以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
図1は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法の概略を示すフロー図である。図1に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析方法は、コンピュータを用いて分子動力学法により作成した複合材料の解析用モデルを用いた複合材料の解析方法である。この複合材料の解析方法は、第1粒子によってモデル化した複数の第1物質モデル中に、第2粒子によってモデル化した複数の第2物質モデルを配置した複合材料の解析用モデルを作成する第1ステップST11と、解析用モデルに相互作用を設定して数値解析を実行する第2ステップST12と、数値解析後の第2物質モデルの基準座標に基づいて、複数の第2物質モデル間のモデル間距離を算出する第3ステップST13とを含む。
図2は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法で作成される解析用モデル1の一例を示す概念図である。図2に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデル1は、例えば、一辺の長さが距離Lの略立方体形状の仮想空間であるモデル作成領域A内に配置されてモデル化される。解析用モデル1は、複数のフィラー粒子(第2粒子)11a、12aがモデル化されてなる一対の第1フィラーモデル(第2物質モデル)11及び第2フィラーモデル(第2物質モデル)12と、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の周囲に配置され、複数のポリマー粒子(第1粒子)21aとポリマー粒子21a間を連結する結合鎖21bとがモデル化されてなる複数のポリマーモデル(第1物質モデル)21とを有する。第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12は、複数のポリマーモデル21中に相互に離間して配置される。図2に示す例では、2つの第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12と、複数のポリマーモデル21とを示しているが、解析用モデル1は、モデル作成領域A内に作成された複数のフィラーモデル及び複数のポリマーモデルを有する。また、モデル作成領域Aは、必ずしも略立方体形状の仮想空間である必要はなく、球状、楕円状、直方体形状、多面体形状など任意の形状としてもよい。なお、本実施の形態では、解析対象となる複合材料が充填剤であるフィラーモデル及び高分子材料であるポリマーを含有する例について説明するが、本発明は、2種類の以上の物質を含有する複合材料にも適用可能である。また、本発明は、ポリマー及びフィラー以外を含有する各種複合材料にも適用可能である。
第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12は、複数のフィラー粒子11a、12aがそれぞれ略球状体に集合した状態でモデル化される。また、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12は、互いに所定間隔をとって離れた状態で配置されている。なお、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12とは、相互に凝集した状態で外縁部が共有結合によって相互に連結されていてもよい。
フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどが含まれる。フィラー粒子11a、12aは、複数のフィラーの原子が集合されてモデル化される。また、フィラー粒子11a、12aは、複数のフィラー粒子11a、12aが集合してフィラー粒子群を構成する。フィラー粒子11a、12aは、複数のフィラー粒子11a、12a間の結合鎖(不図示)によって相対位置が特定されている。この結合鎖(不図示)は、フィラー粒子11a、12a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各フィラー粒子11a、12a間を拘束している。結合鎖は、フィラー粒子11a、12aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。このフィラーモデル11、12は、フィラーを分子動力学で取り扱うための数値データ(フィラー粒子11a、12aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。フィラーモデル11、12の数値データは、コンピュータに入力される。
ポリマーとしては、例えば、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどが含まれる。ポリマー粒子21aは、複数のポリマーの原子が集合されてモデル化される。また、ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21aが集合してポリマー粒子群を構成する。ポリマーには、フィラーとの親和性を高める変性剤が必要に応じて配合される。この変性剤としては、例えば、水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などが含まれる。ポリマーモデル21は、複数のポリマー原子及び複数のポリマー原子の集合体であるポリマー粒子21aがモデル作成領域A内に所定密度で充填されてモデル化される。ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21a間の結合鎖21bによって相対位置が特定されている。この結合鎖21bは、ポリマー粒子21a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各ポリマー粒子21a間を拘束している。結合鎖21bは、ポリマー粒子21aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。このポリマーモデル21は、ポリマーを分子動力学で取り扱うための数値データ(ポリマー粒子21aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。ポリマーモデル21の数値データは、コンピュータに入力される。
