JP2017166284A - 建造物制震構造 - Google Patents

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久保田 雅春
Masaharu Kubota
雅春 久保田
祥一 名取
Shoichi Natori
祥一 名取
隆英 阿部
Takahide Abe
隆英 阿部
中村 和明
Kazuaki Nakamura
和明 中村
類斗 河合
Ruito Kawai
類斗 河合
苓 張
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苓 張
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Abstract

【課題】オフィスビルの損壊を防ぎつつ、振動減衰油圧ダンパーによってビルに生じた振動を確実に低減させることができる建造物制震構造を提供する。
【解決手段】建造物制震構造は、オフィスビル10Aに一方への振動が生じてビル10Aが一方へ変形し、一方への振動に対する振動減衰油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に、油圧ダンパーの減衰力を最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第1低減手段を実施し、一方の振動が他方へ転じてビル10Aが他方へ変形し、他方への振動に対する油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に、油圧ダンパーの減衰力を最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第2低減手段を実施する。
【選択図】図1

Description

本発明は、建造物に生じた振動を減衰する減衰力を発生させる振動減衰油圧ダンパーを備え、建造物の架構に構築される建造物制震構造に関する。
柱と梁とから形成されたラーメン構造の建物に設置され、ラーメン構造の建物における耐震性を向上させる斜材に油圧ダンパーを接続し、油圧ダンパーが所定領域での伸縮時に所定の大きさの減衰力を発生する一方、所定領域を超えてストロークエンド近傍領域で所定の大きさの減衰力を漸減させるように構成された制震装置が開示されている(特許文献1参照)。
また、既存骨組構造体に制震構造部を配設する耐震補強構造を有する多層の建物が開示されている(特許文献2参照)。この建物の耐震補強構造では、既存骨組構造体の相対向する既存柱とこれらの既存柱間に横架される上下の既存梁とによって囲まれた開口部に制震構造部が設置されている。制震構造部は、油圧ダンパーを備えた補強骨組部によって形成され、それ以上の変形領域では油圧ダンパーの変位の増分に対して油圧ダンパーの減衰力の増分が負となる油圧ダンパーの変位を所定の減衰力・減少開始変位点としている。油圧ダンパーは、所定の減衰力・減少開始変位点とストロ−クエンドとの間の変位領域において、油圧ダンパーの最大変位時に油圧ダンパーの減衰力がゼロになるように、油圧ダンパーの変位が増加するにつれて減衰力が所定の減衰力・減少勾配で漸減するダンパー復元力を構成し、地震時に制震構造部が連結している既存柱に作用する柱付加軸力が許容柱付加軸力を超えないように軽減されている。
特開2003−227243号公報 特開2006−183250号公報
前記特許文献1に開示の制震装置では、油圧ダンパーのロッドが高速で伸縮するように設定されている場合、建物の振動が水平方向一方から水平方向他方へ転じて建物が水平方向他方へ変形する瞬間に極めて大きい層間剪断力が建物の柱や梁に作用し、振動抑制時に柱や梁が損壊し、建物としての機能が失われる場合がある。また、建物の最大変形時には柱や梁に自重による荷重が大きく作用するとともに、その荷重にダンパーの反力としての荷重が追加され、大きな荷重状態となって柱や梁が損壊する場合もある。
前記特許文献2に開示の油圧ダンパーは、減衰力・減少開始変位点とストロ−クエンドとの間の変位領域において、油圧ダンパーの最大変位時に油圧ダンパーの減衰力がゼロになるように、油圧ダンパーの減衰力を漸減し、それによって既存骨組構造体に作用する層間剪断力を漸減し、既存骨組構造体の損壊を防止する。しかし、減衰力・減少開始変位点とストロ−クエンドとの間の変位領域において、油圧ダンパーの減衰力を漸減させるから、油圧ダンパーの減衰力が徐々に低下し、減衰力が最大に保持されることはなく、振動に対する油圧ダンパーの減衰力を十分に利用することができず、建物に生じた振動を確実に低減させることができない。また、最大変位時における油圧ダンパーの減衰力がゼロになり、油圧ダンパーの振動に対する減衰力が失われるから、その時点において建物に生じた振動を低減させることができない。
本発明の目的は、建造物の損壊を防ぎつつ、油圧ダンパーによって建造物に生じた振動を確実に低減させることができる建造物制震構造を提供することにある。本発明の他の目的は、最大変位時において油圧ダンパーの減衰力が失われることはなく、振動に対する油圧ダンパーの減衰力を最大かつ十分に利用することができる建造物制震構造を提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、建造物に生じた振動を減衰する減衰力を発生させる振動減衰油圧ダンパーを備え、建造物の架構に構築される建造物制震構造である。
前記前提における本発明の特徴は、制震構造が、建造物に一方への振動が生じて建造物が一方へ変形し、一方への振動に対する振動減衰油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に、油圧ダンパーの減衰力を最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第1低減手段を実施し、一方の振動が他方へ転じて建造物が他方へ変形し、他方への振動に対する油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に、油圧ダンパーの減衰力を前記最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第2低減手段を実施することにある。
本発明の一例として、制震構造では、一方の振動が他方へ転じて建造物が他方へ変形を開始した直後に、減衰力第1低減手段によって低減された振動減衰油圧ダンパーの減衰力が0を通過して他方の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、最大減衰力を維持しつつ他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる直前に減衰力第2低減手段が実施され、他方の振動が一方へ転じて建造物が一方へ変形を開始した直後に、減衰力第2低減手段によって低減された油圧ダンパーの減衰力が0を通過して一方の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、最大減衰力を維持しつつ一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる直前に減衰力第1低減手段が実施される。
本発明の他の一例として、制震構造では、一方の振動が他方へ転じて建造物が他方へ変形を開始すると、減衰力第1低減手段によって低減された振動減衰油圧ダンパーの減衰力が0を通過して他方の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、減衰力が最大から次第に減少しつつ他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に減衰力第2低減手段が実施され、他方の振動が一方へ転じて建造物が一方へ変形を開始すると、減衰力第2低減手段によって低減された油圧ダンパーの減衰力が0を通過して一方の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、減衰力が最大から次第に減少しつつ一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に減衰力第1低減手段が実施される。
本発明の他の一例として、制震構造では、振動減衰油圧ダンパーが建造物の架構の下方から上方に向かって斜めに架設されることで架構に制震補強ブレースが形成されている。
本発明の他の一例として、建造物の架構では、一対の前記制震補強ブレースが対称形に設置されている。
本発明の他の一例としては、制震構造が、建造物の架構に設置されて一方向へ延びる第1アームと、架構に設置されて一方向へ延びる第2アームとを含み、制震構造では、振動減衰油圧ダンパーが第1および第2アームの間の架構に設置され、第1および第2アームと油圧ダンパーとから架構にトグル機構が形成されている。
本発明の他の一例として、建造物の架構では、一対のトグル機構が対称形に設置されている。
本発明の他の一例としては、建造物が下方から上方へ各階層が連なる多層の既設建造物または下方から上方へ各階層が連なる多層の新設建造物であり、制震構造が既設建造物または新設建造物の各階層の架構に構築されてそれら建造物の上下方向と横方向との少なくとも上下方向へ並んでいる。
本発明の他の一例としては、減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施しない振動減衰サブ油圧ダンパーが多層の建造物の下層と上層とのうちのいずれか一方に設置されて上下方向へ並び、減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施する振動減衰油圧ダンパーが多層の建造物の下層と上層とのうちのいずれか他方に設置されて上下方向へ並んでいる。
本発明の他の一例としては、振動減衰油圧ダンパーが、軸方向へ延びるシリンダと、シリンダの内部に摺動可能に設置されてシリンダに対して軸方向へ進退するロッドと、ロッドに連接されてロッドの進退にともなって軸方向へ進退するピストンと、シリンダの内部に作られてピストンを隔ててシリンダの軸方向一方に位置する第1オイルチャンバーと、シリンダの内部に作られてピストンを隔ててシリンダの軸方向他方に位置する第2オイルチャンバーとを備え、ピストンには、第1オイルチャンバーと第2オイルチャンバーとにつながってそれらチャンバーにオイルを通流させるオイル流路が形成されているとともに、第1および第2オイルチャンバーへのオイルの流動に対して所定の減衰力を発生させる減衰力発生弁と、ロッドがシリンダに対して軸方向一方に変位した所定の位置で第1オイルチャンバーから第2オイルチャンバーへオイルを流入させるとともに、ロッドがシリンダに対して軸方向他方に変位した所定の位置で第2オイルチャンバーから第1オイルチャンバーへオイルを流入させるリリース弁とが設置されている。
本発明の他の一例としては、リリース弁がピストンから軸方向へ延びていて第1および第2オイルチャンバーに延出するトリガー軸を含み、リリース弁では、ロッドの軸方向の進退にともなってトリガー軸が軸方向へ進退し、トリガー軸の軸方向への進退によってリリース弁の弁機構が開閉される。
本発明の他の一例としては、リリース弁がピストンから径方向へ延びるトリガー軸を含み、リリース弁では、ロッドの軸方向の進退にともなってトリガー軸が径方向へ進退し、トリガー軸の径方向への進退によってリリース弁の弁機構が開閉される。
本発明にかかる建造物制震構造によれば、建造物に一方への振動が生じて建造物が一方へ変形し、一方の振動に対する振動減衰油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に、油圧ダンパーの減衰力を最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第1低減手段を実施し、一方の振動が他方へ転じて建造物が他方へ変形し、他方の振動に対する油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に、油圧ダンパーの減衰力を最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第2低減手段を実施することで、建造物の一方または他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前にダンパーの減衰力が低下するから、油圧ダンパーの最大変位近傍における大きな層間剪断力が建造物に作用することはなく、振動減衰時における建造物の損壊を防ぎつつ、油圧ダンパーによって建造物に生じた振動を低減させることができ、地震等による建造物の崩壊や倒壊を防ぐことができる。
一方の振動が他方へ転じて建造物が他方へ変形を開始した直後に、減衰力第1低減手段によって低減された振動減衰油圧ダンパーの減衰力が0を通過して他方の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、最大減衰力を維持しつつ他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる直前に減衰力第2低減手段が実施され、他方の振動が一方へ転じて建造物が一方へ変形を開始した直後に、減衰力第2低減手段によって低減された油圧ダンパーの減衰力が0を通過して一方の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、最大減衰力を維持しつつ一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる直前に減衰力第1低減手段が実施される建造物制震構造は、油圧ダンパーの減衰力が瞬時に最大減衰力に到達するとともに、油圧ダンパーの変位が最大になる直前に各低減手段が実施されるから、油圧ダンパーの変位中にダンパーの減衰力が維持され、油圧ダンパーの減衰力を最大かつ十分に利用することができ、建造物に大きな振動が生じたとしても、油圧ダンパーを利用してその振動を確実に抑制することができる。この建造物制震構造は、建造物が強固に作られている場合であってその建造物に油圧ダンパーの最大減衰力を瞬時に作用させ、その建造物に生じた振動を確実に抑制する場合に好適に使用することができる。
一方の振動が他方へ転じて建造物が他方へ変形を開始すると、減衰力第1低減手段によって低減された振動減衰油圧ダンパーの減衰力が0を通過して他方の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、減衰力が最大から次第に減少しつつ他方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に減衰力第2低減手段が実施され、他方の振動が一方へ転じて建造物が一方へ変形を開始すると、減衰力第2低減手段によって低減された油圧ダンパーの減衰力が0を通過して一方の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、減衰力が最大から次第に減少しつつ一方の変形に対する油圧ダンパーの変位が最大になる前に減衰力第1低減手段が実施される建造物制震構造は、油圧ダンパーの減衰力が次第に最大減衰力に到達しつつ最大から次第に減少し、油圧ダンパーの変位が最大になる前に各低減手段が実施され、油圧ダンパーの変位中にダンパーの減衰力が徐々に増加しつつ徐々に低下するから、油圧ダンパーの減衰力を緩やかに利用することができ、油圧ダンパーを利用して建造物に生じた小さくかつ長期的な振動を確実に抑制することができる。この建造物制震構造は、建造物に油圧ダンパーの減衰力を徐々に作用させてその建造物の損壊を確実に防ぎつつ、その建造物に生じた振動を抑制する場合に好適に使用することができる。
振動減衰油圧ダンパーが建造物の架構の下方から上方に向かって斜めに架設されることで架構に制震補強ブレースが形成されている建造物制震構造は、油圧ダンパーを架構に斜めに架設して制震補強ブレースを形成し、油圧ダンパーの減衰力(制震機能)を利用して建造物に生じた振動を確実に低減させることができ、地震等によって生じた振動による建造物の崩壊や倒壊を防ぐことができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、振動減衰油圧ダンパーによる振動減衰時における建造物の損壊を防ぐことができる。
一対の制震補強ブレースが建造物の架構において対称形に設置されている建造物制震構造は、一対の制震補強ブレースを建造物の架構において対称形に設置することで、建造物の架構に設置された一方の制震補強ブレースを形成する油圧ダンパーの減衰力(制震機能)を利用して建造物に生じた一方への振動を減衰させることができ、建造物の架構に設置された他方の制震補強ブレースを形成する油圧ダンパーの減衰力(制震機能)を利用して建造物に生じた他方への振動を減衰させることができ、対称形に設置された一対の制震補強ブレースによって建造物に生じた一方と他方との振動を確実に低減させることができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、それら振動減衰油圧ダンパーによる振動減衰時における建造物の損壊を防ぐことができる。
建造物の架構に設置されて一方向へ延びる第1アームと、架構に設置されて一方向へ延びる第2アームとを含み、振動減衰油圧ダンパーが第1および第2アームの間の架構に設置され、第1および第2アームと油圧ダンパーとから架構にトグル機構が形成されている建造物制震構造は、第1および第2アームと振動減衰油圧ダンパーとがトグル機構を形成し、トグル機構の制震機能とをトグル機構の形成する油圧ダンパーの減衰力とを利用して建造物に生じた振動を確実に低減させることができ、地震等によって生じた振動による建造物の崩壊や倒壊を防ぐことができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、振動減衰油圧ダンパーによる振動減衰時における建造物の損壊を防ぐことができる。
一対のトグル機構が建造物の架構において対称形に設置されている建造物制震構造は、一対のトグル機構を建造物の架構において対称形に設置することで、建造物の架構に設置された一方のトグル機構の制震機能と振動減衰油圧ダンパーの減衰力とを利用して建造物に生じた一方への振動を低減させることができ、建造物の架構に設置された他方のトグル機構の制震機能と油圧ダンパーの減衰力とを利用して建造物に生じた他方への振動を低減させることができ、対称形に設置された一対のトグル機構によって建造物に生じた一方と他方との振動を確実に低減させることができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、それら振動減衰油圧ダンパーによる振動減衰時における建造物の損壊を防ぐことができる。
