JP2017133123A - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭素繊維製造工程において、物性を大きく損なうことなく軽量(低比重)なの炭素繊維を提供すること。
【解決手段】繊維軸に垂直な断面において15〜100個の空隙を含み、その平均長径が0.2〜5.0μmであり、面積の総和が繊維全体の断面に対し10〜50面積%であるポリアクリロニトリル系炭素繊維である。
【選択図】なし
【解決手段】繊維軸に垂直な断面において15〜100個の空隙を含み、その平均長径が0.2〜5.0μmであり、面積の総和が繊維全体の断面に対し10〜50面積%であるポリアクリロニトリル系炭素繊維である。
【選択図】なし
Description
本発明は、産業用途に好適に用いられる炭素繊維とその製造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、内部に特定の空隙を有し、高い比弾性率を有する炭素繊維ならびにその製造方法に関する。
炭素繊維は、他の繊維に比べて比強度および比弾性率が高いため、複合材料用補強繊維として、スポーツ・航空・宇宙・自動車・土木・建築、・圧力容器・風車ブレードなど幅広く利用されている。中でも、特定の用途においては、部材厚みを低減せずに比強度および比弾性率の向上が要求されている。
市販されている炭素繊維の比重は、構造に依存して1.8〜2.2となっており、炭素繊維の微細構造制御では炭素繊維の比重を抜本的に低減することはできなかった。一方、比強度、比弾性率向上の手段として、炭素繊維内部に一つまたは複数の空隙を形成させることにより炭素繊維の比重を低下させる方法が知られており、その中でも、炭素繊維内部に空隙を有して比重を低下させた例として、いくつかの技術が知られている。
特許文献1には、ポリアクリロニトリルとその非相溶重合体を混合紡糸後にこの重合体を除去することで断面に開口を多数生成させた炭素繊維が記載されている。また、非特許文献1には、ポリアクリロニトリルとその非相溶重合体を特殊口金で紡糸後、非相溶重合体を除去することで蓮根状に穴の空けた断面の炭素繊維が、特許文献2には、ポリアクリロニトリルとその非相溶重合体を芯鞘口金で紡糸後、芯部分の重合体を除去することで中空にした炭素繊維が記載されている。また、特許文献3には、耐炎化工程で発熱を抑制することを目的として、脱離基とニトリル基を有する共重合成分を含むポリアクリロニトリル系重合体が記載されている。
"カーボン(Carbon)"(オランダ)、2015年、95、p.710.
しかしながら、特許文献1に記載の方法では非相溶状態によって空隙状態が変化するため、空隙率が高めにくいという問題があった。また、非特許文献1や特許文献2に記載の方法で製造された中空炭素繊維や蓮根状炭素繊維では空隙数が少なく、残った繊維部に応力が集中して強度や弾性率などの物性が低下しやすいという問題があった。
特許文献3に記載の方法では、炭素繊維断面に空隙が生成しないため、この重合体から作製された炭素繊維の比重を低下させることはできていなかった。
本発明は、応力が集中しないようにサブミクロンオーダーの小さな空隙を繊維内部に均一に分散させた炭素繊維を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、本発明の炭素繊維は、該炭素繊維軸に垂直な断面に15〜100個の空隙を含み、その空隙の平均長径が0.2〜5.0μmであり、面積の総和が繊維全体の断面に対して10〜50面積%であることを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維の好ましい態様によれば、繊維軸に垂直な断面において、その半径の半分の円内にある空隙面積の総和が10〜40面積%である。
また、本発明の炭素繊維の好ましい態様によれば、空隙の平均扁平率が2〜5である。
本発明の炭素繊維の好適な製造方法は、脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体を8〜20モル%共重合したポリアクリロニトリル系重合体を用いてポリアクリロニトリル系前駆体繊維を得て、該ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を空気中190〜250℃で熱処理し、不活性雰囲気下、最高温度500〜1000℃で熱処理した後に、不活性雰囲気下、最高温度1000℃以上で熱処理することである。
本発明によれば、内部に空隙を含有することにより、機械的特性をある水準に保ちつつも、軽量(低比重)な炭素繊維が得られる。
本発明のポリアクリロニトリル系炭素繊維は、繊維軸に垂直な断面において特定の数・平均長径・面積比率の空隙を含むことで、炭素繊維の比重を低減しつつ、機械的特性(具体的には、弾性率など)の低下を抑制することができるものである。