次に、本実施の形態に係る複合材料の解析方法について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法の一例を示す説明図である。なお、図3においては、図2に示した第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間の部分を拡大して模式的に示している。図3に示すように、複合材料の解析方法では、モデル作成領域A内の所定の解析対象領域A1内に配置された一対の第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離に基づいて、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を解析する。図3に示す例では、このモデル距離は、第1フィラーモデル11の第1基準座標C1及び第2フィラーモデル12の第2基準座標C2を設定し、設定した第1基準座標C1と第2基準座標C2との間の重心点間距離D1に基づいて算出される。図3に示す例では、第1基準座標C1は、複数のフィラー粒子11aによって構成される第1フィラーモデル11の重心点(重心座標)P1に設定する。また、第2基準座標C2は、複数のフィラー粒子12aによって構成される第2フィラーモデル12の重心点(重心座標)P2に設定する。
重心点P1は、第1フィラーモデル11の重心点P1を含む領域に存在するフィラー粒子11aに設定してもよく、重心点P1にフィラー粒子11aが存在しない場合には、重心点P1と一致する座標の特定点に設定してもよい。同様に、重心点P2は、第2フィラーモデル12の重心点P2を含む領域に存在するフィラー粒子12aに設定してもよく、重心点P2にフィラー粒子12aが存在しない場合には、重心点P2と一致する座標の特定点に設定してもよい。このように第1基準座標C1と第2基準座標C2を設定して重心点間距離D1を算出することにより、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12の形状などの影響を受けずに、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を正確に解析することができる。また、重心点P1の座標を含むフィラー粒子11a及び重心点P2の座標を含むフィラー粒子12aをそれぞれ特定することにより、解析用モデル1の変形解析などを実施した際には、所定解析時間後の第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を再度算出することなく、容易に解析を実施することが可能となる。
図4は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法の他の例を示す説明図である。なお、図4においては、図3に示した例と同様に、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12とを模式的に示している。図4に示す例では、まず、図3の例と同様に、第1フィラーモデル11の重心点P1を設定し、第2フィラーモデル12の重心点P2を設定する。次に、第1基準座標C1は、第1フィラーモデル11の重心点P1の近傍に存在する特定のフィラー粒子11aXに設定する。また、第2基準座標C2は、第2フィラーモデル12の重心点P2の近傍に存在する特定のフィラー粒子12aXに設定する。そして、設定した特定のフィラー粒子11aX及びフィラー粒子12aX間のフィラー粒子間距離D2に基づいて、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を解析する。このように、第1基準座標C1及び第2基準座標C2を設定することにより、例えば、解析用モデル1の変形解析などを実施した際には、第1フィラー粒子11aX及び第2フィラー粒子12aXの挙動を追跡することにより、所定解析時間後の第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を再度算出することなく、容易に解析を実施することが可能となる。また、図5に示すように、例えば、解析用モデル1の変形解析の際に、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12がそれぞれ回転運動(図5参照)をした場合であっても、回転運動後の第1フィラー粒子11aXが重心点P1の近傍に存在し、回転運動後の第2フィラー粒子12aXが重心点P2の近傍に存在する。これにより、回転運動の前後でフィラー粒子間距離D2の変化を小さくできるので、回転運動前後の第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を正確に解析することが可能となる。
