JP2017165995A - スカンジウム精製方法 - Google Patents

スカンジウム精製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017165995A
JP2017165995A JP2016049394A JP2016049394A JP2017165995A JP 2017165995 A JP2017165995 A JP 2017165995A JP 2016049394 A JP2016049394 A JP 2016049394A JP 2016049394 A JP2016049394 A JP 2016049394A JP 2017165995 A JP2017165995 A JP 2017165995A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scandium
extraction
organic
thorium
organic phase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016049394A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6528707B2 (ja
Inventor
祐輔 仙波
Yusuke Semba
祐輔 仙波
いつみ 松岡
Itsumi Matsuoka
いつみ 松岡
小林 宙
Chu Kobayashi
宙 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority to JP2016049394A priority Critical patent/JP6528707B2/ja
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to US16/082,384 priority patent/US10697043B2/en
Priority to AU2017233945A priority patent/AU2017233945B2/en
Priority to CA3017299A priority patent/CA3017299C/en
Priority to PCT/JP2017/008161 priority patent/WO2017159372A1/ja
Priority to EP17766375.4A priority patent/EP3431620A4/en
Priority to CU2018000104A priority patent/CU20180104A7/es
Priority to CN201780014827.XA priority patent/CN108699628A/zh
Publication of JP2017165995A publication Critical patent/JP2017165995A/ja
Priority to PH12018501958A priority patent/PH12018501958A1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP6528707B2 publication Critical patent/JP6528707B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B59/00Obtaining rare earth metals
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B3/00Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes
    • C22B3/04Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes by leaching
    • C22B3/06Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes by leaching in inorganic acid solutions, e.g. with acids generated in situ; in inorganic salt solutions other than ammonium salt solutions
    • C22B3/08Sulfuric acid, other sulfurated acids or salts thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22BPRODUCTION AND REFINING OF METALS; PRETREATMENT OF RAW MATERIALS
    • C22B3/00Extraction of metal compounds from ores or concentrates by wet processes
    • C22B3/20Treatment or purification of solutions, e.g. obtained by leaching
    • C22B3/26Treatment or purification of solutions, e.g. obtained by leaching by liquid-liquid extraction using organic compounds
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D11/00Solvent extraction
    • B01D11/04Solvent extraction of solutions which are liquid
    • B01D11/0492Applications, solvents used
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Geology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Environmental & Geological Engineering (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Geochemistry & Mineralogy (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

【課題】スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液から、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現する。【解決手段】本発明の方法は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液(抽出始液)を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する抽出後有機(第1有機相)と不純物を含有する抽出後液(第1水相)とに分離する抽出工程S1と、抽出後有機(第1有機相)に硫酸を加え、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とスカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)とに分離する洗浄工程S2とを含む。その際、抽出工程S1では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。【選択図】図1

