JP2017131899A - ハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置 - Google Patents

ハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ハット形鋼矢板の先端部のサイドロールへの噛み込み不良が起こりにくいハット形鋼矢板の矯正方法を提供する。【解決手段】ロール面42を継手部14の外端に接触させて継手部14を幅方向外側から拘束するサイドロール40を、下側ロール30a、30b、30cの幅方向両外側にそれぞれ配する。対向するサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔を、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定する。上側ロール20a、20b、20c、20dのロール面22と下側ロール30a、30b、30c、30d、30eのロール面32との間にウェブ部11、両フランジ部12、12、及び両腕部13、13を挟み、且つ、対向するサイドロール40、40で両継手部14、14を幅方向外側から挟むように、ハット形鋼矢板10を通材路に通す。【選択図】図2

Description

本発明は、ハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置に関する。
鋼矢板は、土木工事の大型化や新工法の開発により、種々の断面形状を有するものが開発されており、フランジ部の先端に継手部を直接設けたU形鋼矢板(図示せず)と、フランジ部102と継手部104との間に腕部103を設けたハット形鋼矢板100(図9を参照)に大別される。図9に示すようなハット形鋼矢板100においては、左右の継手部104の外縁間の距離Wを全幅と呼ぶ。
U形鋼矢板やハット形鋼矢板は、例えば熱間圧延により製造されるが、フランジ部とウェブ部の板厚差による圧延終了温度の相違から、圧延・冷却後に長手方向に変形が生じる場合があった。例えば、図10に示すような、ウェブ部101側を内側にして湾曲する上反りと呼ばれる変形や、図11に示すような、腕部103側を内側にして湾曲する下反りと呼ばれる変形が生じる場合があった。
このような反りを除去し、まっすぐな製品とするため、一般には製品出荷前に冷間矯正が行われる。例えば、特許文献1〜3には、反りが発生したハット形鋼矢板のウェブ部、フランジ部、及び腕部を上下両面側からロールで拘束し、ハット形鋼矢板が部分的に塑性変形する程度の力を上下交互に加え曲げ・曲げ戻しを繰り返し行って、反りを除去するローラー矯正方法が開示されている。
ここで、反りの矯正に使用するロールは、例えば図12に示すように、ハット形鋼矢板100の通材路(パスライン)を挟んで上下交互に配置されており、ハット形鋼矢板100の通材方向に沿って上下に千鳥状に配列されている。そして、複数の上側ロール200(200a〜200d)と複数の下側ロール300(300a〜300e)は、各上側ロール200a〜200dの外周面の最下端が各下側ロール300a〜300eの外周面の最上端よりも下側に位置するように配置されているので、上下方向に波形の通材路が上側ロール200a〜200dと下側ロール300a〜300eとの間に形成される。
この通材路に、上側ロール200a〜200dと下側ロール300a〜300eの間にウェブ部101、フランジ部102、及び腕部103を挟むようにしてハット形鋼矢板100を通材すれば、ハット形鋼矢板100は上側ロール200a〜200dと下側ロール300a〜300eの各ロール間で3点支持され、ハット形鋼矢板100に対して上下方向の曲げ・曲げ戻しが交互に繰り返し行われ、反りが緩和される。
上側ロール200と下側ロール300の断面形状は、図13に示す通りである。すなわち、上側ロール200と下側ロール300は、ウェブ部101、フランジ部102、及び腕部103を一体的に拘束するような断面形状を有する。
さらに、継手部104を外側から拘束するサイドロール400が、下側ロール300の外側に設けられている。ハット形鋼矢板100の曲げ・曲げ戻しを繰り返し行う際に、サイドロール400が継手部104を外側から拘束するため、ハット形鋼矢板100の全幅が拡がることが防止されるようになっている。
特開平09−94614号公報 特開2007−30001号公報 特開2005−279656号公報
