JP2017164754A - レーザー加工装置およびレーザー加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成で、レーザー光線の光軸を偏心できるレーザー加工装置およびレーザー加工方法を提供すること。【解決手段】レーザー加工装置は、レーザー光線照射手段を備え、レーザー光線照射手段は、レーザー発振器22と、集光レンズ23と、レーザー発振器22のレーザー光線Lの進行方向下流で、かつ集光レンズ23の上流側に配設される第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26と、を備える。第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、それぞれ入射光の光軸LAX上に配設されレーザー光線Lを透過する光透過部材27と、光軸LAXに垂直な軸Q回りに光透過部材27を回転揺動させる回転部30とを有し、回転する光透過部材27にレーザー光線Lを透過させ、光透過部材27を透過する光の屈折作用によりレーザー光線Lの光軸LAXを平行に揺動させる。【選択図】図3
Description
本発明は、レーザー加工装置およびレーザー加工方法に関する。
一般に、半導体デバイスの製造工程において、被加工物としてのウエーハにレーザー光線を照射し、ウエーハにビアホールやレーザー加工溝を形成することが行われている。この種の製造工程では、レーザー加工をする際に、ガルバノスキャナ(レーザー光線揺動手段)等を用いて、走査用ミラーを軸回りに駆動させてレーザー光線の光軸を偏向している(例えば、特許文献1参照)。
ところで、この種のレーザー加工では、加工時間の短縮のために、レーザー光線の光軸を高速に偏心(平行に揺動)することが望まれている。しかし、走査用ミラーを用いた構成では、レーザー光線の光軸を偏心するための構成が煩雑になる傾向にあり、この傾向は、走査用ミラーを高速に駆動させるほど強くなる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、レーザー光線の光軸を偏心できるレーザー加工装置およびレーザー加工方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被加工物を保持する保持手段と、レーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持手段およびレーザー光線照射手段を制御する制御部と、を備えるレーザー加工装置であって、レーザー光線照射手段は、レーザー光線発振手段と、レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して被加工物に導く集光レンズと、レーザー光線発振手段のレーザー光線の進行方向下流で、かつ集光レンズの上流側に配設されるレーザー光線揺動手段と、を備え、レーザー光線揺動手段は、入射光軸に配設されレーザー光線を透過する光透過部材と、入射光軸に垂直な軸回りに光透過部材を回転揺動させる回転部とを有し、回転する光透過部材にレーザー光線を透過させ、光透過部材を透過する光の屈折作用によりレーザー光線の光軸を平行に揺動させることを特徴とする。
この構成によれば、回転する光透過部材にレーザー光線を透過させ、光透過部材を透過する光の屈折作用によりレーザー光線の光軸を平行に揺動させるため、例えば、走査用ミラーを用いたものと比べて、レーザー光線の光軸を簡易な構成で偏心することができる。
また、レーザー光線揺動手段を二以上備え、各入射光軸に光透過部材が配設されてもよい。
また、二以上の光透過部材を同位相で同期して揺動させてもよい。
また、二以上の光透過部材を所定の位相差で揺動させてもよい。
また、本発明は、被加工物をレーザー加工するレーザー加工方法であって、被加工物を保持手段に保持する段階と、レーザー光線発振手段を駆動してレーザー光線を発振する段階と、発振されたレーザー光線をレーザー光線発振手段のレーザー光線の進行方向下流に配設され、レーザー光線の入射光軸に垂直な軸回りに回転揺動することにより一以上の光透過部材を透過させ光透過部材を透過する光の屈折作用により光軸を平行揺動させる段階と、平行揺動されたレーザー光線を被加工物に照射する段階と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、回転する光透過部材にレーザー光線を透過させ、光透過部材を透過する光の屈折作用によりレーザー光線の光軸を平行に揺動させるため、簡易な構成で、レーザー光線の光軸を偏心することができる。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