Description

本発明は、スカンジウム精製方法に関する。
スカンジウムは、高強度合金の添加剤や燃料電池の電極材料として極めて有用である。しかしながら、生産量が少なく、高価であるため、広く用いられるには至っていない。
ところで、ラテライト鉱やリモナイト鉱等のニッケル酸化鉱には、微量のスカンジウムが含まれている。しかしながら、ニッケル酸化鉱は、ニッケル含有品位が低いため、長らくニッケル酸化鉱をニッケル原料として工業的に利用されてこなかった。そのため、ニッケル酸化鉱からスカンジウムを工業的に回収することもほとんど研究されていなかった。
しかしながら、近年、ニッケル酸化鉱を硫酸と共に加圧容器に装入し、240℃〜260℃程度の高温に加熱してニッケルを含有する浸出液と浸出残渣とに固液分離するHPAL(High Pressure Acid Leach)プロセスが実用化されている。このHPALプロセスでは、得られた浸出液に中和剤を添加することで不純物が分離され、次いで、不純物が分離された浸出液に硫化剤を添加することによりニッケルをニッケル硫化物として回収する。そして、このニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理することによって、電気ニッケルやニッケル塩化合物を得ることができる。
上述のようなHPALプロセスを用いる場合、ニッケル酸化鉱に含まれるスカンジウムは、ニッケルと共に浸出液に含まれることになる(特許文献1参照)。そして、HPALプロセスで得られた浸出液に対して中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加すると、ニッケルはニッケル硫化物として回収される。一方で、スカンジウムは前記の方法では分離することができず、硫化剤添加後の酸性溶液中に残留する。このように、HPALプロセスを用いることでニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。
しかしながら、一般に、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムの含有量は、微量であるため、上記の方法で硫化剤添加後の酸性溶液(硫化後液あるいはバレンリッカーともいう。)に含有されるスカンジウムは、mg/lレベルのごく微量な濃度にすぎず、効率的に直接回収することは難しい。
このため、硫化後液に含有されるスカンジウムを濃縮し、同時に共存する不純物を分離する処理が必要となる。具体的な濃縮手段として、例えば、キレート樹脂を用いて行う方法がある(特許文献2参照)。
特許文献2に示される方法は、先ず、ニッケル含有酸化鉱石を酸化性雰囲気の高温高圧のもとで酸性水溶液中にニッケルとスカンジウムとを選択的に浸出させて酸性溶液を得て、次いでその酸性溶液のpHを2〜4の範囲に調整した後、硫化剤の使用によってニッケルを硫化物として選択的に沈殿回収する。次に、得られたニッケル回収後の溶液をキレート樹脂と接触させてスカンジウムを吸着させ、キレート樹脂を希酸で洗浄した後、洗浄後のキレート樹脂を強酸と接触させてキレート樹脂からスカンジウムを溶離するというものである。
また、上述した酸性溶液からスカンジウムを回収する方法として、溶媒抽出を用いてスカンジウムを回収する方法も提案されている(特許文献3及び4参照)。
特許文献3に記載の方法では、先ず、スカンジウムの他に、少なくとも鉄、アルミニウム、カルシウム、イットリウム、マンガン、クロム、マグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に、2−エチルヘキシルスルホン酸−モノ−2−エチルヘキシルをケロシンで希釈した有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出する。次いで、有機溶媒中にスカンジウムと共に抽出されたイットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを分離するために、塩酸水溶液を加えてスクラビングを行うことによってそれらを除去した後、有機溶媒中にNaOH水溶液を加えて、有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)を含むスラリーとし、これを濾過して得られたSc(OH)を塩酸で溶解して、塩化スカンジウム水溶液を得る。そして、得られた塩化スカンジウム水溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈殿とし、その沈殿を濾過して、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを濾液中に分離した後、仮焼することにより高純度な酸化スカンジウムを得るというものである。
また、特許文献4には、スカンジウム含有供給液をバッチ処理によって一定の割合で抽出剤に接触させることにより、スカンジウム含有供給液からスカンジウムを選択的に分離回収する方法が記載されている。
しかしながら、上述するような様々な分離方法が知られているにもかかわらず、実際のニッケル酸化鉱を処理する場合の精製を容易に行うことができるとはいえなかった。ニッケル酸化鉱石を酸で浸出して得た浸出液の中には、スカンジウムとともに、スカンジウムよりもよりもはるかに高濃度の鉄、アルミ等の不純物が含まれ、キレート樹脂や溶媒抽出を用いた方法だけでは、不純物を完全に分離することは容易でない。
さらに、ニッケル酸化鉱の中には、トリウム等のアクチノイド元素が微量含有されている場合もある。この場合、特許文献2や特許文献3で開示されるキレート樹脂や有機溶媒を用いた方法では、トリウム等多くのアクチノイド元素は、スカンジウムと類似の挙動を示すため、スカンジウムとアクチノイド元素とを効率的に分離することは難しい。
特に、回収したスカンジウムを、燃料電池の電極材料等の高機能な用途に用いるためには、不純物を分離して高純度化するとともに、アクチノイド元素を、スカンジウムを含んだ固体を得る前の溶液段階で、例えば1mg/l未満の濃度にまで低減することが、製品の特性を確保するために必要とされる。
特開平3−173725号公報 特開平9−194211号公報 特開平9−291320号公報 国際公開第2014/110216号
図3は、アクチノイド元素を完全に、かつ、効率よく分離する方法の一例を示すフローチャートである。アクチノイド元素を完全に、かつ、効率よく分離する方法として、スカンジウム及びアクチノイド元素を含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液を抽出始液として、アミン系不純物抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウムを含有する水相(A1)とアクチノイド元素を含有する有機相(O1)とに分離する不純物抽出工程S11を含み、スカンジウムを含有する水相を固体化する方法がある。
アミン系不純物抽出剤の具体的な商品名として、1級アミンであるPrimeneJM−T、2級アミンであるLA−1、3級アミンであるTNOA(Tri−n−octylamine)、TIOA(Tri−i−octylamine)等の商品名で知られるアミン系不純物抽出剤を用いることができる。
しかしながら、この方法では、水相(A1)に含まれるスカンジウムの含有量が処理量の95%程度に留まり、残りの5%近くのスカンジウムは、トリウム等と共に有機相(O1)に抽出されてしまう。そのため、実収率の点で課題がある。
トリウム等と共に有機相(O1)に抽出されたスカンジウムを回収する手法として、有機相(O1)に酸を加え、スカンジウムを含有する水相(A2)とトリウムを含有する有機相(O2)とに分離する洗浄工程S12をさらに含むことが考えられる。
