JP2023088683A - 電動車両の制御方法、及び、電動車両の制御装置 - Google Patents

電動車両の制御方法、及び、電動車両の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】異なるモータで駆動される駆動輪間に回転数差が生じたときに、その回転数差を是正し、かつ、回転数の変動が抑えられた安定的な制御状態に収束させやすい電動車両の制御方法及び電動車両の制御装置を提供する。【解決手段】第2モータの回転数に基づいて、第1モータの回転数についての目標値である第1回転数目標値が演算され、第1モータの回転数に基づいて、第2モータの回転数についての目標値である第2回転数目標値が演算される。第1回転数目標値に基づいて、第1モータに出力させるトルクである第1回転数制御トルクが演算され、第2回転数目標値に基づいて、第2モータに出力させるトルクである第2回転数制御トルクが演算される。そして、第1モータの回転数が第2モータの回転数よりも大きい場合、第1回転数制御トルクに基づいて、第1モータに対する最終的なトルク指令値である第1最終トルク指令値が演算される。【選択図】図14

Description

本発明は、電動車両の制御方法及び制御装置に関する。
特許文献1は、前輪を駆動する第1電動機と後輪を駆動する第2電動機を備える電動車両の制御に関し、前輪と後輪の回転速度の差に基づいてスリップ状態を検出し、スリップ状態に基づいて、前輪及び後輪のうちスリップ輪から非スリップ輪に出力トルクを移動させるとともに、非スリップ輪がスリップしないように移動させる出力トルクの変化速度を制限することを開示している。
特許5835583号公報
複数のモータを搭載し、これらの各モータによって駆動輪がそれぞれに制御される電動車両が知られている。例えば、前輪と後輪をそれぞれ異なるモータで駆動する四輪駆動の電動車両がある。このような電動車両では、運転者によるアクセル操作等に応じて要求される駆動力を生じさせるためのトルクを各モータに配分することによって、電動車両の全体で要求されたトルク(駆動力)を生じさせる。そして、異なるモータで駆動される駆動輪間において回転数差が生じ、いずれかの駆動輪がスリップしたと判断されるときには、スリップした駆動輪に生じさせるべきトルクを、スリップしていない駆動輪に追加的に負担させる。これにより、電動車両は、要求されたトルクを生じさせつつ、駆動輪のスリップを解消する。特に、特許文献1の制御は、このようなトルクの移動量を制限することによって、スリップしていなかった駆動輪が、トルクの移動に起因してスリップしてしまうことを防止するものである。
しかし、上記のように、トルクの移動によって、異なるモータで駆動される駆動輪間の回転数差、すなわちスリップを是正しようとするときには、駆動輪の回転数が安定した定常状態に収束し難くなる場合がある。具体的には、駆動輪間でのトルク移動が繰り返され、その結果、各駆動輪の回転数が振動的に変化する不安定な制御状態となる場合がある。このような不安定な制御状態は、移動させるトルクの変化率(変化速度)を制限した場合にも生じ得る。すなわち、駆動輪間の回転数差を是正するために、回転数が過多となった駆動輪に生じさせるべきトルクを、他の駆動輪に移動させるときには、上記のような不安定な制御状態が生じ得る。
本発明は、異なるモータで駆動される駆動輪間に回転数差が生じたときに、その回転数差を是正し、かつ、回転数の変動が抑えられた安定的な制御状態に収束させやすい電動車両の制御方法及び電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
本発明のある態様は、第1モータによって駆動される第1駆動輪と、第1モータとは異なる第2モータによって駆動される第2駆動輪と、を備える電動車両の制御方法である。この制御方法では、電動車両に要求された駆動力に対応する総トルクが決定され、この総トルクを第1モータ及び第2モータに配分することにより、第1モータが出力すべきトルクである第1基本トルクと、第2モータが出力すべきトルクである第2基本トルクと、が演算される。また、第2モータの回転数に基づいて、第1モータの回転数についての目標値である第1回転数目標値が演算され、第1モータの回転数に基づいて、第2モータの回転数についての目標値である第2回転数目標値が演算される。さらに、第1回転数目標値に基づいて、第1モータに出力させるトルクである第1回転数制御トルクが演算され、第2回転数目標値に基づいて、第2モータに出力させるトルクである第2回転数制御トルクが演算される。そして、(a)第1モータの回転数が第2モータの回転数よりも大きいときには、第1回転数制御トルクに基づいて、第1モータに対する最終的なトルク指令値である第1最終トルク指令値が演算され、かつ、第1基本トルクと第1回転数制御トルクとの偏差である第1トルク偏差に基づいて第2基本トルクを補正することにより、第2モータに対する最終的なトルク指令値である第2最終トルク指令値が演算される。一方、(b)第2モータの回転数が第1モータの回転数よりも大きいときには、第2基本トルクと第2回転数制御トルクとの偏差である第2トルク偏差に基づいて第1基本トルクを補正することにより、第1最終トルク指令値が演算され、第2回転数制御トルクに基づいて、第2さん集トルク指令値が演算される。そして、上記のように演算された第1最終トルク指令値及び第2最終トルク指令値に基づいて、第1モータ及び第2モータが駆動される。
本発明によれば、異なるモータで駆動される駆動輪間に回転数差が生じたときに、その回転数差を是正し、かつ、回転数の変動が抑えられた安定的な制御状態に収束させやすい電動車両の制御方法及び電動車両の制御装置を提供することができる。
図1は、電動車両の概略構成を示す説明図である。 図2は、モータコントローラの構成を示すブロック図である。 図3は、アクセル開度-トルクテーブルの例を示すグラフである。 図4は、トルク配分演算部の構成を示すブロック図である。 図5は、電動車両の運動方程式に関する説明図である。 図6は、スリップ制御演算部の構成を示すブロック図である。 図7は、スリップ判定部の構成を示すブロック図である。 図8は、前後差回転目標値演算部の構成を示すブロック図である。 図9は、フロントスリップ制御演算部の構成を示すブロック図である。 図10は、フロントスリップ制御演算部における回転数制御部の構成を示すブロック図である。 図11は、フロントスリップ制御演算部における外乱トルク推定部の構成を示すブロック図である。 図12は、リアスリップ制御演算部の構成を示すブロック図である。 図13は、リアスリップ制御演算部における回転数制御部の構成を示すブロック図である。 図14は、リアスリップ制御演算部における外乱トルク推定部の構成を示すブロック図である。 図15は、前後トルク指令値演算部の構成を示すブロック図である。 図16は、第1比較例の制御を実行したときの前後加速度等を示すタイムチャートである。 図17は、第2比較例の制御を実行したときの前後加速度等を示すタイムチャートである。 図18は、本実施形態に係る制御を実行したときの前後加速度等を示すタイムチャートである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、電動車両10の概略構成を示す説明図である。図1に示すように、本実施形態の電動車両10は、前輪22と後輪32を各々異なるモータによって駆動する四輪駆動車両である。電動車両10は、フロント駆動システム11、リア駆動システム12、バッテリ13、及び、モータコントローラ14を備える。
フロント駆動システム11は、フロントモータ21によって、前輪22を駆動するシステムである。フロント駆動システム11は、フロントモータ21及び前輪22の他に、フロントインバータ23、回転センサ24、及び、電流センサ25等を備える。
フロントモータ21は、例えば三相交流同期電動機であり、フロントインバータ23から入力される交流電力によって駆動される。フロントモータ21の出力トルクは、前輪22にトルク(駆動力)を生じさせる。また、フロントモータ21は、その駆動軸が前輪22によって連れ回されて回転するときに、いわゆる回生トルクを発生させる。これにより、フロントモータ21は、電動車両10の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
前輪22は、電動車両10の前方に配置された駆動輪である。前輪22は、フロント減速機26及びドライブシャフト27を介してフロントモータ21に接続される。
フロントインバータ23は、フロントモータ21の相ごとに2対のスイッチング素子を備える。フロントインバータ23は、モータコントローラ14から入力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じてこれらのスイッチング素子をオン/オフする。これにより、フロントインバータ23は、バッテリ13から供給される直流電力を交流電力に変換してフロントモータ21に入力し、フロントモータ21を駆動する。フロントインバータ23を構成するスイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)や金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOS-FET)等のパワー半導体素子である。回生制御時には、フロントインバータ23は、フロントモータ21で生じる交流電力を直流電力に変換してバッテリ13に入力する。
回転センサ24は、フロントモータ21の回転子位相αを検出する。回転子位相αはいわゆる電気角[rad]である。回転センサ24は、例えば、レゾルバやエンコーダである。検出された回転子位相αは、モータコントローラ14に入力される。
電流センサ25は、フロントモータ21の各相に流れる電流iuf,ivf,iwfを検出する。これらの電流iuf,ivf,iwfは、モータコントローラ14に入力される。
リア駆動システム12は、リアモータ31によって、後輪32を駆動するシステムであり、フロント駆動システム11と対称に構成される。したがって、リア駆動システム12は、リアモータ31及び後輪32の他に、リアインバータ33、回転センサ34、電流センサ35、リア減速機36、ドライブシャフト37等を備える。リア駆動システム12を構成するこれら各部は、フロント駆動システム11の各部と同様に機能する。すなわち、後輪32は、電動車両10の後方に配置された駆動輪である。回転センサ34が検出するリア駆動システム12の回転子位相は「α」である。電流センサ35が検出するリアモータ31の各相に流れる電流は「iur,ivr,iwr」である。
バッテリ13は、フロント駆動システム11とリア駆動システム12に共通に設けられ、フロントモータ21とリアモータ31を駆動する電力を供給する。また、回生制御時には、バッテリ13は、フロントモータ21及びリアモータ31で生じた回生電力によって充電される。