建造物が下方から上方へ各階層が連なる多層の既設建造物または下方から上方へ各階層が連なる多層の新設建造物であり、制震構造が既設建造物または新設建造物の各階層の架構に構築されてそれら建造物の上下方向と横方向と斜め方向との少なくとも上下方向へ並んでいる建造物制震構造は、複数の制震構造が既設建造物または新設建造物の上下方向へ並ぶことで、建造物の下階の振動を下階に設置された制震構造によって低減させることができ、振動が下階から上階に伝わるのを防ぐことができるとともに、上階に伝わった振動を上階に設置された制震構造によって低減させることができる。建造物制震構造は、高層の建造物の振動の低減に好適に使用され、地震等によって生じた振動による高層の建造物の崩壊や倒壊を防ぐことができる。
減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施しない振動減衰サブ油圧ダンパーが多層の建造物の下層と上層とのうちのいずれか一方に設置されて上下方向へ並び、減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施する振動減衰油圧ダンパーが多層の建造物の下層と上層とのうちのいずれか他方に設置されて上下方向へ並んでいる建造物制震構造は、建造物の振動特性によって上層が大きく揺れる建造物の場合、第1および第2低減手段を実施しない振動減衰サブ油圧ダンパーを上層に設置することで、減衰力が低減されずに減油圧ダンパーの変位が最大になるまで減衰力が維持される振動減衰サブ油圧ダンパーによって上層の大きな振動を減衰することができるとともに、第1および第2低減手段を実施する振動減衰油圧ダンパーを下層に設置することで、振動減衰時における建造物の下層の損壊を防ぎつつ、それら油圧ダンパーによって建造物全体に生じた振動を低減させることができる。建造物制震構造は、建造物の振動特性によって下層が大きく揺れる建造物の場合、第1および第2低減手段を実施しない振動減衰サブ油圧ダンパーを下層に設置することで、減衰力が低減されずに減油圧ダンパーの変位が最大になるまで減衰力が維持される振動減衰サブ油圧ダンパーによって下層の大きな振動を減衰することができるとともに、第1および第2低減手段を実施する振動減衰油圧ダンパーを上層に設置することで、振動減衰時における建造物の上層の損壊を防ぎつつ、それら油圧ダンパーによって建造物全体に生じた振動を低減させることができる。
振動減衰油圧ダンパーが軸方向へ延びるシリンダと、シリンダに対して軸方向へ進退するロッドと、ロッドに連接されたピストンと、ピストンを隔ててシリンダの軸方向一方に位置する第1オイルチャンバーと、ピストンを隔ててシリンダの軸方向他方に位置する第2オイルチャンバーとを備え、それらチャンバーにオイルを通流させるオイル流路がピストンに形成され、第1および第2オイルチャンバーへのオイルの流動に対して所定の減衰力を発生させる減衰力発生弁がピストンに設置され、ロッドがシリンダに対して軸方向一方に変位した所定の位置で第1オイルチャンバーから第2オイルチャンバーへオイルを流入させるとともに、ロッドがシリンダに対して軸方向他方に変位した所定の位置で第2オイルチャンバーから第1オイルチャンバーへオイルを流入させるリリース弁がピストンに設置されている建造物制震構造は、減衰力発生弁をオイルが通過するときの粘性抵抗によってシリンダに対するロッドの移動(進退)が抑制され、それによって油圧ダンパーに減衰力が発生するから、油圧ダンパーの減衰力を利用して建造物に生じた振動を確実に減衰させることができ、制震構造によって建造物に生じた振動を確実に低減させることができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段や減衰力第2低減手段において、リリース弁によってオイルを第1オイルチャンバーから第2オイルチャンバーへ流入させ、または、オイルを第2オイルチャンバーから第1オイルチャンバーへ流入させることで、第1オイルチャンバーや第2オイルチャンバーにおける油圧が低下するから、油圧ダンパーの減衰力を低減させることができ、振動減衰時における建造物の損壊を防ぐことができる。
リリース弁がピストンから軸方向へ延びていて第1および第2オイルチャンバーに延出するトリガー軸を含み、ロッドの軸方向の進退にともなってトリガー軸が軸方向へ進退し、トリガー軸の軸方向への進退によってリリース弁の弁機構が開閉される建造物制震構造は、たとえばトリガー軸の軸方向への後退によってリリース弁の弁機構が開放され、トリガー軸の軸方向への進出によってリリース弁の弁機構が閉鎖されることで、トリガー軸の軸方向への進退をトリガーとしてオイルを第1オイルチャンバーから第2オイルチャンバーへ流入させることができ、または、オイルを第2オイルチャンバーから第1オイルチャンバーへ流入させることができ、トリガー軸の軸方向への進退によって開閉するリリース弁を利用して油圧ダンパーの減衰力を確実に低減させることができる。
リリース弁がピストンから径方向へ延びるトリガー軸を含み、ロッドの軸方向の進退にともなってトリガー軸が径方向へ進退し、トリガー軸の径方向への進退によってリリース弁の弁機構が開閉される建造物制震構造は、たとえばトリガー軸の径方向への進出によってリリース弁の弁機構が開放され、トリガー軸の径方向への後退によってリリース弁の弁機構が閉鎖されることで、トリガー軸の径方向への進退をトリガーとしてオイルを第1オイルチャンバーから第2オイルチャンバーへ流入させることができ、または、オイルを第2オイルチャンバーから第1オイルチャンバーへ流入させることができ、トリガー軸の径方向への進退によって開閉するリリース弁を利用して油圧ダンパーの減衰力を確実に低減させることができる。
一例として示す既設オフィスビルまたは新設オフィスビルの正面図。 他の一例として示す既設オフィスビルまたは新設オフィスビルの正面図。 既設オフィスビルまたは新設オフィスビルの既設架構に取り付けられた制震補強ブレースの正面図。 振動減衰油圧ダンパーを形成するピストンの一例を示す正面図。 振動減衰油圧ダンパーの内部構造の一例を示す図4のA−A線矢視断面図。 振動減衰油圧ダンパーの内部構造を示す図4のB−B線矢視断面図。 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)による振動減衰機能の説明図。 第1減衰力低減機構の作動を説明する拡大断面図。 図8から続く第1減衰力低減機構の作動を説明する拡大断面図。 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)の変位と減衰力との関係の一例を示す図。 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)の変位と減衰力との関係の他の一例を示す図。 他の一例として示す振動減衰油圧ダンパーの内部構造の断面図。 他の一例として示す振動減衰油圧ダンパーの内部構造の断面図。 他の一例として示す振動減衰油圧ダンパーの内部構造の断面図。 図14の振動減衰油圧ダンパーの減衰力低減機構の拡大断面図。 既設オフィスビルまたは新設オフィスビルの既設架構に対する制震補強ブレースの他の設置例を示す図。 既設オフィスビルまたは新設オフィスビルの既設架構に取り付けられたトグル機構の正面図。 既設オフィスビルまたは新設オフィスビルの既設架構に対するトグル機構の他の設置例を示す図。
一例として示す既設オフィスビル10A(既設建造物)または新設オフィスビル10A(新設建造物)の正面図である図1等の添付の図面を参照しつつ、本発明にかかる建造物制震構造を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、他の一例として示す既設オフィスビル10B(既設建造物)または新設オフィスビル10B(新設建造物)の正面図であり、図3は、既設オフィスビル10A,10Bまたは新設オフィスビル10A,10Bの既設架構11に取り付けられた制震補強ブレースBの正面図である。図3では図1,2の一方の制震補強ブレースBのみを示す。図1,2の他方の制震補強ブレースBの図示は省略する。
図1に示す既設オフィスビル10Aまたは新設オフィスビル10Aは、下方から上方へ各階層が連なる多層の鉄筋コンクリート系ラーメン構造および鉄骨系ラーメン構造の高層の建物である。図2に示す既設オフィスビル10Bまたは新設オフィスビル10Bは、下方から上方へ各階層が連なる多層の鉄筋コンクリート系ラーメン構造および鉄骨系ラーメン構造の中層の建物である。なお、既設建造物や新設建造物として既設オフィスビルまたは新設オフィスビルを例示しているが、建造物をオフィスビルに限定するものではなく、建造物には既設または新設の集合住宅や商業ビル、ホテル、庁舎、官舎、校舎、駅舎等の本発明の振動減衰油圧ダンパーが設置可能なあらゆる建物が含まれる。
また、既設建造物や新設建造物の階層や床面積、事務室数等についても特に限定はなく、高層や中層のみならず、低層や超高層であってもよい。さらに、鉄筋コンクリート系ラーメン構造および鉄骨系ラーメン構造のみならず、鉄骨鉄筋コンクリート構造、木構造等のラーメン構造に本発明の建造物制震構造を構築することができる。
既設オフィスビル10A,10Bや新設オフィスビル10A,10Bの各事務室の正面の直後には、地震等によってビル10A,10B(建物)に生じた振動を減衰させる振動減衰油圧ダンパー12Aが設置されている。振動減衰油圧ダンパー12Aは、オフィスビル10A,10Bの既設架構11(既設柱および既設梁に囲繞された開口部)に取り付けられ、制震補強ブレースBを形成している。既設オフィスビル10A,10Bや新設オフィスビル10A,10Bの各事務室には、制震補強ブレースBによって建造物制震構造が構築されている。
図1の既設オフィスビル10Aまたは新設オフィスビル10Aでは、制震補強ブレースBがオフィスビル10Aの中央における各階層の各事務室の既設架構11に設置され、ブレースBがオフィスビル10Aの中央の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び(連層配置)、建造物制震構造がオフィスビル10Aの中央における各階層の既設架構11に構築されている。図2の既設オフィスビル10Bまたは新設オフィスビル10Bでは、制震補強ブレースBがオフィスビル10Bの両側における階層の各事務室の既設架構11に設置され、ブレースBがオフィスビル10Bの両側の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び(連層配置)、建造物制震構造がオフィスビル10Bの両側における階層の既設架構11に構築されている。
なお、制震補強ブレースBが既設オフィスビル10A,10Bや新設オフィスビル10A,10Bの下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並ぶとともに側方の事務室から他の側方の事務室に向かって横方向へ並んでいてもよい。また、制震補強ブレースBが既設オフィスビル10A,10Bや新設オフィスビル10A,10Bの下階の事務室から斜め上方の事務室に向かって斜め方向へ並んでいてもよい。また、オフィスビル10A,10Bが中層や低層であれば、各事務室に新設架構を設置し、その新設架構に制震補強ブレースBや後記する制震補強ブレースB1,B2、トグル機構T,T1,T2を設置することもできる。
さらに、後記する減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施しない減衰力の強い制震補強サブブレース(振動減衰サブ油圧ダンパー)がオフィスビル10A,10Bの下層と上層とのうちのいずれか一方に設置されて上下方向へ並び、減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施する制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)がオフィスビル10A,10Bの下層と上層とのうちのいずれか他方に設置されて上下方向へ並んでいてもよい。制震補強ブレースB(制震補強ブレースB1,B2、トグル機構T,T1,T2を含む)がオフィスビル10A,10Bの上層のみに配置されていてもよく、下層のみに配置されていてもよい。また、制震補強ブレースB(制震補強ブレースB1,B2、トグル機構T,T1,T2を含む)がオフィスビル10A,10Bの中間層のみに配置されていてもよく、中間層を除く上層と下層とに配置されていてもよい。
オフィスビル10A,10Bの既設架構11は、ビル10A,10Bを建造するときに設置された第1および第2鉄骨柱13a,13b(既設柱)と第1および第2鉄骨梁14a,14b(既設梁)とから形成されている。それら鉄骨柱13a,13bやそれら鉄骨梁14a,14bは、H鋼や鋼管等の構造用鋼材から形成された鉄骨(S)から作られている。なお、鉄骨柱13a,13bや鉄骨梁14a,14bが鉄筋コンクリート(RC)、鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)、コンクリート充填鋼管(CFT)、木等から作られていてもよい。
オフィスビル10A,10Bの既設架構11に設置された制震補強ブレースBは、図3に示すように、第1鉄骨柱13aと第1鉄骨梁14aとの第1交差部15から第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとの第3交差部16に向かって斜め上方へ延びる振動減衰油圧ダンパー12Aから形成されている。なお、制震補強ブレースBが第1鉄骨柱13aと第1鉄骨梁14aとの第1交差部15の近傍(第1交差部15の近傍の第1鉄骨柱13aと第1鉄骨梁14aとのいずれか、または、第1交差部15を含む第1鉄骨柱13aまたは第1鉄骨梁14a)から第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとの第3交差部16の近傍(第3交差部16の近傍の第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとのいずれか、または、第3交差部16を含む第2鉄骨柱13bまたは第2鉄骨梁14b)に向かって斜め上方へ延びていてもよい。図3に図示しない図1,2の他方の制震補強ブレースBは、第2鉄骨柱13bと第1鉄骨梁14aとの第2交差部(または第2交差部の近傍)から第1鉄骨柱13aと第2鉄骨梁14bとの第4交差部(または第4交差部の近傍)に向かって斜め上方へ延びている。
第1鉄骨柱13aと第1鉄骨梁14aとの第1交差部15(または第1交差部15の近傍)には、鋼材から作られた板状矩形の第1ガセットプレート17が取り付けられ、第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとの第3交差部16(または第3交差部16の近傍)には、鋼材から作られた板状矩形の第2ガセットプレート18が取り付けられている。第1ガセットプレート17は、第1鉄骨柱13aおよび第1鉄骨梁14aを形成するH鋼に溶接によって固定されている。第2ガセットプレート18は、第2鉄骨柱13bおよび第2鉄骨梁14bを形成するH鋼に溶接によって固定されている。
図4は、振動減衰油圧ダンパー12Aを形成するピストン21の一例を示す正面図であり、図5は、振動減衰油圧ダンパー12Aの内部構造の一例を示す図4のA−A線断面図である。図6は、振動減衰油圧ダンパー12Aの内部構造を示す図4のB−B線断面図である。図5,6では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、軸方向前方を矢印X1で示し、軸方向後方を矢印X2で示す。図5では、減衰力発生機構と温度補償機構とを示し、図6では、減衰力低減機構を示す。
振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)は、軸方向へ延びるシリンダ19と、軸方向へ延びるロッド20と、ロッド20に連接されたピストン21とから形成されている。油圧ダンパー12Aは、既設架構11の変形に追従しつつ、ロッド20の伸縮(変位)によって架構11の振動を減衰する。シリンダ19は、金属から作られて円筒状に成形され、軸方向前方に位置する前端部22と、軸方向後方に位置する後端部23とを有する。シリンダ19の前端部22と後端部23との間における内部には、オイルが注入(封入)されたオイルチャンバー24が作られている。
オイルチャンバー24は、ロッド20の外周面の径方向外方に作られている。オイルチャンバー24は、ピストン21によって軸方向に分断され、ピストン21を隔ててシリンダ19の軸方向前方(軸方向一方)に位置する第1オイルチャンバー24aと、ピストン21を隔ててシリンダ19の軸方向後方(軸方向他方)に位置する第2オイルチャンバー24bとに区画されている。
シリンダ19の前端部22には、シリンダ19の前端開口を閉塞する金属製の第1ブロック25aが設置固定されている。シリンダ19の前端部22における第1ブロック25aとロッド20との間には、金属製の第1軸受けガイド26aが設置固定されている。第1軸受けガイド26aのロッド20に対向する内周面の側には、シール27(パッキン)が設置されている。第1軸受けガイド26aには、ピストン21の軸方向前方への移動距離を規定する第1ストッパー28aが形成されている。第1ストッパー28aは、ピストン21に向かって第1オイルチャンバー24a内に延出している。
シリンダ19の後端部23には、シリンダ19の後端開口を閉塞する金属製の第2ブロック25bが設置固定されている。シリンダ19の後端部23における第2ブロック25bとロッド20との間には、金属製の第2軸受けガイド26bが設置固定されている。第2軸受けガイド26bのロッド20に対向する内周面の側には、シール27が設置されている。第2軸受けガイド26bには、ピストン21の軸方向後方への移動距離を規定する第2ストッパー28bが形成されている。第2ストッパー28bは、ピストン21に向かって第2オイルチャンバー24b内に延出している。
ロッド20は、シリンダ19の後端部23から軸方向後方へ露出する中空の固定ロッド20aと、シリンダ19の内部に摺動可能に設置され、シリンダ19の前端部22から軸方向前方へ露出する摺動ロッド20bとから形成されている。固定ロッド20aは、金属から作られて円筒状に成形され、第2ブロック25bの後端面に連結固定された固定端部29と、第2ガセットプレート18に接続された接続端部31と、それら端部29,31の間に位置する中間部30とを有する(図3参照)。