図6は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法の別の例を示す説明図である。なお、図6においては、図3に示した例と同様に、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12とを模式的に示している。図6に示す例では、第1基準座標C1は、第1フィラーモデル11の表面の近傍に存在する特定のフィラー粒子11aYに設定する。また、第2基準座標C2は、第2フィラーモデル12の表面の近傍に存在する特定のフィラー粒子12aYに設定する。そして、設定した特定のフィラー粒子11aY及びフィラー粒子12aY間の表面間距離D3に基づいて、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を解析する。このように第1基準座標C1及び第2基準座標C2を設定することにより、例えば、解析用モデル1の変形解析などを実施した際には、第1フィラー粒子11aY及び第2フィラー粒子12aYの挙動を追跡することにより、所定解析時間後の第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を再度算出することなく、容易に解析を実施することが可能となる。このように第1基準座標C1及び第2基準座標C2を設定することにより、第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を算出することなく、表面間距離D3に基づいて第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を容易に解析することが可能となる。第1フィラー粒子11aYとしては、第1フィラーモデル11の表面に存在するフィラー粒子11aを特定してもよく、第1フィラーモデル11の表面に存在するフィラー粒子11aに隣接するフィラー粒子11aを特定してもよい。また、第2フィラー粒子12aYとしては、第2フィラーモデル12の表面に存在するフィラー粒子12aを特定してもよく、第2フィラーモデル12の表面に存在するフィラー粒子12aに隣接するフィラー粒子12aを特定してもよい。また、第1フィラー粒子11aY及び第2フィラー粒子12aYは、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の最外に存在する座標のフィラー粒子11a,12aを直接特定してもよい。
また、図6に示す例では、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の重心点P1及び重心点P2を特定し、重心点P1と重心点P2との間の重心点間距離D1(図3参照)を算出した後、重心点間距離D1から第1フィラーモデル11の半径r1及び第2フィラーモデル12の半径r2を差し引くことにより、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間の表面間距離D3を求めることができる。このようにして表面間距離D3を求めることにより、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間に介在するポリマーモデル21(図1参照)の厚みを求めることができるので、複合材料の材料特性をポリマーモデル21の厚さの観点から評価することも可能となる。
図7は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法の別の例を示す説明図である。なお、図7においては、図7に示す例では、モデル作成領域A内の所定の解析対象領域A1(以下、「第1解析対象領域A1」ともいう)内に配置された第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12と、第1解析対象領域A1に隣接する解析対象領域A2(以下、「第2解析対象領域A2」ともいう)とを模式的に示している。
図7に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析方法では、モデル作成領域Aの解析用モデル1は、第1解析対象領域A1内と第2解析対象領域A2内とで対応する構造を有する周期境界条件となる。このため、第1解析対象領域A1内の第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12と第2解析対象領域A2内の第1フィラーモデル111及び第2フィラーモデル112とは対応する構造を有する繰り返し等価なモデルとして存在する。そこで、図7に示す例では、図3に示した例と同様にして、第1解析対象領域A1内の第1基準座標C1を第1フィラーモデル11の重心点P1に設定すると共に、第2基準座標C2を第2フィラーモデル12の重心点P2に設定して重心点間距離D1を算出する。次に、同様にして、第2解析対象領域A2内の第1基準点座標1を第1フィラーモデル111の重心点P11に設定すると共に、第2基準座標C2を第2フィラーモデル112の重心点P12に設定し、第1解析対象領域A1内の重心点P2と第2解析対象領域A2内の重心点P11との間の重心点間距離D4を算出する。そして、第1解析対象領域A1内における重心点間距離D1と第1解析対象領域A1内と第2解析対象領域A2内の間の重心点間距離D4とを対比し、重心点間距離D1の方が小さければ、重心点間距離D1をフィラー間距離として設定し、重心点間距離D4の方が小さければ、重心点間距離D4をフィラー間距離として設定し、重心点間距離D1及び重心点間距離D4が等しければ、重心点距離D1及び重心点間距離D4のいずれか一方をフィラーモデル間距離として算出する。このように、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を算出することにより、周期境界条件下でモデル間距離を算出することができるので、解析対象領域A1,A2を小さくした条件下でモデル間距離を算出した場合であっても、モデル間距離を正確に算出することが可能となる。
