以下、本発明の実施の形態による建設機械を、後方小旋回式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。建設機械としての油圧ショベル1は、左側と右側のクローラ(履帯)2Aを有する自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部側にスイングポスト4Aを介して設けられたスイング式の作業装置4とにより大略構成されている。油圧ショベル1は、作業装置4によって土砂の掘削作業等を行うものである。
図2に示すように、上部旋回体3は、下部走行体2の車幅(左側と右側のクローラ2Aの間隔)とほぼ等しい左右方向の幅寸法を有し、かつ、旋回中心から後述するカウンタウエイト6の後面6Aまでの距離によって規定される旋回半径の仮想円内に収まるように、上方からみて略円形に形成されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行ったときに、カウンタウエイト6の後面6Aがほぼ下部走行体2の車幅内に収まる後方小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
旋回フレーム5は、支持構造体を形成する車体フレームを構成し、上部旋回体3のベースとなっている。旋回フレーム5は、前側に位置してスイングポスト4Aを揺動可能に支持する支持ブラケット5Aと、前後方向の中間部を左右方向に延び、カウンタウエイト6と貯油タンク9との間を仕切る仕切部材5Bとを備えている。仕切部材5Bは、後述する熱交換器12、右後側面カバー19と共に機器収容空間13を画成し、熱交換器12からの熱が貯油タンク9に伝わるのを抑えるものである。
一方、旋回フレーム5の後端側には、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6が配設されている。また、旋回フレーム5の前部左側にはキャブ7が配設されている。このキャブ7内には、オペレータが着席する運転席8、オペレータによって操作される各種の操作機器(図示せず)等が配置されている。
貯油タンク9は、旋回フレーム5の右側に設けられている。この貯油タンク9は、旋回フレーム5の前部右側に配置された燃料タンク9Aと、燃料タンク9Aの後側に隣接して配設された作動油タンク9Bとにより構成されている。燃料タンク9Aは、略直方体状の耐圧タンクとして形成され、エンジン10に供給される燃料を貯えるものである。一方、作動油タンク9Bは、直方体状の耐圧タンクとして形成され、作業装置4等の油圧アクチュエータに供給される作動油を貯えるものである。
カウンタウエイト6の前側には、原動機としてのエンジン10が設けられている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成され、左右方向に延びる横置き状態に配置されている。エンジン10の左側には、作業装置4に油圧を供給する油圧ポンプ11が配設されている。エンジン10の右側には、ラジエータ、オイルクーラ等により構成された熱交換器12が配設されている。エンジン10は、旋回フレーム5に搭載され、油圧ポンプ11を駆動する。
図3に示すように、機器収容空間13は、建屋カバー18によって覆われることにより、熱交換器12の右側に形成されている。この機器収容空間13内には、バッテリ14、エアクリーナ17等の定期的なメンテナンスが必要な搭載機器が収容されている。そして、機器収容空間13は、右後側面カバー19によって開放または閉塞される構成となっている。
バッテリ14は、エンジン10とは別個に旋回フレーム5に取付けられ、電荷を蓄える蓄電装置を構成している。このバッテリ14は、機器収容空間13内で旋回フレーム5上に配置されている。このバッテリ14は、エンジン10のスタータ33等に給電するものである。このため、バッテリ14のプラス側は、バッテリ14からの給電によって作動するスタータ33、表示装置39、燃料ポンプ43等のような負荷回路に接続されている。このとき、負荷回路は、バッテリ14のプラス側に加えて、オルタネータ32のプラス側(B端子)にも接続されている。このため、負荷回路は、バッテリ14とオルタネータ32から給電されることにより作動する。一方、バッテリ14のマイナス側は、アース用配線15によってボディアースである旋回フレーム5に接続されている。
マイナスカットスイッチ16は、アース用配線15の配線経路中(途中)に設けられ、例えばオペレータによって回動操作されるスイッチ切換部材16Aを備えている。このマイナスカットスイッチ16は、スイッチ切換部材16Aを手動操作することにより、バッテリ14のマイナス側と旋回フレーム5との間を電気的に接続または遮断する。
