JP2017138272A - 温度センサ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極線と信号線とを突き合わせた構成において、その溶接部の信頼性を高めることができる温度センサ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】温度センサ1では、電極線25とシース芯線3との溶接部55は、その外周部分57a、57bにおいて、それぞれ第1直線D1及び第2直線D2よりも外側にある。さらに、先端側長さL1は後端側長さL2より長く設定されている。しかも、シース芯線3の径は電極線25の径より大きい。従って、溶接部55の接合性等の信頼性が高い。
【選択図】 図4

Description

本発明は、サーミスタや白金抵抗体等の感温部を有する感温素子を備えた温度センサ及びその製造方法に関する。
本発明は、車載用温度センサ、設置式汎用エンジン等の排ガス測定に用いられる高温用センサ等、測定温度が高く感温部周囲に振動が加わる使用条件に晒されるものなどに対して適用することができる。
従来より、自動車の排ガス等の温度を検出するための温度センサとしては、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
この温度センサは、サーミスタ焼結体と白金製の電極線とから構成されるサーミスタ素子と、信号線であるステンレス製のシース芯線と、シース芯線をシース管内に絶縁保持したシース部材と、サーミスタ素子とシース部材とを収容した金属チューブとを備えている。そして、電極線とシース芯線とはレーザ溶接により形成された溶接部により接合されている。
この温度センサを製造する場合には、図18に示すように、例えば白金からなる電極線P1と例えばステンレス鋼からなるシース芯線P2とを、互いの外周が接触するように並列に配置し、その接触部分をレーザ溶接により接合していた。なお、シース芯線P2は、サーミスタ焼結体P3を金属チューブP4の軸中心に配置するために、軸中心からずらすように僅かに曲げられている。
特開2009−175129号公報
しかしながら、上述した従来技術では、電極線P1とシース芯線P2とは熱膨張係数の異なる材料からなるので、温度センサが、例えば自動車のエンジンのように、温度差の大きな環境下で用いられる場合には、溶接部の信頼性(即ち接合強度や耐久性等)が問題となることがあった。
つまり、異なる材料からなる電極線P1とシース芯線P2とを並列に配置して側方(図18の手前側)から溶接した場合には、温度差が大きな冷熱サイクルによって、軸線方向(図18の左右方向)に大きな力が加わるので、溶接部が剥がれる等の問題が生じることがあった。
この対策として、電極線P1とシース芯線P2とを突き合わせて配置して溶接することが考えられるが、この場合には、溶接部に括れ等が発生することがあり、溶接部の信頼性の検討が十分になされていないのが現状である。
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、感温素子の電極線とシース芯線等の信号線とを突き合わせた構成において、その溶接部の信頼性を高めることができる温度センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の第1局面の温度センサは、軸線方向の先端側に配置され温度によって電気的特性が変化する感温部と、感温部から後端側に伸びる一対の電極線とを有する感温素子と、一対の電極線の後端側にそれぞれ接続され、感温素子からの電気信号が伝わる一対の信号線と、を備えており、電極線と信号線とは互いの軸線方向が同方向となる配置されると共に、電極線の軸線方向の後端部と信号線の軸線方向の先端部とが向かい合わせに接合されている。
この温度センサでは、電極線と信号線とは異なる材料からなると共に、電極線の径は信号線の径より小さく、電極線の後端側の後端部と信号線の先端側の先端部との間に、電極線の材料と信号線の材料とが溶け合って電極線と信号線とを接合している溶接部を備えている。
さらに、一対の電極線が配置された平面に対して垂直の方向から見た場合に(平面視)、電極線の後端部と溶接部の先端部との境界である先端境界を有すると共に、信号線の先端部と溶接部の後端部との境界である後端境界を有している。
そして、平面視で、溶接部の径方向(即ち幅方向)における一方及び他方の最も外側の外周部分は、先端境界の一方の端部と後端境界の一方の端部とをつなぐ第1直線(仮想的な第1直線)及び先端境界の他方の端部と後端境界の他方の端部とをつなぐ第2直線(仮想的な第2直線)より、それぞれ径方向外側に位置している。
しかも、軸線方向において、平面視で、溶接部の一方及び他方の外周部分にて、径方向外側に最も突出する凸部から先端境界に到る先端側長さ(例えばL1)は、凸部から後端境界に到る後端側長さ(例えばL2)よりも大である(即ちL1>L2)。
このように、第1局面の温度センサは、上述した構成を備えているので、電極線と信号線とを突き合わせて溶接した構成において、その溶接部に括れ等の問題が少なく、溶接部の信頼性(即ち接合強度や耐久性)を高めることができる。
つまり、電極線と信号線との溶接部は、その外周部分は第1直線及び第2直線よりも外側(軸線とは反対側)にあり、且つ、先端側長さは後端側長さより長く設定されているので、例えば第1直線及び第2直線より内側(軸線側)に凹んだ(即ち括れた)形状の溶接部に比べて、溶接部の細りが抑制されており、溶接部が破損しにくい(例えば軸線方向における引張強度が大きい)という効果がある。
また、信号線の径は電極線の径より大きいが、溶接部の径の最も大きな凸部(即ち軸線までの距離が最も大きな凸部)は径の大きな信号線側にあるので、溶接部と信号線は強固に接合している。
