JP2017146523A - 光学フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環状オレフィン系樹脂を含み、面内方向のレターデーションの波長分散特性が逆分散性を示す光学フィルム、上記光学フィルムを含む偏光板、上記偏光板を含む液晶表示装置、及び上記光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂、及び光異性化ポリマーを含有する光学フィルムであって、光異性化ポリマーは、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有し、光異性化ポリマーの含有率は、環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光学フィルム、上記光学フィルムを含む偏光板、上記偏光板を含む液晶表示装置、及び上記光学フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び光学フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置は、テレビ、パソコン、携帯電話、デジタルカメラなどへの用途で広く用いられている。通常、液晶表示装置は、液晶セルの両側に偏光板を設けた液晶パネル部材を有し、光を液晶パネル部材で制御することにより画像を表示する。偏光板は偏光子と少なくとも1枚の光学フィルムを保護フィルム(偏光板保護フィルム)として含んでおり、保護フィルムとしては種々の熱可塑性樹脂を用いたフィルムが用いられており、その一例として、環状オレフィン系樹脂を含むフィルム(環状オレフィン系樹脂フィルム)が知られている(特許文献1参照)。
また、液晶表示装置において、視野角の拡大などの表示性能の向上の観点から、光学異方性を有するフィルム(面内方向のレターデーションを有するフィルム)が用いられることがあり、光反応性化合物を用いて光学異方性を有するフィルムを簡便に作製する技術が知られている(特許文献2参照)。
特開2001−330727号公報 特開2007−114739号公報
一般に広く用いられている環状オレフィン系樹脂フィルムは、可視光域(波長440〜630nm)において、面内方向のレターデーション(Re)が波長に関わらずほぼ一定であるが、近年、表示性能の向上などの観点から、Reの波長分散特性が逆分散性を示す環状オレフィン系樹脂フィルムが求められている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂に逆分散性を示す構造を共重合することによる逆分散性の付与、又は、環状オレフィン系樹脂フィルムと負の順分散性を有するフィルムとの積層による逆分散化技術は検討されているものの、環状オレフィン系樹脂フィルムの性能を活かしつつ、逆分散性を付与する設計は検討されていなかった。ここで、「逆分散性を示す」とは、可視光域において、波長が長波長になるほど面内方向のレターデーションが大きくなることであり、下記式(1)を満たすことである。
0≦{Re(630)−Re(490)}/Re(550) 式(1)
Re(490)は波長490nmにおける面内レターデーションの値であり、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーションの値であり、Re(630)は波長630nmにおける面内レターデーションの値である。Re(550)の値が正である軸を遅相軸とする。
本発明の課題は、環状オレフィン系樹脂を含み、面内方向のレターデーションの波長分散特性が逆分散性を示す光学フィルム、上記光学フィルムを含む偏光板、上記偏光板を含む液晶表示装置、及び上記光学フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者は鋭意検討し、下記手段により上記課題を解決できることを見出した。
<1>
環状オレフィン系樹脂、及び光異性化ポリマーを含有する光学フィルムであって、
上記光異性化ポリマーは、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有し、
上記光異性化ポリマーの含有率は、上記環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光学フィルム。
<2>
上記光異性化ポリマーの含有率が、上記環状オレフィン系樹脂に対して0.01質量%以上1質量%未満である<1>に記載の光学フィルム。
<3>
上記光異性化ポリマーが、下記一般式(IX)で表される繰り返し単位を有するポリマーである<1>又は<2>に記載の光学フィルム。
Figure 2017146523
一般式(IX)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、単結合、−(CHx1O−、又は−(CHCHO)y1−を表す。x1は2〜10の整数を表す。y1は1〜5の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。Mは、下記一般式(X)で表される基を表す。
Figure 2017146523
一般式(X)中、*は、L及びRとの結合部を表す。Yは、アゾ基、イミノ基、エステル基、*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表し、*11はフェニレン基との結合部を表し、*12はAr又はフェニレン基との結合部を表す。ただし、少なくとも1つのYは、アゾ基、イミノ基、*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表す。Rは置換基を表し、pは0〜4の整数を表す。pが2以上の整数を表す場合は、複数あるRは同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を表し、mが2以上の場合は、複数あるYが同じでも異なっていてもよく、複数あるR及びpはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Arは、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基又はピリジニル基を表す。
<4>
上記光学フィルムが単層のフィルムである<1>〜<3>のいずれかに記載の光学フィルム。
