JPWO2020095479A1 - モータ制御装置、電動アクチュエータ製品及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載のモータ制御装置は、d/q座標系における電流制御の実行によりモータ制御信号を生成するモータ制御信号生成手段と、モータ制御信号に基づいてモータに三相の駆動電力を出力する駆動回路とを備える。
さらにモータ制御信号生成手段は、推定される予想電圧利用率が所定値を超えないように弱め界磁制御を実行すべくd軸電流指令値を演算するとともに、推定される予想電圧利用率が弱め界磁制御により対応可能な限界値を超える場合には、併せてq軸電流指令値を低減することにより、予想電圧利用率が所定値を超えないように補正する。
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、モータのデューティ飽和を回避しつつd軸電流を任意の値に制限することを目的とする。
本発明の更なる他の一形態によれば、上記のモータ制御装置と、モータ制御装置によって制御されるモータと、を備え、モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置が与えられる。
なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(構成)
実施形態の電動パワーステアリング装置の構成例を図1に示す。操向ハンドル1のコラム軸2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4A及び4B、ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に連結されている。コラム軸2には、操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、操向ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。
記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
例えば、コントロールユニット30は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントロールユニット30はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
第2電流指令値演算部51は、基本q軸電流指令値Iq0と、電圧センサ64が検出した電源電圧VR(すなわち、バッテリ14によりインバータ48に印加されるインバータ印加電圧)と、モータ20の回転角速度ωに基づいて、モータ20に流すべきq軸電流指令値Iq*及びd軸電流指令値Id*を演算する。
減算器43、44は、フィードバックされた電流iq、idをq軸電流指令値Iq*及びd軸電流指令値Id*からそれぞれ減じることにより、q軸偏差電流Δq及びd軸偏差電流Δdを算出する。q軸偏差電流Δq及びd軸偏差電流Δdは、PI制御部45に入力される。
PWM制御部47は、3相の電圧指令値va、vb及びvcに基づいてPWM制御されたゲート信号を生成する。
レゾルバ63は、モータ20のモータ角度(回転角)θを検出し、角速度変換部50は、モータ角度θの変化に基づいてモータ20の回転角速度ωを算出する。これらモータ角度θ及び回転角速度ωは、ベクトル制御に使用される。
絶対値算出部70は、モータ20の回転角速度ωの絶対値を算出して前段q軸電流指令値制限部72、d軸電流指令値演算部73、及び後段q軸電流指令値制限部75に出力する。
前段q軸電流指令値制限部72は、第1電流指令値演算部40が演算した基本q軸電流指令値Iq0が、弱め界磁制御により電圧指令値va、vb及びvcを電源電圧VR以下にできる限界(すなわち、弱め界磁制御によりデューティ飽和を回避できる限界)を超えているか否かを判断する。
一般的な表面磁石型モータ(SPMモータ)の電気方程式は、次式(1)にて与えられる。
また、3次高調波補償を行った際のデューティ飽和が発生する限界での電源電圧VRと、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqの関係式は次式(2)にて与えられる。3次高調波補償は、モータ印加電圧に3次高調波を重畳して印加電圧波形のピークを潰すことにより、デューティ飽和を発生しにくくする処理である。