本発明の炭素繊維は、該炭素繊維軸に垂直な断面に15〜100個の、好ましくは20〜95個の、さらに好ましくは40〜90個の空隙を含む。空隙の数が15個以上であると応力集中が発生しにくく、空隙による弾性率などの物性が低下しにくい。また空隙の数が100個以下であれば空隙による弾性率低下効果を有効に発現する。かかる空隙の数は、任意の5本の炭素繊維単繊維に対して、該炭素繊維軸に垂直な断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により10000〜20000倍に拡大して観察したときに観測される孔の数の平均値を求めることにより評価できる。かかる空隙を形成するためには、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維から気体を発泡させ、耐炎化工程・炭素化工程で空隙構造を固定化する手法を用いることができる。かかる空隙の数を制御するためには、発泡する気体の量とタイミングを制御すれば良い。なお、詳細は後述する。
本発明の炭素繊維は、上述した空隙の平均長径が0.2〜5.0μmであり、好ましくは0.3〜3.0μmであり、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。炭素繊維に含まれる空隙は、空隙周囲の構造に応力集中が起こる欠陥として認識されるものであり、空隙の形状およびサイズが弾性率に重要な影響を与える。かかる平均長径が0.2μm以上であることで空隙数が少なくても空隙量を確保して比重を十分に低減できる。また平均長径が5.0μm以下であることで弾性率を大幅に低下させることなく比重を低減できる。かかる平均長径は、上述したSEMにより観察し、空隙を楕円と近似したときの長軸長さを測定することで評価できる。かかる平均長径を制御するためには、発泡する気体の量を制御すれば良い。
本発明の炭素繊維は、かかる空隙の面積の総和が繊維全体の断面に対して10〜50面積%であり、好ましくは15〜35面積%であり、さらに好ましくは15〜30面積%である。かかる空隙の面積の総和が繊維全体の断面に対して10面積%より大きいと炭素繊維の比重低下の効果を十分に得ることができ、50面積%より少ないと炭素繊維の比弾性率を満足するものとすることができる。空隙の面積の総和は、炭素繊維軸に垂直な断面をSEMにより10000〜20000倍で観察し、その断面積に対して上記の空隙面積の総和の比を画像解析することにより評価できる。本発明で規定される空隙の面積量の総和を得るためには、発泡する気体の量と、生成した炭素繊維断面が変形して空隙が潰れないように耐炎化工程の温度条件を後述する範囲に制御すれば良い。
本発明の炭素繊維は、上述した空隙について、後述の方法で求める平均扁平率が2〜5であり、好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは2〜3である。かかる空隙の平均扁平率が2以上だと繊維内に均一に空隙が分散して比重低下の効果を十分に得ることができ、5以下だと空隙先端付近にかかる応力が分散できる。かかる平均長径は、上述したSEMにより観察し、空隙を楕円と近似したときの長軸と短軸の長さを測定し、その比を計算することで評価できる。かかる平均扁平率を得るためには、発泡する気体の量を制御すれば良い。
本発明の炭素繊維は、繊維軸に垂直な断面において、後述の方法で求める半径の半分の円内にある空隙面積の総和が好ましくは10〜40面積%であり、より好ましくは15〜40面積%であり、更に好ましくは20〜30面積%である。かかる空隙の面積の総和が繊維全体の断面に対して10面積%より大きいと繊維内に均一に空隙が分散して比重低下の効果を十分に得ることができ、40面積%より少ないと繊維表面付近に空隙が集中することなく炭素繊維の比弾性率を満足するものとすることができる。空隙の面積の総和は、炭素繊維軸に垂直な断面をSEMにより10000〜20000倍で観察し、その断面積に対して上記の空隙面積の総和の比を画像解析することにより評価できる。半径の半分の円内に本発明で規定される空隙の面積量の総和を得るためには、上述した耐炎化条件のほかに共重合した発泡ポリマーを繊維中に均一に分散する。規定した空隙の面積量の総和を得るためには発泡する気体の量と、生成した炭素繊維断面が変形して空隙が潰れないように耐炎化工程の温度条件を後述する範囲に制御すれば良い。