しかしながら、特許文献1〜3に開示の技術では、対向する左右のサイドロール400の間隔が適正値に設定されない場合があり、ハット形鋼矢板100の先端部のサイドロール400への噛み込み不良が起こりやすいという問題があった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、ハット形鋼矢板の先端部のサイドロールへの噛み込み不良が起こりにくいハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係るハット形鋼矢板の矯正方法は、ウェブ部と、ウェブ部の幅方向両端からそれぞれ屈曲して延びるフランジ部と、両フランジ部のウェブ部に接続する側とは反対側の端部からウェブ部と平行をなして幅方向外側にそれぞれ延びる腕部と、両腕部のフランジ部に接続する側とは反対側の端部にそれぞれ設けられた継手部と、を備えるハット形鋼矢板の矯正方法であって、ハット形鋼矢板の凸状の外面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を外面に接触させてウェブ部、両フランジ部、及び両腕部を外面側から拘束する外側ロールと、ハット形鋼矢板の凹状の内面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を内面に接触させてウェブ部、両フランジ部、及び両腕部を内面側から拘束する内側ロールとを、ハット形鋼矢板の通材路を挟んで交互に配して千鳥状に並べるとともに、ロール面を継手部の先端に接触させて継手部を幅方向外側から拘束するサイドロールを、各内側ロールの幅方向両外側にそれぞれ配して、対向するサイドロールのロール面間の幅方向間隔を、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定し、外側ロールのロール面と内側ロールのロール面との間にウェブ部、両フランジ部、及び両腕部を挟み、且つ、対向するサイドロールのロール面で両継手部を幅方向外側から挟むように、ハット形鋼矢板を通材路に通すことにより、ウェブ部、両フランジ部、及び両腕部に対して内外方向の曲げ及び曲げ戻しを交互に繰り返し行ってハット形鋼矢板の反りを矯正するとともに、ハット形鋼矢板の幅を小さくすることを要旨とする。
また、本発明の他の態様に係る矯正装置は、ウェブ部と、ウェブ部の幅方向両端からそれぞれ屈曲して延びるフランジ部と、両フランジ部のウェブ部に接続する側とは反対側の端部からウェブ部と平行をなして幅方向外側にそれぞれ延びる腕部と、両腕部のフランジ部に接続する側とは反対側の端部にそれぞれ設けられた継手部と、を備え、ハット形鋼矢板の反りを矯正するとともに幅を小さくする矯正装置であって、ハット形鋼矢板の凸状の外面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を外面に接触させてウェブ部、両フランジ部、及び両腕部を外面側から拘束する外側ロールと、ハット形鋼矢板の凹状の内面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を内面に接触させてウェブ部、両フランジ部、及び両腕部を内面側から拘束する内側ロールとを、備え、外側ロールと内側ロールはハット形鋼矢板の通材路を挟んで交互に配されて千鳥状に並べられているとともに、ロール面を継手部の外端に接触させて継手部を幅方向外側から拘束するサイドロールが、各内側ロールの幅方向両外側にそれぞれ配されており、対向するサイドロールのロール面間の幅方向間隔が、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定されていることを要旨とする。
本発明によれば、ハット形鋼矢板の先端部のサイドロールへの噛み込み不良が起こりにくい。
本発明に係るハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置の一実施形態を説明する図であり、ロールの配置を示す図である。 本発明に係るハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置の一実施形態を説明する図であり、上側ロール、下側ロール、及びサイドロールの形状を示す正面図(通材路の上流側から見た図)である。 サイドロールのロール面の形状を示す部分拡大図である。 実施例及び比較例の矯正前後のハット形鋼矢板の全幅分布を示すグラフである。 事前調査に用いたローラー矯正装置におけるロール配置を示す図である。 事前調査に用いたローラー矯正装置の上側ロール及び下側ロールの形状を示す正面図(通材路の上流側から見た図)である。 第1の事前調査の結果を示すグラフである。 第2の事前調査の結果を示すグラフである。 ハット形鋼矢板の断面形状を示す図である。 ハット形鋼矢板の上反りを説明する図である。 ハット形鋼矢板の下反りを説明する図である。 従来のローラー矯正装置におけるロール配置を示す図である。 従来のローラー矯正装置の上側ロール、下側ロール、及びサイドロールの断面形状を示す図である。
