JP2006192420A - 分析用前処理カラム - Google Patents

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Abstract

【課題】 迅速、簡便かつ安価に、再現性よく、高い回収率を維持しながら、対象となる物質を精製し、分析に供する試料の効果的な前処理方法を提供する。
【解決手段】 数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲のスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲のメソポアとを有する2重細孔構造からなる無機系充填剤2が少なくとも充填されてなることを特徴とする分析用前処理カラム1を採用する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、分析用前処理カラムおよび対象物質の分取方法および試料の浄化方法ならびに対象物質の回収方法に関するものであり、特に、水質や気体のような環境中に微量に混在する有機物質を迅速に分取するための分析用前処理カラムおよび分析用前処理カラム用の無機系充填剤の製造方法、対象物質の分取方法ならびにこれらを応用した環境浄化技術、もしくは微量成分の回収技術に関する。
環境汚染は、今や地球規模の問題へと深刻化しつつある。例えば、赤道付近で放出される農薬は、海水への溶解、蒸発、降雨により、少しずつ極に移動し、極の生態系を破壊しつつある。また、中国の大気汚染は日本海沿岸に酸性雨をもたらしている。一方、水溶性の有機化合物も河川水、海水、地下水など水を媒介として移動していく。また、例えば化学兵器等に使用されていたヒ素化合物などの有害物質は、当該化学兵器とともに地中に埋めて処理されてきたが、これら有害物質が水を媒介として移動していく可能性が指摘されている。さらに動物駆除のために散弾銃が使用される場合があるが、その弾丸には鉛が含まれている場合があり、銃に撃たれた動物が逃げてしまうと結果的に環境中に高濃度の鉛が放出され、水や高位動物によって移動していく。つまり有機、無機に限らず、あらゆる物質が移動していく可能性がある。このような化学物質を分析する際、通常の分析試料中には、分析に影響を与える不純物が含まれていることが多く、特に環境雰囲気から採取された試料中には、数多くの夾雑物(共存物質)が大過剰に存在している。そのため、正確な分析を行うには、あらかじめ分析試料を前処理して、夾雑物(共存物質)の含有量を低減させる処理が必要である。
ところで、種々の夾雑物(共存物質)を低減させるためには、抽出と精製工程を必要とし、これらの工程に長時間を要するという問題がある。また、これらの前処理工程によって、分析対象となる化学物質の一部を除いてしまうこともあり、夾雑物のみを選択的に除去する方法が求められている。更に、分析対象の化学物質に対して選択吸着性を有する吸着剤を用いて、分析対象物を選択的に吸着させ、その後、抽出力の強い溶剤で分析対象物を溶離させる方法も提案されているが、この方法では、特に分析対象物の濃度が低い場合に、多量の試料が必要であり、また処理に長時間を要するという問題がある。
ここで、分析対象の化学物質としては、例えばPOPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)がある。このPOPsとは、有害性を持ち自然界で分解しがたく食物連鎖の過程で生物濃縮されやすいうえ、大気や水によって長距離を移動しやすく生産使用あるいは廃棄の場よりはるかに離れた地域でも環境や人間の健康に悪影響を与える有機物質と定義されている。
このPOPsがとりわけ問題視されるのは以下の理由のためである。有害物質の中でも揮発性の高い物質は一方的な大気へのガス化・拡散がおこり、揮発性の低い物質はガス化がなく地表に留まりやすい。しかしPOPsは中程度の揮発性を持つため、ガス化・凝縮が比較的容易に起こる。そのためいったんガス化して大気により移動し、再び凝縮して地表上に戻ってくる。このガス化・凝縮のサイクルを繰り返し、地球上を拡散してゆく。しかもPOPsは大部分が有機塩素化合物であるため、脂溶性であり容易に生物濃縮される。一方、水溶性の有機化合物は河川水、海水、地下水など水を媒介として移動していく。さらに人や家畜などが排泄したり、生体内の代謝により別の化合物に変化した上で移動していく。
このため、例えば工場排水と飲料水の因果関係を追う、というような従来のやり方だけでなく、水、土、大気中に残存、もしくは新たに放出される多くの化学物質に対して、生物濃縮も含めて、地球規模での物質移動のモニタリングが急務になってきている。すなわち、それら有害性化合物について毒性という観点だけでなく、環境ホルモン作用も睨んだモニタリングが必要であり、(i)生活活動による変動をカバーするための長時間サンプリング法、(ii)微量成分の迅速サンプリング法、といったふたつの側面から、各種のモニタリング法の開発が進められている。
また代表的なPOPsのひとつであるPCB(ポリ塩化ビフェニル類)は、安定な化学的・物理的性質および有用な特性を持つために数々の用途があった。しかしその毒性のために1972年に製造が中止され、保管が義務付けられたが、その時点で使用中のものは耐用年数に達するまで使用されてきた。現在、法律に従って本格的なPCB処理が始まっており、PCB処理施設においてはトランスやコンデンサーなどの解体現場や保管場所の室内環境、また建築物内ではPCB含有シーラントや蛍光灯安定器の破損や漏洩による室内環境汚染が懸念されている。そのため、環境中のPCB測定の必要性は高まってきている。
下記非特許文献1には、環境大気中のPOPsであるダイオキシン類およびコプラナーPCB類の測定マニュアルが開示されている。
この非特許文献1に記載の測定方法は、いわゆるハイボリュームエアーサンプラー法と呼ばれ、ハイボリュームエアーサンプラー(例えば、柴田化学株式会社製HV−500F、HV−1000F(ダイオキシン用))に試料採取用具(石英繊維ろ紙およびポリウレタンフォーム)を取り付け、ここに700L/分の流量で24時間連続、もしくは、100L/分の流量で7日間連続で大気を採取し、その総吸引大気量を約1000mとするものである。この方法では、サンプリング時間が24時間、もしくは7日間必要であること、さらに用いる装置類が高価かつ大きく複雑であり、複数の測定点において同時に測定する場合、あるいは他のPOPsを含めた複数の物質を同時に測定するなどといった場合への応用には、装置も複数必要になるなど、問題点が多い。
それに対し、下記特許文献2には、比較的簡易な装置を用いてPOPsをモニタリングする手法として、固相抽出カラム(ウォーターズ社製 商品名 Sep−Pak(登録商標) PS Air)を用いたローボリュームエアーサンプラー法(PSAir−Low−Vol法)が提案されている。この方法は、ローボリュームエアーサンプラー(例えば、ジーエルサイエンス株式社製大気サンプリングポンプSP204−20L)に先の固相抽出カラム(Sep−Pak(登録商標) PS Air)を接続し、このカラムに対して大気を2〜5L/分の流速で24時間かけて採取する方法である。
また、この方法は、室内大気中のPCBのモニタリング法としても有用であるとされている(例えば、非特許文献3)。
しかし、上記の室内大気中のPCBのモニタリング手法により提案されている、PS Air−Low−Vol法では、4m程度の環境または室内大気を採取するのに24時間かけて行なうと規定されていることから、固相抽出カラムにおける大気流速は3L/min程度となる。このように、上記の方法では大気流速が遅いためにサンプリングの時間が長くなるという欠点がある。