図1は、本実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示されたレーザー加工装置の加工対象のウエーハ等を示す斜視図である。図3は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザー光線照射手段の構成例を示す図である。図4は、図3に示されたレーザー光線照射手段が備えるレーザー光線揺動手段の回転部の構成例を模式的に示す図である。図5−1は、図3に示されたレーザー光線照射手段が備えるレーザー光線揺動手段の光透過部材を示す図である。図5−2は、図5−1に示された光透過部材を反時計回りに回転させた際に、光透過部材を透過したレーザー光線の光軸が揺動した状態を示す図である。図5−3は、図5−1に示された光透過部材を時計回りに回転させた際に、光透過部材を透過したレーザー光線の光軸が揺動した状態を示す図である。図6は、図3に示されたレーザー光線照射手段が備えるレーザー光線揺動手段で揺動されたレーザー光線が被加工物を穿孔する状態を示す断面図である。図7は、本実施形態に係るビアホールの形成方法によりビアホールが形成されたウエーハを示す平面図である。図8は、図7中のVIII部を拡大して示す平面図である。
本実施形態に係るレーザー加工装置1は、被加工物としてのウエーハWに対して、レーザー光線を照射することにより、ウエーハWを穿孔する装置である。本実施形態では、ウエーハWを穿孔する構成について説明するが、ウエーハWに対してレーザー溝加工をすることも可能である。
レーザー加工装置1により穿孔されるウエーハWは、図2および図7に示すように、実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハWは、表面WSに格子状に形成される複数の分割予定ラインStよって区画された領域にデバイスDが形成されている。ウエーハWは、分割予定ラインStに沿って切断することにより、デバイスDが形成された領域を分割して、個々の半導体チップに製造される。ウエーハWは、デバイスDが複数形成されている表面WSに粘着テープTが貼着され、粘着テープTの外縁が環状フレームFに貼着されることで、環状フレームFの開口に粘着テープTで支持される。ウエーハWは、表面WSの裏側の裏面WR側からデバイスDのボンディングパッドPD(図6に示す)に達する孔であるビアホールVH(図8に示す)が形成される。
レーザー加工装置1は、ウエーハWの表面WSにおけるボンディングパッドPDが形成された位置の裏面WRからボンディングパッドPDに達するビアホールVHを形成するものである。レーザー加工装置1は、図1に示すように、ウエーハWを保持するチャックテーブル(保持手段)10と、チャックテーブル10に保持されたウエーハWの裏面WRからビアホールVHを形成するために、レーザー光線L(図3に示す)を照射するレーザー光線照射手段20と、X軸移動手段40と、Y軸移動手段50と、制御部100とを少なくとも備える。
チャックテーブル10は、加工前のウエーハWが保持面10a上に載置されて、粘着テープTを介して環状フレームFの開口に貼着されたウエーハWを保持するものである。チャックテーブル10は、保持面10aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面10aに載置されたウエーハWを粘着テープTを介して吸引することで保持する。なお、チャックテーブル10は、X軸移動手段40によりX軸方向に加工送りされ、かつ回転駆動源(図示せず)により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転されるとともに、Y軸移動手段50によりY軸方向に割り出し送りされる。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動してウエーハWの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部11が複数設けられている。
レーザー光線照射手段20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWに対し、ウエーハWが吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザー光線Lを照射し、ウエーハWの裏面WR側からビアホールVHを形成するものである。即ち、レーザー光線照射手段20は、ウエーハWの裏面WR側に吸収性を有する波長のレーザー光線Lを照射して、ウエーハWにアブレーション加工を施すものである。なお、レーザー光線Lの波長は、上記した355nmの他に、532nmや267nmを使用することが可能である。