ポリマーフィラー間に設定する相互作用は、フィラー粒子間、ポリマー粒子間及びフィラー粒子とポリマー粒子との間などが挙げられる。なお、相互作用は、これらの全てに設定する必要はなく、必要に応じて適宜設定することができる。フィラーモデル11、12とポリマーモデル21との間の相互作用は、分子間力及び水素結合などの化学的な引力などの相互作用を設定してもよく、フィラー粒子11a、12aとポリマー粒子21aとの間の結合などの物理的な相互作用を設定してもよい。また、ポリマーモデル21が複数種類のポリマー粒子21aで構成されている場合には、複数種類のポリマー粒子21a間に上述した化学的及び物理的な相互作用を設定してもよい。また、複数種類のポリマー粒子21aとフィラー粒子11a、12aとの間の相互作用は、必ずしも同一の相互作用を設定する必要はなく、例えば、ポリマー粒子21aAとフィラー粒子11a、12aとの間の相互作用と、ポリマー粒子21aBとフィラー粒子11a、12aとの間の相互作用とは相互に異なる相互作用を設定してもよい。また、数値解析としては、例えば、緩和解析、伸張解析、変温解析及び変圧解析などが挙げられる。なお、伸張解析を実行する場合には、少なくとも無変形状態を評価時間に含めることが好ましい。これにより、無変形状態の評価時間における解析結果と伸張解析後の解析結果とを比較することにより、伸張過程で剥がれた粒子数を評価することができる。
次に、本実施の形態に係る複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムについてより詳細に説明する。図8は、本実施の形態に係る複合材料の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
図8に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析方法は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータである解析装置50が実現する。この解析装置50は、入力手段53を備えた入出力装置51と電気的に接続されている。入力手段53は、複合材料の解析用モデルの作成対象であるポリマー及びフィラーの各種物性値、ポリマー及びフィラーを含有する複合材料を用いた伸張試験結果の実測結果、及び解析における境界条件などを処理部52又は記憶部54へ入力する。入力手段53としては、例えば、キーボード、マウスなどの入力デバイスが用いられる。
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:CentraL1 Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んでメモリに展開する。メモリに展開されたコンピュータプログラムは、各種処理を実行する。例えば、処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に係るデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、展開したデータに基づいて複合材料の解析用モデルの作成及び複合材料の解析用モデルを用いた複合材料の解析に関する各種処理を実行する。
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータに基づき、分子動力学法により複合材料の解析用モデル1を作成する際のフィラー及びポリマーなどの複合材料の粒子数、分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、反応時間、反応条件及び作成する解析用モデル1に含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などの粗視化モデルの設定、分子鎖間などの相互作用などの各種計算パラメーターの初期条件の設定を行う。
フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用を調整する計算パラメーターとしては、下記式(1)で表されるレナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを用い、これらが調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働いた引力、斥力を調整できる。なお、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用が一定値になるまで順次、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用のパラメーターを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で引力、斥力を調整できる。
条件設定部52bは、架橋解析、緩和解析、伸張解析、変温解析及び変圧解析などの各種数値解析などの各種解析条件を設定する。解析部52cは、条件設定部52bによって設定された解析条件に基づいてポリマーモデル21の架橋解析及び解析用モデル1の各種数値解析を実行する。また、解析部52cは、第1基準座標C1として、第1フィラーモデル11の重心点P1を設定し、第2基準座標C2として、第2フィラーモデル12の重心点P2を設定し、重心点P1と重心点P2との間の重心点間距離D1を第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離として算出する。また、解析部52cは、第1基準座標C1として、第1フィラーモデル11の重心点P1の近傍のフィラー粒子11aを特定して設定し、第2基準座標C2として、第2フィラーモデル12の重心点P2の近傍のフィラー粒子12aを特定して設定し、特定したフィラー粒子11aとフィラー粒子12aとの間のフィラー粒子間距離D2をモデル間距離として算出する。