そこで、前段q軸電流指令値制限部72は、基本q軸電流指令値Iq0を式(3)中のIqに代入した場合に式(3)の平方根が負値の平方根となるか否かに応じて、基本q軸電流指令値Iq0が、弱め界磁制御によりデューティ飽和を回避できる限界を超えているか否かを判断する。なお、回転角速度ω及び基本q軸電流指令値Iq0として、絶対値算出部70及び71が算出した絶対値を使用する。
前段q軸電流指令値制限部72は、基本q軸電流指令値Iq0を第1q軸電流上限値IqLim1以下に制限することにより得られる指令値を、制限後q軸電流指令値Iqrとして算出する。q軸電流Iqを第1q軸電流上限値IqLim1以下に制限することにより、式(3)の平方根が正値の平方根となる。
d軸電流指令値演算部73は、制限後q軸電流指令値Iqrを式(3)中のIqへ代入することにより得られるd軸電流Idを、弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwとして算出する。ここでも回転角速度ωとして絶対値算出部70が算出した絶対値を使用する。
この弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwは、電圧指令値va、vb及びvcを電源電圧VRに制限するd軸電流指令値となる。d軸電流指令値演算部73は、電圧指令値va、vb及びvcが電源電圧VRよりも小さくなるように弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwを算出してもよい。
d軸電流指令値演算部73は、弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwをd軸電流指令値制限部74へ出力する。
例えば、d軸電流指令値制限部74は、d軸電流指令値Id*の絶対値(大きさ)の最大値を任意の上限値以下に制限する。このようにd軸電流指令値Id*の絶対値の最大値を制限することにより、エネルギー効率の低下を緩和したり、モータ作動音の悪化を緩和できる。なお、弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwが0に設定されている場合には弱め界磁制御の必要が無いため、d軸電流指令値Id*を0に設定する。
また、例えば、d軸電流指令値制限部74は、d軸電流指令値Id*の変化速度を任意の上限値以下に制限する。このようにd軸電流指令値Id*の変化速度を制限することにより、モータ作動音の悪化を緩和できる。
前段q軸電流指令値制限部72から出力される制限後q軸電流指令値Iqrは、d軸電流指令値演算部73が演算した弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwにより弱め界磁制御を行った場合にデューティ飽和が発生しない値に設定されている。
そこで後段q軸電流指令値制限部75は、制限後q軸電流指令値Iqrを制限して得られる指令値を、q軸電流指令値Iq*として算出する。
符号検出部76は、基本q軸電流指令値Iq0の符号を検出して符号信号を出力する。基本q軸電流指令値Iq0が正値の場合に符号信号の値は「1」に設定され、基本q軸電流指令値Iq0が負値の場合に符号信号の値は「−1」に設定される。乗算部77は、後段q軸電流指令値制限部75から出力されるq軸電流指令値Iq*に符号信号を乗ずることによりq軸電流指令値Iq*の符号を基本q軸電流指令値Iq0の符号に一致させる。
図4の(a)及び図4の(b)を参照して、モータ20の回転角速度の増大に対してd軸電流指令値Id*の絶対値が大きくなるのを任意の値で制限した場合の、q軸電流指令値Iq*の制限状態を説明する。
一方で、図4の(a)の実線83、82及び81は、d軸電流指令値Id*の最小値がそれぞれ0、Id1、Id2に制限される場合のq軸電流指令値Iq*とモータ回転角速度ωとの間の関係を示し、実線80は、d軸電流指令値Id*を制限しない場合のq軸電流指令値Iq*とモータ回転角速度ωとの間の関係を示す。
また、実線85に示すようにモータ回転角速度ω2においてd軸電流指令値Id*の最小値をId1に制限し始めると、これに応じて実線82に示すように第2q軸電流上限値IqLim2による制限が始まりq軸電流指令値Iq*が減少し始める。
また、実線87に示すようにd軸電流指令値Id*が制限されなかった場合には、モータ回転角速度ω4において基本q軸電流指令値Iq0が弱め界磁制御によりデューティ飽和を回避できる限界を超えると、第1q軸電流上限値IqLim1による制限が始まりq軸電流指令値Iq*が減少し始める。
図5の(a)はモータ回転角速度ωの時間変化を示し、図5の(c)の実線はd軸電流指令値Id*の変化速度を一定値に制限した場合のd軸電流指令値Id*の時間変化を示し、図5の(c)の破線はd軸電流指令値Id*の変化速度を制限しない場合のd軸電流指令値Id*の時間変化を示す。
