JP2017143631A - モータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置 - Google Patents

モータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】必要なメモリ量を抑えつつ、モータの動作点変化に伴う非線形性に対応し、高調波成分に起因して発生する不具合に対応可能なモータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置を提供する。【解決手段】モータに対する電流指令値に基づいてモータを駆動制御するモータ制御装置において、モータの特徴を表わすモータ特徴量の少なくとも1つの高調波成分の特性を学習したモデルにより、モータのモータ情報を用いて電流指令値から補償指令値を演算する高調波モデル部を備え、電流指令値及び補償指令値に基づいてモータを駆動制御する。【選択図】図3

Description

本発明は、モータに対する電流指令値に基づいてモータを駆動制御するモータ制御装置に関し、特に高調波成分の特性を学習し、学習結果を用いて電流指令値を補償することにより高調波成分に起因する不具合に対応可能なモータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置に関する。
モータ制御装置を搭載し、車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)は、モータの駆動力で減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、電流指令値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っている。
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10及び操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、電源としてのバッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー(IG)信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、演算された電流指令値に補償等を施した電圧指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転角センサから得ることもできる。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VelはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット30は主としてMCU(CPUやMPU等を含む)で構成されるが、そのMCU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと、例えば図2に示されるような構成となっている。
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTh及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN40からの)車速Velは電流指令値演算部31に入力され、電流指令値演算部31は操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給するモータ電流の制御目標値である電流指令値Irefを演算する。演算された電流指令値Irefは加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差I(=Irefm−Im)が演算され、その偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI(比例積分)制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20のモータ電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。インバータ37は駆動素子としてFET(電界効果トランジスタ)が用いられ、FETのブリッジ回路で構成されている。モータ20にはレゾルバ等の回転角センサ21が連結されており、回転角θeが検出されて出力される。
加算部32Aには補償信号生成部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
