JP2015044902A - 逆波長分散フィルム用樹脂組成物及びこれからなる逆波長分散フィルム - Google Patents

逆波長分散フィルム用樹脂組成物及びこれからなる逆波長分散フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性を同時に満たした新規な逆波長分散フィルム用樹脂組成物を提供する。【解決手段】修飾多糖類(A)を含有する逆波長分散フィルム用樹脂組成物であって、(A)が光二量化反応性化合物(B)により多糖類(a)中の少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又は少なくとも1つのアミノ基を化学修飾して光二量化反応性基を導入した修飾多糖類である逆波長分散フィルム用樹脂組成物。光二量化反応性化合物(B)が桂皮酸骨格含有化合物(b1)、マレイミド骨格含有化合物(b2)、クマリン骨格含有化合物(b3)、スチルベン骨格含有化合物(b4)及びアントラセン骨格含有化合物(b5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である逆波長分散フィルム用樹脂組成物。;この逆波長分散フィルム用樹脂組成物から形成される逆波長分散フィルム又はシート。【選択図】なし

Description

本発明は、逆波長分散フィルム用樹脂組成物及びこれからなる逆波長分散フィルムに関する。
セルロースアセテートは、難燃性、透明性、表面外観及び電気絶縁性などに優れるので、様々な分野で用いられている。
セルロースアセテートの用途の一つである逆波長分散フィルムとしては、正の複屈折性と逆波長分散性を満たす樹脂が求められており、これらを満足する樹脂として、脂肪族アシル基及び/又は芳香族アシル基を有するアセチル基置換度2.5未満のセルロースアセテート(特許文献1及び2)が開発されている。しかしながら、耐水性が不良であるという課題を有している。
また、位相差フィルム用セルロース誘導体として、(メタ)アクリロイル基の重合により架橋構造を導入したセルロース誘導体も検討されているが(特許文献3)、正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性を同時に満たすことができていなかった。
特開2013−037161号公報 特開2008−095026号公報 国際公開第2006/090700号
本発明の目的は、正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性を同時に満たした新規な逆波長分散フィルム用樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、修飾多糖類(A)を含有する逆波長分散フィルム用樹脂組成物であって、(A)が光二量化反応性化合物(B)により多糖類(a)中の少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又は少なくとも1つのアミノ基を化学修飾して光二量化反応性基を導入した修飾多糖類である逆波長分散フィルム用樹脂組成物;この逆波長分散フィルム用樹脂組成物から形成される逆波長分散フィルム又はシートである。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物を用いれば、正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性を同時に満たした逆波長分散フィルムを得ることができる。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、修飾多糖類(A)を含有する逆波長分散フィルム用樹脂組成物であって、(A)が光二量化反応性化合物(B)により多糖類(a)中の少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又は少なくとも1つのアミノ基を化学修飾して光二量化反応性基を導入した修飾多糖類である逆波長分散フィルム用樹脂組成物である。
逆波長分散フィルムとは、長波長になるほど複屈折率が大きくなる機能を有するフィルムを指す。
本発明における多糖類(a)としては、従来知られている多糖が含まれ、特に制限はなく使用でき、具体的には、デンプン(アミロース及びアミロペクチンを含む)、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン及びキサンタンガム並びにこれらの有する官能基を光二量化反応性化合物(B)以外で化学修飾した多糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖が含まれる。
光二量化反応性化合物(B)以外で化学修飾した多糖としては、化学修飾した公知の多糖が含まれる。正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性の観点から、化学修飾した公知のセルロースが好ましい。化学修飾したセルロースとしては、例えば、アシル化セルロース(a1)、エーテル化セルロース(a2)及びエーテル化アシル化セルロース(a3)が含まれる。
アシル化セルロース(a1)としては、水酸基で一部置換されていてもよい炭素数が2〜19のアシル基で置換されたアシル化セルロースが含まれ、例えば、セルロースとカルボン酸又はラクトンとの反応物が挙げられる。
カルボン酸としては、炭素数2〜19のものが含まれ、例えば、酢酸、酪酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクチル酸、ネオデカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及び安息香酸等が挙げられる。カルボン酸は、酸ハロゲン化物{ハロゲンとしては、例えば、F、Cl及びBr等}であってもよい。また、これらは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ラクトンとしては、炭素数2〜19のものが含まれ、β−ラクトン(β−プロピオラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、大環状ラクトン(エナントラクトン、ウンデカノラクトン、ドデカラクトン等)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)等が挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
