JP2017136584A - プリン体用吸着剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の他の目的は、アルコール溶液に含まれるプリン体を除去する方法を提供することにある。
(1)Ho≦−3.0の固体酸量が0.10〜0.70mmol/g−dry clayの範囲にあること、
(2)窒素吸着法により測定されるBET比表面積の値が65〜400m2/gの範囲にあること、
(3)(A)/(B)が0.90〜2.80の範囲にあること、
(4)プリン体がキサンチン化合物であること、
(5)キサンチン化合物がカフェインであること、
(6)プリン体が、アデニンまたはグアニン化合物であること、
が好適である。
そして、本発明の吸着剤は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物からなるものであることから、従来公知の酸処理を施していないスメクタイト系粘土に比して、含有する浸出性のNaイオン、Caイオンが低く抑えられており、シュウ酸Ca等をはじめとする析出物の発生を抑制することができる他、飲料の色や香味への影響を抑制することができる。
本発明の吸着剤は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物からなるものであるが、一般的に活性白土と称されるものに比して弱い酸処理によって得られ、弱酸処理白土というべきものである。従って、以下、プリン体用吸着剤として使用される酸処理物を「弱酸処理白土」と呼ぶことがある。
例えば、本出願人による特開2009−072759には、ジオクタヘドラル型粘土を酸処理して得られる半活性白土と呼ばれる酸処理物がポリ乳酸解重合用触媒として使用されることが開示されているが、本発明で使用する弱酸処理白土は、この半活性白土よりも更に弱い酸処理によって得られる。
即ち、BET比表面積を測定する方法として、窒素を用いた方法(窒素法)が一般的であるが、水蒸気を用いて測定する方法(水蒸気法)も存在する。粘土ハンドブック(第三版)によれば、窒素法では、単位質量当たりの端面を含む全外部表面積が測定され、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土のように三層構造を有するものでは、窒素分子が液体窒素温度で層間に侵入しないので、外部表面積のみが測定される。一方、水蒸気のような極性の吸着質を用いた水蒸気法においては、かかる吸着質が粘土の層間に十分侵入するので、内部表面が測定される。従って、A/Bが上記範囲内にあるということは、非常に弱い酸処理によって微細孔が増大し、且つ、スメクタイト系粘土の基本三層の層間が拡大していることを意味している。微細孔の増大はプリン体(特にカフェインなどのキサンチン化合物)に対する選択吸着性を向上させ、基本三層の層間の拡大は、適度な表面親水性をもたらし、水系およびアルコール溶液でのプリン体の吸着性を高めている。上記A/Bの値を有する本発明の吸着剤(弱酸処理白土)は、酸処理工程において基本三層の層間の適度な拡大と層間内での微細孔の形成がバランスよく生じるため、プリン体に対して極めて高い選択吸着性を示すものと信じられる。
例えば、強い酸で処理して得られる従来公知の活性白土や半活性白土では、基本三層の層間の拡がりが大きくなり、しかも層間に形成されている微細孔をつぶしてしまう。そのため、A/Bの値は小さくなり、従って、プリン体吸着特性は、極めて低いものとなる。
酸処理を施していないスメクタイト系粘土(酸性白土)は、基本層の間にNa等のカチオンを含む大きな層間を有しているために、水に対して高い膨潤性を示し、膨潤による微分散化によって濾過性が悪いと考えられている。かかる弱酸処理白土の場合、スメクタイト系粘土中の塩基成分の一部が酸と反応し、ある種、水やアルコールなどに対して不溶性のバインダーとなって粒子間を結合するために、溶液中での微分散化が抑制され、優れた濾過性を示すものと考えられる。
よって、酸処理の程度が弱いほどA/Bが大きくなり、濾過性が損なわれる虞がある。
上記のような特性を有する弱酸処理白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を粗砕、混練して所定濃度の酸水溶液を用いて、所定の条件で酸処理することにより製造される。即ち、この弱酸処理白土は、半活性白土と同様にして得られるが、半活性白土に比してマイルドな条件での酸処理によって得られるものである。
SiO2;50〜75質量%
Al2O3;11〜25質量%
Fe2O3;2〜20質量%
MgO;2〜7質量%
CaO;0.1〜3質量%
Na2O;0.1〜3質量%
K2O;0.1〜3質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig−loss(1050℃);5〜11質量%
SiO2;50〜85質量%
Al2O3;8〜23質量%
Fe2O3;1〜10質量%以下
MgO;1〜5質量%以下
CaO;0.1〜2質量%以下
Na2O;0.1〜1質量%
K2O;0.1〜1質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig−loss(1050℃);4〜9質量%
本発明において、前述した弱酸処理白土は、プリン体、即ち、プリン骨格を有する化合物に対して優れた選択吸着性を示す。
カフェイン以外のキサンチン誘導体としては、これに限定されるものではないが、テオフィリン、テオブロミン、パラキサンチン等を挙げることができる。
キサンチン、ヒポキサンチンおよびキサンチンから派生する化合物を、本明細書では、総じてキサンチン化合物とする。本発明の吸着剤は、キサンチン化合物に対して優れた選択吸着性を示し、キサンチン化合物用吸着剤として好適であり、カフェイン用吸着剤として特に好適である。
