JP2017135991A - 呈味向上剤、呈味向上機能を有する調味料の製造方法、呈味向上機能を有する調味料、及び飲食品の呈味向上方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感等の呈味を向上する機能に優れた、呈味向上剤、呈味向上機能を有する調味料の製造方法、呈味向上機能を有する調味料、及び飲食品の呈味向上方法を提供する。
【解決手段】ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を、飲食品の呈味を向上するための有効成分とする。そのプロテアーゼとしては、真菌類及び細菌類からなる群から選ばれた少なくとも1種に由来する1種又は2種以上のプロテアーゼを含むことが好ましい。また、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを含むことが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を、飲食品の呈味を向上するための有効成分とする。そのプロテアーゼとしては、真菌類及び細菌類からなる群から選ばれた少なくとも1種に由来する1種又は2種以上のプロテアーゼを含むことが好ましい。また、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを含むことが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感等の呈味を向上する機能を有する、呈味向上剤、呈味向上機能を有する調味料の製造方法、呈味向上機能を有する調味料、及び飲食品の呈味向上方法に関する。
近年、食品業界では、「コク」を唱えた商品が次々に発売されている。「コク」とは、5基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)だけでは表すことのできない、濃厚感、広がり、伸び(持続性)、厚み、ボディ感、深みをいう。従来、コクを付与する調味素材としては、ゼラチン、トロポミオシン及び糖及び/又はアミノ酸を含有することを特徴とするコク味調味料素材などが知られている(下記特許文献1参照)。また、分子量1000〜5000のペプチドとカルボニル化合物とのアミノ−カルボニル反応物を有効成分として含有する風味改良剤などが知られている(下記特許文献2参照)。
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の調味素材は、加熱反応により生成する成分を含有するので、タンパク質やペプチド由来の旨味や臭いの強いものとなってしまい、コンソメスープなどの用途に限定されていた。
本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感等の呈味を向上する機能に優れた、呈味向上剤、呈味向上機能を有する調味料の製造方法、呈味向上機能を有する調味料、及び飲食品の呈味向上方法を提供することにある。
本発明者らは、ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物が、飲食品の呈味向上効果に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、第1に、ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を呈味向上機能の有効成分とすることを特徴とする呈味向上剤を提供するものである。
本発明の呈味向上剤においては、飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感の増強のために用いられることが好ましい。
本発明の呈味向上剤においては、だし類、つゆ類、スープ類、菓子類、パン類、乳成分含有加工飲食品類、卵成分含有加工飲食品類、果汁成分含有飲食品類、水産練り製品類、又は調味料に適用されることが好ましい。
本発明は、第2に、ゼラチン及び/又はコラーゲンにプロテアーゼを作用させ、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を得る工程を含むことを特徴とする呈味向上機能を有する調味料の製造方法を提供するものである。
本発明の呈味向上機能を有する調味料の製造方法においては、前記プロテアーゼは、真菌類及び細菌類からなる群から選ばれた少なくとも1種に由来する1種又は2種以上のプロテアーゼを含むことが好ましい。
本発明の呈味向上機能を有する調味料の製造方法においては、前記プロテアーゼは、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを含むことが好ましい。
本発明の呈味向上機能を有する調味料の製造方法においては、前記ゼラチン及び/又はコラーゲンは、魚、豚、及び牛からなる群から選ばれた少なくとも1種に由来する1種又は2種以上のゼラチン及び/又はコラーゲンを含むことが好ましい。
本発明は、第3に、ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を乾燥分中1〜100質量%含有することを特徴とする呈味向上機能を有する調味料を提供するものである。
本発明の呈味向上機能を有する調味料においては、飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感の増強のために用いられることが好ましい。
本発明の呈味向上機能を有する調味料においては、だし類、つゆ類、スープ類、菓子類、パン類、乳成分含有加工飲食品類、卵成分含有加工飲食品類、果汁成分含有飲食品類、又は水産練り製品類に適用されることが好ましい。
本発明は、第4に、ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を、飲食品にその乾燥分中0.01〜10質量%含有せしめることを特徴とする飲食品の呈味向上方法を提供するものである。