水酸基で一部置換されていてもよい炭素数が2〜19のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、6−ヒドロキシヘキサノイル基(HO−C510−CO−)及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオニル基等が挙げられる。
(a1)として、具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース及びアセチル3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオニルセルロース等が挙げられる。
(a1)のうち、耐水性の観点から、水酸基で一部置換されていてもよい炭素数が2〜19のアシル基で置換されたアシル化セルロースが好ましく、さらに好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基及びバレリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するアシル化セルロースであり、次にさらに好ましくはジアセチルセルロース、アセチルブチリルセルロース及びアセチルプロピオニルセルロースである。
エーテル化セルロース(a2)としては、水酸基又はカルボキシル基で一部置換されていてもよいアルキルの炭素数が1〜18のアルキルエーテル基又は炭素数6〜18の芳香族アルキルエーテル基で置換されたエーテル化セルロースが含まれる。
アルキルエーテル基としては、水酸基又はカルボキシル基で一部置換されていてもよいアルキルの炭素数が1〜18のアルキルエーテル基が含まれ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及びカルボキシメトキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものが含まれる。
芳香族アルキルエーテル基としては、1−フェニルエトキシ基及び2−フェニルエトキシ基等が挙げられる。
アルキルエーテル基としては、耐水性の観点から、水酸基又はカルボキシル基で一部置換されていてもよいアルキルの炭素数が1〜18のアルキルエーテル基が好ましく、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメトキシル基及びヒドロキシエトキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基である。
芳香族アルキルエーテル基としては、耐水性の観点から、1−フェニルエトキシ基及び2−フェニルエトキシ基が好ましい。
(a2)として、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、1−フェニルエチルセルロース、2−フェニルエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
(a2)のうち、耐水性の観点から、水酸基又はカルボキシル基で一部置換されていてもよいアルキルの炭素数が1〜18のアルキルエーテル基で置換されたエーテル化セルロースが好ましく、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメトキシル基及びヒドロキシエトキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエーテル化セルロースであり、次にさらに好ましくはエチルセルロース及びメチルセルロースであり、最も好ましくはエチルセルロースである。
エーテル化アシル化セルロース(a3)としては、水酸基又はカルボキシル基で一部置換されていてもよいアルキルの炭素数が1〜18のアルキルエーテル基及び水酸基で一部置換されていてもよい炭素数が2〜19のアシル基を有するセルロースが含まれ、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等が挙げられる。
エーテル基及びアシル基として好ましいものは、(a1)及び(a2)と同様である。
(a3)のうち、耐水性の観点から、1−フェニルエチルセルロースアセテート、2−フェニルエチルセルロースアセテート、エチルセルロースベンゾエート、エチルセルロース6−ヒドロキシヘキサノエート及びエチルセルロース3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
多糖類(a)としては、正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性の観点から、セルロース、キチン、キトサン及び化学修飾したセルロースが好ましく、さらに好ましくは化学修飾したセルロースであり、次にさらに好ましくはアシル化セルロース(a1)及び/又はエーテル化セルロース(a2)である。
本発明において光二量化反応性化合物(B)とは、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基と光で二量化し得る光二量化反応性基とを有する化合物である。
ヒドロキシル基と反応し得る官能基としては、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン基及びグリシジル基等が挙げられる。
アミノ基と反応し得る官能基としては、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン基及びグリシジル基等が挙げられる。
光二量化反応性基としては、光二量化反応をし得る二重結合、光二量化反応をしうる部位を有する芳香族縮合環を有する基等が含まれ、具体的には、シンナモイル基、クマリン基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基及びウラシル基等が挙げられる。
これらの光二量化反応性基は、少なくとも1種類含まれていればよく、2種以上が含まれていてもよい。
光二量化反応性基が1種類である場合には、同種の光二量化反応性基のみが存在するため架橋構造の形成(または二量化)を制御し易い。一方、2種以上が含まれている場合には、異種の光二量化反応性基は架橋構造を形成(二量化)する光の波長が異なる場合があり、異なる光の波長を用いて架橋構造を形成させる必要がある場合がある。
(B)としては、桂皮酸骨格含有化合物(b1)、マレイミド骨格含有化合物(b2)、クマリン骨格含有化合物(b3)、スチルベン骨格含有化合物(b4)、アントラセン骨格含有化合物(b5)及びカルコン骨格含有化合物(b6)が含まれる。