固定ロッド20aの接続端部31に穿孔された軸孔と第2ガセットプレート18に穿孔された軸孔とに軸32(ピン)が挿入されることで、接続端部31が第2ガセットプレート18に回転可能に取り付けられている。固定ロッド20aの軸方向の長さ寸法に特に制限はなく、固定ロッド20aの長さ寸法を長くすることで、制震補強ブレースBの長さ寸法を長くすることができ、固定ロッド20aの長さ寸法を短くすることで、制震補強ブレースBの長さ寸法を短くすることができる。
摺動ロッド20bは、シリンダ19に対して軸方向前方と軸方向後方とへ摺動可能に進退(移動)する。摺動ロッド20bは、金属から作られて円柱状に成形され、シリンダ19の内部に位置する自由端部33と、第1ガセットプレート17に接続された接続端部35とそれら端部33,35の間に位置する中間部34とを有する(図3参照)。摺動ロッド20bの接続端部35に穿孔された軸孔と第1ガセットプレート17に穿孔された軸孔とに軸32(ピン)が挿入されることで、接続端部35が第1ガセットプレート17に回転可能に取り付けられている。摺動ロッド20bの自由端部33には、アキュームレータ36を内蔵した円筒状のケーシング37が連結固定されている。ケーシング37は、摺動ロッド20bの自由端部33から軸方向後方に延出し、中空の固定ロッド20aの内部に位置している。
ピストン21は、摺動ロッド20bの周面から径方向外方へ延出し、シリンダ19の第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの間に位置している。ピストン21は、金属から作られて円環状に成形され、シリンダ19の内部において摺動可能であり、摺動ロッド20b(ロッド20)の軸方向への進退にともなって第1および第2オイルチャンバー24a,24b内を軸方向へ進退(移動)する。ピストン21は、油圧ダンパー12Aの減衰力発生機構および温度補償機構38と、油圧ダンパー12Aの減衰力低減機構39とを備えている。振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の非作動時では、ピストン21がオイルチャンバー24の軸方向中央に位置している。
減衰力発生機構は、第1リリーフ弁40a(減衰力発生弁)および第2リリーフ弁40b(減衰力発生弁)と第1調圧弁41a(減衰力発生弁)および第2調圧弁41b(減衰力発生弁)とを備えている(図4参照)。第1および第2リリーフ弁40a,40bや第1および第2調圧弁41a,41bは、第1オイルチャンバー24a内および第2オイルチャンバー24b内のオイルの圧力変化に対応してそれらの弁機構が開放されるように調節されている。第1および第2リリーフ弁40a,40bは、第1および第2調圧弁41a,41bに対してその弁機構の開放が遅くなるように、弁機構を付勢するバネのバネ定数が設定されている。なお、第1および第2リリーフ弁40a,40bの弁機構と第1および第2調圧弁41a,41bの弁機構とが同時に開放されるようにバネ定数が設定されていてもよい。
第1および第2リリーフ弁40a,40bは、その弁機構の開放速度が速く、所定の圧力で弁機構が瞬時に開放され、第1および第2オイルチャンバー24a,24b内の圧力の増加を防止する。第1リリーフ弁40aは、ピストン21が矢印X1で示す軸方向前方へ移動(前進)したときに作動し、第2リリーフ弁40bは、ピストン21が矢印X2で示す軸方向後方へ移動(後退)したときに作動する。第1リリーフ弁40aは、ピストン21に形成されて第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第1オイル流路42(オイル流路)に設置されている。第2リリーフ弁40bは、ピストン21に形成されて第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第2オイル流路(オイル流路)(図示せず)に設置されている。
減衰力発生機構では、ピストン21が軸方向前方へ移動を開始し、第1オイルチャンバー24a内のオイルの油圧と第2オイルチャンバー24b内のオイルの油圧との差圧が設定圧以上になると、第1リリーフ弁40aの弁機構が瞬時に開放され、オイルがリリーフ弁40aを通過して第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入する。オイルが第1リリーフ弁40aを通過する際、リリーフ弁40aを通過するオイルの粘性抵抗によって所定の減衰力が発生し、オフィスビル10A,10Bに生じた一方の振動の振動エネルギーを熱に変換してその振動を低減(減衰)させる。
ピストン21が軸方向後方へ移動を開始し、第2オイルチャンバー24b内のオイルの油圧と第1オイルチャンバー24a内のオイルの油圧との差圧が設定圧以上になると、第2リリーフ弁40bの弁機構が瞬時に開放され、オイルがリリーフ弁40bを通過して第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入する。オイルが第2リリーフ弁40bを通過する際、リリーフ弁40bを通過するオイルの粘性抵抗によって所定の減衰力が発生し、オフィスビル10A,10Bに生じた他方の振動の振動エネルギーを熱に変換してその振動を低減(減衰)させる。
第1および第2調圧弁41a,41bは、その弁機構の開放速度が遅く、低圧から高圧に向かって弁機構が次第に開放され、ピストン21の軸方向への移動速度に応じた減衰力を発生する。第1調圧弁41aは、ピストン21が矢印X1で示す軸方向前方へ移動(前進)したときに作動し、第2調圧弁41bは、ピストン21が矢印X2で示す軸方向後方へ移動(後退)したときに作動する。第1調圧弁41aは、ピストン21に形成されて第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第3オイル流路(オイル流路)(図示せず)に設置されている。第2調圧弁41bは、ピストン21に形成されて第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第4オイル流路(オイル流路)(図示せず)に設置されている。
減衰力発生機構では、ピストン21が軸方向前方へ移動を開始し、第1オイルチャンバー24a内のオイルの油圧と第2オイルチャンバー24b内のオイルの油圧との差圧が設定圧以上になると、第1調圧弁41aの弁機構が次第に開放され、オイルが調圧弁41aを通過して第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入する。オイルが第1調圧弁41aを通過する際、調圧弁41aを通過するオイルの粘性抵抗によって所定の減衰力が発生し、オフィスビル10A,10Bに生じた一方の振動の振動エネルギーを熱に変換してその振動を低減(減衰)させる。
ピストン21が軸方向後方へ移動を開始し、第2オイルチャンバー24b内のオイルの油圧と第1オイルチャンバー24a内のオイルの油圧との差圧が設定圧以上になると、第2調圧弁41bの弁機構が次第に開放され、オイルが調圧弁41bを通過して第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入する。オイルが第2調圧弁41bを通過する際、調圧弁41bを通過するオイルの粘性抵抗によって所定の減衰力が発生し、オフィスビル10A,10Bに生じた他方の振動の振動エネルギーを熱に変換してその振動を低減(減衰)させる。
温度補償機構38は、ピストン21に形成されて第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第5オイル流路43と、常時開放の第1オリフィスを備えた第1温度補償弁44と、常時開放の第2オリフィスを備えた第2温度補償弁45とから形成されている。第5オイル流路43は、摺動ロッド20aに形成されてアキュームレータ36につながる連絡流路46に連結されている。第1温度補償弁44は、第1オイルチャンバー24aの側に延びる第5オイル流路43に設置されている。第2温度補償弁45は、第2オイルチャンバー24bの側に延びる第5オイル流路43に設置されている。
第1温度補償弁44の弁機構は、アキュームレータ36に貯留されたオイルが第1オイルチャンバー24aに流入する場合に開放する。第2温度補償弁45の弁機構は、アキュームレータ36に貯留されたオイルが第2オイルチャンバー24bに流入する場合に開放する。アキュームレータ36は、オイルを貯留する貯留チャンバー47と、軸方向へ延びていて貯留チャンバー47内を進退(移動)するアキュームレータピストン48と、アキュームレータピストン48を貯留チャンバー47に向かって軸方向前方へ付勢するバネ49とから形成されている。
温度補償機構38では、第1オイルチャンバー24a内のオイルが熱膨張した場合、オイルが第1オリフィスを通過して第5オイル流路43から連絡流路46に流入し、連絡流路46からアキュームレータ36の貯留チャンバー47に流入する。温度補償機構38では、バネ49の付勢力に抗してアキュームレータピストン48が軸方向後方に移動し、第1オイルチャンバー24a内におけるオイルの熱膨張分が貯留チャンバー47に回収される。
第2オイルチャンバー24b内のオイルが熱膨張した場合、オイルが第2オリフィスを通過して第5オイル流路43から連絡流路46に流入し、連絡流路46からアキュームレータ36の貯留チャンバー47に流入する。温度補償機構38では、バネ49の付勢力に抗してアキュームレータピストン48が軸方向後方に移動し、第2オイルチャンバー24b内におけるオイルの熱膨張分が貯留チャンバー47に回収される。
温度補償機構38では、オイルの温度が低下して第1オイルチャンバー24a内のオイルの体積が減少した場合、または、何らかの原因によって第1オイルチャンバー24a内が負圧になった場合、バネ49の付勢によってアキュームレータピストン48が軸方向前方に移動し、アキュームレータ36の貯留チャンバー47内のオイルが貯留チャンバー47から連絡流路46に流入するとともに、連絡流路46から第5オイル流路43に流入する。温度補償機構38では、第1温度補償弁44の弁機構が開放され、オイルが温度補償弁44を通過して第1オイルチャンバー24a内に流入し、貯留チャンバー47から第1オイルチャンバー24aにオイルが供給される。
オイルの温度が低下して第2オイルチャンバー24b内のオイルの体積が減少した場合、または、何らかの原因によって第2オイルチャンバー24b内が負圧になった場合、バネ49の付勢によってアキュームレータピストン48が軸方向前方に移動し、アキュームレータ36の貯留チャンバー47内のオイルが貯留チャンバー47から連絡流路46に流入するとともに、連絡流路46から第5オイル流路43に流入する。温度補償機構38では、第2温度補償弁45の弁機構が開放され、オイルが温度補償弁45を通過して第2オイルチャンバー24b内に流入し、貯留チャンバー47から第2オイルチャンバー24bにオイルが供給される。
減衰力低減機構39は、ピストン21が軸方向前方へ移動したときに作動する第1減衰力低減機構39aと、ピストン21が軸方向後方へ移動したときに作動する第2減衰力低減機構39bとから形成されている。第1減衰力低減機構39aは、ピストン21に形成された第6オイル流路50(オイル流路)と、第6オイル流路50を開閉する第1リリース弁51a(リリース弁)とから形成されている。第6オイル流路50における第1リリース弁51aの後流側には、第1逆止弁52aが設置されている。第1逆止弁52aは、第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aへのオイルの逆流を阻止する。
第1リリース弁51aは、軸方向へ延びる金属製の第1トリガー軸53a(トリガー軸)と、ピストン21内に形成されたガイド孔に設置されて軸方向へ延びる第1スプールバルブ54aと、第2オイルチャンバー24bに開口するガイド孔を閉鎖する金属製の第1座金55aと、第1スプールバルブ54aと第1座金55aとの間に設置されて第1トリガー軸53aおよびスプールバルブ54aを軸方向前方へ付勢するバネ56とから形成されている。
第1トリガー軸53aは、第1スプールバルブ54aに連結固定された基端部57と、基端部57から軸方向前方に延びる延出部58とを有する。延出部58は、振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の非作動時において第1オイルチャンバー24aに露出する露出部分59を有する。第1スプールバルブ54aは、径方向の寸法が大きい大径部分60と、大径部分60よりも径方向の寸法が小さい小径部分61とを有する(図8,9参照)。
振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の非作動時では、第1スプールバルブ54aの大径部分60が第6オイル流路50に対向(位置)し、大径部分60によって第6オイル流路50が閉鎖されている。振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の作動時において、第1トリガー軸53aとともに第1スプールバルブ54aが軸方向後方へ後退(移動)すると、スプールバルブ54aの小径部分61が第6オイル流路50に対向(位置)して第1リリース弁51aが開放され、第6オイル流路50を介して第1および第2オイルチャンバー24a,24bがつながり、オイルが第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入する。
延出部58の露出部分59の第1オイルチャンバー24aに露出する露出長さを変えることによって第1リリース弁51aの開閉のタイミングを変えることができる。さらに、露出部分59の露出長さと第1スプールバルブ54aにおける小径部分61の形成位置を変えおよび/または小径部分61の径を大きくしおよび/または第6オイル流路50の径を小さくすることによって第1減衰力低減機構39aによって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Aの減衰力を0または0を超過する減衰力に調節することができる。
露出部分59の露出長さを長くすることで、第1リリース弁51aの開放を早くすることができ、露出部分59の露出長さを短くすることで、第1リリース弁51aの開放を遅くすることができる。小径部分61を第1スプールバルブ54aの軸方向後方に形成し、スプールバルブ54aが軸方向後方へ後退(移動)したときに小径部分61が第6オイル流路50の軸方向後方に通り過ぎるようにしおよび/または小径部分61の径を大きくして第6オイル流路50と小径部分61との間に形成される間隙を小さくしおよび/または第6オイル流路50の径を小さくすることで、低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Aの減衰力を0を超過する減衰力にすることができる。
第1減衰力低減機構39aでは、振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減するように露出部分59aの露出長さや小径部分61の形成位置、小径部分61の径、第6オイル流路50の径が調節されている。なお、油圧ダンパー12Aの減衰力を0に低減するように露出長さや形成位置、径が調節されていてもよい。
第1トリガー軸53aには、軸方向へ貫通する小径な貫通路62が形成され、第1スプールバルブ54aには、軸方向へ貫通して第1トリガー軸53aの貫通路62につながる小径な貫通路63が形成されている(図8,9参照)。第1リリース弁51aが閉鎖されている場合において、ピストン21が軸方向前方へ移動(前進)し、第1オイルチャンバー24a内のオイルの油圧が増加したときに、オイルがそれら貫通路62,63に流入するとともにガイド孔に流入し、ガイド孔の圧力を第1オイルチャンバー24aのそれと同一にする。したがって、第1オイルチャンバー24a内の油圧の増加にともなう第1スプールバルブ54aの軸方向後方への移動が防止される。
第2減衰力低減機構39bは、ピストン21に形成された第7オイル流路64(オイル流路)と、第7オイル流路64を開閉する第2リリース弁51b(リリース弁)とから形成されている。第7オイル流路64における第2リリース弁51bの後流側には、第2逆止弁52bが設置されている。第2逆止弁52bは、第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bへのオイルの逆流を阻止する。
第2リリース弁51bは、軸方向へ延びる金属製の第2トリガー軸53b(トリガー軸)と、ピストン21内に形成されたガイド孔に設置されて軸方向へ延びる第2スプールバルブ54bと、第1オイルチャンバー24aに開口するガイド孔を閉鎖する金属製の第2座金55bと、第2スプールバルブ54bと第2座金55bとの間に設置されて第2トリガー軸53bおよびスプールバルブ54bを軸方向後方へ付勢するバネ56とから形成されている。
第2トリガー軸53bは、第2スプールバルブ54bに連結固定された基端部57と、基端部57から軸方向後方に延びる延出部58とを有する。延出部58は、振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の非作動時において第2オイルチャンバー24bに露出する露出部分59を有する。第2スプールバルブ54bは、径方向の寸法が大きい大径部分60と、大径部分60よりも径方向の寸法が小さい小径部分61とを有する。
振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の非作動時では、第2スプールバルブ54bの大径部分60が第7オイル流路64に対向(位置)し、大径部分60によって第7オイル流路64が閉鎖されている。振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の作動時において、第2トリガー軸53bとともに第2スプールバルブ54bが軸方向前方へ前進(移動)すると、スプールバルブ54bの小径部分61が第7オイル流路64に対向(位置)して第2リリース弁51bが開放され、第7オイル流路64を介して第1および第2オイルチャンバー24a,24bがつながり、オイルが第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入する。