本発明の飲食品の呈味向上方法においては、前記飲食品において、前記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を含有せしめない場合に比べて、該飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感を増強するものであることが好ましい。
本発明の飲食品の呈味向上方法においては、だし類、つゆ類、スープ類、菓子類、パン類、乳成分含有加工飲食品類、卵成分含有加工飲食品類、果汁成分含有飲食品類、又は水産練り製品類に適用されることが好ましい。
本発明の飲食品の呈味向上方法においては、前記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物は、調味料に含有した形態で用いられることが好ましい。
本発明によれば、飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感等の呈味を向上する機能に優れた、呈味向上剤、呈味向上機能を有する調味料の製造方法、呈味向上機能を有する調味料、及び飲食品の呈味向上方法を提供することができる。
本発明においては、飲食品の呈味向上のため、その飲食品にゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を含有せしめる。
ゼラチンやコラーゲンとしては、特に制限はなく、例えば魚皮、魚鱗、魚骨、豚皮、豚骨、牛皮、牛骨等の原料に由来するものなどが挙げられる。このうち魚皮、魚鱗に由来するものであることがより好ましく、魚皮に由来するものであることが更により好ましい。また、原料から抽出するための処理として酸処理、アルカリ処理、熱水処理、酵素処理などが施されていてもよい。ゼラチンやコラーゲンは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
プロテアーゼとしては、タンパク質のペプチド結合を加水分解する機能を有するものであればよく、特に制限はない。例えば、その起源生物として、アスペルギルス(Aspergillus)属等の真菌類や、バチルス(Bacillus)属等の細菌類などが挙げられ、好ましくは、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)、アスペルギルスsp.(Aspergillus sp.)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。また、市販の酵素製剤を使用してもよい。プロテアーゼは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、単一の起源生物由来のものであっても2種類以上のプロテアーゼを含む場合がある。また、タンパク質・ペプチド鎖の配列中央を切断するタイプのエンドペプチダーゼであってもよく、タンパク質・ペプチド鎖の配列末端から(およそ1〜2アミノ酸残基ずつ)切り取るタイプのエキソペプチダーゼであってもよいが、少なくともエンドペプチダーゼを含むことがより好ましく、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼの組み合わせであることが更により好ましい。
本発明において用いられるゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物は、上記ゼラチン及び/又はコラーゲンに、上記プロテアーゼを作用させることにより得られる。その反応条件は、使用するゼラチン及び/又はコラーゲンやプロテアーゼの種類に応じて適宜決定すればよい。典型的には、ゼラチン及び/又はコラーゲンを5〜50w/w%含有するゼラチン水溶液に、プロテアーゼをゼラチン及び/又はコラーゲン100質量部に対し0.01〜1質量部添加し、30〜65℃で0.5〜24時間反応後、80〜100℃で5〜30分間加熱処理して酵素失活させるなどの反応条件を選択することができる。但し、その反応生成物として分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む必要がある。例えば、ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物は、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを、乾燥分中10〜100質量%含有することが好ましく、乾燥分中20〜100質量%含有することがより好ましく、乾燥分中30〜100質量%含有することが更により好ましい。
なお、本明細書において「分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定したときの、ピークトップ分子量(分子量分布のピークの頂点の位置から求められる分子量)のことを意味する。具体的には、例えば、GPC‐HPLC装置(カラム:「TSK‐gel guardcolumnPWXL」(東ソー株式会社製)、「TSK‐gel G3000PWXL」(東ソー株式会社製)、「TSK‐gel G2500PWXL」(東ソー株式会社製)、移動相:0.5%塩化ナトリウム水溶液、流速:0.8mL/min、カラム温度:30℃、検出:RI、HPLCポンプ:「HITACHI L−7100型」(日立製作所製)を使用し、標準物質として、ラミナリテトラオース(分子量660)、ラミナリヘキサオース(分子量990)、プルラン5量体(分子量5,900)、プルラン10量体(分子量11,800)、プルラン20量体(分子量22,800)を用いて、これら標準物質に対する相対値(相当する分子量とその分子量に対応する物質量)から求めることができる。
