ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスへの電力供給に関して本発明の説明を行う。本発明は別のネットワークトポロジーにも同様に適合するものであって、以下に説明する実施形態のみに本発明が限定されるものではなく、本発明が添付の特許請求の範囲に含まれる全ての態様を含むものであることは、当業者が認めうるものである。
本発明では、熱電発電を利用して、ワイヤレスフィールドデバイスネットワーク内のワイヤレスデバイスへの電力供給を行う。上述したように、バッテリには5年以上にわたる継続使用が期待され、適用製品の寿命程度まで継続して使用できることが好ましい。しかし、通信、検出、または作動が頻繁に必要となるような適用形態では、適切な長さの期間にわたって十分な電力を供給可能なバッテリが甚だしく大型化してしまう。このような問題は、低温によってバッテリ出力が制限されたり、高温によってバッテリ寿命が制限されたりするような厳しい環境状態において更に悪化する。例えば北極圏の近くなど、利用可能な日射が大幅に制限される地域では、太陽電池パネルも甚だしく大型化し、必要な電力を得るには極めて高価なものとならざるを得ない。これらの適用形態においては、周囲の環境よりも大幅に高温または低温となるプロセス流体が用いられることが多いので、熱電発電の利用が考えられる。しかしながら、熱電発電はもともと低効率であって、ワイヤレスフィールドデバイスネットワーク内にあるワイヤレスデバイスに対するエネルギの要求に合致させる上で、熱電発電の大幅な効率向上は必須である。
熱電発電装置の変換効率は、一般的に1%未満であって、熱電発電装置の構成材料や構造と相関関係にある。更に、熱電発電装置で変換のために利用可能な熱の量は、温熱源(または冷熱源)と熱電発電装置の表面との間の一連の熱抵抗によって大幅に減少する。熱抵抗により、熱の流れの方向に直角な所定断面の面積における熱の移動が鈍り、単位面積あたりの熱の移動量、即ち熱流束が減少する。
例えば、典型的な熱電発電装置の適用例では、冷却用の空気が取り囲む容器中に熱流体があって(例えば、パイプ中を流動、またはタンク内に収容)、熱伝導素子の一側が容器外面の非断熱部分に取り付けられ(くくりつけられ)、熱伝導素子の他側が熱電発電装置の1つの面と物理的に接している。大気と接する熱交換器が熱電発電装置の別の面に取り付けられている。熱流束に対し、容器内の熱流体から熱電発電装置までの間には、容器の壁、熱伝導素子と容器外面との間の物理的接触(或いは、不十分な物理的接触)、及び熱伝導素子自身の熱抵抗という、3つの重大な熱抵抗が存在する。
一般的に容器の壁は、例えば、鉄(60W・m−1・k−1)、ステンレス鋼(10〜40W・m−1・k−1)或いはハステロイ(10W・m−1・k−1)のような熱伝導率の低い素材で形成される。熱流束は容器の壁を貫通し熱伝導素子に達する必要がある。熱流束が容器の外壁面に達しさえすれば、当該熱流束は熱伝導素子内に流入する。パイプやタンクのように湾曲した容器の壁面へのこのような素子の取り付けには課題が伴う。熱伝導素子の曲率半径は、容器外面の曲率半径と厳密に一致していなければならない。容器の大きさ及び表面の粗さは極めて多様であるため、必要とされる正確な接合を得ることが極めて困難となる。組み合わされる2つの面の間の大部分を微小な空隙が占めている状態で、当該2つの面の間のいくつかの接触点が、当該2つの面の全域にわたる実質的に全ての熱流を維持しなければならない。容器の壁を貫通して容器外面と熱伝導素子との界面を通過した熱流は、熱伝導素子を通過して熱電発電装置の表面に達する必要がある。一般的に熱伝導素子は、例えば銅(400W・m−1・k−1)のような高い熱伝導率を有した素材で形成されているが、熱流に対して更なる熱抵抗をもたらし、熱電発電装置での変換に利用可能な熱流束が制限される。本発明は、プロセス流体から熱電発電装置への熱流に対する一連の3つの熱抵抗の全てを一括して抑制または排除し、熱電発電装置での変換に利用可能な熱流束を大幅に増大させるものである。
本発明は、熱電発電装置を用い、ワイヤレスフィールドデバイスネットワーク内のワイヤレスデバイスへの電力供給を行う。本発明は、プロセス流体に直接的に接するプロセス構成部品を備えている。プロセス流体に直接的に接するプロセス構成部品には、例えば、サーモウェル、平均化ピトー管、パイプフランジ、オリフィスプレートフランジ、蒸気トラップ、圧力センサ用リモートシール、レベルスイッチ、接触式レーダレベル計、渦流量計、コリオリ流量計、電磁流量計、タービン流量計、バルブマニホールド、整流部材、流量制限器、制御バルブ、遮断バルブ、フィルタハウジング、ポンプハウジング、及び圧力リリーフバルブが含まれる。本発明におけるプロセス構成部品は、プロセス構成部品内の集熱キャビティによって一部が形成されたヒートパイプを備える。集熱キャビティは、ヒートパイプの一部を形成するという目的のみに用いられる。ヒートパイプが熱電発電装置の1つの面に結合されると共に、熱吸収源が熱電発電装置の別の面に結合されており、熱が熱電発電装置を移動して、ワイヤレスデバイス用の電力が発生する。上述した熱伝導素子に代えてヒートパイプを用いることにより、熱電発電装置の表面への熱の移動に関わる熱抵抗を大幅に減少することができる。プロセス流体と直接的に接するプロセス構成部品内にヒートパイプを埋め込み、容器の壁を直に貫通させることにより、2つの熱抵抗が排除される。プロセス構成部品は、容器外面に固定されるものではなく、容器の壁を貫通、即ち容器の壁の一部と置き換わる。集熱キャビティをプロセス流体から分離しているプロセス構成部品の部位を介し、プロセス流体からヒートパイプの集熱キャビティに熱を伝達する必要があることから、ある程度の熱抵抗は残存する。しかしながら、集熱キャビティの内面全域からヒートパイプ内へと熱が流入し、集熱キャビティの内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプで移動する際の熱流束は非常に大きくなる。
図1A及び図1Bは、プロセス構成部品内に組み込まれた熱電発電装置を備え、ワイヤレスフィールドデバイスネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力供給を行うための、本発明の一実施形態を示す図である。図1A及び図1Bには、本発明を組み入れ、プロセスフランジに取り付けられたプロセス構成部品が示されている。図1Bは、本発明の詳細がわかるように図1Aの一部を拡大したものである。
図1Aは、ワイヤレスフィールドデバイス12、プロセス構成部品14、プロセスフランジ16、プロセス導管20、及びワイヤレスフィールドデバイスネットワーク21を備えたプロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント(以下、総称してプロセス計測・制御ポイントとする)10を示している。図1Bに示すように、ワイヤレスフィールドデバイス12は、電子回路ハウジング22、電子回路(図示せず)、アンテナ24、及びトランスデューサ(図示せず)を備えている。プロセス構成部品14は、熱電発電機構(図示せず)、伝熱部材27、断熱部材28a、断熱部材28b、及びヒートパイプ(図示せず)を備える。また、図1Bには複数のフランジボルト18も示されている。プロセス導管20はパイプとして例示されているが、プロセスタンク、貯蔵タンク、熱交換器、ボイラ、蒸留塔、キルン、及び反応炉のいずれか1つまたはいくつかの組み合わせであってもよい。ワイヤレスフィールドデバイスネットワーク21は、ワイヤレスフィールドデバイス12とのワイヤレス通信、及び制御システムまたは監視システムとの通信が可能な任意のワイヤレスフィールドデバイスネットワークである。例えば、ワイヤレスフィールドデバイスネットワーク21はワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークである。
プロセスフランジ16は、プロセス導管20の開口部に取り付けられており(一般的には溶接による)、プロセス導管20内に連通するポートを形成している。プロセス導管20内をプロセス流体Fが流動する際にプロセス構成部品14がプロセス流体Fと直接的に接するようにするべくプロセス構成部品14をポートに取り付ける前に、一般的に低熱伝導率の素材からなるシールガスケット(図示せず)がプロセス構成部品14及びプロセスフランジ16のそれぞれの接合面の間に挿入される。プロセス構成部品14は、複数のフランジボルト18を用いてプロセスフランジ16に結合されている。熱電発電機構は、プロセス構成部品14と一体化されており、プロセス流体Fとは間接的に熱的に接するようになっている。ヒートパイプ(図示せず)は、プロセス流体Fと熱電発電機構とを熱的に接続する。また、熱電発電機構は、例えば周囲流体Aなどの熱吸収源と熱的に接する伝熱部材27とも熱的に接している。周囲流体Aは、プロセス計測・制御ポイント10を取り囲んでおり、一般的には空気である。通常の作動の際、プロセス流体Fと周囲流体Aとは異なる温度にある。断熱部材28a及び断熱部材28bは、周囲流体Aと熱的に接している伝熱部材27を、プロセス流体Fと熱的に接しているプロセス構成部品14の部位から熱的に遮蔽する位置に設けられる。図1Aに示すように、プロセス構成部品14は、ワイヤレスフィールドデバイス12と機械的且つ電気的に接続されており、プロセス流体Fとトランスデューサとを仲介する部材である。これに代え、電子回路ハウジング22、アンテナ24、及びワイヤレスフィールドデバイス12の電子回路を、プロセス構成部品14から機械的に切り離す一方、電気的にはプロセス構成部品14に接続するようにしてもよい。
作動の際に、プロセス流体Fと周囲流体Aとの間の温度差によって生じた熱流は、プロセス構成部品14内のヒートパイプを移動するものとなる。プロセス流体Fの方が周囲流体Aよりも高温の場合、熱はプロセス導管20内にあるプロセス流体Fから、ヒートパイプを介して熱電発電機構へと流動する。この熱は、伝熱部材27による周囲流体Aへの熱の放散により熱電発電機構を通って流れ、これによって電力が発生する。プロセス流体Fの方が周囲流体Aよりも低温の場合には、熱流が逆方向となる。発生した電力はワイヤレスデバイス12に送られ、トランスデューサの作動や、アンテナ24を介したワイヤレスフィールドデバイスネットワーク21との通信に使用するべく、ワイヤレスデバイス12への電力供給が行われる。プロセス流体Fと周囲流体Aとの間において、熱電発電機構を通るように意図された経路から外れるような熱流の経路は、断熱部材28a及び断熱部材28bによって縮小される。
図10に示す実施形態を除き、以下に説明するいずれの実施形態も、プロセス流体Fの方が熱吸収源よりも高温であり、熱流の方向がプロセス流体から熱吸収源に向かうような場合のものとなっている。以下に説明するいずれの実施形態においても、プロセス流体Fの方が熱吸収源よりも低温の場合には、熱流の方向が逆になって熱吸収源からプロセス流体Fへと向かうようになるだけで、説明は同様のものとなる。
全ての実施形態において、熱吸収源が熱を吸収、或いは取り去り、熱電素子を通過する安定した熱流を維持する。説明を容易にするため、以下に説明する実施形態では、図10に示す実施形態を除き、いずれも周囲流体Aが熱吸収源となっている。周囲流体Aは空気である場合が多いが、冷却用流体、ひとかたまりの水、或いは伝熱部材と物理的に接する第2のプロセス流体といった、別の種類の流体を周囲流体Aとすることも可能である。更に、熱吸収源は大地であってもよいし、例えば建物の壁或いは土盛りなどの大きな熱容量体であってもよい。
図1A及び図1Bに示すようなワイヤレスフィールドデバイスにより、例えば圧力、流速、質量流量、pH、温度、密度、及び導電率といった、様々なプロセス特性値のいずれか1つもしくはいくつかの組み合わせを計測すること、振動、変形、もしくは腐食と行った事項に関するプロセス設備の監視を行うこと、火災及びガス検知などといった総合的なプラント環境の監視を行うこと、または作業者及び設備の現在位置を把握することが可能である。図2A〜図2Fは、プロセス構成部品がサーモウェルであって、当該プロセス構成部品に組み込まれて温度計測用ワイヤレスフィールドデバイスに電力供給を行う熱電発電装置を備え、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の実施形態を示す図である。サーモウェルは、保護用の頑丈な鞘状ケースであって、温度センサを収容し、計測中の流体による振動、衝撃、腐食、削摩などの有害な影響から温度センサを保護するように構成されている。温度センサは、サーモウェルの中心軸線に沿って当該サーモウェル内に挿入され、サーモウェルは計測対象の流体を収容したプロセス容器内に挿入される。サーモウェルは、プロセスを中断することなく、また容器を開放することなく、故障した温度センサを交換できるという更なる利点も有している。
