JP2017160484A - 電解研磨用溶接焼け取り剤及び電解研磨方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 リン酸を主成分とする溶液を用いてステンレス鋼等の鉄系合金の表面の電解研磨を行っても、ステンレス鋼表面の白濁化をさせることなく、その研磨性能及び溶接焼け取り性能を維持することができる酸性の電解研磨用溶接焼け取り剤を提供する。【解決手段】 リン酸を20〜40質量%、アンモニアのリン酸塩を0.5〜5.0質量%及び水を含有する電解研磨用溶接焼け取り剤を用いて、ステンレス鋼等の鉄系合金を溶接した際に表面に生ずる鉄系合金の電解研磨を直流電流方式にて行う。【選択図】 なし

Description

本発明は、ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金などの鉄系合金を溶接した際に生ずる表面の溶接焼けを電気分解により研磨して除去する際に使用する電解研磨用溶接焼け取り剤に関し、特にその液の性質が酸性であるものに関する。
ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金などの鉄系合金を溶接すると、鉄系合金の溶接箇所とその周辺部に、溶接により生じた酸化物スケール及びその他の汚れが溶接焼けとなって付着するが、この溶接焼けはそのまま付着させておくと、ステンレス鋼等の鉄系合金本来の特長である耐食性を損なうので除去する必要がある。そのため、従来から溶接焼けを処理するための種々の方法が行われており、大きく分けて物理的研磨法、化学的研磨法及び電解研磨法による方法がある。
この中で、物理的研磨法は、サンダーや砥石等を用いて鉄系合金の表面を研削するものであるが、溶接焼けを除去する際に鉄系合金の耐食性を向上させる不動態皮膜も同時に削り取ってしまい、鉄系合金の耐食性を低下させてしまうという問題がある。
又、化学的研磨は、塩酸、フッ酸、硫酸又は硝酸等の強酸を用いて鉄系合金の表面処理を行うもので、溶接焼けを除去する際に既存の不動態皮膜は除去されるものの、新たな不動態皮膜が形成されるため鉄系合金表面の耐食性を維持することができる。しかし、この方法により酸化物スケールその他の汚れを除去できるが、表面の処理が不十分であり、化学的研磨に使用する処理液が強酸性であるため、研磨作業に危険が伴い、酸化物スケールの除去に比較的長時間を要すると共に、溶接周辺部の光沢を低下させるという欠点がある。
一方、電解研磨法は、電解液に鉄系合金を浸す等して電気分解により鉄系合金の表面処理を行うものであるが、表面処理後の鉄系合金表面に、優れた不動態皮膜が形成されて、鉄系合金表面の耐食性を向上させるため、溶接焼けの除去性能が優れている。又、この電解研磨法は、微細な凸凹のある鉄系合金の表面を平滑化させることができるので、研磨処理後の鉄系合金の表面を鏡面のような状態にすることもできる。以上の点から、鉄系合金の表面に生じた溶接焼けを除去する場合、電気分解を利用した電解研磨法は、前記した物理的研磨法及び化学的研磨法よりも優れているといえる。
鉄系合金の表面に生じた溶接焼けを電解研磨法により除去する場合、鉄系合金母材を陽極として直流電源装置の正極に接続し、陰極を電源装置の負極に接続して、陽極と陰極との間に電解液を介在させて両極間に直流電流を通電することにより、鉄系合金表面に生じた溶接焼けを陽極で溶出させることにより除去を行う。その際、陰極部分には布又はフェルト等のような電解液を含浸保持しやすい素材を装着し、この布又はフェルト等に電解液を染み込ませて、この電解液を含んだ布又はフェルト等に覆われた陰極を、陽極の鉄系合金母材に押し当てることによって、電解液が電気分解における電解質系となる。そして、母材側では陽極溶解が起こり、母材表面層の溶接焼けによる酸化物スケールが溶出して除去される。この電解研磨における電流の方式は、前記した直流方式の他に、陽極と陰極とが周期的に入れ替わる交流方式、及び直流電流に交流電流を周期的に混在させる交直重畳方式等がある。これらの電流方式は、鉄系合金の表面処理の用途、電解研磨液の仕様、表面処理を行う母材の材質又は母材の表面処理加工の種類によって、最適のものを選択して適用されている。
この電解研磨で使用する電解液には、大きく分けて酸性電解液と中性電解液(pHが7付近)とがある。従来は酸性電解液のみであったが、近年中性電解液が開発され、この中性電解液の方が、取り扱いが安全で作業環境上も好ましいことから、今日では多くのユーザーが作業現場での酸性電解液の使用を避けて、これまで一般的に使用されてきた酸性電解液から中性電解液に切り替えるようになってきている。