図5の(c)に示すように期間t1〜t3において、d軸電流指令値Id*の時間変化の制限のために、制限されたd軸電流指令値Id*の絶対値(実線)は制限されていない場合の値(破線)よりも小さくなっている。その結果、期間t1〜t3ではq軸電流指令値Iq*も制限される。
なお、d軸電流指令値Id*の絶対値が減少する時間変化がd軸電流指令値制限部74により制限され、制限されたd軸電流指令値Id*の絶対値が制限されていない場合の値よりも大きくなった場合、後段q軸電流指令値制限部75によってq軸電流指令値Iq*が制限されることはない。
次に、図6を参照して実施形態のモータ制御方法の一例を説明する。
ステップS1において第1電流指令値演算部40は、モータ20に流すべき基本q軸電流指令値Iq0を演算する。
ステップS2において電圧センサ64は、バッテリ14によりインバータ48に印加される電源電圧VRを検出する。
ステップS4において前段q軸電流指令値制限部72は、式(3)に基づいて、基本q軸電流指令値Iq0が弱め界磁制御により電圧指令値を電源電圧VR以下にできる限界を超えているか否かを判断する。基本q軸電流指令値Iq0が限界を超えている場合(ステップS4:Y)に処理はステップS5に進む。基本q軸電流指令値Iq0が限界を超えていない場合(ステップS4:N)に処理はステップS6に進む。
ステップS6において前段q軸電流指令値制限部72は、基本q軸電流指令値Iq0をそのまま制限後q軸電流指令値Iqrとして出力する。その後に処理はステップS7へ進む。
ステップS8においてd軸電流指令値制限部74は、弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwを制限して得られる指令値を、d軸電流指令値Id*として算出する。
ステップS10において減算器43及び44と、PI制御部45と、2相/3相変換部46と、PWM制御部47と、インバータ48と、3相/2相変換部49は、q軸電流指令値Iq*とd軸電流指令値Id*に基づいてモータ20を駆動する。その後に処理は終了する。
(1)第1実施形態のモータ制御装置は、q軸電流指令値及びd軸電流指令値に基づいてモータ20に印加する電圧の電圧指令値を演算するPI制御部45及び2相/3相変換部46と、電圧指令値に基づいてモータ20に駆動電力を出力するインバータ48と、弱め界磁制御により電圧指令値を電源電圧VR以下に制限するd軸電流指令値を演算するd軸電流指令値演算部73と、d軸電流指令値演算部73が演算したd軸電流指令値を制限するd軸電流指令値制限部74と、d軸電流指令値制限部74によるd軸電流指令値の制限により電圧指令値が電源電圧VRを超えないようにq軸電流指令値を制限する後段q軸電流指令値制限部75を備える。
これにより、所定のパラメータ(例えば操舵トルクThや車速Vh)に基づいて算出された基本q軸電流指令値をデューティ飽和が発生しないように制限することができる。
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態のモータ制御装置は、インバータ48のデッドタイムによるモータ電流の非線形特性を補償するためにデッドタイム補償を行う。デッドタイム補償では、インバータ48を駆動するPWM信号のデューティ値に、(デッドタイム/PWM周期)に相当する補償値が加算される。このため、第2実施形態のモータ制御装置では、加算された補償値によってデューティ飽和が発生しないように、電源電圧VRからデッドタイム補償の補償分を低減した電圧に基づいて、弱め界磁制御用d軸電流指令値Idw、制限後q軸電流指令値Iqr、及びq軸電流指令値Iq*を補正する。
デッドタイム補償部52は、(デッドタイム/PWM周期)に相当する次式の補償値をPWM制御部47へ出力する。
図8を参照する。第2実施形態の第2電流指令値演算部51は、第1実施形態の第2電流指令値演算部51と同様の構成を有しており、同様の構成要素には同じ参照符号を付している。第2実施形態の第2電流指令値演算部51は、補正部90を備える。
したがって補正部90は、補正後電圧として次式の値を算出する。
前段q軸電流指令値制限部72は、補正後電圧を上式(3)中のVRに代入して、基本q軸電流指令値Iq0が、弱め界磁制御によりデューティ飽和を回避できる限界を超えているか否かを判断する。
d軸電流指令値演算部73は、補正後電圧を上式(3)中のVRに代入して、弱め界磁制御用d軸電流指令値Idwを算出する。
後段q軸電流指令値制限部75は、補正後電圧を上式(5)中のVRに代入して、第2q軸電流上限値IqLim2を算出する。