まず、JIS規格10Hのハット形鋼矢板について、従来のローラー矯正装置を用いた矯正方法により矯正を行い、矯正によるハット形鋼矢板の全幅の変化について事前調査を行った。事前調査に用いたローラー矯正装置は、継手部を外側から拘束するサイドロールを備えていない点を除いては図12、13に示したものと同様のものであり、図5に示すように、4軸の上側ロール200(#2ロール、#4ロール、#6ロール、#8ロール)と5軸の下側ロール300(#1ロール、#3ロール、#5ロール、#7ロール、#9ロール)の合計9軸のロールが、ハット形鋼矢板100の通材路を挟んで交互に配されて上下に千鳥状に並べられている。
また、事前調査に用いたローラー矯正装置の上側ロール200及び下側ロール300は、図6に示すように、ハット形鋼矢板100のウェブ部101を中心に圧下するウェブ圧下ロールと、腕部103を中心に圧下する腕部圧下ロールとが組み込まれたものであり、上側ロール200と下側ロール300は、ウェブ部101、フランジ部102、及び腕部103を一体的に拘束するような断面形状を有する。
まず、第1の事前調査として、反りを有するハット形鋼矢板100を図5、6に示すローラー矯正装置に通材させて矯正を行い、ハット形鋼矢板100の長手方向先端部が最終ロールである#9ロールを通過したときに矯正を停止し、そのときの各ロール出側でのハット形鋼矢板100の全幅寸法(すなわち、ハット形鋼矢板100の各長手方向部位の全幅寸法)を測定した。この事前調査は、矯正の定常部と扱える長手方向部位でのハット形鋼矢板100の全幅の変化を調べる調査である。
第1の事前調査の結果を図7に示す。上側ロール200(#2ロール、#4ロール、#6ロール、#8ロール)で圧下されている長手方向部位の全幅は、下側ロール300(#1ロール、#3ロール、#5ロール、#7ロール、#9ロール)で圧下されている長手方向部位の全幅よりも小さく(すなわち、上側ロール200での圧下により全幅が縮められている)、全体としてはハット形鋼矢板100の全幅は長手方向にジグザグに変化していっている。
次に、第2の事前調査として、反りを有するハット形鋼矢板100を図5、6に示すローラー矯正装置に通材させて矯正を行い、ハット形鋼矢板100の長手方向先端部が各ロールを通過する都度、通材を逐次一旦停止し、そのときの各ロール出側でのハット形鋼矢板100の長手方向先端部の全幅寸法を逐次測定した。この事前調査は、矯正の非定常部となる長手方向先端部の全幅が矯正途中にどのように変化していくのかを調べる調査である。
第2の事前調査の結果を図8に示す。上側ロール200(#2ロール、#4ロール、#6ロール、#8ロール)で圧下された時には、ハット形鋼矢板100の長手方向先端部の全幅は縮まり、下側ロール300(#1ロール、#3ロール、#5ロール、#7ロール、#9ロール)で圧下された時には、直前の上側ロール200で圧下された時の全幅よりも拡がっていることが分かる。そして、矯正前のハット形鋼矢板100の長手方向先端部の全幅は約945mmであったが、各ロールで圧下することによってジグザグ状に変化し、最終的な矯正後は936mmとなった。
第1、第2の事前調査ともに、矯正途中における全幅の変化の傾向は同様であったが、長手方向先端部の方が全幅の変動量が大きく、全幅の絶対値も大きめであった。
図12、13に示したサイドロールを有するローラー矯正装置を用いて矯正を行う場合には、矯正中のハット形鋼矢板の長手方向先端部の全幅の変化と、ハット形鋼矢板のサイドロールへの噛み込み性とを考慮して、サイドロールの形状と拘束量(対向するサイドロールのロール面間の幅方向間隔)を決定する必要がある。すなわち、サイドロールのロール面間の幅方向間隔が狭すぎると拘束量が過多となって、ハット形鋼矢板の長手方向先端部がサイドロールに噛み込みにくくなり、継手部やフランジ部に変形が生じたり、ハット形鋼矢板の先端面に当て疵が生じたりする問題が発生する。一方、サイドロールのロール面間の幅方向間隔が広すぎると、ハット形鋼矢板を十分に拘束することができない。
また、上側ロール及び下側ロールでのハット形鋼矢板の外面及び内面の拘束によって定常部の矯正効果を向上させるためには、定常部についても、矯正中のハット形鋼矢板の各長手方向部位での全幅の差異も考慮してサイドロールでの拘束量を調整する必要がある。このとき、拘束量が過多であると、継手部の変形やフランジ部の折れ曲がり変形などが生じ、逆に拘束量が足りないと矯正効果の向上が見込めない。
本実施形態のハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置は、第1及び第2の事前調査の結果並びに上記のような事情を元になされたものである。本実施形態のハット形鋼矢板の矯正方法及び矯正装置について、以下に詳細に説明する。
