JP2017125815A - 分離材及びカラム - Google Patents
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Abstract
Description
[1]多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層とを備え、上記水酸基を有する高分子が疎水性基を更に有し、上記水酸基を有する高分子中の構成単位1個当たりの疎水性基の含有割合が0.02〜0.5個である分離材。
[2]上記多孔質ポリマ粒子が、スチレン系モノマに由来するモノマ単位を含有するポリマを含む、[1]に記載の分離材。
[3]上記水酸基を有する高分子が、多糖類の変性体である、[1]又は[2]に記載の分離材。
[4]上記水酸基を有する高分子が、アガロースの変性体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の分離材。
[5]上記水酸基を有する高分子が架橋されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の分離材。
[6]上記疎水性基がフェニル基を含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の分離材。
[7]上記多孔質ポリマ粒子の平均粒径が10〜300μmである、[1]〜[6]のいずれかに記載の分離材。
[8]上記分離材の細孔径分布におけるモード径が0.01〜0.5μmである、[1]〜[7]のいずれかに記載の分離材。
[9]空隙率が30〜70体積%の粒子である、[1]〜[8]のいずれかに記載の分離材。
[10]比表面積が30m2/g以上の粒子である、[1]〜[9]のいずれかに記載の分離材。
[11]上記多孔質ポリマ粒子の粒径の変動係数が3〜15%である、[1]〜[10]のいずれかに記載の分離材。
[12]上記多孔質ポリマ粒子1g当たり30〜500mgの上記被覆層を備える、[1]〜[11]のいずれかに記載の分離材。
[13]前記分離材が充填されたカラムに、該カラム内の圧力が0.3Mpaとなるように水を通液させたときに、水の通液速度が800cm/h以上である、[1]〜[12]のいずれかに記載の分離材。
[14][1]〜[13]のいずれかに記載の分離材を備えるカラム。
本実施形態の多孔質ポリマ粒子は、1種以上のモノマに由来するモノマ単位を含有するポリマを含む多孔質粒子である。多孔質ポリマ粒子は、例えば、多孔質化剤を含むモノマを重合させて得られる粒子である。例えば、従来の懸濁重合、乳化重合等によって多孔質ポリマ粒子を合成することができる。モノマとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン系モノマを使用することができる。すなわち、多孔質ポリマ粒子としては、スチレン系モノマに由来するモノマ単位を含有してもよい。具体的なモノマとしては、以下のような多官能性モノマ、単官能性モノマ等が挙げられる。
1)粒子を、超音波分散装置を使用して水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の多孔質ポリマ粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、株式会社シスメックス製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)を測定する。
本実施形態の被覆層は、水酸基を有する高分子を含む。被覆層は、多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。水酸基を有する高分子で多孔質ポリマ粒子を被覆することによりカラム圧の上昇を抑制することができるとともに、タンパク質等の生体高分子の非特異吸着を抑制することが可能となる上、分離材の優れたタンパク質吸着性が得られる傾向にある。さらに、水酸基を有する高分子が架橋されていると、カラム圧の上昇をより抑制することが可能となる。被覆層は、例えば、多孔質ポリマ粒子の表面に、水酸基を有する高分子を吸着させた後、高分子を架橋することによって、多孔質ポリマ粒子の表面に形成することができる。
水酸基を有する高分子は、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましく、親水性高分子であることがより好ましい。水酸基を有する高分子は、疎水性基を更に有する。これにより、分離材の界面吸着能を向上させることができる。水酸基を有する高分子としては、例えば、多糖類、ポリビニルアルコール等の高分子の変性体を用いることができる。ここでいう変性体とは、疎水性基が導入されたものを指す。多糖類としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロース、キトサン等が挙げられる。本実施形態の水酸基を有する高分子としては、アガロースの変性体を用いることが好ましい。水酸基を有する高分子は、例えば平均分子量1万〜30万程度のものが使用できる。