マイナスカットスイッチ16は、機器収容空間13内でバッテリ14の近傍に位置している。具体的には、マイナスカットスイッチ16は、仕切部材5Bに取り付けられ、右後側面カバー19を開くことによって形成される開口からスイッチ切換部材16Aを操作できる位置に配置されている。
エアクリーナ17は、エンジン10に関連してバッテリ14の上方に設けられている。このエアクリーナ17は、エンジン10に吸込まれる外気中のごみ等をフィルタによって除去し、清浄な吸気をエンジン10に供給するものである。
建屋カバー18はキャブ7の右側から後側に亘って旋回フレーム5上に設けられている。この建屋カバー18は、エンジン10、油圧ポンプ11、熱交換器12、貯油タンク9、バッテリ14、エアクリーナ17等を覆うものである。
図3に示すように、建屋カバー18は、カウンタウエイト6と貯油タンク9との間に形成された機器収容空間13を右側方から覆う右後側面カバー19を備えている。右後側面カバー19の前端側は、ヒンジ20を介して仕切部材5Bの右端部に回動可能に取付けられている。一方、右後側面カバー19の後端側には、把手部21が設けられている。オペレータは、把手部21を把持して右後側面カバー19を回動させることにより機器収容空間13を開放または閉塞し、熱交換器12、バッテリ14、エアクリーナ17等に対するメンテナンス作業を行うことができる構成となっている。
次に、油圧ショベル1に適用された電気システムの構成について、図4を参照して説明する。
油圧ショベル1の電気システムは、キースイッチ31と、バッテリ14と、オルタネータ32と、エンジン10を起動するためのスタータ33と、このスタータ33を制御するためのセーフティリレー34と、ロックスイッチ40の操作位置に応じてセーフティリレー34を制御するためのセーフティスタートリレー35と、エンジン10への燃料供給ラインを連通または遮断するためのエンジンストップソレノイド36と、このエンジンストップソレノイド36を制御するためのパワーリレー37およびタイマ38とを備えている。このとき、エンジンストップソレノイド36は、エンジン10に対する燃料の供給と停止を制御することができる。
オルタネータ32は、発電装置を構成している。このオルタネータ32は、エンジン10の近傍に取り付けられ、エンジン10のクランクプーリとベルトによって接続されている。即ち、オルタネータ32は、エンジン10と機械的に接続されている。
オルタネータ32は、エンジン10の駆動によって発電する。具体的には、オルタネータ32は、エンジン10の回転によって内部のモータを回転させて発電する。オルタネータ32のL端子には、表示装置(モニタ)39が接続されている。オルタネータ32の回転速度が遅い場合またはオルタネータ32が停止している場合には、表示装置39のランプが点灯するようになっている。
キースイッチ31は、キーシリンダおよびこのキーシリンダに挿入可能なエンジンキーで構成されており、OFF位置、ON位置、START位置に回転操作が可能になっている。そして、キースイッチ31がOFF位置に操作されると、B端子、C端子およびAcc端子が互いに接続されないようになっている。また、キースイッチ31がON位置に操作されると、B端子およびAcc端子が互いに接続されるようになっている。また、キースイッチ31がSTART位置に操作されると、B端子、C端子およびAcc端子が互いに接続されるようになっている。なお、キースイッチ31は、START位置に操作されてから手放されると、バネ等の付勢力によってON位置に移行するようになっている。
キースイッチ31のB端子は、バッテリ14およびスタータ33のリレー接点に接続されている。即ち、バッテリ14のプラス側には、スタータ33のリレー接点を介しスタータ33のモータが接続されている。また、キースイッチ31のB端子は、セーフティリレー34の接点およびオルタネータ32のB端子に接続されている。即ち、バッテリ14には、セーフティリレー34の接点が接続され、さらにこのセーフティリレー34の接点を介してスタータ33のリレーコイルが接続されている。また、バッテリ14には、オルタネータ32のB端子が接続されている。また、キースイッチ31のB端子は、パワーリレー37の接点に接続されている。即ち、バッテリ14には、パワーリレー37の接点が接続され、さらにこのパワーリレー37の接点を介しエンジンストップソレノイド36の吸引側が接続されている。