このような電動パワーステアリング装置において、フィードバックされるモータ電流は、通常、基本波成分の他に高調波成分を含んでおり、この高調波成分に起因してトルクリップルが発生し、振動や騒音の要因の1つとなっている。高調波成分による影響は非線形であり、非線形性をモデル化するということにより、高調波成分による影響に限らず、モータの非線形性を制御する技術が提案されている。例えば、特許第5351345号公報(特許文献1)で開示されているモータ制御装置では、実モータを模擬する仮想モータを用いてモータの非線形性をモデル化している。仮想モータは非線形のビヘイビアモデル(内部構造をブラックボックス化して入出力の特性を記述するモデル)を採用し、電圧方程式、フレミング方程式及び運動方程式で表現される。そして、仮想モータが実モータと一緒に搭載され、一緒に作動させることにより、実モータが休止期間から運動期間に移行した当初から実モータを高精度で制御できるようにしている。また、モータを制御するために使用するモータ位置等のモータの作動状態を示すデータを、実モータからではなく、仮想モータから取得することも可能で、その場合、作動状態を検出するセンサを不要にすることができる。
特許第5351345号公報
しかしながら、特許文献1の装置では、モータ全体を対象としてモデル化しているので、モデルである仮想モータを定義するためのデータ量が多くなり、量産のマイクロコンピュータを使用する場合、メモリ容量不足が懸念される。演算量も多くなる可能性があり、データ量及び演算量を削減しようとすると、モデルの精度が落ちる可能性がある。
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、必要なメモリ量を抑えつつ、モータの動作点変化に伴う非線形性に対応し、高調波成分に起因して発生する不具合に対応可能なモータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置を提供することにある。
本発明は、モータに対する電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御するモータ制御装置に関し、本発明の上記目的は、前記モータの特徴を表わすモータ特徴量の少なくとも1つの高調波成分の特性を学習したモデルにより、前記モータのモータ情報を用いて前記電流指令値から補償指令値を演算する高調波モデル部を備え、前記電流指令値及び前記補償指令値に基づいて前記モータを駆動制御することにより達成される。
また、本発明の上記目的は、前記電流指令値に基づいて、前記モータに供給する電流を制御する電圧指令値を演算する電流制御部を更に備え、前記補償指令値により補償される前記電圧指令値に基づいて前記モータを駆動制御することにより、或いは前記補償指令値を加算することにより前記電圧指令値を補償することにより、或いは前記高調波モデル部は、前記電流指令値に対応する前記モータ特徴量の高調波成分の値を定めたモータ特徴量変換テーブルを有し、前記モータ特徴量変換テーブルを使用して前記補償指令値を演算することにより、或いは前記モータ特徴量は磁束であり、前記モータ情報はモータ角速度であることにより、或いは前記高調波モデル部は、前記電流指令値を極座標に変換する極座標変換部と、前記モータ特徴量変換テーブルによって、前記極座標に変換された電流指令値に対応する前記磁束の高調波成分を求める磁束演算部と、前記磁束の高調波成分及び前記モータ角速度を用いて前記補償指令値を演算する補償指令値演算部とを備えることにより、或いは前記高調波成分として少なくとも第5次高調波を含むことにより、或いは前記モータを駆動することにより操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置に用いられることにより、より効果的に達成される。
更に、上記モータ制御装置を搭載した電動パワーステアリング装置により上記目的は達成される。
本発明のモータ制御装置によれば、既存のセンサを活かしながら、モデル化する対象をモータの非線形性を特徴付ける磁束等のモータ特徴量に絞り、そのモータ特徴量の高調波成分の特性を学習して、電圧指令値を補償しているので、必要なメモリ量を抑えつつ、高調波成分に起因して発生するトルクリップルを低減し、それに起因して発生する振動や騒音を抑えることができる。
また、上記モータ制御装置を電動パワーステアリング装置に搭載することにより、振動や騒音が少ない電動パワーステアリング装置を提供することができる。
電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。 電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を示すブロック図である。 本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。 電流指令値演算部で使用されるアシストマップの例を示す特性図である。 高調波モデル部の構成例を示すブロック図である。 本発明の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。 高調波モデル部の動作例を示すフローチャートである。 本発明の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。 本発明の動作例(第2実施形態)を示すフローチャートである。 モータ特徴量変換テーブルを折れ線近似で表現した例を示す特性図であり、(A)は電流振幅に対する磁束振幅の特性図であり、(B)は電流振幅に対する磁束位相の特性図である。