モータコントローラ14は、電動車両10の制御装置である。モータコントローラ14は、各種の車両変数を取得し、これらの車両変数に基づいて、フロントモータ21及びリアモータ31を駆動するためのPWM信号をそれぞれ生成する。そして、モータコントローラ14は、生成したPWM信号をそれぞれフロントインバータ23及びリアインバータ33に入力することにより、車両変数に応じてフロントモータ21及びリアモータ31を駆動させる。
車両変数とは、電動車両10の制御状態等を表すパラメータである。モータコントローラ14は、車両変数として、例えば、フロントモータ21の回転子位相α及び電流iuf,ivf,iwf、リアモータ31の回転子位相α及び電流iur,ivr,iwrを取得する。この他、モータコントローラ14は、例えば、アクセル開度Apo、車体速度V、ステアリング回転角度θstr[rad]、及び、バッテリ13の電圧Vdc(図示しない)等を車両変数として取得する。アクセル開度Apoは、運転者によるアクセル(図示しない)の操作量を表すパラメータである。ステアリング回転角度θstrは、運転者によるステアリングホイール(図示しない)の操作方向及び操作量を表すパラメータである。アクセル開度Apo、車体速度V、ステアリング回転角度θstr、及び、バッテリ13の電圧Vdc等の車両変数は、図示しないセンサ等によって必要に応じて適宜検出され得る。なお、本実施形態のモータコントローラ14は、センサ等から直接に車両変数を取得するが、モータコントローラ14は、図示しない他のコントローラ(コンピュータ)から、一部または全部の車両変数を取得することができる。
上記のように、電動車両10は、第1モータ(例えばフロントモータ21)によって駆動される第1駆動輪(例えば前輪22)と、第1モータとは異なる第2モータ(例えばリアモータ31)によって駆動される第2駆動輪(例えば後輪32)と、を備える。以下においては、第1モータ及び第2モータ、すなわちフロントモータ21及びリアモータ31を制御するモータコントローラ14の具体的構成について説明する。
[モータコントローラの構成]
図2は、モータコントローラ14の構成を示すブロック図である。モータコントローラ14は、1または複数のコンピュータによって構成され、以下に説明する各部としての処理を予め定められた所定の周期で繰り返し実行するようにプログラムされている。具体的には、モータコントローラ14は、入力処理部41、基本トルク演算部42、スリップ制御演算部43、制振制御演算部44、電流指令値演算部45、及び、電流制御演算部46(モータ駆動制御部)を備える。
入力処理部41は、各種制御演算に使用する車両変数を取得し、または、演算する入力処理を実行する。
例えば、入力処理部41は、アクセル開度Apo、車体速度V、ステアリング回転角度θstr、及び、バッテリ13の電圧Vdc等を図示しないセンサまたはコントローラ等から取得する。
また、入力処理部41は、フロントモータ21の電流iuf,ivf,iwf及びリアモータ31の電流iur,ivr,iwrを、電流センサ25,35からそれぞれ取得する。なお、本実施形態においては、電流センサ25,35は三相の電流を検出するが、電流センサ25,35が三相の電流のうち二相の電流を検出するときには、入力処理部41は、残りの一相の電流を、検出された二相の電流を用いて演算する。
また、入力処理部41は、フロントモータ21の回転子位相α及びリアモータ31の回転子位相αを、回転センサ24,34からそれぞれ取得する。そして、入力処理部41は、これらの回転子位相α及び回転子位相αを微分することによって、フロントモータ21の回転子角速度ω[rad/s]及びリアモータ31の回転子角速度ω[rad/s]を演算する。入力処理部41は、回転子角速度ω,ωを、フロントモータ21及びリアモータ31の極対数で除算することにより、フロントモータ21の回転数(以下、フロントモータ回転数という)ωmf[rad/s]、及び、リアモータ31の回転数(以下、リアモータ回転数という)ωmr[rad/s]を演算する。フロントモータ回転数ωmf、及び、リアモータ回転数ωmrは、各駆動モータの機械的な角速度である。
以下では、各種演算において、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrが用いられる。但し、入力処理部41は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrに単位変換係数(60/2π)を乗算することにより、フロントモータ21の回転数N[rpm]、及び、リアモータ31の回転数N[rpm]を演算することができる。また、入力処理部41は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrと、前輪22及び後輪32の動半径と、を用いて、前輪22及び後輪32の車輪回転速度を演算することができる。したがって、以下の各種演算では、各種演算では、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrの代わりに、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrと実質的に等価な回転数N,Nや前輪22及び後輪32の車輪回転速度を用いることができる。
基本トルク演算部42は、電動車両10に要求された駆動力に対応する総トルクTm1 を演算し、かつ、この総トルクTm1 をフロントモータ21とリアモータ31に配分する基本トルク演算処理を実行する。具体的には、基本トルク演算部42は、総トルク演算部47とトルク配分演算部48を備える。なお、電動車両10に要求された駆動力とは、アクセル操作等、運転者の操作に応じて定まる駆動力であって、電動車両10が全体として発揮すべき駆動力である。
総トルク演算部47は、フロントモータ回転数ωmfとアクセル開度Apoに基づいて、総トルクTm1 を演算する総トルク演算処理を実行する。例えば、総トルク演算部47は、フロントモータ回転数ωmf及びアクセル開度Apoと、総トルクTm1 と、を対応付けたアクセル開度-トルクテーブルを予め保有する。このため、総トルク演算部47は、アクセル開度-トルクテーブルを参照することにより、フロントモータ回転数ωmf及びアクセル開度Apoに応じた総トルクTm1 を設定する。
トルク配分演算部48は、総トルクTm1 を前輪22と後輪32に配分するトルク配分演算処理によって、フロント基本トルクTmf と、リア基本トルクTmr と、を設定する。フロント基本トルクTmf は、総トルクTm1 のうち、フロントモータ21が出力すべきトルクについての目標値である。リア基本トルクTmr は、総トルクTm1 のうち、リアモータ31が出力すべきトルクについての目標値である。
基本トルク演算部42の構成、すなわち総トルク演算部47及びトルク配分演算部48の構成については、詳細を後述する。
スリップ制御演算部43は、フロント基本トルクTmf 及びリア基本トルクTmr と、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrと、に基づいて、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 を演算する。フロント最終トルク指令値Tmf-f2 は、フロントモータ21に対する最終的なトルク指令値である。リア最終トルク指令値Tmr-f2 は、リアモータ31に対する最終的なトルク指令値である。特に、スリップ制御演算部43は、前輪22及び後輪32のスリップを解消または抑制し、かつ、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrの変動を抑えるスリップ制御演算処理を実行する。このスリップ制御演算処理により、スリップ制御演算部43は、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 を設定する。スリップ制御演算部43の構成については、詳細を後述する。
なお、本実施形態において、「スリップ」とは、フロントモータ回転数ωmfとリアモータ回転数ωmrに差異が生じた状態をいう。したがって、前輪22及び後輪32が路面にグリップしており、前輪22及び後輪32がいずれも駆動力を生じている状態であっても、スリップは生じ得る。また、本実施形態においては、前輪22または後輪32にスリップが生じたとしても、少なくとも前輪22または後輪32のいずれかが路面にグリップしている状態にあるものとする。以下では、相対的に回転数が大きい駆動輪が、スリップした状態にあるとする。例えば、フロントモータ回転数ωmfがリアモータ回転数ωmrよりも大きいときには、前輪22がスリップしている。
制振制御演算部44は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrに基づき、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 に対して制振制御演算処理を施す。具体的には、制振制御演算部44は、各モータへのトルク入力から各モータの回転数までの伝達特性を用いて、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrをフィードバックする。これにより、制振制御演算部44は、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 が含むドライブシャフト27,37のねじり振動等の成分を補償する。より具体的には、制振制御演算部44は、例えば特開2003-009566号公報等に記載された公知の制振制御処理を実行する。なお、電動車両10がドライブシャフト27,37を有しないとき、または、機械的機構等によってドライブシャフト27,37のねじり振動等を抑制するときには、制振制御演算は省略され得る。
電流指令値演算部45は、フロントモータ21のdq軸電流指令値idf ,iqf (図示しない)、及び、リアモータ31のdq軸電流指令値idr ,iqr (図示しない)を演算する電流指令値演算処理を実行する。具体的には、電流指令値演算部45は、例えば、フロント電流指令値テーブル(図示しない)を保有する。フロント電流指令値テーブルは、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 、フロントモータ回転数ωmf、及び、バッテリ13の電圧Vdcと、フロントモータ21のdq軸電流指令値idf ,iqf と、を実験またはシミュレーション等によって予め対応付けたルックアップテーブルである。このため、電流指令値演算部45は、フロント電流指令値テーブルを参照することにより、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 と、フロントモータ回転数ωmfと、バッテリ13の電圧Vdcと、に基づいて、フロントモータ21のdq軸電流指令値idf ,iqf を演算する。同様に、電流指令値演算部45は、例えば、リア電流指令値テーブル(図示しない)を保有する。リア電流指令値テーブルは、リア最終トルク指令値Tmr-f2 、リアモータ回転数ωmr、及び、バッテリ13の電圧Vdcと、リアモータ31のdq軸電流指令値idr ,iqr と、を実験またはシミュレーション等によって予め対応付けたルックアップテーブルである。このため、電流指令値演算部45は、リア電流指令値テーブルを参照することにより、リア最終トルク指令値Tmr-f2 と、リアモータ回転数ωmrと、バッテリ13の電圧Vdcと、に基づいて、リアモータ31のdq軸電流指令値idr ,iqr を演算する。なお、制振制御演算処理が行われる場合、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 は、制振制御演算処理後の値が用いられる。