図2Aは、本発明を組み入れたサーモウェルの断面図である。図2Aには、ワイヤレスフィールドデバイス112、サーモウェル114、プロセスフランジ116、フランジボルト118、及びプロセス流体Fを収容するプロセス導管120を備えたプロセス計測ポイント110が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられており、この周囲流体Aは、プロセス計測ポイント110を取り囲み、一般的には空気からなる。図1にはプロセス導管120をパイプとして例示しているが、プロセスタンク、貯蔵タンク、熱交換器、ボイラ、蒸留塔、キルン、及び反応炉のいずれか1つまたはいくつかの組み合わせであってもよい。ワイヤレスフィールドデバイス112は、電子回路ハウジング122、電子回路123、アンテナ124、及び温度プローブ130を備えている。温度プローブ130は、温度センサ132と温度センサ導線134とを備える。温度センサ132は、例えば熱電対または測温抵抗体(RTD)など、温度変化に応じて電気的特性が変化する任意のセンサである。温度センサ導線134は、例えば熱電対導線など、温度センサ132に適合する導線である。電子回路123は、センサ回路136、通信用回路138、トランシーバ140、データルータ142、電源制御回路144、及びエネルギ貯蔵素子146を備えている。センサ回路136は、センサ信号を処理すると共に、公知の方法でセンサのエキサイテーションを行う。通信用回路138は、例えばHART(登録商標)プロトコルのデータなどの有線信号の送受信を行う通信用回路からなる。トランシーバ140は、例えばワイヤレスHART(WirelessHART、登録商標)プロトコルのデータなど、無線周波数を用いた通信データの送受信を行う。データルータ142はデータパケットを所定の経路で発送する。電源制御回路144は、入力された電力を受け取り、電子回路123における他の構成要素での使用のために、必要に応じて電力を調整する。エネルギ貯蔵素子146は、電子回路123における他の構成要素での使用のためにエネルギを蓄えるものであって、例えば、一次電池、充電式電池、スーパーキャパシタ、或いは公知のエネルギ貯蔵用キャパシタからなる。サーモウェル114は、熱電発電機構126、伝熱部材127、断熱部材128a、断熱部材128b、サーモウェルキャビティ148、及びヒートパイプ150を備えたフランジ装着型プロセス構成部品である。熱電発電機構126は、熱電素子152、熱拡散部材154、及び電力ケーブル158を備える。熱電素子152は、例えば交互に連ねた複数のn型半導体とp型半導体とからなる公知の形式の半導体を基本構成とする素子であって、素子の両端が異なる温度に保持されると、素子両端に電圧を発生し、(電気負荷が接続されている場合には)素子を流れる電流を生成する。熱拡散部材154は、例えば銅のような、高い熱伝導率の素材からなるブロックであって、熱電素子152の表面における熱流束を均一化させるために用いられる。伝熱部材127は、周囲流体Aとの間での熱交換を効率的に行う任意の部材である。図示するように、伝熱部材127は、例えば銅などの高い熱伝導率の素材からなるピンフィン型の熱交換器であって、体積に対する表面積の比を大きくすることにより熱の移動を促進するように構成されている。断熱部材128a及び断熱部材128bは、周囲流体Aに適合可能な断熱構造を有した耐久性のある任意の形式の部材である。本実施形態では、ヒートパイプ150が、充填ポート160、プラグ162、集熱キャビティ164、熱移動パイプ166、及び脱熱キャビティ168を備えている。プラグ162は、例えばねじ込み式の金属プラグなど、封止を行う任意のプラグである。集熱キャビティ164は、プロセス流体Fと直接的に接するサーモウェル114の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ150の部位である。脱熱キャビティ168は、熱電発電機構126と直接的に接するヒートパイプ150の部位である。熱移動パイプ166は、集熱キャビティ164と脱熱キャビティ168とを結合するヒートパイプ150の部位である。
プロセスフランジ116は、プロセス導管120の開口部に取り付けられており(一般的には溶接による)、プロセス導管120内に連通するポートを形成する。図2Aに示すように、プロセス導管120内をプロセス流体Fが流動する際にサーモウェル114がプロセス流体Fと直接的に接するようにするべくサーモウェル114をポート内に挿入する前に、シールガスケット(図示せず)がサーモウェル114及びプロセスフランジ116の互いの接合面の間に挿入される。サーモウェル114は、複数のフランジボルト118(一般に4個以上であり、2個を図示している)を用いてサーモウェル114のフランジ部がプロセスフランジ116に連結されている。温度プローブ130は、プロセス流体Fの中に最も深く入るサーモウェル114の先端部分またはその近傍に温度センサ132が位置するように、サーモウェルキャビティ148内に挿入される。一般的に、温度プローブ130は、温度センサ132が位置する側の端部とは反対側となる温度プローブ130の端部を螺合することによって所定位置に保持される。温度センサ導線134は、センサ回路136を介し、温度プローブ130を電子回路ハウジング122内の電子回路123に接続する。アンテナ124は、トランシーバ140を介し、電子回路ハウジング122内の電子回路123に接続されている。電子回路123内では、センサ回路136が通信用回路138に接続されている。通信用回路138はデータルータ142に接続され、このデータルータ142はトランシーバ140に接続されている。電源制御回路144は、エネルギ貯蔵素子146、センサ回路136、通信用回路138、データルータ142、及びトランシーバ140に接続されている。ヒートパイプ150は、図2Dに基づいて後述する集熱キャビティ164から、図2Fに基づき後述する熱移動パイプ166を経て、図2Eに基づき後述する脱熱キャビティ168まで延設されている。プラグ162は充填ポート160を封止する。ヒートパイプ150の脱熱キャビティ168は、熱拡散部材154を介して熱電発電機構126と結合されている。熱拡散部材154は、熱電素子152の1つの面に密着して取り付けられており、伝熱部材127は、熱拡散部材154の側とは反対側となる熱電素子152の面に密着して取り付けられている。電力ケーブル158は、熱電素子152を電子回路ハウジング122内の電源制御回路144に接続する。断熱部材128aは、伝熱部材127とサーモウェル114の外面との間の空隙に配設されており、伝熱部材127の端部より外側に張り出すことにより、良好な断熱効果を確保している。断熱部材128bは、伝熱部材127と、プロセスフランジ116に取り付けられたサーモウェル114のフランジ部との間の領域に配設されている。サーモウェル114は、ワイヤレスフィールドデバイス112と機械的及び電気的に結合されており、プロセス流体Fと温度プローブ130との間に介在する部材となる。上記の構成に代え、温度プローブ130及びサーモウェル114に対して、電子回路ハウジング122、電子回路123、及びアンテナ124を機械的に分離する一方、電気的には接続するようにしてもよい。
作動時に温度センサ132は、プロセス流体Fの温度変化に応じて電気的特性を変化させる。この電気的特性の変化は、温度センサ導線134を介してセンサ回路136に伝達される。センサ回路部136は、電気的特性の変化を温度計測値に変換し、この温度計測値を通信用回路138に伝送する。通信用回路138は、有線のリンク(図示せず)を介し、温度計測値及び任意の付加的な情報(例えば、ワイヤレスデバイスのID)をデータルータ142に伝送する。データルータ142は、伝送された情報を送り先の情報と共にデジタルデータパケットにフォーマットし、このデジタルデータパケットをトランシーバ140に伝送し、トランシーバ140がアンテナ124を介してワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークへの発信を行う。
更に、ワイヤレスフィールドデバイス112は、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークの構成要素として、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークから受け取ったデータパケットを所定の経路で発送することもできる。トランシーバ140は、アンテナ124を介してワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークからデジタルデータパケットを受け取り、このデジタルデータパケットをデータルータ142に伝送する。データルータ142は、トランシーバ140が受け取ったデジタルデータパケットを所定の経路で伝送し、ワイヤレスフィールドデバイス112のアドレスがデジタルデータパケットの最終の宛先アドレスと一致する場合、通信用回路138で使用するべく通信ペイロードをアンパックし、そうでない場合は、論理パスにおける次の送り先に向けて、アンテナ124を介しワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークに戻すべく、デジタルデータパケットをトランシーバ140に送り返す。
本実施形態では、上述した温度検出及びデータ伝送のための電力の少なくとも一部が、ヒートパイプ150によって効率的に生じる熱流を用いた熱電発電機構126の作動によって供給される。図2Dに基づき後述するように、集熱キャビティ164がプロセス流体Fから熱を収集する。図2Fに基づき後述するように、熱移動パイプ166が集熱キャビティ164から脱熱キャビティ168へと熱を移動させる。脱熱キャビティ168では、熱が熱拡散部材154に伝達され(図2Eに基づき後述)、熱拡散部材154は、当該熱拡散部材154を介して熱が熱電素子152に伝わる際に熱流束を均一化する。熱電素子152を熱が移動すると、熱電素子152を移動する熱の量に応じて電圧が発生し、ワイヤレスフィールドデバイス112に向けて電流が流れる。このような電圧及び電流の発生によって電力が生じる。熱電素子152において、熱拡散部材154の側とは反対側から熱を取り去らなければ、速やかに熱平衡に達し、熱流及びこれに伴う発電が途絶えることになる。発電を継続するには、熱拡散部材154の側とは反対側となる熱電素子152の面から熱を取り去る必要がある。大きな表面積を有する伝熱部材127が、周囲流体Aへの伝導により、熱拡散部材154の側とは反対側となる熱電素子152の面から熱を効率的に取り去る。対流及び伝導の一方または組み合わせにより、周囲流体Aが伝熱部材127から熱を吸収しまたは運び去り、発電の継続に必要な、熱電素子152における安定した熱流が維持される。本実施形態では、断熱部材128a及び断熱部材128bが、サーモウェル114やプロセス導管120の外面のように、プロセス流体Fの温度と周囲流体Aの温度との間の温度になりそうな領域を遮蔽することにより、熱電素子152以外の熱源から伝熱部材127に入り込む熱を抑制する。これにより、伝熱部材127が取り去る熱が熱電素子152を移動する熱に概ね限定され、熱電発電機構126の発電効率が向上する。熱電素子152が発電した電力は、電力ケーブル158により電源制御回路144に伝送される。電源制御回路144は、この電力を調整し、必要に応じてセンサ回路136、通信用回路138、データルータ142及びトランシーバ140に配分し、上述したような温度検出及びデータ伝送が行われる。温度検出及びデータ伝送で緊急に必要となる電力の超過分は、エネルギ貯蔵素子146に蓄えられている。例えば、プロセスの開始或いは停止の際に、プロセス流体Fの温度が通常のプロセス稼働時より低い場合など、温度検出及びデータ伝送に要する電力が、熱電発電機構126から直ちに利用可能な電力を超過する場合に、エネルギ貯蔵素子146に蓄えられた電力が電力制御回路144によって利用される。
図2Bは、一実施形態に係るサーモウェル114の、プロセス流体Fと直接的に接する部分の断面図である。図2Bに示すように、集熱キャビティ164は円形の断面を有している。管状をなす集熱キャビティ164は、例えばドリルにより適切に形成される。このような管状構造は、脱熱キャビティ168の部分を除きヒートパイプ150の全長にわたっている。
図2Cは、脱熱キャビティ168の形状の一実施形態を示す図である。熱移動パイプ166の円形断面は、脱熱キャビティ168の端部で終了している。脱熱キャビティ168は、熱拡散部材154の矩形形状に適合した直方体状のキャビティとなっている。このような形状も、公知の加工技術を用いて適切に形成される。脱熱キャビティ168は、6つの面のうち5つの面がサーモウェル114の内面からなり、残る1つの面が熱拡散部材154の面からなる。図2Cは、更に伝熱部材127の形状を示している。伝熱部材127は、伝熱部材127の表面積を増大するようにしてサーモウェル114の外周の一部を取り囲んでいる。上述したように断熱部材128aは、熱電素子152から外方に張り出して延設される伝熱部材127の部分と、サーモウェル114の外面との間の空隙を満たしているのが好ましい。断熱部材128aは、伝熱部材127の端部から四方に張り出すことにより、プロセス流体Fの温度と周囲流体Aの温度との間の温度にあるサーモウェル114の外面からの良好な断熱効果を確保している。
図2Aに示す実施形態の効率的な作動における重要な要素は、ヒートパイプ150の作動である。図2Dは、プロセス流体Fからヒートパイプ150内に熱を移動させる伝熱の仕組みを示している。図2Dは、集熱キャビティ164の部分の断面図である。この実施形態において、ヒートパイプ150は更に作業流体170とウィッキング部材172とを備えている。作業流体170は、液相(L)及び気相(V)の両方の状態でヒートパイプ150内に存在するのが好ましい。作業流体170は、プロセス流体Fの温度と周囲流体Aの温度との間の想定される作動温度範囲に応じて選択され、例えば、水、アンモニア、メタノール、またはエタノールからなる。ウィッキング部材172は、例えば、焼結セラミック、網状金属、フェルト状金属、或いは発泡金属など、液相にある作業流体170に大きな毛管圧を作用させる上で十分小さな細孔を有し、作業流体170が浸透しやすい材料からなるのが好ましい。これに代えて、液相にある作業流体170に対し、必要とされる毛管圧をもたらすような大きさに設定されて、ヒートパイプ150の全長にわたり、ヒートパイプ150の内壁面に形成された複数の溝によりウィッキング部材172を構成するようにしてもよい。