しかしながら、この方法では、スカンジウム回収の対象が水相(A1)と水相(A2)との2系統に分かれるため、スカンジウムを回収するにあたって、工程が複雑となり、余計な設備を要する等、工業的な課題が多い。
このように、ニッケル酸化鉱から酸浸出した溶液から多種多量な不純物を効率よく分離し、高純度なスカンジウムを工業的に回収するのに適した方法は、見出されていない。
本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液から、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現することができるスカンジウムの精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、まずは、スカンジウム及びトリウムを含有する抽出始液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する有機相と不純物を含有する水相とに分離し、その後、有機相に硫酸を加えることで、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する第1有機相と不純物を含有する第1水相とに分離する抽出工程と、前記第1有機相に硫酸を加え、トリウムを含有する第2有機相とスカンジウムを含有する第2水相とに分離する洗浄工程とを含み、前記抽出工程では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、前記洗浄工程では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている、スカンジウム精製方法である。
(2)また、本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記洗浄工程における前記第1有機相(O)の前記硫酸(A)に対する体積比(O/A比)が0.5以下である、スカンジウム精製方法である。
(3)また、本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記アミド誘導体が下記一般式(I)で表される、スカンジウム精製方法である。
Figure 2017165995
(式(I)において、R及びRは、それぞれ同一又は別異のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖でも分鎖でも良い。Rは水素原子又はアルキル基を示す。Rは水素原子、又はアミノ酸としてα炭素に結合される、アミノ基以外の任意の基を示す。)
本発明によれば、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現することができる。
本発明の実施形態に係るスカンジウム精製方法を説明するためのフロー図である。 スカンジウム及びトリウムを含有する抽出後有機(第1有機相)を硫酸で洗浄処理に付したときのpHと洗浄後液に含まれるスカンジウム及びトリウムの割合との関係を示すグラフ図である。 アミン系不純物抽出剤を用いたときのスカンジウム精製方法を説明するためのフロー図である。
以下、本発明に係るスカンジウムの精製方法の具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<スカンジウムの精製方法>
図1は、本実施形態に係るスカンジウムの精製方法の一例を示すフロー図である。このスカンジウムの精製方法は、ニッケル酸化鉱を硫酸等の酸により浸出して得られた、スカンジウム及び不純物を含有する酸性溶液から、スカンジウムと不純物とを分離して、高純度のスカンジウムを簡便に且つ効率よく回収するものである。
例えば、本実施形態に係るスカンジウムの精製方法は、図1のフロー図に示すように、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液(抽出始液)を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムをスカンジウム抽出剤(抽出後有機、第1有機相)に抽出し、酸性溶液(抽出後液、第1水相)に残る不純物と分離する抽出工程S1と、スカンジウム抽出剤(第1有機相)に硫酸を加え、スカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)と、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とに分離する洗浄工程S2とを含む。そして、抽出工程S1では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。
この方法によると、不純物をより効果的に分離することができ、ニッケル酸化鉱のような多くの不純物を含有する原料からであっても、安定した操業を行うことができ、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができる。
また、スカンジウム回収の対象が第2水相の1系統であるため、従来のプロセスよりも工程を簡略化することができる。
なお、洗浄後有機(第2有機相)に残留したトリウムは、洗浄工程S2で使用した硫酸よりも高濃度の硫酸を接触させることで洗浄後有機(第2有機相)から分離できるので、分離後のスカンジウム抽出剤を、スカンジウムの抽出用途に再利用することができる。
<スカンジウムの精製方法の各工程について>
〔抽出工程S1〕
抽出工程S1は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する第1有機相と不純物を含有する第1水相とに分離する工程である。
[スカンジウム回収の処理対象]
スカンジウム回収の処理対象となるスカンジウムを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を用いることができる。
溶媒抽出に付される酸性溶液の一例として、ニッケル酸化鉱を高温高圧下で硫酸等の酸により浸出して浸出液を得る浸出工程と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程とを有するニッケル酸化鉱の湿式製錬処理工程により得られる硫化後液が挙げられる。
ニッケル酸化鉱としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8〜2.5重量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、これらのニッケル酸化鉱には、スカンジウムが含まれている。
中和工程で用いる中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
硫化工程で用いる硫化剤として、硫化水素ガス、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等が挙げられる。
ニッケル酸化鉱を硫酸により浸出して得られた、スカンジウムを含有する酸性溶液である硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象溶液として適用することができる。ところが、スカンジウムを含有する酸性溶液である硫化後液には、スカンジウムの他に、例えば上述した硫化工程における硫化処理で硫化されずに溶液中に残留したアルミニウムやクロム、その他の不純物が含まれて得る。このことから、この酸性溶液を溶媒抽出に付すにあたり、スカンジウム溶離工程として、予め、酸性溶液中に含まれる不純物を除去してスカンジウム(Sc)を濃縮し、スカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)を生成させ、このスカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)をスカンジウム回収の処理対象にすることが好ましい。