電流制御演算部46は、フロントインバータ23及びリアインバータ33に入力する各PWM信号を演算する電流制御演算処理を実行する。
具体的には、まず、電流制御演算部46は、フロントモータ21の電流iuf,ivf,iwfと回転子位相αに基づいて、フロントモータ21のdq軸電流idf,iqf(図示しない)を演算する。同様に、電流制御演算部46は、リアモータ31の電流iur,ivr,iwrと回転子位相αに基づいて、リアモータ31のdq軸電流idr,iqr(図示しない)を演算する。
次いで、電流制御演算部46は、フロントモータ21のdq軸電流idf,iqfとdq軸電流指令値idf ,iqf の偏差に基づいて、フロントモータ21のdq軸電圧指令値vdf ,vqf (図示しない)を演算する。同様に、電流制御演算部46は、リアモータ31のdq軸電流idr,iqrとdq軸電流指令値idr ,iqr の偏差に基づいて、リアモータ31のdq軸電圧指令値vdr ,vqr (図示しない)を演算する。なお、フロントモータ21のdq軸電圧指令値vdf ,vqf 、及び、リアモータ31のdq軸電圧指令値vdr ,vqr の演算においては、dq軸間の干渉による電流を抑えるために、非干渉制御が加えられる場合がある。
その後、電流制御演算部46は、フロントモータ21のdq軸電圧指令値vdf ,vqf と回転子位相αに基づいて、フロントモータ21の各相に対する電圧指令値vuf ,vvf ,vwf (図示しない)を演算する。同様に、電流制御演算部46は、リアモータ31のdq軸電圧指令値vdr ,vqr と回転子位相αに基づいて、リアモータ31の各相に対する電圧指令値vur ,vvr ,vwr (図示しない)を演算する。
そして、電流制御演算部46は、フロントモータ21の各相に対する電圧指令値vuf ,vvf ,vwf とバッテリ13の電圧Vdcに基づいて、フロントインバータ23に入力するPWM信号を演算する。同様に、電流制御演算部46は、リアモータ31の各相に対する電圧指令値vur ,vvr ,vwr とバッテリ13の電圧Vdcに基づいて、リアインバータ33に入力するPWM信号を演算する。
フロントインバータ23及びリアインバータ33は、上記のように演算された各PWM信号に応じてスイッチング素子を開閉する。これにより、フロントモータ21及びリアモータ31は、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 に対応するトルクを出力するように駆動される。
[基本トルク演算部の構成]
図3は、アクセル開度-トルクテーブルの例を示すグラフである。アクセル開度-トルクテーブルは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。本実施形態においては、総トルク演算部47は、このアクセル開度-トルクテーブルを参照することにより、フロントモータ回転数ωmf及びアクセル開度Apoに基づいて、総トルクTm1 を設定する。
図4は、トルク配分演算部48の構成を示すブロック図である。図4に示すように、トルク配分演算部48は、総トルク制限部51、前輪配分ゲイン乗算部52、及び、後輪配分ゲイン乗算部53を備える。
総トルク制限部51は、フロントモータ回転数ωmfの変化率またはリアモータ回転数ωmrの変化率に基づいて、総トルクTm1 を制限する。具体的には、総トルク制限部51は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrを微分する。そして、フロントモータ回転数ωmfがリアモータ回転数ωmrよりも大きいときには、総トルク制限部51は、リアモータ回転数ωmrの微分値に応じて総トルクTm1 を制限する。一方、リアモータ回転数ωmrがフロントモータ回転数ωmfよりも大きいときには、総トルク制限部51は、フロントモータ回転数ωmfの微分値に応じて総トルクTm1 を制限する。すなわち、総トルク制限部51は、前輪22がスリップしたときには、スリップしていない後輪32の回転数変化率に基づいて総トルクTm1 を制限し、後輪32がスリップしたときには、スリップしていない前輪22の回転数変化率に基づいて総トルクTm1 を制限する。
本実施形態においては、総トルク制限部51は、フロントモータ回転数ωmfまたはリアモータ回転数ωmrの微分値の大きさが、所定の閾値β(図示しない)以上となったときに、上記のように総トルクTm1 を制限する。すなわち、総トルク制限部51は、前輪22または後輪32に、急峻なスリップが生じたときに総トルクTm1 を制限する。そして、前輪22及び後輪32がいずれもスリップしていないとき、並びに、前輪22または後輪32がスリップしたとしても、そのスリップが急峻でないときには、総トルクTm1 を制限されない。閾値βは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。また、総トルク制限部51は、フロントモータ回転数ωmfまたはリアモータ回転数ωmrの微分値の大きさに、予め定める所定のゲインγ(図示しない)を乗じた値を総トルクTm1 から減算することによって、基本となる総トルクTm1 を制限し、制限後の総トルクTm2 を演算する。ゲインγは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
前輪配分ゲイン乗算部52は、制限後の総トルクTm2 (総トルクTm1 が制限されない場合は実質的に総トルクTm1 )に対して前輪配分ゲインKを乗算することにより、フロント基本トルクTmf を演算する。前輪配分ゲインKfは、「0」から「1」の間で、電動車両10の制御モード等の設定に応じて予め定められる。
後輪配分ゲイン乗算部53は、制限後の総トルクTm2 (総トルクTm1 が制限されない場合は実質的に総トルクTm1 )に対して後輪配分ゲイン「1-K」を乗算することにより、リア基本トルクTmr を演算する。
[スリップ制御演算部の構成]
図5は、電動車両10の運動方程式に関する説明図である。図5に示すように、電動車両10のトルク伝達系はモデル化される。このため、電動車両10の運動方程式は、下記の式(1)~(4)によって表される。また、図5及び運動方程式に用いる各パラメータは後掲のとおりである。各パラメータの補助記号「f」は「フロント」を表し、「r」は「リア」を表す。なお、下記の運動方程式では、ドライブシャフト27,37のねじり、及び、路面からの反力等、外乱によるトルク(以下、外乱トルクという)は考慮されていない。
Figure 2023088683000002
mf,Jmr:モータイナーシャ
wf,Jwr:駆動軸イナーシャ(1軸分)
, N:オーバーオールギヤ比
ωmf,ωmr:モータ回転数
mf,Tmr:モータトルク
df,Tdr:駆動軸トルク
上記の運動方程式によれば、フロントモータトルクTmfからフロントモータ回転数ωmfまでの伝達特性Gpf(s)、及び、リアモータトルクTmrからリアモータ回転数ωmrまでの伝達特性Gpr(s)は、下記の式(5)~(7)によって表される。スリップ制御演算部43は、伝達特性Gpf(s)及び伝達特性Gpr(s)を用いて構成される。なお、「s」はラプラス演算子である。
Figure 2023088683000003
図6は、スリップ制御演算部43の構成を示すブロック図である。図6に示すように、スリップ制御演算部43は、スリップ判定部61、前後差回転目標値演算部62、フロントスリップ制御演算部63、リアスリップ制御演算部64、及び、前後トルク指令値演算部65を備える。
スリップ判定部61は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrに基づいて、前輪22または後輪32にスリップが生じたか否かを判定する。スリップ判定部61は、この判定の結果を、フロントスリップフラグSF及びリアスリップフラグSFとして、前後トルク指令値演算部65に出力する。
前後差回転目標値演算部62は、ステアリング回転角度θstrと車体速度Vに基づいて、前後差回転目標値ωmfr を演算する。前後差回転目標値ωmfr は、前輪22と後輪32の回転数差(以下、差回転ωmfrという)についての目標値であり、電動車両10の操舵状況に応じて生じさせるべき差回転ωmfrを表す。例えば、ステアリング回転角度θstrがゼロであって、電動車両10が直進しているときには、前後差回転目標値ωmfr はゼロである。そして、電動車両10が左右いずれかに旋回しているときには、前後差回転目標値ωmfr は、ステアリング回転角度θstr及び車体速度Vに応じた値を持つ。前後差回転目標値ωmfr は、フロントスリップ制御演算部63及びリアスリップ制御演算部64に入力される。
フロントスリップ制御演算部63は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrと、前後差回転目標値ωmfr と、に基づいて、フロントスリップ制御トルクTmf-slip を演算する。フロントスリップ制御トルクTmf-slip は、原則として、「フロントモータ回転数ωmfをリアモータ回転数ωmrに一致させた場合」におけるフロントモータ21の出力トルクについての目標値を表す。すなわち、フロントスリップ制御トルクTmf-slip で表される出力トルクとなるようにフロントモータ21を駆動すると、フロントモータ回転数ωmfはリアモータ回転数ωmrに実質的に一致する。したがって、例えば、前輪22がスリップしたときに、フロントスリップ制御トルクTmf-slip に相当する出力トルクとなるようにフロントモータ21が制御されると、前輪22のスリップが実質的に解消または抑制される。フロントスリップ制御トルクTmf-slip は、前後トルク指令値演算部65に入力される。
リアスリップ制御演算部64は、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrと、前後差回転目標値ωmfr と、に基づいて、リアスリップ制御トルクTmr-slip を演算する。リアスリップ制御トルクTmr-slip は、原則として、「リアモータ回転数ωmrをフロントモータ回転数ωmfに一致させる場合」におけるリアモータ31の出力トルクについての目標値を表す。すなわち、リアスリップ制御トルクTmr-slip*で表される出力トルクとなるようにリアモータ31を駆動すると、リアモータ回転数ωmrはフロントモータ回転数ωmfに実質的に一致する。したがって、後輪32がスリップしたときに、リアスリップ制御トルクTmr-slip に相当する出力トルクとなるようリアモータ31が制御されると、後輪32のスリップは実質的に解消または抑制される。リアスリップ制御トルクTmr-slip は、前後トルク指令値演算部65に入力される。