この中性電解液を使用した従来技術として、リン酸、硫酸又はシュウ酸の塩を含有した中性水溶液を用いて、ステンレス鋼の溶接時に発生する酸化物スケールを、交流方式で電解処理して除去する方法が開示されている(特許文献1)。この方法は、リン酸塩、硫酸塩又はシュウ酸塩を含有する電解液中に交流を流すことにより、電解液中の陽イオン及び陰イオンが励起(活性化)され、温度上昇に伴い、電極に接続したステンレス鋼の表面に、発生期状態の水素及び酸素が生じ、これらが、酸化物スケールを除去した後の表面を保護し、スケール発生箇所の下地を溶解せず、スケール発生箇所と、スケール未発生箇所との輝度ムラを解消しようとしたものである。
しかしながら、中性電解液を使用した電解研磨は、酸性電解液と比べると、ステンレス鋼表面からの溶接焼けによる酸化物スケールの除去に時間を要するのに加え、研磨力が弱いことから研磨処理によるステンレス鋼表面の鏡面化が容易ではない等、技術的な面で酸性電解液が中性電解液に完全に置き換わることは現状では困難である。そのため、酸性電解液を使用した電解研磨処理は、ステンレス鋼の表面の鏡面化を目的とする研磨及び脱スケールが困難な溶接焼けの除去を目的とする研磨には未だ広く行われているのが現状である。
酸性電解液を使用した従来技術として、過塩素酸、リン酸又は硫酸等を主成分とする酸性電解液を交流電源の一方の電極を被覆した被覆材に含浸し、この電極とステンレス鋼が接続された他方の電極との間を通電して、ステンレス鋼の溶接焼けを除去する交流方式による溶接焼け取り方法が開示されている(特許文献2)。この方法は、交流方式の電解研磨であるため、ステンレス鋼が接続された電極が正極性であるときその表面を研磨するが、ステンレス鋼側の電極が負極性に移行すると、表面研磨が中断されるので、直流方式の電解研磨よりも研磨作用が抑制され、過度の研磨がされることがなく、研磨した部分と研磨していない部分との色調の差をなくすことにより違和感のない表面仕上がりを得ようとしたものである。
しかしながら、特許文献2で使用される酸成分(過塩素酸、リン酸酸又は硫酸)のうち、過塩素酸又は硫酸を電解液として使用した場合、過塩素酸又は硫酸の強酸性によりその取扱い時に危険を伴うという問題は依然として残る。従って、近年のこの産業分野においては、これらの酸成分のうち、リン酸を主成分とする酸性電解液が多く使用されている。これは、リン酸が他の酸に比べて取扱いやすい弱酸であるためである。しかし、このリン酸を酸性電解液として使用すると、リン酸が陽極に接続されたステンレス鋼等の鉄系合金母材に含まれる鉄と反応して不溶性のリン酸鉄塩が生成され、鉄系合金の表面処理部分が白濁化してしまうという問題がある。
又、特許文献3には、リン酸50〜70質量%、リン酸系キレート剤0.5質量%以上含有する水溶液からなるステンレス鋼表面の直流電流法による電解研磨処理用の電解液が開示されている。この技術では、電解研磨において、陽極に接続されたステンレス鋼に含まれる鉄がイオン化して溶出する際、この溶出した鉄イオンが電解液中のリン酸イオンと反応する前に、電解液に添加したリン酸系キレート剤が、この鉄イオンを捕集することによって、鉄イオンとリン酸イオンとが反応してリン酸鉄塩が生成されることを抑制し、ステンレス鋼表面が白濁することを防止することができるというものである。
しかしながら、特許文献3の電解液組成は、リン酸濃度が50〜70質量%と高濃度であることを要し、又、比較的高価で取引されるリン酸系キレート剤(ニトリロトリスメチレンスルホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸)を含有するため、電解液としては高コストになるという問題があり、より低コストで効果的な鉄系合金の電解研磨用溶接焼け取り剤の開発が求められている。
特開2000−54200号公報 特開平2−270999号公報 特開2014−43596号公報
本発明の課題は、リン酸を主成分とする溶液を用いてステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金などの鉄系合金の表面の電解研磨を行っても、リン酸鉄塩が生成することなく、鉄系合金表面の白濁化を防止しつつ、その研磨性能及び溶接焼け取り性能を維持することができ、且つ低コストである酸性の電解研磨用溶接焼け取り剤を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、ステンレス鋼等の鉄系合金の表面の電解研磨を行うためのリン酸含有電解研磨用溶接焼け取り剤に、0.5〜5.0質量%の導電剤を含有させることにより、電解研磨用溶接焼け取り剤中のリン酸含有量を20〜40質量%まで低減させてもリン酸鉄塩が生成することなく、鉄系合金表面の白濁化を防止しつつ、その研磨性能及び溶接焼け取り性能を維持することができ、低コストである電解研磨用溶接焼け取り剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の構成は、以下のようになる。