延出部58の露出部分59の第2オイルチャンバー24bに露出する露出長さを変えることによって第2リリース弁51bの開閉のタイミングを変えることができる。さらに、露出部分59の露出長さと第2スプールバルブ54bにおける小径部分61の形成位置を変えおよび/または小径部分61の径を大きくしおよび/または第7オイル流路64の径を小さくすることによって第2減衰力低減機構39bによって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Aの減衰力を0または0を超過する減衰力に調節することができる。
露出部分59の露出長さを長くすることで、第2リリース弁51aの開放を早くすることができ、露出部分59の露出長さを短くすることで、第2リリース弁51bの開放を遅くすることができる。小径部分61を第2スプールバルブ54bの軸方向前方に形成し、第2スプールバルブ54bが軸方向前方へ前進(移動)したときに小径部分61が第7オイル流路64の軸方向前方に通り過ぎるようにしおよび/または小径部分61の径を大きくして第7オイル流路64と小径部分61との間に形成される間隙を小さくしおよび/または第7オイル流路64の径を小さくすることで、低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Aの減衰力を0を超過する減衰力にすることができる。
第2減衰力低減機構39bでは、振動減衰油圧ダンパー12A(制震補強ブレースB)の減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減するように露出部分59の露出長さや小径部分61の形成位置、小径部分61の径、第7オイル流路64の径が調節されている。なお、油圧ダンパー12Aの減衰力を0に低減するように露出長さや形成位置、径が調節されていてもよい。
第2トリガー軸53bには、軸方向へ貫通する小径な貫通路62が形成され、第2スプールバルブ54bには、軸方向へ貫通して第2トリガー軸53bの貫通路62につながる小径な貫通路63が形成されている。第2リリース弁51bが閉鎖されている場合において、ピストン21が軸方向後方へ移動(後退)し、第2オイルチャンバー24b内のオイルの油圧が増加したときに、オイルがそれら貫通路62,63に流入するとともにガイド孔に流入し、ガイド孔の圧力を第2オイルチャンバー24bのそれと同一にする。したがって、第2オイルチャンバー24b内の油圧の増加にともなう第2スプールバルブ54bの軸方向前方への移動が防止される。
図7は、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)による振動減衰機能の説明図であり、図8は、第1減衰力低減機構39aの作動を説明する拡大断面図である。図9は、図8から続く第1減衰力低減機構39aの作動を説明する拡大断面図であり、図10は、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の変位と減衰力との関係の一例を示す図である。図10では、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の変位と減衰力との関係を実線で示し、従来から存在する制震補強サブブレース(振動減衰サブ油圧ダンパー)の変位と減衰力との関係を点線で示す。図7では、右方向(水平方向一方)を矢印X3で示し、左方向(水平方向他方)を矢印X4で示す。図8,9では、軸方向前方を矢印X1で示し、軸方向後方を矢印X2で示す。
なお、後記する減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施しない減衰力の強い制震補強サブブレース(振動減衰サブ油圧ダンパー)がオフィスビル10A,10Bの下層と上層とのうちのいずれか一方に設置されて上下方向へ並び、減衰力第1低減手段と減衰力第2低減手段とを実施する制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)がオフィスビル10A,10Bの下層と上層とのうちのいずれか他方に設置されて上下方向へ並んでいてもよい。
地震等によってオフィスビル10A,10Bに振動が生じ、その振動がオフィスビル10A,10Bから既設架構11に伝わる。図7に示すように、オフィスビル10A,10Bが右方向(横方向右方)(水平方向一方)へ水平変形すると、既設架構11も右方向(水平方向一方)へ水平変形する。ただし、第1および第2鉄骨柱13a,13bの伸縮を無視して第1および第2鉄骨梁14a,14bが水平変形したものとする。
既設架構11が右方向へ水平変形すると、図8,9に矢印X1で示すように、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向前方へ移動(前進)し、ロッド20bがシリンダ19の内部を軸方向前方に移動してロッド20bが伸長する(振動減衰油圧ダンパー12Aが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向前方に移動し、第1オイルチャンバー24aの容積が次第に小さくなり、第1オイルチャンバー24a内の油圧が増大し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの油圧に圧力差が生じる。
ピストン21が軸方向前方への移動を開始し、第1および第2オイルチャンバー24a,24b内に圧力差が生じると、第1調圧弁41aの弁機構が開放され、調圧弁41aをオイルが通過するときの粘性抵抗によって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、ロッド20bが既設架構11の右方向(水平方向一方)への変形に抵抗する。なお、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)では、既設架構11が右方向(水平方向一方)へ水平変形した直後に最大減衰力に瞬時に到達するように第1調圧弁41aが調節されている。制震補強ブレースBが最大減衰力に到達した後、第1リリーフ弁40aの弁機構が開放され、リリーフ弁40aをオイルが通過するときの粘性抵抗によって摺動ロッド20bの最大減衰力が略一定に維持される。制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向一方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向前方へ移動すると、第1リリース弁40aの第1トリガー軸53aの露出部分59の先端が第1軸受けガイド26aの第1ストッパー28aに当接し、トリガー軸53aがバネ56の付勢力に抗して軸方向後方へ移動(後退)する。第1トリガー軸53aの軸方向後方への移動にともなって第1スプールバルブ54aが軸方向後方へ移動(後退)し、スプールバルブ54aの小径部分61が第6オイル流路50に対向(位置)して第1リリース弁40aが開放され、第1オイルチャンバー24a内の高い油圧のオイルがオイルチャンバー24aから第6オイル流路50(逆止弁52a)を通って第2オイルチャンバー24bに流入する。オイルが第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入すると、オイルチャンバー24aのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が右方向(水平方向一方)へ水平変形し、右方向への振動に対する制震補強ブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって右方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力≦最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第1低減手段を実施する。なお、減衰力第1低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。
第1減衰力低減機構39aによって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Aの減衰力を0を超過する減衰力に調節するには、ピストン21がさらに軸方向前方へ移動して第1ブロック26aの第1ストッパー28a(ストロークエンド)に近づいた場合、小径部分61が第6オイル流路50の軸方向後方に通り過ぎるようにし、第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bへのオイルの流入を停止させる。または、第6オイル流路50の径を小さくする。
右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じて既設架構11が左方向へ水平変形すると、図8,9に矢印X2で示すように、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向後方へ移動(後退)し、ロッド20bがシリンダ19の内部を軸方向後方に移動してロッド20bが中空の固定ロッド20aの内部に進入する(振動減衰油圧ダンパー12Aが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向後方に移動し、第2オイルチャンバー24bの容積が次第に小さくなり、第2オイルチャンバー24b内の油圧が増大し、第2オイルチャンバー24bと第1オイルチャンバー24aとの油圧に圧力差が生じる。
ピストン21が軸方向後方への移動を開始し、第1および第2オイルチャンバー24a,24b内に圧力差が生じると、第2調圧弁41bの弁機構が開放され、調圧弁41bをオイルが通過するときの粘性抵抗によって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、ロッド20bが既設架構11の左方向(水平方向他方)への変形に抵抗する。なお、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)では、既設架構11が左方向(水平方向他方)へ水平変形した直後に最大減衰力に瞬時に到達するように第2調圧弁41bが調節されている。制震補強ブレースBが最大減衰力に到達した後、第2リリーフ弁40bの弁機構が開放され、リリーフ弁40bをオイルが通過するときの粘性抵抗によって摺動ロッド20bの最大減衰力が略一定に維持される。制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向他方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向後方へ移動すると、第2リリース弁40bの第2トリガー軸53bの露出部分59の先端が第2軸受けガイド26bの第2ストッパー28bに当接し、トリガー軸53bがバネ56の付勢力に抗して軸方向前方へ移動(前進)する。第2トリガー軸53bの軸方向前方への移動にともなって第2スプールバルブ54bが軸方向前方へ移動(前進)し、スプールバルブ54bの小径部分61が第7オイル流路64に対向(位置)して第2リリース弁40bが開放され、第2オイルチャンバー24b内の高い油圧のオイルがオイルチャンバー24bから第7オイル流路64(逆止弁52b)を通って第1オイルチャンバー24aに流入する。オイルが第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入すると、オイルチャンバー24bのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が左方向(水平方向他方)へ水平変形し、左方向への振動に対する制震補強ブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって左方向への変形に対する制震補強ブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力≦最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第2低減手段を実施する。なお、減衰力第2低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。
第2減衰力低減機構39bによって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Aの減衰力を0を超過する減衰力に調節するには、ピストン21がさらに軸方向後方へ移動して第2ブロック26bの第2ストッパー28b(ストロークエンド)に近づいた場合、小径部分61が第7オイル流路64の軸方向後方に通り過ぎるようにし、第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aへのオイルの流入を停止させる。または、第7オイル流路64の径を小さくする。
減衰力第1低減手段が実施される前、図10の関係の第2象限に表れるように、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して右方向の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、制震補強ブレースBの変位が最大になる直前まで最大減衰力が維持される。制震補強ブレースBの変位が最大になる直前では、減衰力第1低減手段が実施されることで、図10の関係の第1象限に表れるように、制震補強ブレースBの減衰力が図10に符号L1で示す最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減される。
建造物制震構造では、左方向(水平方向他方)の振動が右方向(水平方向一方)へ転じてオフィスビル10A,10Bが右方向へ変形を開始した直後に、減衰力第2低減手段によって低減された制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して右方向の振動に対する最大減衰力に瞬時(0.01〜3.0秒の間)に到達し、最大減衰力を維持しつつ右方向の変形に対する制震補強ブレースBの変位が最大になる直前に減衰力第1低減手段が実施される。
減衰力第2低減手段が実施される前、図10の関係の第4象限に表れるように、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して左方向の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、制震補強ブレースBの変位が最大になる直前まで最大減衰力が維持される。制震補強ブレースBの変位が最大になる直前では、減衰力第2低減手段が実施されることで、図10の関係の第3象限に表れるように、制震補強ブレースBの減衰力が図10に符号L2で示す最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減される。
建造物制震構造では、右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じてオフィスビル10A,10Bが左方向へ変形を開始した直後に、減衰力第1低減手段によって低減された制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して左方向の振動に対する最大減衰力に瞬時(0.01〜3.0秒の間)に到達し、最大減衰力を維持しつつ左方向の変形に対する制震補強ブレースBの変位が最大になる直前に減衰力第2低減手段が実施される。
建造物制震構造は、オフィスビル10A,10B(建造物)に右方向(水平方向一方)への振動が生じてビル10A,10Bが右方向へ変形し、右方向の振動に対する制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって右方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下であって0を超過する減衰力に低減する減衰力第1低減手段を実施し、右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じてビル10A,10Bが左方向へ変形し、左方向の振動に対する制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって左方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下であって0を超過する減衰力に低減する減衰力第2低減手段を実施することで、ビル10A,10Bの右方向または左方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前にブレースBの減衰力が低下するから、ブレースBの最大変位近傍における大きな層間剪断力がビル10A,10Bに作用することはなく、振動減衰時における第1および第2鉄骨柱13a,13b(既設柱)と第1および第2鉄骨梁14a,14b(既設梁)との変形や損壊(ビル10A,10Bの損壊)を防ぎつつ(図2のオフィスビル10Bでは、ビル10Bの両側の基礎杭の地盤からの抜け防止を含む)、ブレースBによってビル10A,10Bに生じた振動を低減させることができ、地震等によるビル10A,10Bの崩壊や倒壊を防ぐことができる。
建造物制震構造は、各低減手段を実施した後において、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力を最大減衰力の1/4以下であって0を超過する減衰力にするから、ブレースBの最大変位時にその減衰力が失われることはなく、振動に対するブレースBの減衰力を十分に利用することができ、ブレースBの減衰力を利用してオフィスビル10A,10B(建造物)に生じた振動を確実に低減させることができる。
建造物制震構造は、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が瞬時に最大減衰力に到達するとともに、ブレースBの変位が最大になる直前に各低減手段が実施されるから、ブレースBの変位中(ロッド20bの伸縮中)にブレースBの減衰力が維持され、ブレースBの減衰力を最大かつ十分に利用することができ、オフィスビル10A,10Bに大きな振動が生じたとしても、ブレースBを利用してその振動を確実に抑制することができる。建造物制震構造は、オフィスビル10A,10Bが強固に作られている場合であってそのビル10A,10Bに制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の最大減衰力を瞬時に作用させ、そのビル10A,10Bに生じた振動を確実に抑制する場合に好適に使用することができる。