水酸基を有する高分子を含む被覆層は、例えば、以下に示す方法により形成することができる。
まず、水酸基を有する高分子の溶液を多孔質ポリマ粒子表面に吸着させる。水酸基を有する高分子の溶液の溶媒としては、水酸基を有する高分子を溶解することのできるものであれば、特に限定されないが、水が最も一般的である。溶媒に溶解させる高分子の濃度は、5〜20(mg/mL)が好ましい。この溶液を、多孔質ポリマ粒子の細孔内に含浸させる。含浸方法は、水酸基を有する高分子の溶液に多孔質ポリマ粒子を加えて一定時間放置する。含浸時間は多孔質ポリマ粒子の表面状態によっても変わるが、通常一昼夜含浸すれば高分子濃度が多孔質ポリマ粒子の内部で外部濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分の水酸基を有する高分子を除去する。
被覆層を備える分離材は、イオン交換基、リガンド(プロテインA)等を表面上の水酸基等を介して導入することにより、イオン交換精製、アフィニティ精製等に使用することができる。イオン交換基の導入方法として、例えば、ハロゲン化アルキル化合物を用いる方法が挙げられる。
(多孔質ポリマ粒子1の合成)
500mLの三口フラスコに、モノマとして純度96%のジビニルベンゼン(株式会社新日鉄住金製、商品名:DVB960)16g、多孔質体としてヘキサノール16g、ジエチルベンゼン16g、開始剤として過酸化ベンゾイル0.64gをポリビニルアルコール(0.5重量%)分散剤水溶液に加えて混合液を調製した。この混合液を、マイクロプロセスサーバーを使用して乳化後、得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間撹拌した。得られた粒子をろ過後、アセトンで洗浄を行い、多孔質ポリマ粒子1を得た。得られた多孔質ポリマ粒子1の粒径をフロー型粒径測定装置(FPIA−3000、株式会社シスメックス製)で測定し、平均粒径(体積基準)及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。多孔質ポリマ粒子1の空隙率及び比表面積を水銀圧入法にて測定した。結果を表1に示す。
アガロース水溶液(2重量%)490mLに水酸化ナトリウム0.98g、グリシジルフェニルエーテル4.90gを投入して60℃で6時間反応させ、アガロースにフェニル基を導入した。得られた変性アガロースをイソプロピルアルコールで沈殿させ、沈殿物を洗浄して、変性アガロースを得た。変性アガロースの疎水性基含有割合を下記方法により算出したところ、0.142個であった。
乾燥状態の粉末アガロース(変性されていないアガロース)と揮発分0.1重量%未満まで乾燥させた疎水性基導入アガロースとをそれぞれ70℃の純水に溶解させ、0.05重量%の水溶液サンプルを調製した。分光光度計により各水溶液の269nmの吸光度を測定して濃度を求めることで、下記式より、水酸基を有する高分子の構成単位(二糖単位)1個当たりの疎水性基の含有割合を算出した。
・疎水性基含有割合(個)=CAG/(CHAG+CAG)
・CAG:変性されているアガロース構成単位の濃度(mmol/l)
CAG=A/εGPE×1000
・A:疎水性基導入アガロースの真の吸光度
A=疎水性基を導入したアガロースの吸光度−変性されていないアガロースの吸収
・変性されていないアガロースの吸収=変性されていないアガロースの吸光度×(疎水性基を導入したアガロースのサンプル濃度(mmol/l)/変性されていないアガロースのサンプル濃度(mmol/l))
・εGPE:グリシジルフェニルエーテルの吸光係数
εGPE=1372(l/(mol・cm))
・CHAG:変性されていないアガロース構成単位の濃度(mmol/l)
CHAG=(変性されていないアガロース構成単位の濃度(g/l)/アガロース構成単位(306g/mol))×1000
・変性されていないアガロース構成単位の濃度(g/l)=疎水性基を導入したアガロースのサンプル濃度(重量%)×10−変性されているアガロース構成単位の濃度(g/l)
・変性されているアガロース構成単位の濃度(g/l)=(CAG×変性されているアガロース構成単位(456g/mol))/1000