ハット形鋼矢板10は、図2に示すように、ウェブ部11と、ウェブ部11の幅方向両端からそれぞれ屈曲してウェブ部11の一方の主面側に延びる2つのフランジ部12、12と、両フランジ部12、12のウェブ部11に接続する側とは反対側の端部からウェブ部11と平行をなして幅方向外側にそれぞれ延びる腕部13、13と、両腕部13、13のフランジ部12に接続する側とは反対側の端部にそれぞれ設けられた継手部14、14と、を備えている。
熱間圧延により製造されたハット形鋼矢板10は、圧延・冷却後に反りが生じている場合があるので、反りを緩和・除去する必要がある。また、熱間圧延により製造されたハット形鋼矢板10の幅(両継手部14、14の外縁間の幅方向距離であり、以下「全幅」と記すこともある)は目的の製品幅よりも大きい場合があるので、幅を小さくする必要がある場合がある。
そこで、ハット形鋼矢板10を製造する製造設備中に、図1、2に示すローラー矯正装置を設置し、製造設備の搬送ライン(図示せず)によってハット形鋼矢板10をローラー矯正装置に導入して、冷間矯正によりハット形鋼矢板10の反りを緩和・除去するとともに幅を調整するようになっている。そして、反りが緩和・除去されるとともに幅が目的の製品幅に調整されて所望の形状の製品とされたハット形鋼矢板10は、搬送ラインによって検査工程、出荷工程に搬送されるようになっている。
ここで、図1、2のローラー矯正装置について詳細に説明する。このローラー矯正装置は、互いに平行をなしてハット形鋼矢板10の通材方向の上流側から下流側へ一列に並ぶ複数のロールからなるロール列20、30を、ハット形鋼矢板10の通材路を挟んで上下に2列備えている。図1の例では、上側のロール列20は4軸の上側ロール20a、20b、20c、20dを有しており、下側のロール列30は5軸の下側ロール30a、30b、30c、30d、30eを有しているが、ロールの数は特に限定されるものではない。ただし、ウェブ部11に3回以上繰り返して曲げが行われるような数とすることが好ましいので、2列のロール列20、30のロールの合計数は5軸以上とすることが好ましい。
これら2列のロール列20、30は、図1に示すように、各ロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eの並び方向位置が互いにずれた状態で対向配置されている。すなわち、ロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eをその回転軸方向端部側から見ると、上側ロール20a、20b、20c、20dと下側ロール30a、30b、30c、30d、30eとが通材路を挟んで上下交互に配されており、ロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eは全体としてハット形鋼矢板10の通材方向に沿って上下に千鳥状に並べられている。
上側ロール20a、20b、20c、20dは、ハット形鋼矢板10の上面10a(すなわち、ハット形鋼矢板10の凸状の外面(図2を参照))に沿う形状のロール面22を有しており、該ロール面22を上面10aに接触させてウェブ部11、両フランジ部12、12、及び両腕部13、13を上面10a側から拘束することができるようになっている。すなわち、上側ロール20a、20b、20c、20dが、本発明の構成要件である外側ロールに相当する。
また、下側ロール30a、30b、30c、30d、30eは、ハット形鋼矢板10の下面10b(すなわち、ハット形鋼矢板10の凹状の内面(図2を参照))に沿う形状のロール面32を有しており、該ロール面32を下面10bに接触させてウェブ部11、両フランジ部12、12、及び両腕部13、13を下面10b側から拘束することができるようになっている。すなわち、下側ロール30a、30b、30c、30d、30eが、本発明の構成要件である内側ロールに相当する。
さらに、これら2列のロール列20、30は、図1から分かるように、各上側ロール20a、20b、20c、20dのロール面22の最下端が、各下側ロール30a、30b、30c、30d、30eのロール面32の最上端よりも下側に位置するように配置されている。よって、これらロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eにより、ハット形鋼矢板10が通される通材路が2列のロール列20、30の間に上下方向に波形に形成されている。