図11は、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の変位と減衰力との関係の他の一例を示す図である。図11では、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の変位と減衰力との関係を実線で示し、制震補強サブブレース(振動減衰サブ油圧ダンパー)の変位と減衰力との関係を点線で示す。図11に示す関係を有する制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)は、ピストン21に第1および第2リリーフ弁40a,40bが設置されておらず、第1および第2調圧弁41a,41bのみが設置されている。
図11の関係を有する制震補強ブレースBは、ピストン21が軸方向への移動を開始し、第1および第2オイルチャンバー24a,24b内に圧力差が生じると、第1調圧弁41aまたは第2調圧弁41bの弁機構が開放され、第1調圧弁41aまたは第2調圧弁41bをオイルが通過するときの粘性抵抗によって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、ロッド20bが既設架構11の変形に抵抗する。制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)では、既設架構11が水平変形した後に最大減衰力に次第(除々)に到達するように第1調圧弁41aまたは第2調圧弁41bが調節されている。
減衰力第1低減手段が実施される前、図11の関係の第2象限に表れるように、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して右方向(水平方向一方)の振動に対する最大減衰力に次第(除々)に到達し、第1象限に表れるように、減衰力が最大から次第に減少しつつ右方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前に減衰力第1低減手段が実施され、ブレースBの減衰力が図11に符号L1で示す最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減される。
建造物制震構造では、左方向(水平方向他方)の振動が右方向(水平方向一方)へ転じてオフィスビル10A,10Bが右方向へ変形を開始する。振動が右方向へ転じた場合、減衰力第2低減手段によって低減された制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して右方向の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、減衰力が最大から次第に減少しつつ右方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前に減衰力第1低減手段が実施される。
減衰力第2低減手段が実施される前、図11の関係の第4象限に表れるように、制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して左方向の振動に対する最大減衰力に次第(除々)に到達し、第3象限に表れるように、減衰力が最大から次第に減少しつつ左方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前に減衰力第1低減手段が実施され、ブレースBの減衰力が図11に符号L2で示す最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減される。
建造物制震構造では、右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じてオフィスビル10A,10Bが左方向へ変形を開始する。振動が左方向へ転じた場合、減衰力第1低減手段によって低減された制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力が0を通過して左方向の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、減衰力が最大から次第に減少しつつ左方向の変形に対するブレースBの変位が最大になる前に減衰力第2低減手段が実施される。
図11の関係を有する制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)を使用した建造物制震構造は、ブレースBの減衰力が次第に最大減衰力に到達しつつ最大から次第に減少し、ブレースBの変位が最大になる前に各低減手段が実施され、ブレースBの変位中にブレースBの減衰力が徐々に増加しつつ徐々に低下するから、ブレースBの減衰力を緩やかに利用することができ、ブレースBを利用してオフィスビル10A,10Bに生じた小さくかつ長期的な振動を確実に抑制することができる。建造物制震構造は、オフィスビル10A,10Bに制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12A)の減衰力を徐々に作用させてそのビル10A,10Bの損壊を確実に防ぎつつ、そのビル10A,10Bに生じた振動を抑制する場合に好適に使用することができる。
図12は、他の一例として示す振動減衰油圧ダンパー12Bの内部構造の断面図である。図12では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、軸方向前方を矢印X1で示し、軸方向後方を矢印X2で示す。振動減衰油圧ダンパー12B(制震補強ブレースB)は、軸方向前方に位置する前端部22と軸方向後方に位置する後端部23とを有して軸方向へ延びるシリンダ19と、軸方向へ延びるロッド20と、ロッド20に連接されたピストン21とから形成されている。シリンダ19には、オイルが注入(封入)されたオイルチャンバー24が作られている。オイルチャンバー24は、ピストン21を隔ててシリンダ19の軸方向前方(軸方向一方)に位置する第1オイルチャンバー24aと、ピストン21を隔ててシリンダ19の軸方向後方(軸方向他方)に位置する第2オイルチャンバー24bとに区画されている。
シリンダ19の前端部22には、シリンダ19の前端開口を閉塞する金属製の第1ブロック25aが設置固定されている。第1ブロック25aは、シリンダ19の前端部22に固定ボルト65によって固定されている。第1ブロック25aのケーシング37に対向する内周面の側には、シール27(パッキン)が設置されている。第1ブロック25aには、ピストン21の軸方向前方への移動距離を規定する第1ストッパー28aが形成されている。シリンダ19の後端部23には、シリンダ19の後端開口を閉塞する金属製の第2ブロック25bが設置固定されている。第2ブロック25bのロッド20に対向する内周面の側には、シール27が設置されている。第2ブロック25bには、ピストン21の軸方向後方への移動距離を規定する第2ストッパー28bが形成されている。
ロッド20は、シリンダ19の後端部23から軸方向後方へ露出する中空の固定ロッド20aと、シリンダ19の内部に摺動可能に設置され、シリンダ19の前端部22から軸方向前方へ露出する摺動ロッド20bとから形成されている。固定ロッド20aは、金属から作られて円筒状に成形され、第2ブロック25bの後端面に連結固定された固定端部29と、第2ガセットプレート18に接続された接続端部31と、それら端部29,31の間に位置する中間部30とを有する(図3参照)。第2ブロック25bと固定ロッド20aの固定端部29とは、シリンダ19の後端部23に固定ボルト65によって固定されている。固定ロッド20aの接続端部31に穿孔された軸孔と第2ガセットプレート18に穿孔された軸孔とに軸32(ピン)が挿入されることで、接続端部31が第2ガセットプレート18に回転可能に取り付けられている。
摺動ロッド20bは、シリンダ19に対して軸方向前方と軸方向後方とへ摺動可能に進退(移動)する。摺動ロッド20bは、金属から作られて円柱状に成形され、シリンダ19の内部に位置する自由端部33と、第1ガセットプレート17に接続された接続端部35とそれら端部33,35の間に位置する中間部34とを有する(図3参照)。摺動ロッド20bの接続端部35に穿孔された軸孔と第1ガセットプレート17に穿孔された軸孔とに軸32(ピン)が挿入されることで、接続端部35が第1ガセットプレート17に回転可能に取り付けられている。摺動ロッド20bの自由端部33には、アキュームレータ36を内蔵した円筒状のケーシング37が連結固定されている。ケーシング37は、摺動ロッド20bの自由端部33から軸方向後方に延出し、中空の固定ロッド20aの内部に位置している。
ピストン21は、摺動ロッド20bの周面から径方向外方へ延出し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの間に位置している。ピストン21は、金属から作られて円環状に成形され、シリンダ19の内部において摺動可能であり、摺動ロッド20b(ロッド20)の軸方向への進退にともなって第1および第2オイルチャンバー24a,24b内を軸方向へ進退(移動)する。ピストン21は、油圧ダンパー12Bの減衰力発生機構および温度補償機構38と、油圧ダンパー12Bの減衰力低減機構39とを備えている。
減衰力発生機構は、第1リリーフ弁40a(減衰力発生弁)および第2リリーフ弁40b(減衰力発生弁)と第1調圧弁41a(減衰力発生弁)および第2調圧弁41b(減衰力発生弁)とから形成されている。第1および第2リリーフ弁40a,40bや第1および第2調圧弁41a,41bは、図4の振動減衰油圧ダンパー12Aのそれらと同一であるから、図4と同一の符号を付すとともに、図4の油圧ダンパー12Aの説明を援用することで、第1および第2リリーフ弁40a,40bや第1および第2調圧弁41a,41bの説明は省略する。
温度補償機構38は、図4の振動減衰油圧ダンパー12Aのそれと同様に、ピストン21に形成されて第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第5オイル流路43と、常時開放の第1オリフィスを備えた第1温度補償弁44と、常時開放の第2オリフィスを備えた第2温度補償弁45とから形成されている。温度補償機構38では、オイルチャンバー24a,24b内のオイルが熱膨張した場合、オイルがオリフィスを通過して第5オイル流路43から連絡流路46に流入するとともに、連絡流路46からアキュームレータ36の貯留チャンバー47に流入し、オイルチャンバー24a,24b内におけるオイルの熱膨張分が貯留チャンバー47に回収される。
温度補償機構38では、オイルの温度が低下してオイルチャンバー24a,24b内のオイルの体積が減少した場合、または、何らかの原因によってオイルチャンバー24a,24b内が負圧になった場合、アキュームレータ36の貯留チャンバー47内のオイルが貯留チャンバー47から連絡流路46に流入するとともに、連絡流路46から第5オイル流路43に流入し、オイルが温度補償弁44,45を通過してオイルチャンバー24a,24bに供給される。
減衰力低減機構39は、ピストン21に形成された第6オイル流路50(オイル流路)と、第6オイル流路50を開閉するリリース弁51とから形成されている。第6オイル流路50は、第1および第2オイルチャンバー24a,24bの側に位置してピストンの径方向へ延びる径方向流路と、それら径方向流路につながって軸方向へ延びる軸方向流路とから形成されている。軸方向流路は、アキュームレータ36の連絡流路46につながるとともに、温度補償機構38の第5オイル流路43につながっている。
リリース弁51は、ピストン21を軸方向へ貫通して第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる貫通孔69と、貫通孔69に挿通された軸方向へ延びる金属製のトリガー軸53とから形成されている。貫通孔69は、第6オイル流路50の径方向流路につながるとともに、第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながっている。トリガー軸53は、第1ブロック25aの側に位置して第1オイルチャンバー24aに露出する一端部66と、第2ブロック25bの側に位置して第2オイルチャンバー24bに露出する他端部68と、それら端部66,68の間に延びる中間部67とを有する。
トリガー軸53では、一端部66および他端部68の端縁が第1および第2ブロック25a,25bの第1および第2ストッパー28a,28bに当接している。トリガー軸53では、一端部66および他端部68の径が中間部67のそれよりも小さい。一端部66および他端部68の径よりも大きい中間部67の径は、貫通孔69の径と略同一または貫通孔69の径よりもわずかに小さい。したがって、トリガー軸53が貫通孔69に摺動可能に挿入され、ピストン21がトリガー軸53に対して摺動可能である。
第1オイルチャンバー24aの側に延びる径方向流路とオイルチャンバー24aとの間のピストン21には、貫通孔69に対向(位置)する第1シール70aが取り付けられ、第2オイルチャンバー24bの側に延びる径方向流路とオイルチャンバー24bとの間のピストン21には、貫通孔69に対向(位置)する第2シール70bが取り付けられている。第1および第2シール70a,70bにトリガー軸53の中間部67が位置している場合、リリース弁51が閉鎖され、オイルの流動が遮断される。第1シール70aにトリガー軸53の一端部66が位置している場合、リリース弁51が開放され、オイルが貫通孔69と一端部66との間隙を通って第6オイル流路50に流入する。第2シール70bにトリガー軸53の他端部68が位置している場合、リリース弁51が開放され、オイルが貫通孔69と他端部68との間隙を通って第6オイル流路50に流入する。
トリガー軸53の一端部66および他端部68の長さや径を変えることによってリリース弁51の開閉のタイミングを変えることができるとともに、減衰力低減機構39によって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Bの減衰力を0または0を超過する減衰力に調節することができる。トリガー軸53の一端部66および他端部68の長さを長くすることで、リリース弁の開放を早くすることができる。一端部66および他端部68の長さを短くしおよび/または一端部66および他端部68の径を大きくして一端部66や他端部68と貫通孔69との間に形成される間隙を小さくすることで、リリース弁51の開放を遅くすることができるとともに、減衰力低減機構39によって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Bの減衰力を0を超過する減衰力にすることができる。
減衰力低減機構39では、振動減衰油圧ダンパー12B(制震補強ブレースB)の減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減するように一端部66および他端部68の長さや径が調節されている。なお、油圧ダンパー12Bの減衰力を0に低減するように長さや径が調節されていてもよい。
地震等によってオフィスビル10A,10Bの既設架構11が右方向(水平方向一方)へ水平変形すると、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向前方へ移動(前進)し、ロッド20bがシリンダ19の内部を軸方向前方に移動してロッド20bが伸長する(振動減衰油圧ダンパー12Bが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向前方(矢印X1方向)に移動し、トリガー軸53の中間部67が第1および第2シール70a,70bに位置しつつ、第1オイルチャンバー24aの容積が次第に小さくなり、オイルチャンバー24a内の油圧が増大し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの油圧に圧力差が生じる。図4の振動減衰油圧ダンパー12Aと同様に、第1調圧弁41aと第1リリーフ弁40aとによって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向一方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向前方へ移動し、第1シール70aにトリガー軸53の一端部66が位置すると、オイルが貫通孔69と一端部66との間隙を通って第6オイル流路50に流入する。オイルは、第6オイル流路50から連絡流路46を通って温度補償機構38の第5オイル流路43に流入し、第2温度補償弁45を通って第2オイルチャンバー24bに流入する。オイルが第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入すると、オイルチャンバー24aのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12B)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が右方向(水平方向一方)へ水平変形し、右方向への振動に対するブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって右方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力≦最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第1低減手段を実施する。なお、減衰力第1低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。