さらに、この温度センサでは、電極線と信号線とは軸線方向が同方向で、しかも、突き合わせて配置されているので、その製造時には、従来のように、信号線を曲げる必要がなく、温度センサの製造工程を簡易化できるという効果がある。
しかも、この温度センサでは、電極線と信号線とを所定の長さにわたって重ね合わせて配置する必要がないので、電極線の材料として高価な白金や白金合金等の貴金属材料を用いた場合でも、その使用量を低減できるという利点がある。
(2)本発明の第2局面の温度センサは、溶接部の外周部分は、全面にわたって径方向外側に凸(即ち変曲点が無いように外側に凸となる形状)となるように湾曲している。
この温度センサでは、溶接部は径方向において十分の寸法(太さ)を確保できるので、
溶接部が軸線方向に引っ張られる外力を受けた場合でも、溶接部にて破断しにくいという効果がある。
なお、この外周部分は、平面視で上述した形状を有するが、周方向の全周にわたって外側に凸であることが好ましい。
(3)本発明の第3局面の温度センサは、軸線方向から見た場合に、信号線の先端部の範囲内に電極線の後端部が含まれている。
この温度センサでは、電極線と信号線との軸線を同一又は同一に近い状態に配置するので、電極線と信号線とのずれが少ない直線状の導電線が得られる。これにより接合性が向上するという効果がある。
また、両軸線のずれが少ないので、一対の導電線間に十分の間隙を確保でき、よって、導電線間にてショートが発生し難いという効果がある。
(4)本発明の第4局面の温度センサの製造方法では、信号線の先端面と電極線の後端面とを突き合わせて、信号線と電極線とを溶接する。
この製造方法によって、信号線と電極線とを直線状の導電線とすることができると共に、信号線と電極線とを確実に接触させて接合することができる。
また、従来のように、信号線を曲げる必要がないので、温度センサの製造工程を簡易化することができ、貴金属材料の使用量も低減することができる。
(5)本発明の第5局面の温度センサの製造方法では、信号線にレーザ光を照射して、電極線と信号線とをレーザ溶接する。
この製造方法では、レーザ光を径の大きな信号線に照射するので、径の小さな電極線にレーザ光を照射した場合のような溶接部や電極線の細りを抑制できる。また、レーザ光の照射によって、径の大きな信号線から溶融させるので、溶融した信号線の材料が径の小さな電極線側に供給されると共に電極線も徐々に溶融する。これにより、上述した構成の溶接部を容易に形成することができる。
(6)本発明の第6局面の温度センサの製造方法では、信号線の材料として電極線の材料より低融点の材料を用い、低融点の信号線にレーザ光を照射して、電極線と信号線とをレーザ溶接する。
この製造方法では、レーザ光の照射によって、低融点の信号線から溶融させるので、溶接部に気泡(ボイド)が発生しにくい。また、溶融した信号線の材料が高融点の電極線側に供給されると共に電極線も徐々に溶融する。これにより、上述した構成の溶接部を容易に形成することができる。
(7)本発明の第7局面の温度センサの製造方法では、信号線と電極線とを突き合わせる方向に荷重を加えた状態で、信号線と電極線とを溶接する。
この製造方法では、レーザ等によって溶接する際に、信号線と電極線とを突き合わせる方向に荷重を加えるので、信号線と電極線との径が異なっている場合でも位置ずれが生じにくい。しかも、この製造方法では、第1局面における溶接部の形状(特に第2局面における溶接部の形状)を容易に形成できるという利点がある。
また、溶接後に冷却する場合には、信号線と溶接部と電極線とは、主に軸線方向に熱収縮するが、この際も同様に荷重を加えることにより、溶接部の細りを抑制でき、上述した好適な形状の溶接部を容易に形成することができる。
なお、上述した本発明において、両凸部間の平面視での寸法(軸線に対して垂直方向の距離)は、溶接部の軸線方向における長さよりも小さく、且つ、両凸部間の寸法は、信号線の径の150%以下であることが好ましい。
これは、溶接部の形状が、鍔状となって信号線より大きく張り出す場合には、溶接部と電極線及び信号線との境界部分から破損が生じ易いからである。
また、先端境界、後端境界、両凸部の位置が、軸線方向に対する垂直面からずれている場合には、軸線方向における平均値を、それぞれの位置として採用できる。
なお、上述した本発明において、感温素子の感温部としては、例えばサーミスタ、白金抵抗体等を採用できる。
電極線としては、Pt又はPt−Rh合金、Pt−Ir合金、Pt又はPt−Rh合金にアルカリ土類金属元素(例えばSr)を微量添加した材質からなる線材が挙げられ、信号線としては、ステンレス又はインコネル(登録商標)からなる線材が挙げられる。
第1実施形態の温度センサを軸線方向に破断して示す断面図である。 温度センサの先端側を軸線方向に破断し拡大して示す平面図である。 温度センサの先端側を軸線方向に破断し拡大して示す正面図である。 (a)は電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。 電極線とシース芯線との溶接部等を軸線方向に破断し拡大して示す平面図である。 (a)は溶接の際に電極線とシース芯線とを突き合わせた状態を示す正面図、(b)は(a)のB−B断面図である。 温度センサの製造工程を説明する説明図である。 第2実施形態の温度センサを軸線方向に破断して示す断面図である。 温度センサの先端側を軸線方向に破断し拡大して示す正面図である。 電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す平面図である。 (a)は第3実施形態の電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す平面図であり、(b)は(a)のC−C断面図である。 第4実施形態の電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す平面図である。 実験例1における試料No.1の電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す写真である。 実験例1における試料No.2、3の電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す写真である。 実験例2においてレーザ溶接を行う位置を示す説明図である。 実験例2における試料No.4〜10の電極線とシース芯線との溶接部等を拡大して示す写真である。 実験例3において溶接クビレ断面積と引張強度との関係を示すグラフである。 従来の温度センサの先端側を軸線方向に破断して示す説明図である。
