JP2004108838A - 固相抽出用カートリッジカラム - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な吸着能力と短時間で多量の気体を処理できるという特長を兼ね備えた、残留性有機汚染物質(ダイオキシン類、PCB類、有機塩素系農薬)用の固相抽出用カートリッジカラムおよびそれを用いた残留性有機汚染物質の精製濃縮方法の提供。
【解決手段】特定の平均粒子径および比表面積を有する吸着体粒子が充填された固相抽出用カートリッジカラム。当該吸着体粒子としては不揮発性のシロキサン化合物でコーティングされたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子が好ましい。
【選択図】 なし。
【解決手段】特定の平均粒子径および比表面積を有する吸着体粒子が充填された固相抽出用カートリッジカラム。当該吸着体粒子としては不揮発性のシロキサン化合物でコーティングされたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子が好ましい。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体中に含まれる残留性有機汚染物質を迅速に濃縮するための固相抽出用カートリッジカラム、およびそれを用いた精製濃縮方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機塩素系農薬に始まった環境汚染は、今や地球規模の問題へと深刻化しつつある。例えば、赤道付近で放出される農薬は、海水への溶解、蒸発、降雨により、少しずつ極に移動し、極の生態系を破壊しつつある。また、中国の大気汚染は日本海沿岸に酸性雨をもたらしている。
【0003】
ここで問題となる化学物質は、POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)という概念で代表される。このPOPsとは、有害性を持ち自然界で分解しがたく食物連鎖の過程で生物濃縮しやすいうえ、大気によって長距離を移動しやすく生産使用あるいは廃棄の場よりはるかに離れた地域でも環境や人間の健康に悪影響を与える有機物質と定義されている。
【0004】
このPOPsがとりわけ問題視されるのは以下の理由のためである。有害物質の中でも揮発性の高い物質は一方的な大気へのガス化・拡散がおこり、揮発性の低い物質はガス化がなく地表に留まりやすい。しかしPOPsは中程度の揮発性を持つため、ガス化・凝縮が比較的容易に起こる。そのためいったんガス化して大気により移動し、再び凝縮して地表上に戻ってくる。このガス化・凝縮のサイクルを繰り返し、地球上を拡散してゆく。しかもPOPsは大部分が有機塩素化合物であるため、脂溶性であり容易に生物濃縮される。
【0005】
このため、例えば工場排水と飲料水の因果関係を追う、というような従来のやり方だけでなく、水、土、大気中に残存、もしくは新たに放出される多くの化学物質に対して、生物濃縮も含めて、地球規模での物質移動のモニタリングが急務になってきている。すなわち、それらPOPsについて毒性という観点だけでなく、環境ホルモン作用も睨んだモニタリングが必要であり、▲1▼生活活動による変動をカバーするための長時間サンプリング法、▲2▼微量成分の迅速サンプリング法、のふたつの側面から、各種のモニタリング法の開発が環境省の主導により進められている。
【0006】
また代表的なPOPsのひとつであるPCBs(ポリ塩化ビフェニル類)は、安定な化学的・物理的性質および有用な特性を持つために数々の用途があった。しかしその毒性のために1972年に製造中止され、保管が義務付けられていたが、その時点での使用中のものは耐用年数に達するまで使用されてきた。現在、法律に従って本格的なPCB処理が始まろうとしているが、PCB処理施設においてはトランスやコンデンサーなどの解体現場や保管場所の室内環境、また建築物内ではPCB含有シーラントや蛍光灯安定器の破損や漏洩による室内環境汚染が懸念されている。そのため、室内環境中のPCB測定の必要性は高まってきている。
【0007】
さらに、POPsのひとつであるクロルピリホスについても、防蟻剤として使用され室内空気汚染物質のひとつとしてあげられる化合物であり、シックハウス(室内空気汚染)問題としてその濃度測定が求められるようになっている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、ここで開示されている測定法においては、新築住宅の場合で10L/minの流量で2時間程度のサンプリング時間でその全採取空気量は約1.2m3であり、居住中の住宅においても1L/minの流量で24時間のサンプリング時間でその全採取空気量は約1.4m3である。クロルピリホス以外のPOPsについてこの方法を応用しようとすると、その測定対象物質の濃度が極微量である場合には検出下限値以下になる可能性もある。このような場合もありうるため、全採取大気量は多いほうが望ましい。
【0008】
またPOPsのモニタリングに関しては、環境大気中のPOPsであるダイオキシン類およびコプラナーPCB類については、以下の測定マニュアルが環境省によって定義されている(例えば、非特許文献2)。
【0009】
この方法は、ハイボリュームエアーサンプラー法と呼ばれ、ハイボリュームエアーサンプラー(例えば、柴田化学株式会社製HV−500F、HV−1000F(ダイオキシン用)を使用する)に試料採取用具(石英繊維ろ紙およびポリウレタンフォーム)を取り付け、ここに700L/minの流量で24時間連続、もしくは、100L/minの流量で7日間連続で大気を採取しその総吸引大気量を約1000m3とするものである。この方法では、サンプリング時間が24時間、もしくは7日間必要であること、さらに装置が高価かつ大きく複雑であり、複数の測定点において同時に測定する場合、あるいは他のPOPsを含めた複数の物質を同時に測定するなどといった場合への応用には、装置も複数必要になるなど、問題点が多い。
【0010】
それに対し、比較的簡易な装置を用いてPOPsをモニタリングする手法として、固相吸着カラム(ウォーターズ社製 商品名 Sep−Pak PS Air)を用いたローボリュームエアーサンプラー法(PSAir−Low−Vol法)が提案されている(例えば、非特許文献3)。これは、ローボリュームエアーサンプラー(例えば、ジーエルサイエンス社製大気サンプリングポンプSP204−20Lを使用)に固相吸着カラムSep−Pak PS Airを接続し、このカラムに2〜5L/minの大気流速で24時間採取する方法である。
【0011】
さらにこの方法では、室内大気中のPCBsのモニタリング法としても有用であるとされている(例えば、非特許文献4)。
【0012】
しかしこの「室内大気中のPCBのモニタリング手法」により提案されている、PSAir−Low−Vol法では、固相吸着カラムにおける大気流速は、4m3程度の環境または室内大気を採取するのに24時間必要とされていることから、3L/min程度である。すなわち大気流速が遅いためにサンプリングの時間が長くなるという欠点がある。
【0013】
すなわち、簡易な装置を用いて大気または室内環境中のPOPsを迅速にサンプリングする方法について、開示されている例はない。ここで迅速とは、6時間程度のサンプリング時間により少なくとも4m3以上の全採取大気量を確保することを示す。その6時間とは、サンプリング操作において、実施者の1日の標準労働時間を8時間とした場合の測定準備、後片付け等の時間を考慮した時間である。
【0014】
このPSAir−Low−Vol法は、固相抽出法を応用したカラムであるが、この固相抽出法は近年盛んに用いられるようになってきた方法である。従来、気体中からの試料の抽出には液体吸収法、液体中からの試料の抽出には液−液抽出法が多く用いられてきたが、作業が繁雑で時間と経験を要すること、溶媒を多量に使用することなどの問題があった。これに対して、固相抽出法は、作業が簡単なうえに短時間ですみ、しかも溶媒の使用量が少ないという特長を持っている。そのため、多数の検体を短期間に処理しなければならない場合に非常に有利であり、自動化も容易である。固相抽出法が近年急速に浸透したことの背景には、吸脱着性能のよい多孔性粒子が開発され、それらが固相抽出用吸着剤として複数のメーカーから市場に提供されるようになったことが挙げられる。固相抽出に用いられる充填剤は、無機系基材としては、シリカゲルまたはシリカゲルの表面を化学修飾した化学結合型シリカゲル、有機系基材としては、ポリスチレン−ジビニルベンゼンに代表される合成高分子系及びこれらの表面を化学修飾したものが用いられている。(特許文献1,特許文献2 参照)
【0015】