一実施形態によれば、ウィッキング部材172は集熱キャビティ164に沿って延設されており、液相(L)にある作業流体170を保持している。作動の際、プロセス流体Fからの熱Hは、集熱キャビティ164を取り囲む金属壁を介して流動する。集熱キャビティ164内の液相(L)の作業流体170は、流動する熱を吸収し、吸収した熱量が作業流体170の気化熱に達すると、気相(V)の作業流体170に変化する。気相(V)の作業流体170は、膨張してウィッキング部材172から集熱キャビティ164内へと流出し、集熱キャビティ164内の圧力を上昇させると共に、集熱キャビティ164から熱移動パイプ166内へと気相(V)の作業流体170を押し出す。このとき、ウィッキング部材172からの液相(L)の作業流体170の気化が、ウィッキング部材172の毛管圧によって生じる集熱キャビティ164内への液相(L)の作業流体170の流入を更に増大させる。このようにして、作業流体Fと集熱キャビティ164との間での熱の流出及び流入が効率的に行われる。最も効率的な熱の流動は、プロセス流体Fから集熱キャビティ164を隔離するサーモウェル114の最も薄い部分で行われるが、サーモウェル114がプロセス流体Fと接する部分の全域にわたる熱の伝達により、あらゆる方向から集熱キャビティ164内に熱が流入する。
本実施形態により、ヒートパイプ150から熱電発電機構126への熱の移動を行う伝熱の仕組みを図2Eに示す。図2Eは、脱熱キャビティ168(及び熱移動パイプ166)の断面図である。脱熱キャビティ168は、集熱キャビティ164と同様に、気相(V)の作業流体170を収容しており、液相(L)の作業流体170を保持したウィッキング部材172が内部に延設されている(プラグ162が設けられる小領域を除く)。集熱キャビティ164とは異なり、脱熱キャビティ168内の作業流体170は、伝熱部材127の作用によって冷却される。作動の際、脱熱キャビティ168内の気相(V)の作業流体170は、熱拡散部材154の比較的低温の表面で凝縮して液相(L)の作業流体170に変化し、集熱キャビティ164で吸収した気化熱を放出する。放出された熱Hは熱拡散部材154に移動し、熱電素子152を介して伝熱部材127に伝わる。液相(L)の作業流体170は、ウィッキング部材172に浸透し、ウィッキング部材172内の毛管圧によって脱熱キャビティ168から熱移動パイプ166内へと移動する。同時に、脱熱キャビティ168内の気相(V)の作業流体170の凝縮により脱熱キャビティ168内の圧力が低下し、より多くの気相(V)の作業流体170が移動パイプ166から脱熱キャビティ168内へと移動するような圧力差が生じる。このようにして、ヒートパイプ150から熱電発電機構126へと効率的に熱が流動する。
図2Fは、図2Dに示すような集熱キャビティ164から熱を収集し、図2Eに示すような脱熱キャビティ168に熱を移動させる伝熱の仕組みの一実施形態を示している。図2Fは、集熱キャビティ164と脱熱キャビティ168とを物理的且つ熱的に接続する熱移動パイプ166の部分の断面図である。集熱キャビティ164及び脱熱キャビティ168と同様に、熱移動パイプ166は気相(V)の作業流体を収容しており、液相(L)の作業流体170を保持したウィッキング部材172が内部に延設されている。熱移動パイプ166内のウィッキング部材172は、集熱キャビティ164内のウィッキング部材172及び脱熱キャビティ168内のウィッキング部材172と連続的に接続しており、凝縮した液相(L)の作業流体170が、ウィッキング部材172内の毛管圧によって、脱熱キャビティ168から熱移動パイプ166を経て集熱キャビティ164へと流動するようになっている。サーモウェル114の取り付け方向に応じ、毛管圧が作用する方向は、重力と合わさる方向または重力に反するする方向となり得る。ウィッキング部材172内の毛管圧は、重力に打ち勝つだけでなく、集熱キャビティ164と脱熱キャビティ168との圧力差に打ち勝って、液相(L)の作業流体170を集熱キャビティ164へ継続して供給し続けることができるものでなければならない。熱移動パイプ166の内部は、集熱キャビティ164の内部と脱熱キャビティ168の内部とに連通しており、気相(V)の作業流体170が、集熱キャビティ164内での液相(L)の作業流体170の気化、及び脱熱キャビティ168内での気相(V)の作業流体170の凝縮によって生じる圧力差により、集熱キャビティ164から熱移動パイプ166の内部を経て脱熱キャビティ168に流動するようになっている。
一実施形態によれば、サーモウェル114は、正確に調整された条件下の工場で理想的な組み立てが行われるので、安定した信頼性のある作動を確保することができる。このことは、現場において容器の外面に熱電発電装置をくくりつけるか或いはその他の方法で取り付ける場合とは全く相違するものである。ヒートパイプ150は、作業流体170の蒸気圧に近似した内圧を維持可能な部分真空であると共に、気相(V)の作業流体170の流動を妨げてヒートパイプ150の効率を低下させるような不凝縮性ガスを除去可能な部分真空のもとで密封するのが好ましい。作業流体170は、充填ポート160を介してヒートパイプ150内に注入され、部分真空下で図2Aに示すようにプラグ162を用いて密封される。
図2A〜図2Fに示すような本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接するサーモウェルにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。容器の壁を直に貫通することにより、熱電発電装置と容器の壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ164の内面全域からヒートパイプ150内に熱が流入し、集熱キャビティ164の内面全域からの気化により熱が移動するので、ヒートパイプ150によって移動する熱を極めて大きなものとすることができる。最終的に、移動する熱の量は、集熱キャビティ164の面積、伝熱部材127の大きさ及び効率、並びに周期流体Aとプロセス流体Fとの間の温度差に依存する。工場において入念に調整された条件の下で装置全体を組み立てて試験することができるので、性能はより一層安定して効率的なものとなる。
図2A〜図2Fに示す集熱キャビティの管状形状は、プロセス構成部品及び発電する電力量に応じて使用可能な多くの形状の1つを示すものである。図3A〜図3Cは、サーモウェルに組み込まれて、温度計測用ワイヤレスフィールドデバイスに電力を供給するための、本発明のもう1つの実施形態を示す図である。図3A〜図3Cにおいて、筒状形状をなす集熱キャビティは、2つの熱電素子を収容した熱電発電機構に結合されている。図2A〜図2Fの実施形態に比べ、表面積を増大させた、更に大きな集熱キャビティにより、一層大きな熱流が得られる。また、このような大きな熱流に対応した極めて大きい伝熱部材も必要となる。図2A〜図2Fの実施形態に比べ、2つの熱電素子を流動する一層大きな熱によって、非常に大きな電力が発生する。このように増大した電力は、例えばより頻繁に送信が必要なワイヤレスデバイスにとって有用である。また、増大した電力は、例えば中央制御装置、ゲートウエイ、リモートテレメトリユニット、またはゲートウエイをより上位のネットワークもしくはホストコンピュータに接続するバックホール無線機など、ワイヤレスフィールドデバイスネットワークにおける別の構成要素への電力供給にも有用である。
図3Aは、サーモウェルに組み込まれて、温度計測用ワイヤレスフィールドデバイスに電力を供給するための、本発明のもう1つの実施形態を示す断面図である。図3Aの実施形態における構成部材の多くは、図2A〜図2Fに基づき説明した構成部材と同一であって、それぞれ100ずつ異なる符号を有している。図3Aには、ワイヤレスフィールドデバイス212、サーモウェル214、プロセスフランジ216、フランジボルト218、及びプロセス流体Fを収容するプロセス導管220を備えたプロセス計測ポイント210が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられる。ワイヤレスフィールドデバイス212は、前述したワイヤレスフィールドデバイス112と同じものである。サーモウェル214は、熱電発電機構226、伝熱部材227、断熱部材228a、断熱部材228b、サーモウェルキャビティ248、及びヒートパイプ250を備えたフランジ装着型プロセス構成部品である。熱電発電機構226は、2つの熱電素子252、2つの熱拡散部材254、及び2組の電力ケーブル258を備える。熱電素子252は前述した熱電素子152と同じものである。図に示すように、伝熱部材227は、サーモウェル214の全周を取り囲んでいる点を除き、前述した伝熱部材127と同じものである。ヒートパイプ250は、2つの充填ポート260、2つのプラグ262、集熱キャビティ264、熱移動パイプ266、及び2つの脱熱キャビティ268を備える。また、ヒートパイプ250は、ウィッキング部材(図示せず)と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同じである。ヒートパイプ250の中心軸線を挟んで対向する位置にある2つの充填ポート260を用いることにより、更に効率的に作業流体の注入を行うことができる。集熱キャビティ264は、プロセス流体Fと直接的に接するサーモウェル214の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ250の部位である。脱熱キャビティ268は、熱電発電機構226と直接的に接するヒートパイプ250の部位である。熱移動パイプ266は、集熱キャビティ264と脱熱キャビティ268とを結合するヒートパイプ250の部位である。図3Aの実施形態における各部の関係及び作用は、図2Aに基づいて説明したものと同様であり、各部位の符号はそれぞれ100ずつ増加させたものとなっている。
図3Bは、サーモウェル214のうち、プロセス流体Fと直接的に接する部位の断面図である。図3Bに示すように、集熱キャビティ264は円形の断面を有する。筒状をなす集熱キャビティ264は、公知の製造方法によって適切に形成される。本実施形態では、脱熱キャビティ268を除き、筒状構造がヒートパイプ250の全長にわたっている。
図3Cは、サーモウェル214のうち、脱熱キャビティ268がある部位の断面図である。熱移動パイプ266の円形断面は、脱熱キャビティ268との接続部分で終了している。脱熱キャビティ268は、前述した脱熱キャビティ168と同様のものである。図3Cは、更に伝熱部材227の形状を示している。伝熱部材227は、サーモウェル214の外周を全周にわたって取り囲んでいる。前述した実施形態と同様に、断熱部材228aが、熱電素子252より外側に張り出して延設される伝熱部材227の部分と、サーモウェル214の外面との間の空隙を満たしている。断熱部材228aは、伝熱部材227の端部より外側に張り出して、サーモウェル214の外面からの良好な断熱効果を確保している。
図3A〜図3Cに示す本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接するサーモウェルにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。本実施形態では、前述した実施形態について説明した全ての利点に加え、ヒートパイプ及び熱電発電機構の両方の大きさを増すことで、更に多くの電力を発生させることが可能となる。本実施形態は、2つの熱電素子を有したものとして示されているが、十分な熱流が発生しさえすれば、更に熱電素子を加えて更なる電力を得ることができる。
前述のとおり、図1A及び図1Bに示すようなワイヤレスフィールドデバイスは、例えば圧力、流速、質量流量、pH、温度、密度、及び導電率といった、様々なプロセス特性値のいずれか1つまたはいくつかを計測すること、振動、変形、もしくは腐食などといった事項に関するプロセス設備の監視を行うこと、火災及びガス検知などといった事項に関する総合的なプラント環境の監視を行うこと、または作業者及び設備の位置を把握することことが可能である。図4A〜図4Cには、プロセス構成部品に組み込まれた熱電発電装置を有して、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内に設けられるワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の一実施形態を示しており、当該実施形態において、プロセス構成部品は平均化ピトー管であり、ワイヤレスデバイスは流量計測用ワイヤレスフィールドデバイスである。例えば、ローズマウント(Rosemount、登録商標)製の485アニュバーなどの平均化ピトー管は、当該ピトー管を通過する流体の流動によって生じる動圧(高圧)及び静圧(低圧)の2つの圧力を検出することにより流速を計測するものである。流速の増大により、これら2つの圧力の差が拡大する。これら2つの圧力は、平均化ピトー管内のポートやプレナムを介して差圧センサに伝わり、この差圧センサが2つの圧力の圧力差を直接計測する。