第2実施形態のモータ制御装置は、インバータ48を電圧指令値に基づき駆動するPWM信号のデューティ値をデッドタイム補償するデッドタイム補償部52を備える。d軸電流指令値演算部73は、電源電圧VRからデッドタイム補償の補償分を低減した補正後電圧に基づいてd軸電流指令値Idwを補正する。前段q軸電流指令値制限部72及び後段q軸電流指令値制限部75は、それぞれ制限したq軸電流指令値を補正後電圧に基づいて補正する。
これにより、デッドタイム補償によりPWM信号のデューティ値に補償値が加えられていてもデューティ飽和が発生しないようにd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を補正することができる。
前段q軸電流指令値制限部72と、d軸電流指令値演算部73と、後段q軸電流指令値制限部75では、上記の式(3)、式(4)及び式(5)の演算を行う。これら数式の演算には、以下の3つ係数C1、C2、C3が共通して現れる。
なお、上記特許文献1では、時間的変動が小さいと仮定して微分演算子を無視して計算を行っている。しかしながら、電動パワーステアリング装置のような応用分野では、トルクや回転角速度が急転しやすく電流指令値は容易に急変する。従って、微分演算子を考慮して演算し、入力変数の変動に適切に応答することが、デューティ飽和抑制にとって望ましい。
ここで、2次の伝達関数の連続時間系での実現方法を説明する。一般的な伝達関数は、式(6)で表現される。
ここで、C1を例としてフィルタの係数を求めると、次式(8)及び(9)を求めることができる。
図9を参照する。変形例の第2電流指令値演算部51は、第2実施形態の第2電流指令値演算部51と同様の構成を有しており同様の構成要素には同じ参照符号を付している。
係数演算部91は、電圧センサ64が検出した電源電圧VRの補正電圧値と、角速度変換部50が算出したモータ20の回転角速度ωを入力し、2次の伝達関数フィルタを随時演算して係数C1、C2、C3を求めて、前段q軸電流指令値制限部72、d軸電流指令値演算部73、及び後段q軸電流指令値制限部75へ出力する。
このような入力を「1」とした伝達関数を用いて係数C1、C2、C3を演算して、各演算部で使用することで、微分演算子を無視することなく、また計算負荷やデータ格納領域を増加することなく、電源電圧や回転角速度に適切に応答した係数C1、C2、C3を求めることができる。この手法は、第2電流指令値演算部に限らず、その他の機能にも適用できる。
なお、上記の第1実施形態においても係数演算部91を備えてもよく、後述の第3実施形態においても係数演算部91を備えてよい。
次に、第3実施形態を説明する。前段q軸電流指令値制限部72及び後段q軸電流指令値制限部75は、電源電圧VRとモータ20の回転角速度ωに基づいてq軸電流を制限する。このため、q軸電流が制限されている状態では、回転角速度ω及び電源電圧VRに含まれるノイズ成分がq軸電流指令値に影響しトルク変動を引き起こす原因となる。そのため、q軸電流が制限されている状態では回転角速度ω及び電源電圧VRに対する応答性を下げてノイズを抑える必要がある。
このため、第3実施形態のモータ制御装置では、前段q軸電流指令値制限部72又は後段q軸電流指令値制限部75によりq軸電流指令値が制限されるまでのq軸電流指令値の余裕量を算出する。
これにより、q軸電流が制限されていない状態では応答性を高めてd軸電流の投入及びq軸電流の制限を速やかに開始し、q軸電流が制限されている状態では応答性を下げてノイズによるトルク変動を防ぐ。
第3実施形態の第2電流指令値演算部51は、余裕量算出部92と可変フィルタ93を備える。
余裕量算出部92は、第1q軸電流上限値IqLim1及び第2q軸電流上限値IqLim2のうちいずれか小さい方から、基本q軸電流指令値Iq0を減じた差分を余裕量MargIqとして算出する。
可変フィルタ93は、回転角速度ω及び電源電圧VRの高周波成分を除去することによりノイズを除去するフィルタである。可変フィルタ93は、LPF(ローパスフィルタ)や加重平均フィルタであってよい。
例えば可変フィルタ93は、MargIqが大きいほどカットオフ周波数を高めて応答性を高くする。また、MargIqが小さいほどカットオフ周波数を下げて応答性を低くする。
ただし、上記のようにMargIqの値に応じてカットオフ周波数を漸次変更することで、q軸電流の制限の開始が迫るにつれ徐々にフィルタの応答性を下げるというような緩やかなフィルタ特性を実現できる。
なお、可変フィルタ93は特許請求の範囲に記載の応答性変更部の一例である。