そのような吸着剤を充填したディスクやカラムで、大過剰の気体に存在する超微量の残留性有機汚染物質を効率よく吸着するためには、粒子の粒径をできるだけ小さくするか(例えば、ジーエルサイエンス社製商品名GL−Pak PLSシリーズ、またはバリアン社製商品名ボンドエルートシリーズなど。これらの固相抽出カートリッジでは、吸着剤は約40〜120μmの粒子径のものが充填されている。)、粒子を圧縮などして(プラスタイプのカートリッジに充填されているもの。例えば、ウォーターズ社製商品名 Sep−Pak PS Air)、その充填密度を上げて粒子間の隙間をできるだけ小さくすることが好ましい。ところが、そうすると通気時にかかる圧力が大きくなるため流速を上げられず、大量の気体を通じるのに長時間を要してしまう。
【0016】
【特許文献1】
特開昭59−147606号公報
【特許文献2】
特開平4−334546号公報
【非特許文献1】
厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告−第6回〜第7回のまとめについて (別添3) 室内空気中化学物質の測定マニュアル (別添3−3) クロルピリホスの測定方法(暫定案)」、[online]、平成13年7月5日、厚生労働省、[平成14年9月5日検索]、インターネット<URL:http://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0724−1c.html>
【非特許文献2】
環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室、「ダイオキシン類にかかわる大気環境調査マニュアル 第3節 環境大気中のダイオキシン類の測定分析方法」、[online]、平成13年8月、環境省、[平成14年9月8日検索]、インターネット<URL:http://www.env.go.jp/air/osen/manual/index.html>
【非特許文献3】
中野武、外6名、「大気中POPs分析法の検討」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.472−473
【非特許文献4】
中野武、外3名、「室内大気中のPCBのモニタリング手法」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.582−583
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、ポリマー粒子の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力が比較的低いという特長を有し、迅速に残留性有機汚染物質を吸着することが出来る固相抽出用カートリッジカラム、さらにそれを用いた精製濃縮方法を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリマー粒子の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力を比較的低く抑える固相抽出用カートリッジカラムを作る方法を鋭意検討してきたが、小さな粒子径、または圧縮された状態で粒子間の隙間が小さい状態での容器を用いている限り、目的を達するのは極めて困難であると判断された。そこで、比較的大きな平均粒子径を持つポリマー粒子を用いる場合においても過剰な圧縮を加えずに充填できる容器を用いれば吸着能力を損なうことなく圧力損失が低く押さえられること、またさらにポリマー粒子が大きくなり充填密度が下がった場合においてもポリマー粒子表面を修飾することで被吸着物質に対する吸着力を高めることができると考えて、鋭意検討を重ねた結果、上記課題が解決され、ポリマー粒子の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力を比較的低く抑えるという特長を有する残留性有機汚染物質の固相抽出用カートリッジカラムを作ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち本発明は次の[1]〜[12]に関する。
[1] 気体中に含まれる残留性有機汚染物質を吸着体に吸着したのち、溶出して当該物質を濃縮する用途に使用する固相抽出用カートリッジカラムにおいて、吸着体の数平均粒子径が150μm以上、700μm以下であり、かつ比表面積が50m2/g以上であることを特徴とする固相抽出用カートリッジカラム。
[2] 吸着体が有機ポリマー樹脂であることを特徴とする[2]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[3] 有機ポリマー樹脂が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体であることを特徴とする[1]または[2]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
【0020】
[4] 吸着体に有機化合物がコーティングされていることを特徴とする[1]から[3]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[5] コーティングが有機化合物の吸着体への塗布によって行われることを特徴とする[4]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[6] コーティングが有機化合物と吸着体表面とのカップリング反応もしくは重合反応によって行われることを特徴とする[4]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[7] コーティングされる有機化合物が不揮発性の有機液体または有機ポリマーであることを特徴とする[4]〜[6]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
【0021】
[8] 不揮発性の有機液体または有機ポリマーが、シロキサン化合物またはシリコーン化合物であることを特徴とする[7]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[9] 残留性有機汚染物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)より選ばれる1種または2種以上の化合物であるあることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[10] 吸着体に流通させる気体の流速を6L/minとしたときの吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
【0022】
[11] 気体中に含まれる残留性有機汚染物質を[1]〜[10]のいずれか一つの固相抽出用カートリッジカラムの吸着体にいったん吸着させた後、溶媒を用いて溶出させることを特徴とする残留性有機汚染物質の濃縮方法。
[12] 残留性有機汚染物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に非意図的に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)より選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする[11]に記載の残留性有機汚染物質の濃縮方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは、表面が他の有機化合物で修飾(コーティング)されていない吸着体/または修飾されている吸着体を所定の容器に充填したものである。この固相抽出用カートリッジカラムに測定対象となる気体(環境大気、室内大気、排気ガスなど)を通気し、気体中に含まれる残留性有機汚染物質を吸着体にいったん吸着させた後、溶媒を用いて溶出させて対象となる残留性有機汚染物質を精製及び/または濃縮することができる。
【0024】
本発明において用いられる吸着体は粒子状であることが好ましい。吸着体の数平均粒子径は、150μm以上、700μmであり、200μm以上、600μm以下が好ましく、300μm以上、500μm以下がさらに好ましい。平均粒子径が150μm以下になると、流通させる気体の流速を6L/minに保つ場合の吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以上になり、十分な量の気体を流すことができない。また700μm以上になると、残留性有機汚染物質の吸着効率が悪くなることがある。
【0025】
本発明において用いられる粒子状の吸着体の比表面積は、50m2/g以上であり、400m2/g以上が好ましく、600m2/g以上がより好ましい。比表面積が50m2/gより小さいと残留性有機汚染物質の吸着効率が悪くなり好ましくない。なお、比表面積はBET法により測定されたものである。