右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じて既設架構11が左方向へ水平変形すると、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向後方へ移動(後退)し、ロッド20bが中空の固定ロッド20aの内部に進入する(振動減衰油圧ダンパー12Bが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向後方(矢印X2方向)に移動し、トリガー軸53の中間部67が第1および第2シール70a,70bに位置しつつ、第2オイルチャンバー24bの容積が次第に小さくなり、オイルチャンバー24b内の油圧が増大し、第2オイルチャンバー24bと第1オイルチャンバー24aとの油圧に圧力差が生じる。図4の振動減衰油圧ダンパー12Aと同様に、第2調圧弁41bと第2リリーフ弁40bとによって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向他方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向後方へ移動し、第2シール70bにトリガー軸53の他端部68が位置すると、オイルが貫通孔69と他端部68との間隙を通って第6オイル流路50に流入する。オイルは、第6オイル流路50から連絡流路46を通って温度補償機構38の第5オイル流路43に流入し、第1温度補償弁44を通って第1オイルチャンバー24aに流入する。オイルが第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入すると、オイルチャンバー24bのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12B)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が左方向(水平方向他方)へ水平変形し、左方向への振動に対するブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって左方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力≦最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第2低減手段を実施する。減衰力第2低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。なお、図12の制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12B)の変位と減衰力との関係は、図10,11に示すそれと同一である。また、図12の制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12B)は、図3のそれと同一の効果を有する。
図13は、他の一例として示す振動減衰油圧ダンパー12Cの内部構造の断面図である。図13では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、軸方向前方を矢印X1で示し、軸方向後方を矢印X2で示す。振動減衰油圧ダンパー12C(制震補強ブレースB)は、軸方向前方に位置する前端部22と軸方向後方に位置する後端部23とを有して軸方向へ延びるシリンダ19と、軸方向へ延びるロッド20(固定ロッド20aおよび摺動ロッド20b)と、ロッド20に連接されたピストン21とから形成されている。シリンダ19には、オイルが注入(封入)された第1および第2オイルチャンバー24a,24bが作られている。シリンダ19やロッド20は図12のそれらと同一であるから、図12と同一の符号を付すとともに、図12の説明を援用することで、シリンダ19およびロッド20の説明は省略する。
ピストン21は、摺動ロッド20bの周面から径方向外方へ延出し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの間に位置している。ピストン21は、シリンダ19の内部において摺動可能であり、摺動ロッド20b(ロッド20)の軸方向への進退にともなって第1および第2オイルチャンバー24a,24b内を軸方向へ進退(移動)する。ピストン21は、油圧ダンパー12Cの減衰力発生機構および温度補償機構38(図示せず)と、油圧ダンパー12Cの第1および第2減衰力低減機構39a,39bとを備えている。減衰力発生機構や温度補償機構38は、図12の振動減衰油圧ダンパー12Bのそれらと同一であるから、それらの説明は省略する。
第1減衰力低減機構39aは、ピストン21に形成された第6オイル流路50(オイル流路)と、第6オイル流路50を開閉する第1リリース弁51aとから形成されている。第6オイル流路50は、第1オイルチャンバー24aの側に位置してピストン21の径方向へ延びる径方向流路と、径方向流路につながって軸方向へ延びる軸方向流路とから形成されている。軸方向流路は、アキュームレータ36の連絡流路46につながるとともに、温度補償機構38の第5オイル流路43につながっている。
第1リリース弁51aは、ピストン21を軸方向へ貫通して第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第1貫通孔69aと、貫通孔69aに挿通された軸方向へ延びる金属製の第1トリガー軸53aとから形成されている。第1貫通孔69aは、第6オイル流路50の径方向流路につながるとともに、第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながっている。第1トリガー軸53aは、第1ブロック25aの側に位置して第1オイルチャンバー24aに露出する一端部66と、第2ブロック25bの側に位置して第2オイルチャンバー24bに露出する他端部68と、それら端部66,68の間に延びる中間部67とを有する。
第1トリガー軸53aでは、一端部66および他端部68の端縁が第1および第2ブロック25a,25bの第1および第2ストッパー28a,28bに当接している。第1トリガー軸53aでは、一端部66の径が他端部68および中間部67のそれよりも小さい。一端部66の径よりも大きい他端部68および中間部67の径は、第1貫通孔69aの径と略同一または貫通孔69aの径よりもわずかに小さい。したがって、第1トリガー軸53aが第1貫通孔69aに摺動可能に挿入され、ピストン21が第1トリガー軸53aに対して摺動可能である。
第6オイル流路50の径方向流路と第1オイルチャンバー24aとの間のピストン21には、第1貫通孔69aに対向(位置)する第1シール70aが取り付けられ、第2オイルチャンバー24bの側のピストン21には、第1貫通孔69aに対向(位置)する第2シール70bが取り付けられている。第1および第2シール70a,70bに第1トリガー軸53aの中間部67および他端部68が位置している場合、第1リリース弁51aが閉鎖され、オイルの流動が遮断される。第1シール70aに第1トリガー軸53aの一端部66が位置している場合、第1リリース弁51aが開放され、オイルが第1貫通孔69aと一端部66との間隙を通って第6オイル流路50に流入する。
第2減衰力低減機構39bは、ピストン21に形成された第7オイル流路64(オイル流路)と、第7オイル流路64を開閉する第2リリース弁51bとから形成されている。第7オイル流路64は、第2オイルチャンバー24bの側に位置してピストン21の径方向へ延びる径方向流路と、径方向流路につながって軸方向へ延びる軸方向流路とから形成されている。軸方向流路は、アキュームレータ36の連絡流路46につながるとともに、温度補償機構38の第5オイル流路43につながっている。
第2リリース弁51bは、ピストン21を軸方向へ貫通して第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながる第2貫通孔69bと、貫通孔69bに挿通された軸方向へ延びる金属製の第2トリガー軸53bとから形成されている。第2貫通孔69bは、第7オイル流路64の径方向流路につながるとともに、第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながっている。第2トリガー軸53bは、第2ブロック25bの側に位置して第2オイルチャンバー24bに露出する一端部66と、第1ブロック25aの側に位置して第1オイルチャンバー24aに露出する他端部68と、それら端部66,68の間に延びる中間部67とを有する。
第2トリガー軸53bでは、一端部66および他端部68の端縁が第1および第2ブロック25a,25bの第1および第2ストッパー28a,28bに当接している。第2トリガー軸53bでは、一端部66の径が他端部68および中間部67のそれよりも小さい。一端部66の径よりも大きい他端部68および中間部67の径は、第2貫通孔69bの径と略同一または貫通孔69bの径よりもわずかに小さい。したがって、第2トリガー軸53bが第2貫通孔69bに摺動可能に挿入され、ピストン21が第2トリガー軸53bに対して摺動可能である。
第7オイル流路64の径方向流路と第2オイルチャンバー24bとの間のピストン21には、第2貫通孔69bに対向(位置)する第1シール70aが取り付けられ、第1オイルチャンバー24aの側のピストン21には、第2貫通孔69bに対向(位置)する第2シール70bが取り付けられている。第1および第2シール70a,70bに第2トリガー軸53bの中間部67および他端部68が位置している場合、第2リリース弁51bが閉鎖され、オイルの流動が遮断される。第1シール70aに第2トリガー軸53bの一端部66が位置している場合、第2リリース弁51bが開放され、オイルが第2貫通孔69bと一端部66との間隙を通って第7オイル流路64に流入する。
第1および第2トリガー軸53a,53bの一端部66の長さや径を変えることによって第1および第2リリース弁51a,51bの開閉のタイミングを変えることができるとともに、第1および第2減衰力低減機構39a,39bによって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Cの減衰力を0または0を超過する減衰力に調節することができる。第1および第2トリガー軸53a,53bの一端部66の長さを長くすることで、第1および第2リリース弁51a,51bの開放を早くすることができる。一端部66の長さを短くしおよび/または一端部66の径を大きくして一端部66と貫通孔69a,69bとの間に形成される間隙を小さくすることで、第1および第2リリース弁51a,51bの開放を遅くすることができるとともに、第1および第2減衰力低減機構39a,39bによって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Cの減衰力を0を超過する減衰力にすることができる。
第1および第2減衰力低減機構39a,39bでは、振動減衰油圧ダンパー12C(制震補強ブレースB)の減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減するように一端部66の長さや径が調節されている。なお、油圧ダンパー12Cの減衰力を0に低減するように長さや径が調節されていてもよい。
地震等によってオフィスビル10A,10Bの既設架構11が右方向(水平方向一方)へ水平変形すると、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向前方へ移動(前進)し、ロッド20bがシリンダ19の内部を軸方向前方に移動してロッド20bが伸長する(振動減衰油圧ダンパー12Cが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向前方(矢印X1方向)に移動し、第1および第2トリガー軸53a,53bの中間部67および他端部68が第1および第2シール70a,70bに位置しつつ、第1オイルチャンバー24aの容積が次第に小さくなり、オイルチャンバー24a内の油圧が増大し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの油圧に圧力差が生じる。図4の振動減衰油圧ダンパー12Aと同様に、第1調圧弁41aと第1リリーフ弁40aとによって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向一方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向前方へ移動し、第1シール70aに第1トリガー軸53aの一端部66が位置すると、オイルが第1貫通孔69aと一端部66との間隙を通って第6オイル流路50に流入する。オイルは、第6オイル流路50から連絡流路46を通って温度補償機構38の第5オイル流路43に流入し、第2温度補償弁45を通って第2オイルチャンバー24bに流入する。オイルが第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入すると、オイルチャンバー24aのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12C)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が右方向(水平方向一方)へ水平変形し、右方向への振動に対するブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって右方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第1低減手段を実施する。なお、減衰力第1低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。
右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じて既設架構11が左方向へ水平変形すると、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向後方へ移動(後退)し、ロッド20bが中空の固定ロッド20aの内部に進入する(振動減衰油圧ダンパー12Cが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向後方(矢印X2方向)に移動し、第1および第2トリガー軸53a,53bの中間部67および他端部68が第1および第2シール70a,70bに位置しつつ、第2オイルチャンバー24bの容積が次第に小さくなり、オイルチャンバー24b内の油圧が増大し、第2オイルチャンバー24bと第1オイルチャンバー24aとの油圧に圧力差が生じる。図4の振動減衰油圧ダンパー12Aと同様に、第2調圧弁41bと第2リリーフ弁40bとによって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向他方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向後方へ移動し、第2シール70bに第2トリガー軸53bの一端部66が位置すると、オイルが第2貫通孔69bと一端部66との間隙を通って第7オイル流路64に流入する。オイルは、第7オイル流路64から連絡流路46を通って温度補償機構38の第5オイル流路43に流入し、第1温度補償弁44を通って第1オイルチャンバー24aに流入する。オイルが第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入すると、オイルチャンバー24bのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12C)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が左方向(水平方向他方)へ水平変形し、左方向への振動に対するブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって左方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力≦最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第2低減手段を実施する。減衰力第2低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。なお、図13の制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12C)の変位と減衰力との関係は、図10,11に示すそれと同一である。また、図13の制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12C)は、図3のそれと同一の効果を有する。
図14は、他の一例として示す振動減衰油圧ダンパー12Dの内部構造の断面図であり、図15は、図14の振動減衰油圧ダンパー12Dの減衰力低減機構39の拡大断面図である。図14では、軸方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示すとともに、軸方向前方を矢印X1で示し、軸方向後方を矢印X2で示す。振動減衰油圧ダンパー12D(制震補強ブレースB)は、軸方向へ延びるシリンダ19と、軸方向へ延びるロッド20(固定ロッド20aおよび摺動ロッド20b)と、ロッド20に連接されたピストン21とから形成されている。シリンダ19には、オイルが注入(封入)された第1および第2オイルチャンバー24a,24bが作られている。
シリンダ19は、軸方向前方に位置する前端部22と、軸方向後方に位置する後端部23と、それら端部22,23の間に位置する中間部71とを有する。シリンダ19では、第1オイルチャンバー24aの側に位置する前端部22の径方向の厚み寸法と第2オイルチャンバー24bの側に位置する後端部23の径方向の厚み寸法とが中間部71の径方向の厚み寸法よりも小さい。シリンダ19の前端部22には、シリンダ19の前端開口を閉塞する金属製の第1ブロック25aが設置固定されている。第1ブロック25aは、シリンダ19の前端部22に固定ボルト65によって固定されている。第1ブロック25aの摺動ロッド20bに対向する内周面の側には、シール27(パッキン)が設置されている。第1ブロック25aには、ピストン21の軸方向前方への移動距離を規定する第1ストッパー28aが形成されている。
シリンダ19の後端部23には、シリンダ19の後端開口を閉塞する金属製の第2ブロック25bが設置固定されている。第2ブロック25bの摺動ロッド20bに対向する内周面の側には、シール27が設置されている。第2ブロック25bには、ピストン21の軸方向後方への移動距離を規定する第2ストッパー28bが形成されている。ロッド20は図12のそれと同一であるから、図12と同一の符号を付すとともに、図12の説明を援用することで、ロッド20の説明は省略する。第2ブロック25bと固定ロッド20aの固定端部29とは、シリンダ19の後端部23に固定ボルト65によって固定されている。