すなわち、簡易な装置を用いて液体または気体中のPOPsなどの有害物質を迅速にサンプリングする方法について、開示されている例はない。
このPS Air−Low−Vol法は、カラムを用いた固相抽出法であり、この種の固相抽出法は近年盛んに用いられるようになってきた方法である。従来、気体中からの試料の抽出には液体吸収法、液体中からの試料の抽出には液−液抽出法が多く用いられてきたが、作業が繁雑で時間と経験を要すること、溶媒を多量に使用することなどの問題があった。これに対して、固相抽出法は、作業が簡単なうえに短時間ですみ、しかも溶媒の使用量が少ないという特長を持っている。そのため、多数の検体を短期間に処理しなければならない場合に非常に有利であり、自動化も容易である。固相抽出法が近年急速に浸透したことの背景には、吸脱着性能のよい多孔性粒子が開発され、それらが固相抽出用吸着剤として複数のメーカーから市場に提供されるようになったことが挙げられる。固相抽出に用いられる充填剤は、無機系基材としては、シリカゲルまたはシリカゲルの表面を化学修飾した化学結合型シリカゲル、有機系基材としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に代表される合成高分子系及びこれらの表面を化学修飾させたものが用いられている(下記特許文献1および特許文献2参照)。
ところで、上記の吸着剤を充填したディスクやカラムを用いて、大過剰の大気に存在する超微量の残留性有機汚染物質を効率よく吸着するためには、吸着剤粒子の粒径をできるだけ小さくするか(例えば、ジーエルサイエンス株式社製商品名GL−Pak PLSシリーズ、またはバリアン株式会社製商品名ボンドエルートシリーズ(登録商標)等。これらの固相抽出カラムでは、吸着剤は約40〜300μmの粒子径のものが充填されている。)、粒子を圧縮などして(プラスタイプのカートリッジに充填されているもの。例えば、ウォーターズ社製商品名 Sep−Pak(登録商標) PS Air)、その充填密度を上げて粒子間の隙間をできるだけ小さくすることが好ましい。ところが、そうすると通気時にかかる圧力が大きくなるため流速を上げられず、大量の大気を通じるのに長時間を要してしまう。
一方、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称す)は、充填剤にシリカゲル、ポリマーゲルなどを用いて、液体の流れの中で各々の物質の移動速度の差によって、混合物を分離する手法である。このHPLCの高性能化として、高分離・高速分離が研究されている。高分離を達成するには充填剤の粒子径を小さくし、カラム内のデッドボリュームを小さくすると良い。しかしカラムに負荷する圧力が上昇することによる装置における限界、充填における困難などが存在し、現状では高分離と高速分離の妥協点として充填剤粒子の多くは約5μmの粒径が限界となっている。1.5μm、2μmの小さな粒径の充填剤も作製されているが、高負荷圧のため、カラムの長さを短くするか、液体の流速を遅くして用いなければならず、真の高性能化が達成されているとはいい難い。
そこで上記のような微粒子充填型HPLCカラムの限界を打ち破るものとして、マイクロメートルサイズのスルーポアと、ナノメートルサイズのメソポアを有する2重細孔構造のシリカゲルが開発されている。この2重細孔構造シリカゲルはスルーポア径およびメソポア径を独立してコントロールすることが可能であり、スルーポアを大きくすることで負荷圧を小さくすることができる。このシリカゲルをロッド形状(カラムサイズの一つの円柱状の塊のシリカゲル)でHPLCに適用することで、高性能分離と高速分離の両立化が図られている(特許文献3、特許文献4)。
しかし、この2重細孔構造シリカゲルに上述した微量の対象物質を選択的に吸着させたり、逆に微量の対象物質だけを吸着せずに、系外へ除くという試みはいまだなされていない。
また、上記シリカゲルはいずれもロッド形状で使用されており、機械的強度に弱いという問題がある。破砕された2重細孔構造シリカゲルを使用することができれば、生産性向上につながると考えられる。さらに、これまで開発されているロッド形状の2重細孔シリカゲルはスルーポアの大きさとして10μm程度が最大の大きさである。気体捕集向けの基材の粒径は500ミクロン程度が多いことからも明らかなように、気体を高速で流通させるには10μm程度のスルーポアでは十分とはいえない。
これまでに、シリカゲルを破砕して粉末状シリカを製造する試みとして、シリカのウェットゲルをナイロン網に通しながら粉砕する例が知られている(特許文献5)。また、シリカゾルを、孔径が均一な貫通孔を有する高分子膜を介して有機溶媒中に注入することにより、前記有機溶媒中にゾルのエマルジョン粒子を形成させ、その後前記ゾルのエマルジョン粒子をゲル化することにより、粒子状のシリカゲルを得る方法が知られている(特許文献6)。しかし、2重細孔シリカゲルの製造において上記方法により製造されたという報告事例はこれまでなされていない。
環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室、「ダイオキシン類にかかわる大気環境調査マニュアル 第3節 環境大気中のダイオキシン類の測定分析方法」、[online]、平成13年8月、環境省、[平成14年9月8日検索]、インターネット<URL:http://www.env.go.jp/air/osen/manual/index.html> 中野武、外6名、「大気中のPOPs分析法の検討」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.472−473 中野武、外3名、「室内大気中のPCBのモニタリング手法」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.582−583 特開昭59−147606号公報 特開平4−334546号公報 特開2002−362918号公報 特開2003−075420号公報 特開平11−268923号公報 特開平5−23565号公報
本発明者らは、シリカの持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通液または通気時にかかる圧力を比較的低く抑える分析用前処理カラムの実現を鋭意検討してきたが、小粒子径の充填剤粉末をそのまま、またはこの小粒子径の充填剤粉末を圧縮させて粒子間の隙間を狭くした状態でカラムに詰めて用いている限り、目的を達するのは極めて困難であると判断された。
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、上述の従来技術の欠点を解消することが可能な分析用前処理カラムおよびこの分析用前処理カラムを用いた分取対象物質の分取方法および試料の浄化方法ならびに回収対象物質の回収方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、簡便かつ安価に、再現性よく、高い回収率を維持しながら、対象となる物質を迅速に精製し、分析に供する試料の前処理時間を短縮する方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、簡便且つ安価に、再現性よく、高い回収率を維持しながら、分析に供する被分析試料の前処理時間の短縮を実施するための分析用前処理カラムを提供することにある。
更に本発明は、スルーポアおよびメソポアを有する2重細孔構造からなる粉末状の無機系充填剤の製造方法を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。すなわち、