20mg/mLの変性アガロース水溶液70mLに、多孔質ポリマ粒子1を1gの割合で投入し、55℃で24時間攪拌して、多孔質ポリマ粒子1に変性アガロースを吸着させた。吸着後の多孔質ポリマ粒子1をろ過し、熱水で洗浄した。多孔質ポリマ粒子への変性アガロースの吸着量(被覆高分子吸着量)は、ろ液中の変性アガロースの濃度から算出した。多孔質ポリマ粒子1gあたりの変性アガロースの吸着量が、50mg以上を「○」、50mg未満30mg以上を「△」、30mg未満を「×」とした。
分離材0.2gをBSA(Bovine Serum Albumin)濃度24mg/mLのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)20mLに投入し、24時間室温で攪拌を行った。その後、遠心分離で上澄みをとった。分光光度計で上澄み液の280nmの吸光度を測定することによって求めた上澄み液中のBSA濃度より、分離材に吸着したBSA量を算出した。分離材1mLあたりのBSA吸着量が1mg未満を「○」、1mg以上10mg未満を「△」、10mg以上を「×」とした。結果を表3に示す。
分離材(乾燥重量20g)を5Mの水酸化ナトリウム水溶液100mLに投入し、室温で1時間放置した。ジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩の所定量(60g)を溶解した水溶液100mLを添加し、水溶液の温度を70℃まで上げ、撹拌しながら2時間反応させた。反応終了後、ろ過し、水/エタノール(体積比5/1)で3回洗浄し、ジエチルアミノエチル(DEAE)基をイオン交換基として有する分離材(DEAE変性分離材)を得た。以降の、比表面積、イオン交換容量、カラム特性の評価には、DEAE変性分離材を用いた。得られたDEAE変性分離材を乾燥後、熱重量分析により、被覆された水酸基を有する高分子量を定量した。DEAE変性分離材の平均細孔径、細孔径分布におけるモード径、空隙率及び比表面積は、水銀圧入法にて測定した。結果を表2に示す。
12時間以上水で膨潤させたDEAE変性分離材を0.2〜0.3g定量し、ビーカに移し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液20mLを加え、25℃、1時間撹拌した。その後、フィルタを用いて吸引ろ過を行い、フィルタ上の粒子を洗浄液が中性になるまで洗浄した。その後、分離材をビーカに移し、0.1N塩酸水溶液10mLを添加し、室温で1時間撹拌した。その後、フィルタを用いて吸引ろ過を行い、フィルタ上の分離材を洗浄液が中性になるまで洗浄した。この洗浄液について自動電位差滴定装置を使用して0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行うことによって、DEAE変性分離材のイオン交換容量(mmol/mL)を求めた。
得られたDEAE変性分離材をメタノールと混合して、濃度30重量%のスラリーを調製した。このスラリーをφ7.8×300mmのステンレスカラムに15分かけて充填して以下の評価に用いた。
DEAE変性分離材を充填したカラムに流速を変えながら水を流し,流速とカラム内の圧力(カラム圧)との関係を調べ、カラム圧が0.3MPaの時の線流速(通液速度)を測定した。結果を表2に示す。
DEAE変性分離材を充填したカラムに、20mmol/L Tris−塩酸緩衝液(pH8.0)を10カラム容量流した。その後、BSA濃度2mg/mLの20mmol/LのTris−塩酸緩衝液を流し、UV吸光度測定によりカラム出口での溶出液中のBSA濃度を測定した。カラム入口と出口のBSA濃度が一致するまで緩衝液を流し、その後、5カラム容量分の1M NaCl Tris−塩酸緩衝液で希釈した。10%breakthroughにおける動的吸着量を以下の式を用いて算出した。結果を表3に示す。
q10=cfF(t10−t0)/VB
q10:10%breakthroughにおける動的吸着量(mg/mL wet resin)
cf:注入しているBSA濃度(mg/mL)
F:流速(mL/min)
VB:ベッド体積(mL)
t10:10%breakthroughにおける時間(min)
t0:BSA注入開始時間(min)
DEAE変性分離材を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で24時間攪拌し、リン酸緩衝液で洗浄後、カラム特性評価と同様の条件にて充填した。BSAの10%breakthrough動的吸着量を測定し、アルカリ処理前の動的吸着量と比較した。動的吸着量の減少が3%未満であるものを「○」、3%以上20%未満であるものを「△」、20%以上であるものを「×」とした。結果を表3に示す。