キースイッチ31のC端子は、セーフティスタートリレー35の接点に接続され、さらにこのセーフティスタートリレー35の接点を介してセーフティリレー34のE端子に接続されている。キースイッチ31のAcc端子は、ロックスイッチ40に接続され、さらにこのロックスイッチ40を介してセーフティスタートリレー35のコイルに接続されている。キースイッチ31のAcc端子は、セーフティリレー34のC端子、オルタネータ32のIG端子、エンジンストップソレノイド36の保持側、およびタイマ38に接続されている。また、キースイッチ31のAcc端子は、燃料ポンプ43にも接続されている。
そして、例えばキースイッチ31がSTART位置に操作されると、バッテリ14からの電流がキースイッチ31のAcc端子を経由してセーフティリレー34のC端子、オルタネータ32のIG端子、エンジンストップソレノイド36の保持側、およびタイマ38に流れて、それぞれの電源となる。これに加えて、バッテリ14からの電流がキースイッチ31のAcc端子を経由して、燃料ポンプ43に供給され、この電源となる。
このとき、タイマ38は、通電されるとパワーリレー37のコイルを1秒間励磁し、パワーリレー37の接点を閉じ状態に切り換える。これにより、バッテリ14からの電流がエンジンストップソレノイド36の吸引側に1秒間流れ、エンジンストップソレノイド36は吸引位置に動いて、機械式のガバナ41(燃焼噴射装置)のコントロールラック(図示せず)が作動する。その結果、燃料ポンプ43からエンジン10への燃料供給ラインを連通状態とし、エンジン10が回転可能な状態になる。なお、1秒間が経過すると、パワーリレー37の接点が遮断されるものの、キースイッチ31のAcc端子からの電流がエンジンストップソレノイド36の保持側に流れているので、エンジン10が回転可能な状態が継続するようになっている。
また、ロックレバー(図示せず)がロック位置(上昇位置)に操作されてロックスイッチ40が開接点(OFF)となっていれば、セーフティスタートリレー35の接点はON位置となり、バッテリ14からの電流がキースイッチ31のC端子およびセーフティスタートリレー35の接点を経由してセーフティリレー34のE端子に流れる。これにより、セーフティリレー34は、内部のコイルを励磁して内部の接点を閉じ状態に切り換える。そのため、バッテリ14からの電流がセーフティリレー34の接点を経由してスタータ33のリレーコイルに流れる。これにより、スタータ33の接点が閉じ状態に切り換えられ、バッテリ14からの電流がスタータ33のモータに流れて、モータが回転する。その結果、エンジン10が始動するようになっている。
そして、エンジン10が始動すると、オルタネータ32が発電を開始し、オルタネータ32のP端子およびB端子の電圧が上昇する。オルタネータ32のP端子からは、オルタネータ32の回転速度に応じたパルス信号がセーフティリレー34のH端子に出力されている。そして、オルタネータ32の回転速度が予め設定された回転速度に達した場合には、エンジン10の回転速度が十分に上昇してエンジン10の継続動作が可能となっているから、セーフティリレー34は、内部のコイルの励磁を解除して内部の接点を開き状態に切り換える。これにより、スタータ33のリレーコイルに電流が流れなくなり、スタータ33のリレー接点が開き状態となって、スタータ33のモータが停止するようになっている。
エンジン10の始動後には、オペレータは、ロックレバーをロック解除位置(下降位置)に操作する。これにより、ロックスイッチ40が閉接点(ON)となり、セーフティスタートリレー35の接点はOFF位置となる。これに加え、例えばロックバルブ(図示せず)によって、油圧ポンプ11から作業装置4等に対する油圧の供給が許可されて、油圧ショベル1の走行、旋回、掘削等の各種の動作が可能になる。
エンジン10の駆動中は、燃料ポンプ43からの燃料がガバナ41を通じてエンジン10に供給される。このとき、ガバナ41のフライウエイトには、例えばエンジン10の回転速度に応じた遠心力が作用する。このため、ガバナ41は、フライウエイトの慣性力とガバナスプリング力とによって、エンジン10の回転速度を一定に保つ。
また、ガバナ41は、燃料レバー42の操作位置に応じて、エンジン10のシリンダ(図示せず)内に噴射される燃料の噴射量(燃料噴射量)を可変に制御する。これにより、エンジン10の回転数(回転速度)は、燃料レバー42で設定した目標回転数となるように制御される。