上記酵素反応後のプロテアーゼ分解物は、残渣を濾別したり、活性炭で脱色処理したり、透析や限外濾過で低分子物質を除去したり、イオン交換樹脂に通して脱塩したり、スプレードライ等により粉末化したりしてもよい。このようにして得られたゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物は食品として安全であり、ヒトが日常的に摂取しても問題がないものである。
飲食品の呈味向上のため、その飲食品に上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を含有せしめる態様については、特に制限はなく、例えば、飲食品の調製や加工等の際に、その原料の一部として添加すればよい。
また、飲食品の調製や加工等の際に、あるいはその後に添加するものとして用いられる調味料の形態にして、上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を飲食品に含有せしめるようにしてもよい。調味料の形態としては、適宜調味料に一般的に用いられる基剤や他の成分との混合により、粉末状、顆粒状、ゲル状、固形状、液状、乳化物状、油水液分離状(ドレッシング状)など、いずれの形態を採用することもできるが、保存の観点からは、粉末状であることが好ましい。調味料中の上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物の含有量は、その調味料の種類や調味料が適用される飲食品の種類などによっても異なり、一概には言えないが、乾燥分中に上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を1〜100質量%含有していることが好ましく、10〜100質量%含有していることがより好ましく、40〜100質量%含有していることが更により好ましい。
飲食品の呈味を向上するのに有効量で上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を含有せしめたかどうかは、それを含有せしめない場合に比べて飲食品の呈味が向上しているかどうかを官能評価することなどによって、適宜判断が可能である。具体的には、適用する飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感などについての官能評価によって、上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を含有せしめたほうが、それを含有せしめない場合に比べて、それらの1種又は2種以上を増強する場合に、その飲食品の呈味を向上したと判断することができる。また、ヒトによる官能評価の代わりに味覚センサー装置を用いて評価することもできる。
飲食品中の上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物の含有量は、適用する飲食品の種類などによっても異なり、一概には言えないが、飲食品の乾燥分中に上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を0.01〜10質量%含有していることが好ましく、0.01〜5質量%含有していることがより好ましく、0.01〜2質量%含有していることが更により好ましい。含有量が10質量%を超えると、上記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物自体の苦味や雑味、臭いなどが強く出てしまうことがある。
本発明が適用される飲食品としては、例えば、風味調味料等のだし類、めんつゆ、煮物つゆ、鍋つゆ等のつゆ類、ミルクスープ、トマトスープ、中華スープ、ブイヨンスープ、コンソメスープ等のスープ類、プリン、アイスクリーム、チョコレート、ビスケット、クッキー等の菓子類、食パン等のパン類、プリン、アイスクリーム、ホイップクリーム、生クリーム、カスタードクリーム、チーズケーキ、ホットケーキ等の乳成分含有加工飲食品類、プリン、カスタードクリーム、マヨネーズ、卵豆腐、茶碗蒸し、マフィン、ワッフル、カステラ等の卵成分含有加工飲食品類、果汁入りジュース、ゼリー、飴等の果汁成分含有飲食品類、かまぼこ、さつま揚げ、竹輪、はんぺん等の水産練り製品類、又は調味料などが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1> (ゼラチン由来ペプチドの分子量と呈味向上機能の関係)
魚皮由来の塩酸処理ゼラチン(製品名:Progel、入手元:VINH HOAN CORP.)を使用して、10w/w%ゼラチン水溶液を調製し、これに、プロテアーゼ(酵素製剤A:Aspergillus oryzae由来、製品名:プロテアーゼM、入手元:天野エンザイム)を、下記表1に示す各割合で添加し、45〜50℃で2時間又は6時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、各分子量(12000、6000、3000、2000、1000)のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。なお、分子量は、分子量測定用プルランを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって求めた分子量を意味する(以下の試験例においても同様に測定した)。
魚皮由来の塩酸処理ゼラチン(製品名:Progel、入手元:VINH HOAN CORP.)を使用して、10w/w%ゼラチン水溶液を調製し、これに、プロテアーゼ(酵素製剤A:Aspergillus oryzae由来、製品名:プロテアーゼM、入手元:天野エンザイム)を、下記表1に示す各割合で添加し、45〜50℃で2時間又は6時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、各分子量(12000、6000、3000、2000、1000)のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。なお、分子量は、分子量測定用プルランを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって求めた分子量を意味する(以下の試験例においても同様に測定した)。