(1)鉄系合金表面の直流電流法による電解研磨処理に使用される電解研磨用溶接焼け取り剤であって、リン酸を20〜40質量%及び導電剤を0.5〜5.0質量%含有する水溶液であることを特徴とする電解研磨用溶接焼け取り剤。
(2)導電剤が水溶性の塩であることを特徴とする前記(1)に記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
(3)水溶性の塩がリン酸塩、リン酸一水素塩及びリン酸二水素塩からなる群の一種以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
(4)リン酸塩、リン酸一水素塩又はリン酸二水素塩を構成する陽イオンがアンモニウムイオンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
(5)さらに、リモネンを含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
(6)さらに、ゲル化剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
(7)鉄系合金表面の直流電流法による電解研磨処理において、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤を使用することを特徴とする鉄系合金の電解研磨方法。
本発明によれば、鉄系合金の電解研磨において、電解研磨用溶接焼け取り剤に添加したリン酸二水素一アンモニウム等の導電剤が最適な導電性を付与することにより、リン酸含有量を20〜40質量%まで低減させても、リン酸鉄塩が生成することなく鉄系合金表面の白濁化を防止し、その研磨性能及び溶接焼け取り性能を維持することができ、且つ低コストに電解研磨による溶接焼けの除去を行うことができる。
以下、本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤及び鉄系合金の電解研磨方法について詳細に説明する。
まず、本発明に係る電解研磨用溶接焼け取り剤について述べる。本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤は、直流電流を使用したステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金などの鉄系合金表面の電解研磨処理に用いるものであり、リン酸を従来技術に比べて低濃度含有させた水溶液に、所定量の導電剤を添加したものである。ここで、導電剤とは、水又は水溶液に溶解させることにより、その水又は水溶液の導電性を向上させる物質をいう。
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤に使用するリン酸は、溶接焼け取り剤の主成分であり、電解研磨の際に、ステンレス鋼等の鉄系合金の表面に発生した溶接焼けをその酸性により溶解する効力を有する。本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤中のリン酸の含有量は、従来技術(例えば、特許文献3)に比べて低濃度で十分であり、20〜40質量%含有しているのがよく、好ましくは25〜40質量%含有しているのがよい。リン酸の含有量が20質量%を下回ると鉄系合金の溶接焼けを溶解する効力が不足し、鉄系合金表面に発生した溶接焼けを十分に取り除くことができない恐れがある。又、リン酸の含有量が40質量%を超えた場合、溶接焼けを溶解する効力そのものは頭打ちとなり、リン酸の含有量が多い分、効果対費用の観点から高コストとなることを免れない。
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤に使用する導電剤は、電解研磨用溶接焼け取り剤に適切な導電性を付与することにより、電解研磨を効率的に行うことを可能にし、且つ溶接焼けを溶解させる効力を持つリン酸の働きを助け、その必要含有量を従来技術に比べて大きく低減させる効果を有する。導電剤の含有量は、0.5〜5.0質量%含有しているのがよく、好ましくは1.0〜2.0質量%含有しているのがよい。導電剤の含有量が0.5質量%を下回ると鉄系合金の電解研磨を行う際に十分な導電性を付与することができず、電解研磨の効率が低下して鉄系合金の溶接焼けを除去する効果が低下する恐れがある。又、導電剤の含有量が5.0質量%を超えると、リン酸に対して緩衝剤として作用する影響が大きくなり、リン酸が酸として溶接焼けを溶解する効力に対して拮抗的に働く恐れがある。