本発明では、モータで発生する磁束やインダクタンス等、モータの非線形性を特徴付ける物理量(モータ特徴量)の高調波成分をモデル化(以下、このモデルを「高調波モデル」とする)し、モータから検出される回転角等のデータ(モータ情報)及び高調波モデルを用いて電流指令値から補償指令値を演算し、補償指令値により電圧指令値を補償する。通常、電流指令値はモータ電流の基本波を前提として設定されるので、モータ電流が高調波を含む場合、設定される電流指令値との間で不整合が生じ、高調波を起因とするトルクリップルが発生する。しかし、本発明では、モータ電流の高調波成分と密接に関連するモータ特徴量の高調波成分をモデル化した高調波モデルを用いて電圧指令値を補償することにより、高調波成分を加味してモータを駆動制御するので、トルクリップルを低減することができる。また、モータ全体ではなく、モータ特徴量のみをモデル化するので、必要なメモリ量を抑えることができる。
高調波とは基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波のことで、例えば、基本波の5倍の周波数をもつ高調波は第5次高調波と呼ばれる。基本波とは、1つの非正弦波(ひずみ波)を構成する種々の周波数の正弦波のうち、最も低い周波数の正弦波のことで、これよりも高い周波数をもつ高調波はトルクリップルを発生させ、振動や騒音の原因になる等の悪影響を及ぼす。高調波のうち、第5次及び第7次高調波が悪影響を強く及ぼすとされているが、高調波を発生させる原因によっては他の次数の高調波の悪影響が強くなる可能性があるので、本発明では、任意の次数の高調波に対応できるようになっている。
高調波モデルは、電流指令値とモータ特徴量の高周波成分との対応を定めたモータ特徴量変換テーブルを有している。例えば、モータ特徴量として磁束を使用する場合、dq回転座標系で設定される電流指令値を極座標に変換した電流指令値の振幅(以下、「電流振幅」とする)及び進角(以下、「電流進角」とする)に対応する磁束の高調波成分の振幅(以下、「磁束振幅」とする)及び位相(以下、「磁束位相」とする)が、モータ特徴量変換テーブルに定められている。そして、磁束の高調波成分を微分することにより、補償指令値を算出する。
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図3は本発明の実施形態の構成例(第1実施形態)を図2に対応させて示しており、同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態ではモータ特徴量として磁束を使用し、対象とする高調波は第5次高調波である。駆動制御対象のモータは3相のブラシレスモータであり、モータ電流は3相(U相、V相及びW相)の電流で、フィードバックされる際に2相(d軸及びq軸)の電流に変換される。モータ情報としてモータ角速度を用いて、高調波モデルは、2相の電流指令値から2相の補償指令値を求める。そして、2相の電流指令値から演算される2相の電圧指令値と2相の補償指令値をそれぞれ3相に変換して、電圧指令値の補償を行う。なお、本実施形態は、図2に示される電流制限部33及び補償信号生成部34を備えていないが、備えるようにしても良い。また、PI制御部110、120、減算部200及び201から電流制御部が構成される。
電流指令値演算部31は、図2に示される構成と同様に、操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップを用いて電流指令値Irefを演算する。アシストマップとして、例えば図4に示されるような特性のものを使用する。即ち、操舵トルクThが増加するに従って電流指令値Irefも増加するが、操舵トルクThが所定の値以上になると電流指令値Irefは一定となる。また、車速Velが高速になるほど、電流指令値Irefは小さくなる。
dq軸電流指令値演算部100は、電流指令値Iref及びモータ角速度ωeを用いて、dq回転座標系での電流指令値であるd軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1を算出する。モータ角速度ωeは、モータ20に連結されている回転角センサ21が検出する回転角(電気角)θeからモータ角速度演算部170にて算出される。d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1は、例えば特許第5282376号公報に記載されているd−q軸電流指令値算出部で実行されている方法等で算出される。同公報での操舵補助電流指令値が電流指令値に相当する。この際、モータの機械角に対するモータ角速度が必要な場合は、電気角に対するモータ角速度ωeに基づいて算出する。
高調波モデル部130は、高調波モデルに相当し、d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1から、補償指令値であるd軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5を演算する。この際、モータ情報としてモータ角速度演算部170にて算出されるモータ角速度ωeを使用するが、高調波モデルは第5次高調波を対象としているので、モータ角速度ωeを5倍にして使用する。