本発明において吸着剤として使用する弱酸処理白土は、プリン体に対する選択吸着性に優れているばかりか、少量の使用で済むので飲料の風味に影響し得る金属類の溶出も少なく、そのため、お茶やコーヒー等の飲料からカフェインを除去してカフェインレスとするために好適に使用され、また、ビール等のアルコール飲料からプリン体を除去するための吸着剤として使用される。例えば、上述のプリン体が溶解している溶液に0.001〜10質量部の量で添加して使用される。
これら飲料からカフェイン等を除去するには、前述した弱酸処理白土を、適度な平均粒径(例えば、10〜300μm程度)の粉末状に粒度調整し、これを飲料と混合すればよい。
本発明のプリン体用吸着剤は、上記飲料のほか、各種調味料やサプリメントなどを含めた食品、あるいは、工業や農業に用いられる各種薬品などの製造工程中の固液分離(濾過)において用いることができ、用いられる工程において適する粒度に適宜調整を行うことで、飲料に何ら制限されることなく適用できる。
また、本発明の吸着剤は、アデニンまたはグアニン化合物選択吸着性や濾過性を活かし、創薬や製薬など医薬の分野に適用することもできる。
本発明の吸着剤は、特に飲料や食品の分野に適用することが好ましい。
アルコール溶液とは、アルコールが含まれている液体を意味し、アルコール以外に例えば水等が含まれていてもよい。具体的には、ビールや発泡酒等の発酵麦芽飲料、ビールテイスト飲料、酒、ワイン、醸造アルコール、焼酎、スピリッツ類、リキュール類、ウイスキー、ブランデー、清酒、果実酒、酎ハイ、カクテル等の飲料用として提供されるものに加え、食品用、工業用、農業用、医療用として提供される各種アルコール含有製品及びその製造工程で用いる原料等が挙げられる。アルコールは特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、低級アルコール(例えば、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン等)、高級アルコール(炭素数8〜22以上の脂肪族アルコール、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等)、フェノール、芳香族アルコール等が挙げられ、好ましくは、エタノールが挙げられる。また、アルコールの濃度は特に制限がなく、上記アルコールを少なくとも1種以上含む溶液に適用できる。上述の本発明の吸着剤をアルコール溶液に適用する方法により、上記アルコール含有製品及びその製造工程で用いる原料等から、好適にプリン体を除去することができる。
マイクロメリティクス社製TriStar 3000を用いて窒素吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
日本ベル株式会社製BELSORP MAXを用いて水蒸気吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
イオン交換水に吸着剤濃度が2質量%になるように吸着剤粉末を添加し、30分間撹拌した後、東亜ディーケーケー製pHメーターHM−30Rにて測定を行った。
n−ブチルアミン滴定法にてHo≦−3.0の固体酸量を測定した。試料は、予め、150℃で3時間乾燥したものについて測定を行った{参考文献:「触媒」Vol.11,No6,P210−216(1969)}。
本実施例におけるカフェイン吸着能は、0.2g/L濃度のカフェイン水溶液から、1gの吸着剤(無水)が吸着できるカフェイン量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、無水カフェイン(試薬特級、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水に溶かし、0.2g/L濃度のカフェイン水溶液を得た。
この0.2g/L濃度のカフェイン水溶液30gを50ml容量の遠沈管に秤取し、吸着剤0.1g(対液0.33質量%)を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により2.5時間振とうした。
次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により遠心加速度3000rpmで20分処理した液の上澄みをイオン交換水により10倍に希釈して液(試料液)を得た。試料液の273nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V−630)により測定した。そして、予め作成したカフェイン濃度と273nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のカフェイン残存量を算出し、吸着剤添加前のカフェイン量から差し引いた値を吸着剤のカフェイン吸着量とした。
ビーカーに緑茶(市販品)を200ml入れ、そこへ110℃で1時間乾燥した吸着剤粉末を5g投入し、攪拌機により5分間攪拌した。ステンレス製ブフナー漏斗(濾過面積38.5cm2)に濾紙(ADVANTEC製No.2)をセットし、真空ポンプのスイッチを入れた。吸着剤粉末分散液を漏斗に注ぎ入れ、吸引圧を20cmHgに調整し、濾液の量が100mlになったら、ストップウォッチをスタートした。濾過の間、吸引圧は20cmHgに保った。濾液の量が150mlになった時点でストップウォッチを止め、この時間を濾過時間とした。
(株)リガク製RINT―UltimaIV(X線=CuKα線)にて測定した。
本実施例におけるグアノシン吸着能は、0.2g/L濃度のグアノシン水溶液から、1gの試料(無水)が吸着できるグアノシン量(mg)とし、下記の方法により測定し、算出した。
先ず、グアノシン(Alfa Aesar製)をイオン交換水1Lに溶解し、0.2g/L濃度のグアノシン水溶液を得た。
この0.2g/L濃度のグアノシン水溶液35gを50ml容量の遠沈管に秤取し、0.5g(対液1.4質量%)の試験粉末を加えて振とう機(ヤマト科学(株)製SA300、振とうスピード5)により0.5時間振とうした。