【0026】
本発明において用いられる吸着体は、有機ポリマー樹脂であることが好ましい。特に、非イオン性重合体であり液体クロマトグラフィーにおける充填剤や吸着剤として使用されるものが好ましい。例えば市販品のものとして、アンバーライトXAD7HP(アクリル系−ジビニルベンゼン共重合体、ロームアンドハース社製)、ダイアイオンHP20(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、三菱化学製)、ダイアイオインHP2MG(メタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、三菱化学製)などが挙げられる。これらのなかでも特にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体は疎水性が強く好ましい。
【0027】
本発明において用いられるスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の形状は、固体であれば特に制限はなく、塊状、粒子状、破砕状、膜、繊維などがあげられるが、特に好ましくは粒子状である。
【0028】
・スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の一般的製法と粒子径分布・比表面積の調整方法
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の一般的製法と粒子径分布・比表面積の調整方法を以下に示す。スチレン、ジビニルベンゼン、トルエンの混合溶液に、重合開始剤として、AIBNを加える。ここで水性懸濁重合で球状粒子を作る場合水相には分散安定剤を添加するため、ポリビニルアルコール水溶液に上記トルエン溶液を加える。目的とした粒子径分布を持たせるためには、水性懸濁重合を始める前に油相と水相を混合し、油滴が目的とする粒径になるように分散させる。分散には、微粒子化用の攪拌翼を付けた攪拌装置、または高速分散機(ホモジナイザー)等を用いることができる。比較的粒径の大きい吸着剤(例えば固相抽出用)を作るには微粒子化用の攪拌翼を付けた攪拌装置を用い、比較的粒径の小さい吸着剤(例えば、液体クロマトグラフィー用の吸着剤)を作るには高速分散機(ホモジナイザー)を用いるのがよい。また、表面積(多孔度)を調整するためには、その多孔性を付与する目的で単量体混合物に希釈剤を添加して重合する。用いる希釈剤としては、単量体混合物に溶解するが重合反応には不活性で、さらに生成した重合体を溶解しない性質の有機溶媒が使用可能である。この例の場合、トルエンの添加量をスチレンおよびジビニルベンゼンの単量体に対して増減させることで粒子の多孔性(比表面積の割合)を制御できる。この分散系を80℃に保ち、一定時間(10時間程度)重合を行う。重合後、ゲルをろ別、熱水、水、アセトンで十分に洗浄する。吸引ろ過で十分に乾燥させた後、減圧で更に乾燥し、目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得る。
【0029】
吸着体に有機化合物をコーティングする方法は、塗布法(乾式、湿式)、カップリング反応法、モノマー吸着重合法(モノマーを吸着体表面上で重合させる方法)、表面グラフト化法、蒸着法、プラズマ重合法などがあげられるが、処理の簡便さなどから、塗布法、カップリング反応法またはモノマー吸着重合法を用いることが好ましい。
【0030】
本発明において用いられる吸着体にコーティングされる有機化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、界面活性剤、カップリング剤など吸着体の表面を覆うことが可能ならばその種類は特に制限はないが、不揮発性の有機液体または有機ポリマーが好ましい。中でも気液分配クロマトグラフィー用カラムの固定液相に用いられるシロキサン化合物またはそれらの重合体であるシリコーン化合物(ポリシロキサン)が特に好ましい。これらの化合物としては、OV−1、OV−3、OV−7、OV−11、OV−17、OV−22、OV−25、OV−61、OV−73、OV−101、OV−105、OV−202、OV−210、OV−215、OV−225、OV−275、OV−1701、SiliconeDC−11、Silicone DC−200、Silicone DC−550、Silicone DC−QF−1、Silicone GS−1、Silicone GS−17、Silicone GS−101、Silicone GS−210、Silicone GS−275、Silicone KF−96、Silicone SE−30、Silicone SE−52、Silicone SE−54、Silicone KF−96、SiliconeW−98、Silicone XE−60、ECNSS−M、EGSS−Xなどのが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムの吸着対象である残留性有機汚染物質としてはダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)、環境ホルモン等が挙げられる。これらの化合物の例としては、ダイオキシン類、ジベンゾフラン類、多環芳香族炭化水素(PAHs、ベンゾ(a)ピレンを含む)、ポリ塩化ビフェニル類、ポリ臭化ビフェニル類、DDT、クロルピリホス、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、マイレックス、トキサフェン(カンフェクロル)、ヘキサクロロシクロヘキサン(リンデン(γ−HCH)など)、クロルデコン(ケポン)、オクタクロロスチレン(OCS)、などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0032】
なお、ここで「有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物」とは、例えば生産に当たっては副生成物であり目的物との分離が不可能または不十分なため製品に混入したもの、使用に当たっては太陽光、生物の代謝等での反応により新たに生成するもの、廃棄に当たっては焼却炉内での加熱等での反応により新たに生成するもの、などの場合をいう。
【0033】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは吸着体に流通させる気体の流速を6L/minとしたときの吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以下であることが好ましい。圧力損失が6.5kPaを超えると、ポンプなどに負荷がかかりすぎるため、通気流速を落とさざるを得なくなり、結果的に必要なサンプル量を得るために要する時間が長くなる。
【0034】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは、上下一組のフィルターを有するポリエチレン製などの注射筒型容器(リザーバーと称する)に吸着体を充填して用いることができる。その樹脂製のリザーバーは、有機溶媒に不溶性で、吸着体が試料の濃縮作業中に樹脂製のリザーバーから流れでたりしなければよく、その材質、形は特に制限されない。そのようなものとして例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の容積1〜20ml、好ましくは3〜6mlのリザーバーに樹脂性のフィルターがセットされたものを挙げることができる。吸着体のリザーバーへの充填量は通常、リザーバーの容積6mlに対して100〜600mg、好ましくは、200〜500mgとなるように充填する。
【0035】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムの具体的な用途としては、焼却炉排気ガス、各種製造設備排気ガス、幹線道路上空捕集大気のような環境大気、あるいは室内大気などから選ばれる1種または2種以上の気体中のPOPs分析など、高度な濃縮を必要とする前処理などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明にこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
<吸着体の数平均分子量の測定>
シムパテック社製レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOSシステムを用い、吸着体の相対度数すなわち個数百分率から求めた数平均分子量を測定した。
【0038】
<比表面積の測定法と測定機器>
BET法により、コールター社製 コールター SA3100を用いて、比表面積を測定した。