以下、本発明が適用された温度センサ及びその製造方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.温度センサの全体構成]
図1に示すように、第1実施形態の温度センサ1は、感温素子であるサーミスタ素子2
と、一対の金属製のシース芯線(信号線)3をシース管5の内側にて絶縁保持したシース部材7と、先端側が閉塞し軸線O方向に延びる筒状の金属チューブ(ハウジング)9と、金属チューブ9を支持する取付部材11と、六角ナット部13及びネジ部15を有するナット部材17と、取付部材11の後端側に内嵌する外筒19とを備えている。
なお、軸線O方向とは、温度センサ1の長手方向(軸線Oの延びる方向)であり、図1においては上下方向に相当する。また、温度センサ1における先端側は図1における下側であり、後端側は図1における上側である(以下同様)。
前記温度センサ1は、金属チューブ9の先端側の内部に、温度を測定するために前記サーミスタ素子2を収納したセンサである。この温度センサ1は、例えば内燃機関の排気管などの流通管に装着され、温度センサ1の先端側が、測定対象ガス(排ガス)が流れる流通管内に配置されることにより、測定対象ガスの温度を検出する。
以下、各構成について詳細に説明する。
シース部材7は、金属製(例えばステンレス合金製)のシース管5と、導電性金属(例えばステンレス合金:例えばSUS310S)からなる一対のシース芯線3と、シース管5と2本のシース芯線3との間を電気的に絶縁してシース芯線3を保持するシリカ等の絶縁粉末23とから構成される。
シース芯線3は、後に詳述するように、その先端側が例えばレーザ溶接によりサーミスタ素子2から後端側に延びる電極線25と接続されており、後端側が例えば抵抗溶接により加締め端子27と接続されている。これにより、シース芯線3は、自身の後端側が加締め端子27を介して外部回路(例えば、車両の電子制御装置(ECU)等)接続用のリード線29と接続されている。
なお、一対のシース芯線3および一対の加締め端子27は、絶縁チューブ31により互いに絶縁され、リード線29は、導線を絶縁性の被覆材にて被覆され耐熱ゴム製の補助リング33の内部を貫通する状態で配置される。
取付部材11は、径方向外側に突出する円筒状の突出部35と、突出部35から後端側に延びる円筒状の後端側鞘部37とを有している。後端側鞘部37は、後端側に延びる円筒状のスリーブ39を有しており、このスリーブ39に金属チューブ9が接合されている。つまり、この取付部材11は、金属チューブ9の後端側の外周面を取り囲んで金属チューブ9を支持する。
金属チューブ9は、耐腐食性金属(例えば、耐熱性金属でもあるSUS310Sなどのステンレス合金)からなる。この金属チューブ9は、鋼板の深絞り加工によりチューブ先端側が閉塞した軸線O方向に延びる筒状をなし、筒状のチューブ後端側が開放した形態である。
図2及び図3に拡大して示す様に、金属チューブ9は、径が小さく設定された先端側の小径部41と、径が小径部41よりも大きく設定された後端側の大径部43と、小径部41と大径部43との間の段差部45とを備えている。
また、金属チューブ9の内部に、サーミスタ素子2およびセメント47が収納されており、セメント47は、サーミスタ素子2の周囲に充填されることで、サーミスタ素子2の揺動を防止している。なお、セメント47は、非晶質のシリカにアルミナ骨材を含有した絶縁材よりなる。
サーミスタ素子2は、温度によって電気的特性(電気抵抗値)が変化するサーミスタ焼結体(感温部)49と、このサーミスタ焼結体49の電気的特性の変化を取り出すための一対の電極線25とから構成される。
サーミスタ焼結体49は、円盤形状のセラミック焼結体であり、例えば、(Sr、Y)(Al、Mn、Fe)Oをベース組成としたペロブスカイト型酸化物で形成されている。電極線25は、例えば白金(Pt)から構成されている。
[1−2.電極線とシース芯線との溶接部]
次に、電極線25とシース芯線3との溶接部55の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、本第1実施形態では、一方(図2上方)の電極線25が一方のシース芯線3に接続され、他方(図2下方)の電極線25が他方のシース芯線3に接続されている。そして、一対の電極線25は平行に配置されると共に、一対のシース芯線3も平行に配置されている。
なお、この一対の電極線25及び一対のシース芯線3は、同一の平面S(図3参照)上に配置されている。この平面Sとは、図2の紙面と平行に広がる平面S(図3の紙面と垂直な平面S)である。
また、電極線25とシース芯線3とは異なる材料からなる。具体的には、電極線25は例えばはPtから構成されており、シース芯線3は電極線25より融点の低い例えばSUS310Sから構成されている。
電極線25の径(外径)は例えばφ0.29mmであり、シース芯線の径は例えばφ0.47mmである。つまり、電極線25の径はシース芯線3の径より小さく設定されている。