スカンジウム溶離工程では、例えば、イオン交換処理による方法で、酸性溶液中に含まれるアルミニウム等の不純物を分離して除去し、スカンジウムを濃縮させたスカンジウム含有溶液を得るようにすることができる。
[スカンジウム抽出剤]
スカンジウム抽出剤を構成するアミド誘導体は、スカンジウムとの選択性が高いという特徴を有する。このようなアミド誘導体として、下記一般式(I)で表される物が挙げられる。アミドの骨格にアルキル基を導入することによって、親油性を高め、抽出剤として用いることができる。
Figure 2017165995
式中、置換基R及びRは、それぞれ同一又は別異のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖でも分鎖でも良いが、有機溶媒への溶解性を高められるため、アルキル基は、分鎖であることが好ましい。アミドの骨格にアルキル基を導入することによって、親油性を高め、抽出剤として用いることができる。
また、R及びRにおいて、アルキル基の炭素数は特に限定されるものでないが、5以上11以下であることが好ましい。炭素数が4以下であると、アミド誘導体の水溶性が高まり、アミド誘導体が水相に含まれる可能性がある。炭素数が12以上であると、界面活性能が高まり、エマルションを形成し易くなる。また、炭素数が12以上であると、酸性溶液を含む水相、有機溶媒を含む有機相とは別に、第3のアミド誘導体層を形成し得る。
は水素原子又はアルキル基を示す。Rは水素原子、又はアミノ酸としてα炭素に結合される、アミノ基以外の任意の基を示す。
アミド誘導体は、スカンジウムを選択的に抽出できるものであれば特に限定されるものでないが、簡便に製造できる点で、グリシンアミド誘導体であることが好ましい。アミド誘導体がグリシンアミド誘導体である場合、上記のグリシンアミド誘導体は、次の方法によって合成できる。
まず、NHR(R,Rは、上記の置換基R,Rと同じ)で表される構造のアルキルアミンに2−ハロゲン化アセチルハライドを加え、求核置換反応によりアミンの水素原子を2−ハロゲン化アセチルに置換することによって、2−ハロゲン化(N,N−ジ)アルキルアセトアミドを得る。
次に、グリシン又はN−アルキルグリシン誘導体に上記2−ハロゲン化(N,N−ジ)アルキルアセトアミドを加え、求核置換反応によりグリシン又はN−アルキルグリシン誘導体の水素原子の一つを(N,N−ジ)アルキルアセトアミド基に置換する。これら2段階の反応によってグリシンアルキルアミド誘導体を合成できる。
また、グリシンをヒスチジン、リジン、アスパラギン酸に置き換えれば、ヒスチジンアミド誘導体、リジンアミド誘導体、アスパラギン酸アミド誘導体を合成できる。グリシンアルキルアミド誘導体、ヒスチジンアミド誘導体、リジンアミド誘導体、アスパラギン酸アミド誘導体による抽出挙動は、対象とするマンガンやコバルト等の錯安定定数から、グリシン誘導体を用いた結果の範囲内に収まると考えられる。
上記一般式(I)で表される化合物がヒスチジンアミド誘導体である場合、ヒスチジンアミド誘導体は下記一般式(II)で表される。
Figure 2017165995
上記一般式(I)で表される化合物がリジンアミド誘導体である場合、リジンアミド誘導体は下記一般式(III)で表される。
Figure 2017165995
上記一般式(I)で表される化合物がアスパラギン酸アミド誘導体である場合、アスパラギン酸アミド誘導体は下記一般式(IV)で表される。
Figure 2017165995
式(II)〜(IV)において、置換基R及びRは、式(I)で説明したものと同じである。
なお、アミド誘導体は、ノルマル−メチルグリシン誘導体であってもよい。
[スカンジウムの抽出]
上記アミド誘導体を用いてスカンジウムイオンを抽出するには、目的のスカンジウムイオンを含む酸性水溶液を調整しながら、この酸性水溶液を、上記アミド誘導体を含む有機溶液に加えて混合する。これによって、第1有機相に目的のスカンジウムイオンを選択的に抽出することができる。
ただし、上記アミド誘導体を用いてスカンジウムイオンを抽出する場合、抽出始液に含まれるトリウムは分離されず、スカンジウムイオンのほか、トリウムイオンも第1有機相に抽出される。スカンジウムイオンと、トリウムイオンとを分離するため、続く洗浄工程S2が行われる。
抽出時においては、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を、例えば炭化水素系の有機溶媒等で希釈して使用することが好ましい。有機溶媒は、上記アミド誘導体及び金属抽出種が溶解する溶媒であればどのようなものであってもよく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でも複数混合しても良く、1−オクタノールのようなアルコール類を混合しても良い。
アミド誘導体の濃度は、スカンジウムの濃度によって適宜設定できるが、抽出時及び後述する逆抽出時における相分離性等を考慮すると、有機溶媒100体積%に対し、10体積%以上30体積%以下程度であることが好ましく、特に20体積%程度であることがより好ましい。
スカンジウム及び不純物を含有する酸性水溶液から、スカンジウムを効率的に回収するためには、スカンジウムを含む酸性水溶液のpHを1.0以上3.0以下に調整しながら抽出剤の有機溶液を加えることを要する。pHが小さすぎると、スカンジウムを十分に抽出できず、スカンジウムが抽出後液(第1水相)に残る可能性がある。
pHが大きすぎると、スカンジウムだけでなく、不純物も第1有機相に抽出される可能性がある。また、pHが大きすぎると、抽出操作後に静置して抽残液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)を分離する際の分離性(分相性)が低下して操業が困難となる。具体的には、pHが3以下であれば、静置時間は数分から長くても10分以内で分相が完了するが、pHが3を超えると、静置時間が1時間以上を要する場合があり、効率が低下する。
スカンジウムを十分に抽出するという観点から、pHの下限は、1.0以上であれば足りるが、1.5以上であることがより好ましい。
また、スカンジウムだけでなく、不純物も第1有機相に抽出されることを防ぐため、pHの上限は、3.0以下であれば足りるが、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
pH調整には、濃度が4mol/L程度の水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。取扱いが容易であり、また、不純物のコンタミや澱物発生を防止でき、分離後の回収が容易なためである。
撹拌時間及び抽出温度は、スカンジウムイオンの酸性水溶液、及び抽出剤の有機溶液の条件によって適宜設定すればよい。
なお、抽出工程S1における有機相(O)の抽出始液(A)に対する体積比(O/A比)は、特に限定するものはなく、適宜選択できる。
〔洗浄工程S2〕
抽出工程S2は、抽出工程S1で得られた第1有機相に硫酸を加え、トリウムを含有する第2有機相とスカンジウムを含有する第2水相とに分離する工程である。
この場合、スカンジウムとともに抽出されたトリウムが、洗浄工程S2で抽出後有機(第1有機相)から分離されないように、添加する硫酸溶液と抽出後有機(第1有機相)との混合割合や、抽出後有機(第1有機相)と硫酸との混合状態でのpHを調整することが好ましい。
取扱いの観点から、硫酸溶液は、0.5mol/L(1規定)以上2.0mol/L(4規定)以下の濃度範囲のものを使用することが好ましく、0.5mol/L(1規定)以上1.0mol/L(2規定)以下の濃度範囲のものを使用することがより好ましい。
[硫酸溶液と抽出後有機(第1有機相)との混合割合]