第2実施形態のモータ制御装置は、前段q軸電流指令値制限部72又は後段q軸電流指令値制限部75によりq軸電流指令値が制限されるまでのq軸電流指令値の余裕量MargIqを算出する余裕量算出部92と、モータ20の回転角速度ωの変化及び電源電圧VRの変化に対する、前段q軸電流指令値制限部72及び後段q軸電流指令値制限部75の応答性を、余裕量MargIqに応じて変化させる可変フィルタ93を備える。
これにより、q軸電流が制限されていない状態では応答性を高めてd軸電流の投入及びq軸電流の制限を速やかに開始し、q軸電流が制限されている状態では応答性を下げて、ノイズによるトルク変動を防ぐことができる。
第1実施形態では、モータが力行状態(q軸電流指令値とモータ回転の方向が一致)を前提に演算式を定義した。第4実施形態では、モータが回生状態(q軸電流指令値とモータ回転の方向が不一致)も考慮した演算について説明する。
d軸電流指令値の演算においては、力行状態及び回生状態とも、式(3)を用いることができる。回生状態では、q軸電流指令値と回転角速度の符号が異なるため、式(3)の平方根の値が大きくなる。このため、同じq軸電流に対して、回生状態でのd軸電流は、力行状態でのd軸電流と比較して正値側になる。回生状態ではq軸電流が逆起電力と逆位相であり、電圧を相殺するためにd軸電流を流さなくてよいからである。
まず、力行状態では、前段q軸電流指令値制限部72は上記の通り上式(4)により求められる第1q軸電流上限値IqLim1によって基本q軸電流指令値Iq0の絶対値を制限する。
そこで、q軸電流指令値Iqの符号と回転角速度ωの符号を考慮して、式(3)の平方根が正値になるq軸電流指令値Iqの範囲を求めると、以下に示す式(10)から式(13)を得る。
式(14)の成立状態、すなわちq軸電流指令値と回転角速度の項(逆起電圧により生じる電流成分)の大きさの大小関係に応じて、次式(15)のようにq軸電流指令値Iqの絶対値を上限値で制限するか、又は次式(16)のように基本q軸電流指令値Iq0の絶対値を下限値で制限するように、異なる処理で基本q軸電流指令値Iq0の絶対値を制限する。
一方で上式(14)が成立しない場合には、次式(18)により得られる第1q軸電流下限値IqLim3によってq軸電流指令値Iq0の絶対値の下限値を制限する。
そして、第1実施形態と同じように、q軸電流指令値Iq*を求める際に、q軸電流指令値Iq0の符号とq軸電流指令値Iq*の符号が同じになるような処理をする。
まず、力行状態では、式(5)により求められる第2q軸電流上限値IqLim2によって制限後q軸電流指令値Iqrを制限する。
式(14)が成立するとき、
状態判定部95は、q軸電流指令値Iq0、回転角速度ω及びこれらの絶対値を入力する。状態判定部95は、q軸電流指令値Iq0及び回転角速度ωの符号関係から、力行状態(符号一致)と回生状態(符号不一致)を判定する。
状態判定部95は、状態Stsを前段q軸電流指令値制限部72、後段q軸電流指令値制限部75及びd軸電流指令値演算部73に入力する。
一方で、状態Stsが“R2”のときは、前段q軸電流指令値制限部72は上式(18)を用いて第1q軸電流下限値IqLim3を算出し、第1q軸電流下限値IqLim3によって基本電流指令値Iq0の絶対値の下限値を制限する。
一方で、状態Stsが“R2”のときは、後段q軸電流指令値制限部75は上式(20)を用いて第2q軸電流下限値IqLim4を算出し、第2q軸電流下限値IqLim4によって制限後q軸電流指令値Iqrの下限値を制限する。
第4実施形態のモータ制御装置は、モータが力行である状態及びモータが回生であるときに、q軸電流指令値と回転角速度の項(逆起電圧により生じる電流成分)大きさの大小関係によって区別される2つの状態を判別し、状態Stsとして算出する状態判定部95と、状態Stsに応じて、q軸電流指令値に対する上限値または下限値を設定して、q軸電流指令値を制限する前段q軸電流指令値制限部72及び後段q軸電流指令値制限部75を備える。
これにより、モータが力行状態又は回生状態であっても、デューティ飽和を回避することができる。
Claims (9)
- q軸電流指令値及びd軸電流指令値に基づいてモータに印加する電圧の電圧指令値を演算する電圧指令値演算部と、
前記電圧指令値に基づいて前記モータに駆動電力を出力する駆動回路と、
弱め界磁制御により前記電圧指令値を前記駆動回路に印加可能な最大電圧以下に制限する前記d軸電流指令値を演算するd軸電流指令値演算部と、
前記d軸電流指令値演算部が演算した前記d軸電流指令値を制限するd軸電流指令値制限部と、