さらに、図4(a)に示すように、電極線25の軸線J1方向とシース芯線3の軸線J2方向とは、同方向となるように(即ち同一の軸線Jとなるように)配置されており、電極線25の軸線J1方向の後端部51とシース芯線3の軸線J2方向の先端部53とが、向かい合わせとなる状態で溶接されている。なお、軸線Oと軸線Jは平行である。
詳しくは、電極線25の後端部51とシース芯線3の先端部53との間に、電極線25の材料とシース芯線3の材料とが溶け合って電極線25とシース芯線3とを接合している溶接部55が形成されている。つまり、溶接部55により、各電極線25と各シース芯線3とがそれぞれ1本の導電線56となるように接合されている。
なお、この溶接部55は、気泡(ボイド)の無い又は少ない(例えば気孔率が30%以下)中実の構成となっている。
図4及び図5に示すように、溶接部55の外周面57は、全面にわたって径方向外側に凸となるように湾曲している。つまり、外周面57は全面にわたって外側に膨らんだ形状である。詳しくは、外周面57を軸線J方向に沿って破断した場合に(図5参照)、外周面57に該当する線分(外周部分57a、57b)は、変曲点が無いように外側(軸線Jと反対側)に凸の形状となっている。
また、軸線J方向から見た場合(図4(b)参照)、径の大きなシース芯線3の先端部53の範囲内に径の小さな電極線25の後端部51が全て含まれている配置となっている。
特に本第1実施形態では、一対の電極線25が配置された平面Sに対して垂直の方向か
ら見た場合(図2及び図4(a)参照)に、電極線25の後端部51と溶接部55の先端部61との境界に先端境界63を有すると共に、シース芯線3の先端部53と溶接部55の後端部65との境界に後端境界67を有している。
なお、この平面Sとは、一対の電極線25の根元部分(サーミスタ焼結体49から突出する部分)を含み軸線Oと平行な平面である。
そして、溶接部55の径方向(ここでは図4(a)の幅方向(上下方向))における一方(図4(a)上方)の最も外側の外周部分57aは、先端境界63の一方の端部63aと後端境界67の一方の端部67aとをつなぐ第1直線D1より、径方向外側(図4(a)上方)に位置している(条件1)。
同様に、溶接部55の径方向における他方(図4(a)下方)の最も外側の外周部分57bは、先端境界63の他方の端部63bと後端境界67の他方の端部67bとをつなぐ第2直線D2より、径方向外側(図4(a)下方)に位置している(条件2)。
なお、先端境界63は、電極線25の後端部51と溶接部55の先端部61との境界の外周にて環状に形成されており、後端境界67は、シース芯線3の先端部53と溶接部55の後端部65との境界の外周にて環状に形成されている。
また、軸線J方向において、溶接部55の一方(図4(a)上方)の外周部分57aにて、径方向外側(図4(a)上側)に最も突出する一方の凸部T1から先端境界63の一方の端部63aに到る先端側長さ(L1)は、一方の凸部T1から後端境界67の一方の端部67aに到る後端側長さ(L2)よりも大である(条件3)。
同様に、軸線J方向において、溶接部55の他方(図4(a)下方)の外周部分57bにて、径方向外側(図4(a)下側)に最も突出する他方の凸部T2から先端境界63の他方の端部63bに到る先端側長さ(L1)は、他方の凸部T2から後端境界67の他方の端部67bに到る後端側長さ(L2)よりも大である(条件4)。
なお、軸線J方向において、両凸部T(T1、T2)の位置がずれている場合には、両凸部T1、T2の平均の位置を凸部Tの位置として採用できる。
また、両凸部T間の距離W、即ち溶接部55における最大の径(幅)(例えば0.60mm)は、溶接部55の軸線J方向における長さ(例えば0.80mm)よりも小さく設定されている(条件5)。
さらに、両凸部T間の距離Wは、シース芯線3の径の150%以下である(条件6)。なお、シース芯線3の外周面3aから径方向外側に張り出す溶接部55の最大の張出量ΔW(ΔW1、ΔW2)は、それぞれ0.20mm以下である。
ここで、前記図4(a)に示す構成(例えば上述した条件1〜6のうち少なくとも条件1〜4)は、導電線56を軸線Jを中心に1回転させた場合も同様であるが、少なくとも、一対の電極線25が配置された平面Sに対して垂直の方向から見た場合に、上述した条件1〜6(少なくとも条件1〜4)を満たしていればよい。
[1−3.温度センサの製造方法]
次に、温度センサ1の製造方法について説明する。
本第1実施形態の温度センサ1を製造するには、予め形成された金属チューブ9、シース部材7、取付部材11、サーミスタ素子2等の部品を公知の手法により準備する。
そして、図6に示す様に、サーミスタ素子2の一対の電極線25の後端部51の端面(
後端面71)を、各々一対のシース芯線3の先端部53の端面(先端面73)に当接させて(即ち突き合わせて)配置し、レーザ溶接により接合する。
詳しくは、電極線25の軸線J1とシース芯線3の軸線J2とが一致するように(即ち同軸に)配置し、電極線25の後端面71とシース芯線3の先端面73を突き合わせた状態で、その接触部分(接触面75)に対して軸線J方向の両側(矢印F1、F2方向)より、所定の荷重を加えた状態とする。
ここで、荷重を加える場合には、バネ(図示せず)等によりサーミスタ素子2及びシース部材7に対して、軸線J方向の外側より力を加える。
例えば、シース部材7は治具(図示せず)により移動しないように固定し、サーミスタ焼結体49は他の治具(図示せず)により軸線O方向のみ摺動可能に固定する。そして、サーミスタ焼結体49の先端側(図6(a)の左側)をバネにより押圧する。なお、加える荷重の範囲としては、例えば40.0gf〜44.5gfの範囲を採用できる。
そして、荷重を加えた状態で、図6(b)に示すように、電極線25及びシース芯線3の側方(即ち軸線J方向と垂直方向で平面Sに沿った方向)より、レーザ光を照射してレーザ溶接を行う。