図4Aは、本発明の一実施形態を組み込んだ平均化ピトー管の断面図である。図4Aには、ワイヤレスフィールドデバイス312、平均化ピトー管314、プロセスフランジ316、フランジボルト318、及びプロセス流体Fを収容するプロセス導管320を備えたプロセス計測ポイント310が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられ、この周囲流体Aは、プロセス計測ポイント310を取り囲んでおり、一般的には空気からなる。図1A及び図1Bに示したものと同じく、プロセス導管320をパイプとして例示しているが、プロセスタンク、貯蔵タンク、熱交換器、ボイラ、蒸留塔、キルン、及び反応炉のいずれか1つまたはいくつかの組み合わせであってもよい。ワイヤレスフィールドデバイス312は、電子回路ハウジング322、電子回路323、アンテナ324、及び差圧センサ(DPセンサ)330を備える。DPセンサ330は、同時に検出された2つの圧力の差の変化に応じて電気的特性が変化するセンサであればどのようなセンサであってもよく、例えば、ローズマウント(Rosemount、登録商標)製の305IS圧力トランスミッタなどがある。電子回路323は、センサ回路336、通信用回路338、トランシーバ340、データルータ342、電源制御回路344、及びエネルギ貯蔵素子346を備えている。センサ回路336は、センサ信号を処理すると共に、公知の方法でセンサのエキサイテーションを行う。通信用回路338は有線信号の送受信を行う通信用回路を有する。トランシーバ340は無線周波数による通信データを送受信する。データルータ342はデータパケットを所定の経路で発送する。電源制御回路344は、入力された電力を受け取り、電子回路323における他の構成要素での使用のために、必要に応じて電力を調整する。エネルギ貯蔵素子346は、電子回路323における他の構成要素での使用のためにエネルギを蓄えるものであって、例えば、一次電池、充電式電池、スーパーキャパシタ、または公知のエネルギ貯蔵用キャパシタからなる。平均化ピトー管314は、熱電発電機構326、伝熱部材327、断熱部材328a、断熱部材328b、高圧プレナム332、低圧プレナム334、及びヒートパイプ350を備えたフランジ装着型プロセス構成部品である。熱電発電機構326は、熱電素子352、熱拡散部材354、及び電力ケーブル358を備える。熱電素子352は、例えば交互に連ねた複数のn型半導体とp型半導体とからなる公知の形式の半導体を基本構成とする素子であって、素子の両端が異なる温度に保持されると素子両端に電圧を発生し、(電気負荷に接続されている場合には)素子を流れる電流を生成する。熱拡散部材354は、例えば銅のような、高い熱伝導率の素材からなるブロックであって、熱電素子352の表面における熱流束を均一化するために用いられる。伝熱部材327は、周囲流体Aとの間での熱交換を効率的に行う任意の部材である。図示するように、伝熱部材327は、例えば銅などの高い熱伝導率の素材からなるピンフィン型の熱交換器であって、体積に対する表面積の比を大きくすることにより熱の移動を促進するように構成されている。断熱部材328a及び断熱部材328bは、周囲流体Aに適合する断熱構造を有した耐久性のある任意の形式の部材である。ヒートパイプ350は、充填ポート360、プラグ362、集熱キャビティ364、熱移動パイプ366、及び脱熱キャビティ368を備える。集熱キャビティ364は、プロセス流体Fと直接的に接する平均化ピトー管314の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ350の部位である。脱熱キャビティ368は、熱電発電機構326と直接的に接するヒートパイプ350の部位である。熱移動パイプ366は、集熱キャビティ364と脱熱キャビティ368とを結合するヒートパイプ350の部位である。ヒートパイプ350は、ウィッキング部材(図示せず)と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同様である。
プロセスフランジ316は、プロセス導管320の開口部に取り付けられており(一般的には溶接による)、プロセス導管320内に連通するポートを形成している。図4Aに示すように、プロセス導管320内をプロセス流体Fが流動する際にプロセス流体Fと直接的に接するようにするべく平均化ピトー管314をポート内に挿入する前に、シールガスケット(図示せず)が平均化ピトー管314及びプロセスフランジ316の互いの接合面の間に挿入される。平均化ピトー管314は、複数のフランジボルト318(一般に4個以上であり、2個を図示している)を用いて平均化ピトー管314のフランジ部がプロセスフランジ316に連結されている。DPセンサ330は、高圧プレナム332内の圧力と、低圧プレナム334内の圧力とが同時にDPセンサ330で検出されるように、平均化ピトー管314に取り付けられる。DPセンサ330は、センサ回路336を介し、電子回路ハウジング322内の電子回路323に接続されている。アンテナ324は、トランシーバ340を介し、電子回路ハウジング322内の電子回路323に接続されている。電子回路323内では、センサ回路336が通信用回路338に接続されている。通信用回路338はデータルータ342に接続されており、データルータ342はトランシーバ340に接続されている。電源制御回路344は、エネルギ貯蔵素子346、センサ回路336、通信用回路338、データルータ342、及びトランシーバ340に接続されている。ヒートパイプ350は、集熱キャビティ364から、集熱キャビティ364と脱熱キャビティ368とを結合する熱移動パイプ366を経て、脱熱キャビティ368まで延設されている。プラグ362は、部分真空下においてヒートパイプ350内に作業流体が注入された後に、充填ポート360を封止する。ヒートパイプ350の脱熱キャビティ368は、熱拡散部材354を介し、熱電発電機構326と結合されている。熱拡散部材354は、熱電素子352の1つの面に密着して取り付けられており、伝熱部材327は、熱拡散部材354の側とは反対側となる熱電素子352の面に密着して取り付けられている。電力ケーブル358は、電源制御回路344を介し、熱電素子352を電子回路ハウジング322内の電子回路323に接続する。断熱部材328aは、伝熱部材327と平均化ピトー管314の外面との間の空隙に配設され、伝熱部材327の端部より外側に張り出すことにより、良好な断熱効果を確保している。同様に、断熱部材328bは、伝熱部材327と、プロセスフランジ316に取り付けられた平均化ピトー管314のフランジ部との間の空間に配設されている。
作動の際、平均化ピトー管314を通過するプロセス流体Fの流動により生じた2つの圧力は、ピトー管に設けられたそれぞれ別個のポートを介して高圧プレナム332と低圧プレナム334とに伝わり、DPセンサ330は、高圧プレナム332内の圧力と、低圧プレナム334内の圧力との差の変化に応じて電気的特性を変化させる。この電気的特性の変化は、センサ回路336によって流量計測値に変換される。センサ回路336は、この流量計測値を通信用回路338に伝送し、通信用回路部338は、有線のリンク(図示せず)を介し、流量計測値及び任意の付加的な情報(例えば、ワイヤレスデバイスのID)をデータルータ342に伝送する。データルータ342は、伝送された情報を送り先の情報と共にデジタルデータパケットにフォーマットし、このデジタルデータパケットをトランシーバ340に伝送し、トランシーバ340がアンテナ324を介してワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークへの発信を行う。
更に、ワイヤレスフィールドデバイス312は、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークの構成要素として、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークから受け取ったデータパケットを所定の経路で発送する。トランシーバ340は、アンテナ324を介してワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークからデジタルデータパケットを受け取り、このデジタルデータパケットをデータルータ342に伝送する。データルータ342は、トランシーバ340が受け取ったデジタルデータパケットを所定の経路で伝送し、ワイヤレスフィールドデバイス312のアドレスがデジタルデータパケットの最終の宛先アドレスと一致する場合、通信用回路338で使用するべく通信ペイロードをアンパックし、そうでない場合には、論理パスにおける次の送り先に向けて、アンテナ324を介しワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークに戻すべく、デジタルデータパケットをトランシーバ340に送り返す。
本実施形態では、上述した流量計測及びデータ伝送のための電力の少なくとも一部が、ヒートパイプ350によって効率的に生じる熱流を用いた熱電発電機構326の作動によって供給される。集熱キャビティ364がプロセス流体Fから熱を収集し、熱移動パイプ366が集熱キャビティ364から脱熱キャビティ368へと熱を移動させる。脱熱キャビティ368では、熱が熱拡散部材354に伝達され、熱拡散部材354は、当該熱拡散部材354を介して熱電素子352に熱が伝わる際に熱流束を均一化する。熱電素子352を熱が流動する際には、熱電素子352を流動する熱の量に応じて電圧及び電流が発生する。このような電圧及び電流の発生により、必要に応じてワイヤレスフィールドデバイス312が消費する電力が生じる。大きな表面積を有する伝熱部材327が、周囲流体Aへの伝導により、熱拡散部材354の側とは反対側となる熱電素子352の面から熱を効率的に取り去る。対流及び伝導の一方または組み合わせにより、周囲流体Aが伝熱部材127から熱を吸収しまたは運び去り、継続的な発電に必要な熱電素子352における安定した熱流が維持される。断熱部材328a及び断熱部材328bが、平均化ピトー管314の外面のように、プロセス流体Fの温度と周囲流体Aの温度との間の温度になりそうな領域を遮蔽することにより、熱電素子352以外の熱源から伝熱部材327に入り込む熱を抑制する。これにより、伝熱部材327が取り除く熱が、熱電素子352を移動する熱に概ね限定され、熱電発電機構326の発電効率が改善される。熱電素子352が発電した電力は、電力ケーブル358により電源制御回路344に伝送される。電源制御回路344は、この電力を調整し、上述したような流量計測及びデータ伝送を行うべく、必要に応じて、センサ回路336、通信用回路338、データルータ342、及びトランシーバ340に配分する。流量計測及びデータ伝送に緊急で必要となる電力の超過分は、エネルギ貯蔵素子346に蓄えられている。例えば、プロセスの開始或いは停止の際に、プロセス流体Fの温度が通常のプロセス稼働時より低い場合など、流量計測及びデータ伝送に要する電力が、熱電発電機構326から直ちに利用可能な電力を超過する場合に、エネルギ貯蔵素子346に蓄えられた電力が電力制御回路344によって利用される。
図4Bは、平均化ピトー管314のうち、プロセス流体Fと直接的に接する部分の断面図である。高圧プレナム332は動圧(高圧)に晒され、低圧プレナム334は静圧(低圧)に晒されるようになっており、集熱キャビティ364は閉じた円形断面を有する。本実施形態において、集熱キャビティ364の管状構造は、脱熱キャビティ368の部分を除きヒートパイプ350の全長にわたっている。
図4Cは、本実施形態における脱熱キャビティ368の形状を示す図である。熱移動パイプ366の円形断面は、脱熱キャビティ368の端部で終了している。脱熱キャビティ368は、熱拡散部材354の矩形形状に適合した直方体状のキャビティとなっている。このような形状も公知の製造技術を用いて適切に形成される。脱熱キャビティ368は、6つの面のうち5つの面が平均化ピトー管314の内面からなり、残る1つの面が熱拡散部材354の面からなる。図4Cは、更に伝熱部材327の形状を示している。伝熱部材327は、伝熱部材327の表面積を増大するように、平均化ピトー管314の外周の一部を取り囲んでいる。上述したように断熱部材328aは、熱電素子352より外側に張り出して延設される伝熱部材327の部分と、平均化ピトー管314の外面との間の空隙を満たしている。断熱部材328aは、伝熱部材327の端部から四方に張り出して、プロセス流体Fの温度と周囲流体Aの温度との間の温度にある平均化ピトー管314の外面からの良好な断熱効果を確保している。
図4A〜図4Cに示すような本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接する平均化ピトー管にヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。容器の壁を直に貫通することにより、熱電発電装置と容器の壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ364の内面全域からヒートパイプ350内に熱が流入し、集熱キャビティ364の内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプ350によって極めて効率的に熱を移動することができる。
上述した本発明の実施形態は、プロセスフランジによって容器の壁に結合されたプロセス構成部品を備える。これに代わる本発明の実施形態では、例えば螺合または溶接による結合など、プロセスフランジ以外の手段により容器の壁に結合される。
図5A〜図5Fは、プロセス構成部品に組み込まれた熱電発電装置を用い、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の更に別の実施形態を示しており、この実施形態では、プロセス構成部品をオリフィスプレートフランジとし、ワイヤレスデバイスを流量計測用ワイヤレスフィールドデバイスとしている。前述した各実施形態とは異なり、本実施形態では、プロセス容器に設けられた外方へ向けての開口部への取り付けに代え、プロセス流体(またはプロセス流体の副生成物)が流動するプロセス導管の一区域が用いられる。例えばローズマウント(Rosemount、登録商標)製の1496フランジユニオンに設けられるようなオリフィスプレートフランジは、差圧センサに流体圧力を伝達するための圧力タップを備えている。2つのこのようなオリフィスプレートフランジは、フランジユニオンを構成しており、それぞれのオリフィスプレートフランジでは、導圧管を介してプロセス導管内の流体圧力を差圧センサに伝達する圧力タップが用いられている。2つのオリフィスプレートフランジの間に設けられたオリフィスプレートは、例えばローズマウント(Rosemount、登録商標)製の1496オリフィスプレートであって、流体がオリフィスを通過する際に、オリフィスプレートの下流側に圧力低下を生じさせることにより、2つの異なる圧力が差圧センサに伝達されようになっている。このときの差圧は、プロセス導管内を流動する流体の流速に応じたものとなり、流速の上昇によって2つの圧力の差が増大する。2つの圧力は、圧力タップ及び導圧管を介して差圧センサに伝達され、差圧センサがこれら2つの圧力の差を直接的に検出する。