レーザー光線照射手段20は、図3に示すように、装置本体2の柱部3に支持されたケーシング21(図1に示す)と、レーザー発振器(レーザー光線発振手段)22と、集光レンズ23と、第1の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)25と、第2の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)26と、ミラー24とを備える。
レーザー発振器22は、ウエーハWが吸収性を有する波長のレーザー光線Lを発振する。集光レンズ23は、チャックテーブル10の保持面10aに対向してケーシング21の先端部に設けられている。集光レンズ23は、レーザー発振器22から発振されたレーザー光線Lを集光してチャックテーブル10に保持されたウエーハWに導くものである。また、集光レンズ23として、F−Θレンズ、望ましくはテレセントリックF−Θレンズを用いることができる。本実施形態では、レーザー加工装置1は、集光レンズ23として、テレセントリックF−Θレンズを用いる。
第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、いわゆるスキャナ装置である。第1の光軸偏心手段25は、図3に示すように、レーザー発振器22のレーザー光線Lの進行方向下流に配設され、レーザー光線Lの光軸LAXを、該光軸LAXの延びる方向(図中Y方向)に直交する第1軸方向(図中X軸方向)に平行に揺動させる。第1の光軸偏心手段25は、レーザー光線Lの入射側の光軸LAX上に配置されて該レーザー光線Lを透過する光透過部材27と、この光透過部材27を光軸LAXに垂直な第1軸Qz回りに回転揺動させる回転部30とを備える。回転部30は、第1軸Qz方向に延在して光透過部材27を回転自在に支持する支持軸12を備える。
また、第2の光軸偏心手段26は、第1の光軸偏心手段25よりもレーザー光線Lの進行方向下流で、かつ集光レンズ23の進行方向上流側に配設され、レーザー光線Lの光軸LAXを、該光軸LAXの延びる方向(図中Y方向)および第1軸方向にそれぞれ直交する第2軸方向(図中Z軸方向)に平行に揺動させる。第2の光軸偏心手段26は、レーザー光線Lの入射側の光軸LAX上に配置されて該レーザー光線Lを透過する光透過部材27と、この光透過部材27を光軸LAXおよび第1軸Qzにそれぞれ垂直な第2軸Qx回りに回転揺動させる回転部30とを備える。回転部30は、第2軸Qx方向に延在して光透過部材27を回転自在に支持する支持軸12を備える。第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、回転部30が備える支持軸12の延在方向が異なるだけで装置構成は同一であるので同一の符号を付す。ミラー24は、第2の光軸偏心手段26と集光レンズ23との間に配置され、光透過部材27を透過したレーザー光線Lの光軸LAXを集光レンズ23に向けて反射する。
回転部30は、支持軸12を介して、光透過部材27を軸回りに共振運動させる機能を有する。回転部30は、図4に示すように、支持軸12の軸Qに直交して延びる腕部15と、この腕部15にそれぞれ空間を空けて巻き付けられるコイル31a,31bと、これらコイル31a,31bに交流電力を印加する電源部32と、腕部15の先端部15a,15bにそれぞれ配置される磁石32a,32bとを備えて構成される。コイル31a,31bは、軸Qを挟んで延びる腕部15にそれぞれ1本の電線を巻き付けて構成される。
電源部32は、コイル31a,31bに所定周波数(励振周波数)の交流電力を印加する。コイル31a,31bには、上記した所定周波数で電流の流れ方向が切り換えられることにより、この電流の向きに応じた磁場が生じる。このため、コイル31a,31bの巻かれた腕部15の先端部15a,15bは、それぞれ所定周波数に応じて磁極がS極からN極へと交互に切り換えられる。磁石32a,32bは、複数(本実施形態では3つ)の磁石を組み合わせて構成される。磁石32aは、腕部15の先端部15aを挟んでN極32aNとS極32aSとが対向するように配置される。また、磁石32bは、腕部15の先端部15bを挟んでN極32bNとS極32bSとが対向するように配置される。これらN極32aN,32bNは、それぞれ腕部15により区切られた空間の同じ側に位置し、S極32aS,32bSは、それぞれN極32aN,32bNとは反対側に位置している。