その後、例えばキースイッチ31がOFF位置に操作されると、各回路への電源が切れる。キースイッチ31のAcc端子からエンジンストップソレノイド36の保持側に流れていた電流がなくなり、エンジンストップソレノイド36はバネの付勢力によって停止位置に動く。その結果、エンジン10への燃料供給ラインを遮断状態とし、エンジン10が停止するようになっている。
エンジン停止コントローラ44は、バッテリ14に接続されている。具体的には、エンジン停止コントローラ44は、バッテリ14のプラス側とマイナス側に直接的に接続されている。このため、エンジン停止コントローラ44は、マイナスカットスイッチ16の接続と遮断のいずれの状態でも、バッテリ14から電力が供給され、動作を継続することができる。
エンジン停止コントローラ44は、マイナスカットスイッチ16のアース側とバッテリ14のマイナス側とに接続され、例えばこれらの間の電流値や抵抗値に基づいて、マイナスカットスイッチ16が接続状態(ON)と遮断状態(OFF)のいずれの状態であるかを監視することができる。また、エンジン停止コントローラ44の入力端子は、キースイッチ31のAcc端子に接続されている。
また、エンジン停止コントローラ44は、エンジンストップソレノイド36および燃料ポンプ43に対する電力供給配線の途中に設けられたスイッチ45を備えている。このスイッチ45は、エンジン停止コントローラ44によって、接続状態と遮断状態とが制御される。スイッチ45は、例えばエンジン停止コントローラ44に内蔵されていてもよく、エンジン停止コントローラ44とは異なる位置に設けられ、エンジン停止コントローラ44からの制御信号に基づいて、接続状態と遮断状態とが切り換えられるものでもよい。スイッチ45は、通常は接続状態となり、エンジンストップソレノイド36および燃料ポンプ43に対する電力の供給を許可している。
さらに、エンジン停止コントローラ44の出力端子には、例えばブザー、ランプ等からなる報知装置46が接続されている。報知装置46は、キャブ7に搭乗したオペレータへの報知を行うために、キャブ7の内部に設けられてもよく、油圧ショベル1の周囲への報知を考慮して、キャブ7の外部に設けられてもよい。
エンジン停止コントローラ44は、マイナスカットスイッチ16の遮断に応じて、エンジンストップソレノイド36を制御することができる。即ち、エンジン停止コントローラ44は、図5に示すエンジン停止処理のプログラムを実行し、マイナスカットスイッチ16の状態に応じて、スイッチ45および報知装置46を制御する。具体的には、エンジン停止コントローラ44は、マイナスカットスイッチ16が遮断状態で、かつキースイッチ31のAcc端子からバッテリ14からの電源電圧(例えば+12V)の供給があるときには、オルタネータ32から電圧が供給されているため、エンジン10が駆動中であると判断する。このとき、エンジン停止コントローラ44は、報知装置46を用いてオペレータや周囲にエンジン10が停止することを報知する。報知を開知してから予め決められた一定時間が経過すると、エンジン停止コントローラ44は、スイッチ45を遮断状態に切り換える。これにより、エンジンストップソレノイド36および燃料ポンプ43に対する電力供給が停止するから、エンジン10に対する燃料供給が停止され、エンジン10は停止する。
次に、エンジン停止コントローラ44によるエンジン停止処理のプログラムについて、図5を用いて説明する。なお、エンジン停止処理は、予め決められた一定周期で繰り返し実行されるものである。
例えばイグニションキー等によって車両を起動すると、エンジン停止処理のプログラムが起動する。ステップ1では、キースイッチ31のAcc端子が電源ON状態か否かを判定する。具体的には、バッテリ14またはオルタネータ32から電流がキースイッチ31のAcc端子に供給されているか否かを判定する。
ステップ1で「NO」と判定したときには、エンジン10が停止しているから、オルタネータ32は非発電状態となっている。このため、エンジン停止コントローラ44は何もせず、そのままの状態でプログラムを終了する。
一方、ステップ1で「YES」と判定したときには、エンジン10の回転駆動によってオルタネータ32が発電している可能性がある。このため、ステップ2に移って、マイナスカットスイッチ16が遮断状態(OFF)か否かを判定する。
ステップ2で「NO」と判定したときには、マイナスカットスイッチ16は接続状態(ON)であるから、ステップ1以降を繰り返す。一方、ステップ2で「YES」と判定したときには、エンジン10の駆動中にマイナスカットスイッチ16が遮断状態に切り換わったから、エンジン10を停止させるために、ステップ3以降の処理を実行する。