なお、フロントモータ回転数ωmfとリアモータ回転数ωmrについて「一致」とは、前後差回転目標値ωmfr がゼロの場合、フロントモータ回転数ωmfをリアモータ回転数ωmrに実質的に等しくすること、または、リアモータ回転数ωmrをフロントモータ回転数ωmfに実質的に等しくすること、をいう。前後差回転目標値ωmfr がゼロ以外の値を持つ場合、上記の「一致」とは、フロントモータ回転数ωmfまたはリアモータ回転数ωmrを、前後差回転目標値ωmfr に相当する差回転ωmfrがある所定回転数の状態に実質的に等しくすることをいう。例えば、フロントモータ回転数ωmfを、リアモータ回転数ωmrを基準として、ωmr+|ωmfr |またはωmr-|ωmfr |に実質的に等しくした状態がフロントモータ回転数ωmfをリアモータ回転数ωmrに一致させた状態である。リアモータ回転数ωmrをフロントモータ回転数ωmfに「一致」させる場合についても同様である。
前後トルク指令値演算部65は、フロント基本トルクTmf 及びリア基本トルクTmr と、フロントスリップフラグSF及びリアスリップフラグSFと、フロントスリップ制御トルクTmf-slip 及びリアスリップ制御トルクTmr-slip と、に基づいて、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 及びリア最終トルク指令値Tmr-f2 を演算する。
以下、スリップ制御演算部43を構成する上記各部の具体的構成について詳述する。
[スリップ判定部の具体的構成]
図7は、スリップ判定部61の構成を示すブロック図である。図7に示すように、スリップ判定部61は、差回転演算部71と、スリップフラグ演算部72と、を備える。
差回転演算部71は、フロントモータ回転数ωmfとリアモータ回転数ωmrの偏差、すなわち差回転ωmfrを演算する。本実施形態では、差回転演算部71は、フロントモータ回転数ωmfからリアモータ回転数ωmrを減算することにより、差回転ωmfrを演算する。差回転ωmfrは、スリップフラグ演算部72に入力される。
スリップフラグ演算部72は、差回転ωmfrと所定の回転数閾値ωm-thに基づいて、フロントスリップフラグSF及びリアスリップフラグSFを演算する。具体的には、スリップフラグ演算部72は、下記の式(8)及び式(9)にしたがって、フロントスリップフラグSF及びリアスリップフラグSFを演算する。フロントスリップフラグSF及びリアスリップフラグSFは、「1」が「スリップ」を表し、「0」が「非スリップ」を表す。
Figure 2023088683000004
式(8)及び式(9)に示すように、フロントモータ回転数ωmfがリアモータ回転数ωmrよりも大きく、その差回転ωmfrの絶対値が回転数閾値ωm-th以上であるときに、フロントスリップフラグSFが「1」(スリップ)、かつ、リアスリップフラグSFrが「0」(非スリップ)となる。また、リアモータ回転数ωmrがフロントモータ回転数ωmfよりも大きく、その差回転ωmfrの絶対値が回転数閾値ωm-th以上であるときにフロントスリップフラグSFが「0」(非スリップ)、かつ、リアスリップフラグSFrが「1」(スリップ)となる。すなわち、差回転ωmfrの絶対値が回転数閾値ωm-th以上であるときに、差回転ωmfrの符号に応じて、フロントモータ回転数ωmfがリアモータ回転数ωmrよりも大きい、または、リアモータ回転数ωmrがフロントモータ回転数ωmfよりも大きい、と判定される。
本実施形態においては、回転数閾値ωm-thは、前後差回転目標値ωmfr に応じて変化する可変の閾値である。前後差回転目標値ωmfr が大きいほど、回転数閾値ωm-thは大きくなるように設定される。例えば、回転数閾値ωm-thは、予め定める基準値に、前後差回転目標値ωmfr を加算または減算することによって演算される。このように、回転数閾値ωm-thを可変とすることで、回転数閾値ωm-thは電動車両10の旋回状態に応じた適切な値となる。なお、回転数閾値ωm-thは、実験またはシミュレーション等によって予め定めた固定値であってもよい。
[前後差回転目標値演算部の具体的構成]
図8は、前後差回転目標値演算部62の構成を示すブロック図である。図8に示すように、前後差回転目標値演算部62は、第1乗算部81と、第2乗算部82と、を備える。
第1乗算部81は、ステアリング回転角度θstrと車体速度Vを乗算する。
第2乗算部82は、ステアリング回転角度θstrと車体速度Vの積に対して、さらにゲインKθVを乗算することにより、前後差回転目標値ωmfr を演算する。ゲインKθVは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
なお、本実施形態では、前後差回転目標値演算部62は、上記のように第1乗算部81と第2乗算部82とを備えるが、これに限らない。前後差回転目標値演算部62は、ステアリング回転角度θstr、車体速度V、及び、ヨーレートセンサ値(図示しない)等を入力とし、これらに対応する前後差回転目標値ωmfr をマップ等によって保有する構成であってもよい。
[フロントスリップ制御演算部の具体的構成]
図9は、フロントスリップ制御演算部63の構成を示すブロック図である。図9に示すように、フロントスリップ制御演算部63は、フロント回転数目標値演算部91(第1または第2回転数目標値演算部)、回転数制御部92、外乱トルク推定部93、及び、外乱トルク補償部94を備える。
フロント回転数目標値演算部91は、リアモータ回転数ωmrに基づいて、フロントモータ回転数ωmfについての目標値であるフロント回転数目標値ωmf を演算する。本実施形態においては、フロント回転数目標値演算部91は、リアモータ回転数ωmrに前後差回転目標値ωmfr を加算することにより、フロント回転数目標値ωmf を演算する。このフロント回転数目標値ωmf は、フロントモータ回転数ωmfをリアモータ回転数ωmrに一致させるための回転数目標値である。電動車両10が直進しており、前後差回転目標値ωmfr がゼロであるときには、フロント回転数目標値ωmf は、リアモータ回転数ωmrに等しい。フロント回転数目標値ωmf は、回転数制御部92に入力される。
なお、ステアリング回転角度θstrの絶対値が予め定める所定の閾値以下であって、電動車両10がほぼ直進していると判断されるときには、フロント回転数目標値演算部91における前後差回転目標値ωmfr の加算を省略して、フロントモータ回転数ωmfとリアモータ回転数ωmrを一致させてもよい。この場合、ステアリングの中心近傍において、電動車両10の直進安定性が高められる。
回転数制御部92(第1または第2回転数制御トルク演算部)は、フロントモータ回転数ωmfと、フロント回転数目標値ωmf と、に基づいて、フロント回転数制御トルクTωfを演算する。フロント回転数制御トルクTωfは、フロントモータ回転数ωmfをリアモータ回転数ωmrに一致させるときに、フロントモータ21が出力すべきトルクの目標値である。
図10は、フロントスリップ制御演算部63における回転数制御部92の構成を示すブロック図である。図10に示すように、回転数制御部92は、回転数偏差演算部101と、フロントモデルマッチング補償部102と、を備える。
回転数偏差演算部101は、フロントモータ回転数ωmfと、フロント回転数目標値ωmf の偏差であるフロント回転数偏差Δωmfを演算する。フロント回転数偏差Δωmfは、フロントモデルマッチング補償部102に入力される。
フロントモデルマッチング補償部102は、フロント回転数偏差Δωmfを、伝達特性Gpf(s)とローパスフィルタR(s)によって構成されるフィルタでフィルタリングすることにより、フロント回転数制御トルクTωfを演算する。フロントモデルマッチング補償部102は、例えば、R(s)/{Gpf(s)(1-R(s))}によって表される。ローパスフィルタR(s)の時定数は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
外乱トルク推定部93(図9参照)は、駆動軸であるドライブシャフト27の動特性に基づいて、フロントモータ21に作用する外乱トルク(以下、フロント外乱トルクTdfという)を演算する。本実施形態においては、外乱トルク推定部93は、フロントモータ回転数ωmf及びフロントスリップ制御トルクTmf-slip (前回値)を入力とし、フロント外乱トルクTdfを出力する。
図11は、フロントスリップ制御演算部63における外乱トルク推定部93の構成を示すブロック図である。図11に示すように、外乱トルク推定部93は、第1フロントモータトルク推定部111と、第2フロントモータトルク推定部112と、フロント外乱トルク演算部113と、を備える。
第1フロントモータトルク推定部111は、フロントモータ回転数ωmfを、伝達特性Gpf(s)とローパスフィルタH(s)によって構成されるフィルタでフィルタリングすることによって、第1フロントモータトルク推定値Tmf1^を演算(推定)する。第1フロントモータトルク推定部111は、例えば、H(s)/Gpf(s)によって表される。ローパスフィルタH(s)は、下記の式(10)によって表される。時定数τは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
Figure 2023088683000005
第2フロントモータトルク推定部112は、フロントスリップ制御トルクTmf-slip (前回値)を、ローパスフィルタH(s)でフィルタリングすることによって、第2フロントモータトルク推定値Tmf2^を演算(推定)する。
フロント外乱トルク演算部113は、第1フロントモータトルク推定値Tmf1^と第2フロントモータトルク推定値Tmf2^に基づいて、フロント外乱トルクTdfを演算する。本実施形態においては、フロント外乱トルク演算部113は、第1フロントモータトルク推定値Tmf1^から第2フロントモータトルク推定値Tmf2^を減算することにより、フロント外乱トルクTdfを演算する。
外乱トルク補償部94(図9参照)は、フロント回転数制御トルクTωfとフロント外乱トルクTdfに基づき、フロント外乱トルクTdfを補償することにより、フロントスリップ制御トルクTmf-slip を演算する。具体的には、外乱トルク補償部94は、フロント回転数制御トルクTωfからフロント外乱トルクTdfを減算することにより、フロント外乱トルクTdfが補償されたフロントスリップ制御トルクTmf-slip を演算する。
[リアスリップ制御演算部の具体的構成]