このような導電剤としては、水溶性の塩が好ましく用いられる。水溶性の塩としては、陰イオンがリン酸イオン、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、次亜リン酸イオン、亜リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、スルファミン酸イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、ヒドロキシ酢酸イオン、蟻酸イオン、グルコン酸イオン、クエン酸イオン、リンゴ酸からなる群のうちの一種以上と、陽イオンがナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンからなる1価の陽イオンの群のうちの一種以上とを組み合わせて構成されるもののうちから好ましく選ばれる。より好ましくはリン酸塩、リン酸一水素塩及びリン酸二水素塩からなる群の一種以上であるのがよく、さらに好ましくはリン酸塩、リン酸一水素塩又はリン酸二水素塩を構成する1価の陽イオンがアンモニウムイオンであるのがよい。
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤においては、さらにリモネンを含有させることができる。リモネンを含有させることにより、鉄系合金の汚れの除去効果を向上させ、電解研磨時の溶接焼けの除去性を向上させることができる。リモネンの含有量としては、特に限定されないが、電解研磨用溶接焼け取り剤中0.1〜1質量%含有しているとよい。
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤においては、さらにゲル化剤を含有させることができる。ゲル化剤を含有させることにより、電解研磨用溶接焼け取り剤に適度な粘性を付与させることができ、ペースト状の電解研磨用溶接焼け取り剤を得ることができる。ペースト状の溶接焼け取り剤は、鉄系合金の電解研磨を行う際に液だれを避けたい場合、例えば、鉄系合金材が垂直方向に設置された現場で溶接され、その溶接焼けを除去したい場合などに有用である。このようなゲル化剤としては、特に限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの化学修飾されたセルロース誘導体、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、タマリンドガム、ローカストビーンガム、ペクチンなどの多糖類を挙げることができる。ゲル化剤の含有量は、特に限定されないが、電解研磨用溶接焼け取り剤中0.01〜1質量%含有しているとよい。
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤は、その効果を損ねない程度に、消泡剤、防腐剤、界面活性剤などの洗浄助剤又はその他の助剤を含有させることもできる。
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤は、攪拌機を備えた攪拌釜に、攪拌しながら水、リン酸及び導電剤を投入した後、5〜45℃程度の温度範囲内で均一になるまで攪拌・混合して製造することができる。リモネンを配合するときはその後に添加するとよく、必要に応じて各種界面活性剤を添加して分散溶解させることもできる。ゲル化剤を配合するときは、他の全ての原料を投入して均一になるまで攪拌・混合した後、ゲル化剤を少量ずつ攪拌しながら添加して分散又は溶解することができる。
次に、本発明の鉄系合金の電解研磨方法について述べる。本発明で電解研磨処理を行う対象となる材は、ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金などの鉄系合金である。本発明の鉄系合金の電解研磨方法は、鉄系合金表面を溶接加工した際に生じた溶接焼けを、前記した電解研磨用溶接焼け取り剤を用いて直流電流法による電解研磨処理により除去するものである。なお、本発明では電解研磨に適用する電流の方式を直流電流としているが、これは直流電流を使用して電解研磨を行った方が交流電流を使用して電解研磨を行うよりも脱スケール性能及び脱スケール処理速度が優れるためである。
電解研磨の方法については、例えば、プラント規模で一般的に実施される「浸漬による方法」と、簡易な規模で行われる「塗布による方法」とを挙げることができる。本発明の鉄系合金の電解研磨方法も同様に行うことができるので、それぞれの方法について説明する。
<浸漬による方法>
電解液槽(浴)に前記した電解研磨用溶接焼け取り剤を注ぎ、電源の正極にステンレス鋼などの鉄系合金材を接続して陽極として電解研磨用溶接焼け取り剤に浸漬し、陰極側には銅板等の金属板を電源の負極に接続して電解研磨用溶接焼け取り剤に浸漬する。直流電流を通電することにより、鉄系合金材の表面の溶接焼けを除去する。電流密度は特に限定されないが、通常50A/ dm2 以上での設定が一般的である。浸漬による電解研磨時の温度は、特に限定されないが、通常常温の前後(15〜30℃)であるのが好ましい。