(B)は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
桂皮酸骨格含有化合物(b1)としては、桂皮酸骨格{Ph−CH=CH−COO−}を有する炭素数9〜20の化合物が含まれ、具体的には、桂皮酸及び桂皮酸骨格中のフェニル基の水素原子の一部又は全部が置換されたもの{(2、3又は4)−メチル桂皮酸、(2、3又は4)−エチル桂皮酸、(2、3又は4)−ホルミル桂皮酸、(2、3又は4)−ニトロ桂皮酸、(2、3又は4)−(トリフルオロメチル)桂皮酸、(2、3又は4)−メトキシ桂皮酸、(2、3又は4)−ヒドロキシ桂皮酸等}並びにこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物及びエステル化物{炭素数1〜12のヒドロキシル基を有する化合物とのエステル化物が含まれ、ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、炭素数1〜12のアルキルアルコール等}等が挙げられる。
(b1)のうち、逆波長分散性の観点から、桂皮酸骨格{Ph−CH=CH−COO−}を有する炭素数9〜20の化合物が好ましく、さらに好ましくは桂皮酸、4−メチル桂皮酸、4−(トリフルオロメチル)桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸及び4−ヒドロキシ桂皮酸並びにこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物及びエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、次にさらに好ましくは桂皮酸、二桂皮酸無水物、桂皮酸ハロゲン化物及び桂皮酸のエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
マレイミド骨格含有化合物(b2)としては、マレイミド骨格を有する炭素数4〜20の化合物が含まれ、具体的には、マレイミド、2−(2,5−ジヒドロ−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−1−イル)プロピオン酸、N−フェニルマレインイミド、4−(メチルフェニル)マレインイミド、N−ビニルマレインイミド、N−カルバモイルマレインイミド、N,N’−(1,2−フェニレン)ビス(マレインイミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(マレインイミド)及びN−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジクロロマレインイミド等が挙げられる。
(b2)のうち、逆波長分散性の観点から、マレイミド骨格を有する炭素数4〜12の化合物が好ましい。
クマリン骨格含有化合物(b3)としては、クマリン骨格を有する炭素数9〜20の化合物が含まれ、具体的には、クマリン、(3,4−、5,6−、6,7−又は7,8−)ジヒドロクマリン、(3,4−、5,6−、6,7−、7,8−、5,7−、6,8−又は5,8−)ジメトキシクマリン、(5、6、7又は8)−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、(5、6、7又は8)−メチルクマリン、(5,6−、6,7−、7,8−、5,7−、6,8−又は5,8−)ジメチルクマリン及びクマリン−3−カルボン酸等が挙げられる。
(b3)のうち、逆波長分散性の観点から、クマリン骨格を有する炭素数9〜15の化合物が好ましい。
スチルベン骨格含有化合物(b4)としては、スチルベン骨格{Ph−CH=CH−Ph}並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基を有する炭素数14〜32の化合物が含まれ、具体的には、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基としてカルボキシル基を有するもの{(3又は4)−スチルベンカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸及び3’−(ベンジルオキシ)−3−ヒドロキシ−4’−メトキシ−α,2−スチルベンジカルボン酸等}並びにこれらの酸無水物、塩化物及びエステル化物、スルホ基を有するもの{4,4’−ジニトロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、2,2’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−イレンジビニレン)ビス(ベンゼンスルホン酸ナトリウム)及び4,4’−ビニレンビス(3−スルホナトベンゼンジアゾニウム)等}等が挙げられる。
(b4)のうち、逆波長分散性の観点から、スチルベン骨格{Ph−CH=CH−Ph}並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基を有する炭素数14〜32の化合物が好ましく、さらに好ましくはカルボキシル基を有するものが好ましく、特に好ましくはスチルベンカルボン酸である。
アントラセン骨格含有化合物(b5)としては、アントラセン骨格並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基を有する炭素数14〜32の化合物が含まれ、具体的には、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得るハロゲン基を有するもの{2−クロロアントラセン、9−(ブロモメチル)アントラセン、7−クロロメチル−12−メチルベンゾ[a]アントラセン及び11−フルオロ−7,12−ジメチルベンゾ[a]アントラセン等 }並びにカルボキシル基を有するもの{1−アントラセンカルボン酸及び2−アントラセンカルボン酸等}等が挙げられる。
(b5)のうち、逆波長分散性の観点から、カルボキシル基を有するものが好ましく、さらに好ましくは1−アントラセンカルボン酸及び2−アントラセンカルボン酸である。
カルコン骨格含有化合物(b6)としては、カルコン骨格並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基を有する炭素数15〜32の化合物が含まれ、具体的には、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得るハロゲン基を有するもの{4’−クロロカルコン、4−クロロ−4’−ブロモカルコン、4’−ヨードカルコン及び4’−(メチルチオ)−4−クロロカルコン等}、カルボキシル基を有する化合物{2’−カルボキシメトキシ−4,4’−ビス(3−メチル−2−ブテニルオキシ)−α,β−ジヒドロカルコン等}等が挙げられる。