<5>
<1>〜<4>のいずれかに記載の光学フィルムと、偏光子とを含む偏光板。
<6>
<5>に記載の偏光板を含む液晶表示装置。
<7>
環状オレフィン系樹脂と、
2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有する光異性化ポリマーとを含有し、
上記光異性化ポリマーの含有率が、上記環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光異性化ポリマーを含有するドープを支持体上に流延し、流延膜を形成する工程(A)、
上記流延膜を延伸する工程(B)、及び
上記延伸された流延膜に光を照射する工程(C)、
を有する光学フィルムの製造方法。
<8>
上記工程(C)における光が偏光紫外線である<7>に記載の光学フィルムの製造方法。
<9>
上記工程(C)における上記流延膜の膜面温度が25℃以上300℃以下である<7>又は<8>に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂を含み、面内方向のレターデーションの波長分散特性が逆分散性を示す光学フィルム、上記光学フィルムを含む偏光板、上記偏光板を含む液晶表示装置、及び上記光学フィルムの製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。
以下に記載する説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、
環状オレフィン系樹脂、及び光異性化ポリマーを含有する光学フィルムであって、
光異性化ポリマーは、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有し、
光異性化ポリマーの含有率は、環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光学フィルムである。
<環状オレフィン系樹脂>
本発明の光学フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂について、以下に説明する。
環状オレフィン系樹脂とは、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂を表す。
本発明に用いる環状オレフィン構造を有する重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。
環状オレフィン系樹脂としては、下記一般式(A−II)又は(A−III)で表される環状オレフィンに由来する構造単位を有する重合体が好ましい。
下記一般式(A−II)で表される構造単位を有する重合体は、ノルボルネン系付加重合体であり、下記一般式(A−III)で表される構造単位を有する重合体は、ノルボルネン系開環重合体である。
Figure 2017146523
Figure 2017146523
一般式(A−II)及び(A−III)中、rは0〜4の整数を表す。R13〜R16は各々独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X〜X、Y〜Yは各々独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CHCOOR21、−(CHOCOR22、−(CHNCO、−(CHNO、−(CHCN、−(CHCONR2324、−(CHNR2324、−(CHOZ、−(CHW、又はXとYあるいはXとYから構成された(−CO)O、(−CO)NR25を示す。なお、R21、R22、R23、R24、及びR25は各々独立に水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR26 p13−p1(R26は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR26又は−OR26、p1は0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
前述の一般式(A−II)又は(A−III)におけるrが0又は1を表し、R13〜R16、X〜X、Y〜Yが水素原子を表すことが特に好ましい。
一般式(A−II)又は(A−III)で表される構造単位を有する重合体は、更に下記一般式(A−I)で表される構造単位の少なくとも1種以上を含んでもよい。
Figure 2017146523
一般式(A−I)中、R11及びR12は各々独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X及びYは各々独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CHCOOR21、−(CHOCOR22、−(CHNCO、−(CHNO、−(CHCN、−(CHCONR2324、−(CHNR2324、−(CHOZ、−(CHW、又はXとYから構成された(−CO)O、(−CO)NR25を示す。なお、R21、R22、R23、R24、及びR25は各々独立に水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR26 p13−p1(R26は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR26又は−OR26、p1は0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンに由来する構造単位を、環状オレフィン系樹脂の全質量に対して50質量%以上含有することが好ましく、65質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することが最も好ましい。ここで、環状オレフィンに由来する構造単位の割合は環状オレフィン系樹脂中の平均値を表す。