洗浄工程S2における第1有機相(O)の硫酸(A)に対する体積比(O/A比)は、0.5以下であることが好ましい。O/A比が高すぎると、第1有機相に硫酸を加えた後の洗浄後液(第2水相)に、スカンジウムだけでなく、トリウムも抽出され易くなる。その結果、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウムの濃度を1mg/L未満に維持できない可能性がある。
上記O/A比の下限は特に限定されるものではない。しかしながら、O/A比を極端に小さくすると、それだけ洗浄に用いる硫酸溶液の量が増加し、洗浄後液(第2水相)に含まれるスカンジウム濃度が相対的に低下して、回収効率やコストが増加する。そのため、O/A比は、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。
[pH]
洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。pHは、1.5以上2.5以下であることがより好ましく、1.8以上2.3以下であることが特に好ましい。
pH調整には、濃度が4mol/L程度の水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。取扱いが容易であり、また、不純物のコンタミや澱物発生を防止でき、分離後の回収が容易なためである。
pHが小さすぎると、スカンジウムだけでなく、トリウムも洗浄後液(第2水相)に抽出される。洗浄を複数回繰り返して分離率の差を大きくする方法を用いても、洗浄回数を例えば10回以上と多くしなければならず非効率的であり、実質的にトリウム含有率を1mg/L未満に低減できない。このため、さらに別の操作によりトリウムを除去する工程が必要となり、工程が複雑化する。
pHが大きすぎると、スカンジウムを洗浄後液(第2水相)に十分抽出することができず、スカンジウムの多くが洗浄後有機(第2有機相)に残留する。また、スカンジウムが水酸化物として沈殿してしまい、スカンジウムのロスにつながる。
スカンジウムの収率を高くするため、洗浄工程S2を複数回繰り返すことが好ましい。抽出後有機(第1有機相)と硫酸との混合状態でのpHを2.0程度に調整して洗浄工程S2を行うと、スカンジウムが洗浄後液(第2水相)に抽出される割合は、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの30%程度であり、トリウムが洗浄後液(第2水相)に抽出される割合は、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるトリウムのほぼ0%程度である。そのため、抽出後有機(第1有機相)の洗浄を繰り返し行うことが好ましい。抽出後有機(第1有機相)の洗浄回数が多いほど、スカンジウムの収率を高くすることができる。
また、抽出後有機(第1有機相)と硫酸との混合状態でのpHが2.0以上であれば、トリウムが洗浄後液(第2水相)に抽出される割合は、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるトリウムのほぼ0%程度であり、抽出後有機(第1有機相)の洗浄回数を多くしても、洗浄後液(第2水相)にトリウムが含まれることはない。したがって、本実施形態の方法では、スカンジウムとトリウムを1回(1段)の操作で効率よく分離でき、設備効率の点で効率的となる。
抽出後有機(第1有機相)の洗浄を2回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約50%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。
抽出後有機(第1有機相)の洗浄を3回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約60%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。
抽出後有機(第1有機相)の洗浄を4回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約70%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。
抽出後有機(第1有機相)の洗浄を5回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約80%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。
抽出後有機(第1有機相)の洗浄を7回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約90%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。
抽出後有機(第1有機相)の洗浄を9回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約95%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。
洗浄回数は、スカンジウムの収率と、洗浄コストとを勘案して適宜選択すればよいが、スカンジウムの収率と、洗浄コストとの両方を勘案すると、2回以上9回以下が好ましく、4回以上7回以下がより好ましく、5回以上7回以下が特に好ましい。
本実施形態の方法によると、不純物をより効果的に分離することができ、ニッケル酸化鉱のような多くの不純物を含有する原料からであっても、安定した操業を行うことができ、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができる。
また、スカンジウム回収の対象が洗浄後液(第2水相)の1系統であるため、従来のプロセスよりも工程を簡略化することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
〔抽出始液(水相)の調製〕
以下の工程を経て抽出始液(水相)を調製した。
まず、ニッケル酸化鉱を特許文献1に記載の方法等の公知の方法に基づき、硫酸を用いて加圧酸浸出した。続いて、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去した。その後、不純物除去後の浸出液に硫化剤を添加し、固体であるニッケル硫化物を除去して硫化後液を用意した。
次に、得られた硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させた。本実施例では、キレート樹脂として、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂を用いた。次に、スカンジウムが吸着されたキレート樹脂に0.05Nの硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去した。次に、スカンジウムが吸着されたキレート樹脂に0.5Nの硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得た。
そして、スカンジウム溶離液に中和剤を添加してpHを4〜4.5に調整し、次いでpH6.0に調整して水酸化スカンジウム澱物を得、次にこの澱物に硫酸を添加して得た溶液を本実施例での抽出始液(水相)とした。
抽出始液(水相)の組成は、スカンジウムが10g/L、トリウム0.02g/Lであった。
なお、スカンジウムの定量分析には、ICP装置(セイコーインスツルメンツ社製 型番:SPS3000)を用いて公知の方法により行った。また、トリウム濃度は、ICP質量分析装置(ICP−MS)(アジレント社製 型番:7500i)を用いて測定した。
〔アミド誘導体D2EHAGの合成〕