光二量化反応性化合物(B)としては、逆波長分散性の観点から、桂皮酸骨格含有化合物(b1)、マレイミド骨格含有化合物(b2)、クマリン骨格含有化合物(b3)、スチルベン骨格含有化合物(b4)及びアントラセン骨格含有化合物(b5)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくは桂皮酸骨格含有化合物(b1)、マレイミド骨格含有化合物(b2)、スチルベン骨格含有化合物(b4)及びアントラセン骨格含有化合物(b5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、次にさらに好ましくは2−(2,5−ジヒドロ−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−1−イル)プロピオン酸、スチルベンカルボン酸、1−アントラセンカルボン酸、2−アントラセンカルボン酸、桂皮酸、4−メチル桂皮酸、4−(トリフルオロメチル)桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸及び4−ヒドロキシ桂皮酸並びにこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物及びエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくは桂皮酸、4−メチル桂皮酸、4−(トリフルオロメチル)桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸及び4−ヒドロキシ桂皮酸並びにこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物及びエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましくは4−メチル桂皮酸、桂皮酸、二桂皮酸無水物、桂皮酸ハロゲン化物及び桂皮酸のエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本発明において、修飾多糖類(A)は、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する多糖類(a)において、(a)の少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又は少なくとも1つのアミノ基が上記光二量化反応性化合物(B)で化学修飾されてなるものである。
(A)は、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する化合物と、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基と反応し得る官能基{カルボキシル基等}を有する化合物とを反応させる際に用いられる公知の方法を用いて、多糖類(a)及び光二量化反応性化合物(B)を化学反応させることにより得ることができる。
修飾多糖類(A)において、光二量化反応性化合物(B)で化学修飾された官能基の割合は、多糖類(a)中のヒドロキシル基及びアミノ基の合計数を基準として、逆波長分散性及び耐水性の観点から、0.001〜100%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜80%である。
化学修飾された官能基の導入率は、1H−NMRによって求めることができる。具体的には、下記測定法によって測定される。
<(B)で化学修飾された官能基の割合の測定方法>
修飾前の多糖類(a)及び修飾多糖類(A)の1H−NMRを測定する。それぞれの測定結果で得られた下記積分値を下記数式(1)に当てはめることにより、(B)で修飾された官能基の割合(%)を算出する。
(B)で修飾された官能基の割合(%)=[(TO+TN)/T4−(SO+SN)/S4]/[(TO+TN)/T4]×100 (1)
O=修飾多糖類(A)のヒドロキシル基の水素原子の積分値
N={修飾多糖類(A)の1級アミノ基の水素原子の積分値/2}+2級アミノ基の水素原子の積分値
4=修飾多糖類(A)を構成する単糖ユニットの4位の炭素原子に直結している水素原子のNMR積分値
O=多糖類(a)のヒドロキシル基の水素原子の積分値
N={多糖類(a)の1級アミノ基の水素原子の積分値/2}+{多糖類(a)の2級アミノ基の水素原子の積分値}
4=多糖類(a)を構成する単糖ユニットの4位の炭素原子に直結している水素原子のNMR積分値
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
装置:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)
周波数:300MHz
修飾多糖類(A)の分子量(数平均分子量(Mn)、単一の化合物の場合は分子量)は、成膜性及び耐水性の観点から、好ましくは1万〜50万であり、更に好ましくは2万〜30万であり、特に好ましくは3万〜15万である。
本発明における数平均分子量(Mn)とは、下記条件にて測定されるものである。
装置 :ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
溶媒 :N,N−ジメチルホルムアミド
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel MIXED−B
カラム温度 :40℃
検出器:RI検出器
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、修飾多糖類(A)を含有するものであるが、(A)以外に、多糖類(a)を含んでも良い。
多糖類(a)としては、正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性の観点から、アシル化セルロース(a1)、エーテル化セルロース(a2)及びエーテル化アシル化セルロース(a3)が好ましく、さらに好ましくはエーテル化セルロース(a2)である。
多糖類(a)を含む場合、逆波長分散フィルム用樹脂組成物中の(A)の含有量(重量%)は、逆波長分散フィルム用樹脂組成物の重量を基準として、逆波長分散性の観点から、70〜99.95が好ましく、さらに好ましくは90〜99.95である。