高調波モデル部130の構成例を図5に示す。高調波モデル部130は、極座標変換部131、磁束演算部132及び補償指令値演算部133を備える。
極座標変換部131は、d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1を極座標に変換し、電流振幅Iap及び電流進角βiを算出する。具体的には、下記数1を用いて算出する。
Figure 2017143631
ここで、arctan()は逆正接関数である。
磁束演算部132は、電流振幅Iap及び電流進角βiから、磁束の第5次高調波成分の振幅(磁束振幅)φ5及び位相(磁束位相)α5を求める。具体的には、電流振幅Iap及び電流進角βiに対応した磁束振幅φ5と電流振幅Iap及び電流進角βiに対応した磁束位相α5をそれぞれ予め有限要素法により学習して求め、それらを数値データ系列で表現したモータ特徴量変換テーブルとして保持しておく。そして、入力される電流振幅Iap及び電流進角βiに対応する磁束振幅φ5及び磁束位相α5をモータ特徴量変換テーブルより求め、磁束振幅φ5は補償指令値演算部133に、磁束位相α5は2相/3相変換部150にそれぞれ出力される。
補償指令値演算部133は、磁束振幅φ5及びモータ角速度ωeを用いて、d軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5を算出する。磁束振幅φ5を時間微分することにより電磁誘導の法則から誘導電圧が求められ、誘導電圧の最大値に相当するのがd軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5であることから、d軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5は下記数2より算出される。
Figure 2017143631
ここで、k及びkはそれぞれd軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5の振幅を決定する係数で、予め設定されている。
3相/2相変換部160は、回転角センサ21で検出される回転角θeを用いて、モータ電流検出器38が検出するモータ20の各相に流れるモータ電流(U相モータ電流Ium、V相モータ電流Ivm及びW相モータ電流Iwm)を2相の電流に変換する。具体的には、下記数3に従って、3相のモータ電流を2相の電流であるd軸モータ電流Idm及びq軸モータ電流Iqmに変換する。
Figure 2017143631
Kは、絶対変換の場合は√(2/3)で、相対変換の場合は2/3であり、変換前後のベクトルの大きさを無視して良い場合は1でも良い。
PI制御部110は、図2に示されるPI制御部35と同様に、d軸基本電流指令値Idref1とd軸モータ電流Idmとの偏差Id1に基づいてd軸基本電圧指令値Vdref1を求める。同様に、PI制御部120は、q軸基本電流指令値Iqref1とq軸モータ電流Iqmとの偏差Iq1に基づいてq軸基本電圧指令値Vqref1を求める。
2相/3相変換部140は、回転角θeを用いて、d軸基本電圧指令値Vdref1及びq軸基本電圧指令値Vqref1からなる2相の電圧を3相の電圧に変換する。具体的には、下記数4に従って、2相の電圧を3相の電圧であるU相基本電圧指令値Vuref1、V相基本電圧指令値Vvref1及びW相基本電圧指令値Vwref1に変換する。
Figure 2017143631
2相/3相変換部150は、d軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5からなる2相の電圧を3相の電圧に変換するが、回転角θeに加えて磁束位相α5を使用し、さらに、第5次高調波を対象としているので、それらを5倍にして使用する。具体的には、下記数5に従って、2相の電圧を3相の電圧であるU相補償電圧指令値Vuref5、V相補償電圧指令値Vvref5及びW相補償電圧指令値Vwref5に変換する。
Figure 2017143631
U相基本電圧指令値Vuref1、V相基本電圧指令値Vvref1及びW相基本電圧指令値Vwref1は、それぞれ加算部210、211及び212にて、U相補償電圧指令値Vuref5、V相補償電圧指令値Vvref5及びW相補償電圧指令値Vwref5を加算されることにより補償され、U相電圧指令値Vuref、V相電圧指令値Vvref及びW相電圧指令値Vwrefとして出力される。
PWM制御部36及びインバータ37は、図2に示される構成と同じものであり、U相電圧指令値Vuref、V相電圧指令値Vvref及びW相電圧指令値Vwrefに基づいてモータ20をPWM駆動する。
このような構成において、その動作例を図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。
動作がスタートすると、操舵トルクThをトルクセンサ10(図1参照)が検出し、車速Velを車速センサ12(図1参照)が検出(又はCAN40(図1参照)が出力)し、回転角θeを回転角センサ21が検出する(ステップS10)。操舵トルクTh及び車速Velは電流指令値演算部31に入力され、回転角θeは2相/3相変換部140、2相/3相変換部150、3相/2相変換部160及びモータ角速度演算部170に入力される。モータ電流検出器38はモータ20のU相に流れるU相モータ電流Ium、V相に流れるV相モータ電流Ivm及びW相に流れるW相モータ電流Iwmを検出し(ステップS20)、3相/2相変換部160に出力する。