図5Aは、本発明を組み入れたプロセス構成部品をオリフィスプレートフランジとした一実施形態を示す図である。図5Aには、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス412、オリフィスプレートフランジ414、オリフィスプレート415、オリフィスプレートフランジ416、スタッド及びナット418、並びにプロセス流体Fを収容するプロセス導管420を備えた、プロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント(以下、総称してプロセス計測・制御ポイントとする)410が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられており、この周囲流体Aは、プロセス計測・制御ポイント410を取り囲み、一般的には空気からなる。流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス412は、電子回路ハウジング422、電子回路423、アンテナ324、差圧センサ(DPセンサ)430、高圧側(上流側)導圧管432、及び低圧側(下流側)導圧管434を備える。高圧側導圧管432及び低圧側導圧管434は、例えばステンレス鋼など、プロセス流体Fに化学的な適合性を有する金属性のパイプであるのが一般的である。電子回路423は、図4Aに基づき説明したものと同様のものであり、それぞれ100ずつ増加させた符号を有している。オリフィスプレートフランジ414は、高圧側圧力タップ433、熱電発電機構426(図5Bに示す)、伝熱部材427、断熱部材428、及びヒートパイプ450(図5Bに示す)を備えたインライン型プロセス構成部品である。熱電発電機構426は電力ケーブル458を備える。オリフィスプレートフランジ416は、低圧側圧力タップ435を備えたインライン型プロセス構成部品である。オリフィスプレートフランジ414、オリフィスプレート415、オリフィスプレートフランジ416、スタッド及びナット418、及びシールガスケット(図示せず)により、オリフィスプレートフランジユニオンが構成される。
オリフィスプレートフランジ414及びオリフィスプレートフランジ416は、プロセス導管420の部位Wに、例えば溶接によって取り付けられている。オリフィスプレート415は、オリフィスプレート415とオリフィスプレートフランジ414との間に第1シールガスケットを設けると共に、オリフィスプレート415とオリフィスプレートフランジ416との間に第2シールガスケットを設けた状態で、オリフィスプレートフランジ414とオリフィスプレートフランジ416との間に挿入されている。オリフィスプレートフランジ414、オリフィスプレート415、オリフィスプレートフランジ416、及び2つのシールガスケットは、複数のスタッド及びナット418を用い、互いに組み付けられている。熱電発電機構426は、オリフィスプレートフランジ414に一体的に組み込まれ、プロセス流体F及び周囲流体Aと熱的に接するようになっている。断熱部材428は、プロセス流体Fと熱的に接するオリフィスプレートフランジ414の部位から、周囲流体Aと熱的に接する伝熱部材427を熱的に遮蔽する位置に設けられる。高圧側導圧管432は、例えば螺合により、オリフィスプレートフランジ414の高圧側圧力タップ433に接続されている。同様に、低圧側導圧管434が低圧側圧力タップ435に接続されている。高圧側導圧管432により高圧側圧力タップ433が、また低圧側導圧管434により低圧側圧力タップ435が、それぞれDPセンサ430に接続されることにより、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス412が、オリフィスプレートフランジ414及びオリフィスプレートフランジ416とそれぞれ物理的に連結される。DPセンサ430は、センサ回路436を介し、電子回路ハウジング422内の電子回路423に接続されている。電子回路ハウジング422内の接続は、図4Aに基づき前述したものと同様である。
作動の際、高圧側導圧管432及び低圧側導圧管434は、DPセンサ430にプロセス圧力を伝達する。DPセンサ430は、高圧側導圧管432の圧力と低圧側導圧管434の圧力との差の変化に応じて電気的特性を変化させ、これら2つの圧力は、オリフィスプレートを通過するプロセス流体Fの流動が制限されることによって生じる。この電気的特性の変化は、センサ回路436流量計測値によって流量計測値に変換される。
上述した流量計測及びデータ伝送のための電力の少なくとも一部は、図4Aに基づき前述したものと同様に、100ずつ数を増やした符号を用いて図5B〜図5Fに示すようにして、ヒートパイプ450により効率的に生じる熱流を用いた熱電発電機構426の作動によって、本実施形態における流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス412に供給される。プロセス流体Fと周囲流体Aとの間の温度差によって生じる熱は、オリフィスプレートフランジ414内のヒートパイプ450によって移動する。この熱は、伝熱部材427による周囲流体A中への熱の放散により、熱電発電機構426を流動し、電力が発生する。
図5Bはオリフィスプレートフランジ414の断面図であって、熱電発電機構426、伝熱部材427、断熱部材428、及びヒートパイプ450を示している。図5Cは、図5Bの一部を拡大し、熱電発電機構426、伝熱部材427、断熱部材428、及びヒートパイプ450の一部の詳細をより明確に示す図である。図5Cは、例えば螺合(図示)または溶接による結合により、オリフィスプレートフランジ414のフランジ本体部分に取り付けられたオリフィスプレートフランジ414の延設部分を主に示している。オリフィスプレートフランジ414の延設部分は、断熱部材428による遮蔽に加え、周囲流体Aに熱的に接する伝熱部材427と、プロセス流体Fに熱的に接するオリフィスプレートフランジ414の部分との間で更に良好な断熱を行うための空間的な分離を行う。図示するように、伝熱部材427は、例えば銅などの高い熱伝導率の素材からなるピンフィン型の熱交換器であって、体積に対する表面積の比を大きくすることにより熱の移動を促進するように構成されている。
図5B及び図5Cに示すように、熱電発電機構426は、熱電素子452、熱拡散部材454、及び電力ケーブル458を備える。熱電素子452及び熱拡散部材454は、図4Aに基づき前述したものと同様のものであって、それぞれ100ずつ増加させた符号を有する。ヒートパイプ450は、充填ポート460、プラグ462、集熱キャビティ464、熱移動パイプ466、及び脱熱キャビティ468を備えている。集熱キャビティ464は、プロセス流体Fと直接的に接するオリフィスプレートフランジ414の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ450の部位である。脱熱キャビティ468は、熱電発電機構426と直接的に接するヒートパイプ450の部位である。熱移動パイプ466は、集熱キャビティ464と脱熱キャビティ468とを結合するヒートパイプ450の部位である。ヒートパイプ450は、ウィッキング部材(図示せず)と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同じである。
ヒートパイプ450は、集熱キャビティ464から、集熱キャビティ464と脱熱キャビティ468とを結合する熱移動パイプ466を経て、脱熱キャビティ468まで延設されている。ヒートパイプ450の脱熱キャビティ468は、熱拡散部材454を介して熱電発電機構426と結合されている。熱拡散部材454は、熱電素子452の1つの面に密着して取り付けられており、伝熱部材427は、熱拡散部材454の側とは反対側となる熱電素子452の面に密着して取り付けられている。電力ケーブル458は、電源制御回路444を介し、熱電素子452を電子回路ハウジング422内の電子回路423に接続する(図5Aに示す)。断熱部材428は、伝熱部材427とオリフィスプレートフランジ414の外面との間の空隙に配設され、伝熱部材427の端部より外側に張り出すことにより、伝熱部材427とオリフィスプレートフランジ414のフランジ本体部分との間での良好な断熱効果を確保している。
図5Bに示すように、集熱キャビティ464は、プロセス流体Fに近接するオリフィスプレートフランジ414の部位の多くの部分にわたって延設されている。図5Dは、集熱キャビティ464の筒状形状を示すオリフィスプレートフランジ414の断面図である。このような形状がプロセス流体Fを取り囲んでおり、プロセス流体Fからヒートパイプ450への伝熱のための大きな表面積が得られる。
図5Eは、オリフィスプレートフランジ414の更に別の断面図であり、図5Bから方向を90度変えたオリフィスプレートフランジ414の断面を示している。図5Eには、図5Bと同じ番号が付与された部材に加え、高圧側圧力タップ433及び複数のボルト孔474が示されている。伝熱部材427は、熱電素子452から大きく張り出して延設されることにより、体積に対する表面積の比を大きくして周囲流体Aとの間の熱の移動を促進している。断熱部材428は、伝熱部材427とオリフィスプレートフランジ414の外面との間の空隙に配設され、伝熱部材427の端部より外側に十分に張り出すことにより、伝熱部材427と、オリフィスプレートフランジ414のフランジ本体部分及び延設部分の両方との間での良好な断熱効果を確保している。
図5Fは、図5Bから中心軸線周りに90度回転した方向のオリフィスプレートフランジ414の更に別の断面図である。図5Fには、高圧側圧力タップ433とヒートパイプ450の集熱キャビティ464とが示されている。図5B、図5E、及び図5Fに示すように、ヒートパイプ450は高圧側圧力タップ433から完全に分離されており、高圧側圧力タップ433の機能に干渉することはない。
図5Aは、上流側に配設されたオリフィスプレートフランジ414について図示するものであるが、これに代えて下流側に配設した場合においても、本発明を組み入れたオリフィスプレートフランジは同様に機能する。また、図5Aは、本発明を組み入れて流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス412への電力供給を行うようにしたオリフィスプレートフランジ414のみを示しているが、本発明をオリフィスプレートフランジ414と同様にオリフィスプレートフランジ416にも組み入れることができる。このような構成とすることにより、例えばワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークとの通信が更に頻繁になるといった、適用先の要求に対応し、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス412に供給する電力を増大させることができる。また、増大した電力は、例えば中央制御装置、ゲートウエイ、リモートテレメトリユニット、またはゲートウエイをより上位のネットワークもしくはホストコンピュータに接続するバックホール無線機など、ワイヤレスフィールドデバイスネットワークにおける別の構成要素への電力供給にも有用である。
図5A〜図5Fに示すような本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接するオリフィスプレートフランジにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。容器の壁を直に貫通することにより、熱電発電装置と容器の壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ464の内面全域からヒートパイプ450内に熱が流入し、集熱キャビティ464の内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプ450によって移動する際の熱流束を極めて大きなものとすることができる。
図6A〜図6Eは、プロセス構成部品に組み込まれた熱電発電装置を用い、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の更に別の実施形態を示しており、この実施形態では、プロセス構成部品を蒸気トラップとし、ワイヤレスデバイスをワイヤレスデータルータとしている。図5A〜図5Dに基づき説明した実施形態と同様に、本実施形態では、プロセス容器に設けられた外方へ向けての開口部への取り付けに代え、プロセス流体(またはプロセス流体の副生成物)が流動するプロセス導管の一区域が用いられる。図6Aは、本発明を組み入れたプロセス構成部品として蒸気トラップを示している。蒸気トラップ514は、プロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント(以下、総称してプロセス計測・制御ポイントとする)510において、主として蒸気を送給するプロセス導管である蒸気導管516に取り付けられている。プロセス計測・制御ポイント510は、蒸気から凝縮した水が自然に集まる場所である。プロセス計測・制御ポイント510は、ワイヤレスデータルータ512を備えている。凝縮水は、蒸気導管516から周囲環境への熱損失によって生じるプロセス流体の副生成物である。蒸気トラップ514は、凝縮水を蒸気導管516から流出させて、凝縮水排出用のプロセス導管である凝縮水導管520に流入させると共に、凝縮水導管520への蒸気の漏出を抑制し概ね防止する機構を備えている。