800cm/hの流速で水をカラムに流し、カラム圧を測定後、3000cm/hに流速を上昇させ、1時間通液させた。再度800cm/hにカラム圧を下げた際に、カラム圧が初期値(3000cm/hに流速を上げる前)より10%以上上昇した場合を「×」、10%以内である場合を「○」とした。結果を表3に示す。
(多孔質ポリマ粒子2)
変性アガロースを疎水性基の含有割合が0.050個のものに変更した以外は、実施例1と同様に多孔質ポリマ粒子の合成及び処理を行って分離材を得た。多孔質ポリマ粒子及び分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
(多孔質ポリマ粒子3)
変性アガロースを疎水性基の含有割合が0.127個のものに変更した以外は、実施例1と同様に多孔質ポリマ粒子の合成及び処理を行って分離材を得た。多孔質ポリマ粒子及び分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
(多孔質ポリマ粒子4)
変性アガロースを疎水性基の含有割合が0.280個のものに変更した以外は、実施例1と同様に多孔質ポリマ粒子の合成及び処理を行って分離材を得た。多孔質ポリマ粒子及び分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
(多孔質ポリマ粒子5)
変性アガロースを疎水性基の含有割合が0.670個のものに変更した以外は、実施例1と同様に多孔質ポリマ粒子の合成及び処理を行って分離材を得た。多孔質ポリマ粒子及び分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
(多孔質ポリマ粒子6)
ジビニルベンゼンの使用量を4gに変更し、更にジヒドロキシプロピルメタクリレート8gを使用した以外は実施例1と同様に多孔質ポリマ粒子を合成した。得られた多孔質ポリマ粒子について、実施例1と同様の方法でDEAE変性処理のみを行い、被覆層の形成は行わずに、分離材を得た。得られた多孔質ポリマ粒子及び分離材について、実施例1と同様の評価を行った。
Claims (14)
- 多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層とを備え、
前記水酸基を有する高分子が疎水性基を更に有し、前記水酸基を有する高分子中の構成単位1個当たりの疎水性基の含有割合が0.02〜0.5個である分離材。 - 前記多孔質ポリマ粒子が、スチレン系モノマに由来するモノマ単位を含有するポリマを含む、請求項1に記載の分離材。
- 前記水酸基を有する高分子が、多糖類の変性体である、請求項1又は2に記載の分離材。
- 前記水酸基を有する高分子が、アガロースの変性体である、請求項1又は2に記載の分離材。
- 前記水酸基を有する高分子が架橋されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記疎水性基がフェニル基を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記多孔質ポリマ粒子の平均粒径が10〜300μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記分離材の細孔径分布におけるモード径が0.01〜0.5μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分離材。
- 空隙率が30〜70体積%の粒子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分離材。
- 比表面積が30m2/g以上の粒子である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記多孔質ポリマ粒子の粒径の変動係数が3〜15%である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記多孔質ポリマ粒子1g当たり30〜500mgの前記被覆層を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の分離材。
- 前記分離材が充填されたカラムに、該カラム内の圧力が0.3Mpaとなるように水を通液させたときに、水の通液速度が800cm/h以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分離材。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の分離材を備えるカラム。
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