レーザ光を照射する位置は、シース芯線3の先端面73より所定距離(例えば0.05mm〜0.25mm)だけ後方(図6(a)右側)にずれた位置である。なお、レーザ光は、電極線25の後端面71とシース芯線3の先端面73とが当接する接触面75には照射しないようにする。
このレーザ溶接の条件は、例えば下記の通りである。
レーザの種類 :YAGレーザ
溶接スポット径:□0.53mm
パルス幅 :10ms
加工点出力 :約3.8J
このレーザ照射により、レーザ光の照射部分(図6(a)のメッシュ部分M)から徐々に溶融が始まって、シース芯線3の先端側及び電極線25の後端側が溶融する。そして、レーザ光の照射停止に伴って、溶融部分が固化して、図4等に示すような溶接部55が形成される。
レーザ溶接後の製造工程は従来と同様であるので簡単に説明する。
例えば前記図1に示す様に、取付部材11の内部に金属チューブ9を圧入し、スリーブ39に対して溶接作業を行うことで、金属チューブ9と取付部材11とを一体化する。
続いて、サーミスタ素子2が溶接されたシース部材7と取付部材11が溶接された金属チューブ9とからなる先端部品81(図7参照)を組み立てる。
この作業については、図7を用いて説明する。
先端部品81を製造するにあたっては、まず、サーミスタ素子2が挿入されていない状態における、取付部材11が溶接された金属チューブ9の先端部分の中にノズル83を挿入し、ペースト状のセメント47を注入する。
次に、サーミスタ素子2が溶接されたシース部材7を、セメント47が注入された金属チューブ9の内部に挿入する。
そして、シース部材7を金属チューブ9の内部に挿入した状態で、金属チューブ9に径方向外側から金型85を対向させた状態で押し当てる長孔加締を行う。この長孔加締によ
り、金属チューブ9とシース部材7とは完全に位置決め固定される。
このようにして、先端部品81が出来上がる。そして、この先端部品81に対して、周知の遠心脱泡処理を実施する。遠心脱泡処理が終了すると、この先端部品81を熱処理し、セメント47を乾燥(硬化)させる。
このようにして、熱処理後の先端部品81が得られる。
なお、先端部品81とその他の部品との組み付け工程は、従来と同様であるので、その説明は省略する。
[1−4.効果]
(1)第1実施形態の温度センサ1では、電極線25とシース芯線3とは異なる材料からなると共に、電極線25の径はシース芯線3の径より小さく、電極線25の後端部51とシース芯線3の先端部53との間に、電極線25の材料とシース芯線3の材料とが溶け合って電極線25とシース芯線3とを接合している溶接部55を備えている。
さらに、一対の電極線25が配置された平面Sに対して垂直の方向から見た場合に(平面視)、電極線25の後端部51と溶接部55の先端部61との間に先端境界63を有すると共に、シース芯線3の先端部53と溶接部55の後端部65との間に後端境界67を有している。
そして、平面視で、溶接部55の径方向における一方及び他方の最も外側の外周部分57a、57bは、それぞれ第1直線D1及び第2直線D2より径方向外側に位置している。
しかも、軸線J方向において、溶接部55の一方及び他方の外周部分57a、57bにて、それぞれ径方向外側に最も突出する凸部T1、T2から先端境界63に到る先端側長さL1は、各凸部T1、T2から後端境界67に到る後端側長さL2よりも大である。
つまり、この温度センサ1は、上述した構成(条件1〜6を満たす構成)を備えているので、電極線25とシース芯線3とを突き合わせて溶接した構成において、その溶接部55に括れが無く(又は少なく)ボイドも無い(又は少ない)。よって、溶接部55の信頼性(即ち接合強度や耐久性)が高いという効果を奏する。
すなわち、電極線25とシース芯線3との溶接部55は、ボイドが少なく、しかも、その外周部分57a、57bにおいて、第1直線D1及び第2直線D2よりも外側にあり、且つ、先端側長さL1は後端側長さL2より長く設定されているので、例えば第1直線D1及び第2直線D2より内側に凹んだ(即ち括れた)形状の溶接部に比べて、溶接部55が破損しにくいという効果がある。
また、シース芯線3の径は電極線25の径より大きいが、溶接部55の径の最も大きな凸部Tは径の大きなシース芯線3側にあるので、溶接部55とシース芯線3は強固に接合している。
さらに、この温度センサ1では、電極線25とシース芯線3とは軸線J1、J2が同じで、しかも、突き合わせて配置されているので、その製造時には、従来のように、シース芯線3を曲げる必要がなく、温度センサ1の製造工程を簡易化できるという効果がある。
しかも、この温度センサ1では、電極線25とシース芯線3とを所定の長さにわたって重ね合わせて配置する必要がないので、電極線25の材料として高価な貴金属材料を用い
た場合でも、その使用量を低減できるという利点がある。
(2)また、この温度センサ1は、溶接部55の外周部分57a、57bは、全面にわたって径方向外側に凸(即ち変曲点が無いように外側に凸となる形状)となるように湾曲している。
従って、溶接部55は径方向において十分の寸法(幅:従って全周における太さ)を確保できるので、溶接部55が軸線方向に引っ張られる外力を受けた場合でも、溶接部55にて破断しにくいという効果がある。
(3)さらに、この温度センサ1は、軸線方向から見た場合に、シース芯線3の先端部53の範囲内に電極線25の後端部51が含まれている。
つまり、電極線25とシース芯線3との軸線J1、J2を同軸に配置するので、電極線25とシース芯線3とのずれが少ない直線状の導電線56とすることができる。これにより接合性が向上するという効果がある。また、一対の導電線56間に十分の間隙を確保できるので、導電線56間にてショートが発生し難いという効果がある。
(4)しかも、この温度センサ1は、溶接部55の凸部Tの張出量ΔWが少ないので、一対の導電線56間でショートが発生しにくいという効果がある。また、製造時に先端側にセメント47を充填する際に、セメント47を容易に充填できるという利点がある。