さらに、図2から分かるように、継手部14、14を幅方向外側から拘束するサイドロール40、40が、下側ロール30a、30b、30cの幅方向両外側にそれぞれ配されている。このサイドロール40は、ロール面42を有しており、ロール面42を継手部14の外端(ハット形鋼矢板10の幅方向外側の端部)に接触させて継手部14を幅方向外側から拘束することができるようになっている。なお、サイドロール40は、下側ロール30a、30b、30cと一体の部材でもよいし、別体の部材でもよい。
そして、1軸の下側ロールに配されて対向する一対のサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hは、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定されている。すなわち、下側ロール30aに配されたサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hよりも、下側ロール30bに配されたサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hの方が小さく設定されており、下側ロール30cに配されたサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hが最も小さく設定されている。なお、対向する一対のサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hとは、ロール面42、42とハット形鋼矢板10の継手部14、14との接触点間の幅方向距離を意味する。
このようなローラー矯正装置に、ハット形鋼矢板10の長手方向がロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eの並び方向に沿うように、ハット形鋼矢板10を通材する。すなわち、上側ロール20a、20b、20c、20dのロール面22と下側ロール30a、30b、30c、30d、30eのロール面32との間にウェブ部11、フランジ部12、12、及び腕部13、13を挟み、且つ、対向するサイドロール40、40のロール面42、42で両継手部14、14を幅方向外側から挟むように、ハット形鋼矢板10を上下方向に波形の通材路に通す。
すると、ハット形鋼矢板10は上側ロール20a、20b、20c、20dと下側ロール30a、30b、30c、30d、30eの各ロール間で3点支持されるので、ハット形鋼矢板10のウェブ部11、フランジ部12、12、及び腕部13、13に曲げが行われる。そして、ハット形鋼矢板10を通材路の下流側に移動させることにより、ウェブ部11、フランジ部12、12、及び腕部13、13に対して上下方向(本発明の構成要件である内外方向に相当する)の曲げ及び曲げ戻しが交互に繰り返し行われるため、ハット形鋼矢板10の反りが緩和されるとともに、ハット形鋼矢板10の全幅が小さく調整され、目的の製品幅とされる。ハット形鋼矢板10の全幅が大きくなるように矯正することも可能であるが、そのようにすると反りの矯正効果が低下するという不都合が生じるおそれがある。
また、対向するサイドロール40、40のロール面42、42で両継手部14、14が幅方向外側から拘束されているため、下側ロール30a、30b、30cで圧下される際に、ハット形鋼矢板10が拡がって全幅が大きくなることがサイドロール40、40で抑えられる。
両継手部14、14を幅方向外側から拘束せずに矯正を行うと、ハット形鋼矢板10が拡がってしまうため、ハット形鋼矢板10の曲げが十分に行われず、反りの矯正が不十分となるおそれがあるが、サイドロール40、40によってハット形鋼矢板10の拡がりを抑えれば、ハット形鋼矢板10の曲げ変形が十分に行われるので、圧下力が反り矯正に効率良く使用されて、反りの矯正が十分に行われやすい。
さらに、ハット形鋼矢板10の拡がりを抑えつつ下側ロール30a、30b、30cで圧下すると、継手部14及びその近傍部分に歪みが入りやすいので、圧下力が継手部14にまで伝わりやすい。その結果、継手部14の反り量の小さいハット形鋼矢板10が得られやすいことに加えて、両継手部14、14の反り量の差が小さいバランスの取れた形状のハット形鋼矢板10が得られやすい。
さらに、対向するサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hが、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定されているので、ハット形鋼矢板10のサイドロール40、40への噛み込み性が良好である。よって、継手部14、フランジ部12等の各部位に異常な変形(例えば、折れ曲がりや全幅の拡がり)が生じたり、ハット形鋼矢板10の先端面に当て疵が生じたりすることが抑制される。これは、前述した第1及び第2の事前調査の結果から明らかなように、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって全幅を小さくするよう矯正することで、特定のロールでの過度の変形や噛み込み不良を防止しつつ、効率的に全幅を矯正するためである。