逆波長分散フィルム用樹脂組成物中の(a)の含有量(重量%)は、逆波長分散フィルム用樹脂組成物の重量を基準として、耐水性及び逆波長分散性の観点から、0.05〜30が好ましく、さらに好ましくは0.05〜10である。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、耐光性の観点から、活性エネルギー線によりラジカルを発生させる活性エネルギー線ラジカル開始剤及び熱によりラジカルを発生させる熱ラジカル開始剤等のラジカル開始剤を含んでいないことが好ましい。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物中の修飾多糖類(A)が有する光二量化反応性基は、ラジカル開始剤を含んでいなくても、紫外線によって二量化することができる。また、ラジカル開始剤を含んでいない場合、経時的に黄変することがないので好ましい。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、さらに必要により有機溶剤及びレベリング剤等を添加することができる。
有機溶剤としては、グリコールエーテル(エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等)、エステル(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、乳酸メチル及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン及びメシチレン等)、アルコール(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロール及びシトロネロール等)、アミド(N、N−ジメチルアセトアミド及びN、N−ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド)及びエーテル(テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン及び1,8−シネオール等)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の添加量は、組成物の粘度の観点から、逆波長分散フィルム用樹脂組成物の重量に対して0〜400重量%であることが好ましく、更に好ましくは3〜350重量%、特に好ましくは5〜300重量%である。
レベリング剤としては、フッ素系のレベリング剤(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等)、シリコーン系のレベリング剤(アミノポリエーテル変性シリコーン、メトキシ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーン等)が挙げられる。レベリング剤の添加量は、逆波長分散フィルム用樹脂組成物の重量に対して、添加効果及び透明性の観点から好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、更に、使用目的に合わせて、無機微粒子、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等、逆波長分散フィルム組成物に添加可能な公知の添加剤を添加することができる。具体的には、公知文献(特開2012−088408等)等に記載のものが挙げられる。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、塗料及びインキ等に従来使用されている顔料を添加できる。顔料の添加量は、逆波長分散フィルム用樹脂組成物の重量に対して、隠蔽性の観点から、好ましくは0〜300重量%、更に好ましくは0〜200重量%である。
顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、アルミナ、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト及びチタンブラック等が挙げられる。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、顔料を用いる場合その分散性及び逆波長分散フィルム用樹脂組成物の保存安定性を向上させるために、顔料分散剤を添加できる。
顔料分散剤としては、ビックケミー社製顔料分散剤(Anti−Terra−U、Disperbyk−101、103、106、110、161、162、164、166、167、168、170、174、182、184及び2020等)、味の素ファインテクノ(株)製顔料分散剤(アジスパーPB711、PB821、PB814、PN411及びPA111等)、ルーブリゾール(株)製顔料分散剤(ソルスパーズ5000、12000、32000、33000及び39000等)が挙げられる。これらの顔料分散剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。顔料分散剤の添加量は、逆波長分散フィルム用樹脂組成物の重量に対して、隠蔽性の観点から好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%である。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、基材に塗布したり、押出成形等することにより用いることができる。
基材としては、離型PET等が挙げられる。
基材への塗布方法としては、スピンコート、ロールコート及びスプレーコート等の公知のコーティング法並びに平版印刷、カルトン印刷、金属印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷及びグラビア印刷といった公知の印刷法を適用できる。また、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式の塗布も適用できる。
塗工膜厚は、乾燥後の膜厚として、乾燥性、耐摩耗性、耐溶剤性及び耐汚染性の観点から、0.5〜300μmが好ましく、さらに好ましくは1〜250μmである。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合は、塗工後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、塗膜の平滑性及び外観の観点から、10〜200℃が好ましく、さらに好ましくは30〜150℃である。