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R3〜R6は水素原子又は−CH3が好ましく、透湿度が低いという観点から水素原子であることがさらに好ましい。X3、及びY3は水素原子、Cl、−COOCH3が好ましく、透湿度が低いという観点から水素原子であることがさらに好ましい。その他の基は適宜選択される。mは0あるいは1が好ましい。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、これらを使用することができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、米国公開特許2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。中でもエチレンとの共重合体であることが好ましい。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
なお、「(共)重合体」とは、「重合体」と「共重合体」の少なくとも一方を表すものである。
本発明においては、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)に制限はないが、例えば150〜250℃というような高いTgの環状オレフィン系樹脂も用いることができる。
環状オレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は1〜500g/10minであることが好ましく、5〜200g/10minであることがより好ましく、40〜200g/10minであることがさらに好ましく、100〜200g/10minであることが最も好ましい。
環状オレフィン系樹脂について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は好ましくは12,000〜100,000であり、より好ましくは16,000〜80,000であり、特に好ましくは20,000〜50,000である。環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは4万以上であり、より好ましくは40,000〜300,000であり、さらに好ましくは60,000〜250,000であり、特に好ましくは80,000〜200,000である。
(分子量の測定)
GPCの測定条件を以下に示す。
GPC:ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム;東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶離液;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度;0.7〜0.8質量%、サンプル注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;示差屈折(RI)計(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、Mnは標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
本発明の光学フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂の含有率は、高温下での寸法安定性の観点から、光学フィルムの全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
<光異性化ポリマー>
本発明の光学フィルムに含まれる光異性化ポリマーについて、以下に説明する。
光異性化ポリマーとは、光異性化反応を起こす(すなわち、光の作用で立体異性化又は構造異性化を起こす)ポリマーである。
本発明の光学フィルムに含まれる光異性化ポリマーは、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有する。
「2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基」における「芳香族6員環」には、ベンゼン環、及び芳香族ヘテロ6員環が含まれる。芳香族ヘテロ6員環としては含窒素芳香族ヘテロ6員環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。また、「芳香族6員環」は置換基を有していてもよい。「2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基」としては、2つのベンゼン環がアゾ基を介して連結した構造を有する基(アゾベンゼンに由来する基)が特に好ましい。「アゾベンゼンに由来する基」とは、アゾベンゼンの任意の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
「シンナモイル基」におけるベンゼン環は置換基を有していてもよい。
「シッフ塩基に由来する基」とは、シッフ塩基の任意の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
「スチルベンに由来する基」とは、スチルベンの任意の水素原子を取り除いた残りの原子団である。スチルベンにおけるベンゼン環は置換基を有していてもよい。
以下、「2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基」を「光異性化基」とも呼ぶ。
光異性化ポリマーは、光異性化基を側鎖に有する繰り返し単位を有するポリマーであることが好ましい。
光異性化基としては、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、又はシンナモイル基が好ましく、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基がより好ましい。
2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シッフ塩基に由来する基、又はシンナモイル基を有する光異性化ポリマーとしては、下記一般式(IX)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることが好ましい。
Figure 2017146523
一般式(IX)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、単結合、−(CHx1O−、又は−(CHCHO)y1−を表す。x1は2〜10の整数を表す。y1は1〜5の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。Mは、下記一般式(X)で表される基を表す。
Figure 2017146523