(5)また、第1実施形態の温度センサ1の製造方法では、シース芯線3の先端面73と電極線25の後端面71とを突き合わせて、シース芯線3と電極線25とを溶接する。
従って、シース芯線3と電極線25とを直線状の導電線56とすることができると共に、シース芯線3と電極線25とを確実に接触させて接合することができる。
また、従来のように、シース芯線3を曲げる必要がないので、温度センサ1の製造工程を簡易化することができる。
(6)さらに、この温度センサ1の製造方法では、低融点で径の大きなシース芯線3にレーザ光を照射して、電極線25とシース芯線3とをレーザ溶接する。
つまり、レーザ光の照射によって、径の大きなシース芯線3から溶融させるので、溶接部55の径の細りが少ない。また、低融点のシース芯線3から溶融させるので、溶接部55にボイドが発生しにくい。さらに、溶融したシース芯線3の材料が高融点で径の小さな電極線25側に供給されると共に、電極線25も徐々に溶融する。これにより、上述した好適な形状の溶接部55を容易に形成することができる。
(7)しかも、この温度センサ1の製造方法では、シース芯線3と電極線25とを突き合わせる方向に荷重を加えた状態で、シース芯線3と電極線25とを溶接する。
従って、溶接の際に、シース芯線3と電極線25との位置ずれが生じにくい。また、上述した好適な形状の溶接部55を容易に形成できるという利点がある。
[1−5.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と第1実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
サーミスタ焼結体49、電極線25、サーミスタ素子2、シース芯線103、温度センサ、平面S、溶接部55、先端境界63、後端境界67、外周部分57a、57b、第1直線D1、第2直線D2、凸部T、T1、T2、先端側長さL1、後端側長さL2、先端面73、後端面71が、それぞれ、感温部、電極線、感温素子、信号線、温度センサ、平面、溶接部、先端境界、後端境界、外周部分、第1直線、第2直線、凸部、先端側長さ、後端側長さ、先端面、後端面の一例に相当する。
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な構成については、その説明は省略する。
[2−1.温度センサの全体構成]
図8に示すように、第2実施形態の温度センサ101は、温度を測定する感温素子である抵抗体素子102と、一対の金属製のシース芯線(信号線)103をシース管105の内側にて絶縁保持したシース部材107と、先端側が閉塞し軸線O方向に延びる筒状の金属チューブ109と、金属チューブ109を支持する取付部材111と、六角ナット部113及びネジ部115を有するナット部材117と、取付部材111の後端側に内嵌する外筒119等とを備えている。
なお、抵抗体素子102以外は、第1実施形態と同様な構成であるので、その説明は省略する。
[2−2.抵抗体素子]
図9に示すように、抵抗体素子102は、温度に応じて電気的特性が変化する先端感温部121と、先端感温部121に接続された一対の電極線123とを備えている。
先端感温部121は、セラミック基体125と、金属抵抗体127と、接合層129と、セラミック被覆層131と、電極パッド133とを有する。
セラミック基体125は、アルミナからなり、セラミックグリーンシートを予め焼成してなる焼成済みシートである。
金属抵抗体127は、白金(Pt)を主体に構成され、温度に応じて電気的特性(電気抵抗値)が変化する測温抵抗体である。金属抵抗体127は、セラミック基体125の表面に所定のパターン形状で形成されている。
セラミック被覆層131は、アルミナからなり、セラミックグリーンシートを予め焼成してなる焼成済みシートである。セラミック被覆層131は、金属抵抗体127のうち、セラミック基体125と接する面とは反対側の面において、金属抵抗体127の先端側を被覆している。
接合層129は、アルミナからなる。接合層129は、接合前はアルミナ粉末を含むペーストであり、焼成済みのセラミック基体125とセラミック被覆層131とを上記ペーストで貼り合わせた後、熱処理されることで、最終的に接合層129となる。
金属抵抗体127のうち後端側(図9の右側)は、セラミック被覆層131によって被覆される導体パターンより幅広に形成された電極パッド133を介して、一対の電極線123が電気的に接続される。
電極パッド133と一対の電極線123とは、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接により、溶接点135において接合されている。
電極パッド133と一対の電極線123との接合部分は、被覆部材137によって被覆されている。被覆部材137は、アルミノケイ酸塩ガラスを主体とするガラス材料により構成されている。
一対の電極線123は、金属抵抗体127の後端側から、シース部材107側(後端側)に向かって延びるように配置されている。
そして、一対の電極線123の後端は、第1実施形態と同様に、一対のシース芯線10
3の先端と突き合わせるように配置されている。詳しくは、一対の電極線123の後端と一対のシース芯線103の先端とは、レーザ溶接により形成された溶接部139を介して接合されている。
上述した電極線123、シース芯線103、溶接部139の構成は、第1実施形態と同様である(即ち条件1〜6を満たしている)。
つまり、図10に示すように、一対の電極線123が配置された平面S(図10の紙面方向の平面)に対して垂直の方向から見た場合(図9の上方から見た場合)に、溶接部139の径方向における一方の最も外側の外周部分141aは、先端境界143の一方の端部143aと後端境界145の一方の端部145aとをつなぐ第1直線D1より、径方向外側(図10上方)に位置している。