電流指令値演算部31は、操舵トルクTh及び車速Velに基づいて、図4に示されるような特性をもつアシストマップを用いて電流指令値Irefを演算し(ステップS30)、dq軸電流指令値演算部100に出力する。
モータ角速度演算部170は、回転角θeからモータ角速度ωeを算出し(ステップS40)、dq軸電流指令値演算部100及び高調波モデル部130に出力する。なお、電流指令値演算部31及びモータ角速度演算部170の動作は、順番が入れ替わっても、並行して実行されても良い。
dq軸電流指令値演算部100は、電流指令値Iref及びモータ角速度ωeを用いて、d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1を算出する(ステップS50)。d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1は高調波モデル部130に入力されると共に、それぞれ減算部200及び201に加算入力される。
高調波モデル部130は、入力されたd軸基本電流指令値Idref1、q軸基本電流指令値Iqref1及びモータ角速度ωeを用いて、補償指令値演算を行う(ステップS60)。
補償指令値演算では、先ず高調波モデル部130の極座標変換部131がd軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1を入力し、数1を用いた極座標変換により電流振幅Iap及び電流進角βiを算出し(ステップS610)、磁束演算部132に出力する。磁束演算部132は、電流振幅Iap及び電流進角βiに対応する磁束振幅φ5及び磁束位相α5を、予め保持しているモータ特徴量変換テーブルより求め(ステップS620)、磁束振幅φ5は補償指令値演算部133に、磁束位相α5は2相/3相変換部150にそれぞれ出力する。補償指令値演算部133は、磁束振幅φ5と共にモータ角速度ωeを入力し、数2を用いてd軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5を算出し(ステップS630)、2相/3相変換部150に出力する。
2相/3相変換部150は、回転角θe及び磁束位相α5を入力し、数5を用いてd軸補償電圧指令値Vdref5及びq軸補償電圧指令値Vqref5を3相の電圧に変換し(ステップS70)、U相補償電圧指令値Vuref5、V相補償電圧指令値Vvref5及びW相補償電圧指令値Vwref5としてそれぞれ加算部210、211及び212に出力する。
モータ電流検出器38で検出されたU相モータ電流Ium、V相モータ電流Ivm及びW相モータ電流Iwm並びに回転角センサ21で検出された回転角θeを入力した3相/2相変換部160は、数3を用いてd軸モータ電流Idm及びq軸モータ電流Iqmを算出し(ステップS80)、d軸モータ電流Idm及びq軸モータ電流Iqmはそれぞれ減算部200及び201に減算入力される。
減算部200は、d軸基本電流指令値Idref1とd軸モータ電流Idmの偏差Id1を算出し、PI制御部110に出力する。減算部201は、q軸基本電流指令値Iqref1とq軸モータ電流Iqmの偏差Iq1を算出し、PI制御部120に出力する(ステップS90)。
PI制御部110は偏差Id1よりd軸基本電圧指令値Vdref1を求め、PI制御部120は偏差Iq1よりq軸基本電圧指令値Vqref1を求める(ステップS100)。
d軸基本電圧指令値Vdref1及びq軸基本電圧指令値Vqref1は2相/3相変換部140に入力され、2相/3相変換部140は、入力された回転角θeを用いて、数4によってU相基本電圧指令値Vuref1、V相基本電圧指令値Vvref1及びW相基本電圧指令値Vwref1に変換し(ステップS110)、それぞれ加算部210、211及び212に出力する。
加算部210は、U相補償電圧指令値Vuref5を加算することによりU相基本電圧指令値Vuref1を補償し、U相電圧指令値Vurefとして出力する。同様に、加算部211は、V相補償電圧指令値Vvref5を加算することによりV相基本電圧指令値Vvref1を補償し、V相電圧指令値Vvrefとして出力し、加算部212は、W相補償電圧指令値Vwref5を加算することによりW相基本電圧指令値Vwref1を補償し、W相電圧指令値Vwrefとして出力する(ステップS120)。
U相電圧指令値Vuref、V相電圧指令値Vvref及びW相電圧指令値VwrefはPWM制御部36に入力され、さらにインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される(ステップS130)。