一般式(X)中、*は、L及びRとの結合部を表す。Yは、アゾ基、イミノ基、エステル基、*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表し、*11はフェニレン基との結合部を表し、*12はAr又はフェニレン基との結合部を表す。ただし、少なくとも1つのYは、アゾ基、イミノ基、*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表す。Rは置換基を表し、pは0〜4の整数を表す。pが2以上の整数を表す場合は、複数あるRは同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を表し、mが2以上の場合は、複数あるYが同じでも異なっていてもよく、複数あるR及びpはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Arは、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基又はピリジニル基を表す。
一般式(IX)中、x1は2〜10の整数を表し、好ましくは2〜6を表す。
y1は1〜5の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表す。
が、アルキル基を表す場合、炭素原子数1〜10のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数が1〜5のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基を表すことが更に好ましい。
が、アルコキシ基を表す場合、炭素原子数1〜9のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数1又は2のアルコキシ基を表すことが更に好ましい。
が、置換基を有していてもよいアミノ基を表す場合、アミノ基の置換基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が更に好ましい。また、上記アルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。
は置換基を表し、好ましくは、炭素原子数1若しくは2のアルキル基、又はハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、又は塩素原子)を表す。
一般式(IX)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、Yがアゾ基を表す場合、すなわち、アゾベンゼンに由来する基を有する光異性化ポリマーである場合、下記一般式(IX−a)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることが好ましい。
Figure 2017146523
一般式(IX−a)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、単結合、−(CHx1O−、又は−(CHCHO)y1−を表す。x1は2〜10の整数を表す。y1は1〜5の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。m1は0〜2の整数を表し、m2は1又は2を表す。R、R、及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、x、y、及びzはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
一般式(IX−a)中、上記一般式(IX)中と同一の記号はそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IX−a)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくは、炭素原子数1若しくは2のアルキル基、又はハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、又は塩素原子)を表す。
また、上記一般式(IX)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、Yが*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表す場合、すなわち、シンナモイル基を有する光異性化ポリマーである場合、下記一般式(IX−b)又は(IX−c)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることが好ましい。
Figure 2017146523
一般式(IX−b)及び(IX−c)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、単結合、−(CHx1O−、又は−(CHCHO)y1−を表す。x1は2〜10の整数を表す。y1は1〜5の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。m1は0〜2の整数を表し、m2は1又は2を表す。R、R、及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、x、y、及びzはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
一般式(IX−b)及び(IX−c)中、上記一般式(IX)中と同一の記号はそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IX−b)及び(IX−c)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくは、炭素原子数1若しくは2のアルキル基、又はハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、又は塩素原子)を表す。
アゾベンゼンに由来する基を有する光異性化ポリマー、シッフ塩基に由来する基、又はスチルベンに由来する基を有する光異性化ポリマーとしては、下記一般式(XI)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることも好ましい。
Figure 2017146523