次に本発明の炭素繊維の好適な製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維は、共重合成分として脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体を8〜20モル%、好ましくは10〜15モル%含むポリアクリロニトリル系重合体を用いて得たポリアクリロニトリル系前駆体繊維を用いることで好適に得られる。かかるビニル系共重合成分は後述する耐炎化温度で側鎖が脱離することで気体が発生し、繊維内に均一に空隙を生成させることができる。該温度で発泡する成分をポリアクリロニトリル系重合体に混合することも考えられるが、この場合は凝固段階で溶出し、有効に寄与しない懸念がある。脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体の含有量を8モル%より多くすると、耐炎化工程で脱離基を十分に脱離させることができる。また、脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体の含有量が20モル%以下であると、空隙量は適切な範囲内となる。
本発明の炭素繊維の製造方法に用いられるポリアクリロニトリル系重合体の好ましい態様によれば、脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体が、下記の式(1)で示される化合物、または式(2)で示される化合物である。
(式(1)中、XはOR1,OCOR1,SO3R1,NR1R2,Cl,Br,Iのいずれかから選ばれる。ここで、R1およびR2は水素またはアルキル基を表す。)
(式(2)中、XはOR1,OCOR1,SO3R1,NR1R2,Cl,Br,Iのいずれかから選ばれる。ここで、R1およびR2は水素またはアルキル基を表す。)
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造において、用いられるポリアクリロニトリル系重合体は、製糸性向上の観点および、耐炎化処理を効率よく行う観点等から、共重合成分を含むことが好ましい。共重合成分として使用可能な単量体としては、耐炎化を促進する観点から、カルボン酸基またはアミド基を1種以上含有する単量体が好ましく用いられる。例えば、カルボン酸基を含有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩等が挙げられる。また、アミド基を含有する単量体としては、アクリルアミド等が挙げられる。
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造において、用いられるポリアクリロニトリル系重合体は、製糸性向上の観点および、耐炎化処理を効率よく行う観点等から、共重合成分を含むことが好ましい。共重合成分として使用可能な単量体としては、耐炎化を促進する観点から、カルボン酸基またはアミド基を1種以上含有する単量体が好ましく用いられる。例えば、カルボン酸基を含有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩等が挙げられる。また、アミド基を含有する単量体としては、アクリルアミド等が挙げられる。
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造において、用いられるポリアクリロニトリル系重合体の製造方法としては、公知の重合方法の中から選択することができる。
次に、本発明の炭素繊維を得るのに好適なポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法について述べる。
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を製造するにあたり、製糸方法は乾湿式紡糸法および湿式紡糸法のいずれを用いても良い。製糸工程は、紡糸口金から凝固浴にポリアクリロニトリル系重合体溶液を吐出させ紡糸する紡糸工程と、該紡糸工程で得られた繊維を水浴中で洗浄する水洗工程と、該水洗工程で得られた繊維を水浴中で延伸する水浴延伸工程と、該水浴延伸工程で得られた繊維を乾燥する乾燥工程からなり、必要に応じて、該乾燥工程で得られた繊維をスチーム中で延伸するスチーム延伸工程を含むことが好ましい。ポリアクリロニトリル系重合体溶液は、上記したポリアクリロニトリル系重合体を、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド、硝酸・塩化亜鉛・ロダンソーダなどの水溶液等のポリアクリロニトリルが可溶な溶媒に溶解したものであることが好ましい。
前記凝固浴には、紡糸原液の溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記ポリアクリロニトリル系重合体を溶解せず、かつ紡糸溶液に用いる溶媒と相溶性があるものを使用することができる。具体的には、凝固促進成分として水を使用することが好ましい。
前記水洗工程における水洗浴としては、温度が30〜98℃の複数段からなる水洗浴を用いることが好ましい。また、水浴延伸工程における延伸倍率は、2〜6倍であることが好ましい。
水浴延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。かかるシリコーン油剤は、変性されたシリコーンを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有するものを用いることが好ましい。