次に遠心分離機((株)クボタ製 5200)により回転数3000rpmで30分処理し、液の上澄みをイオン交換水により10倍に希釈した液(試料液)を得た。試料液の260nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V−630)により測定した。そして、あらかじめ作成したグアノシン濃度と260nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて、試料液のグアノシン濃度を算出した。この値から試料単位量あたりのグアノシン吸着量を計算した。
本実施例におけるグアニン吸着能は、グアニン飽和水溶液に所定量の試験粉末を加えて処理したときの248nm波長光の吸光度の減少程度を指標に評価した。
先ず、グアニン(試薬特級、和光純薬工業(株)製)0.05gをイオン交換水1Lに添加し、室温下にて一晩撹拌した後に、濾紙(ADVANTEC製No.5C)で濾過し、未溶解のグアニンを除去したものをグアニン飽和水溶液として用いた。
このグアニン飽和水溶液100gに0.02g(対液0.02質量%)の試験粉末を加えてマグネチックスターラーを用いて3時間撹拌した。次に濾紙(ADVANTEC製No.5C)で濾過した液(試料液)の248nm波長光の吸光度を分光光度計(日本分光(株)製V−630)により測定した。このとき、試験粉末の水溶性塩類等の影響を差し引くため、あらかじめグアニン未溶解のイオン交換水100gに0.02gの試験粉末を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。グアニン飽和水溶液の吸光度から試料液の補正吸光度を差し引いた値に対するグアニン飽和水溶液の吸光度の割合を100分率に換算した値を試験粉末のグアニン吸着能(%)とした。
(8)グアノシン吸着試験において用いた0.2g/L濃度のグアノシン水溶液の溶媒を、イオン交換水から5体積%エタノール水溶液に変更し、遠心分離処理を濾紙(ADVANTEC製No.5C)による固液分離処理とした他は、(8)グアノシン吸着試験と同様の操作でアルコール溶液におけるグアノシン吸着量を算出した。
新潟県胎内市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を粗砕、乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
ビーカーに10質量%硫酸水溶液220mlを採り、90℃に加熱した。そこへ比較例1で得た吸着剤粉末30gを添加し、液温を90℃に維持した状態で撹拌し、30分間酸処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水でろ過洗浄し、洗浄後のろ過ケーキを110℃にて乾燥し、粉砕、分級して弱酸処理白土粉末を得た。得られた弱酸処理白土粉末をXRD測定装置により測定した。X線回折チャートを図1に示した。
新潟県新発田市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を水簸精製し、乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
実施例1における吸着剤粉末を比較例2で得た吸着剤粉末に変え、酸処理時間を1時間に変え、弱酸処理白土粉末を得た。
実施例2における硫酸水溶液の濃度を5質量%に変え、弱酸処理白土粉末を得た。
実施例3における加熱温度を25℃に変え、弱酸処理白土粉末を得た。
実施例3における酸処理時間を4時間に変え、弱酸処理白土粉末を得た。
新潟県阿賀町産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を水簸精製し、乾燥(110℃)、粉砕、分級して粘土粉末を得た。この粘土粉末のpHは9.5であった。
実施例5における吸着剤粉末をこの粘土粉末に変え、硫酸水溶液の濃度を11質量%に変え、弱酸処理白土を得た。
水澤化学工業(株)製の活性白土ガレオンアースNF―2。
水澤化学工業(株)製の活性白土ガレオナイトNo.251。
水澤化学工業(株)製の活性白土ガレオンアースV2。
水澤化学工業(株)製の酸性白土ミズカエースNo.20。
新潟県阿賀町産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
実施例1における吸着剤粉末を比較例7で得た吸着剤粉末に変え、硫酸水溶液の濃度を5質量%に変え、弱酸処理白土を得た。
実施例1における酸処理時間を2時間に変え、弱酸処理白土粉末を得た。
実施例4における硫酸水溶液の濃度を2質量%に変え、酸処理時間を0.5時間に変え、弱酸処理白土粉末を得た。
スペイン産天然スチブンサイト。
Claims (8)
- ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物からなり、
水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比、(A)/(B)が0.90〜5.00の範囲にあることを特徴とする、プリン体用吸着剤。 - Ho≦−3.0の固体酸量が0.10〜0.70mmol/g−dry clayの範囲にある、請求項1に記載の吸着剤。
- 窒素吸着法により測定されるBET比表面積の値が65〜400m2/gの範囲にある、請求項1または2に記載の吸着剤。
- (A)/(B)が0.90〜2.80の範囲にある、請求項1〜3の何れかに記載の吸着剤。
- プリン体がキサンチン化合物である請求項1〜4の何れかに記載の吸着剤。
- キサンチン化合物がカフェインである、請求項5に記載の吸着剤。
- プリン体が、アデニンまたはグアニン化合物である、請求項1〜4の何れかに記載の吸着剤。
- 請求項1〜7の何れかに記載の吸着剤を、プリン体を含むアルコール溶液に入れて、該プリン体を吸着除去することを特徴とする、アルコール溶液からプリン体を除去する方法。
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