一般式(XI)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、単結合、−(CHx1O−、又は−(CHCHO)y2−を表す。x1は2〜10の整数を表す。y2は1〜6の整数を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。Y及びYは、それぞれ独立に、アゾ基、イミノ基、エステル基又はビニレン基を表し、Y及びYのうち少なくとも1つはアゾ基、イミノ基、又はビニレン基を表す。m1及びm2は、それぞれ独立に、1又は2を表す。m1又はm2が2の場合は、複数あるY又はYが同じでも異なっていてもよい。
一般式(XI)中、x1は2〜10の整数を表し、好ましくは2〜6を表す。
y2は1〜6の整数を表し、好ましくは3〜6の整数を表す。
又はRが、アルキル基を表す場合、炭素原子数1〜10のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数が1〜5のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基を表すことが更に好ましい。
又はRが、アルコキシ基を表す場合、炭素原子数1〜9のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数1又は2のアルコキシ基を表すことが更に好ましい。
又はRが、置換基を有していてもよいアミノ基を表す場合、アミノ基の置換基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が更に好ましい。また、上記アルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。
本発明における光異性化ポリマーの合成方法としては、実験化学講座(第4版28.高分子合成、120−160頁)等に記載の方法を適宜用いることが可能である。
本発明における光異性化基を側鎖に有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、n−Buはブチル基を表す。
Figure 2017146523
Figure 2017146523
Figure 2017146523
Figure 2017146523
Figure 2017146523
光異性化ポリマーが、光異性化基を側鎖に有する繰り返し単位を有するポリマーである場合、光異性化基を持たない別の繰り返し単位をポリマー鎖中に有していてもよい。
たとえば、下記構造の繰り返し単位を有していてもよく、これらの繰り返し単位を有することで、光異性化ポリマーの配向を制御することができる。
Figure 2017146523
光異性化ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5,000〜300,000であることが好ましく、10,000〜50,000であることがより好ましい。
光異性化ポリマーの分子量分散(Mw/Mn)は、特に限定されないが、1.2〜5.0であることが好ましく、1.3〜3.0であることがより好ましい。Mnは数平均分子量である。
光異性化ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量と同様の方法で測定される。
(光異性化ポリマーの含有率)
本発明の光学フィルム中の光異性化ポリマーの含有率は、環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である。光異性化ポリマーの含有率が上記範囲であることで、Reの波長分散特性が逆分散性を示す光学フィルムとすることができる。光異性化ポリマーの含有率は、環状オレフィン系樹脂に対して0.01質量%以上1.00質量%未満であることが好ましく、0.03質量%以上0.90質量%以下であることがより好ましく0.04質量%以上0.80質量%以下であることが更に好ましい。
<その他の添加剤>
本発明の光学フィルムには、上記した成分以外に、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤など)を添加することができる。
<光学フィルムの膜厚>
本発明の光学フィルムの膜厚は、15μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上80μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることが更に好ましい。
<光学フィルムの光学特性>
本発明の光学フィルムは、可視光域(波長490〜630nm)において、面内方向のレターデーション(Re)の波長分散特性がフラット分散あるいは逆分散性を示すものであり、種々の用途に応じた逆分散性を実現することができる。
本発明の光学フィルムは、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0≦{Re(630)−Re(490)}/Re(550) 式(1)
Re(490)は波長490nmにおける光学フィルムの面内方向のレターデーションであり、Re(550)は波長550nmにおける光学フィルムの面内方向のレターデーションであり、Re(630)は波長630nmにおける光学フィルムの面内方向のレターデーションであり、{Re(630)−Re(490)}/Re(550)は、Re(630)−Re(490)をRe(550)で除した値である。
本発明の光学フィルムは、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(3)を満たすことが更に好ましい。
0<{Re(630)−Re(490)}/Re(550) 式(2)
0.08≦{Re(630)−Re(490)}/Re(550) 式(3)
(レターデーション)
レターデーションの測定方法について以下に記載する。
Re(λ)は、波長λnmにおける面内のレターデーションを表す。
Re(λ)は、Axo Scan(Axometrics社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定することができる。
本発明の光学フィルムは、単層のフィルムであることが好ましい。本発明の光学フィルムは単層のフィルムであることで、フィルムの膜厚が薄く、かつ上記逆分散性を示すことができ、好ましい。
