JP5914255B2 - 電解液 - Google Patents

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本発明は、ステンレス鋼の表面を電気分解により研磨する際に使用する電解液に関し、特にその液の性質が酸性である電解液に関する。
ステンレス鋼の溶接に際し、酸化スケール及び汚れといった溶接焼けが、ステンレス鋼表面の溶接部とその周辺の熱影響部に発生する。この溶接焼けを除去する方法としては、物理的研磨法、化学的研磨法又は電解研磨法がある。このうち、物理的研磨法は、サンダー等を用いてステンレス鋼の表面を研削するものであるが、溶接焼けを除去する際に、ステンレス鋼の耐食性を向上させる不動態被膜も同時に削り取ってしまい、ステンレス鋼の耐食性を低下させてしまうという問題点がある。また、化学的研磨は、フッ化物系の強酸又は王水等を用いてステンレス鋼の表面処理を行うものであり、この方法は、溶接焼けを除去する際に既存の不動態被膜は除去されるが、新たな不動態被膜が形成されるため、ステンレス鋼表面の耐食性を維持できる。しかし、この方法は、酸化スケール及び汚れを除去できるものの、表面の処理が不十分であるという問題があり、また、研磨に使用する液が強酸であるため、研磨作業に危険が伴うという問題がある。
一方、電解研磨は、電解によりステンレス鋼の表面処理を行うものであるが、表面処理後のステンレス鋼表面に、優れた不動態被膜が形成されて、ステンレス鋼表面の耐食性を向上させるため、溶接焼けの除去性能が優れている。また、この電解研磨法は、ミクロな凹凸が存在するステンレス鋼の表面を平滑化させることができるので、研磨処理後のステンレス鋼表面を鏡面のような状態にすることも可能である。以上の点から、ステンレス鋼表面に生じた溶接焼けを除去する場合、電気分解を利用した電解研磨法は、前述の物理的研磨法及び化学的研磨法よりも、優位である。
ステンレス鋼の表面に生じた溶接焼けを除去するための電気分解を利用した電解研磨法は、陽極としてのステンレス鋼母材を直流電源装置の正極に接続し、陰極を電源装置の負極に接続して、陽極と陰極との間に電解液を介在させて両極間に直流電流を通電することにより、ステンレス鋼表面に生じた溶接焼け及び汚れを、陽極溶出により除去するというものである。その際、陰極部分に、布又はフェルト等のような電解液を保持し易い素材を装着し、この布又はフェルト等に電解液を染み込ませて、この電解液を含んだ布又はフェルト等に覆われた陰極を、陽極のステンレス鋼母材に押し当てることによって、電解液が電気分解における電解質系となる。そして、母材側では陽極溶解が発生し、母材表面層の溶接やけなどの金属酸化物が溶出し、除去される。この電解研磨における電流の方式は、前述の直流方式の他に、陽極と陰極とが周期的に入れ替わる交流方式、及び直流電流に交流電流を周期的に混在させる交直重畳方式等がある。これらの電流方式は、ステンレス鋼の表面処理の用途、電解研磨液の仕様、表面処理を行う母材の材質又は母材の表面処理加工の種類によって、最適のものを選択して適用されている。
この電解研磨において使用する電解液には、大きく分けて、酸性電解液と、中性電解液(pHの値が7付近)とが存在する。従前は酸性電解液のみであったが、近年、中性電解液が開発され、この中性電解液の方が、安全で作業環境の向上に寄与するため、多用されている。即ち、近年、作業現場における酸性電解液の使用を嫌い、これまで一般的に使用されてきた酸性電解液から、中性電解液に移行するユーザが増えている。
この中性電解液を使用した従来技術として、特許文献1には、燐酸、硫酸又はシュウ酸の塩を含有した中性水溶液を用いて、ステンレス鋼の溶接時に発生するスケールを、交流方式で電解処理して除去する方法が開示されている。この従来技術は、燐酸塩、硫酸塩又はシュウ酸塩を含有する電解液中に交流を流すことにより、電解液中の陽イオン及び陰イオンが励起(活性化)し、温度上昇に伴い、電極に接続したステンレス鋼の表面に、発生期状態の水素及び酸素が生じ、これらが、スケールを除去した後の表面を保護し、スケール発生箇所の下地を溶解せず、スケール発生箇所と、スケール未発生箇所との輝度ムラを解消しようとしたものである。
しかしながら、中性電解液を使用した電解研磨は、酸性電解液を使用した電解研磨と比較して、ステンレス鋼表面からの溶接焼け除去等の処理速度が劣り、また研磨処理によるステンレス鋼表面の鏡面化が容易ではない等、技術的な面で、酸性電解液が中性電解液に完全に置き換わることは、現状では困難であると考えられる。従って、酸性電解液を使用した電解研磨処理は、ステンレス鋼の表面の鏡面化を目的とする研磨、及び脱スケールが困難な溶接焼けの除去を目的とする研磨に、未だ広く採用されている。