乾燥熱処理工程は、公知の方法を利用することができる。例えば、乾燥温度は100〜200℃が例示される。
前記した水洗工程、水浴延伸工程、油剤付与工程、乾燥熱処理工程の後、必要に応じ、スチーム延伸を行うことにより、本発明の炭素繊維束を得るのに好適なポリアクリロニトリル系前駆体繊維が得られる。スチーム延伸は、加圧スチーム中において、2〜6倍であることが好ましい。
本発明の炭素繊維は、前記したポリアクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化、予備炭素化、炭素化して得ることができる。炭素繊維の製造において、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の耐炎化は前記した方法により製造されたポリアクリロニトリル系前駆体繊維を、190〜250℃の空気中において熱処理(すなわち、耐炎化処理)することが好ましい。190℃以上なら脱離基とニトリル基を有する単量体成分からの発泡速度が十分に大きく、250℃以下ならポリアクリロニトリル系前駆体繊維が溶融せずに空隙を維持できる。
前記耐炎化工程に引き続いて、予備炭素化工程を行うことが好ましい。予備炭素化工程においては、得られた耐炎化繊維を、不活性雰囲気下、最高温度500〜1000℃において、比重が1.5〜1.8になるまで熱処理(すなわち、予備炭素化処理)することが好ましい。
予備炭素化された繊維を不活性雰囲気下、最高温度1000℃以上において熱処理(すなわち、炭素化処理)する。炭素化工程の温度は、得られる炭素繊維の弾性率を高める観点からは、高い方が好ましいが、高すぎると強度が低下する場合があり、両者を勘案して設定するのがよい。炭素化処理の好ましい最高温度は1200〜2000℃であり、より好ましくは、1200〜1600℃である。
以上のようにして得られた炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられる。生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。液相電解酸化の方法については特に限定はなく、公知の方法で行えばよい。
かかる液相電解酸化処理の後、得られた炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング剤を付与することもできる。サイジング剤には、複合材料に使用されるマトリックス樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明において用いられる各種物性値の測定方法は、次のとおりである。
<空隙数、空隙の平均長径、空隙の平均扁平率および空隙の面積率>
炭素繊維単繊維を5本サンプリングする。この炭素繊維単繊維を穴あき台紙に接着剤を用いて固定する。炭素繊維単繊維を固定した台紙を引張試験機に取り付け、試長25mm、ひずみ速度1mm/分、試料数5で引張試験を行い、炭素繊維の破断面を得る。単繊維の空隙数および空隙の面積率は以下のように求める。まず断面の観察として、引張試験で破断した炭素繊維をSEM試料台にカーボンテープを用いて貼り付ける。このときに破断面が上を向くようにする。加速電圧5.0kV、作動距離8mmの条件で観察する。炭素繊維断面全体が写るようにSEM写真をとり、この写真を紙に印刷する。印刷した紙から炭素繊維断面部を切り取り、重量を測定する。さらにそこから空隙部分を切り取る。なおここで空隙とは炭素繊維断面上の孔で長径が0.1μm以上のものをいう。この切り取った個数を空隙数とする。切り取った空隙を楕円と仮定する。このとき仮定された楕円は、空隙の重心と重なり、空隙の面積と同じで空隙と重なる面積が最も大きいものとする。なお、空隙の紙の重量に対して、同質の紙で単位面積当たりの重量比から、空隙の面積を求める。この仮定された楕円の長径と短径をそれぞれ測定し、長径の平均値を空隙の平均長径とする。また全ての空隙の扁平率を以下の式で計算し、その平均値を空隙の平均扁平率とする。
(空隙の扁平率)=(空隙の長径)/(空隙の短径)。
炭素繊維単繊維を5本サンプリングする。この炭素繊維単繊維を穴あき台紙に接着剤を用いて固定する。炭素繊維単繊維を固定した台紙を引張試験機に取り付け、試長25mm、ひずみ速度1mm/分、試料数5で引張試験を行い、炭素繊維の破断面を得る。単繊維の空隙数および空隙の面積率は以下のように求める。まず断面の観察として、引張試験で破断した炭素繊維をSEM試料台にカーボンテープを用いて貼り付ける。このときに破断面が上を向くようにする。加速電圧5.0kV、作動距離8mmの条件で観察する。炭素繊維断面全体が写るようにSEM写真をとり、この写真を紙に印刷する。印刷した紙から炭素繊維断面部を切り取り、重量を測定する。さらにそこから空隙部分を切り取る。なおここで空隙とは炭素繊維断面上の孔で長径が0.1μm以上のものをいう。この切り取った個数を空隙数とする。切り取った空隙を楕円と仮定する。このとき仮定された楕円は、空隙の重心と重なり、空隙の面積と同じで空隙と重なる面積が最も大きいものとする。なお、空隙の紙の重量に対して、同質の紙で単位面積当たりの重量比から、空隙の面積を求める。この仮定された楕円の長径と短径をそれぞれ測定し、長径の平均値を空隙の平均長径とする。また全ての空隙の扁平率を以下の式で計算し、その平均値を空隙の平均扁平率とする。