(1)数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなる無機系充填剤が少なくとも充填されてなることを特徴とする分析用前処理カラム。
(2)前記無機系充填剤の体積に占める前記スルーポアの細孔容積の割合が30%以上90%以下の範囲であることを特徴とする前項1に記載の分析用前処理カラム。
(3)前記無機系充填剤の表面に有機化合物がコーティングされていることを特徴とする前項1または前項2に記載の分析用前処理カラム。
(4)前記無機系充填剤がシリカを主成分として形成されたものであることを特徴とする前項1ないし前項3のいずれかに記載の分析用前処理カラム。
(5)前記無機系充填剤が粒子状であり、その数平均粒子径が10μm以上1000μm以下の範囲であり、かつBET法による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする前項1ないし前項4のいずれかに記載の分析用前処理カラム。
(6)テンプレート化合物を含む溶液中でアルコキシシランを加水分解、ゲル化してシリカゲルとし、該シリカゲルを粉砕してから塩基性溶液で処理するか、あるいは該シリカゲルを塩基性溶液で処理してから該シリカゲルを粉砕し、そのシリカゲルを焼成することを特徴とする無機系充填剤の製造方法。
(7)前記シリカゲルを粉砕する手段として、複数の貫通孔を有する多孔質板材の一面側から前記シリカゲルを前記貫通孔に圧入させて粉砕する手段を用いることを特徴とする前項6に記載の無機系充填剤の製造方法。
(8)前記テンプレート化合物がポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアクリル酸のうちのいずれかであることを特徴とする前項6または前項7に記載の無機系充填剤の製造方法。
(9)前記無機系充填剤が前項6〜8のいずれかに記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする前項1〜前項5のいずれかに記載の分析用前処理カラム。
(10)分取対象物質および共存物質が含有された分析試料を、前項1ないし前項5または前項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させて前記分取対象物質を前記無機系充填剤に吸着させた後、前記分析用前処理カラムに溶離液を流通させて前記分取対象物質を流出させることを特徴とする分取対象物質の分取方法。
(11)分取対象物質および共存物質が含有された分析試料を、前項1ないし前項5または前項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させることにより、前記共存物質を前記無機系充填剤に吸着させるとともに前記分取対象物質を流出させることを特徴とする分取対象物質の分取方法。
(12)前記分取対象物質が、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、農薬、環境ホルモン、重金属、タンパク質から選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする前項10または前項11に記載の分取対象物質の分取方法。
(13)除去対象物質および共存物質が含有された試料を、前項1ないし前項5または前項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させることにより、前記試料から前記除去対象物質を除去することを特徴とする試料の浄化方法。
(14)回収対象物質および共存物質が含有された試料を、前項1ないし前項5または前項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させることにより、前記試料から前記回収対象物質を回収することを特徴とする回収対象物質の回収方法。
本発明者らは、シリカの持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通液または通気時にかかる圧力を比較的低く抑える分析用前処理カラムの実現を鋭意検討してきたところ、シリカ材質に高性能分析が可能な細孔(メソポア)に加えて、高速分離が可能な細孔(スルーポア)を導入することで、両方の目的が達成できることを見いだした。すなわち、上記の分析用前処理カラムによれば、シリカ材質の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通液または通気時にかかる圧力を比較的低く抑えることができ、これにより通液速度または通気速度を上げることが可能になり、目的成分の迅速な前処理を行なうことができる。
また、一般的な粒子状シリカゲルを用いたカラムで、液体試料の分析、前処理を行う場合、一旦気泡が入ってしまうと気泡は抜けづらく、その気泡により、有効な表面積が使用できず、濃縮率の低下を招くことはよく知られている。しかし、本発明に係る2重細孔を有する無機系充填剤の場合、気泡が入ったとしても、スルーポアがあるために、再び気泡が溶媒で押し出されると考えられ、表面すべてを活用でき、捕集効率が低下しない。このことは前処理の際、気泡が入らないような特段の注意を施す必要がなく、再現性、簡便性という点からも有用と考えられる。
本発明によれば、簡便且つ再現性よく、高い回収率を維持しながら、分析に供する被分析試料中の目的とする微量の対象物質の迅速な分取を実現するための分析用前処理カラムが提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように本実施形態の一例である分析用前処理カラム1は、数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなる無機系充填剤2が、充填剤層2aとしてカラム容器3である注射筒型容器(リザーバー)に充填されることにより構成されている。また充填剤層2aの上下には、図示略のフィルターが取り付けられている。本発明に係る無機系充填剤2は、その表面の吸着性を制御するための有機化合物が修飾(コーティング)されたものでもよく、全く修飾(コーティング)されていないものであってもよい。またカラム容器3には必要に応じて上記無機系充填剤2と別の充填剤を混合して充填してもよく、無機系充填剤2と他の充填剤もしくは基材とで多層構造を形成させるように充填してもよい。
カラム容器3(リザーバー)の形状は特に制限はない。通常の円筒型であっても、ディスク状であっても良い。カラム容器3のサイズは分析処理量に対応して適切な大きさのものを使用できる。通常は、容積0.1〜100ml、好ましくは3〜6ml程度のものがハンドリングの面で好適である。また、カラム容器3(リザーバー)の材質としては、ガラス製、ステンレス製、樹脂製(たとえばポリプロピレン、ポリエチレン)のものが好ましく、使用する溶媒に不溶性で、無機系充填剤2が試料の濃縮作業中にカラム容器3から流出しなければよく、その材質、形は特に制限されない。
この分析用前処理カラム1に液体または気体等の試料を流し、この試料に含まれる対象物質をいったん吸着させてから抽出するか、あるいは共存物質を吸着させ、対象物質を流出させることにより、対象物質を分取、回収させることができる。また試料の浄化を行なうこともできる。