得られた各分子量(12000、6000、3000、2000、1000)のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物及び原料ゼラチン(分子量: 42000)を、それぞれ固形量で1w/w%となるように鰹節だし又はチキンコンソメスープに添加し、「コク(厚み・広がり・持続性)」と「旨味」の官能評価を行った。官能評価では、5名のパネラーにより、無添加のものを基準として5段階評価(より悪い評価:−2、−1、基準:0、1、2:より良い評価)で点数づけを行い、その平均を求めた。
その結果、表2に示すように、原料ゼラチンやゼラチンのプロテアーゼ分解物の添加によって、鰹節だしやチキンコンソメスープのコクや旨味が向上した。特に、分子量2,000〜6,000の範囲の分子量を有するゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物において、その効果がより顕著であることが明らかとなった。
<試験例2> (プロテアーゼ含有酵素製剤の種類と呈味向上機能の関係)
試験例1で用いたのと同じゼラチン(魚皮由来の塩酸処理ゼラチン)で調製した25w/w%ゼラチン水溶液に、下記表3に示す各種プロテアーゼ含有酵素製剤を添加し、各酵素製剤の至適温度で2時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、分子量4000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。
試験例1で用いたのと同じゼラチン(魚皮由来の塩酸処理ゼラチン)で調製した25w/w%ゼラチン水溶液に、下記表3に示す各種プロテアーゼ含有酵素製剤を添加し、各酵素製剤の至適温度で2時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、分子量4000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。
得られた分子量4000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を、それぞれ固形量で2w/w%となるように鰹節だし又はチキンガラスープに添加し、「コク」の官能評価を行った。官能評価では、5名のパネラーにより、無添加のものを基準として5段階評価(より悪い評価:−2、−1、基準:0、1、2:より良い評価)で点数づけを行い、その平均を求めた。
その結果、表4に示すように、真菌類や細菌類由来の各種プロテアーゼ含有酵素製剤を用いて調製されたゼラチンの分解物の添加によって、鰹節だしやチキンガラスープのコクや旨味が向上した。特に、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼを含む酵素製剤を用いたときに、その効果がより顕著であることが明らかとなった。一方、パパイヤ由来のパパインやブタ膵臓由来のトリプシンによる分解物では、コクの向上効果は得られなかった。
<試験例3> (ゼラチン原料の由来と呈味向上機能の関係)
ゼラチン原料として、牛骨、豚骨、魚鱗・皮、又は魚皮由来のものを用い、そのプロテアーゼ分解物を調製した。具体的には、各ゼラチン原料で調製した35w/w%ゼラチン水溶液に、プロテアーゼ(酵素製剤A:Aspergillus oryzae由来、製品名:プロテアーゼM、入手元:天野エンザイム)を添加し(ゼラチンに対し0.2又は0.5質量%)、45〜50℃で2時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、分子量3000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。また、比較として、ゼラチンに対し0.02質量%の酵素製剤を添加する以外は同様に処理し、分子量12000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。
ゼラチン原料として、牛骨、豚骨、魚鱗・皮、又は魚皮由来のものを用い、そのプロテアーゼ分解物を調製した。具体的には、各ゼラチン原料で調製した35w/w%ゼラチン水溶液に、プロテアーゼ(酵素製剤A:Aspergillus oryzae由来、製品名:プロテアーゼM、入手元:天野エンザイム)を添加し(ゼラチンに対し0.2又は0.5質量%)、45〜50℃で2時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、分子量3000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。また、比較として、ゼラチンに対し0.02質量%の酵素製剤を添加する以外は同様に処理し、分子量12000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。
得られたゼラチンのプロテアーゼ分解物を、それぞれ固形量で0.2w/w%となるように桃果汁又は全脂粉乳溶液に添加し、「コク」の官能評価を行った。官能評価では、5名のパネラーにより、無添加のものを基準として5段階評価(より悪い評価:−2、−1、基準:0、1、2:より良い評価)で点数づけを行い、その平均を求めた。
その結果、表5に示すように、ゼラチンのプロテアーゼ分解物は、桃果汁や全脂粉乳溶液に対してもコクの向上効果を奏した。但し、試験例1の結果と同様に、ゼラチンのプロテアーゼ分解物に含まれるゼラチン由来ペプチドの分子量が所定範囲内でないと、有意な効果が得られなかった。一方、その効果は、ゼラチン原料の由来には左右されなかった。