(空隙の扁平率)=(空隙の長径)/(空隙の短径)。
この空隙部分の紙の重量の総計を測定し、先に測定した炭素繊維断面部の紙の重量を用いて空隙の面積率および炭素繊維の実面積率を以下の式で求める。
(空隙の面積率)=(空隙部分の紙の重量の総計)/(炭素繊維断面の紙の重量)
(炭素繊維の実面積率)=1−(空隙の面積率)。
(空隙の面積率)=(空隙部分の紙の重量の総計)/(炭素繊維断面の紙の重量)
(炭素繊維の実面積率)=1−(空隙の面積率)。
<炭素繊維断面の半径の半分の円内の空隙の面積率>
上述のSEM写真を紙に印刷する。次に繊維断面を円と仮定してその半径の半分の円のところを切り取り、重量を測定する。このとき仮定された円は、繊維断面の重心と重なり、繊維断面の面積と同じで繊維断面と重なる面積が最も大きいものとする。さらにそこから空隙部分を切り取る。切り取った空隙を上記と同様に楕円だと仮定してその長径をそれぞれ測定し、その平均値を空隙の平均長径とする。この空隙部分の紙の重量の総計を測定し、炭素繊維断面部の重量を用いて空隙の面積率および炭素繊維の実面積率を以下の式で求める。
(空隙の面積率)=(空隙部分の紙の重量の総計)/(炭素繊維断面の紙の重量)
(炭素繊維の実面積率)=1−(空隙の面積率)。
上述のSEM写真を紙に印刷する。次に繊維断面を円と仮定してその半径の半分の円のところを切り取り、重量を測定する。このとき仮定された円は、繊維断面の重心と重なり、繊維断面の面積と同じで繊維断面と重なる面積が最も大きいものとする。さらにそこから空隙部分を切り取る。切り取った空隙を上記と同様に楕円だと仮定してその長径をそれぞれ測定し、その平均値を空隙の平均長径とする。この空隙部分の紙の重量の総計を測定し、炭素繊維断面部の重量を用いて空隙の面積率および炭素繊維の実面積率を以下の式で求める。
(空隙の面積率)=(空隙部分の紙の重量の総計)/(炭素繊維断面の紙の重量)
(炭素繊維の実面積率)=1−(空隙の面積率)。
<炭素繊維弾性率の測定>
炭素繊維の単繊維弾性率は、JIS R7606(2000年)に準じ、以下の通りにして求める。炭素繊維単繊維を5本サンプリングする。サンプリングした単糸は、穴あき台紙に接着剤を用いて固定する。単糸を固定した台紙を引張試験機に取り付け、ゲージ長25mm、ひずみ速度1mm/分で引張試験をおこなう。弾性率は以下の式で定義される。
(弾性率)=(得られる強力)/(空隙を除いた単繊維の断面積×得られる伸度)
空隙を除いた単繊維の断面積は、上記のSEM観察により得られる空隙も含めた炭素繊維断面部の紙の重量に対して、同質の紙で単位面積当たりの重量比から求める。
炭素繊維の単繊維弾性率は、JIS R7606(2000年)に準じ、以下の通りにして求める。炭素繊維単繊維を5本サンプリングする。サンプリングした単糸は、穴あき台紙に接着剤を用いて固定する。単糸を固定した台紙を引張試験機に取り付け、ゲージ長25mm、ひずみ速度1mm/分で引張試験をおこなう。弾性率は以下の式で定義される。
(弾性率)=(得られる強力)/(空隙を除いた単繊維の断面積×得られる伸度)
空隙を除いた単繊維の断面積は、上記のSEM観察により得られる空隙も含めた炭素繊維断面部の紙の重量に対して、同質の紙で単位面積当たりの重量比から求める。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜2、比較例1〜6)
アクリロニトリルと、表1に示した共重合成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として表1に示す共重合組成比となるようにラジカル重合し、濃度20質量%のポリアクリロニトリル系重合体溶液を得た。得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を孔数6000の紡糸口金を用い、湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗した後、90℃の温水中で3倍に延伸し、さらにシリコーン系油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、180℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行った後、加圧スチーム中で5倍に延伸することで、単繊維繊度が1.0dtex、フィラメント数が6000のポリアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。