本発明に係る無機系充填剤2の形状は、ロッド状(充填剤が一つの塊としてカラム容器の内部とほぼ同じサイズとなっている)、バルク状(1mm〜5cm程度の塊)、粒子状、繊維状のいずれでもよいが、ロッド状あるいは粒子状にすることが好ましい。粒子状の場合は、破砕型粒子でも球状粒子でもよい。粒子状とする場合の数平均粒子径は、10μm以上1000μm以下の範囲が好ましく、30μm以上700μm以下の範囲がより好ましく、50μm以上500μm以下の範囲が最も好ましい。平均粒子径が10μm未満になると、カラム1に流通させる液体または気体等の分析試料の流速を上げた場合に、無機系充填剤2からなる充填剤層2aの前後の静圧の差(圧力損失)が大きくなり、高流速で分析試料を流すことができない。また平均粒子径が1000μmを越えると、対象物質の吸着効率が悪くなるので好ましくない。なお、無機系充填剤2の平均粒子径は、JIS Z 8801に定める試験用ふるいを用いて、JIS Z8815ふるいわけ試験方法通則に準拠して測定する。
また無機系充填剤2は、上記の形状のものを組み合わせて使用することもできる。例えば、バルク状充填剤の隙間に粒子状または繊維状のものを詰めて使用することも可能である。
本発明に係る無機系充填剤2の比表面積は、50m/g以上であることが好ましく、100m/g以上がより好ましい。比表面積が50m/g未満だと対象物質の吸着効率が悪くなるので好ましくない。なお、比表面積はBET法により測定されたものである。
また、本発明に係る無機系充填剤2は、シリカにより形成されることが好ましい。またこの無機系充填剤2は特に、数平均直径が0.5μm以上10μm以下の範囲のスルーポアと、数平均直径が2nm以上50nm以下のメソポアとが相互に連結し、3次元的に広がった細孔構造を持つ2重細孔構造を有することがより好ましい。なお、スルーポアは充填剤内部を貫通する多数の貫通孔であり、メソポアは、充填剤表面またはスルーポアの壁面に形成された多数の細孔である。
スルーポアの数平均直径は0.5μm以上25μm以下の範囲が好ましく、0.5μm以上10μm以下の範囲がより好ましく、0.5μm以上7μm以下の範囲が特に好ましい。スルーポアの数平均直径が0.5μm未満だと、カラム1に流通させる液体、気体等の分析試料の流速を上げた場合に、充填剤層2a前後の静圧の差(圧力損失)が大きくなり、高流速で分析試料を流すことができないので好ましくない。またスルーポアの数平均直径が25μmを越えると無機系充填剤2自体の空隙率が大きくなり、無機系充填剤2の物理的強度が保てなくなるので好ましくない。
無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合は、30%以上90%以下の範囲であることが好ましく、40%以上85%以下の範囲がより好ましく、50%以上80%以下の範囲がより好ましい。スルーポアの細孔容積の割合が30%未満では、カラム1に流通させる液体、気体等の分析試料の速度を挙げた場合に、充填剤層2a前後の静圧の差(圧力損失)が大きくなり、高流速で分析試料を流すことができないので好ましくない。また、スルーポアの細孔体積の割合が90%を超えると、無機系充填剤2自体の空隙率が大きくなり、無機系充填剤2の物理的強度が保てなくなるので好ましくない。
また無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合は、無機系充填剤の密度と、無機系充填剤の質量当たりのスルーポアの細孔容積との積から求めることができる。無機系充填剤の密度は、スルーポア及びメソポアの細孔容積を含む無機系充填剤の全体積をその無機系充填剤の質量で除して求められる。また、無機系充填剤の質量当たりのスルーポアの細孔容積は、水銀圧入法により求めることができる。
なお、ロッド状の無機系充填剤については、シリカの体積、スルーポア及びメソポアの細孔容積を含む全体積を比較的容易に求められるので、その密度の算出が比較的精度良く行えるが、バルク状、粒子状または繊維状の無機系充填剤については、全体積の算出が難しく、結果的に無機系充填剤の密度の算出が精度良く行えない場合がある。このような場合には、ゲルの調整条件を同一にしてロッド状の無機系充填剤を製造し、このロッド状の無機系充填剤の密度をスルーポアの細孔容積の割合の算出に用いればよい。
次に、メソポアの数平均直径は2nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上40nm以下の範囲がより好ましく、8nm以上35nm以下の範囲が特に好ましい。メソポアの数平均直径が2nm未満だと、吸着対象となる物質がメソポア内に入りこめず、吸着されにくくなって回収率が低下するので好ましくない。また、数平均直径が50nmを越えると十分に吸着されなくなるので好ましくない。
本発明に係る無機系充填剤2は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、酸性水溶液に、テンプレートとなる水溶性化合物を加えて溶解させる。その後、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を加えてこのアルコキシシラン化合物を加水分解させる。その後、加水分解と重縮合反応を更に進行させて、溶液がゲル化してシリカ(シリカゲル)が形成されるまでこの溶液を静置する。この工程により、スルーポアが形成される。すなわち、ゲル化したシリカ(シリカゲル)中に水溶性化合物が残存してこの水溶性化合物がテンプレートとなり、シリカ中にスルーポアが形成される。この段階でスルーポアの大きさが決定される。すなわち出発溶液の組成や、重合速度を制御して水溶性化合物の凝集の程度をコントロールすることでスルーポアの大きさを決定することができる。
次にゲル化したシリカを水洗後、塩基性溶液により処理する。この工程により、シリカ骨格の溶解・再析出が起こり、メソポアが形成される。最後にゲルを水洗後、高温で焼結させてテンプレートとなった水溶性化合物を除去することによって、本発明に係る無機系充填剤2が得られる。
本発明においては、上記酸性水溶液として、濃度0.01Mないし1.0Mの硝酸、酢酸等の水溶液を用いることができる。またテンプレートの水溶性化合物として、分子量100000程度のポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアクリル酸等を用いることができる。この水溶性化合物の添加量としては、例えば上記酸性水溶液に対して2質量%ないし15質量%とすることができる。またゲル化したシリカを処理する塩基性溶液としては、尿素水溶液、アンモニア水溶液等を用いることができる。更にシリカの焼結条件としては、焼結温度300℃ないし600℃の範囲で2時間ないし10時間焼結する条件とすることができる。また焼成雰囲気は不活性ガス、例えば窒素ガス雰囲気などが良い。
上記のようにして、本発明に係る無機系充填剤2が得られる。この無機系充填剤2の形状は、焼成時のシリカの収納容器の内形状に対応した形状となる。例えば、収納容器の内形状が円柱状であれば、円柱状(ロッド状)の無機系充填剤2が得られる。またこのロッド状の無機系充填剤2を更に粉砕することで、粒子状の無機系充填剤2が得られる。
また、粒子状の無機系充填剤は、次のようにして製造することもできる。
すなわち、前述の製造方法と同様にして、酸性水溶液にテンプレートとなる水溶性化合物を加えて溶解させてから、アルコキシシラン化合物を加えて加水分解させることにより、シリカゲルを形成する。
次に、得られたシリカゲルを粉砕してから水洗し、更に塩基性溶液により処理する。また、得られたシリカゲルを先に水洗、塩基性溶液で処理してから粉砕しても良い。要は、シリカゲルを形成してから焼成するまでの間に粉砕すればよい。
そして、粉砕されたシリカゲルを水洗後、高温で焼結させてテンプレートとなった水溶性化合物を除去することによって、粒子状の無機系充填剤2が得られる。このように焼成前に粉砕を行うと、粉砕処理による細孔の破壊や閉塞が低減され、より好ましい。