コイル31a,31bに所定周波数(励振周波数)の交流電力を印加すると、腕部15の先端部15a,15bに生じた磁極と磁石32a,32bの磁力とにより、支持軸12は軸Qを中心に周方向(矢印K方向)に共振(励振)する。
このため、第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、図3に示すように、それぞれ光透過部材27が第1軸Qzもしくは第2軸Qxを中心に共振(励振)する。本実施形態では、回転部30は、所定周波数(例えば1〜10kHz)で光透過部材27を共振している。この所定周波数は、一般に、ガルバノスキャナを駆動させる際の駆動周波数(例えば数十〜数百Hz)に比べて高速であるため、ガルバノスキャナと比べて、レーザー光線Lの光軸LAXの揺動を高速に行うことができる。
本実施形態では、回転部30は、腕部15の先端部15a,15bにそれぞれ磁石32a,32bを配置した構成としたが、磁石32a,32bに替えて鉄芯を配置する構成としてもよい。
光透過部材27は、レーザー光線Lを透過する材料で形成された矩形板状の部材である。光透過部材27を形成する材料は、例えば、ガラス、石英等、レーザー光線Lの波長に対して透過率が95%以上となる材料が用いられ、本実施形態ではガラスが用いられている。光透過部材27は、図5−1に示すように、レーザー光線Lが入射する入射面27A側に形成された反射防止膜28を備える。反射防止膜28は、レーザー光線Lが光透過部材27の入射面27Aで反射することを抑制するため、レーザー光線Lの透過率を99%以上とすることが可能となる。
光透過部材27は、レーザー光線Lが透過する方向に所定の厚みtを有して形成される。この厚みtは、レーザー光線Lが屈折した際に揺動するシフト量に関連する。本実施形態では、ガラスを用いた際の厚みtは10mmに設定されている。
光透過部材27は、上述したように、回転部30の支持軸12に支持され、この支持軸12の軸Q回りに回転する。基準状態では、図5−1に示すように、光透過部材27は、幅方向に延びる基準線A0がレーザー光線Lと直交する位置にある。この基準状態では、光透過部材27の入射面27Aがレーザー光線Lと直交するため、レーザー光線Lの光軸LAXは屈折せずにそのまま光透過部材27を透過する。
また、図5−2に示すように、光透過部材27を第1基準線A1まで反時計回り方向K1に回転させると、この第1基準線A1と基準線A0との回転角θ1が入射角に相当する。この場合の屈折角θ2は、光透過部材27の屈折率n(例えばガラスの屈折率nは1.5)と回転角θ1とから、
sinθ1/sinθ2=n (1)
に示すスネルの法則によって算出できる。
sinθ1/sinθ2=n (1)
に示すスネルの法則によって算出できる。
また、光透過部材27に入射するレーザー光線Lの延長線L0と、光透過部材27を透過したレーザー光線Lの光軸LAXとのシフト量Sは、
S=(t/cosθ2)×sin(θ1−θ2) (2)
に示す(2)式で算出できる。
S=(t/cosθ2)×sin(θ1−θ2) (2)
に示す(2)式で算出できる。
同様に、図5−3に示すように、光透過部材27を第2基準線A2まで時計回り方向K2に回転させると、この第2基準線A2と基準線A0との回転角θ1が入射角に相当する。このため、屈折角θ2およびシフト量Sは、上記した式(1)、(2)によって算出できる。
このように、回転する光透過部材27にレーザー光線Lを透過させることにより、光透過部材27を透過する際の光の屈折作用を用いて、レーザー光線Lの光軸LAXを平行に揺動させることができる。このため、例えば、走査用ミラーを用いた構成と比較して、レーザー発振器22から集光レンズ23を介してウエーハWまでレーザー光線Lを導く光路の構成を簡素化することができ、レーザー光線Lの光軸LAXを容易に平行に揺動させることができる。
また、本実施形態では、レーザー光線照射手段20は、上記した第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26を備え、これら第1の光軸偏心手段25と第2の光軸偏心手段26とを所定の位相差(90°)に固定して励振させている。この構成により、第2の光軸偏心手段26の光透過部材27を透過したレーザー光線Lは、円状の軌跡を描くため、図6に示すように、ウエーハWの裏面WRにビアホールVHの穿孔(トレパニング)加工を行うことができる。また、第1の光軸偏心手段25または第2の光軸偏心手段26を駆動させることにより、ウエーハWの裏面WRに直線状のレーザー溝を形成する加工をすることもできる。