この酸性電解液を使用した従来技術として、特許文献2には、過塩素酸、燐酸又は硫酸と硫酸との混合液等を主成分とする酸性電解液を、交流電源の一方の電極を被覆した被覆材に含浸し、この電極と、ステンレス鋼が接続された他方の電極との間を通電して、ステンレス鋼の溶接焼けを除去する交流方式による溶接焼け取り方法が開示されている。この従来技術は、交流方式の電解研磨であるため、ステンレス鋼が接続された電極が正極性であるとき、その表面を研磨するが、ステンレス鋼側の電極が負極性に移行すると、表面研磨が中断されるので、直流方式の電解研磨よりも、研磨作用が抑制され、過度の研磨がされることがなく、研磨した部分と、研磨していない部分との色調の差をなくすことにより、違和感のない表面仕上がりを得ようとしたものである。
この特許文献2のように、酸性電解液には、過塩素酸、燐酸又は硫酸を主成分とするものがあり、また燐酸及び硫酸の混合液を主成分とするものも存在する。そして、近年の工業界においては、このうち、燐酸を主成分とする酸性電解液が多く使用されている。これは、燐酸が、他の酸に対し、取扱い性が比較的良好な弱酸であるためである。しかし、この燐酸を酸性電解液として使用すると、燐酸が、陽極に接続されたステンレス鋼母材に含まれる鉄と反応して、不溶性の燐酸鉄塩が生成され、ステンレス鋼の表面処理部分が白濁化してしまうという問題が生じた。そこで、この問題を解決するために、シュウ酸又はグリセリン等の有機物を、燐酸を含む溶液に添加して、不溶性の燐酸鉄塩の生成を抑制することが行われている。
なお、特許文献2の他に、酸性電解液を使用する従来技術として、特許文献3には、第2鉄塩を含む溶液に、ポリアミン又はポリアミン塩、有機硫黄化合物及び有機キレート化合物を添加した化学溶解処理液が開示されており、更に、この溶液に、塩酸、硫酸又は硝酸を含有させた処理液が開示されている。このうち、第2鉄塩は、酸化剤としての機能を有するものであり、ポリアミン又はポリアミン塩は、金属表面の孔食を抑制するための添加剤である。また、有機硫黄化合物は、金属表面の孔食抑制作用に加え、表面の荒れを防止し、表面に光沢性を与えるための添加剤であり、有機キレート化合物は、金属表面の粒界腐食の抑制、金属表面の孔食の抑制及びスマット発生の防止のための添加剤である。また、塩酸は金属表面の平滑化効果を有するものであり、また硫酸は孔食抑制効果を有し、硝酸は溶解促進及び表面光沢化効果を有するものである。この従来技術は、第2鉄塩溶液に、これらの添加剤を添加することにより、化学溶解処理後の金属の表面に孔食が発生することを防止し、金属表面を良好な仕上がりにしようとしたものである。
特開2000−54200号公報 特開平2−270999号公報 特開昭63−79983号公報
特許文献1は、前述の如く、電解研磨に中性電解液を使用しているので、酸性電解液に対し、スケール除去に時間を要すると共に、研磨力が弱いため、溶接焼けを完全に除去することは困難である。また、特許文献2において、3成分(過塩素酸、燐酸又は硫酸)のうち、過塩素酸又は硫酸を電解液として使用した場合、過塩素酸又は硫酸の強酸性により、その取扱いに注意を要する。一方、この特許文献2に開示された3成分のうち、燐酸を酸性電解液として電解研磨を行った場合、燐酸が、ステンレス鋼に含まれる鉄と反応し、燐酸鉄塩が生成され、ステンレス鋼の表面が白く濁ってしまう。
そして、この表面白濁化現象を防止するために、燐酸の溶液に、シュウ酸又はグリセリン等の有機物を添加しても、このシュウ酸又はグリセリン等の有機物は、燐酸溶液に添加した後、時間経過により不安定な状態となることにより、その成分を維持することができなくなり、その結果、ステンレス鋼表面が白濁化することを防止することができない。また、特許文献3は、化学溶解処理液に含有される第2鉄塩、塩酸、硫酸及び硝酸が強酸性を示すため、電解研磨を行う際に、注意して作業する必要性が生じる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、燐酸を主成分とする溶液を用いてステンレス鋼表面の電解研磨を行っても、燐酸鉄塩の生成を抑制する成分が経時劣化せずに、ステンレス鋼表面の白濁化を防止しつつ、その研磨性能及び溶接焼け取り性能を維持することができる酸性の電解液を提供することを目的とする。