シリカゲルを粉砕する手段としては、複数の貫通孔を有する多孔質板材の一面側からシリカゲルを貫通孔に圧入することにより、シリカゲルを粉砕することができる。多孔質板材としては、例えば、金属網、篩材などを例示できる。貫通孔の孔径は30−800μmの範囲が望ましく、100−700μmの範囲がより望ましく、200−500μmの範囲がもっとも望ましい。孔径が500μm以下であれば、焼成後の粒子径を適正な範囲に制御できる。また、孔径が100μm以上であれば、ゲルを多孔質板材に圧入する際の圧力を小さくすることができる。
このとき、シリカゲルを多孔質板材の一側面から圧入する際に多孔質板材の出口に分散媒を存在させると、該溶媒中にミセルを形成させることにより粉砕することもできる。分散媒としては、シリカゲルと均一に混合しないような媒体であれば特に制限なく使用することができ、好ましくは、水との相溶性が低い液体を用いることができる。この水との相溶性が低い液体としては、例えば、ヘキサン、トルエン、オクタノールなどの有機溶剤を使用することができる。この時使用する分散媒中に、界面活性剤を存在させておくと、シリカゲルと分散媒が乳化するので、均質に粉砕することができる。界面活性剤としては、カチオン系やノニオン系の界面活性剤を使用することができ、アルキルスルホン酸系や、ポリオキシエチレン系の界面活性剤を使用することができる。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムや、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどを使用することができる。
なお、ゲル化は短時間で完結するものではなく、ゲル化の開始と終了にはある程度時間の幅がある。ゲル化が完全に終了した後に押し出して成形しようとすると、押し出す際に圧力がかかり、押し出しが困難となる。したがって、より好ましくは完全にゲル化する前に押し出して成形することが好ましい。また粉砕する手段としては、上記の他に、スプレードライ法、W/Oエマルジョンによる方法などが知られており(特開平7−069617号公報)、これらの手段で粉砕を行っても良い。
なお、上記の製造方法に類似する方法として、例えば、以下の参考文献1および2に詳細に記載されており、本発明に係る無機系充填剤は、これら参考文献に基づいても製造できる。
「参照文献1」
石塚紀生、外2名、「次世代クロマトグラフィーカラム−モノリス型シリカによる超高速・高分離能の実現」、表面、Vol39、No8、p.297―307
「参照文献2」
Kazuki Nakanishi、「Pore Structure Control of Silica Gels Based on Phase Separation」、Journal of Porous Materials、1997、4、67―112
次に、得られた無機系充填剤はロッド状、バルク状、粒子状のいずれの状態でも使用してもよいが、表面の吸着特性を変更したい場合には表面に有機化合物をコーティングすることが好ましい。このコーティング方法としては、モノマー吸着重合法(モノマーを無機系充填剤表面上で重合させる方法)、カップリング反応などが挙げられるが、無機系充填剤と化学反応が可能な化合物ならば特に制限はない。カップリングさせる有機化合物としては、液体クロマトグラフィーによく用いられるクロロシラン化合物が好ましい。クロロシラン化合物の例としては、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アミノメチルジメチルクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、クロロメチルトリメチルシラン、クロロメチルメトキシジメチルシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アリルジメチルクロロシラン、ジメチルプロピルクロロシラン、1-クロロエチルトリメチルシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシラン、トリベンジルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシランなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、上記カップリング反応以外にも無機系充填剤がシリカの場合、そのシラノール部分と反応させることが可能であり、例としては有機金属化合物、包接化合物、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖などをあげることができる。
カップリング反応そのものは公知の反応であり、一般的な手法を用いて行われる。例えば下記の参考文献3に記載されている方法を用いることができる。すなわち水分非存在下、溶媒としてトルエン中、ピリジンとシランカップリング剤を加えて、加熱還流により反応させる。洗浄、乾燥後、任意にエンドキャッピング反応を実施してもよい。
「参考文献3」
特開2002―22721号公報
本発明の分析用前処理カラム1には、前記の無機系充填剤2の他に通常の充填剤、例えばポリスチレンビーズ、ODS、アルミナビーズを併用することも可能である。即ち、前記の無機系充填剤2の粒子と通常充填剤の粒子または繊維を混合して、あるいは層状にカラム容器に詰めて使用することができる。
本発明の分析用前処理カラムの吸着対象物質としては、人や家畜に蓄積され有害性を引き起こす化合物、人や家畜の尿中に排泄される化合物およびその代謝物、もしくは人や家畜に有用な化合物、環境汚染物質、毒物、生理活性物質が挙げられる。具体的には、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、農薬類、環境ホルモン、石油化学誘導体、栄養成分ならびにこれらの代謝物、微生物による生成物、毒素、重金属等ならびにその代謝物が挙げられる。これらの化合物の例としては、ダイオキシン、ジベンゾフラン、多環芳香族炭化水素(PAHs、ベンゾ(a)ピレンを含む)、ポリ塩化ビフェニル、ポリ臭化ビフェニル、DDT、クロルピリホス、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、マイレックス、トキサフェン(カンフェクロル)、ヘキサクロロシクロヘキサン(リンデン(γ−HCH)など)、クロルデコン(ケポン)、オクタクロロスチレン(OCS)、アシュラム、シマジン、1,4−ジオキサン、ノニルフェノール、界面活性剤、女性ホルモン、男性ホルモン、その他のホルモン、ポリフェノール類、抗生物質、抗菌剤、タンパク質、ペプチド、脂質、糖類、核酸関連物質、ビタミン類、神経伝達物質、マイコトキシンやマリントキシンに代表される自然毒、ヒ素、セレンおよびこれらの代謝物などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の分析用前処理カラム1は、例えば以下のように用いることができる。図2には分析用前処理カラム1を用いた対象物質の分取方法の一例を示す。
図2に示すように、無機系充填剤2を充填した分析用前処理カラム1を用意し、この分析用前処理カラム1に対して試料11を流下させる。この試料11には、分取対象物質12および分取非対象の共存物質13が含有されている。試料11を流下させると、分取対象物質12が無機系充填剤2に吸着され、分取非対象の共存物質13は吸着されずにそのまま流下される。その後、溶離液を流下させて分取対象物質12を脱着させる。このようにして試料11に含まれる分取対象物質12を分取することができる。
また図3には分析用前処理カラム1を用いた対象物質の分取方法の他の例を示す。