次に表1に示す耐炎化温度および耐炎化時間の条件を用いて、空気雰囲気のオーブン中でポリアクリロニトリル系前駆体繊維を延伸比1で延伸しながら耐炎化処理した。得られた耐炎化繊維を、最高温度800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維を得た。得られた予備炭素化繊維を、窒素雰囲気中において、最高温度1300℃で炭素化処理を行った。比較例1および2のポリアクリロニトリル系前駆体繊維は、耐炎化中に発熱暴走して破断してしまい、耐炎化繊維を得られなかった。比較例4〜6では炭素繊維に空隙が生成していなかった。比較例3では炭化途中で糸切れが発生した。
アクリロニトリルと、表1に示した共重合成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として表1に示す共重合組成比となるようにラジカル重合し、濃度20質量%のポリアクリロニトリル系重合体溶液を得た。得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を孔数6000の紡糸口金を用い、湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗した後、90℃の温水中で3倍に延伸し、さらにシリコーン系油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、180℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行った後、加圧スチーム中で5倍に延伸することで、単繊維繊度が1.0dtex、フィラメント数が6000のポリアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。次に表1に示す耐炎化温度および耐炎化時間の条件を用いて、空気雰囲気のオーブン中でポリアクリロニトリル系前駆体繊維を延伸比1で延伸しながら耐炎化処理した。得られた耐炎化繊維を、最高温度800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維を得た。得られた予備炭素化繊維を、窒素雰囲気中において、最高温度1300℃で炭素化処理を行った。比較例1および2のポリアクリロニトリル系前駆体繊維は、耐炎化中に発熱暴走して破断してしまい、耐炎化繊維を得られなかった。比較例4〜6では炭素繊維に空隙が生成していなかった。比較例3では炭化途中で糸切れが発生した。
本発明の炭素繊維は、従来の炭素繊維よりも比重を低くすることができるため、自動車や風車ブレードなどの産業用途に好適である。
Claims (5)
- 繊維軸に垂直な断面において15〜100個の空隙を含み、その平均長径が0.2〜5.0μmであり、面積の総和が繊維全体の断面に対し10〜50面積%であるポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 繊維軸に垂直な断面において、その半径の半分の円内にある空隙面積の総和が10〜40面積%である、請求項1に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 空隙の平均扁平率が2〜5である、請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体を8〜20モル%共重合したポリアクリロニトリル系重合体を用いてポリアクリロニトリル系前駆体繊維を得て、該ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を空気中で190〜250℃で熱処理し、不活性雰囲気下、最高温度500〜1000℃で熱処理した後に、不活性雰囲気下、最高温度1000℃以上で熱処理するポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- 脱離基とニトリル基を有するビニル系単量体が、下記の式(1)で示される化合物、または式(2)で示される化合物である、請求項4に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
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JP2016014036A JP2017133123A (ja) | 2016-01-28 | 2016-01-28 | 炭素繊維およびその製造方法 |
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