本発明に係る電解液は、ステンレス鋼表面の直流電流法による電解研磨処理用の電解液において、燐酸を50乃至70質量%、ホスホン酸系キレート剤を0.5質量%以上含有する水溶液であることを特徴とする。
本発明によれば、電解研磨において、陽極に接続されたステンレス鋼に含まれる鉄がイオン化して溶出する際、この溶出した鉄イオンが電解液中の燐酸イオンと反応する前に、電解液に添加した燐酸系(ホスホン酸系)キレート剤が、この鉄イオンを捕集することによって、鉄イオンと燐酸イオンとが反応して燐酸鉄塩が生成されることを抑制し、ステンレス鋼表面が白濁することを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。本実施形態に係る電解液は、直流電流を使用したステンレス鋼表面の電解研磨処理に用いるものであり、燐酸を50乃至70質量%含有した水溶液に、燐酸系キレート剤を0.5質量%以上添加したものである。
燐酸は、電解液の主成分であり、電解研磨の際に、ステンレス鋼の表面に発生した溶接焼けを溶解する力を向上させる。そして、この燐酸の溶液に添加した燐酸系キレート剤は、金属イオンを捕捉する性質を有する。陽極としてのステンレス鋼母材を電源の正極に接続し、このステンレス鋼の表面に、電解液を含有させた布又はフェルト等に覆われた陰極を押し当て、直流電流を通電すると、陽極のステンレス鋼に含まれる鉄が電解液中に溶出する際に、その鉄がイオン化する。このイオン化した鉄が、電解液中の燐酸イオンと反応すると、不溶性の燐酸鉄塩が生成され、これにより、ステンレス鋼表面が白濁化する。燐酸系キレート剤が、このイオン化した鉄を捕まえて不活性化させることによって、電解液中の燐酸イオンと鉄イオンとが反応して燐酸鉄塩が生成されることを抑制する。
このように、本実施形態では、燐酸溶液に、燐酸系キレート剤を添加することにより、燐酸鉄塩の生成を防止し、ステンレス鋼表面が白濁することを防ぐことができる。この燐酸系キレート剤は、燐酸溶液中において安定性が高く、及び燐酸溶液に対する溶解性が高いため、溶液中で経時劣化することなく、ステンレス鋼の表面白濁化防止効果を維持することができる。なお、燐酸系キレート剤を除く他のキレート剤も、鉄イオンを捕捉して不活性化させる性質を有するが、燐酸溶液に対する溶解度が低いため、キレート剤が、燐酸溶液内で分離又は析出する虞があること、及び、pH値を、鉄イオンを不活性化させるために有効な領域に調整することが容易ではないため、燐酸溶液への添加には適さない。
また、本実施形態では、電解研磨に適用する電流の方式を、直流電流としている。これは、直流電流を使用して電解研磨を行った方が、交流電流を使用して電解研磨を行うよりも、脱スケール性能及び脱スケール処理速度が有利なためである。なお、本実施形態においては、燐酸及び燐酸系キレート剤を含有させた溶液に、更に、ジエチレングリコールを添加してもよい。このジエチレングリコールを添加することにより、電解研磨液のスケール除去性を向上させることができると共に、水の過蒸発を防止することによる溶液消費量の低減効果を得ることができる。
以下に、本実施形態に係る電解液の数値限定理由を示す。
「燐酸を50乃至70質量%」
燐酸が50質量%より少ないと、電解研磨を行う際に、電源の正極に接続されたステンレス鋼表面の溶解が不完全となり、ステンレス鋼表面に発生した溶接焼けを十分に取り除くことができない。また、燐酸を70質量%より多くしても、陽極の溶解力の向上は鈍化し、燐酸の含有量が多い分、コストがアップする。従って、本実施形態に係る電解液は、燐酸を50乃至70質量%含有するものとする。
「燐酸系キレート剤を0.5質量%以上」
燐酸系キレート剤が0.5質量%より少ないと、鉄イオンを捕集する効果が著しく低下する。従って、本実施形態に係る電解液は、燐酸系キレート剤を0.5質量%以上含有するものとする。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の効果について説明する。
試験片としては、溶接線を施したSUS304(2B材)を使用し、電圧を15V一定とした直流電源において、SUS304試験片を電源の正極に接続し、布で覆った陰極を電源の負極に接続する。そして、以下に示す比較例及び実施例の電解液を、電極を覆った布に十分に染み込ませた後、この陰極を、ステンレス鋼試験片の溶接ビード表面の真上から10秒間軽く押し当て、電解研磨処理を行った。その作業後、電解研磨処理を行った試験片表面の状態を評価した。評価方法は、目視により行い、試験片表面が白濁しているか否かと、その白濁の程度を評価した。