ピストン21は、摺動ロッド20bの周面から径方向外方へ延出し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの間に位置している。ピストン21は、シリンダ19の内部において摺動可能であり、摺動ロッド20b(ロッド20)の軸方向への進退にともなって第1および第2オイルチャンバー24a,24b内を軸方向へ進退(移動)する。ピストン21は、油圧ダンパー12Dの減衰力発生機構および温度補償機構38と、油圧ダンパー12Dの減衰力低減機構39とを備えている。減衰力発生機構や温度補償機構38は、図12の振動減衰油圧ダンパー12Bのそれらと同一であるから、それらの説明は省略する。
減衰力低減機構39は、ピストン21に形成された第6オイル流路50(オイル流路)と、第6オイル流路50を開閉する第1および第2リリース弁51a,51bとから形成されている。第6オイル流路50は、シリンダ19の側に位置してピストン21の軸方向へ延びる軸方向流路と、軸方向流路につながって径方向へ延びる径方向流路とから形成されている。軸方向流路は、第1および第2オイルチャンバー24a,24bにつながっている。径方向流路は、アキュームレータ36の連絡流路46につながるとともに、温度補償機構38の第5オイル流路43につながっている。
第1リリース弁51aは、ピストン21の径方向に穿孔されて第1オイルチャンバー24aの側に形成された第1挿通孔72aと、挿通孔72aに挿通された径方向へ延びる金属製の第1トリガー軸53a(弁棒)と、挿通孔72aに設置されてトリガー軸53aを径方向外方へ付勢するバネ73とから形成されている。第1挿通孔72aは、ピストン21の外周面に開口している。第1トリガー軸53aは、その径が第1挿通孔72aの径と略同一または挿通孔72aの径よりもわずかに小さい。したがって、第1トリガー軸53aは第1挿通孔72aにおいて径方向へ摺動可能である。
第1トリガー軸53aが第1挿通孔72aの内部に位置している状態では、トリガー軸53aが第6オイル流路50に位置し、トリガー軸53aによって第6オイル流路50が閉鎖され、オイルの流動が遮断される。第1トリガー軸53aがバネ73の付勢力によって径方向外方へ進出し、トリガー軸53aの上部が第1挿通孔72aから径方向へ露出した状態では、トリガー軸53aの下端が第6オイル流路50に位置し、トリガー軸53aの下端と第6オイル流路50との間に間隙が形成されてオイル流路50が開放され、オイルが第1オイルチャンバー24aから第6オイル流路50に流入する。
第2リリース弁51bは、ピストン21の径方向に穿孔されて第2オイルチャンバー24bの側に形成された第2挿通孔72bと、挿通孔72bに挿通された径方向へ延びる金属製の第2トリガー軸53b(弁棒)と、挿通孔72bに設置されてトリガー軸53bを径方向外方へ付勢するバネ73とから形成されている。第2挿通孔72bは、ピストン21の外周面に開口している。第2トリガー軸53bは、その径が第2挿通孔72bの径と略同一または挿通孔72bの径よりもわずかに小さい。したがって、第2トリガー軸53bは第2挿通孔72bにおいて径方向へ摺動可能である。
第2トリガー軸53bが第2挿通孔72bの内部に位置している状態では、トリガー軸53bが第6オイル流路50に位置し、トリガー軸53bによって第6オイル流路50が閉鎖され、オイルの流動が遮断される。第2トリガー軸53bがバネ73の付勢力によって径方向外方へ進出し、トリガー軸53bの上部が第2挿通孔72bから径方向へ露出した状態では、トリガー軸53bの下端が第6オイル流路50に位置し、トリガー軸53bの下端と第6オイル流路50との間に間隙が形成されてオイル流路50が開放され、オイルが第2オイルチャンバー24bから第6オイル流路50に流入する。
厚み寸法が中間部71よりも小さいシリンダ19の前端部22と後端部23との軸方向の長さや第6オイル流路50の径、トリガー軸53a,53bの長さを変えることによって、第1および第2リリース弁51a,51bの開閉のタイミングを変えることができるとともに、減衰力低減機構39によって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Dの減衰力を0または0を超過する減衰力に調節することができる。シリンダ19の前後端部22,23の長さを長くすることで、第1および第2リリース弁51a,51bの開放を早くすることができる。シリンダ19の前後端部22,23の長さを短くしおよび/または第6オイル流路50の径を小さくしおよび/またはトリガー軸53a,53bの長さを長くしてトリガー軸53a,53bの下端と第6オイル流路50との間に形成される間隙を小さくすることで、リリース弁51a,51bの開放を遅くすることができるとともに、減衰力低減機構39によって低減された後の振動減衰油圧ダンパー12Dの減衰力を0を超過する減衰力にすることができる。
減衰力低減機構39では、振動減衰油圧ダンパー12D(制震補強ブレースB)の減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力に低減するように前後端部22,23の長さや第6オイル流路50の径、トリガー軸53a,53bの長さが調節されている。なお、油圧ダンパー12Dの減衰力を0に低減するように長さや径が調節されていてもよい。
地震等によってオフィスビル10A,10Bの既設架構11が右方向(水平方向一方)へ水平変形すると、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向前方へ移動(前進)し、ロッド20bがシリンダ19の内部を軸方向前方に移動してロッド20bが伸長する(振動減衰油圧ダンパー12Dが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向前方(矢印X1方向)に移動し、ピストン21がシリンダ19の中間部71に位置しつつ、第1オイルチャンバー24aの容積が次第に小さくなり、オイルチャンバー24a内の油圧が増大し、第1オイルチャンバー24aと第2オイルチャンバー24bとの油圧に圧力差が生じる。図4の振動減衰油圧ダンパー12Aと同様に、第1調圧弁41aと第1リリーフ弁40aとによって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向一方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向前方へ移動し、ピストン21がシリンダ19の前端部22に位置すると、図15に示すように、ピストン21の外周面とシリンダ19の内周面との間にスペース74が形成される。第1トリガー軸53aがシリンダ19の前端部22に位置すると、トリガー軸53aがバネ73の付勢力によって径方向外方へ進出し、トリガー軸53aの上部がスペース74に位置するとともに、トリガー軸53aの下端が第6オイル流路50に位置する。第1トリガー軸53aの下端が第6オイル流路50に位置することにより、第6オイル流路50とトリガー軸53aの下端との間に間隙が形成されて第1リリース弁51aが開放され、オイルが第6オイル流路50とトリガー軸53aの下端との間の間隙を通って第1オイルチャンバー24aから第6オイル流路50に流入する。オイルは、第6オイル流路50から連絡流路46を通って温度補償機構38の第5オイル流路43に流入し、第2温度補償弁45を通って第2オイルチャンバー24bに流入する。オイルが第1オイルチャンバー24aから第2オイルチャンバー24bに流入すると、オイルチャンバー24aのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12D)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が右方向(水平方向一方)へ水平変形し、右方向への振動に対するブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって右方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第1低減手段を実施する。なお、減衰力第1低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。
右方向(水平方向一方)の振動が左方向(水平方向他方)へ転じて既設架構11が左方向へ水平変形すると、架構11の内側に設置された制震補強ブレースBの摺動ロッド20bが軸方向後方へ移動(後退)し、ロッド20bが中空の固定ロッド20aの内部に進入する(振動減衰油圧ダンパー12Dが変位する)。それにともなってピストン21が軸方向後方(矢印X2方向)に移動し、ピストン21がシリンダ19の中間部71に位置しつつ、第2オイルチャンバー24bの容積が次第に小さくなり、オイルチャンバー24b内の油圧が増大し、第2オイルチャンバー24bと第1オイルチャンバー24aとの油圧に圧力差が生じる。図4の振動減衰油圧ダンパー12Aと同様に、第2調圧弁41bと第2リリーフ弁40bとによって摺動ロッド20bに減衰力が発生し、制震補強ブレースBの減衰力によってオフィスビル10A,10B(既設架構11)に生じた水平方向他方の振動が低減される。
ピストン21が軸方向後方へ移動し、ピストン21がシリンダ19の後端部23に位置すると、ピストン21の外周面とシリンダ19の内周面との間にスペース74が形成される。第2トリガー軸53bがシリンダ19の後端部22に位置すると、トリガー軸53bがバネ73の付勢力によって径方向外方へ進出し、トリガー軸53bの上部がスペース74に位置するとともに、トリガー軸53bの下端が第6オイル流路50に位置する。第2トリガー軸53bの下端が第6オイル流路50に位置することにより、第6オイル流路50とトリガー軸53bの下端との間に間隙が形成されて第2リリース弁51bが開放され、オイルが第6オイル流路50とトリガー軸53bの下端との間の間隙を通って第2オイルチャンバー24bから第6オイル流路50に流入する。オイルは、第6オイル流路50から連絡流路46を通って温度補償機構38の第5オイル流路43に流入し、第1温度補償弁44を通って第1オイルチャンバー24aに流入する。オイルが第2オイルチャンバー24bから第1オイルチャンバー24aに流入すると、オイルチャンバー24bのオイルの油圧が低下する。
制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12D)では、オフィスビル10A,10B(既設架構11)が左方向(水平方向他方)へ水平変形し、左方向への振動に対するブレースBの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって左方向への変形に対するブレースBの変位が最大になる前に、ブレースBの減衰力を最大減衰力の1/4以下(好ましくは、最大減衰力の1/10以下)であって0を超過する減衰力(0<減衰力最大減衰力の1/4)に低減する減衰力第2低減手段を実施する。減衰力第2低減手段では、ブレースBの減衰力を0に低減する場合もある。なお、図14の制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12D)の変位と減衰力との関係は、図10,11に示すそれと同一である。また、図14の制震補強ブレースB(振動減衰油圧ダンパー12D)は、図4のそれと同一の効果を有する。
図16は、既設オフィスビル10A,10Bまたは新設オフィスビル10A,10Bの既設架構11に対する制震補強ブレースB1,B2の他の設置例を示す図である。既設オフィスビル10A,10Bや新設オフィスビル10A,10Bの既設架構11には、一対の制震補強ブレースB1,B2が対称形に設置されている。制震補強ブレースB1,B2は、振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dのいずれかから形成されている。振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dは、図4や図12、図13、図14に示すそれらと同一であり、減衰力発生機構や温度補償機構38、減衰力低減機構39を有し、図4のそれと同一の効果を有する。
オフィスビル10A,10Bの既設架構11に設置された一方の制震補強ブレースB1は、第1鉄骨梁14aの中央75eから第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとの第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)に向かって斜め上方へ延びている。オフィスビル10A,10Bの既設架構11に設置された他方の制震補強ブレースB2は、第1鉄骨梁14aの中央75eから第1鉄骨柱13aと第2鉄骨梁14bとの第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)に向かって斜め上方へ延びている。
既設オフィスビル10Aまたは新設オフィスビル10Aでは、制震補強ブレースB1,B2がオフィスビル10Aの中央における各階層の各事務室の既設架構11に設置され、ブレースB1,B2がオフィスビル10Aの中央の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び、建造物制震構造がオフィスビル10Aの中央における各階層の既設架構11に構築されている(図1援用)。既設オフィスビル10Bまたは新設オフィスビル10Bでは、制震補強ブレースB1,B2がオフィスビル10Bの両側における階層の各事務室の既設架構11に設置され、ブレースB1,B2がオフィスビル10Bの両側の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び、建造物制震構造がオフィスビル10Bの両側における階層の既設架構11に構築されている(図2援用)。
制震補強ブレースB1は、摺動ロッド20bの接続端部35が第1鉄骨梁14aの中央75eに取り付けられた中央ガセットプレート76eに回転可能に連結され、固定ロッド20aの接続端部31が第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)に取り付けられた第3ガセットプレート76cに回転可能に連結されている。制震補強ブレースB2は、摺動ロッド20bの接続端部35が第1鉄骨梁14aの中央75eに取り付けられた第1ガセットプレート76aに回転可能に接続され、固定ロッド20aの接続端部31が第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)に取り付けられた第4ガセットプレート76dに回転可能に接続されている。
図16に示す建造物制震構造は、一対の制震補強ブレースB1,B2をオフィスビル10A,10B(建造物)の架構11において対称形に設置することで、オフィスビル10A,10Bの架構11に設置された一方の制震補強ブレースB1を形成する振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dの減衰力を利用してオフィスビル10A,10Bに生じた一方への振動を減衰させることができ、オフィスビル10A,10Bの架構11に設置された他方の制震補強ブレースB2を形成する油圧ダンパー12A〜12Dの減衰力を利用してオフィスビル10A,10Bに生じた他方への振動を減衰させることができ、対称形に設置された一対の制震補強ブレースB1,B2によってオフィスビル10A,10Bに生じた一方と他方との振動を確実に低減させることができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、それら振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dによる振動減衰時におけるオフィスビル10A,10B(建造物)の損壊を防ぐことができる。
図17は、既設オフィスビル10A,10Bまたは新設オフィスビル10A,10Bの既設架構11に取り付けられたトグル機構Tの正面図である。既設オフィスビル10A,10Bや新設オフィスビル10A,10Bの既設架構11には、トグル機構Tが設置されている。トグル機構Tは、第2鉄骨柱13bと第1鉄骨梁14aとの第2交差部75b(または第2交差部75bの近傍)から斜め上方へ延びる第1アーム77aと、第1鉄骨柱13aと第2鉄骨梁14bとの第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)から斜め下方に延びる第2アーム77bと、第1および第2アーム77a,77bの間に位置して第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとの第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)から斜め下方へ延びる振動減衰油圧ダンパー12A〜12D(油圧ダンパー12A〜12Dのいずれか)とから形成されている。振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dは、図4や図12、図13、図14に示すそれらと同一であり、減衰力発生機構や温度補償機構38、減衰力低減機構39を有し、図4のそれと同一の効果を有する。
既設オフィスビル10Aまたは新設オフィスビル10Aでは、トグル機構Tがオフィスビル10Aの中央における各階層の各事務室の既設架構11に設置され、トグル機構Tがオフィスビル10Aの中央の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び、建造物制震構造がオフィスビル10Aの中央における各階層の既設架構11に構築されている(図1援用)。既設オフィスビル10Bまたは新設オフィスビル10Bでは、トグル機構Tがオフィスビル10Bの両側における階層の各事務室の既設架構11に設置され、トグル機構Tがオフィスビル10Bの両側の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び、建造物制震構造がオフィスビル10Bの両側における階層の既設架構11に構築されている(図2援用)。
第1アーム77aと第2アーム77bとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム77aは、回転支承78に固定された固定端部79と、回転ヒンジ80(連結部材)に回転可能に連結された接続端部81と、それら端部79,81の間に延びる円柱状の中間部82とを有する。回転支承78は、第2交差部75b(または第2交差部75bの近傍)に取り付けられた第2ガセットプレート76bに回転可能に設置されている。第2アーム77bは、回転支承78に固定された固定端部79と、回転ヒンジ80(連結部材)に回転可能に連結された接続端部81と、それら端部79,81の間に延びる円柱状の中間部82とを有する。回転支承78は、第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)に取り付けられた第4ガセットプレート76dに回転可能に設置されている。