また、解析部52cは、第1基準座標C1として、第1フィラーモデル11の表面近傍のフィラー粒子11aを特定して設定し、第2基準座標C2として、第2フィラーモデル12の表面近傍のフィラー粒子12aを特定して設定し、特定したフィラー粒子11aとフィラー粒子12aとの間の表面間距離D3をモデル間距離として算出する。ここでは、解析部52cは、表面近傍のフィラー粒子11a及びフィラー粒子12aを、第1フィラーモデル11の重心点P1及び半径r1及び第2フィラーモデル12の重心点P2及び半径r2を用いて特定してもよい。そして、解析部52cは、算出したモデル間距離を用いて第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の分散及び配置を解析する。
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD−ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ、並びに、RAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
記憶部54には、入力手段53を介して解析対象となる複合材料の解析用モデルを作成するためのデータであるゴムカーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどのフィラーモデルのデータ、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどのポリマーモデルのデータ、予め設定した物理量履歴である応力ひずみ曲線及び本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料の解析方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る複合材料の解析方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
次に、再び図1を参照して、本実施の形態に係る複合材料の解析方法についてより詳細に説明する。まず、モデル作成部52aが、所定のモデル作成領域A内にポリマー粒子21aと結合鎖21bとを含む複数のポリマーモデル21、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデルを含む複合材料の解析用モデル1を作成する(ステップST11)。ここでは、モデル作成部52aは、必要に応じて第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12以外の複数のフィラーモデルを作成する。次に、モデル作成部52aは、初期条件の設定の後、平衡化計算を行う。平衡化計算では、所定の温度、密度及び圧力で、初期設定後の各種構成要素が平衡状態に到達する所定の時間、分子動力学計算を行う。また、モデル作成部52aは、必要に応じてポリマーにフィラーとの親和性を高める水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などの変性剤を配合してもよい。
次に、条件設定部52bが、モデル作成部52aで作成した複合材料の解析用モデル1を用いた分子動力学法による架橋解析、数値解析及び運動解析(シミュレーション)を実行するための各種条件を設定する。条件設定部52bは、入力手段53からの入力及び記憶部54に記憶されている情報に基づいて各種条件を設定する。各種条件としては、解析を実行するフィラーモデル11の位置及び数、フィラー原子、フィラー原子団、フィラー粒子11a,12a及びフィラー粒子群の位置及び数、フィラー粒子番号、ポリマーモデル21の分子鎖の位置及び数、ポリマー原子、ポリマー原子団、ポリマー粒子21a及びポリマー粒子群の位置及び数、ポリマー粒子番号、結合鎖21b及び結合鎖21bの位置及び数、結合鎖21bの番号、予め設定した物理量履歴である応力ひずみ曲線及び条件を変更しない固定値などが含まれる。
次に、解析部52cは、条件設定部52bによって設定された条件に基づいて、解析用モデル1に相互作用を設定して各種数値解析を実施する(ステップST12)、ここでの相互作用としては、例えば、フィラー粒子11a,12a間、ポリマー粒子21a間、フィラー粒子11a,12aとポリマー粒子21aとの間の相互作用及びフィラー粒子11a,12aとポリマー粒子21aとが結合鎖21bで結合した状態の相互作用が挙げられるが、これらの全てに設定する必要はない。また、解析部52cは、作成するポリマーモデル21の種類に応じて、例えば、第1のポリマーモデル21を構成するポリマー粒子21aとフィラー粒子11aとの間の第1相互作用と第2のポリマーモデル21を構成するポリマー粒子21aと当該フィラー粒子11aとの間の第2相互作用とを異なる相互作用として設定してもよい。また、数値解析としては、モデル作成部52aによって作成されたフィラーモデル11及びポリマーモデル21を含む複合材料の解析用モデル1を用いた分子動力学法による緩和解析、伸張解析、変温解析、変圧解析、及びせん断解析などの変形解析などの運動解析による数値解析などが挙げられる。