ここで、サイドロール40のロール面42について詳細に説明する。サイドロール40のロール面42は、図2の破線で囲んだ部分の拡大図である図3に示すように、対向するサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hが内外方向の内側から外側へ行くにしたがって大きくなるように傾斜する平面とすることが好ましい。なお、これ以降においては、ロール面42の内外方向に対する傾斜角度を「抜け勾配」と記す。
サイドロール40のロール面42を、図12、13に示した従来のローラー矯正装置と同様に、対向するサイドロール40、40のロール面42、42間の幅方向間隔Hが一定であるような平面(傾斜しておらず内外方向に沿う平面)とすることもできるが、抜け勾配を設ければ、ハット形鋼矢板10の先端部のサイドロール40、40への噛み込み性が良好となる。ロール面42の抜け勾配の大きさは特に限定されるものではないが、2%以上15%以下とすることができる。特に、矯正前のハット形鋼矢板10は形状にばらつきがあり全幅もばらついているので、通材路の上流側のサイドロール40においては、ロール面42の抜け勾配を大きめに設定することが好ましい。
通材路の下流側のサイドロール40においては、ハット形鋼矢板10の形状はある程度矯正されており全幅のばらつきも小さくなっているので、ロール面42の抜け勾配は小さめに設定することができる。すなわち、ロール面42の抜け勾配は、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定することができる。通材路の下流側のサイドロール40においてロール面42の抜け勾配を小さく設定することにより、ハット形鋼矢板10が矯正により断面内変形を起こしている場合(下側ロールでの圧下によって腕部がウェブ部側に曲がる場合がある)にも、全幅の矯正をより行いやすくなる。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
例えば、本発明を適用できるハット形鋼矢板のサイズは特に限定されるものではなく、大型や小型など、あらゆるサイズのハット形鋼矢板に対して適用可能である。例えば、JIS規格10Hのハット形鋼矢板に限らず、JIS規格25Hのハット形鋼矢板に対しても適用可能である。
また、本実施形態においては、5軸の下側ロール30a、30b、30c、30d、30eのうち3軸の下側ロール30a、30b、30cにサイドロール40、40がそれぞれ配されていたが、全ての下側ロールのうち2軸以上にサイドロール40、40が配されていれば、サイドロール40、40が配される下側ロールの数は特に限定されるものではない。サイドロール40、40が配された下側ロールが1軸のみであると、ハット形鋼矢板10の定常部についての全幅の矯正効果や継手部14、14の反りの矯正効果が不十分となるおそれがある。
さらに、サイドロール40、40が配された下側ロールは、通材方向に連続して配置する必要はなく、サイドロール40、40が配された2軸の下側ロールの間にサイドロール40、40が配されていない下側ロールを配置してもよい。例えば、サイドロール40、40を、下側ロール30a、30c、30dに配し、下側ロール30b、30eには配しない構成としてもよい。
さらに、各ロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eは、それぞれ一対のロール部材からなっている。すなわち、図2から分かるように、ハット形鋼矢板10のウェブ部11の幅方向端部側部分、フランジ部12、及び腕部13に接触するロール面22を有する2つのロール部材が、ハット形鋼矢板10の幅方向に間隔をおいて配置されている。ただし、各ロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eは、一体的な部材でもよい。また逆に、各ロール20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、30eは、例えば、主にウェブ部11を圧下する部分と、主に腕部13を圧下する部分とで分けた部材とすることもできる。
さらに、本実施形態においては、水平をなしたウェブ部11からフランジ部12、12が略下方に向かって延びる姿勢のハット形鋼矢板10に矯正を施す例を示して説明したが、矯正を施す際のハット形鋼矢板10の姿勢は特に限定されるものではなく、水平をなしたウェブ部11からフランジ部12、12が略上方に向かって延びる姿勢とすることもできるし、あるいは、鉛直をなしたウェブ部11からフランジ部12、12が略側方に向かって延びる姿勢とすることもできる。