<試験例4> (ミルク溶液に対する効果)
試験例1で用いたのと同じゼラチン(魚皮由来の塩酸処理ゼラチン)で調製した35w/w%ゼラチン水溶液に、プロテアーゼ(酵素製剤A:Aspergillus oryzae由来、製品名:プロテアーゼM、入手元:天野エンザイム)を添加し(ゼラチンに対し0.2質量%)、45〜50℃で2時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、分子量3000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。
試験例1で用いたのと同じゼラチン(魚皮由来の塩酸処理ゼラチン)で調製した35w/w%ゼラチン水溶液に、プロテアーゼ(酵素製剤A:Aspergillus oryzae由来、製品名:プロテアーゼM、入手元:天野エンザイム)を添加し(ゼラチンに対し0.2質量%)、45〜50℃で2時間反応後、80〜85℃で15分間加熱処理して酵素失活し、分子量3000のゼラチン由来ペプチドを含むゼラチンのプロテアーゼ分解物を得た。
得られたゼラチンのプロテアーゼ分解物を、別途調製したミルク溶液(脱脂粉乳と全脂粉乳に脱塩水を添加し、乳脂肪1%、無脂乳固形分7%に調製したもの)に、固形量で0.1w/w%となるように添加し、「コク」と「乳感・脂肪感」と「美味しさ」の官能評価を行った。官能評価では、5名のパネラーにより、無添加のものを基準として5段階評価(より悪い評価:−2、−1、基準:0、1、2:より良い評価)で点数づけを行い、その平均を求めた。また、比較として、市販の、酵母を主成分とする酵母エキス製品Aと、魚皮・魚鱗を主成分とするゼラチン製品Bとについて、同様に評価した。
その結果、表6に示すように、ゼラチンのプロテアーゼ分解物(本発明品)は、ミルク溶液に対しても、そのコクや乳感・脂肪感や美味しさを向上する効果を奏した。その効果は、市販の酵母エキス製品Aやゼラチン製品Bよりも優れていた。
<試験例5> (乳感・脂肪感の増強効果)
脱脂粉乳と全脂粉乳に脱塩水を添加し、無脂乳固形分8.8%であって、乳脂肪がそれぞれ0、1、2、又は3%であるミルク溶液を調製した。また、このうち乳脂肪が1%であるミルク溶液に、試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物(本発明品)を、固形量で0.1又は0.3w/w%となるように添加したものを調製した。更に、比較のため、試験例4で用いた市販の酵母エキス製品Aやゼラチン製品Bを、それぞれ固形量で0.1又は0.3w/w%となるように添加したものを調製した。
脱脂粉乳と全脂粉乳に脱塩水を添加し、無脂乳固形分8.8%であって、乳脂肪がそれぞれ0、1、2、又は3%であるミルク溶液を調製した。また、このうち乳脂肪が1%であるミルク溶液に、試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物(本発明品)を、固形量で0.1又は0.3w/w%となるように添加したものを調製した。更に、比較のため、試験例4で用いた市販の酵母エキス製品Aやゼラチン製品Bを、それぞれ固形量で0.1又は0.3w/w%となるように添加したものを調製した。
得られたミルク溶液について、味覚センサー(「味認識装置SA402B」、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー社製)にて分析を行った。具体的には、センサーとしてAAE(旨味)、COO(苦味)、AE1(渋味)を使用して、各センサーでの測定値より多変量解析に基づく主成分分析を行った。
その結果、図1に示すように、乳脂肪がそれぞれ0、1、2、又は3%であるミルク溶液のコントロール品について、Y軸方向に脂質濃度に準じた位置にプロットされたグラフを得ることができた。そこで、このグラフを、X軸に苦味や雑味等の異味についての座標軸をとり、Y軸に脂質感についての座標軸をとり、プロットし直したところ、図2に示すグラフが得られた。
図2に示すグラフから分かるように、本発明品によれば、それをミルク溶液に配合すると、乳脂肪分の配合量を増やしたのと同様の乳感・脂肪感の増加が得られ、且つ、苦味や雑味等の異味の付与が少なかった。一方、市販の酵母エキス製品Aでは、乳感・脂肪感の増加が若干得られたものの、苦味や雑味等の異味が勝る結果となった。また、市販のゼラチン製品Bでは、乳感・脂肪感の増加がほとんど得られず、苦味や雑味等の異味が付与されるだけであった。
[配合例1]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したカスタードを調製した。
上記配合のカスタードは、濃厚感、乳感の強いカスタードであった。
[配合例2]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したアイスクリームを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したアイスクリームを調製した。
上記配合のアイスクリームは、濃厚感、乳脂肪感の強いアイスクリームであった。
[配合例3]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したホイップクリームを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したホイップクリームを調製した。
上記配合のホイップクリームは、乳脂肪感の強いホイップクリームであった。
[配合例4]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したプリンを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したプリンを調製した。