【0039】
(実施例1)
<スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−1の作製>
精製したスチレン39g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製DVB−H純度約80重量%)24g、トルエン70gの混合溶液に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを溶解して、油相を調製した。次に、0.6%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバールPVA−224)水溶液700mlに上記トルエン溶液を加えた。目的とした粒子径分布を持たせるために、油滴の最大粒径が300μmになるように高速攪拌して調整した。次いで攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行なった。生成した架橋共重合体粒子をろ取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。得られた粒子を適切な目開きの篩にて分級して十分に乾燥させた後、目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。
【0040】
<固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定−1>
底にポリエチレン製フィルターがセットされた固相抽出用空カートリッジ(内容積6ml)に、平均粒子径が300μmであり、比表面積が680m2/gのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−1(上記製造品)を300mg充填し、上から別のポリエチレン製フィルターで栓をして棒で十分に押し込み、固相抽出用カートリッジとした。このカートリッジを、その前後の静圧が測定できるように流路を構成した空気流通装置(日本工業標準調査会審議、「気体中のダスト試料捕集用ろ過材の形状、寸法並びに性能試験方法 JIS K 0901−1991 」、日本規格協会、平成3年3月1日改正、p.4−5およびp.14−15に記載の装置に準拠した装置)に接続した。そこに空気を6L/minで通気してカートリッジ前後の静圧の差(圧力損失)を測定したところ、3.5KPaであった。
【0041】
<指標化合物の回収(保持)試験>
(1) 指標化合物として、1,2,3−トリクロロベンゼン(TrcBz)、および、1,2,3,4,−テトラクロロベンゼン(TecBz)を選択し、これらの10g/Lヘキサン溶液を調製した。これを標準溶液とした。
(2) 固相抽出用カートリッジ1本に、標準溶液 20μLをマイクロシリンジにより添加した後、10分間放置しヘキサンを揮発させた。
(3) (2)で指標化合物を添加した固相抽出用カートリッジを最上段として、その下段に何も添加していない同一の固相抽出用カートリッジを2本直列に連結した。
(4) 3本を直列に連結した固相抽出用カートリッジに、空気を20L/minで最上段のカートリッジから通気した。
(5) 空気の全流通量が4m3になるまで上記設定流量で空気を通気した。流通時間は3時間20分であった。
【0042】
(6) 空気の通気が終了したら、それぞれの固相抽出用カートリッジを切り離し、ジクロロメタン20mlを各固相抽出用カートリッジに通液し、抽出液を30mlのナスフラスコに受けた。
(7) ジクロロメタン抽出液は、10℃の冷浴上で窒素ガス200ml/minを吹き付けて液量が約2ml程度になるまで濃縮して、回収溶液とした。
(8) 回収溶液は、GC分析により、回収溶液中に含まれる指標化合物を定量し、回収率(固相抽出用カートリッジカラムの保持率)を求めた。
【0043】
<GCの分析条件>
使用機器:島津製作所 GC−14A
カラム:ヒューズドシリカ(ガードカラム)2.0m×0.32mmI.D.+DB−5(J&wサイエンティフィック社製) 30m×0.32mmI.D.×0.25μm
キャリアーガス:ヘリウム 線速度40cm/S
スプリット比:1/20、注入量:2μL
注入口温度:200℃
検出器:FID レンジ=100
昇温条件:60℃、3min→4℃/min→150℃、0min→30℃/min→280℃、25min
【0044】
<指標化合物の回収(保持率)率の計算>
・回収率の計算式
回収溶液中のTrcBzおよびTecBzの濃度を、内部標準物質として1,2−ジクロロベンゼンを用いた内部標準法によりGCにて定量して求め、回収溶液中の含有量(μg)を計算した。
回収溶液中の含有量(μg)=回収溶液量(g)×回収液の含有量(重量ppm)
回収率は、最初に1段目の固相抽出用カートリッジに添加した量:TrcBzおよびTecBzそれぞれ200μg(1段目の固相抽出用カートリッジにTrcBzおよびTecBzの10g/Lヘキサン溶液20μLをマイクロシリンジにより注入したため)に対するそれぞれの固相抽出用カートリッジからの回収溶液中の含有量(μg)の重量百分率である。
回収率(%)= 固相抽出用カートリッジからの回収溶液中の含有量(μg)÷ 200×100
【0045】
表1に圧力損失の測定結果、表2に指標化合物の回収試験結果を、他の実施例、比較例とともにまとめて示した。
【0046】
(実施例2)
<スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−2の作製>
精製したスチレン39g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製DVB−H純度約80重量%)24g、トルエン70gの混合溶液に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを溶解して、油相を調製した。次に、0.6%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバールPVA−224)水溶液700mlに上記トルエン溶液を加えた。目的とした粒子径分布を持たせるために、油滴の最大粒径が200μmになるように高速攪拌して調整した。次いで攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行なった。生成した架橋共重合体粒子をろ取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。得られた粒子を篩にて分級して十分に乾燥させた後、目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。
【0047】
<固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定−2>
実施例1で使用した粒子の代わりに、平均粒子径が200μmであり、比表面積が680m2/gのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−2(上記製造品)を使用した以外は、実施例1と同様に固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、4.0KPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0048】
(比較例1)
実施例1で使用した粒子に代わり、数平均粒子径が120μmのシリカゲル粒子(International Sorbent Technology社製)を使用した以外は、実施例1と同様に固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、10.6KPaであった。平均粒子径が小さいと圧力損失が大きく、そのために気体流通時の圧力損失が大きいと思われた。3本直列に接続すると圧力損失が大きく20L/minの設定流量では安定した流通が困難であり、固相抽出用カートリッジとして実用性を欠いた。
【0049】
(比較例2)
<スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−3の作製>
精製したスチレン5g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製DVB 純度約55重量%)24gの混合溶液に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを溶解して、油相を調製した。次に0.6%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバールPVA−224)水溶液400mlに上記溶液を加えた。目的とした粒子径分布を持たせるために、油滴の最大粒径が300μmになるように高速攪拌して調整した。次いで攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行なった。生成した架橋重合体粒子を濾取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。得られた粒子を篩にて分級して、十分に乾燥させた後目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。