アミド誘導体の一例として、上記一般式(I)で表されるグリシンアミド誘導体、すなわち、2つの2−エチルヘキシル基を導入したN−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノカルボニルメチル]グリシン(N−[N,N−Bis(2−ethylhexyl)aminocarbonylmethyl]glycine)(あるいはN,N−ジ(2−エチルヘキシル)アセトアミド−2−グリシン(N,N−di(2−ethylhexyl)acetamide−2−glycine)ともいい、以下「D2EHAG」という。)を合成した。
D2EHAGの合成は、次のようにして行った。まず、下記反応式(V)に示すように、市販のジ(2−エチルヘキシル)アミン23.1g(0.1mol)と、トリエチルアミン10.1g(0.1mol)とを分取し、これにクロロホルムを加えて溶解し、次いで2−クロロアセチルクロリド13.5g(0.12mol)を滴下した後、1mol/lの塩酸で1回洗浄し、その後、イオン交換水で洗浄し、クロロホルム相を分取した。
次に、無水硫酸ナトリウムを適量(約10〜20g)加え、脱水した後、ろ過し、黄色液体29.1gを得た。この黄色液体(反応生成物)の構造を、核磁気共鳴分析装置(NMR)を用いて同定したところ、上記黄色液体は、2−クロロ−N,N−ジ(2−エチルヘキシル)アセトアミド(以下「CDEHAA」という。)の構造であることが確認された。なお、CDEHAAの収率は、原料であるジ(2−エチルヘキシル)アミンに対して90%であった。
Figure 2017165995
次に、下記反応式(VI)に示すように、水酸化ナトリウム8.0g(0.2mol)にメタノールを加えて溶解し、さらにグリシン15.01g(0.2mol)を加えた溶液を撹拌しながら、上記CDEHAA12.72g(0.04mol)をゆっくりと滴下し、撹拌した。撹拌を終えた後、反応液中の溶媒を留去し、残留物にクロロホルムを加えて溶解した。この溶液に1mol/lの硫酸を添加して酸性にした後、イオン交換水で洗浄し、クロロホルム相を分取した。
このクロロホルム相に無水硫酸マグネシウム適量を加え脱水し、ろ過した。再び溶媒を減圧除去し、12.5gの黄色糊状体を得た。上記のCDEHAA量を基準とした収率は87%であった。黄色糊状体の構造をNMR及び元素分析により同定したところ、図1及び図2に示すように、D2EHAGの構造を持つことが確認された。上記の工程を経て、スカンジウム抽出剤としてのアミド誘導体D2EHAGを得た。
Figure 2017165995
〔スカンジウム抽出剤の調製〕
上記D2EHAGに希釈剤(商品名:テクリーンN20,JXエネルギー社製)を加え、濃度が10重量%になるように希釈したものを本実施例でのスカンジウム抽出剤とした。
〔スカンジウムの溶媒抽出〕
容量100mlのビーカーに、抽出始液及びスカンジウム抽出剤を入れ、スターラーで撹拌させ、その後、シェイカーに移して10分間処理して混合接触させ、その後、静置して抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)とに分離した。スカンジウム抽出剤の抽出始液に対する体積比(O/A比)は、5であり、抽出工程S1でのpHは、2.0以上2.3以下に調整された。
溶媒抽出にあたり、抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)との分相時間を計測した。結果を表1に示す。
〔抽出後有機(第1有機相)の洗浄〕
続いて、抽出後有機(第1有機相)に、濃度0.5mol/L(1規定)の硫酸溶液を、
抽出後有機(第1有機相)の硫酸に対する体積比(O/A比)が0.5となるように混合して60分間撹拌して抽出後有機(第1有機相)を洗浄し、スカンジウムを洗浄後液(第2水相)に抽出した。洗浄工程S2でのpHは、2.0以上2.3以下に調整された。また、洗浄工程S2の繰り返しは行わず、1回(1段)の操作とした。
洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれる金属(スカンジウム、トリウム)の割合を100%とした場合における金属が洗浄後液(第2水相)に抽出される割合を計測した。結果を図2に示す。また、洗浄後液(水相)に含まれるトリウム含有量を計測した。また、抽出後有機(第1有機相)を洗浄する際、水酸化スカンジウムの沈殿が認められるか否かを目視観察した。結果を表1に示す。
<実施例2〜4>
洗浄工程S2でのpHを表1に記載の値に調整したこと以外は、実施例1と同様の手法にて抽出工程S1及び洗浄工程S2を行った。結果を表1及び図2に示す。
<比較例1〜3>
洗浄工程S2でのpHを表1に記載の値に調整したこと以外は、実施例1と同様の手法にて抽出工程S1及び洗浄工程S2を行った。結果を表2及び図2に示す。
<比較例4、5>
抽出工程S1でのpHを表1に記載の値に調整したこと以外は、実施例1と同様の手法にて抽出工程S1を行った。結果を表2に示す。
Figure 2017165995
<考察>
〔抽出工程S1でのpH〕
抽出工程S1に関し、スカンジウムを含む酸性水溶液のpHが3以下であれば、抽出工程S1の後の分相時間は、10分程度であることが確認された(実施例1〜4等)。一方、pHが3を超えると、抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)との分相に45分かけても抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)とが混在したままで、2相に分相することができなかった(比較例5)。
また、抽出工程S1でのpHが小さすぎると、洗浄後液(水相)に含まれるスカンジウムの含有量が十分とはいえなかった(比較例4)。これは、抽出工程S1においてスカンジウムを抽出後有機(第1有機相)に十分抽出できず、スカンジウムが抽出後液(第1水相)に残ったためと予想される。
〔洗浄工程S2でのpH〕
図2から、洗浄工程S2に関し、pHが1.0以上2.5以下に調整されていれば、スカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)と、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とに好適に分離できることが分かる(実施例1〜4)。実施例1〜4のいずれにおいても、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウム含有量は、0.4mg/L以下である。
中でも、pHが1.5以上に調整されていると、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウム含有量を0.2mg/L以下に抑えることができ(実施例1〜3)、pHが2.0以上に調整されていれば、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウム含有量を0.1mg/L以下に抑えることができる(実施例1、2)。
図2から、スカンジウムの収率の観点では、pHは、小さい方が好ましいことが分かる。pHを小さくすることで、抽出後有機(第1有機相)の洗浄回数を少なく抑えられる。
スカンジウム及びトリウムの分離効率と、収率改善との双方を考慮すると、pHは、1.8以上2.3程度に調整されていることが最も好ましい(実施例1)。
一方で、洗浄工程S2でのpHが小さすぎると、洗浄後液(水相)に含まれるトリウム含有量が、1.1mg/L以上になり得るため、好ましくない(比較例1、2)。
また、洗浄工程S2でのpHが大きすぎると、洗浄工程S2でスカンジウムの水酸化物沈殿が生じ、スカンジウムを効率よく回収できなかった(比較例3)。
S1 抽出工程
S2 洗浄工程