ステップ3では、エンジン停止用のカウンタを用いてエンジン停止までの予め決められた所定時間をカウントダウンする。ステップ4では、報知装置46を作動させて、オペレータおよび周囲に対してエンジン10が停止することを報知する。ステップ5では、例えばエアコン、ラジオ、照明器具等を制御する各種のコントローラにデータを格納させる。具体的には、各コントローラに動作停止の処理を実行させると共に、必要なデータを不揮発性メモリ内に書込む処理を実行させる。続くステップ6では、カウンタによって計測している時間に基づいて、ステップ2で「YES」と判定してから予め決められた一定時間が経過したか否かを判定する。
このとき、一定時間は、エンジン10が停止するまでに、作業装置4等を安定した姿勢に変更するまでの時間として、例えば1分程度の値に設定されている。なお、一定時間は、作業装置4の姿勢変化に必要な時間等を考慮して、適宜設定される。
ステップ6で「NO」と判定したときには、一定時間が経過していないから、ステップ3以降を繰り返す。一方、ステップ6で「YES」と判定したときには、マイナスカットスイッチ16が遮断状態になってから、一定時間が経過している。このため、エンジン停止コントローラ44は、スイッチ45を遮断状態に切り換える。これにより、エンジンストップソレノイド36および燃料ポンプ43に対する電力供給が停止され、エンジンストップソレノイド36はOFFになる。この結果、ガバナ41のコントロールラックはスプリングによって停止位置まで移動するから、エンジン10に対する燃料供給が停止され、エンジン10は停止する。
このとき、図5中のステップ3およびステップ6が、エンジン10を停止させる前に所定時間が経過するまで待機するオフタイマの具体例を示している。なお、エンジン10の停止中にマイナスカットスイッチ16が遮断状態に切り換わったときには、ステップ5と同様の処理を行い、各コントローラのデータを不揮発性メモリに書込む構成としてもよい。
かくして、本実施の形態によれば、バッテリ14に接続され、マイナスカットスイッチ16の遮断に応じて、エンジンストップソレノイド36を制御することができるエンジン停止コントローラ44を備えている。ここで、小型の油圧ショベル1では、熱交換器12、バッテリ14、エアクリーナ17等のメンテナンス作業を行うための機器収容空間13にマイナスカットスイッチ16が配置されている。このため、エンジン10を駆動した状態でメンテナンス作業を行ったときに、マイナスカットスイッチ16を遮断状態に切り換えてしまう可能性がある。このとき、エンジン10の駆動によってオルタネータ32は発電を継続するから、エンジンストップソレノイド36は作動状態を維持し、油圧ショベル1は通常動作が可能である。従って、オペレータは、マイナスカットスイッチ16が遮断状態であることに気付かない虞れがある。
これに対し、本実施の形態では、エンジン停止コントローラ44は、エンジン10の駆動中にマイナスカットスイッチ16が遮断状態となったときに、エンジンストップソレノイド36を用いてエンジン10を停止させる。このため、エンジン10の停止によって、オペレータはマイナスカットスイッチ16が遮断状態に切り換わったことを把握することができ、エンジン10を次回起動する前にマイナスカットスイッチ16を接続状態に切り換えることができる。
また、エンジン停止コントローラ44は、エンジン10を停止させる前に所定時間が経過するまで待機するオフタイマを備えているから、オペレータはエンジン10が停止する前に油圧ショベル1を安定した状態に姿勢変化させることができる。このため、エンジン10の停止によって、油圧ショベル1が不安定な姿勢で制止するのを、抑制することができる。これに加えて、各種のコントローラは、電力供給が停止するまでに一定時間が確保されるため、その間に内部メモリへのデータ書き込みを完了させることができ、データの損傷を抑制することができる。
さらに、エンジン停止コントローラ44によって動作する報知装置46をさらに備え、エンジン停止コントローラ44は、エンジン10を停止させるときに、報知装置46を動作させる。このため、報知装置46は、オペレータや油圧ショベル1の周囲に位置する作業者等に対して、エンジン10が停止することを事前に報知することができる。この結果、エンジン10が停止する前に、オペレータは、例えば作業装置4を安定した状態に姿勢変化させることができると共に、周囲の作業者は、油圧ショベル1が停止することを事前に把握することができる。