また、逆波長分散フィルム用樹脂組成物が有機溶剤を含まない場合は、溶融混合しても良い。また、フィルム及びシートの成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法及びインフレーション法等)等が挙げられる。
本発明の逆波長分散フィルム又はシートは、上記逆波長分散フィルム用樹脂組成物から形成されるものである。
本発明の逆波長分散フィルム及びシートは透明であることが好ましい。
逆波長分散フィルム及びシートのへーズ値は、透明性の観点から、3%以下であることが好ましい。
逆波長分散フィルム及びシートの全光線透過率は、着色性及び透明性の観点から、85%以上であることが好ましい。
逆波長分散フィルム又はシートの製造方法としては、フィルム延伸性、正の複屈折性及び逆波長分散性の観点から、逆波長分散フィルム用樹脂組成物から形成されるフィルム又はシートを、延伸処理した後、紫外線を照射する工程を含む逆波長分散フィルムの製造方法が好ましい。
延伸処理の温度は、高い正の複屈折性の観点から、逆波長分散フィルム用樹脂組成物中の修飾多糖類(A)のガラス転移温度(L)(℃)を基準として、(L−20)℃〜(L+20)℃が好ましく、さらに好ましくは(L−10)℃〜(L+10)℃である。
修飾多糖類(A)のガラス転移温度は、示差走査熱量計{例えば、セイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580}を用いて、ASTMD3418−82に規定の方法(DSC法)で測定できる。
延伸は、縦、横又は斜めだけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次二軸延伸でもよい。
延伸の度合いは、ヘイズ、高い正の複屈折性及び耐水性の観点から、150〜300%が好ましく、さらに好ましくは180〜220%である。
延伸後の逆波長分散フィルム又はシートの厚さは、高い正の複屈折性の観点から、10〜200μmが好ましく、さらに好ましくは30〜120μmである。
紫外線の照射量は、耐水性及び逆波長分散性の観点から、100〜10000mJ/cm2が好ましく、さらに好ましくは500〜10000mJ/cm2である。
紫外線の波長は、(A)中の光二量化反応性基の種類によって適宜選択することができ、光二量化反応性の観点から、100〜400nmが好ましく、さらに好ましくは140〜380nmである。
紫外線照射後の逆波長分散フィルム又はシートの光二量化率(%)は、耐水性及び逆波長分散性の観点から、10〜80%が好ましく、さらに好ましくは20〜70%である。
光二量化率は、下記測定方法によって測定できる。
<光二量化率>
紫外−可視光光度計UV−2400((株)島津製作所製)を用いて光二量化部位である二重結合に起因する吸収ピークを測定し、紫外線照射前後の変化の割合を光二量化率とする。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に規定しない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
<製造例1〜30>
[修飾多糖類(A)の合成]
下記表1及び2に記載の量の多糖類(a)をシクロヘキサノン150部に加え、120℃で2時間撹拌した。p−トルエンスルホン酸5部を加え、下記表1及び表2に記載の量の光二量化反応性化合物(B)を加え、130℃で8時間撹拌し、反応後溶液を得た。得られた反応後溶液を1000部のメタノールに再沈殿した。生成した白色沈殿をろ過後、減圧下60℃で乾燥し、修飾多糖類(A−1)〜(A−30)の白色粉末を得た。得られた修飾多糖類(A−1)〜(A−30)について、数平均分子量、ガラス転移温度、光二量化反応性化合物(B)で化学修飾された官能基の割合を測定した。結果を表1及び表2に示す。
<比較製造例1〜9>
下記表3に記載の量の多糖類(a)を用いて、光二量化反応性化合物(B)に代えて光非二量化反応性化合物(B’)を用いて、上記同様の製造方法にて、修飾多糖類(A’−1)〜(A’−9)を得た。得られた修飾多糖類(A’−1)〜(A’−9)について、数平均分子量、ガラス転移温度、光非二量化反応性化合物(B’)で化学修飾された官能基の割合を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2015044902
Figure 2015044902
Figure 2015044902
なお、表1〜3の各成分は下記を用いた。
デンプン−1:日本コーンスターチ(株)製、「コーンスターチホワイト」
セルロース:日本製紙ケミカル(株)製、「KCフロックW−50GK」
デンプン−2:(株)林原製、「アミロースEX−I」
ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達(株)製、「NISOO HPC」
エチルセルロース:ダウケミカル(株)製、「エトセル」
メチルセルロース:信越化学(株)製、「METOLOSE SM−8000」
セルロースアセテート−1:(株)ダイセル製、「酢酸セルロースL−20」
セルロースアセテート−2:イーストマンケミカル社製、「CA320−S」
セルロースアセテートプロピオネート−1:イーストマンケミカル社製、「CAP482−0.5」
セルロースアセテートプロピオネート−2:イーストマンケミカル社製、「CAP482−2.0」
セルロースアセテートブチレート−1:イーストマンケミカル社製、「CAB551−0.2」
セルロースアセテートブチレート−2:イーストマンケミカル社製、「CAB381−0.5」
桂皮酸:東京化成工業(株)製
4−メチル桂皮酸:東京化成工業(株)製
1−アントラセンカルボン酸:東京化成工業(株)製
2−アントラセンカルボン酸:東京化成工業(株)製
2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1―イル)−プロピオン酸:Sigma−Aldrich社製
4−スチルベンカルボン酸:Sigma−Aldrich社製
安息香酸:東京化成工業(株)製
4−フェニル安息香酸:東京化成工業(株)製
アクリル酸:東京化成工業(株)製
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド:BASF社製「ルシリン TPO」
修飾多糖類(A)の数平均分子量は、下記条件にて測定した。
装置 :ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
検出器:RI検出器
溶媒 :N,N−ジメチルホルムアミド
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel MIXED−B