上述したように、レーザー光線Lの光軸LAXのシフト量Sは、光透過部材27の屈折率n、厚みt、回転角θ1(振れ角)等により変更することが可能である。このため、屈折率nの高い材料を使用すれば、同一のシフト量Sを保持しつつ、光透過部材27の厚みtを薄くすることができる。光の透過率を特別に考慮しなければ、例えば、サファイアの屈折率nは、1.7程度であるため、ガラスよりも、光透過部材27を薄くすることができる。光透過部材27を薄くすれば、その分、光透過部材27の軽量化を図ることができるため、該光透過部材27を高速に回転振動させることができ、結果として加工速度の向上を図ることができる。
また、光透過部材27として、例えば、ダイヤモンドを用いることもできる。ダイヤモンドの屈折率nは2以上であり、サファイアよりも更に屈折率nが大きい。更に、ダイヤモンドは、ヤング率と密度で規定される比剛性の値がガラスやサファイアよりも大きいため、光透過部材27を高速(例えば、10kHz以上の高周波)で駆動させた場合に、光透過部材27の歪みを抑制することができる。このため、光透過部材27を高速に回転振動させた場合においても、レーザー光線Lのシフト量Sの変動を抑えることができる。ただし、サファイアおよびダイヤモンドは、ガラスと比べて、透過率が低いため、加工する際のレーザー光線Lの利用効率を重要視する観点から透過率を重視することが好ましい。このため、本実施形態では光透過部材27としてガラスを用いている。
次に、本実施形態に係るレーザー加工方法を説明する。ここでは、ウエーハWの裏面WRにレーザー光線Lを照射して、ボンディングパッドPDに達するビアホールVHを形成する方法を説明する。
まず、オペレータが加工内容情報を制御部100に登録し、オペレータがレーザー光線照射手段20から離間したチャックテーブル10の保持面10a上にウエーハWを載置し、加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工装置1が加工動作を開始する。加工動作では、制御部100は、チャックテーブル10の保持面10aにウエーハWを吸引保持し、クランプ部11で環状フレームFを挟持する。制御部100は、X軸移動手段40およびY軸移動手段50によりチャックテーブル10をレーザー光線照射手段20の下方に向かって移動して、レーザー光線Lの図示しない撮像手段の下方にチャックテーブル10に保持されたウエーハWを位置付け、撮像手段に撮像させる。撮像手段は、撮像した画像の情報を制御部100に出力する。そして、制御部100が、パターンマッチング等の画像処理を実施し、ウエーハWにビアホールVHを形成する位置を割り出した後、割り出した位置の一つにビアホールVHを形成できるように、チャックテーブル10に保持されたウエーハWとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整する。
そして、制御部100は、レーザー発振器22からレーザー光線Lを発振させ、発振されたレーザー光線Lを第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26の各光透過部材27に導く。この場合、第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、所定の位相差(90°)に固定された状態で、所定周波数(例えば1〜10kHz)で光透過部材27を回転(励振)する。第2の光軸偏心手段26の光透過部材27を透過したレーザー光線Lは、円状の軌跡を描きながら集光レンズ23で集光され、ウエーハWの裏面WRに照射される。そして制御部100は、図6および図8に示すように、ウエーハWの裏面WR側からビアホールVHを形成する。
制御部100は、一つのビアホールVHを形成すると、レーザー光線Lの発振を停止した後、次のビアホールVHを形成できるように、チャックテーブル10に保持されたウエーハWとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整した後、先程と同様にビアホールVHを形成する。制御部100は、全てのビアホールVHを形成すると、レーザー光線Lの発振を停止して、チャックテーブル10をレーザー光線照射手段20から離間した位置に移動させた後、チャックテーブル10の吸引保持およびクランプ部11の挟持を解除する。そして、オペレータがすべてのビアホールVHが形成されたウエーハWをチャックテーブル10上から取り除くとともに、ビアホールVH形成前のウエーハWを再度、チャックテーブル10上に載置し、前述の工程を繰り返して、ウエーハWにビアホールVHを形成する。