さらに、本実施形態においては、ローラー矯正装置をハット形鋼矢板の製造設備中に設置した例を説明したが、ハット形鋼矢板の製造設備外においてローラー矯正装置を使用することも可能である。
さらに、サイドロール40のロール面42は、継手部14、14を幅方向外側から拘束することができるならば、平面に限らず、凹面、凸面等の曲面とすることもできる。
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。図1、2に示すローラー矯正装置とほぼ同様の構成の、4軸の上側ロールと5軸の下側ロールを備えるローラー矯正装置を用いて、熱間圧延で成形され冷却されたハット形鋼矢板の反りを矯正するとともに幅を縮小した。そして、矯正前後のハット形鋼矢板の全幅の変化と、反りの状態と、ハット形鋼矢板の異常変形や疵発生の有無を調査した。ハット形鋼矢板としては、JIS規格10Hのハット形鋼矢板(長さ10m)を用いた。矯正前のハット形鋼矢板の全幅は、定常部では941mm、非定常部(先後端部)では945mmである。
ローラー矯正装置についてさらに詳述すると、通材路の上流側から第一番目、第二番目、第三番目の下側ロールにはサイドロールが配されており、上流側から第四番目、第五番目の下側ロールにはサイドロールは配されていない。
実施例においては、対向する一対のサイドロールのロール面間の幅方向間隔Hは、通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定した。具体的には、ロール面間の幅方向間隔Hは、上流側から第一番目の下側ロールに配されたサイドロールでは938mm、上流側から第二番目の下側ロールに配されたサイドロールでは936mm、上流側から第三番目の下側ロールに配されたサイドロールでは934mmに設定した。
また、実施例においては、サイドロールのロール面の抜け勾配は、上流側から第一番目の下側ロールに配されたサイドロールでは12%、上流側から第二番目の下側ロールに配されたサイドロールでは8%、上流側から第三番目の下側ロールに配されたサイドロールでは4%に設定した。
一方、比較例においては、対向する一対のサイドロールのロール面間の幅方向間隔Hは一定に設定した。具体的には、上流側から第一番目、第二番目、第三番目の下側ロールに配されたサイドロールいずれにおいても934mmに設定した。また、サイドロールのロール面の抜け勾配は、上流側から第一番目、第二番目、第三番目の下側ロールに配されたサイドロールいずれにおいても0%に設定した。
また、下側ロールの圧下量(インターメッシュ量)は、上流側から第一番目の下側ロールでは6mm、上流側から第二番目の下側ロールでは15mm、上流側から第三番目の下側ロールでは15mm、上流側から第四番目の下側ロールでは9mm、上流側から第五番目の下側ロールでは5mmとした。圧下量は実施例と比較例で同一である。なお、下側ロールの圧下量は、ローラー矯正装置のパスライン高さから上方に何mmロールを上げているかを示す量である。このローラー矯正装置は、下側ロールで圧下調整を行う機構になっており、上側ロールの高さ方向位置は一定である。
矯正の結果を図4に示す。図4の(a)は実施例の矯正結果であり、(b)は比較例の矯正結果であり、矯正前後のハット形鋼矢板の各長手方向部位の全幅を示すグラフである。各グラフの横軸の0mはハット形鋼矢板の先端を意味し、2mは先端から2mの長手方向部位を示し、10mは後端を示す。
実施例では、矯正後のハット形鋼矢板の全幅は長手方向全長において935mm以上936mm以下の範囲内となっており、目標寸法である935mmとほぼ一致していた。また、左右の継手部の反りについては、反りの目標範囲は±5mm/製品長10mであるが、右継手部で1.0mm/製品長10m、左継手部で2.0mm/製品長10mと良好であった。さらに、継手部やフランジ部には特段の変形はなく、良好な形状の製品が得られた。さらに、矯正後のハット形鋼矢板の先端面に当て疵はなかった。
これに対して比較例では、矯正後のハット形鋼矢板の先端部の全幅が930mm未満となり、目標寸法である935mmよりも5mm以上小さかった。そのため、ローラー矯正の後にプレス矯正により全幅を修正する必要性が生じた。左右の継手部の反りについては、右継手部で−3.0mm/製品長10m(マイナス符号は下反りを意味する)、左継手部で4.0mm/製品長10mであり、目標範囲には入っているが、実施例よりも劣る結果となった。さらに、矯正後のハット形鋼矢板の先端部の左継手部について、レベラーロールの噛み込み時に発生した疵が残存しており、この部分の変形も見られた。そのため、この製品については、先端部を切り捨てる必要性が生じた。