Claims (3)

  1. スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する第1有機相と不純物を含有する第1水相とに分離する抽出工程と、
    前記第1有機相に硫酸を加え、トリウムを含有する第2有機相とスカンジウムを含有する第2水相とに分離する洗浄工程とを含み、
    前記抽出工程では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、
    前記洗浄工程では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている、スカンジウム精製方法。
  2. 前記洗浄工程における前記第1有機相(O)の前記硫酸(A)に対する体積比(O/A比)が0.5以下である、請求項1に記載のスカンジウム精製方法。
  3. 前記アミド誘導体が下記一般式(I)で表される、請求項1又は2に記載のスカンジウム精製方法。
    Figure 2017165995
    (式(I)において、R及びRは、それぞれ同一又は別異のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖でも分鎖でも良い。Rは水素原子又はアルキル基を示す。Rは水素原子、又はアミノ酸としてα炭素に結合される、アミノ基以外の任意の基を示す。)
JP2016049394A 2016-03-14 2016-03-14 スカンジウム精製方法 Active JP6528707B2 (ja)

Priority Applications (9)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016049394A JP6528707B2 (ja) 2016-03-14 2016-03-14 スカンジウム精製方法
AU2017233945A AU2017233945B2 (en) 2016-03-14 2017-03-01 Scandium purification method
CA3017299A CA3017299C (en) 2016-03-14 2017-03-01 Scandium purification method
PCT/JP2017/008161 WO2017159372A1 (ja) 2016-03-14 2017-03-01 スカンジウム精製方法
US16/082,384 US10697043B2 (en) 2016-03-14 2017-03-01 Scandium purification method
EP17766375.4A EP3431620A4 (en) 2016-03-14 2017-03-01 PROCESS FOR PURIFYING SCANDIUM
CU2018000104A CU20180104A7 (es) 2016-03-14 2017-03-01 Método de purificación de escandio
CN201780014827.XA CN108699628A (zh) 2016-03-14 2017-03-01 钪纯化方法
PH12018501958A PH12018501958A1 (en) 2016-03-14 2018-09-12 Scandium purification method

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016049394A JP6528707B2 (ja) 2016-03-14 2016-03-14 スカンジウム精製方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017165995A true JP2017165995A (ja) 2017-09-21
JP6528707B2 JP6528707B2 (ja) 2019-06-12