図6B〜図6Eは、図6Aに示す蒸気トラップ514による本発明の具現化の内容を示す図である。図6Bには、ワイヤレスデータルータ512、蒸気トラップ514、蒸気導管516、及び凝縮水導管520を備えたプロセス計測・制御ポイント510が示されている。ワイヤレスデータルータ512は、電子回路ハウジング522、電子回路523、及びアンテナ524を備える。電子回路523は、トランシーバ540、データルータ542、電源制御回路544、及びエネルギ貯蔵素子546を備える。蒸気トラップ514は、熱電発電機構526(図6Eに示す)、伝熱部材527、断熱部材528、蒸気トラップボルト518、及びヒートパイプ550(図6C〜図6Eに示す)を備える。熱電発電機構526は電力ケーブル558を備える。図示するように、伝熱部材527は、ピンフィン型の熱交換器である。
蒸気トラップ514は、例えば螺合による結合によって、蒸気導管516及び凝縮水導管520に取り付けられている。熱電発電機構526は、蒸気トラップ514に一体的に組み込まれており、蒸気・凝縮水F及び周囲流体Aと熱的に接するようになっている。蒸気・凝縮水Fは、蒸気と凝縮水との混合物である。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられており、蒸気・凝縮水Fと周囲流体Aとは異なる温度にある。電力ケーブル558は、電源制御回路544を介し、熱電発電機構526を電子回路ハウジング522内の電子回路523に接続する。
作動の際、蒸気トラップ514は、図6Cに基づき後述するようにして、蒸気導管516で生じた凝縮水を蒸気導管516から流出させて凝縮水導管520に流入させる。ワイヤレスデータルータ512は、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークから受け取ったデータパケットを所定の経路で伝送する。このようなデータ伝送のための電力の少なくとも一部は、図6C〜図6Eに基づき以下に詳述するように、ヒートパイプ550によって効率的に生じる熱流を用いた熱電発電機構526の作動により、本実施形態におけるワイヤレスデータルータ512に供給される。蒸気・凝縮水Fと周囲流体Aとの間の温度差によって生じる熱流は、蒸気トラップ514内のヒートパイプ550(図6C〜図6Eに示す)によって移動するものとなる。この熱流は、伝熱部材527による周囲流体A中への熱の放散によって熱電発電機構526を伝わるものとなり、電力が発生する。
図6Cは、ヒートパイプ550の一部である集熱キャビティ564を示す、蒸気トラップ514の断面図である。図6Cに示すように、集熱キャビティ564は蒸気トラップ514の内壁面に沿って延設されており、蒸気・凝縮水Fから熱を収集する。図6Dは、集熱キャビティ564の筒状形状を示す、蒸気トラップ514の断面図である。このような形状が、蒸気トラップ514を流動する蒸気・凝縮水Fを取り囲んでおり、蒸気・凝縮水Fからヒートパイプ550への伝熱のための大きな表面積が得られる。
図6Eは、蒸気トラップ514の更に別の断面図であって、図6Cから方向を90度変えた蒸気トラップ514の断面が示されている。図6Eには、図6Cと同じ番号が付与された部材に加え、熱電素子552と熱拡散部材554とを備えた熱電発電機構526が示されている。熱電素子552及び熱拡散部材554は、図4Aに基づき前述したものと同じものであり、それぞれ200ずつ異なる符号を有する。ヒートパイプ550は、充填ポート560a、充填ポート560b、プラグ562a、プラグ562b、集熱キャビティ564、熱移動パイプ566、及び脱熱キャビティ568を備えている。集熱キャビティ564は、蒸気・凝縮水Fと直接的に接する蒸気トラップ514の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ550の部位である。脱熱キャビティ568は、熱電発電機構526の熱拡散部材554と直接的に接するヒートパイプ550の部位である。熱移動パイプ566は、集熱キャビティ564と脱熱キャビティ568とを結合するヒートパイプ550の部位である。ヒートパイプ550は、ウィッキング部材(図示せず)と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同じである。
ヒートパイプ550は、集熱キャビティ564から、集熱キャビティ564と脱熱キャビティ568とを結合する熱移動パイプ566を経て、脱熱キャビティ568まで延設されている。ヒートパイプ550の互いに対向する位置にある2つの充填ポートを用いることにより、更に効率的に作業流体の注入を行うことができる。ヒートパイプ550の脱熱キャビティ568は、熱拡散部材554を介し、熱電発電機構526と結合されている。熱拡散部材554は、熱電素子552の1つの面に密着して取り付けられており、伝熱部材527は、熱拡散部材554の側とは反対側となる熱電素子552の面に密着して取り付けられている。断熱部材528は、伝熱部材527と蒸気トラップ514の外面との間の空隙に配設され、伝熱部材527の端部より外側に張り出すことにより、伝熱部材527と蒸気トラップ514の外面との間での良好な断熱効果を確保している。
データ伝送のための電力は、図4Aに基づき前述したものと同様として200ずつ数を増やした符号を適用した構成により、ヒートパイプ550が効率的に生成する熱流を用いた熱電発電機構526の作動によって供給される。単一の熱電発電機構で図6A〜図6Eの実施形態を説明したが、同様の熱電発電機構を更に加え、例えばワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワークとの通信が更に頻繁になるなど、適用先の要求に対応し、ワイヤレスデータルータに供給する電力を増大させてもよい。
図6A〜図6Eに示すような本発明の実施形態では、蒸気及び凝縮水の流体と直接的に接する蒸気トラップにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。蒸気トラップの壁を直に貫通することによって、熱電発電装置と蒸気トラップの外面との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、蒸気トラップの壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ564の内面全域からヒートパイプ550内に熱が流入し、集熱キャビティ564の内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプ550によって移動する際の熱流束を極めて大きなものとすることができる。
図7A〜図7Eは、プロセス構成部品に組み込まれた熱電発電装置を用い、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の更に別の実施形態を示しており、この実施形態では、プロセス構成部品をベンチュリ管とし、ワイヤレスデバイスを流量計測用ワイヤレスフィールドデバイスとしている。上述したオリフィスプレートフランジの実施形態や蒸気トラップの実施形態と同様に、本実施形態でも、プロセス容器に設けられた外方へ向けての開口部への取り付けに代え、プロセス流体(またはプロセス流体の副生成物)が流動するプロセス導管の一区域が用いられる。ベンチュリ管は、筒状部へと至る縮径部と、筒状部から延設される拡径部とを備える。筒状部が流体の流動を制限することにより、入口部分の圧力に比べ、筒状部内には低い圧力が生じる。例えばダニエル(Daniel、登録商標)製のベンチュリ管などのベンチュリ管は2つの圧力タップを有し、一方の圧力タップが入口部分に設けられ、他方の圧力タップが筒状部に設けられており、導圧管を介してベンチュリ管内の流体圧力を差圧センサに伝達するようになっている。このときの差圧は、ベンチュリ管を通過する流体の流速との間に、ベルヌーイの式で表される関係を有する。流速の増加に伴い2つの圧力間の差が増大する。2つの圧力は、圧力タップ及び導圧管を介して差圧センサに伝達され、これら2つの圧力間の差を差圧センサが直接的に計測する。
図7A及び図7Bは、本発明を組み入れたプロセス構成部品をベンチュリ管とした実施形態を示している。図7Aには、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス612、ベンチュリ管614、及びプロセス流体Fを収容するプロセス導管620を備えたプロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント(以下、総称してプロセス計測・制御ポイントとする)610が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられる。流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス612は、電子回路ハウジング622、電子回路623、アンテナ624、差圧センサ(DPセンサ)630、高圧側(上流側)導圧管632、及び低圧側(下流側)導圧管634を備えており、これらは図5Aに基づき上述したものと同様のものであって、それぞれ200ずつ増加させた符号を有する。図7Bは、図7Aから流動の中心軸線周りに90度回転させたベンチュリ管614を示している。ベンチュリ管614は、高圧側圧力タップ633、低圧側圧力タップ635、熱電発電機構626(図7C及び図7Eに示す)、伝熱部材627、断熱部材628、及びヒートパイプ650(図7C〜図7Eに示す)を備えたインライン型プロセス構成部品である。熱電発電機構626は電力ケーブル658を備える。図示するように、伝熱部材627はピンフィン型の熱交換器である。
図7A及び図7Bに示すように、ベンチュリ管614は、例えば溶接またはボルトによって、プロセス導管620のフランジWに取り付けられている。熱電発電機構626は、ベンチュリ管614に一体的に組み込まれ、プロセス流体F及び周囲流体Aと熱的に接するようになっている。断熱部材628は、プロセス流体Fと熱的に接するベンチュリ管614の部位から、周囲流体Aと熱的に接する伝熱部材627を熱的に遮蔽する位置に設けられる。高圧側導圧管632は、例えば螺合により、ベンチュリ管614の高圧側圧力タップ633に接続されている。同様に、低圧側導圧管634が低圧側圧力タップ635に接続されている。高圧側導圧管632により高圧側圧力タップ633が、また低圧側導圧管634により低圧側圧力タップ635が、それぞれDPセンサ630に接続されることで、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス612がベンチュリ管614と物理的に接続される。電子回路ハウジング622内の接続は、図5Aに基づき前述したものと同様であり、各構成要素はそれぞれ200ずつ番号を増加させた符号を有する。
図7Cは、熱電発電機構626、断熱部材628、及びヒートパイプ650を示す、ベンチュリ管614の軸線方向断面図である。熱電発電機構626は、熱電素子652と熱拡散部材654とを備える。熱電素子652及び熱拡散部材654は、図4Aに基づき前述したものと同じものであって、それぞれ300ずつ異なる符号を有する。ヒートパイプ650は、充填ポート660、プラグ662、集熱キャビティ664、熱移動パイプ666、及び脱熱キャビティ668を備える。集熱キャビティ664は、プロセス流体Fと直接的に接するベンチュリ管614の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ650の部位である。脱熱キャビティ668は、熱電発電機構626と直接的に接するヒートパイプ650の部位である。熱移動パイプ666は、集熱キャビティ664と脱熱キャビティ668とを結合するヒートパイプ650の部位である。ヒートパイプ650は、ウィッキング部材(図示せず)と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同じである。
流量計測及びデータ伝送のための電力の少なくとも一部は、ヒートパイプ650によって効率的に生じる熱流を用いた熱電発電機構626の作動により供給される。集熱キャビティ664がプロセス流体Fから熱を収集し、熱移動パイプ666が集熱キャビティ664から脱熱キャビティ668へと熱を移動させる。脱熱キャビティ668では、熱が熱拡散部材654に伝達され、熱拡散部材654は、当該熱拡散部材654を介して熱が熱電素子652に伝わる際に、熱流束を均一化する。熱電素子652を熱が流動する際、熱電素子652を流動する熱の量に応じて電圧及び電流が発生する。熱電素子652が発生した電力は、電力ケーブル658により、電力制御回路644を介して電子回路ハウジング622内の電子回路623に供給される。
図7Cに示すように、集熱キャビティ664は、プロセス流体Fと直接的に接するベンチュリ管614の筒状部の多くの部分に沿って延設されている。図7Dは、集熱キャビティ664の筒状形状を示すベンチュリ管614の断面図である。このような形状がプロセス流体Fを取り囲んでおり、プロセス流体Fからヒートパイプ650への伝熱のための大きな表面積が得られる。