(比較例)
比較例1は、燐酸のみを含有したものであり、比較例2乃至4は、燐酸にアミン系キレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩溶液,ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム塩溶液,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム二水塩溶液)を添加したものである。また、比較例5及び6は、燐酸溶液に燐酸系キレート剤(ニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液)を添加したものである。比較例1として、燐酸を60質量%、水を40質量%に調製した電解液を作製した。次に、比較例2として、燐酸を60質量%、アミン系キレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩溶液を5質量%、水を35質量%に調製した電解液を作製した。また、比較例3として、燐酸を60質量%、アミン系キレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム塩溶液を5質量%、水を35質量%に調製した電解液を作製した。更に、比較例4として、燐酸を60質量%、アミン系キレート剤であるヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム二水塩溶液を5質量%、水を35質量%に調製した電解液を作製した。また、比較例5は、比較例1乃至4と同様に、燐酸を60質量%含有するものであり、これにニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液(燐酸系キレート剤)を0.3質量%添加したものである。なお、水の含有量は、39.7質量%とした。そして、比較例6は、燐酸(60質量%)に燐酸系キレート剤として1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液を0.3質量%含有させた。水の含有量は、比較例5と同様に、39.7質量%とした。この比較例1乃至6の電解液を用いて、電解研磨処理を行った後、試験片表面を目視で評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0005914255
表1に示すように、比較例1乃至6のいずれも、試験片表面が白濁した。但し、比較例2乃至6は、比較例1に対し、白濁の程度が良好であった。このうち、比較例2乃至4は、アミン系キレート剤の添加により、鉄イオンを不活性化させ、白濁の程度を良好にすることができたものの、このアミン系キレート剤は、燐酸溶液に対する溶解性が悪いため、燐酸溶液に完全に溶けておらず、鉄イオンを不活性化させる効果が弱いため、若干の白濁化が生じたものと考えられる。また、比較例5は、燐酸に燐酸系キレート剤(ニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液)を添加することにより、鉄イオンを不活性化させ、白濁の程度は良好となったが、その添加量が0.3質量%と少ないため、鉄イオンを不活性化させる効果が低く、若干白濁したものと考えられる。比較例6は、比較例5と同様に、燐酸系キレート剤を添加するものであるが、この比較例6においても、燐酸系キレート剤である1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液の添加量が0.3質量%と低いので、イオン化した鉄を捕集して不活性化させる効果が弱まり、その結果、若干の白濁化がみられたものと考えられる。
(実施例)
次に、燐酸溶液に、燐酸系キレート剤を0.5質量%以上含有させた実施例を作製した。先ず、実施例1として、燐酸を60質量%、燐酸系キレート剤であるニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液を0.5質量%、水を39.5質量%に調製した電解液を作製した。また、実施例2として、燐酸を60質量%、燐酸系キレート剤である1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液を0.5質量%、水を39.5質量%に調製した電解液を作製した。更に、実施例3として、燐酸を60質量%、燐酸系キレート剤であるニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液を10質量%、水を30質量%に調製した電解液を作製した。更にまた、実施例4として、燐酸を60質量%、燐酸系キレート剤である1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液を10質量%、水を30質量%に調製した電解液を作製した。