Family

ID=59852104

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016049394A Active JP6528707B2 (ja) 2016-03-14 2016-03-14 スカンジウム精製方法

Country Status (9)

Country Link
US (1) US10697043B2 (ja)
EP (1) EP3431620A4 (ja)
JP (1) JP6528707B2 (ja)
CN (1) CN108699628A (ja)
AU (1) AU2017233945B2 (ja)
CA (1) CA3017299C (ja)
CU (1) CU20180104A7 (ja)
PH (1) PH12018501958A1 (ja)
WO (1) WO2017159372A1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7463180B2 (ja) 2020-04-22 2024-04-08 Jx金属株式会社 レアメタルの回収方法
JP7463182B2 (ja) 2020-04-22 2024-04-08 Jx金属株式会社 レアメタルの回収方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3682959A1 (en) * 2019-01-16 2020-07-22 Sck Cen Purification of actinium
CN110195158B (zh) * 2019-06-26 2021-03-05 江西理工大学 以矿石体积为依据的离子型稀土分区注液方法
CN113373304B (zh) * 2021-06-09 2022-05-13 江西理工大学 一种从稀土料液中络合-浊点萃取除铝的方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09324227A (ja) * 1996-06-06 1997-12-16 Mitsubishi Materials Corp 低α低酸素金属スカンジウムとその製造方法
JP2013189675A (ja) * 2012-03-13 2013-09-26 Kyushu Univ スカンジウム抽出方法
JP2014034718A (ja) * 2012-08-09 2014-02-24 Sumitomo Heavy Ind Ltd 希土類元素回収方法
JP2015163729A (ja) * 2014-01-31 2015-09-10 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03173725A (ja) 1989-12-01 1991-07-29 Univ Tohoku 希土類元素の分別方法
JP3344194B2 (ja) 1996-01-18 2002-11-11 大平洋金属株式会社 酸化鉱石からの高純度レアーアースメタル酸化物の製造方法
JP3428292B2 (ja) 1996-04-26 2003-07-22 大平洋金属株式会社 Sc金属の回収方法
WO2014110216A1 (en) 2013-01-10 2014-07-17 Bloom Energy Corporation Methods of recovering scandium from titanium residue streams
JP5595554B1 (ja) * 2013-03-18 2014-09-24 国立大学法人九州大学 ニッケル、コバルト及び/又はスカンジウムを含有する酸性溶液から不純物を分離する方法
JP5595543B1 (ja) * 2013-03-18 2014-09-24 国立大学法人九州大学 有価金属抽出方法
JP5652503B2 (ja) 2013-05-10 2015-01-14 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法
CN104342559B (zh) * 2014-10-17 2017-04-05 湖南稀土金属材料研究院 从氧氯化锆废液中综合回收多种元素的方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09324227A (ja) * 1996-06-06 1997-12-16 Mitsubishi Materials Corp 低α低酸素金属スカンジウムとその製造方法
JP2013189675A (ja) * 2012-03-13 2013-09-26 Kyushu Univ スカンジウム抽出方法
JP2014034718A (ja) * 2012-08-09 2014-02-24 Sumitomo Heavy Ind Ltd 希土類元素回収方法
JP2015163729A (ja) * 2014-01-31 2015-09-10 住友金属鉱山株式会社 スカンジウム回収方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7463180B2 (ja) 2020-04-22 2024-04-08 Jx金属株式会社 レアメタルの回収方法
JP7463182B2 (ja) 2020-04-22 2024-04-08 Jx金属株式会社 レアメタルの回収方法

Also Published As

Publication number Publication date
CA3017299C (en) 2021-01-26
US10697043B2 (en) 2020-06-30
EP3431620A1 (en) 2019-01-23
AU2017233945A1 (en) 2018-09-27
JP6528707B2 (ja) 2019-06-12
EP3431620A4 (en) 2019-09-04
CU20180104A7 (es) 2019-06-04
PH12018501958A1 (en) 2019-06-24
US20190062869A1 (en) 2019-02-28
WO2017159372A1 (ja) 2017-09-21
AU2017233945B2 (en) 2019-11-07
CA3017299A1 (en) 2017-09-21
CN108699628A (zh) 2018-10-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5967284B2 (ja) 高純度スカンジウムの回収方法
JP5595554B1 (ja) ニッケル、コバルト及び/又はスカンジウムを含有する酸性溶液から不純物を分離する方法
WO2017159372A1 (ja) スカンジウム精製方法
JP6852599B2 (ja) スカンジウムの精製方法
WO2017135245A1 (ja) スカンジウム回収方法
JP2016180151A (ja) スカンジウムの回収方法
JP6172099B2 (ja) スカンジウムの回収方法
CA3007373C (en) Method for recovering scandium
CN108463567B (zh) 钪回收方法
JP6922478B2 (ja) スカンジウムの精製方法
JP6623803B2 (ja) スカンジウム回収方法
WO2021059942A1 (ja) スカンジウムの回収方法
WO2018097001A1 (ja) スカンジウムの精製方法
JP7327276B2 (ja) スカンジウムの回収方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190308

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20190308

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20190314

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190416

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190429

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6528707

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150