次に、変形例に係るビアホールVHの形成方法を説明する。上記した実施形態では、レーザー光線Lが、円状の軌跡を描きながら集光レンズ23で集光されることで1つのビアホールVHを1つずつ形成している。この変形例では、制御部100は、光透過部材27の回転角θ1に応じた所定のタイミングでレーザー光線Lを発振させ、その偏心したレーザー光線をスキャナ等で走査し照射位置を変更することで、複数のビアホールVHを並行して形成する。例えば、制御部100は、図5−2、図5−3に示すように、光透過部材27を軸Q回りに回転させた状態で、所定のシフト量Sが得られるタイミング、すなわち、光透過部材27の回転角θ1が所定角度になったタイミングで、レーザー発振器22からレーザー光線Lを間欠的に発振する。このレーザー光線Lは、入射光軸LAXからそれぞれシフト量Sだけ平行に揺動した2本のレーザー光線Lとなり、この2本のレーザー光線Lはガルバノスキャナや音響光学素子(AOD)等により照射位置が変更され、ウエーハWの裏面WRに照射されて、この裏面WRに2つのビアホールVHを形成する。なお、この変形例では、光透過部材27の回転角θ1が所定角度になったタイミングでレーザー発振器22からレーザー光線Lを発振しているが、発振のタイミングは所望するビアホールVH間のピッチ、形成するビアホールの数等に応じて適宜変更できる。
この構成では、第1の光軸偏心手段25及び第2の光軸偏心手段26の光透過部材27を回転させることで、X軸方向またはY軸方向に沿ったビアホールVHを形成できる。さらに、光透過部材27を回転(振動)に合わせて、ガルバノスキャナやAODを用いることにより、複数のビアホールVHを並列的に形成できる。ここで、第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26を、位相差を90°に固定した状態で、光透過部材27の回転角θ1に応じた所定のタイミングでレーザー光線Lを発振させることにより、真円状のビアホールVHを並行して形成することもできる。
以上、本実施形態によれば、ウエーハWを保持するチャックテーブル10と、レーザー光線Lを照射するレーザー光線照射手段20と、チャックテーブル10およびレーザー光線照射手段20を制御する制御部100と、を備え、レーザー光線照射手段20は、レーザー発振器22と、レーザー発振器22から発振されたレーザー光線Lを集光してウエーハWに導く集光レンズ23と、レーザー発振器22のレーザー光線Lの進行方向下流で、かつ集光レンズ23の上流側に配設される第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26と、を備え、第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、それぞれ、入射光の光軸LAX上に配設されレーザー光線Lを透過する光透過部材27と、光軸LAXに垂直な軸Q回りに光透過部材27を回転揺動させる回転部30とを有するため、回転する光透過部材27にレーザー光線Lを透過させ、光透過部材27を透過する光の屈折作用によりレーザー光線Lの光軸LAXを平行に揺動させることができる。このため、例えば、走査用ミラーを用いた構成と比較して、レーザー発振器22から集光レンズ23を介してウエーハWまでレーザー光線Lを導く光路の構成を簡素化することができ、レーザー光線Lの光軸LAXを容易に平行に揺動させることができる。
また、本実施形態によれば、回転部30は、光透過部材27を軸回りに所定周波数(例えば1〜10kHz)で光透過部材27を共振している。この所定周波数は、例えば、ガルバノスキャナを駆動させる際の駆動周波数(例えば数十〜数百Hz)に比べて高速であるため、ガルバノスキャナと比べて、レーザー光線Lの光軸LAXの揺動を高速に行うことができ、結果として加工時間の短縮を実現できる。
また、本実施形態によれば、少なくとも2つの第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26を備え、これら第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26がそれぞれレーザー光線Lの入射光の光軸LAX上に設けられているため、これら第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26の各光透過部材27を共振させることで、レーザー光線Lの光軸LAXを容易に平行に揺動させることができる。