本発明の光学フィルムの用途は特に限定されるものではないが、光学補償フィルムとして好適に用いることができ、液晶表示装置(特に好ましくはVAモードの液晶表示装置)の偏光板の偏光板保護フィルムとして用いることで、表示性能の向上に寄与することができる。
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、製膜法として、溶融製膜法を用いてもよいし、溶液製膜法を用いてもよいが、溶液製膜法を用いることが好ましい。
<溶液製膜法>
以下、溶液製膜法を用いた光学フィルムの製造方法について説明する。
溶液製膜法とは、一般的には、ポリマーを溶剤に溶解させてポリマー溶液(ドープ)を調製し、支持体上にドープを流延して流延膜を形成し、乾燥、支持体からの剥離、延伸等の工程を経て、ポリマーフィルムを作製する方法である。
本発明の光学フィルムの製造方法は、
環状オレフィン系樹脂と、
2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有する光異性化ポリマーとを含有し、
上記光異性化ポリマーの含有率が、上記環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光異性化ポリマーを含有するドープを支持体上に流延し、流延膜を形成する工程(A)、
上記流延膜を延伸する工程(B)、及び
上記延伸された流延膜に光を照射する工程(C)、
を有する光学フィルムの製造方法であることが好ましい。
なお、本明細書では、ドープが支持体上に流延されて形成された膜を「流延膜」と呼び、その後の支持体上での乾燥、支持体からの剥離、乾燥、延伸、及び光照射の各工程においても、「流延膜」と呼ぶこととする。
(溶剤)
環状オレフィン系樹脂及び環状オレフィン系樹脂に対して特定の含有率の光異性化ポリマーを溶解する溶剤としては、有機溶剤が好ましく用いられる。本発明においては、使用できる有機溶剤は特に限定されないが、例えばジクロロメタン、クロロホルムなどの塩素系溶剤、鎖状炭化水素系溶剤、環状炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤から選ばれる溶剤が好ましい。上記溶剤は、1種類の溶剤を単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤を任意の割合で混合して用いてもよい。
(ドープ濃度)
上記溶剤を使用して調製したドープの固形分濃度は特に限定されないが、10〜40質量%とすることが好ましく、15〜35質量%とすることがより好ましい。
(工程(A):流延)
調製したドープを、無端金属支持体上、例えばドラム又はバンド上に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを形成することが好ましい。
ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく、特には−10〜20℃のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。
ドープの流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。
(金属支持体上での乾燥)
金属支持体上における流延膜の乾燥は、一般的には金属支持体の表面側、つまり金属支持体上にある流延膜の表面から熱風を当てる方法、金属支持体のドープ流延面の反対側である裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体を金属支持体のドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱により金属支持体を加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方法が好ましい。
(金属支持体からの剥離)
流延膜を金属支持体から剥離する方法としては特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
剥離時の好ましい残留揮発分濃度は5〜100質量%であり、10〜60質量%がさらに好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
ここで、残留揮発分濃度は下記式により求められる。
残留揮発分濃度(質量%)={(M−N)/N}×100
Mは流延膜の任意時点での質量、NはMを測定した流延膜を140℃で2時間乾燥させた時の質量である。
(乾燥)
剥離された流延膜は、公知の方法により更に乾燥を行ってもよい。
(工程(B):延伸)
本発明の光学フィルムの製造方法は、金属支持体から剥離した流延膜を延伸する工程を含むことが好ましい。
流延膜を延伸する方法には特に限定はなく、一軸延伸法、又は二軸延伸法のいずれを採用しても良い。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して搬送方向に延伸する方法、流延膜の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて搬送方向に延伸する方法、クリップやピンの間隔を搬送方向と直交方向に広げて幅方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて搬送方向と幅方向の両方向に同時に延伸する方法、流延膜を把持し斜め方向に搬送する斜め延伸法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。延伸を行うことによって、レターデーションの発現性を調整することができる。特に、光学フィルムの面内方向のレターデーションをVA(Vertically Aligned)モードの液晶セルに好適な範囲とする場合には、二軸延伸法を採用することが好ましい。
延伸時の温度は、光学フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+40℃)以下である。
本明細書中において「ガラス転移温度(Tg)」とは、フィルム試料を、動的粘弾性測定器(DMA)にて測定した値である。周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定温度範囲30〜240℃、チャック間距離50mmの条件で、5mm×50mmの試験片に引張負荷を掛けて動的粘弾性を測定した。このとき、貯蔵弾性率E’の変曲点の値を「ガラス転移温度(Tg)」とした。