図3に示すように、無機系充填剤2を充填した分析用前処理カラム1を用意し、この分析用前処理カラム1に対して試料11を流下させる。試料11を流下させると、図3の例では、分取非対象の共存物質13が無機系充填剤2に吸着され、分取対象物質12は吸着されずにそのまま流下される。流下させた溶液においては共存物質13量が大幅に低減される一方、分取対象物質12がほとんどそのまま流出する。このようにして試料11に含まれる分取対象物質12を分取することができる。
対象物質12を無機系充填剤2に吸着させたり吸着させなかったりするには、例えば、無機系充填剤2の表面にコーティングする有機化合物を適当に選択することで制御することができる。
以上、対象物質の分取方法について説明したが、本発明では試料から対象物質を除去する方法や、対象物質を回収する方法に上記の分取方法をそのまま適用することができる。
以上説明したように、本実施形態の分析用前処理カラム1によれば、シリカ材質に高性能分析が可能なメソポアに加えて、高速分離が可能なスルーポアが形成されているので、シリカ材質の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通液または通気時にかかる圧力を比較的低く抑えることができ、目的とする物質に対する選択性を高め、かつ処理時間の短縮化を図ることができる。
本発明の分析用前処理カラムの具体的な用途としては、焼却炉排気ガス、各種製造設備排気ガス、幹線道路上空捕集大気のような環境大気、室内大気、工場排水、河川水、湖沼水、人体や家畜からの排泄物などから選ばれる微量物質であり、高度な濃縮を必要とする前処理などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
「実施例1の分析用前処理カラムの製造」
(シリカの合成)
酸性水溶液として1M硝酸水溶液20gを用意し、この硝酸水溶液に、テンプレートとなるポリエチレンオキサイド(分子量Mv=100,000、Aldrich社製)を1.2g加えて溶解させた。次に、ソルビトール(和光純薬(株)製)1.0gを加えて溶解させた後、氷浴下で冷却した。氷冷下、アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシラン(信越化学工業(株)製)14mlを激しく攪拌しながら加えた。30分氷冷下で攪拌してから2mlを内径12mmの円筒容器に移し、60℃の恒温装置内に静置した。静置から約2時間程度でテトラエトキシシランが加水分解されてゲル化し、固体状になった。この円筒状に固化したゲルを純水(イオン交換水)中に8時間静置することにより洗浄した。次に純水を排出させてからゲルを100mlのオートクレーブに入れ、塩基性溶液としての1.5M尿素水溶液を70ml加えた。2時間静置後、110℃まで3時間で昇温してから5時間保持して熟成させた。冷却後ゲルを取りだし、純水中に8時間静置することにより洗浄した。純水を排出してからゲルをるつぼに移し入れ、600℃まで2時間で昇温、600℃で2時間焼結させてポリエチレンオキサイド(テンプレート)を分解除去させた。このようにして、メソポアとスルーポアとを有する骨格が絡み合った構造を持つ2重細孔構造のロッド状のシリカゲルを得た。このシリカゲルの比重は0.2g/cmであった。
次に、上記のロッド状のシリカゲル1.6gを6モル/Lの塩酸50mLで5時間還流して洗浄した。塩酸とゲルをろ別してから純水にてろ液が中性になるまで洗浄した。その後アセトンにて洗浄し130℃で4時間乾燥させることで、塩酸洗浄処理したシリカゲルを得た。
得られたシリカゲルについて、BET比表面積、メソポアの数平均直径、スルーポアの数平均直径及び細孔容積を測定した。BET表面積は、マイクロメトリックス社製ASAP2000を用いてBET法により測定した。
メソポアの数平均直径は、液体窒素の沸点(−196℃)における窒素の吸着量から比表面積、細孔体積を求め、細孔直径を以下の計算式に基づき算出した(細孔は円筒形とみなしている)。
細孔直径=4×細孔体積/比表面積
更に、スルーポアの数平均直径及び細孔容積は、マイクロメトリックス社製PORESIZER9320を用いて、水銀圧入法により測定した。
更に、スルーポアの細孔容積とシリカゲル比重から、無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合を算出した。
表1に、スルーポア及びメソポアの数平均直径、シリカゲルのBET比表面積、スルーポアの細孔容積及びシリカゲルにおけるスルーポアの細孔容積の割合を示す。
次に、得られたシリカゲルに対してシランカップリング反応を行ない、シリカ表面にオクタデシル基を導入した。具体的には、塩酸洗浄処理したシリカゲル1.58gを乾燥トルエン15mL中に分散させ、ジメチルオクタデシルクロロシラン(信越化学工業(株)製)2.0gとピリジン(純正化学(株)製)0.6gを加え、約6時間加熱還流した。その後、シリカゲルをトルエン5mL、メタノール50mL、20%水含有メタノール50mL、クロロホルム20mLで順次洗浄した。得られたシリカゲルを130℃で4時間真空乾燥することにより、オクタデシル基が導入されたロッド状のシリカゲルを得た。このようにして実施例1の無機系充填剤を製造した。
(分析用前処理カラムの調製)
次に、底部にポリエチレン製フィルターが取り付けられた内径12mm、内容積6mlの筒型のカラム容器(リザーバー)に、実施例1のロッド状シリカゲルを挿入し、上から別のポリエチレン製フィルターで栓をして棒で十分に押しこむことにより、実施例1の分析用前処理カラムを製造した。なお、ロッド状のシリカゲルの側面には硬化性エポキシ樹脂を薄く塗布し、カラム容器への挿入後に硬化させてシリカゲルとカラム容器の内面の僅かな隙間を封止した。
「実施例2の分析用前処理カラムの製造」
上記実施例1と同様にして得たロッド状の無機系充填剤を平均粒子径80μmになるまで破砕して粒子状の無機系充填剤とした。この無機系充填剤200mgをリザーバーに充填したこと以外は上記実施例1と同様にして実施例2の分析用前処理カラムを製造した。但し、粒子状充填剤の場合、エポキシ樹脂による封止は不要のため、行っていない。以下の実施例、比較例でも同様である。
また、破砕後の粒子状の無機系充填剤について、BET比表面積、メソポアの数平均直径、スルーポアの数平均直径及び細孔容積を測定した。
BET比表面積とメソポアの数平均直径は、マイクロメトリックス社製ASAP2000を用いてBET法により測定した。またスルーポアの数平均直径及び細孔容積は、カルロエルバ社製ポロシメーター シリーズ200を用いて、水銀圧入法により測定した。更に、スルーポアの細孔容積と無機系充填剤の比重から、無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合を算出した。
測定結果を表1に示す。
「実施例3の分析用前処理カラムの製造」
実施例1と同様にして、1M硝酸水溶液20gにポリエチレンオキサイドを1.2g加えて溶解させた。次に、ソルビトール1.0gを加えて溶解させた後、氷浴下で冷却した。氷冷下、テトラエトキシシラン14mlを激しく攪拌しながら加えた。30分氷冷下で攪拌してから2mlを内径12mmの円筒容器に移し、60℃の恒温装置内に静置した。静置から約2時間程度でテトラエトキシシランが加水分解されてゲル化し、固形状になった。
次に、固形化した円筒形のゲルを、JIS8801で規程されている開口径300μmのステンレス製の網から押し出すことにより粉砕した。