また、実施例5は、実施例1乃至4よりも燐酸の含有量を減らし、その含有量を55質量%とした。その上で、ニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液を0.5質量%、水を44.5質量%含有させた。実施例6は、実施例5のニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液を、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液とし、これを0.5質量%含有させたものである。燐酸及び水の含有量は、実施例5と同様に、夫々55質量%及び44.5質量%である。次に、実施例7として、燐酸を65質量%含有させた溶液に、ニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液を10質量%含有させ、水を25質量%含有させた。そして、実施例8は、実施例7と同様に、燐酸を65質量%含有させたものであり、これに、燐酸系キレート剤として1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液を10質量%添加し、水を25質量%含有させたものである。これらの実施例1乃至8の電解液を用いて、電解研磨処理を行った後、研磨した試験片表面を目視評価した。その結果を表2,3に示す。
Figure 0005914255
Figure 0005914255
表2,3に示すように、実施例1乃至8のいずれも、比較例1乃至6に対し、試験片表面の白濁は大幅に減少し、白濁はほぼ確認されなかった。実施例1乃至8と比較例2乃至4とを比較すると、比較例2乃至4は、燐酸溶液にアミン系キレート剤を添加したものであるのに対し、実施例1乃至8は、燐酸溶液に燐酸系キレート剤を添加している。このことから、燐酸溶液に、アミン系キレート剤ではなく燐酸系キレート剤を添加することによって、試験片表面の白濁を防止することができることが確認された。これは、電解時にステンレス鋼表面から鉄が溶出する際、鉄がイオン化し、このイオン化した鉄を、燐酸キレート剤が捕集して不活性化させることにより、不溶性の燐酸鉄塩の生成を抑制し、燐酸鉄塩によるステンレス鋼表面の白濁化を抑制することができたためと考えられる。また、燐酸系キレート剤は、アミン系キレート剤に対し、燐酸溶液に対する溶解性が良いため、燐酸溶液に完全に溶け、鉄イオンを十分に不活性化させることができるので、ステンレス鋼表面の白濁化を抑制することができたものと考えられる。
また、燐酸を60質量%含有する溶液に、燐酸系キレート剤を添加した実施例(1乃至4)及び比較例(5及び6)を比較すると、実施例1乃至4は、燐酸系キレート剤(ニトリロトリスメチレンホスホン酸溶液又は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸溶液)の含有量が0.5質量%以上であり、白濁化現象は起こらなかったのに対し、比較例5及び6は、0.3質量%と低く、白濁した。これにより、燐酸系キレート剤は、0.5質量以上添加することにより、鉄イオンを不活性化させる効果を十分に発揮し、その結果、ステンレス鋼表面の白濁化を防止することができると考えられる。また、実施例5及び6は、燐酸を55質量%含有し、実施例7及び8は、燐酸の含有量が65質量%であるが、この実施例5乃至8は、いずれも試験片表面が白濁しなかった。従って、燐酸の含有量は、50乃至70質量%とすることにより、その電解研磨性能を維持しつつ、ステンレス鋼が白濁することを抑制することができる。

Claims (1)

  1. ステンレス鋼表面の直流電流法による電解研磨処理用の電解液において、燐酸を50乃至70質量%、ホスホン酸系キレート剤を0.5質量%以上含有する水溶液であることを特徴とする電解液。
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