延伸倍率は、発現させようとする光学特性に応じて適宜選択すればよく、通常5%以上、好ましくは10%以上であり、通常300%以下、好ましくは150%以下である。
ここで、「延伸倍率」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
(工程(C):光照射)
本発明の光学フィルムの製造方法においては、延伸工程の後に、流延膜に光照射を行うことが好ましい。光照射により、光異性化ポリマーの光異性化基が光異性化反応を起こし、シス体/トランス体の変換が起きることで面内方向のレターデーションの波長分散特性が逆分散性を示す光学フィルムを得ることができる。
本発明における光照射とは、光異性化ポリマーの光異性化基に光異性化反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光異性化ポリマーにより異なり、その光異性化反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm〜700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外線(UV)である。
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。
光照射は非偏光でも偏光でもよいが、偏光を用いることが好ましく、直線偏光を用いることがさらに好ましい。直線偏光を得る手段としては、偏光板を用いる方法、プリズム系素子若しくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、又は偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
本発明では偏光紫外線を用いることが特に好ましく、直線偏光紫外線を用いることが最も好ましい。
光の照射量には特に限定はないが、光学フィルムの面内方向のレターデーションの逆分散性をより好ましい範囲に調整できるという理由から、1,000〜30,000mJ/cmであることが好ましく、2,000〜20,000mJ/cmであることがより好ましく、3,000〜10,000mJ/cmであることが更に好ましい。
光は、流延膜のいずれの表面に対して、いずれの角度で照射してもよい。光の入射角度の好ましい範囲は、光異性化ポリマーの種類によって異なるが、例えば、流延膜の表面に対して0〜90°、好ましくは40〜90°、より好ましくは50〜90°である。
光照射の際の流延膜の膜面温度は、特に限定されないが、光学フィルムの面内方向のレターデーションの逆分散性をより好ましい範囲に調整できるという理由から、25〜300℃であることが好ましく、40〜300℃であることがより好ましく、60〜200℃であることが更に好ましく、80〜180℃であることが特に好ましい。
なお、膜面温度とは流延膜の表面温度であり、非接触式の赤外温度計で測定できる。測定器は特に限定されないが、例えば非接触ハンディ温度計(IT2−80、(株)キーエンス製)を用いて測定することができる。
本発明の光学フィルムは上記した各工程を経て製造されることが好ましいが、本発明の光学フィルムの製造方法は、上記した以外の工程を含んでもよい。
[偏光板]
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムと、偏光子とを有する。本発明の偏光板は、好ましくは、偏光子と、上記偏光子の両面を保護する2枚の保護フィルムを有する偏光板であって、上記保護フィルムの少なくとも一方が本発明の光学フィルムである。他方の偏光板保護フィルムとしては、本発明の光学フィルム又は公知のフィルムを用いることができる。
偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子、及びポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子及び染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、本発明の偏光板とを含む。
液晶表示装置の液晶セルとしては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)などの様々な表示モードが提案されている。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルが、VAモード又はTNモードの液晶セルであることが好ましく、VAモードの液晶セルであることがより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[実施例1]
<ドープの調製>
下記成分を混合した後、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて24時間攪拌後、孔径20μmのポリプロピレン製デプスフィルターでろ過し、固形分濃度25質量%のドープを得た。
(ドープの組成)
アートンG7810(環状オレフィン系樹脂) 100質量部
化合物(1)(光異性化ポリマー) 0.04質量部
NX90S(日本アエロジル株式会社製マット剤) 0.08質量部
塩化メチレン(溶剤) 300.36質量部
以下、使用した化合物について説明する。
アートンG7810:JSR株式会社製
TOPAS6017S:ポリプラスチックス株式会社製
化合物(1):下記構造の光異性化ポリマー
Figure 2017146523
化合物(2):下記構造の光異性化ポリマー
Figure 2017146523
化合物(3):下記構造の光異性化ポリマー
Figure 2017146523

化合物(4):下記構造の光異性化ポリマー
下記x及びyは繰り返し単位のモル比を評す。
Figure 2017146523
<光学フィルムの作製、及び逆分散性の評価>
流延ギーサーを通して、ドープを金属支持体上に流延し、流延膜を形成した。
次に、金属支持体上で流延膜を40℃の乾燥風により乾燥した後に、金属支持体から剥離し、フィルム両端をクリップで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ140℃の乾燥風で20分間乾燥した。流延膜の両端をクリップで固定したまま、テンターを用いて搬送方向へ延伸倍率50%となるように延伸した。なお、延伸は、給気温度180℃、流延膜の膜面温度170℃、延伸速度60%/分の条件下で縦一軸延伸を行った。