なお、d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1が出力されてから、U相補償電圧指令値Vuref5、V相補償電圧指令値Vvref5及びW相補償電圧指令値Vwref5算出までの動作(ステップS60、S70)と、U相基本電圧指令値Vuref1、V相基本電圧指令値Vvref1及びW相基本電圧指令値Vwref1算出までの動作(ステップS80〜110)は、順番が入れ替わっても、並行して実行されても良い。
本発明の他の実施形態(第2実施形態)について説明する。
第1実施形態では対象とする高調波は第5次高調波のみであったが、本実施形態では第5次高調波に加えて第7次高調波も対象とする。複数の高調波を対象とすることにより、高調波モデルの精度が高くなり、より的確にトルクリップルを低減することができる。
本実施形態の構成例を図8に示す。図3に示される第1実施形態の構成例と比べると、第7次高調波も対象とするので、そのための高調波モデル部220及び2相/3相変換部230が追加されており、さらに加算部213、214及び215が追加されている。なお、図3の構成例と同一構成には同一符号を付し、説明は省略する。
高調波モデル部220は、高調波モデル部130と同様に、高調波モデルに基づいて、d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1から、補償指令値であるd軸補償電圧指令値Vdref7及びq軸補償電圧指令値Vqref7を演算する。但し、高調波モデルは第7次高調波を対象としているので、演算にはモータ角速度ωeを7倍にして使用する。高調波モデル部220は、図5に示される高調波モデル部130の構成例と同様に、極座標変換部、磁束演算部及び補償指令値演算部を備えている。このうち、磁束演算部は、電流振幅Iap及び電流進角βiに対応した磁束の第7次高調波成分の振幅(磁束振幅)φ7及び位相(磁束位相)α7を数値データ系列で表現したモータ特徴量変換テーブルを保持しており、そのモータ特徴量変換テーブルを使用して、入力される電流振幅Iap及び電流進角βiに対応する磁束振幅φ7及び磁束位相α7を求める。補償指令値演算部は、下記数6より、磁束振幅φ7及びモータ角速度ωeを用いて、d軸補償電圧指令値Vdref7及びq軸補償電圧指令値Vqref7を算出する。
Figure 2017143631
2相/3相変換部230は、2相/3相変換部150と同様に、d軸補償電圧指令値Vdref7及びq軸補償電圧指令値Vqref7からなる2相の電圧を3相の電圧に変換するが、第7次高調波を対象としているので、回転角θe及び磁束位相α7を7倍にして使用する。具体的には、下記数7に従って、2相の電圧を3相の電圧であるU相補償電圧指令値Vuref7、V相補償電圧指令値Vvref7及びW相補償電圧指令値Vwref7に変換する。
Figure 2017143631
第2実施形態での動作例を図9のフローチャートを参照して説明する。
図6に示される第1実施形態での動作例と比べると、第7次高調波を対象とするために追加された高調波モデル部220及び2相/3相変換部230での動作が、ステップS60及びS70の後に、それぞれステップS61及びS71として追加されている。また、基本電圧指令値を補償する動作が異なっている(ステップS121)。
ステップS61では、高調波モデル部220が、入力されたd軸基本電流指令値Idref1、q軸基本電流指令値Iqref1及びモータ角速度ωeを用いて補償指令値演算を行い、求められたd軸補償電圧指令値Vdref7及びq軸補償電圧指令値Vqref7を2相/3相変換部230に出力する。高調波モデル部220の動作は、数2の代わりに数6を使用し、モータ特徴量変換テーブルが第7次高調波に対するものであること以外は、図7で示される高調波モデル部130の動作と同じである。
ステップS71では、2相/3相変換部230が、回転角θe及び磁束位相α7を入力し、数7を用いてd軸補償電圧指令値Vdref7及びq軸補償電圧指令値Vqref7を3相の電圧に変換し、U相補償電圧指令値Vuref7、V相補償電圧指令値Vvref7及びW相補償電圧指令値Vwref7としてそれぞれ加算部213、214及び215に出力する。
ステップS121では、2相/3相変換部140から出力されたU相基本電圧指令値Vuref1に加算部210でU相補償電圧指令値Vuref5が加算され、更に加算部213でU相補償電圧指令値Vuref7が加算され、U相電圧指令値Vurefとして出力される。同様に、V相基本電圧指令値Vvref1に加算部211でV相補償電圧指令値Vvref5が加算され、更に加算部214でV相補償電圧指令値Vvref7が加算され、V相電圧指令値Vvrefとして出力され、W相基本電圧指令値Vwref1に加算部212でW相補償電圧指令値Vwref5が加算され、更に加算部215でW相補償電圧指令値Vwref7が加算され、W相電圧指令値Vwrefとして出力される。
なお、第5高調波に関連する動作と第7高調波に関連する動作は、順番が入れ替わっても、並行して実行されても良い。
本発明の更に他の実施形態(第3実施形態)について説明する。