粉砕後のゲルを純水中に8時間静置することにより洗浄し、次に純水を排出させてからゲルを100mlのオートクレーブに入れ、1.5M尿素水溶液を70ml加えた。2時間静置後、110℃まで3時間で昇温してから5時間保持して熟成させた。冷却後ゲルを取りだし、純水中に8時間静置することにより洗浄した。純水を排出してからゲルをるつぼに移し入れ、600℃まで2時間で昇温、600℃で2時間焼結させてポリエチレンオキサイドを分解除去させた。このようにして、メソポアとスルーポアとを有する骨格が絡み合った構造を持つ2重細孔構造の粒子状の無機系充填剤を得た。
得られた無機系充填剤について、実施例2と同様にしてBET比表面積、メソポアの数平均直径、スルーポアの数平均直径及び細孔容積を測定すると共に、無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合を算出した。
測定結果を表1に示す。
次に、得られた無機系充填剤を分級して平均粒子径380μmの破砕型無機系充填剤を得た。この無機系充填剤300mgをリザーバーに充填したこと以外は上記実施例1と同様にして実施例3の分析用前処理カラムを製造した。
「比較例1の分析用前処理カラムの製造」
シリカとしてウォーターズ社製 Sep−Pak(登録商標) Vac C18(平均細孔直径12.5nm、数平均粒径55μmないし105μmの範囲のもの)をリザーバーに充填したこと以外は上記実施例1と同様にして比較例1の分析用前処理カラムを製造した。
「比較例2の分析用前処理カラムの製造」
シリカとして洞海化学社製D−350−120A(細孔直径12nm、数平均粒径250ないし500μmの範囲のもの)をリザーバーに300mg充填したこと以外は上記実施例1と同様にして比較例2の分析用前処理カラムを製造した。
Figure 2006192420
「実施例1〜3の無機系充填剤の物性評価」
表1に示すように、実施例1〜3の無機系充填剤はいずれも、スルーポアの数平均直径が2〜25μm以下の範囲であり、メソポアの数平均直径が6〜15nmの範囲であり、本発明に係る無機系充填剤であることが分かる。
次に、実施例1と実施例2を比較すると、比表面積、スルーポアの細孔容積及び細孔容積の割合について、実施例2のほうが低下していることが分かる。これは、実施例2の無機系充填剤が実施例1を破砕して得られたものであり、破砕の過程でスルーポアを起点として割れが起こり、それまでのスルーポア内部が粉砕粒子の表面に露出してしまい、これによりスルーポアの一部が消滅したためと考えられる。
次に、実施例2と実施例3を比較すると、比表面積、スルーポアの細孔容積及び細孔容積の割合について、実施例3のほうが高くなっていることが分かる。これは、実施例3の無機系充填剤を製造する際に、テンプレート化合物が含まれた状態のゲルを網で押し出して粉砕させ、粉砕後の焼結によってスルーポアが形成されるので、粉砕によってスルーポアが割れて減少するおそれがないためである。
図4〜図6には、実施例2及び3の細孔直径と累積細孔容積及び累積細孔容積の微分値との関係をグラフで示す。なお、これらのグラフは、BET法によるメソポアの数平均直径の測定と、水銀圧入法によるスルーポアの数平均直径及び細孔容積から求めたものであって、表1の数平均直径並びに細孔容積及び細孔容積の割合の基礎データとなるものである。
図4のグラフにおいて、累積細孔容積とは、メソポア及びスルーポアを含む無機系充填剤が有する全ての細孔の容積を累積したものである。即ち図4は、累積細孔容積を縦軸とし、メソポア及びスルーポアを含む全ての細孔の直径を横軸にしたグラフである。
図4に示すように、実施例3の累積細孔容積は、細孔直径0.01μm〜120μmの範囲において、実施例2よりも高くなっていることが分かる。これにより、実施例3では、スルーポア及びメソポアを含む細孔の容積が実施例2よりも多くなっており、吸着対象物質に対する吸着特性に優れていることが分かる。
次に、図5には細孔直径と累積細孔容積の微分値との関係を示す。図5における累積細孔容積の微分値は、累積細孔容積を細孔直径で微分したものである。尚、図5における点線は実施例2及び3の累積細孔容積値である。図5に示すように、細孔直径が2.1〜25μmの範囲において、実施例3の微分細孔容積が実施例2よりも高くなっている。従って、直径2.1〜25μmのスルーポアについては実施例3の方が実施例2よりも多くなっていることが分かる。これにより、実施例3の無機系充填剤を用いた分析前処理用カラムは、後述する通液実験でも明らかになるが、通液性に優れることが分かる。一方、実施例2では、0.38μm付近から2.1μm未満の範囲で微分細孔容積が高くなっているが、この細孔直径自体が比較的小さい領域であることから、カラムに充填した場合の通液性への寄与は小さいものと考えられる。
更に図6には、細孔直径と累積細孔容積の微分値との関係を示すグラフであって、横軸である細孔直径を1〜100nmの範囲で拡大したグラフを示す。図6に示すように、実施例2及び3の両方とも、2〜50nmの範囲で微分曲線がピーク形状を示すことが分かる。従って、実施例2及び3については、直径が2〜50nmのメソポアが確かに存在していることが分かる。
「指標化合物の添加回収試験1」
次に、実施例1、2および比較例1の分析用前処理カラムを用いて、指標化合物の添加回収試験を行った。
まず、指標化合物として、親水性が高く回収が難しいと考えられるフェノール、クレゾールおよび殺菌剤の1種であるアシュラムを選択し、これらの10g/L水溶液を調製して標準溶液とした。この標準溶液20μLをマイクロシリンジで採取して水に添加し、6N塩酸でpHを3.5に調整して1Lの検水を調製した。
得られた検水100mlを実施例1、2および比較例1の分析用前処理カラムに流し込ませて流下させた。なお、検水の流下の際の線速度の条件は、8.8cm/分、22.1cm/分、35.4cm/分の3条件とした。次に、溶離液としてメタノール3mLを各カラムに対して流下させ、流出液をナスフラスコに受けて回収した。回収した流出液についてHPLC法により定量分析を行ない、同液中に含まれる指標化合物を定量して回収量を求め、この結果から指標化合物の添加回収率を求めた。
表2に、指標化合物の添加回収率を線速度の条件ごとに示した。
なお、指標化合物の添加回収率は、線速度8.8cm/分で流下させて得られた流出液中の指標化合物含有量(μg)に対する、線速度22.1cm/分、35.4cm/分のそれぞれの場合における流出液中の指標化合物含有量(μg)の質量百分率である。
Figure 2006192420
表2に示すように、実施例1では、線速度を8.8cm/分から35.4cm/分まで約4倍に増加させた場合でも、回収率の低下はほとんど見られず、線速度が大きくても指標化合物を十分に保持していることがわかる。すなわち迅速な前処理が可能である+。
また、粉末状の充填剤を用いた実施例2では、ロッド状の充填剤を用いた実施例1に比べて回収率がやや低下するものの、比較例1の粒子状シリカの結果と比較すると、通液速度が大きくなっても指標保持化合物を十分に保持できていることがわかる。
比較例1では、線速度が上がるに従って回収率が大幅に低下している。すなわち、線度が大きくなるにつれて指標化合物を保持できず、溶離液を流す前に指標化合物の一部が分析用前処理カラムから流出してしまったことがわかる。比較例1では線速度を大幅に高めることができず、迅速な前処理が可能であるとはいいがたい。
「指標化合物の添加回収試験2」
実施例3および比較例1、2の分析用前処理カラムを用いて、指標化合物の添加回収試験を行った。
まず、指標化合物として、環境ホルモンの1種である17β−エストラジオールを選択し、この0.01g/L水溶液を調製して標準溶液とした。この標準溶液10μLをマイクロシリンジで採取して水に添加し、6N塩酸でpHを3.5に調整して1Lの検水を調製した。