【0050】
<固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定−3>
実施例1で使用した粒子の代わりに、平均粒子径が300μmであり、比表面積が20m2/gのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−3(上記製造品)を作製しこれを使用した以外は、実施例1と同様に固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、3.7kPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。比表面積が小さいと指標化合物はほとんど脱着された。
【0051】
(実施例3)
<固定液相をコーティングしたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定>
OV−17(ジーエルサイエンス社製)0.269gをエーテル20mlに溶解した。この溶液に実施例1で使用したものと同じスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−1 5.000gを添加した。このスラリーを40℃の温浴上で十分に攪拌しながら窒素ガスを吹き付けてエーテルを蒸発させた。エーテルがほぼ揮発して粒子が乾いた状態になったところで、温浴上での攪拌と窒素ガスの吹き付けを終了した。この粒子を60℃、6時間減圧乾燥して、OV−17を塗布したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。仕込み比より計算されるこの液相担持率は、約5wt%である。この粒子を315mg充填した以外は実施例1と同様な方法で固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、3.6KPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0052】
(実施例4)
OV−17の代わりに、Silicone SE−30(ジーエルサイエンス社製)0.270gを用いた以外は実施例3と同様な方法を用いて、Silicone SE−30を塗布したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。仕込み比より計算されるこの液相担持率は、約5wt%である。この粒子を315mg充填した以外は実施例1と同様な方法で固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、4.2KPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0053】
(参考比較例1)
実施例1で使用した固相抽出用カートリッジに代わり、ウォーターズ社製 商品名 Sep−Pak PS Airを使用した以外は、実施例1と同様の装置を用いて圧力損失を測定したところ、10.0KPaであった。この製品はプラスタイプというカートリッジに吸着剤が圧縮されて充填してあり、そのために気体流通時の圧力損失が大きいと思われた。3本直列に接続すると圧力損失が大きく20L/minの設定流量では安定した流通が困難であった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を、空気を6L/minで通気した(流通時間は11時間7分であった)以外は実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0054】
実施例1において、空気流速を約3.3倍にした場合にも上流側から2番目のカートリッジまでで添加した指標化合物をすべて保持していた。つまり実施例1で作製したカートリッジは、参考比較例1(従来法)に比べて同体積の大気量を約1/3の時間で処理可能であり、気体中に含まれる残留性有機汚染物質をより迅速に捕捉できる固相抽出用カートリッジカラムといえる。
【0055】
実施例3よび4より、シロキサン化合物類をスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の塗布した場合においても、参考比較例1と比べて空気流速を約3.3倍にした場合にも上流側から2番目のカートリッジまでで添加した指標化合物をすべて保持し、さらに実施例1と比較し最上流側のカートリッジに保持されている指標化合物が多かった。つまり実施例3および4で作製したカートリッジについても、従来法に比べて同体積の大気量を約1/3の時間で処理可能であり、気体中に含まれる残留性有機汚染物質をより迅速に捕捉できる固相抽出用カートリッジカラムといえる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは気体中に含まれるダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、環境ホルモンなどのPOPsと総称される残留性有機汚染物質などの被測定物質の精製および/または濃縮を短時間で行うことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体中に含まれる残留性有機汚染物質を迅速に濃縮するための固相抽出用カートリッジカラム、およびそれを用いた精製濃縮方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機塩素系農薬に始まった環境汚染は、今や地球規模の問題へと深刻化しつつある。例えば、赤道付近で放出される農薬は、海水への溶解、蒸発、降雨により、少しずつ極に移動し、極の生態系を破壊しつつある。また、中国の大気汚染は日本海沿岸に酸性雨をもたらしている。
【0003】
ここで問題となる化学物質は、POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)という概念で代表される。このPOPsとは、有害性を持ち自然界で分解しがたく食物連鎖の過程で生物濃縮しやすいうえ、大気によって長距離を移動しやすく生産使用あるいは廃棄の場よりはるかに離れた地域でも環境や人間の健康に悪影響を与える有機物質と定義されている。
【0004】
このPOPsがとりわけ問題視されるのは以下の理由のためである。有害物質の中でも揮発性の高い物質は一方的な大気へのガス化・拡散がおこり、揮発性の低い物質はガス化がなく地表に留まりやすい。しかしPOPsは中程度の揮発性を持つため、ガス化・凝縮が比較的容易に起こる。そのためいったんガス化して大気により移動し、再び凝縮して地表上に戻ってくる。このガス化・凝縮のサイクルを繰り返し、地球上を拡散してゆく。しかもPOPsは大部分が有機塩素化合物であるため、脂溶性であり容易に生物濃縮される。
【0005】
このため、例えば工場排水と飲料水の因果関係を追う、というような従来のやり方だけでなく、水、土、大気中に残存、もしくは新たに放出される多くの化学物質に対して、生物濃縮も含めて、地球規模での物質移動のモニタリングが急務になってきている。すなわち、それらPOPsについて毒性という観点だけでなく、環境ホルモン作用も睨んだモニタリングが必要であり、▲1▼生活活動による変動をカバーするための長時間サンプリング法、▲2▼微量成分の迅速サンプリング法、のふたつの側面から、各種のモニタリング法の開発が環境省の主導により進められている。
【0006】
また代表的なPOPsのひとつであるPCBs(ポリ塩化ビフェニル類)は、安定な化学的・物理的性質および有用な特性を持つために数々の用途があった。しかしその毒性のために1972年に製造中止され、保管が義務付けられていたが、その時点での使用中のものは耐用年数に達するまで使用されてきた。現在、法律に従って本格的なPCB処理が始まろうとしているが、PCB処理施設においてはトランスやコンデンサーなどの解体現場や保管場所の室内環境、また建築物内ではPCB含有シーラントや蛍光灯安定器の破損や漏洩による室内環境汚染が懸念されている。そのため、室内環境中のPCB測定の必要性は高まってきている。
【0007】