<塗布による方法>
電圧を6〜15Vの範囲内で設定した直流電源において、ステンレス鋼などの鉄系合金材を陽極として電源の正極に接続し、布又はフェルトで覆った陰極を電源の負極に接続する。そして、前記した電解研磨用溶接焼け取り剤を、電極を覆った布又はフェルトに十分に染み込ませた後、この陰極を、ステンレス鋼試験片の溶接ビード表面の真上から1〜10秒間軽く押し当てて電解研磨処理を行い、鉄系合金材の表面の溶接焼けを除去する。塗付による電解研磨時の温度は、特に限定されないが、例えば10〜60℃の温度範囲内で適宜設定すればよく、好ましくは常温の前後温度(15〜35℃)であるのがよい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
水65.0重量部に、リン酸34.0重量部及びリン酸二水素一アンモニウム1.0重量部を加えて室温で攪拌して完全に溶解させ、電解研磨用溶接焼け取り剤を得た。外観は無色透明液体であった。
<比較例1>
水66.0重量部に、リン酸34.0重量部を加えて室温で攪拌して完全に溶解させ、電解研磨用溶接焼け取り剤を得た。外観は無色透明液体であった。
<比較例2>
水99.0重量部に、リン酸二水素一アンモニウム1.0重量部を加えて室温で攪拌して完全に溶解させ、電解研磨用溶接焼け取り剤を得た。外観は無色透明液体であった。
<比較例3>
特開2000−54200号公報の実施例に記載の方法に従って調製した。水90.0重量部に、リン酸三アンモニウム10.0重量部を加えて室温で攪拌して完全に溶解させ、電解研磨用溶接焼け取り剤を得た。外観は無色透明液体であった。
<塗布による電解研磨試験>
試験片として溶接線を施したステンレス鋼(SUS304)を使用した。電圧を9V一定とした直流電源において、試験片に布で覆った陽極陰極を電源に接続する。そして、前記した実施例及び比較例の電解研磨用溶接焼け取り剤を、両電極を覆った布に十分に染み込ませた後、試験片の溶接ビード表面の真上から2秒間軽く押し当てて電解研磨処理を行った。その処理後、電解研磨処理を行った試験片表面の状態を評価した。評価は目視により行った。
[評価基準]
・溶接焼け(虹色変色)の除去程度: ◎;除去90%以上、〇;除去70〜89%、
△;除去40〜69%、▲;除去10〜39%、×;除去10%未満
・試験片表面の白濁の程度: ◎;白濁なし、〇;白濁ほとんどなし、△;白濁中程度、
×;白濁かなりひどい
電解研磨処理を行った試験片表面の状態の評価結果を表1に示す。
Figure 2017160484
本発明の電解研磨用溶接焼け取り剤(実施例1)は、比較例1〜3に比べて電解研磨処理を行った試験片表面の溶接焼け除去程度が優れていた。又、リン酸を含有するが導電剤を含有しないもの(比較例1)は試験片の白濁(鏡面白化)の程度が甚大であったが、実施例1では全く白濁が認められなかった。
本発明は、ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−コバルト系合金などの鉄系合金を溶接した際に生ずる表面の溶接焼けを電気分解により研磨して除去する際に使用する電解研磨用溶接焼け取り剤に関し、特にその液の性質が酸性であるものに関するものであり、金属加工の産業分野で利用されるものである。

Claims (7)

  1. 鉄系合金表面の直流電流法による電解研磨処理に使用される電解研磨用溶接焼け取り剤であって、リン酸を20〜40質量%及び導電剤を0.5〜5.0質量%含有する水溶液であることを特徴とする電解研磨用溶接焼け取り剤。
  2. 導電剤が水溶性の塩であることを特徴とする請求項1に記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
  3. 水溶性の塩がリン酸塩、リン酸一水素塩及びリン酸二水素塩からなる群の一種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
  4. リン酸塩、リン酸一水素塩又はリン酸二水素塩を構成する陽イオンがアンモニウムイオンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
  5. さらに、リモネンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
  6. さらに、ゲル化剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤。
  7. 鉄系合金表面の直流電流法による電解研磨処理において、請求項1〜6のいずれかに記載の電解研磨用溶接焼け取り剤を使用することを特徴とする鉄系合金の電解研磨方法。
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