ハロゲンランプより出射される光を偏光板を介して直線偏光(波長365nmの偏光UV)に変換し、延伸後の流延膜の表面に対して垂直の方向から、4000mJ/cmの照射量で照射した。
偏光UV照射時の流延膜の膜面温度は100℃に調整した。
このようにして、実施例1の光学フィルムを作製した。
得られた実施例1の光学フィルムの膜厚は40μmであった。
得られた実施例1の光学フィルムに対して、{Re(630)−Re(490)}/Re(550)を求め、結果を下記表1に示した。
[実施例2〜13]
環状オレフィン系樹脂の種類、光異性化ポリマーの種類、光異性化ポリマーの環状オレフィン系樹脂に対する含有率、偏光UV照射時の膜面温度、又は偏光UVの照射量を下記表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜13の光学フィルムを作製した。
得られた実施例2〜13の光学フィルムに対して、{Re(630)−Re(490)}/Re(550)を求め、結果を下記表1に示した。
[比較例1及び2]
光異性化ポリマーを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のフィルムを作製した。
また、光異性化ポリマーの環状オレフィン系樹脂に対する含有率を下記表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のフィルムを作製した。
得られた比較例1及び2のフィルムに対して、{Re(630)−Re(490)}/Re(550)を求め、結果を下記表1に示した。
Figure 2017146523

上記表1より、実施例1〜13の光学フィルムは、{Re(630)−Re(490)}/Re(550)の値が0以上であり、Reの波長分散特性が逆分散性を示していることが分かる。また、光異性化ポリマー種又はその量を変化させることで、広範囲の逆分散性に対応させられることが分かる。更には、偏光UV照射時の膜面温度又は偏光UV照射量を変更させることでも逆分散性の程度を制御することが可能であることが分かる。これに対して、光異性化ポリマーを含まない比較例1のフィルム、及び光異性化ポリマーの環状オレフィン系樹脂に対する含有率が1.3質量%である比較例2のフィルムは、逆分散性を示していないことが分かる。

Claims (9)

  1. 環状オレフィン系樹脂、及び光異性化ポリマーを含有する光学フィルムであって、
    前記光異性化ポリマーは、2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有し、
    前記光異性化ポリマーの含有率は、前記環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光学フィルム。
  2. 前記光異性化ポリマーの含有率が、前記環状オレフィン系樹脂に対して0.01質量%以上1質量%未満である請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記光異性化ポリマーが、下記一般式(IX)で表される繰り返し単位を有するポリマーである請求項1又は2に記載の光学フィルム。
    Figure 2017146523

    一般式(IX)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、単結合、−(CHx1O−、又は−(CHCHO)y1−を表す。x1は2〜10の整数を表す。y1は1〜5の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。Mは、下記一般式(X)で表される基を表す。
    Figure 2017146523

    一般式(X)中、*は、L及びRとの結合部を表す。Yは、アゾ基、イミノ基、エステル基、*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表し、*11はフェニレン基との結合部を表し、*12はAr又はフェニレン基との結合部を表す。ただし、少なくとも1つのYは、アゾ基、イミノ基、*11−OCO−CH=CH−*12、又は*11−CH=CH−CO−*12を表す。Rは置換基を表し、pは0〜4の整数を表す。pが2以上の整数を表す場合は、複数あるRは同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を表し、mが2以上の場合は、複数あるYが同じでも異なっていてもよく、複数あるR及びpはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Arは、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニレン基又はピリジニル基を表す。
  4. 前記光学フィルムが単層のフィルムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光子とを含む偏光板。
  6. 請求項5に記載の偏光板を含む液晶表示装置。
  7. 環状オレフィン系樹脂と、
    2つの芳香族6員環がアゾ基を介して連結した構造を有する基、シンナモイル基、シッフ塩基に由来する基、及びスチルベンに由来する基から選ばれる少なくとも1種の基を有する光異性化ポリマーとを含有し、
    前記光異性化ポリマーの含有率が、前記環状オレフィン系樹脂に対して1質量%未満である、光異性化ポリマーを含有するドープを支持体上に流延し、流延膜を形成する工程(A)、
    前記流延膜を延伸する工程(B)、及び
    前記延伸された流延膜に光を照射する工程(C)、
    を有する光学フィルムの製造方法。
  8. 前記工程(C)における光が偏光紫外線である請求項7に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 前記工程(C)における前記流延膜の膜面温度が25℃以上300℃以下である請求項7又は8に記載の光学フィルムの製造方法。
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