図12は、リアスリップ制御演算部64の構成を示すブロック図である。図12に示すように、リアスリップ制御演算部64は、リア回転数目標値演算部121(第1または第2回転数目標値演算部)、回転数制御部122(第1または第2回転数制御トルク演算部)、及び、外乱トルク推定部123を備える。これらのリアスリップ制御演算部64を構成する各部は、リア駆動システム12用のパラメータを用いることを除き、フロントスリップ制御演算部63を構成する各部と対応した対称な構成となっている。
リア回転数目標値演算部121は、フロントモータ回転数ωmfに基づいて、リアモータ回転数ωmrについての目標値であるリア回転数目標値ωmr を演算する。本実施形態においては、リア回転数目標値演算部121は、フロントモータ回転数ωmfを前後差回転目標値ωmfr を減算することにより、リア回転数目標値ωmr を演算する。このリア回転数目標値ωmr は、リアモータ回転数ωmrをフロントモータ回転数ωmfに一致させるための回転数目標値である。電動車両10が直進しており、前後差回転目標値ωmfr がゼロであるときには、リア回転数目標値ωmr は、フロントモータ回転数ωmfに等しい。リア回転数目標値ωmr は、回転数制御部122に入力される。
なお、ステアリング回転角度θstrの絶対値が予め定める所定の閾値以下であって、電動車両10がほぼ直進していると判断されるときには、リア回転数目標値演算部121における前後差回転目標値ωmfr の減算を省略して、フロントモータ回転数ωmfとリアモータ回転数ωmrを一致させてもよい。この場合、ステアリングの中心近傍において、電動車両10の直進安定性が高められる。
回転数制御部122は、リアモータ回転数ωmrと、リア回転数目標値ωmr と、に基づいて、リア回転数制御トルクTωrを演算する。リア回転数制御トルクTωrは、リアモータ回転数ωmrをフロントモータ回転数ωmfに一致させるときに、リアモータ31が出力すべきトルクの目標値である。
図13は、リアスリップ制御演算部64における回転数制御部122の構成を示すブロック図である。図13に示すように、回転数制御部122は、回転数偏差演算部131と、リアモデルマッチング補償部132と、を備える。これらは、リア駆動システム12用のパラメータを用いることを除き、フロントスリップ制御演算部63における回転数制御部92の各部と対応した対称な構成となっている。
回転数偏差演算部131は、リアモータ回転数ωmrと、リア回転数目標値ωmr の偏差であるリア回転数偏差Δωmrを演算する。リア回転数偏差Δωmrは、リアモデルマッチング補償部132に入力される。
リアモデルマッチング補償部132は、リア回転数偏差Δωmrを、伝達特性Gpr(s)とローパスフィルタR(s)によって構成されるフィルタでフィルタリングすることにより、リア回転数制御トルクTωrを演算する。リアモデルマッチング補償部132は、例えば、R(s)/{Gpr(s)(1-R(s))}によって表される。
外乱トルク推定部123(図12参照)は、駆動軸であるドライブシャフト37の動特性に基づいて、リアモータ31に作用する外乱トルク(以下、リア外乱トルクTdrという)を演算する。本実施形態においては、外乱トルク推定部123は、リアモータ回転数ωmr及びリアスリップ制御トルクTmr-slip (前回値)を入力とし、リア外乱トルクTdrを出力する。
図14は、リアスリップ制御演算部64における外乱トルク推定部123の構成を示すブロック図である。図14に示すように、外乱トルク推定部123は、第1リアモータトルク推定部141と、第2リアモータトルク推定部142と、リア外乱トルク演算部143と、を備える。これらは、リア駆動システム12用のパラメータを用いることを除き、フロントスリップ制御演算部63における外乱トルク推定部93の各部と対応した対称な構成となっている。
第1リアモータトルク推定部141は、リアモータ回転数ωmrを、伝達特性Gpr(s)とローパスフィルタH(s)によって構成されるフィルタでフィルタリングすることによって、第1リアモータトルク推定値Tmr1^を演算(推定)する。第1リアモータトルク推定部141は、例えば、H(s)/Gpr(s)によって表される。
第2リアモータトルク推定部142は、リアスリップ制御トルクTmr-slip (前回値)を、ローパスフィルタH(s)でフィルタリングすることによって、第2リアモータトルク推定値Tmr2^を演算(推定)する。
リア外乱トルク演算部143は、第1リアモータトルク推定値Tmr1^と第2リアモータトルク推定値Tmr2^に基づいて、リア外乱トルクTdrを演算する。本実施形態においては、リア外乱トルク演算部143は、第1リアモータトルク推定値Tmr1^から第2リアモータトルク推定値Tmr2^を減算することにより、リア外乱トルクTdrを演算する。
外乱トルク補償部124(図12参照)は、リア回転数制御トルクTωrとリア外乱トルクTdrに基づき、リア外乱トルクTdrを補償することにより、リアスリップ制御トルクTmr-slip を演算する。具体的には、外乱トルク補償部124は、リア回転数制御トルクTωrからリア外乱トルクTdrを減算することにより、リア外乱トルクTdrが補償されたリアスリップ制御トルクTmr-slip を演算する。
[前後トルク指令値演算部の具体的構成]
図15は、前後トルク指令値演算部65の構成を示すブロック図である。図15に示すように、前後トルク指令値演算部65は、フロント最終トルク指令値演算部151と、リア最終トルク指令値演算部152と、を備える。
フロント最終トルク指令値演算部151は、回転数制御トルク制限部161(LIM)、トルク指令値切替部162、補正部163、トルク偏差演算部164、及び、変化率制限部165(レートリミット)を備える。
回転数制御トルク制限部161は、フロントスリップ制御トルクTmf-slip が、フロント基本トルクTmf を超えるときに、フロントスリップ制御トルクTmf-slip の値をフロント基本トルクTmf の値に制限する。すなわち、回転数制御トルク制限部16は、フロントスリップ制御トルクTmf-slip をフロント基本トルクTmf 以下に制限する。
トルク指令値切替部162は、フロントスリップフラグSFに基づいて、フロント基本トルクTmf またはフロントスリップ制御トルクTmf-slip のいずれかを、第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 として出力する。フロントスリップフラグSFが「0」であり、前輪22が非スリップ状態であるときには、トルク指令値切替部162は、フロント基本トルクTmf を第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 として出力する。一方、フロントスリップフラグSFfが「1」であり、前輪22がスリップ状態であるときには、トルク指令値切替部162は、フロントスリップ制御トルクTmf-slip を第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 として出力する。
補正部163は、リア基本トルクTmr とリアスリップ制御トルクTmr-slip との偏差であるリアトルク偏差ΔTに基づいて、第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 を補正することにより、(第2の)フロント最終トルク指令値Tmf-f2 を演算する。本実施形態においては、補正部163は、第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 にリアトルク偏差ΔTを加算することにより、フロント最終トルク指令値Tmf-f2 を演算する。
トルク偏差演算部164は、フロント基本トルクTmf と第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 との偏差であるフロントトルク偏差ΔTを演算する。本実施形態においては、トルク偏差演算部164は、フロント基本トルクTmf から第1フロント最終トルク指令値Tmf-f1 を減算することにより、フロントトルク偏差ΔTを演算する。フロントトルク偏差ΔTは、変化率制限部165を介して、リア最終トルク指令値演算部152の補正部168に入力される。すなわち、フロントトルク偏差ΔTは、フロントモータ21(前輪22)からリアモータ31(後輪32)へのトルクの移動量を表す。
変化率制限部165は、フロントトルク偏差ΔTがリア最終トルク指令値演算部152の補正部168に入力されるときに、フロントトルク偏差ΔTの変化率を制限する。フロントトルク偏差ΔTの変化率に対する制限値(上限値)は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。変化率制限部165は、前輪22に急峻なスリップが生じたときに、フロントトルク偏差ΔTに相当するトルクの移動によって後輪32がスリップしてしまうことを抑制する。
リア最終トルク指令値演算部152は、回転数制御トルク制限部166(LIM)、トルク指令値切替部167、補正部168、トルク偏差演算部169、及び、変化率制限部165(レートリミット)を備える。これらの各部は、リア駆動システム12用のパラメータを用いることを除き、フロント最終トルク指令値演算部151の各部と対応した対称な構成となっている。
回転数制御トルク制限部166は、リアスリップ制御トルクTmr-slip が、リア基本トルクTmr を超えるときに、リアスリップ制御トルクTmr-slip の値をリア基本トルクTmr の値に制限する。すなわち、回転数制御トルク制限部16は、リアスリップ制御トルクTmr-slip をリア基本トルクTmr 以下に制限する。
トルク指令値切替部167は、リアスリップフラグSFに基づいて、リア基本トルクTmr またはリアスリップ制御トルクTmr-slip のいずれかを、第1リア最終トルク指令値Tmr-f1 として出力する。リアスリップフラグSFrが「0」であり、後輪32が非スリップ状態であるときには、トルク指令値切替部167は、リア基本トルクTmr を第1リア最終トルク指令値Tmr-f1 として出力する。一方、リアスリップフラグSFrが「1」であり、後輪32がスリップ状態であるときには、トルク指令値切替部167は、リアスリップ制御トルクTmr-slip を第1リア最終トルク指令値Tmr-f1 として出力する。
補正部168は、フロントトルク偏差ΔTに基づいて、第1リア最終トルク指令値Tmr-f1 を補正することにより、(第2の)リア最終トルク指令値Tmr-f2 を演算する。本実施形態においては、補正部168は、第1リア最終トルク指令値Tmr-f1 にフロントトルク偏差ΔTを加算することにより、リア最終トルク指令値Tmr-f2 を演算する。
トルク偏差演算部169は、リアトルク偏差ΔTを演算する。本実施形態においては、トルク偏差演算部169は、リア基本トルクTmr から第1リア最終トルク指令値Tmr-f1 を減算することにより、リアトルク偏差ΔTを演算する。リアトルク偏差ΔTは、変化率制限部170を介して、フロント最終トルク指令値演算部151の補正部163に入力される。すなわち、リアトルク偏差ΔTは、リアモータ31(後輪32)からフロントモータ21(前輪22)へのトルクの移動量を表す。