前記d軸電流指令値制限部による前記d軸電流指令値の制限により前記電圧指令値が前記最大電圧を超えないように前記q軸電流指令値を制限するq軸電流指令値制限部と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。 - 前記d軸電流指令値制限部は、前記d軸電流指令値演算部が演算した前記d軸電流指令値の大きさ及び変化速度の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記q軸電流指令値を演算するq軸電流指令値演算部と、
前記q軸電流指令値演算部が演算した前記q軸電流指令値が、弱め界磁制御により前記電圧指令値を前記最大電圧以下にできる限界を超えている場合に、前記q軸電流指令値演算部が演算した前記q軸電流指令値を制限する第2のq軸電流指令値制限部と、を備え、
前記d軸電流指令値演算部は、前記第2のq軸電流指令値制限部が制限した前記q軸電流指令値に基づいて前記d軸電流指令値を演算し、
前記q軸電流指令値制限部は、前記第2のq軸電流指令値制限部が制限した前記q軸電流指令値をさらに制限する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。 - 前記d軸電流指令値演算部は、前記モータの回転角速度及び電源電圧を変数とする第1演算式に基づいて前記d軸電流指令値を演算し、
前記第2のq軸電流指令値制限部は、前記モータの回転角速度及び前記電源電圧を変数とする第2演算式に基づいて演算される第1q軸制限値により、前記q軸電流指令値演算部が演算した前記q軸電流指令値を制限し、
前記q軸電流指令値制限部は、前記モータの回転角速度及び前記電源電圧を変数とする第3演算式に基づいて演算される第2q軸制限値により、前記第2のq軸電流指令値制限部が制限した前記q軸電流指令値を制限し、
前記モータ制御装置は、前記第1演算式、前記第2演算式、及び前記第3演算式に共通の係数を演算する係数演算部を備え、
前記係数演算部は、少なくとも前記モータの回転角速度及び前記電源電圧を係数に含む2次の伝達関数フィルタに所定値が入力された場合の出力を前記共通の係数として演算することを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。 - 前記駆動回路を前記電圧指令値に基づき駆動するPWM信号のデューティ値をデッドタイム補償するデッドタイム補償部、を備え、
前記d軸電流指令値演算部は、前記駆動回路への印加電圧から前記デッドタイム補償の補償分を低減した補正後電圧に基づいて、前記d軸電流指令値を補正し、
前記q軸電流指令値制限部及び前記第2のq軸電流指令値制限部は、それぞれ制限した前記q軸電流指令値を、前記補正後電圧に基づいて補正する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のモータ制御装置。 - 前記q軸電流指令値が前記q軸電流指令値制限部又は前記第2のq軸電流指令値制限部により制限されるまでの余裕量を算出する余裕量算出部と、
前記モータの回転角速度の変化及び前記駆動回路への印加電圧の変化に対する、前記q軸電流指令値制限部及び前記第2のq軸電流指令値制限部の応答性を、前記余裕量に応じて変化させる応答性変更部と、
を備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のモータ制御装置。 - 前記モータが回生状態である場合に、前記q軸電流指令値演算部が演算した前記q軸電流指令値の大きさと前記モータの逆起電圧により生じる電流成分の大きさとの間の大小関係を判定する状態判定部を備え、
前記q軸電流指令値制限部及び前記第2のq軸電流指令値制限部は、前記q軸電流指令値を上限値又は下限値のいずれで制限するかを、前記状態判定部が判定した前記大小関係に応じて定める、
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のモータ制御装置。 - 請求項1〜7の何れか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置によって制御されるモータと、
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ製品。 - 請求項1〜7の何れか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置によって制御されるモータと、
を備え、前記モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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