上記配合のプリンは、濃厚感、乳感の強いプリンであった。
[配合例5]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したかまぼこを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したかまぼこを調製した。
上記配合のかまぼこは、風味に厚み、伸びのあるかまぼこであった。
[配合例6]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合した茶碗蒸しを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合した茶碗蒸しを調製した。
上記配合の茶碗蒸しは、風味に厚み、伸びのある茶碗蒸しであった。
[配合例7]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合した卵豆腐を調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合した卵豆腐を調製した。
上記配合の卵豆腐は、風味に厚み、伸びのある卵豆腐であった。
[配合例8]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したマヨネーズを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したマヨネーズを調製した。
上記配合のマヨネーズは、濃厚感、脂肪感の強いマヨネーズであった。
[配合例9]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したミルクスープを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したミルクスープを調製した。
上記配合のミルクスープは、旨味、乳感の強いミルクスープであった。
[配合例10]
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したトマトスープを調製した。
試験例4で用いたゼラチンのプロテアーゼ分解物をスプレードライにより粉末化したもの(本発明品)を配合したトマトスープを調製した。
上記配合のトマトスープは、旨味が強く、風味に厚み、伸びのあるトマトスープであった。
Claims (14)
- ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を呈味向上機能の有効成分とすることを特徴とする呈味向上剤。
- 飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感の増強のために用いられる、請求項1記載の呈味向上剤。
- だし類、つゆ類、スープ類、菓子類、パン類、乳成分含有加工飲食品類、卵成分含有加工飲食品類、果汁成分含有飲食品類、水産練り製品類、又は調味料に適用される、請求項1記載の呈味向上剤。
- ゼラチン及び/又はコラーゲンにプロテアーゼを作用させ、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を得る工程を含むことを特徴とする呈味向上機能を有する調味料の製造方法。
- 前記プロテアーゼは、真菌類及び細菌類からなる群から選ばれた少なくとも1種に由来する1種又は2種以上のプロテアーゼを含む請求項4記載の調味料の製造方法。
- 前記プロテアーゼは、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを含む請求項4又は5記載の調味料の製造方法。
- 前記ゼラチン及び/又はコラーゲンは、魚、豚、及び牛からなる群から選ばれた少なくとも1種に由来する1種又は2種以上のゼラチン及び/又はコラーゲンを含む請求項4〜6のいずれか1つに記載の調味料の製造方法。
- ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を乾燥分中1〜100質量%含有することを特徴とする呈味向上機能を有する調味料。
- 飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感の増強のために用いられる、請求項8記載の調味料。
- だし類、つゆ類、スープ類、菓子類、パン類、乳成分含有加工飲食品類、卵成分含有加工飲食品類、果汁成分含有飲食品類、又は水産練り製品類に適用される、請求項8記載の調味料。
- ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物であって、分子量2,000〜6,000であるゼラチン由来ペプチド及び/又はコラーゲン由来ペプチドを含む、該ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を、飲食品にその乾燥分中0.01〜10質量%含有せしめることを特徴とする飲食品の呈味向上方法。
- 前記飲食品において、前記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物を含有せしめない場合に比べて、該飲食品のコク、旨味、乳感、及び/又は脂肪感を増強する請求項11記載の呈味向上方法。
- だし類、つゆ類、スープ類、菓子類、パン類、乳成分含有加工飲食品類、卵成分含有加工飲食品類、果汁成分含有飲食品類、又は水産練り製品類に適用される、請求項11記載の呈味向上方法。
- 前記ゼラチン及び/又はコラーゲンのプロテアーゼ分解物は、調味料に含有した形態で用いられる、請求項11〜13のいずれか1つに記載の呈味向上方法。
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2016
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