振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dは、摺動ロッド20bの接続端部35が回転ヒンジ80(連結部材)に回転可能に連結され、固定ロッド20aの接続端部31が第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)に位置する回転支承78に固定されている。回転支承78は、第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)に取り付けられた第3ガセットプレート76cに回転可能に設置されている。油圧ダンパー12A〜12Dは、回転ヒンジ80の動作に追従しつつ、摺動ロッド20bの伸縮によって第1および第2アーム77a,77bの変形(回転ヒンジ80の回転変位量)を吸収しつつ既設架構11の振動を熱に変換し、それによって架構11の振動が減衰されるとともに、オフィスビル10A,10Bの振動が抑制される。
図17に示す建造物制震構造は、第1および第2アーム84,85と振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dとがトグル機構Tを形成し、トグル機構Tの制震機能とをトグル機構Tの形成する油圧ダンパー12A〜12Dの減衰力とを利用してオフィスビル10A,10B(建造物)に生じた振動を確実に低減させることができ、地震等によって生じた振動によるビル10A,10Bの崩壊や倒壊を防ぐことができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、振動減衰油圧ダンパー10A,10Bによる振動減衰時におけるオフィスビル10A,10B(建造物)の損壊を防ぐことができる。
図18は、既設オフィスビル10A,10Bまたは新設オフィスビル10A,10Bの既設架構11に対するトグル機構T1,T2の他の設置例を示す図である。既設架構11には、一対のトグル機構T1,T2が対称形に設置されている。トグル機構T1は、第1鉄骨柱13aと第1鉄骨梁14aとの第1交差部75a(または第1交差部75aの近傍)から斜め上方へ延びる第1アーム77aと、第2鉄骨梁14bの中央75fから斜め下方へ延びる第2アーム77bと、第1および第2アーム77a,77bの間に位置して第1鉄骨柱13aと第2鉄骨梁14bとの第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)から斜め下方へ延びる振動減衰油圧ダンパー12A〜12D(油圧ダンパー12A〜12Dのいずれか)とから形成されている。なお、振動減衰油圧ダンパー12A〜14Dは、制震補強ブレースB,B1,B2やトグル機構T,T1,T2の他に、図示はしていないが、公知のシアリンクまたは公知の間柱にも利用することができる。
トグル機構T2は、第2鉄骨柱13bと第1鉄骨梁14aとの第2交差部75b(または第2交差部75bの近傍)から斜め上方へ延びる第1アーム77aと、第2鉄骨梁14bの中央75fから斜め下方へ延びる第2アーム77bと、第1および第2アーム77a,77bの間に位置して第2鉄骨柱13bと第2鉄骨梁14bとの第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)から斜め下方へ延びる振動減衰油圧ダンパー12A〜12D(油圧ダンパー12A〜12Dのいずれか)とから形成されている。振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dは、図4や図12、図13、図14に示すそれらと同一であり、減衰力発生機構や温度補償機構38、減衰力低減機構39を有し、図4のそれと同一の効果を有する。
既設オフィスビル10Aまたは新設オフィスビル10Aでは、トグル機構T1,T2がオフィスビル10Aの中央における各階層の各事務室の既設架構11に設置され、トグル機構T1,T2がオフィスビル10Aの中央の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び、建造物制震構造がオフィスビル10Aの中央における各階層の既設架構11に構築されている(図1援用)。既設オフィスビル10Bまたは新設オフィスビル10Bでは、トグル機構T1,T2がオフィスビル10Bの両側における階層の各事務室の既設架構11に設置され、トグル機構T1,T2がオフィスビル10Bの両側の下階の事務室から上階の事務室に向かって上下方向へ並び、建造物制震構造がオフィスビル10Bの両側における階層の既設架構11に構築されている(図2援用)。
第1アーム77aは、回転支承78に固定された固定端部79と、回転ヒンジ80(連結部材)に回転可能に連結された接続端部81と、それら端部79,81の間に延びる円柱状の中間部82とを有する。回転支承78は、第1交差部75a(または第1交差部75aの近傍)に取り付けられた第1ガセットプレート76aに回転可能に設置され、第2交差部75b(または第2交差部75bの近傍)に取り付けられた第2ガセットプレート76bに回転可能に設置されている。 第2アーム77bは、回転支承78に固定された固定端部79と、回転ヒンジ80(連結部材)に回転可能に連結された接続端部81と、それら端部79,81の間に延びる円柱状の中間部82とを有する。回転支承78は、第2鉄骨梁14bの中央75fに取り付けられた中央ガセットプレート76fに回転可能に設置されている。
振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dは、摺動ロッド20bの接続端部35が回転ヒンジ80(連結部材)に回転可能に連結され、固定ロッド20aの接続端部31が第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)に位置する回転支承78に固定されているとともに、第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)に位置する回転支承78に固定されている。回転支承78は、第3交差部75c(または第3交差部75cの近傍)に取り付けられた第3ガセットプレート76cに回転可能に設置され、第4交差部75d(または第4交差部75dの近傍)に取り付けられた第4ガセットプレート76dに回転可能に設置されている。それら油圧ダンパー12A〜12Dは、回転ヒンジ80の動作に追従しつつ、摺動ロッド20bの伸縮によって第1および第2アーム77a,77bの変形(回転ヒンジ80の回転変位量)を吸収しつつ既設架構11の振動を熱に変換し、それによって架構11の振動が減衰されるとともに、オフィスビル10A,10Bの振動が抑制される。
図18に示す建造物制震構造は、一対のトグル機構T1,T2をオフィスビル10A,10B(建造物)の既設架構11において対称形に設置することで、ビル10A,10Bの架構11に設置された一方のトグル機構T1の制震機能と振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dの減衰力とを利用してビル10A,10Bに生じた一方への振動を低減させることができ、ビル10A,10Bの架構11に設置された他方のトグル機構T2の制震機能と油圧ダンパー12A〜12Dの減衰力とを利用してビル10A,10Bに生じた他方への振動を低減させることができ、対称形に設置された一対のトグル機構T1,T2によってビル10A,10Bに生じた一方と他方との振動を確実に低減させることができる。建造物制震構造は、減衰力第1低減手段および減衰力第2低減手段を実施するから、それら振動減衰油圧ダンパー12A〜12Dによる振動減衰時におけるオフィスビル10A,10B(建造物)の損壊を防ぐことができる。
10A オフィスビル(既設建造物または新設建造物)
10B オフィスビル(既設建造物または新設建造物)
11 既設架構
12A 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)
12B 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)
12C 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)
12D 制震補強ブレース(振動減衰油圧ダンパー)
13a 第1鉄骨柱(既設柱)
13b 第2鉄骨柱(既設柱)
14a 第1鉄骨梁(既設梁)
14b 第2鉄骨梁(既設梁)
15 第1交差部
16 第3交差部
17 第1ガセットプレート
18 第2ガセットプレート
19 シリンダ
20 ロッド
20a 固定ロッド
20b 摺動ロッド
21 ピストン
22 前端部
23 後端部
24 オイルチャンバー
24a 第1オイルチャンバー
24b 第2オイルチャンバー
25a 第1ブロック
25b 第2ブロック
26a 第1軸受けガイド
26b 第2軸受けガイド
27 シール(パッキン)
28a 第1ストッパー
28b 第2ストッパー
29 固定端部
30 中間部
31 接続端部
32 軸
33 自由端部
34 中間部
35 接続端部
36 アキュームレータ
37 ケーシング
38 温度補償機構
39 減衰力低減機構
39a 第1減衰力低減機構
39b 第2減衰力低減機構
40a 第1リリーフ弁
40b 第2リリーフ弁
41a 第1調圧弁
41b 第2調圧弁
42 第1オイル流路
43 第5オイル流路
44 第1温度補償弁
45 第2温度補償弁
46 連絡流路
47 貯留チャンバー
48 アキュームレータピストン
49 バネ
50 第6オイル流路
51 リリース弁
51a 第1リリース弁(リリース弁)
51b 第2リリース弁(リリース弁)
52a 第1逆止弁
52b 第2逆止弁
53 トリガー軸
53a 第1トリガー軸(トリガー軸)
53b 第2トリガー軸(トリガー軸)
54a 第1スプールバルブ
54b 第2スプールバルブ
55a 第1座金
55b 第2座金
56 バネ
57 基端部
58 延出部
59 露出部分
60 大径部分
61 小径部分
62 貫通路
63 貫通路
64 第7オイル流路
65 固定ボルト
66 一端部
67 中間部
68 他端部
69 貫通孔
69a 第1貫通孔
69b 第2貫通孔
70a 第1シール
70b 第2シール
71 中間部
72a 第1挿通孔
72b 第2挿通孔
73 バネ
74 スペース
75a 第1交差部
75b 第2交差部
75c 第3交差部
75d 第4交差部
75e 中央
75f 中央
76a 第1ガセットプレート
76b 第2ガセットプレート
76c 第3ガセットプレート
76d 第4ガセットプレート
76e 中央ガセットプレート
76f 中央ガセットプレート
77a 第1アーム
77b 第2アーム
78 回転支承
79 固定端部
80 回転ヒンジ
81 接続端部
82 中間部
B 制震補強ブレース
B1 制震補強ブレース
B2 制震補強ブレース
T トグル機構
T1 トグル機構
T2 トグル機構

Claims (12)

  1. 建造物に生じた振動を減衰する減衰力を発生させる振動減衰油圧ダンパーを備え、前記建造物の架構に構築される建造物制震構造において、
    前記制震構造が、前記建造物に一方への振動が生じて該建造物が一方へ変形し、前記一方への振動に対する前記振動減衰油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって該一方の変形に対する該油圧ダンパーの変位が最大になる前に、前記油圧ダンパーの減衰力を前記最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第1低減手段を実施し、前記一方の振動が他方へ転じて該建造物が該他方へ変形し、前記他方への振動に対する前記油圧ダンパーの減衰力が増加してその減衰力が最大減衰力に到達した後であって該他方の変形に対する該油圧ダンパーの変位が最大になる前に、前記油圧ダンパーの減衰力を前記最大減衰力の1/4以下に低減する減衰力第2低減手段を実施することを特徴とする建造物制震構造。
  2. 前記制震構造では、前記一方の振動が他方へ転じて前記建造物が該他方へ変形を開始した直後に、前記減衰力第1低減手段によって低減された前記振動減衰油圧ダンパーの減衰力が0を通過して前記他方の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、前記最大減衰力を維持しつつ該他方の変形に対する前記油圧ダンパーの変位が最大になる直前に前記減衰力第2低減手段が実施され、前記他方の振動が一方へ転じて前記建造物が該一方へ変形を開始した直後に、前記減衰力第2低減手段によって低減された前記油圧ダンパーの減衰力が0を通過して前記一方の振動に対する最大減衰力に瞬時に到達し、前記最大減衰力を維持しつつ該一方の変形に対する前記油圧ダンパーの変位が最大になる直前に前記減衰力第1低減手段が実施される請求項1に記載の建造物制震構造。
  3. 前記制震構造では、前記一方の振動が他方へ転じて前記建造物が該他方へ変形を開始すると、前記減衰力第1低減手段によって低減された前記振動減衰油圧ダンパーの減衰力が0を通過して前記他方の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、前記減衰力が最大から次第に減少しつつ該他方の変形に対する前記油圧ダンパーの変位が最大になる前に前記減衰力第2低減手段が実施され、前記他方の振動が一方へ転じて前記建造物が該一方へ変形を開始すると、前記減衰力第2低減手段によって低減された前記油圧ダンパーの減衰力が0を通過して前記一方の振動に対する最大減衰力に次第に到達し、前記減衰力が最大から次第に減少しつつ該一方の変形に対する前記油圧ダンパーの変位が最大になる前に前記減衰力第1低減手段が実施される請求項1に記載の建造物制震構造。
  4. 前記制震構造では、前記振動減衰油圧ダンパーが前記建造物の架構の下方から上方に向かって斜めに架設されることで該架構に制震補強ブレースが形成されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の建造物制震構造。
  5. 前記建造物の架構では、一対の前記制震補強ブレースが対称形に設置されている請求項4に記載の建造物制震構造。
  6. 前記制震構造が、前記建造物の架構に設置されて一方向へ延びる第1アームと、前記架構に設置されて一方向へ延びる第2アームとを含み、前記制震構造では、前記振動減衰油圧ダンパーが前記第1および第2アームの間の前記架構に設置され、前記第1および第2アームと前記油圧ダンパーとから該架構にトグル機構が形成されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の建造物制震構造。
  7. 前記建造物の架構では、一対の前記トグル機構が対称形に設置されている請求項6に記載の建造物制震構造。
  8. 前記建造物が、下方から上方へ各階層が連なる多層の既設建造物または下方から上方へ各階層が連なる多層の新設建造物であり、前記制震構造が、前記既設建造物または前記新設建造物の各階層の架構に構築されてそれら建造物の上下方向と横方向との少なくとも上下方向へ並んでいる請求項1ないし請求項7いずれかに記載の建造物制震構造。
  9. 前記減衰力第1低減手段と前記減衰力第2低減手段とを実施しない振動減衰サブ油圧ダンパーが、前記多層の建造物の下層と上層とのうちのいずれか一方に設置されて上下方向へ並び、前記減衰力第1低減手段と前記減衰力第2低減手段とを実施する振動減衰油圧ダンパーが、前記多層の建造物の下層と上層とのうちのいずれか他方に設置されて上下方向へ並んでいる請求項8に記載の建造物制震構造。
  10. 前記振動減衰油圧ダンパーが、軸方向へ延びるシリンダと、前記シリンダの内部に摺動可能に設置されて該シリンダに対して軸方向へ進退するロッドと、前記ロッドに連接されて該ロッドの進退にともなって軸方向へ進退するピストンと、前記シリンダの内部に作られて前記ピストンを隔てて該シリンダの軸方向一方に位置する第1オイルチャンバーと、前記シリンダの内部に作られて前記ピストンを隔てて該シリンダの軸方向他方に位置する第2オイルチャンバーとを備え、前記ピストンには、前記第1オイルチャンバーと第2オイルチャンバーとにつながってそれらチャンバーにオイルを通流させるオイル流路が形成されているとともに、前記第1および第2オイルチャンバーへのオイルの流動に対して所定の減衰力を発生させる減衰力発生弁と、前記ロッドが前記シリンダに対して軸方向一方に変位した所定の位置で前記第1オイルチャンバーから前記第2オイルチャンバーへオイルを流入させるとともに、前記ロッドが前記シリンダに対して軸方向他方に変位した所定の位置で前記第2オイルチャンバーから前記第1オイルチャンバーへオイルを流入させるリリース弁とが設置されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の建造物制震構造。
  11. 前記リリース弁が、前記ピストンから軸方向へ延びていて前記第1および第2オイルチャンバーに延出するトリガー軸を含み、前記リリース弁では、前記ロッドの軸方向の進退にともなって前記トリガー軸が軸方向へ進退し、該トリガー軸の軸方向への進退によって前記リリース弁の弁機構が開閉される請求項10に記載の建造物制震構造。
  12. 前記リリース弁が、前記ピストンから径方向へ延びるトリガー軸を含み、前記リリース弁では、前記ロッドの軸方向の進退にともなって前記トリガー軸が径方向へ進退し、該トリガー軸の径方向への進退によって前記リリース弁の弁機構が開閉される請求項10に記載の建造物制震構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102091201B1 (ko) * 2019-11-14 2020-04-24 차민석 수산물 건조장치 및 그 설치 방법
CN113006307A (zh) * 2021-03-11 2021-06-22 武汉理工大学 基于链式液压传导的建筑结构变形协调控制系统

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