変化率制限部170は、リアトルク偏差ΔTがフロント最終トルク指令値演算部151の補正部163に入力されるときに、リアトルク偏差ΔTの変化率を制限する。リアトルク偏差ΔTの変化率に対する制限値(上限値)は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。変化率制限部170は、後輪32に急峻なスリップが生じたときに、リアトルク偏差ΔTに相当するトルクの移動によって前輪22がスリップしてしまうことを抑制する。
[作用]
上記のように、本実施形態に係る電動車両10では、前輪22または後輪32にスリップが生じたときに、前輪22または後輪32のうち、スリップした一方の駆動輪の回転数を、スリップしていない他方の駆動輪の回転数に合わせる回転数制御が実行される。その上で、スリップした一方の駆動輪で出力すべきトルク(駆動力)が、スリップしていない他方の駆動輪に移動される。これにより、スリップが解消または抑制される。以下では、第1比較例及び第2比較例との比較によって、本実施形態に係る電動車両10の制御による作用を説明する。
なお、本実施形態に係る電動車両10の制御と、第1比較例及び第2比較例の制御と、の比較は、以下のとおり、スリップが生じやすい路面及び走行状況について行う。具体的には、スリップ量に応じて抵抗が増える路面(砂地等)を走行し、かつ、加速している状態から、時刻t0において同じ路面状況のまま登坂路に直進により進入したものとする。
図16は、第1比較例の制御を実行したときの前後加速度Acc等を示すタイムチャートである。第1比較例は、スリップした一方の駆動輪の回転数をスリップしていない他方の駆動輪の回転数に合わせる回転数制御を行わずに、スリップした一方の駆動輪で出力すべきトルク(駆動力)が、スリップしていない他方の駆動輪に移動させる制御である。
図16(A)は、フロントモータ21の出力トルク(以下、フロントモータトルクTmfという)を示すタイムチャートである。図16(A)における実線は、フロントモータトルクTmfである。図16(A)における破線は、フロント基本トルクTmf である。図16(B)は、フロントモータ回転数ωmfを示すチャイムチャートである。図16(B)における実線は、フロントモータ回転数ωmfである。図16(B)における破線は、車体速度Vである。図16(C)は、リアモータ31の出力トルク(以下、リアモータトルクTmrという)を示すタイムチャートである。図16(C)における実線は、リアモータトルクTmrである。図16(C)における破線は、リア基本トルクTmr である。図16(D)は、リアモータ回転数ωmrを示すタイムチャートである。図16(D)における実線は、リアモータ回転数ωmrである。図16(D)における破線は、車体速度Vである。図16(E)は、電動車両の前後加速度Accを示すタイムチャートである。図16(E)における実線は、前後加速度Accである。図16(E)における破線は、勾配抵抗Rである。
図16(B)及び図16(D)に示すように、時刻tにおいて登坂路に進入すると、時刻tまでの間にフロントの軸荷重が不足するので、フロントモータ回転数ωmfが相対的に大きくなり、リアモータ回転数ωmrが相対的に小さくなる。すなわち、時刻tから時刻tにかけて、前輪22にスリップが生じる。このため、図16(A)及び図16(C)に示すように、時刻t以降において、前輪22(フロントモータ21)から後輪32(リアモータ31)にトルクが移動される。しかし、図16(B)及び図16(D)に示すように、時刻tで生じたフロントモータ回転数ωmfとリアモータ回転数ωmrの差回転ωmfrは低減されるが、十分ではなく、前輪22のスリップが抑制しきれいていない。その結果、前輪22の抵抗が大きくなると同時に、後輪32のトルク(リアモータトルクTmr)を増加量が飽和する。このため、図16(E)に示すように、勾配抵抗Rに打ち勝つ程度の前後加速度Accが得られない。したがって、第1比較例の制御では、前輪22のスリップしたときに、そのトルクを後輪32に移動させているにもかかわらず、車体速度Vは低下し、減速またはスタックしてしまうことが分かる。
図17は、第2比較例の制御を実行したときの前後加速度等を示すタイムチャートである。第2比較例は、第1比較例と同様に、スリップした一方の駆動輪の回転数をスリップしていない他方の駆動輪の回転数に合わせる回転数制御を行わずに、スリップした一方の駆動輪で出力すべきトルク(駆動力)が、スリップしていない他方の駆動輪に移動させる制御である。但し、第2比較例は、第1比較例に対して、制御ゲインを上げ、スリップが生じたときのトルクの移動量が大きくなるように調整した例である。
図17(A)は、フロントモータトルクTmfを示すタイムチャートである。図17(B)は、フロントモータ回転数ωmfを示すタイムチャートである。図17(C)は、リアモータトルクTmrを示すタイムチャートである。図17(D)は、リアモータ回転数ωmrを示すタイムチャートである。図17(E)は、電動車両の前後加速度Accを示すタイムチャートである。図17における各線は、第1比較例に関する図16の例と同様である。
図17(B)及び図17(D)に示すように、時刻tにおいて登坂路に進入すると、時刻tまでの間にフロントの軸荷重が不足し、フロントモータ回転数ωmfが相対的に大きくなり、リアモータ回転数ωmrが相対的に小さくなる。すなわち、時刻tから時刻tにかけて、前輪22にスリップが生じる。このように前輪22にスリップが生じることは、第1比較例と同様である。そして、図17(A)及び図17(C)に示すように、時刻t以降において、前輪22(フロントモータ21)から後輪32(リアモータ31)にトルクが移動され、時刻tで生じた差回転ωmfrが低減される。
しかし、第2比較例の制御では、第1比較例の制御と比較して、制御ゲインを大きく設定しているので、図17(A)及び図17(C)に示すように、トルクの移動が開始された時刻t以降、フロントモータトルクTmf及びリアモータトルクTmrが振動的な振る舞いを示す。その結果、図17(B)及び図17(D)に示すように、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrも振動する。
また、制御ゲインを大きく設定した第2比較例では、例えば時刻tにおいて、前輪22のスリップが低減され、前輪22の抵抗が低減されている。このため、後輪32のトルク(リアモータトルクTmr)は増加させることができている。その結果、図17(E)に示すように、第2比較例の制御では、勾配抵抗Rに打ち勝つ程度の前後加速度Accが得られている。このため、第2比較例の制御では、車体速度Vは上昇する。
しかし、第2比較例の制御では、フロントモータトルクTmf及びリアモータトルクTmr、並びに、フロントモータ回転数ωmf及びリアモータ回転数ωmrの振動は、時刻t以降において継続しており、例えば時刻tにおいても収束しない。すなわち、第2比較例の制御では、前輪22及び後輪32のスリップとグリップが繰り返えされる不安定な制御状態が解消されない。
図18は、本実施形態に係る制御を実行したときの前後加速度等を示すタイムチャートである。図18(A)は、フロントモータトルクTmfを示すタイムチャートである。図18(B)は、フロントモータ回転数ωmfを示すタイムチャートである。図18(C)は、リアモータトルクTmrを示すタイムチャートである。図18(D)は、リアモータ回転数ωmrを示すタイムチャートである。図18(E)は、電動車両の前後加速度Accを示すタイムチャートである。図18における各線は、第1比較例に関する図16及び第2比較例に関する図17と同様である。
図18(B)及び図18(D)に示すように、時刻tにおいて登坂路に進入すると、時刻tまでの間にフロントの軸荷重が不足し、フロントモータ回転数ωmfが相対的に大きくなり、リアモータ回転数ωmrが相対的に小さくなる。すなわち、時刻tから時刻tにかけて、前輪22にスリップが生じる。このように前輪22にスリップが生じることは、第1比較例及び第2比較例と同様である。そして、図18(A)及び図18(C)に示すように、時刻t以降において、前輪22(フロントモータ21)から後輪32(リアモータ31)にトルクが移動され、時刻tで生じた差回転ωmfrが低減される。
このとき、本実施形態に係る制御では、図18(A)及び図18(C)に示すように、第2比較例以上に、スリップした前輪22のトルク(フロントモータトルクTmf)が抑制され、スリップしていない後輪32にトルクが移動される。このため、時刻tから例えば時刻tにかけて、差回転ωmfrが十分に低減される。その結果、時刻t2においては、前輪22のスリップが抑制されたことで、前輪22の抵抗が小さくなり、同時に、後輪32のトルクを増加させることが可能となっている。このため、図18(E)に示すように、本実施形態に係る制御では、勾配抵抗Rに打ち勝つ前後加速度Accが得られ、車体速度Vを増加させることができる。すなわち、本実施形態に係る制御によれば、砂地の勾配路等、スリップが生じやすい路面を走行する場合においても、電動車両10をスタックさせず、かつ、登坂可能である。これは、本実施形態に係る制御が、第2比較例等とは異なり、スリップした前輪22の回転数(フロントモータ回転数ωmf)を、スリップしていない後輪32の回転数(リアモータ回転数ωmr)に合わせる回転数制御を実行された上で、前輪22から後輪32にトルクが移動されることによるものである。
以上のように、本実施形態に係る電動車両の制御方法は、第1モータ(例えばフロントモータ21)によって駆動される第1駆動輪(例えば前輪22)と、第1モータとは異なる第2モータ(例えばリアモータ31)によって駆動される第2駆動輪(例えば後輪32)と、を備える電動車両の制御方法である。この電動車両の制御方法では、電動車両に要求された駆動力に対応する総トルクTm1 が演算される。そして、総トルクTm1 を第1モータ及び第2モータに配分することにより、第1モータが出力すべきトルクである第1基本トルク(例えばフロント基本トルクTmf )と、第2モータが出力すべきトルクである第2基本トルク(例えばリア基本トルクTmr )と、が演算される。
また、第2モータの回転数(例えばリアモータ回転数ωmr)に基づいて、第1モータの回転数についての目標値である第1回転数目標値(例えばフロント回転数目標値ωmf )が演算される。同様に、第1モータの回転数(例えばフロントモータ回転数ωmf)に基づいて、第2モータの回転数についての目標値である第2回転数目標値(例えばリア回転数目標値ωmr )が演算される。さらに、第1回転数目標値に基づいて、第1モータに出力させるトルクである第1回転数制御トルク(例えばフロント回転数制御トルクTωf)が演算され、第2回転数目標値に基づいて、第2モータに出力させるトルクである第2回転数制御トルク(例えばリア回転数制御トルクTωr)が演算される。