同様に、溶接部139の径方向における他方の最も外側の外周部分141bは、先端境界143の他方の端部143bと後端境界145の他方の端部145bとをつなぐ第2直線D2より、径方向外側(図10下方)に位置している。
しかも、軸線J方向において、溶接部139の一方の外周部分141aにて径方向外側に最も突出する一方の凸部T1から先端境界143の一方の端部143aに到る先端側長さL1は、一方の凸部T1から後端境界145の一方の端部145aに到る後端側長さL2よりも大である。
同様に、軸線J方向において、溶接部139の他方の外周部分141bにて径方向外側に最も突出する他方の凸部T2から先端境界143の他方の端部143bに到る先端側長さL1は、他方の凸部T2から後端境界145の他方の端部145bに到る後端側長さL2よりも大である。
上述した第2実施形態の構成によって、前記第1実施形態と同様な効果を奏する。
[3.他の実施形態]
次に、他の実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な構成については、その説明は省略する。
図11に示すように、第3実施形態の温度センサ151では、電極線153とシース芯線155とは、同軸に配置されておらず、電極線153の軸線J1とシース芯線155のJ2とがずれている。
本第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、溶接部157によって、電極線153とシース芯線155とが接合されている。
これにより、第1実施形態と同様な効果を奏する。
図12に示すように、第4実施形態の温度センサ161では、第1実施形態と同様に、電極線163とシース芯線165とは、同軸に配置されて、溶接部167により接合されている。
この溶接部167の外形は、第1実施形態とは異なり、その外周面169の一部が軸線J側に凹んでいる。
詳しくは、第1実施形態と同様に、一対の電極線153が配置された平面に対して垂直の方向から見た場合に、溶接部167の外周面169の一方及び他方の外周部分169a、169bは、それぞれ第1直線D1及び第2直線D2に対して径方向外側(軸線Jに対して外側)に配置されているが、各外周部分169a、169bは変曲点を有するように、その一部が軸線J側に凹んでいる。
本第4実施形態においても、前記第1実施形態と同様な効果を奏する。
[4.実験例]
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
[4−1.実験例1]
a)実験例1では、第1実施形態と同様な製造方法によって、本発明例として、試料No.1の温度センサの一部を作製した。詳しくは、温度センサのうち、サーミスタ素子とシース部材とをレーザ溶接した試験用部材を作製した。
なお、試料No.1におけるレーザ溶接の条件は、第1実施形態において例示した条件であり、また、電極線の後端面とシース芯線の先端面とを突き合わせた状態で、その接触部分に対して軸線方向の両端より加えた荷重は42.0gfとした。また、レーザ光を照射する位置は、シース芯線の先端面より0.15mmだけ後方(電極線から離れる方向)にずれた位置とした。なお、その他の製造条件は第1実施形態と同様である(以下同様)。
そして、電極線とシース芯線とを接合した溶接部の近傍を観察し撮影した。図13は、試料No.1の一対の導電線の溶接部の近傍を、前記平面Sの垂直方向から、倍率150倍で撮影した写真である。
そして、試料No.1の試験用部材の各部の寸法等を測定したところ、図13からも明らかなように、第1実施形態と同様な製造方法によって製造された温度センサ(試験用部材)は、上述した条件1〜4を満たしていた。
詳しくは、試料No.1の一方(上方)の導電線の溶接部のL1は0.51mm、L2は0.29mmであり、他方(下方)の導電線の溶接部のL1は0.57mm、L2は0.24mmである。
b)また、実験例1では、比較例として、試料No.2、3の温度センサの試験用部材も作製した。
このうち、試料No.2は、試料No.1に対して、電極線の後端面とシース芯線の先端面とを突き合わせた状態で、その接触部分に対して軸線方向の両端より加えた荷重を45.0gfに変更して、レーザ溶接した。
また、試料No.3は、試料No.1に対して、レーザ光を照射する位置を、シース芯線の先端面より0.20mmだけ先方にずれた位置(つまり、電極線内に照射する位置)とした。
そして、電極線とシース芯線とを接合した溶接部の近傍を観察し撮影した。図14は、各試料No.2、3の一対の導電線のうちの一本の導電線の溶接部の近傍を、前記平面Sの垂直方向から、倍率150倍で撮影した写真である。
そして、各試料No.2、3の試験用部材の各部の寸法等を測定したところ、図14からも明らかなように、比較例の試験用部材は、上述した条件1〜4のうちいずれかを満たしていなかった。
例えば、試料No.2(NG1)は、条件3、4を満たしておらず、しかも、溶接部が大きく径方向外側に張り出している(条件5、6を満たしていない)。また、試料No.3(NG2)は、溶接部が大きく括れており、条件1、2を満たしていない。
[4−2.実験例2]
実験例2は、レーザ光を照射する位置を変えて、溶接部の形成状態を調べたものである。
具体的には、図15に示すように、電極線(25)とシース芯線(3)とを突き合わせる位置(接触部分(75))を基準位置0とした。そして、それより後端側(シース芯線側)にレーザ光を照射する場合をマイナス(−)とし、基準位置0より先端側(電極線)にレーザ光を照射する場合をプラス(+)として、レーザ光の照射位置(溶接狙い位置)を変更した。なお、溶接狙い位置の異なる試料No.4〜10は、各10個作製した。