次に、解析部52cは、各種数値解析による運動解析の結果得られる運動変位及び公称応力又は運動変位を演算して得られる公称ひずみなどの各種物理量を取得する。このような数値解析により、解析時間毎に変化する解析用モデル全体のポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度、架橋点間と自由末端の速度、結合長及び配向などの物理量などのセグメントの状態変化を表す数値とひずみとの関係、解析時間毎に変化するポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と圧力又は解析時間との関係、及び解析時間毎に変化するポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と温度又は解析時間との関係などを評価できるので、ポリマー分子の局所的な分子状態変化のより詳細な解析が可能となる。
次に、解析部52cは、作成した解析用モデル1の第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を算出する。ここでは、解析部52cは、第1フィラーモデル11の第1基準座標C1及び第2フィラーモデル12の第2基準座標C2を設定し、設定した第1基準座標C1と第2基準座標C2との間の距離に基づいて第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を算出する。そして、解析部52cは、算出したモデル間距離に基づいて、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を解析する。また、解析部52cは、解析した複合材料の解析結果を記憶部54に格納する。
上述した実施の形態においては、解析部52cは、複数のフィラー粒子11aによって構成される第1フィラーモデル11の重心点P1に第1基準座標C1を設定し、複数のフィラー粒子12aによって構成される第2フィラーモデル12の重心点P2に第2基準座標C2を設定することが好ましい。これにより、複合材料の解析方法は、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の重心間距離D1に基づいてモデル間距離を算出するので、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離をより精度良くに解析することが可能となる。ここでは、解析部52cは、第1フィラーモデル11の重心点P1を含む領域に存在するフィラー粒子11aに重心座標を設定してもよく、重心点P1にフィラー粒子11aが存在しない場合には、重心点P1と一致する座標の特定点に重心座標を設定してもよい。同様に、解析部52cは、第2フィラーモデル12の重心点P2を含む領域に存在するフィラー粒子12aに重心座標を設定してもよく、重心点P2にフィラー粒子12aが存在しない場合には、重心点P2と一致する座標の特定点に重心座標設定してもよい。このように第1基準座標C1と第2基準座標C2を設定してモデル間距離を算出することにより、解析部52cは、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の形状などの影響を受けずに、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を正確に解析することができる。また、解析部52cは、重心点P1の座標を含むフィラー粒子11a及び重心点P2の座標を含むフィラー粒子12aをそれぞれ特定することにより、解析用モデル1の変形解析などを実施した際には、所定解析時間後の第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を再度算出することなく、容易に解析を実施することが可能となる。
また、上述した実施の形態においては、解析部52cは、第1フィラーモデル11の重心点P1の近傍に存在する特定のフィラー粒子11aXに第1基準座標C1を設定し、第2フィラーモデル12の重心点P2の近傍に存在する特定のフィラー粒子12aXに第2基準座標C2を設定する。そして、解析部52cは、設定した特定のフィラー粒子11aX及びフィラー粒子12aX間のフィラー粒子間距離D2に基づいて、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12のモデル間距離を算出して配置及び分散を解析することが好ましい。これにより、解析部52cは、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の重心座標の近傍のフィラー粒子11a,12aを特定することにより、仮想空間A内における第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の基準座標C1,C2を解析毎に算出することなく、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12のモデル間距離を順次算出することができるので、計算の負荷を低減して第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12のモデル間距離を容易に算出することが可能となる。また解析部52cは、例えば、解析用モデル1の変形解析などを実施した際に、第1フィラー粒子11aX及び第2フィラー粒子12aXの挙動を追跡することにより、所定解析時間後の第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を再度算出することなく、容易に解析を実施することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態においては、解析部52cは、第1フィラーモデル11の表面の近傍に存在する特定のフィラー粒子11aYに第1基準座標C1を設定し、第2フィラーモデル12の表面の近傍に存在する特定のフィラー粒子12aYに第2基準座標C2を設定し、設定した特定のフィラー粒子11aY及びフィラー粒子12aY間の表面間距離D3に基づいて、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を解析してもよい。