そして、(a)第1モータの回転数が第2モータの回転数よりも大きいときには、第1回転数制御トルクに基づいて、第1モータに対する最終的なトルク指令値である第1最終トルク指令値(例えば(第2の)フロント最終トルク指令値Tmf-f2 )が演算される。また、第1基本トルクと第1回転数制御トルクとの偏差である第1トルク偏差(例えばフロントトルク偏差ΔT)に基づいて第2基本トルク(例えばリア基本トルクTmr )を補正することにより、第2モータに対する最終的なトルク指令値である第2最終トルク指令値(例えば(第2の)リア最終トルク指令値Tmr-f2 )が演算される。
これとは逆に、(b)第2モータの回転数が第1モータの回転数よりも大きいときには、第2基本トルクと第2回転数制御トルクとの偏差である第2トルク偏差(例えばリアトルク偏差ΔT)に基づいて第1基本トルク(例えばフロント基本トルクTmf )を補正することにより、第1最終トルク指令値(例えば(第2の)フロント最終トルク指令値Tmf-f2 )が演算される。また、第2回転数制御トルク(例えばリア回転数制御トルクTωr)に基づいて、第2最終トルク指令値(例えばリア回転数制御トルクTωr)が演算される。
そして、上記のように演算された第1最終トルク指令値及び第2最終トルク指令値に基づいて、第1モータ及び第2モータを駆動される。
このように、上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、いずれかの駆動輪がスリップしたとき、すなわち回転数差が生じたときに、スリップした駆動輪の回転数を、スリップしていない駆動輪の回転数に応じた目標値に向けて制御する回転数制御が行われる。そして、この回転数制御が実行された上で、スリップした駆動輪で出力すべきトルクを、スリップしていない駆動輪に移動される。この制御によれば、異なるモータで駆動される駆動輪間に回転数差が生じたときに、回転数差が是正され、かつ、回転数の変動が抑えられた安定的な制御状態に収束しやすい。すなわち、電動車両10で発揮すべき駆動力を維持するために、単に、スリップした駆動輪のトルクをスリップしていない駆動輪に移動させる制御と比較すると、駆動輪の回転数やトルク等の振動を低減または抑制することができる。また、駆動輪の回転数差は、路面に応じた値となりやすく、路面に伝達される駆動力は最大化され、電動車両10のスタックが抑制される。
また、上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1モータの回転数(例えばフロントモータ回転数ωmf)が第2モータの回転数(例えばリアモータ回転数ωmr)よりも大きい場合、第2最終トルク指令値(例えばリア最終トルク指令値Tmr-f2 )は、第1トルク偏差(例えばフロントトルク偏差ΔT)を第2基本トルク(例えばリア基本トルクTmr )に加算することによって演算される。また、第2モータの回転数(例えばリアモータ回転数ωmr)が第1モータの回転数(例えばフロントモータ回転数ωmf)よりも大きい場合、第1最終トルク指令値(例えばフロント最終トルク指令値Tmf-f2 )は、第2トルク偏差(例えばリアトルク偏差ΔT)を第1基本トルク(例えばフロント基本トルクTmf )に加算することによって演算される。
このように、回転数の制御によって、スリップした駆動輪において減少する出力トルクを、スリップしていない駆動輪に加算して出力させるすることにより、回転数の調整を優先した制御を行ったにもかかわらず、簡易かつ確実に、電動車両10の駆動力が維持される。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、変化率制限部165,170において、第2最終トルク指令値の演算に用いる第1トルク偏差(例えばフロントトルク偏差ΔT)の変化率、及び、第1最終トルク指令値の演算に用いる第2トルク偏差(例えばリアトルク偏差ΔT)の変化率、に対して予め定める所定の上限値が設定される。このように、第1トルク偏差及び第2トルク偏差が制限されることで、スリップした駆動輪のスリップを迅速に抑制しつつ、かつ、トルクが移動されたことによってスリップしていなかった駆動輪でスリップが生じ難くなる。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1回転数目標値及び第2回転数目標値(フロント回転数目標値ωmf 及びリア回転数目標値ωmr )は、車体速度V及びステアリングホイールの回転角度(ステアリング回転角度θstr)に基づいて演算される。このように、第1回転数目標値及び第2回転数目標値が決定されることにより、電動車両10の旋回挙動に応じて必要とされる差回転ωmfrが考慮され得る。その結果、旋回時に、フロントモータトルクTmfが制限される等、駆動輪間の干渉が抑制され、ヨーレートの低下等も防止される。すなわち、電動車両10が旋回している場合においても、回転数に基づいたスリップ制御を行いつつ、旋回挙動に適した駆動力が得られる。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1回転数制御トルク(例えばフロント回転数制御トルクTωf)は、第1モータの回転数が第2モータの回転数に一致するときに、第1モータが出力すべきトルクである。そして、第2回転数制御トルク(例えばリア回転数制御トルクTωr)は、第2モータの回転数が前記第1モータの回転数に一致するときに、第2モータが出力すべきトルクである。このように、スリップした駆動輪の回転数をスリップしていない駆動輪の回転数に一致させることにより、特に、回転数差が是正され、かつ、回転数の変動が抑えられた安定的な制御状態に収束しやすい。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1回転数制御トルク(例えばフロント回転数制御トルクTωf)は、第1モータの回転数と第1回転数目標値の偏差である第1回転数偏差(例えばフロント回転数偏差Δωmf)に基づき、第1モータのトルクから回転数までの伝達特性Gpf(s)を用いて構成された第1モデルマッチングフィルタによって演算される。また、第2回転数制御トルク(例えばリア回転数制御トルクTωr)は、第2モータの回転数と第2回転数目標値の偏差である第2回転数偏差(例えばリア回転数偏差Δωmr)に基づき、第2モータのトルクから回転数までの伝達特性Gpr(s)を用いて構成された第2モデルマッチングフィルタによって演算される。そして、これらの第1モデルマッチングフィルタ及び第2モデルマッチングフィルタは、ローパスフィルタR(s)を含む。このように、ローパスフィルタR1(s)を含むモデルマッチングフィルタによって各回転数制御トルクが演算される場合、回転数制御トルクによってスリップが抑制された状態からスリップし難い路面(いわゆる高μ路)に復帰するときに、急加速が生じる等の不具合を防止できる。また、運転者に与える違和感を抑えつつ、駆動輪のスリップが是正されやすい。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、駆動軸の動特性に基づいて、第1モータに作用する第1外乱トルク(例えばフロント外乱トルクTdf)と、第2モータに作用する第2外乱トルク(例えばリア外乱トルクTdr)が推定される。そして、第1モータの回転数が第2モータの回転数よりも大きい場合、第1最終トルク指令値(例えばフロント最終トルク指令値Tmf-f2 )は、第1回転数制御トルクに対して第1外乱トルクを補償することによって演算される。また、第2モータの回転数が第1モータの回転数よりも大きい場合、第2最終トルク指令値(例えばリア最終トルク指令値Tmr-f2 )は、第2回転数制御トルクに対して第2外乱トルクを補償することによって演算される。このように、外乱トルクが補償されることで、特に正確に、スリップした駆動輪の回転数を、スリップしていない駆動輪の回転数に応じた目標値に一致させることができる。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1モータの回転数と第2モータの回転数の偏差である差回転ωmfrが演算され、差回転ωmfrの絶対値が回転数閾値ωm-th以上であるときに、差回転ωmfrの符号に応じて、「第1モータの回転数が第2モータの回転数よりも大きい」、または、「第2モータの回転数が第1モータの回転数よりも大きい」、と判定される。このように判定すると、駆動輪のスリップが特に正確に判定さえ得る。その結果、電動車両10が旋回中であるときに生じる差回転ωmfr等によって、誤って、駆動輪がスリップしたと判定されることを防止できる。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1回転数制御トルク(例えばフロント回転数制御トルクTωf)は、第1基本トルク(例えばフロント基本トルクTmf )以下に制限される。同様に、第2回転数制御トルク(例えばリア回転数制御トルクTωr)は、第2基本トルク(例えばリア基本トルクTmr )以下に制限される。このように、スリップした駆動輪で生じさせるトルクが基本トルクを上回らないようにすることで、駆動輪のスリップが確実に低減するように制御される。また、駆動輪のスリップが収まったときに、そのトルク目標値が滑らかに切り替わる。
上記実施形態に係る電動車両の制御方法では、第1モータの回転数が第2モータの回転数よりも大きいときには、第2モータの回転数の微分値に応じて総トルクTm1 が制限される。また、第2モータの回転数が第1モータの回転数よりも大きいときには、第1モータの回転数の微分値に応じて総トルクTm1 が制限される。このように、駆動輪に急峻なスリップが生じたときに、総トルクTm1 が制限されることにより、第1駆動輪(例えば前輪22)及び第2駆動輪(例えば後輪32)の両方がスリップ状態となることが防止される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態等で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態等においては、フロントモータ21によって駆動される前輪22と、フロントモータ21とは異なるリアモータ31によって駆動される後輪32と、を備える電動車両10において本発明を実施する例を説明したが、これに限らない。本実施形態は、複数の異なるモータによって、複数の駆動輪が駆動される電動車両であれば好適に適用可能である。例えば、本発明は、四輪の各々が個別のモータによって駆動される電動車両にも好適である。また、本発明は、いわゆるインホイールモータの駆動輪を搭載する電動車両にも好適である。