10 ハット形鋼矢板
10a 上面
10b 下面
11 ウェブ部
12 フランジ部
13 腕部
14 継手部
20 上側のロール列
20a、20b、20c、20d 上側ロール(外側ロール)
22 ロール面
30 下側のロール列
30a、30b、30c、30d、30e 下側ロール(内側ロール)
32 ロール面
40 サイドロール
42 ロール面

Claims (4)

  1. ウェブ部と、前記ウェブ部の幅方向両端からそれぞれ屈曲して延びるフランジ部と、前記両フランジ部の前記ウェブ部に接続する側とは反対側の端部から前記ウェブ部と平行をなして幅方向外側にそれぞれ延びる腕部と、前記両腕部の前記フランジ部に接続する側とは反対側の端部にそれぞれ設けられた継手部と、を備えるハット形鋼矢板の矯正方法であって、
    前記ハット形鋼矢板の凸状の外面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を前記外面に接触させて前記ウェブ部、前記両フランジ部、及び前記両腕部を前記外面側から拘束する外側ロールと、前記ハット形鋼矢板の凹状の内面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を前記内面に接触させて前記ウェブ部、前記両フランジ部、及び前記両腕部を前記内面側から拘束する内側ロールとを、前記ハット形鋼矢板の通材路を挟んで交互に配して千鳥状に並べるとともに、
    ロール面を前記継手部の外端に接触させて前記継手部を幅方向外側から拘束するサイドロールを、前記各内側ロールの幅方向両外側にそれぞれ配して、対向する前記サイドロールのロール面間の幅方向間隔を、前記通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定し、
    前記外側ロールのロール面と前記内側ロールのロール面との間に前記ウェブ部、前記両フランジ部、及び前記両腕部を挟み、且つ、対向する前記サイドロールのロール面で前記両継手部を幅方向外側から挟むように、前記ハット形鋼矢板を前記通材路に通すことにより、前記ウェブ部、前記両フランジ部、及び前記両腕部に対して内外方向の曲げ及び曲げ戻しを交互に繰り返し行って前記ハット形鋼矢板の反りを矯正するとともに、前記ハット形鋼矢板の幅を小さくするハット形鋼矢板の矯正方法。
  2. 前記サイドロールのロール面は、対向する前記サイドロールのロール面間の幅方向間隔が前記内外方向の内側から外側へ行くにしたがって大きくなるように傾斜する平面であり、該平面の傾斜角度は、前記通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定されている請求項1に記載のハット形鋼矢板の矯正方法。
  3. ウェブ部と、前記ウェブ部の幅方向両端からそれぞれ屈曲して延びるフランジ部と、前記両フランジ部の前記ウェブ部に接続する側とは反対側の端部から前記ウェブ部と平行をなして幅方向外側にそれぞれ延びる腕部と、前記両腕部の前記フランジ部に接続する側とは反対側の端部にそれぞれ設けられた継手部と、を備え、ハット形鋼矢板の反りを矯正するとともに幅を小さくする矯正装置であって、
    前記ハット形鋼矢板の凸状の外面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を前記外面に接触させて前記ウェブ部、前記両フランジ部、及び前記両腕部を前記外面側から拘束する外側ロールと、前記ハット形鋼矢板の凹状の内面に沿う形状のロール面を有し、該ロール面を前記内面に接触させて前記ウェブ部、前記両フランジ部、及び前記両腕部を前記内面側から拘束する内側ロールとを、備え、前記外側ロールと前記内側ロールは前記ハット形鋼矢板の通材路を挟んで交互に配されて千鳥状に並べられているとともに、
    ロール面を前記継手部の外端に接触させて前記継手部を幅方向外側から拘束するサイドロールが、前記各内側ロールの幅方向両外側にそれぞれ配されており、対向する前記サイドロールのロール面間の幅方向間隔が、前記通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定されている矯正装置。
  4. 前記サイドロールのロール面は、対向する前記サイドロールのロール面間の幅方向間隔が内外方向の内側から外側へ行くにしたがって大きくなるように傾斜する平面であり、該平面の傾斜角度は、前記通材路の上流側から下流側へ行くにしたがって小さくなるように設定されている請求項3に記載の矯正装置。
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