図7Eは、ベンチュリ管614の別の断面図である。図7Eには、図7Cと同じ番号が付与された部材に加え、低圧側圧力タップ635が示されている。伝熱部材627は、熱電素子652から外側に大きく張り出して延設されており、体積に対する表面積の比を大きくして周囲流体Aとの間での熱の移動を促進している。断熱部材628は、伝熱部材627とベンチュリ管614の外面との間の空隙に配設され、伝熱部材627の端部から外側に十分に張り出すことにより、伝熱部材627とベンチュリ管614の外面との間での良好な断熱効果を確保している。図7Eに示すように、ヒートパイプ650は低圧側圧力タップ635から完全に分離されており、低圧側圧力タップ635の機能に干渉することはない。
図7A〜図7Eに示すような本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接するベンチュリ管にヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。容器の壁を直に貫通することによって、熱電発電装置と容器の壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ664の内面全域からヒートパイプ650内に熱が流入し、集熱キャビティ664の内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプ650によって移動する際の熱流束を極めて大きなものとすることができる。図7A〜図7Eに示す実施形態はベンチュリ管であるが、例えば電磁式流量計測管や渦管など、別の流動管を用いたシステムにも適用可能である。
図8A〜図8Eは、プロセス構成部品に組み込まれた熱電発電装置を用い、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の更に別の実施形態を示しており、この実施形態では、プロセス構成部品を遠心ポンプとし、ワイヤレスデバイスをワイヤレスデータルータとしている。これまでに説明したいくつかの実施形態と同様に、本実施形態では、プロセス容器の外面への取り付け(固定)に代え、プロセス流体(またはプロセス流体の副生成物)が流動するプロセス導管の一区域が用いられる。プロセス流体を送給するプロセス導管に直列にポンプが設けられており、プロセス流体に運動エネルギを付加することにより、プロセス流体の流速または圧力を増大させる。運動エネルギは、例えば遠心ポンプにおいて、遠心力を利用するインペラの回転により付与され、径方向にプロセス流体を加速する。
図8A〜図8Cは、本発明を組み入れたプロセス構成部品をポンプとした実施形態を示している。図8Aには、ワイヤレスデータルータ712、ポンプ714、及びプロセス流体Fを収容するプロセス導管720を備えたプロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント(以下、総称してプロセス計測・制御ポイントとする)710が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられる。ワイヤレスデータルータ712は、電子回路ハウジング722、電子回路723、及びアンテナ724を備えており、これらは図6Bに基づき上述したものと同じものであって、それぞれ200ずつ増加させた符号を有する。ポンプ714は、熱電発電機構726、伝熱部材727、及び断熱部材728を備えたインライン型プロセス構成部品である。図示するように、伝熱部材727はピンフィン型の熱交換器である。
図8Bは、ポンプ714の断面図であって、ポンプ714は、ヒートパイプ750、インペラ780、モータ782、シャフト784、並びにシール及びベアリング786を備える。モータ782の内部構成部品は明瞭化のために省略されている。図8Bは、シャフト784の軸線周りに90度回転させたポンプ714を示している。図8Cは、図8Bの一部を拡大し、熱電発電機構726、断熱部材728、及びヒートパイプ750の一部を詳細に示す図である。図8Cは、例えば螺合(図示)または溶接による結合により、ポンプ714の本体部分に取り付けられたポンプ714の拡張部分を拡大して示す図である。熱電発電機構726は、熱電素子752、熱拡散部材754、及び電力ケーブル758を備えており、これらは図4Aに基づき前述したものと同じものであり、それぞれ400ずつ増大させた符号を有する。ヒートパイプ750は、充填ポート760、プラグ762、集熱キャビティ764、熱移動パイプ766、及び脱熱キャビティ768を備える。集熱キャビティ764は、プロセス流体Fと直接的に接するポンプ714の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ750の部位である。脱熱キャビティ768は、熱電発電機構726と直接的に接するヒートパイプ750の部位である。熱移動パイプ766は、集熱キャビティ764と脱熱キャビティ768とを結合するヒートパイプ750の部位である。ヒートパイプ750は、ウィッキング部材772と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同じである。インペラ780は、当該インペラ780が回転するときにプロセス流体Fを加速して、プロセス流体Fがポンプ714から吐出される際のプロセス流体Fの流速または圧力を上昇させるブレードを有した、概ね円錐台形状の部材である。モータ782は、電動モータなどの任意の形式のモータである。シャフト784は、モータ782をインペラ780に連結してインペラ780を回転させるための、耐久性を有した概ね円筒状の部材である。ベアリング及びシール786は、シャフト784からのプロセス流体Fの漏出を十分に防止しつつ、シャフト784の貫通と回転を許容する部材である。
図8A、図8B、及び図8Cに示すように、ポンプ714は、例えば溶接またはボルトにより、プロセス導管720のフランジWに取り付けられる。熱電発電機構726は、ポンプ714に一体的に組み込まれ、プロセス流体F及び周囲流体Aと熱的に接するようになっている。電子回路ハウジング722内の接続は、図6Bに基づき前述したものと同様であり、各構成要素はそれぞれ200ずつ番号を増加させた符号を有する。ヒートパイプ750は、集熱キャビティ764から、集熱キャビティ764と脱熱キャビティ768とを結合する熱移動パイプ766を経て、脱熱キャビティ768まで延設されている。ヒートパイプ750の脱熱キャビティ768は、熱拡散部材754を介し、熱電発電機構726に結合されている。熱拡散部材754は、熱電素子752の1つの面に密着して取り付けられており、伝熱部材727は、熱拡散部材754の側とは反対側となる熱電素子752の面に密着して取り付けられている。
作動の際には、モータ782がシャフト784を介してインペラ780を回転させることにより、プロセス流体Fをポンプ714内に吸引して加速し、プロセス流体Fがポンプ714から吐出される際のプロセス流体Fの流速または圧力を上昇させる。ワイヤレスデータルータ712は、図6Bに基づいて前述したようにして作動するものであって、200だけ増大した符号を有している。
本実施形態において、ワイヤレスデータルータ712の作動に必要な電力の少なくとも一部は、図4Aに基づき前述したものと同様としてそれぞれ400ずつ符号を増大させた構成により、ヒートパイプ750が効率的に生成する熱流を用いた熱電発電機構726の作動によって供給される。
図8Bに示すように、集熱キャビティ764は、ポンプ714の内壁面に沿って延設されており、プロセス流体Fがインペラ780によってポンプ714から圧送される際に、プロセス流体Fから熱を収集する。図8D〜図8Fは、集熱キャビティ764の形状を示す、ポンプ714の中心軸線方向の断面図である。図8B、及び図8D〜図8Fには、流入口(図8B及び図8F)、流出口(図8E)、並びにベアリング及びシール786(図8B及び図8D)に必要な開口部を除き、集熱キャビティ764がポンプ714の内部空間を取り囲んだ構造であることが示されている。このようにポンプ714の内部空間を取り囲むことにより、プロセス流体Fからヒートパイプ750への伝熱のための大きな表面積が得られる。
図8A〜図8Fに示すような本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接するポンプにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。ポンプの壁を直に貫通することによって、熱電発電装置とポンプの外面との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、ポンプの壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ764の内面全域からヒートパイプ750内に熱が流入し、集熱キャビティ764の内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプ750によって移動する際の熱流束を極めて大きなものとすることができる。図8A〜図8Fの実施形態は遠心ポンプで説明したが、任意の形式のポンプに適用することが可能である。
図9A〜図9Cは、プロセス構成部品に組み込まれた熱電発電装置を用い、ワイヤレスフィールドデバイスメッシュネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給するための、本発明の更に別の実施形態を示しており、この実施形態では、プロセス構成部品をオリフィスプレートとし、ワイヤレスデバイスを流量計測用ワイヤレスフィールドデバイスとしている。これまでに説明したいくつかの実施形態と同様に、本実施形態では、プロセス容器の外方へ向けての開口部への取り付けに代え、プロセス流体(またはプロセス流体の副生成物)が流動するプロセス導管の一区域が用いられる。2つのオリフィスプレートフランジの間に配設された、例えばローズマウント(Rosemount、登録商標)製の1495オリフィスプレートなどのオリフィスプレートによって、流体がオリフィスを通過する際にオリフィスプレートの下流側に圧力低下が生じることにより、図5A〜図5Fに基づき前述したように、2つの異なる圧力が差圧センサに伝達される。
図9A〜図9Cは、本発明を組み入れたプロセス構成部品をオリフィスプレートとした実施形態を示している。図9Aには、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス812、オリフィスプレートフランジ814、オリフィスプレート815、オリフィスプレートフランジ816、スタッド及びナット818、並びにプロセス流体Fを収容するプロセス導管820を備えたプロセス計測ポイントまたはプロセス制御ポイント(以下、総称してプロセス計測・制御ポイントとする)810が示されている。周囲流体Aによる熱吸収源が設けられる。流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス812は、電子回路ハウジング822、電子回路823、アンテナ824、無線通信用ケーブル825、差圧センサ(DPセンサ)830、高圧側(上流側)導圧管832、及び低圧側(下流側)導圧管834を備える。DPセンサ830、高圧側導圧管832、低圧側導圧管834、及び電子回路823は、図5Aに基づき説明したものと同様のものであり、それぞれ400ずつ増加させた符号を有する。例えばローズマウント(Rosemount、登録商標)製の1496フランジユニオンに設けられるオリフィスプレートフランジのように、オリフィスプレートフランジ814は高圧側圧力タップ833を備え、オリフィスプレートフランジ816は低圧側圧力タップ835を備える。オリフィスプレート815は、熱電発電機構826(図9B及び図9Cに示す)、伝熱部材827、断熱部材828、及びヒートパイプ850(図9B及び図9Cに示す)を備えたインライン型プロセス構成部品である。オリフィスプレートフランジ814、オリフィスプレート815、オリフィスプレートフランジ816、スタッド及びナット818、並びに2つのシールガスケット821(図9Bに示す)によってオリフィスプレートフランジユニオンが構成される。熱電発電機構826は電力ケーブル858を備える。図示するように、伝熱部材827はピンフィン型の熱交換器である。
オリフィスプレートフランジ814及びオリフィスプレートフランジ816は、例えば溶接によって、部位Wに取り付けられている。オリフィスプレート815は、オリフィスプレート815とオリフィスプレートフランジ814との間にシールガスケット821を設けると共に、オリフィスプレート815とオリフィスプレートフランジ816との間にもう1つのシールガスケット821を設けた状態で、オリフィスプレートフランジ814とオリフィスプレートフランジ816との間に挿入されている。オリフィスプレートフランジ814、オリフィスプレート815、オリフィスプレートフランジ816、及び2つのシールガスケットは、複数のスタッド及びナット818によって互いに結合され固定される。熱電発電機構826は、オリフィスプレート815に一体的に組み込まれ、プロセス流体F及び周囲流体Aと熱的に接するようになっている。断熱部材828は、プロセス流体Fと熱的に接するオリフィスプレート815の部位から、周囲流体Aと熱的に接する伝熱部材827を熱的に遮蔽する位置に設けられる。アンテナ824は、電子回路ハウジング822から離間した位置にあって、無線通信用ケーブル825により電子回路823に接続されている。他の接続は図5Aに基づき前述したものと同様であり、各構成部材はそれぞれ400ずつ増大した符号を有する。また、作動も図5Aに基づき前述したものと同様である。
本実施形態において、上述した流量計測及びデータ伝送のための電力の少なくとも一部は、図9B及び図9Cに詳細に示すように、ヒートパイプ850によって効率的に生じる熱流を用いた熱電発電機構826の作動により、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイス812に供給される。プロセス流体Fと周囲流体Aとの間の温度差によって生じる熱流は、オリフィスプレート815内のヒートパイプ850によって移動するものとなる。この熱流は、伝熱部材827による周囲流体A中への熱の放散により、熱電発電機構826を伝わるものとなって電力が発生する。