第1実施形態及び第2実施形態では、モータ特徴量変換テーブルは数値データ系列で表現されているが、本実施形態では、それよりも簡略化した形で表現されたモータ特徴量変換テーブルを使用する。例えば、d軸基本電流指令値Idref1及びq軸基本電流指令値Iqref1を極座標に変換して算出される電流振幅Iap及び電流進角βiのうち、電流振幅Iapのみを使用し、電流振幅Iapに対する磁束振幅及び磁束位相の変化を、図10に示されるような折れ線で近似したものをモータ特徴量変換テーブルとする。図10(A)は電流振幅Iapに対する磁束振幅の変化を折れ線で近似したもので、電流振幅Iapの定義域を一定の間隔で分割し、各分割区間において、その分割区間での電流振幅Iap及び磁束振幅の値から最小二乗法での直線近似等により近似直線を求め、各分割区間の近似直線を連結して求めたものである。同様にして求められた、電流振幅Iapに対する磁束位相の変化を折れ線で近似したものが図10(B)である。なお、分割する間隔は一定でなくても良く、例えば変動が激しいと想定される区間は間隔を狭める等しても良い。また、直線ではなく、二次関数等の曲線で近似しても良い。
第3実施形態の構成及び動作は、基本的には第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、高調波モデル部の磁束演算部が保持するモータ特徴量変換テーブルの形式が異なることと、磁束演算部は電流振幅Iapのみを入力してモータ特徴量変換テーブルより磁束振幅及び磁束位相を求めることが違うだけである。
このように、モータ特徴量変換テーブルを簡略化することにより、必要なメモリ量を更に抑えることができる。
上述の実施形態(第1実施形態〜第3実施形態)では、モータ特徴量として磁束を使用しているが、磁束の代わりにインダクタンスや抵抗等を使用しても良く、複数のモータ特徴量を使用しても良い。また、高調波として第5次及び第7次を対象しているが、他の次数の高調波を対象としても良い。
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
10 トルクセンサ
12 車速センサ
13 バッテリ
20 モータ
21 回転角センサ
30 コントロールユニット(ECU)
31 電流指令値演算部
35、110、120 PI制御部
36 PWM制御部
37 インバータ
38 モータ電流検出器
100 dq軸電流指令値演算部
130、220 高調波モデル部
131 極座標変換部
132 磁束演算部
133 補償指令値演算部
140、150、230 2相/3相変換部
160 3相/2相変換部
170 モータ角速度演算部

Claims (9)

  1. モータに対する電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御するモータ制御装置において、
    前記モータの特徴を表わすモータ特徴量の少なくとも1つの高調波成分の特性を学習したモデルにより、前記モータのモータ情報を用いて前記電流指令値から補償指令値を演算する高調波モデル部を備え、
    前記電流指令値及び前記補償指令値に基づいて前記モータを駆動制御することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記電流指令値に基づいて、前記モータに供給する電流を制御する電圧指令値を演算する電流制御部を更に備え、
    前記補償指令値により補償される前記電圧指令値に基づいて前記モータを駆動制御する請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記補償指令値を加算することにより前記電圧指令値を補償する請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記高調波モデル部は、
    前記電流指令値に対応する前記モータ特徴量の高調波成分の値を定めたモータ特徴量変換テーブルを有し、
    前記モータ特徴量変換テーブルを使用して前記補償指令値を演算する請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ制御装置。
  5. 前記モータ特徴量は磁束であり、前記モータ情報はモータ角速度である請求項4に記載のモータ制御装置。
  6. 前記高調波モデル部は、
    前記電流指令値を極座標に変換する極座標変換部と、
    前記モータ特徴量変換テーブルによって、前記極座標に変換された電流指令値に対応する前記磁束の高調波成分を求める磁束演算部と、
    前記磁束の高調波成分及び前記モータ角速度を用いて前記補償指令値を演算する補償指令値演算部とを備える請求項5に記載のモータ制御装置。
  7. 前記高調波成分として少なくとも第5次高調波を含む請求項1乃至6のいずれかに記載のモータ制御装置。
  8. 前記モータを駆動することにより操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置に用いられる請求項1乃至7のいずれかに記載のモータ制御装置。
  9. 請求項8に記載のモータ制御装置を搭載したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

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