10:電動車両,11:フロント駆動システム,12:リア駆動システム,13:バッテリ,14:モータコントローラ,16:回転数制御トルク制限部,21:フロントモータ,22:前輪,23:フロントインバータ,24:回転センサ,25:電流センサ,26:フロント減速機,27:ドライブシャフト,31,:リアモータ,32:後輪,33:リアインバータ,34:回転センサ,35:電流センサ,36:リア減速機,37:ドライブシャフト,41:入力処理部,42:基本トルク演算部,43:スリップ制御演算部,44:制振制御演算部,45:電流指令値演算部,46:電流制御演算部,47:総トルク演算部,48:トルク配分演算部,51:総トルク制限部,52:前輪配分ゲイン乗算部,53:後輪配分ゲイン乗算部,61:スリップ判定部,62:差回転目標値演算部,63:フロントスリップ制御演算部,64:リアスリップ制御演算部,65:トルク指令値演算部,71:差回転演算部,72:スリップフラグ演算部,81:第1乗算部,82:第2乗算部,91:フロント回転数目標値演算部,92:回転数制御部,93:外乱トルク推定部,94:外乱トルク補償部,101:回転数偏差演算部,102:フロントモデルマッチング補償部,111:第1フロントモータトルク推定部,112:第2フロントモータトルク推定部,113:フロント外乱トルク演算部,121:リア回転数目標値演算部,122:回転数制御部,123:外乱トルク推定部,124:外乱トルク補償部,131:回転数偏差演算部,132:リアモデルマッチング補償部,141:第1リアモータトルク推定部,142:第2リアモータトルク推定部,143:リア外乱トルク演算部,151:フロント最終トルク指令値演算部,152:リア最終トルク指令値演算部,161:回転数制御トルク制限部,162:トルク指令値切替部,163:補正部,164:トルク偏差演算部,165:変化率制限部,166:回転数制御トルク制限部,167:トルク指令値切替部,168:補正部,169:トルク偏差演算部,170:変化率制限部

Claims (11)

  1. 第1モータによって駆動される第1駆動輪と、前記第1モータとは異なる第2モータによって駆動される第2駆動輪と、を備える電動車両の制御方法であって、
    前記電動車両に要求された駆動力に対応する総トルクを演算し、
    前記総トルクを前記第1モータ及び前記第2モータに配分することにより、前記第1モータが出力すべきトルクである第1基本トルクと、前記第2モータが出力すべきトルクである第2基本トルクと、を演算し、
    前記第2モータの回転数に基づいて、前記第1モータの回転数についての目標値である第1回転数目標値を演算し、
    前記第1モータの回転数に基づいて、前記第2モータの回転数についての目標値である第2回転数目標値を演算し、
    前記第1回転数目標値に基づいて、前記第1モータに出力させるトルクである第1回転数制御トルクを演算し、
    前記第2回転数目標値に基づいて、前記第2モータに出力させるトルクである第2回転数制御トルクを演算し、
    (a)前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数よりも大きい場合、
    前記第1回転数制御トルクに基づいて、前記第1モータに対する最終的なトルク指令値である第1最終トルク指令値を演算し、かつ、
    前記第1基本トルクと前記第1回転数制御トルクとの偏差である第1トルク偏差に基づいて前記第2基本トルクを補正することにより、前記第2モータに対する最終的なトルク指令値である第2最終トルク指令値を演算し、
    (b)前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数よりも大きい場合、
    前記第2基本トルクと前記第2回転数制御トルクとの偏差である第2トルク偏差に基づいて前記第1基本トルクを補正することにより、前記第1最終トルク指令値を演算し、かつ、
    前記第2回転数制御トルクに基づいて、前記第2最終トルク指令値を演算し、
    前記第1最終トルク指令値及び前記第2最終トルク指令値に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータを駆動する、
    電動車両の制御方法。
  2. 請求項1に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数よりも大きい場合、前記第2最終トルク指令値は、前記第1トルク偏差を前記第2基本トルクに加算することによって演算され、
    前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数よりも大きい場合、前記第1最終トルク指令値は、前記第2トルク偏差を前記第1基本トルクに加算することによって演算される、
    電動車両の制御方法。
  3. 請求項1または2に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第2最終トルク指令値の演算に用いる前記第1トルク偏差の変化率、及び、前記第1最終トルク指令値の演算に用いる前記第2トルク偏差の変化率、に対して予め定める所定の上限値が設定される、
    電動車両の制御方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1回転数目標値及び前記第2回転数目標値は、車速及びステアリングホイールの回転角度に基づいて演算される、
    電動車両の制御方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1回転数制御トルクは、前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数に一致する場合、前記第1モータが出力すべきトルクであり、
    前記第2回転数制御トルクは、前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数に一致する場合、前記第2モータが出力すべきトルクである、
    電動車両の制御方法。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1回転数制御トルクは、前記第1モータの回転数と前記第1回転数目標値の偏差である第1回転数偏差に基づき、前記第1モータのトルクから回転数までの伝達特性を用いて構成された第1モデルマッチングフィルタによって演算され、
    前記第2回転数制御トルクは、前記第2モータの回転数と前記第2回転数目標値の偏差である第2回転数偏差に基づき、前記第2モータのトルクから回転数までの伝達特性を用いて構成された第2モデルマッチングフィルタによって演算され、
    前記第1モデルマッチングフィルタ及び前記第2モデルマッチングフィルタは、ローパスフィルタを含む、
    電動車両の制御方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    駆動軸の動特性に基づいて、前記第1モータに作用する第1外乱トルクと、前記第2モータに作用する第2外乱トルクを推定し、
    前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数よりも大きい場合、前記第1最終トルク指令値は、前記第1回転数制御トルクに対して前記第1外乱トルクを補償することによって演算され、
    前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数よりも大きい場合、前記第2最終トルク指令値は、前記第2回転数制御トルクに対して前記第2外乱トルクを補償することによって演算される、
    電動車両の制御方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1モータの回転数と前記第2モータの回転数の偏差である差回転を演算し、
    前記差回転の絶対値が閾値以上である場合、前記差回転の符号に応じて、前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数よりも大きい、または、前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数よりも大きい、と判定する、
    電動車両の制御方法。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1回転数制御トルクは、前記第1基本トルク以下に制限され、
    前記第2回転数制御トルクは、前記第2基本トルク以下に制限される、
    電動車両の制御方法。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数よりも大きい場合、前記第2モータの回転数の微分値に応じて前記総トルクを制限し、
    前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数よりも大きい場合、前記第1モータの回転数の微分値に応じて前記総トルクを制限する、
    電動車両の制御方法。
  11. 第1モータによって駆動される第1駆動輪と、前記第1モータとは異なる第2モータによって駆動される第2駆動輪と、を備える電動車両の制御装置であって、
    前記電動車両に要求された駆動力に対応する総トルクを演算する総トルク演算部と、
    前記総トルクを前記第1モータ及び前記第2モータに配分することにより、前記第1モータが出力すべきトルクである第1基本トルクと、前記第2モータが出力すべきトルクである第2基本トルクと、を演算するトルク配分演算部と、
    前記第2モータの回転数に基づいて、前記第1モータの回転数についての目標値である第1回転数目標値を演算する第1回転数目標値演算部と、
    前記第1モータの回転数に基づいて、前記第2モータの回転数についての目標値である第2回転数目標値を演算する第2回転数目標値演算部と、
    前記第1回転数目標値に基づいて、前記第1モータに出力させるトルクである第1回転数制御トルクを演算する第1回転数制御トルク演算部と、
    前記第2回転数目標値に基づいて、前記第2モータに出力させるトルクである第2回転数制御トルクを演算する第2回転数制御トルク演算部と、
    (a)前記第1モータの回転数が前記第2モータの回転数よりも大きい場合、前記第1回転数制御トルクに基づいて、前記第1モータに対する最終的なトルク指令値である第1最終トルク指令値を演算し、かつ、前記第1基本トルクと前記第1回転数制御トルクとの偏差である第1トルク偏差に基づいて前記第2基本トルクを補正することにより、前記第2モータに対する最終的なトルク指令値である第2最終トルク指令値を演算し、(b)前記第2モータの回転数が前記第1モータの回転数よりも大きい場合、前記第2基本トルクと前記第2回転数制御トルクとの偏差である第2トルク偏差に基づいて前記第1基本トルクを補正することにより、前記第1最終トルク指令値を演算し、かつ、前記第2回転数制御トルクに基づいて、前記第2最終トルク指令値を演算するトルク指令値演算部と、
    前記第1最終トルク指令値及び前記第2最終トルク指令値に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータを駆動するモータ駆動制御部と、
    を備える、電動車両の制御装置。
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