これにより、解析部52cは、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の表面のフィラー粒子11a,12aに基づいてモデル間距離を算出するので、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12間のモデル間距離をより精度良く解析することが可能となる。また解析部52cは、このように第1基準座標C1及び第2基準座標C2を設定することにより、例えば、解析用モデル1の変形解析などを実施した際には、第1フィラー粒子11aY及び第2フィラー粒子12aYの挙動を追跡することにより、所定解析時間後の第1フィラーモデル11の重心点P1及び第2フィラーモデル12の重心点P2を再度算出することなく、表面間距離D3に基づいて容易に第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を容易に解析することが可能となる。
解析部52cは、第1フィラー粒子11aYとしては、第1フィラーモデル11の表面に存在するフィラー粒子11aを特定してもよく、第1フィラーモデル11の表面に存在するフィラー粒子11aに隣接するフィラー粒子11aを特定してもよい。また、解析部52cは、第2フィラー粒子12aYとしては、第2フィラーモデル11の表面に存在するフィラー粒子12aを特定してもよく、第2フィラーモデル12の表面に存在するフィラー粒子12aに隣接するフィラー粒子12aを特定してもよい。また、解析部52cは、第1フィラー粒子11aY及び第2フィラー粒子12aYとしては、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の最外に存在する座標のフィラー粒子11a,12aを直接特定してもよい。さらに、解析部52cは、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の重心点P1及び重心点P2を特定し、重心点P1と重心点P2との間の重心点間距離D1を算出した後、重心点間距離D1から第1フィラーモデル11の半径r1及び第2フィラーモデル12の半径r2を差し引くことにより、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間の表面間距離D3を求めてもよい。これにより、解析部52cは、表面間距離D3に基づいて、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間に介在するポリマーモデル21の厚みを求めることができるので、複合材料の材料特性をポリマーモデル21の厚さの観点から解析することも可能となる。
また、上述した実施の形態においては、解析部52cは、周期境界条件下で第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を算出することが好ましい。これにより、解析部52cは、周期境界条件下でモデル間距離を算出することができるので、解析対象領域を小さくした条件下でモデル間距離を算出した場合であっても、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を正確に算出することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態においては、解析部52cは、モデル作成部52aによって作成された相互にパラメーターが異なる解析用モデル1である第1解析用モデル及び第2解析用モデルを用いて第1解析用モデル及び第2解析用モデルのモデル間距離をそれぞれ解析することが好ましい。これにより、解析部52cは、第1物質モデルと第2物質モデルとの間の相互作用の強さ、体積分率及び凝集構造などのフィラー形状などの各種パラメーターが解析用モデルに与える影響を評価することができる。
また、上述した実施の形態においては、解析部52cは、作成した解析用モデル1を用いて分子動力学法によるシミュレーションを実行してモデル間距離を解析してもよい。これにより、解析部52cは、分子動力学法によるシミュレーションに基づいた複合材料中の第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12のモデル間距離を再現できるので、複合材料への力学的変形などに伴うエネルギーロスと第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の分散及び配置に基づく複合材料のナノ構造との関係を解析することも可能となる。
さらに、上述した実施の形態においては、解析部52cは、作成した解析用モデル1を用いて分子動力学法によるシミュレーションにおいて、第1解析時間における第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12間の第1モデル間距離と、第2解析時間における第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12間の第2モデル間距離とを解析することが好ましい。これにより、解析部52cは、第1モデル間距離と第2モデル間距離とを対比することにより、複合材料の力学的変形などに伴うエネルギーロスと第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の分散及び配置に基づく複合材料のナノ構造との関係を解析することも可能となる。
