11.0): 三菱化学フーズ(株)製「S−1170」、主要構成脂肪酸;ステアリン酸、エステル組成;モノエステル55%、ジ・トリ・ポリエステル45%
ソルビタン脂肪酸エステル(HLB8.0): 理研ビタミン(株)製「L−300」、主要構成脂肪酸;ラウリン酸、エステル化度;1)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB3.8): 坂本薬品工業(株)製「DAS−7S」平均グリセリン重合度:10、主要構成脂肪酸;ステアリン酸、エステル化度;10
比較例4においては、油脂の配合率が本発明の上限値を上回る75質量%なので、水中油型乳化物を形成することができなかった。また、比較例5では、油脂の配合率が本発明の下限値を下回る45質量%であるので、乳化状態と展延性は良好であったが、シート物性が柔らかく、パン生地への折り込み工程でパン生地に練りこまれてしまい、層状膨化構造とならなかった。さらに、比較例6ではpHが6.9で本発明のpH値上限を上回るため、乳化状態、展延性は良好であったが、歯切れのよい食感とならなかった。
Claims (2)
- 油脂50〜70質量%、HLB8.0〜16.0の多価アルコール脂肪酸エステル0.3〜10.0質量%、増粘多糖類0.1〜1.0質量%を含み、pHが2.0〜5.5である、ロールイン用水中油型乳化組成物。
- 請求項1に記載のロールイン用水中油型乳化組成物を含有する、ペストリー。
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