図9Bは中心軸線方向のオリフィスプレート815の断面図、図9Cは中心軸線に直交する方向のオリフィスプレート815の断面図であり、それぞれ熱電発電機構826、断熱部材828、及びヒートパイプ850を示している。図9B及び図9Cに示すように、熱電発電機構826は、熱電素子852、熱拡散部材854、及び電力ケーブル858を備える。熱電素子852及び熱拡散部材854は、図4Aに基づき前述したものと同じものであって、それぞれ500ずつ増大した符号を有する。ヒートパイプ850は、充填ポート860、プラグ862、集熱キャビティ864、熱移動パイプ866、及び脱熱キャビティ868を備える。集熱キャビティ864は、プロセス流体Fと直接的に接するオリフィスプレート815の部位の内部に埋め込まれたヒートパイプ850の部位である。脱熱キャビティ868は、熱電発電機構826と直接的に接するヒートパイプ850の部位である。熱移動パイプ866は、集熱キャビティ864と脱熱キャビティ868とを結合するヒートパイプ850の部位である。ヒートパイプ850は、ウィッキング部材(図示せず)と、液相及び気相の両方の状態で存在する作業流体(図示せず)とを備えており、これらウィッキング部材及び作業流体は、いずれも図2D〜図2Fに基づき前述したものと同じである。
ヒートパイプ850は、集熱キャビティ864から、集熱キャビティ864と脱熱キャビティ868とを結合する熱移動パイプ866を経て、脱熱キャビティ868まで延設されている。ヒートパイプ850の脱熱キャビティ868は、熱拡散部材854を介し、熱電発電機構826に結合されている。熱拡散部材854は、熱電素子852の1つの面に密着して取り付けられており、伝熱部材827は、熱拡散部材854の側とは反対側となる熱電素子852の面に密着して取り付けられている。電力ケーブル858は、電源制御回路844を介し、熱電素子852を電子回路ハウジング822内の電子回路823に接続する(図9Aに示す)。
流量計測及びデータ伝送に必要な電力は、図4Aに基づき前述したものと同様としてそれぞれ500ずつ符号を増大させた構成により、ヒートパイプ850が効率的に生成する熱流を用いた熱電発電機構826の作動によって供給される。集熱キャビティ864は、図9B及び図9Cに示すように、プロセス流体Fに近接するオリフィスプレート815の部位の多くの部分に沿って延設されている。
図9A〜図9Cに示すような本発明の実施形態では、プロセス流体と直接的に接するオリフィスプレートにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。容器の壁を直に貫通することにより、熱電発電装置と容器の壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁における熱抵抗の問題が解消される。また、集熱キャビティ864の内面全域からヒートパイプ850内に熱が流入し、集熱キャビティ864の内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプ850によって効率的に熱が移動する。更に、オリフィスプレートは迅速且つ容易に構成を変更することができる。従って、図9A〜図9Cに示すオリフィスプレートのように本発明を適用したオリフィスプレートは、ワイヤレスデバイスに電力を供給する本発明を適用していないオリフィスプレートに容易に置き換えることができる。
前述した全ての実施形態は、伝熱部材をピンフィン型の熱交換器として示したが、周囲流体Aとの間で効率的に熱交換を行う任意の部材を伝熱部材とすることが可能である。伝熱部材のもう1つの例はフィン付熱交換器である。伝熱部材の更にもう1つの例は、熱拡散部材とは反対側となる熱電素子の面に熱的に接するもう1つのヒートパイプを用い、周囲流体への伝熱を更に促進するものである。
図10は、2つのプロセス構成部品のそれぞれに組み込まれて、流量計測用ワイヤレスフィールドデバイスに電力を供給するための、本発明の実施形態を示す図である。本実施形態は、2つのプロセス構成部品のそれぞれに対し、他方のプロセス構成部品内にあるプロセス流体が熱吸収源となる点で、前述した全ての実施形態と相違する。また、2つのプロセス構成部品のそれぞれについて、他方のプロセス構成部品のヒートパイプが伝熱部材となる。図10は、オリフィスプレートフランジ914a及びオリフィスプレートフランジ914bの断面図である。オリフィスプレートフランジ914a及びオリフィスプレートフランジ914bは、以下に述べる相違点を除き、図5A〜図5Fに基づき前述したオリフィスプレートフランジ414と構成及び機能が同一である。オリフィスプレートフランジ914aの延設部分にはフランジ連結部材988aが設けられ、オリフィスプレートフランジ914bの延設部分にはフランジ連結部材988bが設けられる。更に、断熱部材928aが、フランジ連結部材988aのところまでオリフィスプレートフランジ914aの延設部分に延設され、断熱部材928bが、フランジ連結部材988bのところまでオリフィスプレートフランジ914bの延設部分に延設されている。オリフィスプレートフランジ914a及びオリフィスプレートフランジ914bは熱電発電機構926を共有しており、この熱電発電機構926は、熱電素子952、第1熱拡散部材954a、第2熱拡散部材954b、及び電力ケーブル958を備える。そして、オリフィスプレートフランジ914a用の伝熱部材は、オリフィスプレートフランジ914bのヒートパイプ950bであり、同様に、オリフィスプレートフランジ914b用の伝熱部材は、オリフィスプレートフランジ914aのヒートパイプ950aとなっている。また、図10の実施形態は、接合部ガスケット990、クランプガスケット992、及びクランプ994も備える。接合部ガスケット990及びクランプガスケット992は、断熱材でもある圧縮性を有したガスケット材からなる。
オリフィスプレートフランジ914a及びオリフィスプレートフランジ914bは、ヒートパイプ950aが第1熱拡散部材954aを介して熱電発電機構926に結合されると共に、ヒートパイプ950bが第2熱拡散部材954bを介して熱電発電機構926に結合された状態で、熱電発電機構926を介し、互いに連結されている。熱電発電機構926の第1熱拡散部材954aは、熱電素子952の1つの面に密着して取り付けられ、熱電発電機構926の第2熱拡散部材954bは、第1熱拡散部材954aの側とは反対側となる熱電素子952の面に密着して取り付けられている。電力ケーブル958は、前述した各実施形態に示すようないずれかの形式のワイヤレスデバイスに熱電素子952を接続する。オリフィスプレートフランジ914aとオリフィスプレートフランジ914bとの連結部分は、クランプ994によって保持されたフランジ連結部材988a及びフランジ連結部材988bにより支持されている。クランプガスケット992は、クランプ994とフランジ連結部材988a及びフランジ連結部材988bとの間で、熱電素子952の周囲におけるクランプ994を介した熱の流動を抑制する。同様に、接合部ガスケット990は、フランジ連結部材988aとフランジ連結部材988bとの間で、熱電素子952の周囲におけるフランジ連結部材988a及びフランジ連結部材988bを介した熱の流動を抑制する。
図10に示すように、ヒートパイプ950aの熱移動パイプ966a及びヒートパイプ950bの熱移動パイプ966bは、硬質の構造に代えて可撓管で形成される。これにより、ヒートパイプ950a及びヒートパイプ950bの熱移動パイプを硬質の構造とした場合に比べ、フランジ連結部材988aとフランジ連結部材988bとの連結を容易に行うことが可能となる。可撓管は、例えばローズマウント(Rosemount、登録商標)製ダイヤフラムシールシステムのキャピラリ式接続用の外装付スリーブのような、薄肉金属管とするのが好ましい。
作動の際には、例えばプロセス流体F1の温度がプロセス流体F2の温度より高い状態で、オリフィスプレートフランジ914aに接するプロセス流体F1と、オリフィスプレートフランジ914bに接するプロセス流体F2との間の温度差によって熱流が生じる。この熱流は、オリフィスプレートフランジ914a内のヒートパイプ950aによって、プロセス流体F1から第1熱拡散部材954aへと移動するものとなる。熱流は、ヒートパイプ950bによる第2熱拡散部材954bからオリフィスプレートフランジ914b内のプロセス流体F2へ移動する熱流により、熱電発電素子952を通って第2熱拡散部材954bに伝わるものとなる。熱電発電素子952を通る熱の伝達によって電力が発生し、発生した電力は、電力ケーブル958を介し、前述した実施形態に示すいずれかの形式のワイヤレスデバイスに伝達される。
図10に示すような本発明の実施形態では、互いに温度が異なるプロセス流体と直接的に接する2つのオリフィスプレートのそれぞれにヒートパイプを内包することによって、熱電発電装置による変換に使用可能な熱流束を大幅に増大させることができる。容器の壁を直に貫通することによって、熱電発電装置と容器の壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁における熱抵抗の問題が解消される。また、図10の実施形態では、2つのオリフィスプレートのそれぞれに接するプロセス流体の温度を調整することにより、更に大きな熱流、及び調整がより容易な熱流の少なくとも一方を生成することが可能となる。
これまでに述べたいずれの実施形態も、ウィッキング部材を適用して、どのような方向に向いていても作動を可能としたヒートパイプを用いて説明を行った。ウィッキング部材によって、重力に反する場合を含め、ヒートパイプの向きに関わらず、脱熱キャビティから集熱キャビティへの比較的密度の高い液相の作業流体の移動が可能となる。いずれの実施形態においても、装置の向きによって脱熱キャビティの方が集熱キャビティよりも高い位置となり、液相の作業流体よりかなり低密度の気相の作業流体が脱熱キャビティへと上昇すると共に、液相の作業流体が集熱キャビティへと下降していくのであれば、ウィッキング部材を省略してもよい。
前述したいくつかの実施形態では、アンテナが電子回路ハウジングの外面に取り付けられてトランシーバに電気的に接続されている。また別の実施形態では、アンテナが分離して設けられて無線通信用ケーブルにより電子回路ハウジングに接続されるか、または、例えば配線基板上に装着された部品、もしくは配線基板と一体的な部品のようにして、電子回路ハウジング内にアンテナ全体が収容されている。いずれの実施形態においても、必要に応じ、これらのアンテナ形式のいずれかを適用することが可能である。
図10に示すように、本発明におけるヒートパイプの熱移動パイプは、硬質構造に代えて可撓管で形成してもよい。図10の実施形態にのみ示されているが、いずれの実施形態においても、少なくとも部分的に、硬質構造に代えて可撓管でヒートパイプの熱移動パイプを形成してもよい。これにより、例えば地面や土盛りなどの大きな構造物のような特定の熱吸収源の場合に、より一層容易に熱電発電機構を伝熱部材に結合することが可能となる。また、伝熱部材を例えばピンフィン型の熱交換器とし、熱吸収源を例えば大気とするような場合には、可撓管を用いることにより、自然対流の向上のためにピンフィン型の熱交換器の位置や向きを容易に調整することが可能となり、伝熱部材の性能を向上させることができる。そして、ヒートパイプの熱移動パイプの少なくとも一部に可撓管を用いることにより、プロセス流体に接するプロセス構成部品の部位と、熱電発電機構との間で振動が遮蔽される。強い振動を伴うプロセス環境では、このような構成により、熱電発電機構の信頼性を高めることができる。
プロセス構成部品内に組み込まれた熱電発電装置を用いることにより、様々な実施形態がワイヤレスフィールドデバイスネットワーク内のワイヤレスデバイスに電力を供給することができる。プロセス構成部品は、プロセス流体と直接的に接しており、プロセス構成部品の内部にある集熱キャビティによって一部が形成されたヒートパイプを備える。集熱キャビティは、ヒートパイプの一部を形成するという目的のみに用いられる。ヒートパイプが熱電発電装置の一端側に結合され、熱電発電装置の他端側には熱吸収源が結合されることにより、熱電発電装置を熱が移動し、ワイヤレスデバイスのための電力が発生する。プロセス流体と直接的に接するプロセス構成部品にヒートパイプを内包し、容器の壁を直に貫通することにより、熱抵抗を低減することができる。容器の壁を直に貫通することにより、熱電発電装置と容器の外壁との間の良好な熱的結合を達成する上で必要な程度に、容器の壁を介して熱を伝達する際の熱抵抗によって生じる損失が削減される。また、集熱キャビティの内面全域からヒートパイプ内に熱が流入し、集熱キャビティの内面全域からの気化によって熱が移動するので、ヒートパイプによって移動する際の熱流束が極めて大きなものとなる。そして、本発明を組み入れたプロセス構成部品は、工場において正確に調整された条件の下で組み立て可能であるので、現場において容器の外側にくくりつけた熱電発電装置に比べ、より一層安定して信頼性の高い作動が可能となる。
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると共に、均等物で各要素を置き換えることが可能であることが当業者に理解されよう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況やものを本発明の教示に適合させるための変形を行うことが可能である。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての形態を含むものである。