次に、図6は本発明の第2の実施の形態による油圧ショベルの電気システムを示している。本実施の形態の特徴は、エンジン停止コントローラは、エンジンコントローラを用いてエンジンを停止させることにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態による電気システムは、キースイッチ51と、バッテリ14と、オルタネータ32と、スタータ33と、スタータリレー52と、セーフティスタートリレー53とを備えている。
このとき、スタータ33は、バッテリ14のプラス側に接続されている。即ち、バッテリ14のプラス側には、スタータリレー52の接点が接続され、さらにこのスタータリレー52の接点を介してスタータ33のリレーコイルが接続されている。
キースイッチ51のAcc端子は、表示装置39に接続されている。このため、表示装置39は、キースイッチ51がON位置またはSTART位置となったときに、キースイッチ51のAcc端子を介して電力が供給され、起動する。
キースイッチ51のC端子は、スタータリレー52のコイルの一端側、およびエンジンコントローラ55(ECU)に接続されている。キースイッチ51のAcc端子は、オルタネータ32のIG端子、燃料ポンプ43およびエンジンコントローラ55に接続されている。これに加えて、キースイッチ51のAcc端子は、ロックスイッチ40に接続され、さらにこのロックスイッチ40を介してセーフティスタートリレー53のコイルに接続されている。
そして、例えばキースイッチ51がSTART位置に操作されると、バッテリ14からの電流がキースイッチ31のAcc端子を経由して、オルタネータ32のIG端子、燃料ポンプ43およびエンジンコントローラ55に供給され、これらの電源となる。また、キースイッチ51のAcc端子からの電流は、セーフティスタートリレー53、およびロックスイッチ40に流れる。このとき、エンジンコントローラ55は、電子式のガバナ54(燃焼噴射装置)のコントロールラック(図示せず)を作動させる。その結果、燃料ポンプ43からエンジン10への燃料供給ラインを連通状態とし、エンジン10が回転可能な状態になる。このため、エンジンコントローラ55は、エンジン10の始動と停止を制御することができる。
また、ロックレバー(図示せず)がロック位置(上昇位置)に操作されてロックスイッチ40が開接点(OFF)となっていれば、セーフティスタートリレー53の接点はON位置となり、バッテリ14からの電流がセーフティスタートリレー53を経由してエンジンコントローラ55に流れる。これに加えて、キースイッチ51のC端子からの電流がエンジンコントローラ55に流れる。
エンジンコントローラ55は、キースイッチAcc端子およびC端子の両方から電流が流れると、スタータリレー52のコイルの他端側をアースに接続し、スタータリレー52を励磁させる。この結果、スタータリレー52の接点が接続され、バッテリ14からの電流がスタータ33のモータに流れて、モータが回転する。その結果、エンジン10が始動するようになっている。
一方、ロックレバーがロック解除位置(下降位置)に操作されてロックスイッチ40が閉接点(ON)となっていれば、セーフティスタートリレー53の接点はOFF位置となる。これにより、エンジンコントローラ55には、セーフティスタートリレー53からの電流が供給されないから、エンジンコントローラ55は、スタータリレー52の励磁を停止する。この結果、ロックレバーを下げた状態では、キースイッチ51をSTART位置にしても、スタータ33は回転せず、エンジン10は始動しない。
そして、エンジン10が始動すると、オルタネータ32が発電を開始し、オルタネータ32のP端子およびB端子の電圧が上昇する。このとき、エンジンコントローラ55は、エンジン10の回転速度を回転センサ(図示せず)からの信号で検出する。エンジン10の回転速度が予め設定された回転速度に達した場合には、エンジンコントローラ55は、スタータリレー52の内部のコイルの励磁を解除して内部の接点を開き状態に切り換える。これにより、スタータ33のリレーコイルに電流が流れなくなり、スタータ33のリレー接点が開き状態となって、スタータ33のモータが停止するようになっている。
なお、エンジンコントローラ55は、回転センサからの信号に限らず、オルタネータ32のP端子からの出力電圧に基づいて、エンジン10が予め設定された回転速度に到達したか否かを判定してもよい。