また、上述した実施の形態においては、解析部52cは、作成した解析用モデル1を用いて分子動力学法によるシミュレーションにおいて、解析用モデル1を用いた第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12との間のモデル間距離の解析を複数回実行し、回数毎のモデル間距離の変化を解析することが好ましい。これにより、解析部52cは、解析用モデル1の力学的変形が第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12のモデル間距離に及ぼす影響を解析することが可能となり、複合材料の力学的変形などに伴うエネルギーロスと第2物質モデルの分散及び配置に基づく複合材料のナノ構造との関係を解析することも可能となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1フィラーモデル11の第1基準座標C1及び第2フィラーモデル12の第2基準座標C2に基づいて第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を算出するので、ポリマーモデル21中に分散して配置された第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の配置及び分散を解析することができる。しかも、この複合材料の解析方法によれば、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の変位によらずに、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を直接算出して解析するので、例えば、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12がモデル作成領域A内で周回運動をした場合であっても、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12との間のモデル間距離を正確に解析することができる。したがって、本実施の形態に係る複合材料の解析方法によれば、複合材料中における第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12の分散及び配置を精度良く解析可能な複合材料の解析方法を実現することができるので、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12の配置及び分散が複合材料の材料特性に及ぼす影響を評価でき、低燃費タイヤの開発の加速も可能となる。
(実施例)
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明者らは、力学応答が異なる2種類のフィラーを用いて複合材料のコンパウンドが異なる2種類の第1解析用モデル及び第2解析用モデルを作成し、作成した第1解析用モデル及び第2解析用モデルの伸長解析におけるフィラーモデル11のモデル間距離を解析して評価した。以下、本発明者らが調べた内容について説明する。
図9は、本発明の実施例に係る複合材料の第1解析用モデル200と第2解析用モデル300の応力歪曲線を示す図である。図9に示すように、第1解析用モデル200と第2解析用モデル300との応力ひずみ曲線を対比すると、応力の増大に伴う歪の増大が、第1解析用モデル200(実線参照)に対して第2解析用モデル300(点線参照)の方が相対的に小さくなることが分かる。この結果は、第1解析用モデル200で用いたフィラー粒子201(図10参照)間の相互作用が、第2解析用モデル300で用いたフィラー粒子301(図12参照)間の相互作用に対して相対的に大きいために、第1解析用モデル200では、第2解析用モデル300に対してフィラー粒子201間が強く凝集して応力の増大に伴う歪の増大が大きくなったためと考えられる。
図10は、伸長解析前後における第1解析用モデル200のフィラー粒子201の分散状態を示す概念図であり、図11は、伸長解析前後のフィラー粒子201の粒子間距離と頻度との関係を示す図である。図10及び図11に示すように、伸長解析前の第1解析用モデル200のフィラー粒子201は、相互作用が強く解析対象領域A1内で凝集しているので、フィラー粒子201が密集したフィラー群内の近距離の粒子間距離を表す範囲R1と、フィラー粒子群間の遠距離の粒子間距離を表す範囲R2とが存在する。また、伸長解析後の第1解析用モデル200のフィラー粒子201は、フィラー粒子群が密集状態を医維持した状態で、フィラー群間の距離が増大する。この結果、伸長解析後の粒子間距離は、近距離の粒子間距離を表す範囲R1内の粒子間距離に大きな変化はなく、遠距離の粒子間距離を表す範囲R2内の粒子間距離の分布が大きくなる。
図12は、伸長解析前後における第2解析用モデル300のフィラー粒子301の分散状態を示す概念図であり、図13は、伸長解析前後のフィラー粒子301の粒子間距離と頻度との関係を示す図である。図12及び図13に示すように、伸長解析前の第2解析用モデル300のフィラー粒子301は、相互作用が弱く解析対象領域A内に広く分散しているので、粒子間距離が広い範囲R3に亘って分布している。また、伸長解析後の第2解析用モデル300のフィラー粒子301は、フィラー粒子301が更に拡散するので、各フィラー粒子301間の距離が増大して粒子間距離が更に広い範囲R4に分布する。これらの結果から、相互に異なる相互作用のフィラーモデルを用いた第1解析用モデル200及び第2解析用モデル300を用いて粒子間距離の分布の変化を解析することにより、フィラーモデルの分散及び配置を解析できることが分かる。
このように、上述した実施例によれば、フィラーモデルとして用いるフィラー種を変更して解析用モデルを作成することにより、フィラーモデルの相互作用を反映した粒子間距離の解析結果が得られることが分かる。これにより、本実施の形態によれば、複合材料中における特定物質の分散及び配置を精度良く解析可能であることが分かる。