カラム温度 :40℃
修飾多糖類(A)のガラス転移温度は、セイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTMD3418−82に規定の方法(DSC法)で測定した。
修飾多糖類(A)について、光二量化反応性化合物(B)で化学修飾された官能基の割合は下記測定法で測定した。なお、比較製造例1〜6及び8〜9で得た修飾多糖類(A’−1)〜(A’−6)及び(A’−8)〜(A’−9)については、下記測定法で光非二量化反応性化合物(B’)で化学修飾された官能基の割合を測定した。
<(B)で化学修飾された官能基の割合の測定方法>
修飾前の多糖類(a)及び修飾多糖類(A)の1H−NMRを測定した。それぞれの測定結果で得られた下記積分値を下記数式(1)に当てはめることにより、(B)で修飾された官能基の割合(%)を算出した。
(B)で修飾された官能基の割合(%)=[(TO+TN)/T4−(SO+SN)/S4]/[(TO+TN)/T4]×100 (1)
O=修飾多糖類(A)のヒドロキシル基の水素原子の積分値
N={修飾多糖類(A)の1級アミノ基の水素原子の積分値/2}+2級アミノ基の水素原子の積分値
4=修飾多糖類(A)を構成する単糖ユニットの4位の炭素原子に直結している水素原子のNMR積分値
O=多糖類(a)のヒドロキシル基の水素原子の積分値
N={多糖類(a)の1級アミノ基の水素原子の積分値/2}+{多糖類(a)の2級アミノ基の水素原子の積分値}
4=多糖類(a)を構成する単糖ユニットの4位の炭素原子に直結している水素原子のNMR積分値
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
装置:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)
周波数:300MHz
<実施例1〜30、比較例1〜7>
製造例1〜30で製造した(A−1)〜(A−30)及び比較製造例1〜7で製造した(A’−1)〜(A’−7)それぞれ100部に、溶剤として1,3−ジオキソラン350部をそれぞれ配合し、ディスパーサーで均一に混合し、実施例1〜30及び比較例1〜7の逆波長分散フィルム用樹脂組成物を作製した。
<比較例8>
比較製造例8で製造した(A’−8)100部に、溶剤として1,3−ジオキソラン350部、開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド0.5部を配合し、ディスパーサーで均一に混合し、比較例8の逆波長分散フィルム用樹脂組成物を作製した。
<比較例9>
比較製造例9で製造した(A’−9)100部に、溶剤として1,3−ジオキソラン350部、開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド2.5部を配合し、ディスパーサーで均一に混合し、比較例9の逆波長分散フィルム用樹脂組成物を作製した。
<実施例31〜60>
実施例1〜30で得た各逆波長分散フィルム用樹脂組成物を、表面処理を施した厚さ120μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム[東洋紡(株)製「コスモシャイン」]に、アプリケーターを用いて膜厚120μmとなるように塗布して、80℃で2時間乾燥した。乾燥後、PETフィルムから剥離することで、乾燥後フィルムを得た。
得られたフィルムは、ラボ用二軸延伸装置[(株)紫山科学器械製作所製「SS−70」]にて、表4に記載の温度で200%まで延伸し、延伸後フィルムとした。
この延伸後フィルムに、ベルトコンベア式高圧水銀ランプ[アイグラフィックス(株)製「EYE GRANDAGE ECS−301G」]にて波長320〜400nmの光を500mJ/cm2照射することで、実施例31〜60の逆波長分散フィルムを得た。
<実施例61〜90>
実施例1〜30で得た各逆波長分散フィルム用樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に延伸後フィルムを作成した。
この延伸後フィルムに、ベルトコンベア式高圧水銀ランプ[アイグラフィックス(株)製「EYE GRANDAGE ECS−301G」]にて波長320〜400nmの光を3000mJ/cm2照射することで、実施例61〜90の逆波長分散フィルムを得た。
<比較例10〜16>
比較例1〜7で得た各逆波長分散フィルム用樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、延伸後フィルムを作成した。この延伸後フィルムを比較例10〜16の逆波長分散フィルムとした。
<比較例17〜18>
比較例8〜9で得た各逆波長分散フィルム用樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、延伸後フィルムを作成した。
この延伸後フィルムに、ベルトコンベア式高圧水銀ランプ[アイグラフィックス(株)製「EYE GRANDAGE ECS−301G」]にて波長320〜400nmの光を500mJ/cm2照射することで、比較例17〜18の逆波長分散フィルムを得た。
[光二量化率]
紫外−可視光光度計UV−2400((株)島津製作所製)を用いて、実施例31〜90において、延伸後フィルム及び逆波長分散フィルムについて、光二量化部位である二重結合に起因する波長270nmにおける吸収ピークを測定し、下記数式(2)により二量化率を算出した。結果を表4に示す。
二量化率(%)={(延伸後フィルムの吸収ピーク)−(逆波長分散フィルムの吸収ピーク)}/(延伸後フィルムの吸収ピーク)×100 (2)
[架橋率]
赤外分光光度計FTIR−8400((株)島津製作所製)を用いて、比較例17〜18において、延伸後フィルム及び逆波長分散フィルムについて、アクリロイル基に起因する波長1620〜1640cm-1における吸収ピークを測定し、下記数式(3)により架橋率を算出した。結果を表4に示す。
架橋率(%)={(延伸後フィルムの吸収ピーク値)−(逆波長分散フィルムの吸収ピーク値)}/(延伸後フィルムの吸収ピーク値)×100 (3)
[フィルムの性能評価]
作成した逆波長分散フィルムを用いて、下記(1)〜(3)の評価を行った。結果を表4に示す。
(1)透過率(透明性)
JIS−K7136に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」BYK gardner社製]を用いて透過率を測定した。透過率は、基材であるPETフィルムの透過率をブランクとして測定した値であり、いずれも単位は%である。