エンジン10の始動後には、オペレータは、ロックレバーをロック解除位置(下降位置)に操作する。これにより、ロックスイッチ40が閉接点(ON)となり、セーフティスタートリレー53の接点はOFF位置となる。これに加え、例えばロックバルブ(図示せず)によって、油圧ポンプ11から作業装置4等に対する油圧の供給が許可されて、油圧ショベル1の走行、旋回、掘削等の各種の動作が可能になる。
エンジン10の駆動中は、燃料ポンプ43からの燃料がガバナ54を通じてエンジン10に供給される。このとき、ガバナ54は、目標ラック位置と実ラック位置(実際のコントロールラックの位置)との差を算出し、アクチュエータによってラック位置を制御する。これにより、ガバナ54は、エンジン10の回転速度を一定に保つ。
また、エンジンコントローラ55には、エンジン10の回転速度を検出する回転センサ等が接続されている。エンジンコントローラ55は、エンジン10の回転速度に応じて、ガバナ54に制御信号を出力する。このとき、ガバナ54は、エンジンコントローラ55から出力される制御信号に基づいてエンジン10のシリンダ(図示せず)内に噴射される燃料の噴射量(燃料噴射量)を可変に制御する。これにより、エンジン10の回転数(回転速度)は、エンジンコントローラ55からの制御信号による目標回転数に対応した回転数となるように制御される。
その後、例えばキースイッチ51がOFF位置に操作されると、各回路への電源が切れる。このとき、キースイッチ51のAcc端子からエンジンコントローラ55に流れていた電流がなくなる。これにより、エンジンコントローラ55からガバナ54に対する制御信号が出力されなくなるから、ガバナ54のコントロールラックが停止位置に移動する。これに加えて、燃料ポンプ43に対する電力供給がなくなるから、燃料ポンプ43も停止する。その結果、燃料ポンプ43からエンジン10への燃料供給ラインが遮断状態となり、エンジン10は停止する。
エンジン停止コントローラ56は、バッテリ14のプラス側とマイナス側に直接的に接続されている。このエンジン停止コントローラ56は、マイナスカットスイッチ16のアース側とバッテリ14のマイナス側とに接続され、マイナスカットスイッチ16が接続状態(ON)と遮断状態(OFF)のいずれの状態であるかを監視することができる。また、エンジン停止コントローラ56の入力端子は、キースイッチ51のAcc端子に接続されている。
また、エンジン停止コントローラ56は、エンジンコントローラ55および燃料ポンプ43に対する電力供給配線の途中に設けられたスイッチ57を備えている。このスイッチ57は、エンジン停止コントローラ56によって、接続状態と遮断状態とが制御される。スイッチ57は、例えばエンジン停止コントローラ56に内蔵されていてもよく、エンジン停止コントローラ56とは異なる位置に設けられていてもよい。スイッチ57は、通常は接続状態となり、エンジンコントローラ55および燃料ポンプ43に対する電力の供給を許可している。
さらに、エンジン停止コントローラ56の出力端子には、例えばブザー、ランプ等からなる報知装置46が接続されている。エンジン停止コントローラ56は、図5に示すエンジン停止処理のプログラムを実行し、マイナスカットスイッチ16の状態に応じて、スイッチ57および報知装置46を制御する。具体的には、エンジン停止コントローラ56は、マイナスカットスイッチ16が遮断状態で、かつキースイッチ31のAcc端子からバッテリ14から電源電圧の供給があるときには、オルタネータ32から電圧が供給されているため、エンジン10が駆動中であると判断する。このとき、エンジン停止コントローラ56は、報知装置46を用いてオペレータや周囲にエンジン10が停止することを報知する。報知を開始してから予め決められた一定時間が経過すると、エンジン停止コントローラ56は、スイッチ57を遮断状態に切り換える。これにより、エンジンコントローラ55および燃料ポンプ43に対する電力供給が停止するから、エンジン10に対する燃料供給が停止され、エンジン10は停止する。
第2の実施の形態による電気システムは、上述のような構成を有する。このように構成された第2の実施の形態では、エンジン停止コントローラ56は、エンジン10の駆動中にマイナスカットスイッチ16が遮断状態となったときに、エンジンコントローラ55を用いてエンジン10を停止させる。このため、第2の実施の形態でも、上述した第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
なお、上述した実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベルに適用してもよく、油圧クレーン等のように他の建設機械にも広く適用することができるものである。