さらに、POPsのひとつであるクロルピリホスについても、防蟻剤として使用され室内空気汚染物質のひとつとしてあげられる化合物であり、シックハウス(室内空気汚染)問題としてその濃度測定が求められるようになっている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、ここで開示されている測定法においては、新築住宅の場合で10L/minの流量で2時間程度のサンプリング時間でその全採取空気量は約1.2m3であり、居住中の住宅においても1L/minの流量で24時間のサンプリング時間でその全採取空気量は約1.4m3である。クロルピリホス以外のPOPsについてこの方法を応用しようとすると、その測定対象物質の濃度が極微量である場合には検出下限値以下になる可能性もある。このような場合もありうるため、全採取大気量は多いほうが望ましい。
【0008】
またPOPsのモニタリングに関しては、環境大気中のPOPsであるダイオキシン類およびコプラナーPCB類については、以下の測定マニュアルが環境省によって定義されている(例えば、非特許文献2)。
【0009】
この方法は、ハイボリュームエアーサンプラー法と呼ばれ、ハイボリュームエアーサンプラー(例えば、柴田化学株式会社製HV−500F、HV−1000F(ダイオキシン用)を使用する)に試料採取用具(石英繊維ろ紙およびポリウレタンフォーム)を取り付け、ここに700L/minの流量で24時間連続、もしくは、100L/minの流量で7日間連続で大気を採取しその総吸引大気量を約1000m3とするものである。この方法では、サンプリング時間が24時間、もしくは7日間必要であること、さらに装置が高価かつ大きく複雑であり、複数の測定点において同時に測定する場合、あるいは他のPOPsを含めた複数の物質を同時に測定するなどといった場合への応用には、装置も複数必要になるなど、問題点が多い。
【0010】
それに対し、比較的簡易な装置を用いてPOPsをモニタリングする手法として、固相吸着カラム(ウォーターズ社製 商品名 Sep−Pak PS Air)を用いたローボリュームエアーサンプラー法(PSAir−Low−Vol法)が提案されている(例えば、非特許文献3)。これは、ローボリュームエアーサンプラー(例えば、ジーエルサイエンス社製大気サンプリングポンプSP204−20Lを使用)に固相吸着カラムSep−Pak PS Airを接続し、このカラムに2〜5L/minの大気流速で24時間採取する方法である。
【0011】
さらにこの方法では、室内大気中のPCBsのモニタリング法としても有用であるとされている(例えば、非特許文献4)。
【0012】
しかしこの「室内大気中のPCBのモニタリング手法」により提案されている、PSAir−Low−Vol法では、固相吸着カラムにおける大気流速は、4m3程度の環境または室内大気を採取するのに24時間必要とされていることから、3L/min程度である。すなわち大気流速が遅いためにサンプリングの時間が長くなるという欠点がある。
【0013】
すなわち、簡易な装置を用いて大気または室内環境中のPOPsを迅速にサンプリングする方法について、開示されている例はない。ここで迅速とは、6時間程度のサンプリング時間により少なくとも4m3以上の全採取大気量を確保することを示す。その6時間とは、サンプリング操作において、実施者の1日の標準労働時間を8時間とした場合の測定準備、後片付け等の時間を考慮した時間である。
【0014】
このPSAir−Low−Vol法は、固相抽出法を応用したカラムであるが、この固相抽出法は近年盛んに用いられるようになってきた方法である。従来、気体中からの試料の抽出には液体吸収法、液体中からの試料の抽出には液−液抽出法が多く用いられてきたが、作業が繁雑で時間と経験を要すること、溶媒を多量に使用することなどの問題があった。これに対して、固相抽出法は、作業が簡単なうえに短時間ですみ、しかも溶媒の使用量が少ないという特長を持っている。そのため、多数の検体を短期間に処理しなければならない場合に非常に有利であり、自動化も容易である。固相抽出法が近年急速に浸透したことの背景には、吸脱着性能のよい多孔性粒子が開発され、それらが固相抽出用吸着剤として複数のメーカーから市場に提供されるようになったことが挙げられる。固相抽出に用いられる充填剤は、無機系基材としては、シリカゲルまたはシリカゲルの表面を化学修飾した化学結合型シリカゲル、有機系基材としては、ポリスチレン−ジビニルベンゼンに代表される合成高分子系及びこれらの表面を化学修飾したものが用いられている。(特許文献1,特許文献2 参照)
【0015】
そのような吸着剤を充填したディスクやカラムで、大過剰の気体に存在する超微量の残留性有機汚染物質を効率よく吸着するためには、粒子の粒径をできるだけ小さくするか(例えば、ジーエルサイエンス社製商品名GL−Pak PLSシリーズ、またはバリアン社製商品名ボンドエルートシリーズなど。これらの固相抽出カートリッジでは、吸着剤は約40〜120μmの粒子径のものが充填されている。)、粒子を圧縮などして(プラスタイプのカートリッジに充填されているもの。例えば、ウォーターズ社製商品名 Sep−Pak PS Air)、その充填密度を上げて粒子間の隙間をできるだけ小さくすることが好ましい。ところが、そうすると通気時にかかる圧力が大きくなるため流速を上げられず、大量の気体を通じるのに長時間を要してしまう。
【0016】
【特許文献1】
特開昭59−147606号公報
【特許文献2】
特開平4−334546号公報
【非特許文献1】
厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告−第6回〜第7回のまとめについて (別添3) 室内空気中化学物質の測定マニュアル (別添3−3) クロルピリホスの測定方法(暫定案)」、[online]、平成13年7月5日、厚生労働省、[平成14年9月5日検索]、インターネット<URL:http://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0724−1c.html>
【非特許文献2】
環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室、「ダイオキシン類にかかわる大気環境調査マニュアル 第3節 環境大気中のダイオキシン類の測定分析方法」、[online]、平成13年8月、環境省、[平成14年9月8日検索]、インターネット<URL:http://www.env.go.jp/air/osen/manual/index.html>
【非特許文献3】
中野武、外6名、「大気中POPs分析法の検討」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.472−473
【非特許文献4】
中野武、外3名、「室内大気中のPCBのモニタリング手法」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.582−583
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、ポリマー粒子の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力が比較的低いという特長を有し、迅速に残留性有機汚染物質を吸着することが出来る固相抽出用カートリッジカラム、さらにそれを用いた精製濃縮方法を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリマー粒子の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力を比較的低く抑える固相抽出用カートリッジカラムを作る方法を鋭意検討してきたが、小さな粒子径、または圧縮された状態で粒子間の隙間が小さい状態での容器を用いている限り、目的を達するのは極めて困難であると判断された。そこで、比較的大きな平均粒子径を持つポリマー粒子を用いる場合においても過剰な圧縮を加えずに充填できる容器を用いれば吸着能力を損なうことなく圧力損失が低く押さえられること、またさらにポリマー粒子が大きくなり充填密度が下がった場合においてもポリマー粒子表面を修飾することで被吸着物質に対する吸着力を高めることができると考えて、鋭意検討を重ねた結果、上記課題が解決され、ポリマー粒子の持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力を比較的低く抑えるという特長を有する残留性有機汚染物質の固相抽出用カートリッジカラムを作ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち本発明は次の[1]〜[12]に関する。
[1] 気体中に含まれる残留性有機汚染物質を吸着体に吸着したのち、溶出して当該物質を濃縮する用途に使用する固相抽出用カートリッジカラムにおいて、吸着体の数平均粒子径が150μm以上、700μm以下であり、かつ比表面積が50m2/g以上であることを特徴とする固相抽出用カートリッジカラム。