レーザ溶接の条件は、溶接狙い位置以外は、第1実施形態と同様である。つまり、レーザ溶接の条件は、第1実施形態において例示した条件であり、また、電極線の後端面とシース芯線の先端面とを突き合わせた状態で、その接触部分に対して、軸線方向の両端より加えた荷重は42.0gfとした。
その結果を図16に示す。図16から明らかなように、溶接狙い位置が、マイナス(即ちシース芯線側)、詳しくは、試料No.6〜10のように、−0.05mm〜−0.25mmの場合には、良好な溶接部(即ち条件1〜4を全て満たす溶接部)が得られた。
それに対して、試料No.4、5のように、溶接狙い位置が、+0.2mm〜+0.10mmの場合には、溶接部の括れが大きく好ましくない(即ち条件1〜4のいずれかを満たさない)。なお、図16では、各10本の試料のうち、溶接部の括れが大きなものの本数を細りNG数として示してある。
[4−3.実験例3]
実験例3は、温度センサの溶接部を含む導電線の引張強度を調べたものである。
前記実験例2のように、溶接狙い位置を変えて、溶接部に括れのあるもの及び括れのないものについて、多数(例えば30個)の導電線の試料を作製した。
そして、各試料に対して、電極線とシース芯線とをつかみ、同軸方向に一定速度で引っ張るという方法で、導電線が断線に到るまでの引張強度を求めた。また、各試料の溶接部の括れの断面積(軸線方向と垂直の断面積)を求めた。
この結果を、図17に示す。なお、図17の○は電極線(Pt線)にて破断したことを示し、Xは溶接部にて破断したことを示す。なお、電極線の径はφ0.283mmである。
この図17から明らかなように、溶接部の括れの断面積(溶接クビレ断面積)が大きいほど引張強度が大きくなり、電極線の径と同じとなると電極線の方が破断することが分かる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、電極線やシース芯線の材料や径は、上述した実施形態に限定されるものではない。また、感温素子についても、上述した実施形態に限定されるものではない。
1、101、151、161…温度センサ
2…サーミスタ素子(感温素子)
3、103、155、165…シース芯線(信号線)
25、123、153、163…電極線
49…サーミスタ焼結体(感温部)
55、139、157、167…溶接部
57a、57b、141a、141b…外周部分
63、143…先端境界
67、145…後端境界
71…後端面
73…先端面
102…抵抗体素子(感温素子)
121…先端感温部(感温部)
D1…第1直線
D2…第2直線
L1…先端側長さ
L2…後端側長さ
T、T1、T2…凸部
S…平面

Claims (7)

  1. 軸線方向の先端側に配置され温度によって電気的特性が変化する感温部と、該感温部から後端側に伸びる一対の電極線とを有する感温素子と、
    前記一対の電極線の後端側にそれぞれ接続され、前記感温素子からの電気信号が伝わる一対の信号線と、
    を備え、
    前記電極線と前記信号線とは互いの軸線方向が同方向となる配置されると共に、前記電極線の前記軸線方向の後端部と前記信号線の前記軸線方向の先端部とが向かい合わせに接合されている温度センサにおいて、
    前記電極線と前記信号線とは異なる材料からなると共に、前記電極線の径は前記信号線の径より小さく、
    前記電極線の後端部と前記信号線の先端部との間に、前記電極線の材料と前記信号線の材料とが溶け合って前記電極線と前記信号線とを接合している溶接部を備えた温度センサであって、
    前記一対の電極線が配置された平面に対して垂直の方向から見た場合に、
    前記電極線の後端部と前記溶接部の先端部との境界である先端境界を有すると共に、前記信号線の先端部と前記溶接部の後端部との境界である後端境界を有し、
    前記溶接部の径方向における一方及び他方の最も外側の外周部分は、前記先端境界の一方の端部と前記後端境界の一方の端部とをつなぐ第1直線及び前記先端境界の他方の端部と前記後端境界の他方の端部とをつなぐ第2直線より、それぞれ径方向外側に位置しており、
    且つ、前記軸線方向において、前記溶接部の前記一方及び他方の外周部分にて、径方向外側に最も突出する凸部から前記先端境界に到る先端側長さは、前記凸部から前記後端境界に到る後端側長さよりも大であることを特徴とする温度センサ。
  2. 前記溶接部の前記外周部分は、全面にわたって前記径方向外側に凸となるように湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
  3. 前記軸線方向から見た場合に、前記信号線の先端部の範囲内に前記電極線の後端部が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサ。
  4. 前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度センサの製造方法であって、
    前記信号線の先端面と前記電極線の後端面とを突き合わせて、前記信号線と前記電極線とを溶接することを特徴とする温度センサの製造方法。
  5. 前記信号線にレーザ光を照射して、前記電極線と前記信号線とをレーザ溶接することを特徴とする請求項4に記載の温度センサの製造方法。
  6. 前記信号線の材料として前記電極線の材料より低融点の材料を用い、
    前記低融点の信号線にレーザ光を照射して、前記電極線と前記信号線とをレーザ溶接することを特徴とする請求項4又は5に記載の温度センサの製造方法。
  7. 前記信号線と前記電極線とを突き合わせる方向に荷重を加えた状態で、前記信号線と前記電極線とを溶接することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の温度センサの製造方法。
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