得られた検水1000mlを実施例3および比較例1、2の分析用前処理カラムに流し込ませて流下させた。なお、検水の流下の際の線速度の条件は、17.7cm/分、35.4cm/分、53.1cm/分、70.8cm/分の4条件とした。精製水5mL、ヘキサン5mLで洗浄後、次に、溶離液として酢酸エチル/メタノール(体積比5/1)5mLを各カラムに対して流下させ、流出液をナスフラスコに受けて回収した。回収した流出液についてHPLC法により定量分析を行ない、同液中に含まれる指標化合物を定量して回収量を求め、この結果から指標化合物の添加回収率を求めた。
表3に、指標化合物の添加回収率を線速度の条件ごとに示した。なお、指標化合物の添加回収率は、添加した指標化合物の重量(μg)に対する流出液中の指標化合物含有量(μg)の質量百分率である。
Figure 2006192420
表3に示すように、実施例3、比較例1では、線速度を17.7cm/分から70.8cm/分まで約4倍に増加させた場合でも、回収率の低下はほとんど見られず、線速度が大きくても指標化合物を十分に保持していることがわかる。すなわち迅速な前処理が可能である。
一方、比較例2では、2重細孔構造を有する実施例3とほぼ粒径は同じ充填剤を用いているが回収率が低下しており、指標保持化合物を十分に保持できていないことがわかる。このことは溶離液を流す前に指標化合物の一部が分析用前処理カラムから流出してしまったことを示しており、前処理に必要な保持能力を有しているとはいいがたい。
「通液性試験」
上記実施例3、比較例1、比較例2で作成したカートリッジを用いて以下のような条件において水の通液性試験を行った。
条件
試験水としてSS(浮遊粒子状物質)8mg/l、TC(総炭素)17.3mg/l、TOC(総有機炭素)5.2mg/lの水1000mlを、それぞれのカートリッジに一定吸引圧(300hPa)にて通液し、トータルの通液量ごとの流速の変化を記録した。
表4に、ある通液量での通液速度(単位ml/分)を示した。
表4に示すように、いずれの場合でも、通液量が増えるに従い、通液速度が低下しており、カートリッジが目詰まりを起こしていることがわかる。特に、表3に示す添加回収率の点では実施例3と同程度であった比較例1のカートリッジについては、目詰まりが顕著であり、この吸引圧では試験水を1000ml通液することは困難であることがわかる。
Figure 2006192420
以上の結果より、保持能力が高く、通液性もよいという性能を両立できるものは実施例3に示されるカートリッジだけであり、このことは充填剤が2重細孔構造をもっているからに他ならない。
図1は、本発明の実施形態である分析用前処理カラムを示す断面模式図。 図2は、本発明の実施形態である分析用前処理カラムを用いた有機物質の濃縮方法の一例を説明する模式図。 図3は、本発明の実施形態である分析用前処理カラムを用いた有機物質の濃縮方法の別の例を説明する模式図。 図4は、実施例2及び3の無機系充填剤の累積細孔容積と細孔直径との関係を示すグラフ。 図5は、実施例2及び3の無機系充填剤の累積細孔容積及びその微分値と細孔直径との関係を示すグラフ。 図6は、実施例2及び3の無機系充填剤の累積細孔容積の微分値と細孔直径との関係を細孔直径1〜100nmの範囲で示すグラフ。
符号の説明
1…分析用前処理カラム、2…無機系充填剤、2a…充填剤層、3…カラム容器(リザーバー)

Claims (14)

  1. 数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなる無機系充填剤が少なくとも充填されてなることを特徴とする分析用前処理カラム。
  2. 前記無機系充填剤の体積に占める前記スルーポアの細孔容積の割合が30%以上90%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の分析用前処理カラム。
  3. 前記無機系充填剤の表面に有機化合物がコーティングされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析用前処理カラム。
  4. 前記無機系充填剤がシリカを主成分として形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の分析用前処理カラム。
  5. 前記無機系充填剤が粒子状であり、その数平均粒子径が10μm以上1000μm以下の範囲であり、かつBET法による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の分析用前処理カラム。
  6. テンプレート化合物を含む溶液中でアルコキシシランを加水分解、ゲル化してシリカゲルとし、
    該シリカゲルを粉砕してから塩基性溶液で処理するか、あるいは該シリカゲルを塩基性溶液で処理してから該シリカゲルを粉砕し、
    そのシリカゲルを焼成することを特徴とする無機系充填剤の製造方法。
  7. 前記シリカゲルを粉砕する手段として、複数の貫通孔を有する多孔質板材の一面側から前記シリカゲルを前記貫通孔に圧入させて粉砕する手段を用いることを特徴とする請求項6に記載の無機系充填剤の製造方法。
  8. 前記テンプレート化合物がポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアクリル酸のうちのいずれかであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の無機系充填剤の製造方法。
  9. 前記無機系充填剤が請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の分析用前処理カラム。
  10. 分取対象物質および共存物質が含有された分析試料を、請求項1ないし請求項5または請求項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させて前記分取対象物質を前記無機系充填剤に吸着させた後、前記分析用前処理カラムに溶離液を流通させて前記分取対象物質を流出させることを特徴とする分取対象物質の分取方法。
  11. 分取対象物質および共存物質が含有された分析試料を、請求項1ないし請求項5または請求項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させることにより、前記共存物質を前記無機系充填剤に吸着させるとともに前記分取対象物質を流出させることを特徴とする分取対象物質の分取方法。
  12. 前記分取対象物質が、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、農薬、環境ホルモン、重金属、タンパク質から選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の分取対象物質の分取方法。
  13. 除去対象物質および共存物質が含有された試料を、請求項1ないし請求項5または請求項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させることにより、前記試料から前記除去対象物質を除去することを特徴とする試料の浄化方法。
  14. 回収対象物質および共存物質が含有された試料を、請求項1ないし請求項5または請求項9のいずれかに記載の前記分析用前処理カラムに流通させることにより、前記試料から前記回収対象物質を回収することを特徴とする回収対象物質の回収方法。

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