[2] 吸着体が有機ポリマー樹脂であることを特徴とする[2]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[3] 有機ポリマー樹脂が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体であることを特徴とする[1]または[2]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
【0020】
[4] 吸着体に有機化合物がコーティングされていることを特徴とする[1]から[3]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[5] コーティングが有機化合物の吸着体への塗布によって行われることを特徴とする[4]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[6] コーティングが有機化合物と吸着体表面とのカップリング反応もしくは重合反応によって行われることを特徴とする[4]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[7] コーティングされる有機化合物が不揮発性の有機液体または有機ポリマーであることを特徴とする[4]〜[6]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
【0021】
[8] 不揮発性の有機液体または有機ポリマーが、シロキサン化合物またはシリコーン化合物であることを特徴とする[7]に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[9] 残留性有機汚染物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)より選ばれる1種または2種以上の化合物であるあることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
[10] 吸着体に流通させる気体の流速を6L/minとしたときの吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
【0022】
[11] 気体中に含まれる残留性有機汚染物質を[1]〜[10]のいずれか一つの固相抽出用カートリッジカラムの吸着体にいったん吸着させた後、溶媒を用いて溶出させることを特徴とする残留性有機汚染物質の濃縮方法。
[12] 残留性有機汚染物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に非意図的に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)より選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする[11]に記載の残留性有機汚染物質の濃縮方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは、表面が他の有機化合物で修飾(コーティング)されていない吸着体/または修飾されている吸着体を所定の容器に充填したものである。この固相抽出用カートリッジカラムに測定対象となる気体(環境大気、室内大気、排気ガスなど)を通気し、気体中に含まれる残留性有機汚染物質を吸着体にいったん吸着させた後、溶媒を用いて溶出させて対象となる残留性有機汚染物質を精製及び/または濃縮することができる。
【0024】
本発明において用いられる吸着体は粒子状であることが好ましい。吸着体の数平均粒子径は、150μm以上、700μmであり、200μm以上、600μm以下が好ましく、300μm以上、500μm以下がさらに好ましい。平均粒子径が150μm以下になると、流通させる気体の流速を6L/minに保つ場合の吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以上になり、十分な量の気体を流すことができない。また700μm以上になると、残留性有機汚染物質の吸着効率が悪くなることがある。
【0025】
本発明において用いられる粒子状の吸着体の比表面積は、50m2/g以上であり、400m2/g以上が好ましく、600m2/g以上がより好ましい。比表面積が50m2/gより小さいと残留性有機汚染物質の吸着効率が悪くなり好ましくない。なお、比表面積はBET法により測定されたものである。
【0026】
本発明において用いられる吸着体は、有機ポリマー樹脂であることが好ましい。特に、非イオン性重合体であり液体クロマトグラフィーにおける充填剤や吸着剤として使用されるものが好ましい。例えば市販品のものとして、アンバーライトXAD7HP(アクリル系−ジビニルベンゼン共重合体、ロームアンドハース社製)、ダイアイオンHP20(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、三菱化学製)、ダイアイオインHP2MG(メタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、三菱化学製)などが挙げられる。これらのなかでも特にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体は疎水性が強く好ましい。
【0027】
本発明において用いられるスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の形状は、固体であれば特に制限はなく、塊状、粒子状、破砕状、膜、繊維などがあげられるが、特に好ましくは粒子状である。
【0028】
・スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の一般的製法と粒子径分布・比表面積の調整方法
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の一般的製法と粒子径分布・比表面積の調整方法を以下に示す。スチレン、ジビニルベンゼン、トルエンの混合溶液に、重合開始剤として、AIBNを加える。ここで水性懸濁重合で球状粒子を作る場合水相には分散安定剤を添加するため、ポリビニルアルコール水溶液に上記トルエン溶液を加える。目的とした粒子径分布を持たせるためには、水性懸濁重合を始める前に油相と水相を混合し、油滴が目的とする粒径になるように分散させる。分散には、微粒子化用の攪拌翼を付けた攪拌装置、または高速分散機(ホモジナイザー)等を用いることができる。比較的粒径の大きい吸着剤(例えば固相抽出用)を作るには微粒子化用の攪拌翼を付けた攪拌装置を用い、比較的粒径の小さい吸着剤(例えば、液体クロマトグラフィー用の吸着剤)を作るには高速分散機(ホモジナイザー)を用いるのがよい。また、表面積(多孔度)を調整するためには、その多孔性を付与する目的で単量体混合物に希釈剤を添加して重合する。用いる希釈剤としては、単量体混合物に溶解するが重合反応には不活性で、さらに生成した重合体を溶解しない性質の有機溶媒が使用可能である。この例の場合、トルエンの添加量をスチレンおよびジビニルベンゼンの単量体に対して増減させることで粒子の多孔性(比表面積の割合)を制御できる。この分散系を80℃に保ち、一定時間(10時間程度)重合を行う。重合後、ゲルをろ別、熱水、水、アセトンで十分に洗浄する。吸引ろ過で十分に乾燥させた後、減圧で更に乾燥し、目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得る。
【0029】
吸着体に有機化合物をコーティングする方法は、塗布法(乾式、湿式)、カップリング反応法、モノマー吸着重合法(モノマーを吸着体表面上で重合させる方法)、表面グラフト化法、蒸着法、プラズマ重合法などがあげられるが、処理の簡便さなどから、塗布法、カップリング反応法またはモノマー吸着重合法を用いることが好ましい。
【0030】