さらに、第1の光軸偏心手段25の第1軸Qzおよび第2の光軸偏心手段26の第2軸Qxを、レーザー光線Lの光軸LAXに対し、相互に直交するように設けることにより、レーザー光線Lを、該レーザー光線Lに直交する面状に容易に揺動させることができる。
また、本実施形態によれば、第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、所定の位相差(例えば90°)に固定された状態で、光透過部材27を軸回りに揺動させるため、第2の光軸偏心手段26の光透過部材27を透過したレーザー光線Lは、円状の軌跡を描きながら集光レンズ23で集光されることにより、ウエーハWに容易にビアホールVH(穿孔)を形成することができる。
次に、別の実施形態について説明する。図9は、別の実施形態に係るレーザー光線揺動手段の構成例を示す図である。また、図10は、図9に示すレーザー光線揺動手段の光透過部材を反時計回りに回転させた際に、光透過部材を透過したレーザー光線の光軸が揺動した状態を示す図である。この別の実施形態において、上記した実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
上記した実施形態では、第1の光軸偏心手段25および第2の光軸偏心手段26は、それぞれ一組の光透過部材27及び回転部30を備える構成とした。これに対して、別の実施形態では、第1の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)125は、複数組(図9では5組)の光透過部材27及び回転部30と、これら各回転部30を統括して駆動させる同期制御部101とをユニット化した偏心ユニット120を備えて構成される。また、第2の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)126についても同等の構成を有する。
複数の光透過部材27は、すべてレーザー光線Lの光軸LAX上に配設されている。また、複数の回転部30は、制御ライン102を介して、同期制御部101に並列に接続されている。同期制御部101は、制御部100の制御下、各回転部30を独立して制御することが可能となっている。上述したように、レーザー光線Lの光軸LAXのシフト量Sは、光透過部材27の屈折率nと厚みtにより変更される。この場合、シフト量Sを大きくするためには、光透過部材27の厚みtを厚くする必要があり、光透過部材27の厚みtを厚くすると、該光透過部材27の重量が重くなるため、高速に回転させることが困難となっていた。
別の実施形態では、第1の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)125は、複数組(図9では5組)の光透過部材27及び回転部30と、これら各回転部30を統括して駆動させる同期制御部101とを備えている。同期制御部101は、各回転部30をそれぞれ同一周波数(例えば、1kHz)により同位相で同期して駆動させている。この構成によれば、図10に示すように、レーザー光線Lは、光透過部材27でそれぞれ屈折することにより、最下流の光透過部材27を透過した際には、レーザー光線Lの光軸LAXのシフト量Sを大きく平行に揺動することができる。このため、各光透過部材27の厚みt(図5−1参照)を厚くすることなく、シフト量Sを大きくすることができる。
この構成では、レーザー光線Lの進行方向の下流側に位置する光透過部材27ほど、シフト量Sが大きくなる。このため、下流側に位置する光透過部材27は、図10に示すように、光透過部材27におけるレーザー光線Lの光軸LAXに直交する幅D2を、上流側に位置する光透過部材27の幅D1よりも大きくしておくことが好ましい。これにより、レーザー光線Lが光透過部材27を外れて通過することが防止される。
この別の実施形態では、光透過部材27は、ガラスを用いているが、ガラスよりも屈折率nの大きなサファイアやダイヤモンドを用いてもよい。この構成では、所望のシフト量Sを得るための光透過部材27の枚数を低減することができ、結果として、コスト削減および装置の小型化を実現できる。
また、この別の実施形態では、同期制御部101は、すべての回転部30(光透過部材27)を同一周波数で駆動しているが、これに限るものではない。例えば、5つの回転部30(光透過部材27)のうち、3つを駆動させ、残りの2つは基準状態で止めていてもよい。この構成では、所望のシフト量Sに容易に調整することができる。また、回転部30(光透過部材27)の周波数を変更することもでき、例えば、レーザー光線Lの進行方向の上流側の2つの回転部30(光透過部材27)を1kHzで駆動させ、次の2つの回転部30を2kHzで駆動させ、最下流の回転部30を5kHzで駆動させてもよい。この構成によれば、レーザー光線Lの波形としてサイン波以外の波形を得ることができ、レーザー加工に適した波形を形成することができる。