(2)正の複屈折性及び逆波長分散性
大塚電子(株)製「RETS−100」にて波長450nm、590nm及び630nmの光に対する面内リタデーション(Re)を測定した。
正の複屈折性としては、波長590nmでのリタデーション値をフィルム膜厚で割った値を示す。なお、この値が大きいほど、正の複屈折性が高いことを示す。
逆波長分散性としては、Re(450)/Re(590)及びRe(630)/Re(590)の値を示す。なお、Re(450)、Re(590)及びRe(630)はそれぞれ波長450nm、550nm及び630nmでの面内リタデーションを指す。Re(450)/Re(590)=0.90±0.03かつRe(630)/Re(590)=1.06±0.03であるものが、逆波長分散性がさらに良好であるものである。
その中でも、Re(450)/Re(590)が下限(0.87)に近く、Re(630)/Re(590)が上限(1.09)に近いものが逆波長分散性が特に好ましいものである。
(3)耐水性
逆波長分散フィルムを48時間、40℃に温調した水に浸漬した後、面内リタデーション(波長590nm)を測定し、浸漬前のリタデーション(波長590nm)からの変化率(%)を算出した。変化率が低いほど、耐水性が高いことを示す。
Figure 2015044902
表4の結果から、本発明の実施例1〜30の逆波長分散フィルム用樹脂組成物を用いて作成した実施例31〜90の逆波長分散フィルムは、高い正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性を同時に兼ね備えていることが分かる。
一方、比較例1〜9の従来の逆波長分散フィルム用樹脂組成物を用いて作成した比較例10〜18の逆波長分散フィルムは、逆波長分散性と耐水性が両立できないことが分かる。
本発明の逆波長分散フィルム用樹脂組成物は、透明性、正の複屈折性、逆波長分散性及び耐水性に優れているため、特に逆波長分散フィルム又はシートとして有用である。また、位相差フィルム又はシートとしても有用である。

Claims (12)

  1. 修飾多糖類(A)を含有する逆波長分散フィルム用樹脂組成物であって、(A)が光二量化反応性化合物(B)により多糖類(a)中の少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又は少なくとも1つのアミノ基を化学修飾して光二量化反応性基を導入した修飾多糖類である逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  2. 多糖類(a)が、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン及びキサンタンガム並びにこれらを光二量化反応性化合物(B)以外で化学修飾した多糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖である請求項1に記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  3. 修飾多糖類(A)において、光二量化反応性化合物(B)で化学修飾された官能基の割合が、多糖類(a)中のヒドロキシル基及びアミノ基の合計数を基準として0.001〜100%である請求項1又は2に記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  4. 光二量化反応性化合物(B)が桂皮酸骨格含有化合物(b1)、マレイミド骨格含有化合物(b2)、クマリン骨格含有化合物(b3)、スチルベン骨格含有化合物(b4)及びアントラセン骨格含有化合物(b5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  5. 桂皮酸骨格含有化合物(b1)が桂皮酸、4−メチル桂皮酸、4−(トリフルオロメチル)桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸及び4−ヒドロキシ桂皮酸並びにこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物及びエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  6. 多糖類(a)がアシル化セルロース(a1)及び/又はエーテル化セルロース(a2)である請求項1〜5のいずれかに記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  7. アシル化セルロース(a1)が、炭素数が2〜19のアシル基で置換されたアシル化セルロースである請求項6に記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  8. アシル化セルロース(a1)が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基及びバレリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエステル化セルロースである請求項6又は7に記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  9. エーテル化セルロース(a2)が、アルキルの炭素数が1〜18のアルキルエーテル基で置換されたエーテル化セルロースである請求項6に記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物。
  10. エーテル化セルロース(a2)が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメトキシル基及びヒドロキシエトキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエーテル化セルロースである請求項6又は9に記載の逆長分散フィルム用樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物から形成される逆波長分散フィルム又はシート。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の逆波長分散フィルム用樹脂組成物から形成されるフィルム又はシートを、延伸処理した後、紫外線を照射する工程を含む逆波長分散フィルム又はシートの製造方法。
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