また、この別の実施形態では、複数組の光透過部材27および回転部30と、これら各回転部30を統括して駆動させる同期制御部101とをユニット化した偏心ユニット120を備えているため、これら偏心ユニット120を複数組み合わせて、偏心ユニット120ごと制御することもできる。
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル(保持手段)
20 レーザー光線照射手段
22 レーザー発振器(レーザー光線発振手段)
23 集光レンズ
25 第1の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)
26 第2の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)
27 光透過部材
30 回転部
100 制御部
101 同期制御部
W ウエーハ(被加工物)
L レーザー光線
LAX 光軸
n 屈折率
10 チャックテーブル(保持手段)
20 レーザー光線照射手段
22 レーザー発振器(レーザー光線発振手段)
23 集光レンズ
25 第1の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)
26 第2の光軸偏心手段(レーザー光線揺動手段)
27 光透過部材
30 回転部
100 制御部
101 同期制御部
W ウエーハ(被加工物)
L レーザー光線
LAX 光軸
n 屈折率
Claims (5)
- 被加工物を保持する保持手段と、レーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、前記保持手段および前記レーザー光線照射手段を制御する制御部と、を備えるレーザー加工装置であって、
前記レーザー光線照射手段は、レーザー光線発振手段と、前記レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して被加工物に導く集光レンズと、前記レーザー光線発振手段のレーザー光線の進行方向下流で、かつ前記集光レンズの上流側に配設されるレーザー光線揺動手段と、を備え、
前記レーザー光線揺動手段は、入射光軸に配設されレーザー光線を透過する光透過部材と、前記入射光軸に垂直な軸回りに前記光透過部材を回転揺動させる回転部とを有し、
回転する前記光透過部材にレーザー光線を透過させ、前記光透過部材を透過する光の屈折作用によりレーザー光線の光軸を平行に揺動させる、レーザー加工装置。 - 前記レーザー光線揺動手段を二以上備え、各入射光軸に前記光透過部材が配設される請求項1に記載のレーザー加工装置。
- 前記二以上の光透過部材を同位相で同期して揺動させる請求項2に記載のレーザー加工装置。
- 前記二以上の光透過部材を所定の位相差で揺動させる請求項2に記載のレーザー加工装置。
- 被加工物をレーザー加工するレーザー加工方法であって、
被加工物を保持手段に保持する段階と、
レーザー光線発振手段を駆動してレーザー光線を発振する段階と、
発振された前記レーザー光線を前記レーザー光線発振手段のレーザー光線の進行方向下流に配設され、前記レーザー光線の入射光軸に垂直な軸回りに回転揺動することにより一以上の光透過部材を透過させ前記光透過部材を透過する光の屈折作用により前記光軸を平行揺動させる段階と、
前記平行揺動されたレーザー光線を前記被加工物に照射する段階と、
を含むレーザー加工方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016049637A JP2017164754A (ja) | 2016-03-14 | 2016-03-14 | レーザー加工装置およびレーザー加工方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019041808A (ja) * | 2017-08-29 | 2019-03-22 | 株式会社三洋物産 | 遊技機 |
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- 2016-03-14 JP JP2016049637A patent/JP2017164754A/ja active Pending
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