本発明において用いられる吸着体にコーティングされる有機化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、界面活性剤、カップリング剤など吸着体の表面を覆うことが可能ならばその種類は特に制限はないが、不揮発性の有機液体または有機ポリマーが好ましい。中でも気液分配クロマトグラフィー用カラムの固定液相に用いられるシロキサン化合物またはそれらの重合体であるシリコーン化合物(ポリシロキサン)が特に好ましい。これらの化合物としては、OV−1、OV−3、OV−7、OV−11、OV−17、OV−22、OV−25、OV−61、OV−73、OV−101、OV−105、OV−202、OV−210、OV−215、OV−225、OV−275、OV−1701、SiliconeDC−11、Silicone DC−200、Silicone DC−550、Silicone DC−QF−1、Silicone GS−1、Silicone GS−17、Silicone GS−101、Silicone GS−210、Silicone GS−275、Silicone KF−96、Silicone SE−30、Silicone SE−52、Silicone SE−54、Silicone KF−96、SiliconeW−98、Silicone XE−60、ECNSS−M、EGSS−Xなどのが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムの吸着対象である残留性有機汚染物質としてはダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)、環境ホルモン等が挙げられる。これらの化合物の例としては、ダイオキシン類、ジベンゾフラン類、多環芳香族炭化水素(PAHs、ベンゾ(a)ピレンを含む)、ポリ塩化ビフェニル類、ポリ臭化ビフェニル類、DDT、クロルピリホス、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、マイレックス、トキサフェン(カンフェクロル)、ヘキサクロロシクロヘキサン(リンデン(γ−HCH)など)、クロルデコン(ケポン)、オクタクロロスチレン(OCS)、などがあげられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0032】
なお、ここで「有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物」とは、例えば生産に当たっては副生成物であり目的物との分離が不可能または不十分なため製品に混入したもの、使用に当たっては太陽光、生物の代謝等での反応により新たに生成するもの、廃棄に当たっては焼却炉内での加熱等での反応により新たに生成するもの、などの場合をいう。
【0033】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは吸着体に流通させる気体の流速を6L/minとしたときの吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以下であることが好ましい。圧力損失が6.5kPaを超えると、ポンプなどに負荷がかかりすぎるため、通気流速を落とさざるを得なくなり、結果的に必要なサンプル量を得るために要する時間が長くなる。
【0034】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは、上下一組のフィルターを有するポリエチレン製などの注射筒型容器(リザーバーと称する)に吸着体を充填して用いることができる。その樹脂製のリザーバーは、有機溶媒に不溶性で、吸着体が試料の濃縮作業中に樹脂製のリザーバーから流れでたりしなければよく、その材質、形は特に制限されない。そのようなものとして例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の容積1〜20ml、好ましくは3〜6mlのリザーバーに樹脂性のフィルターがセットされたものを挙げることができる。吸着体のリザーバーへの充填量は通常、リザーバーの容積6mlに対して100〜600mg、好ましくは、200〜500mgとなるように充填する。
【0035】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムの具体的な用途としては、焼却炉排気ガス、各種製造設備排気ガス、幹線道路上空捕集大気のような環境大気、あるいは室内大気などから選ばれる1種または2種以上の気体中のPOPs分析など、高度な濃縮を必要とする前処理などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明にこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
<吸着体の数平均分子量の測定>
シムパテック社製レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOSシステムを用い、吸着体の相対度数すなわち個数百分率から求めた数平均分子量を測定した。
【0038】
<比表面積の測定法と測定機器>
BET法により、コールター社製 コールター SA3100を用いて、比表面積を測定した。
【0039】
(実施例1)
<スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−1の作製>
精製したスチレン39g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製DVB−H純度約80重量%)24g、トルエン70gの混合溶液に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを溶解して、油相を調製した。次に、0.6%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバールPVA−224)水溶液700mlに上記トルエン溶液を加えた。目的とした粒子径分布を持たせるために、油滴の最大粒径が300μmになるように高速攪拌して調整した。次いで攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行なった。生成した架橋共重合体粒子をろ取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。得られた粒子を適切な目開きの篩にて分級して十分に乾燥させた後、目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。
【0040】
<固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定−1>
底にポリエチレン製フィルターがセットされた固相抽出用空カートリッジ(内容積6ml)に、平均粒子径が300μmであり、比表面積が680m2/gのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−1(上記製造品)を300mg充填し、上から別のポリエチレン製フィルターで栓をして棒で十分に押し込み、固相抽出用カートリッジとした。このカートリッジを、その前後の静圧が測定できるように流路を構成した空気流通装置(日本工業標準調査会審議、「気体中のダスト試料捕集用ろ過材の形状、寸法並びに性能試験方法 JIS K 0901−1991 」、日本規格協会、平成3年3月1日改正、p.4−5およびp.14−15に記載の装置に準拠した装置)に接続した。そこに空気を6L/minで通気してカートリッジ前後の静圧の差(圧力損失)を測定したところ、3.5KPaであった。
【0041】
<指標化合物の回収(保持)試験>
(1) 指標化合物として、1,2,3−トリクロロベンゼン(TrcBz)、および、1,2,3,4,−テトラクロロベンゼン(TecBz)を選択し、これらの10g/Lヘキサン溶液を調製した。これを標準溶液とした。
(2) 固相抽出用カートリッジ1本に、標準溶液 20μLをマイクロシリンジにより添加した後、10分間放置しヘキサンを揮発させた。
(3) (2)で指標化合物を添加した固相抽出用カートリッジを最上段として、その下段に何も添加していない同一の固相抽出用カートリッジを2本直列に連結した。
(4) 3本を直列に連結した固相抽出用カートリッジに、空気を20L/minで最上段のカートリッジから通気した。
(5) 空気の全流通量が4m3になるまで上記設定流量で空気を通気した。流通時間は3時間20分であった。
【0042】
(6) 空気の通気が終了したら、それぞれの固相抽出用カートリッジを切り離し、ジクロロメタン20mlを各固相抽出用カートリッジに通液し、抽出液を30mlのナスフラスコに受けた。
(7) ジクロロメタン抽出液は、10℃の冷浴上で窒素ガス200ml/minを吹き付けて液量が約2ml程度になるまで濃縮して、回収溶液とした。
(8) 回収溶液は、GC分析により、回収溶液中に含まれる指標化合物を定量し、回収率(固相抽出用カートリッジカラムの保持率)を求めた。
【0043】
<GCの分析条件>
使用機器:島津製作所 GC−14A
カラム:ヒューズドシリカ(ガードカラム)2.0m×0.32mmI.D.+DB−5(J&wサイエンティフィック社製) 30m×0.32mmI.D.×0.25μm
キャリアーガス:ヘリウム 線速度40cm/S
スプリット比:1/20、注入量:2μL
注入口温度:200℃
検出器:FID レンジ=100
昇温条件:60℃、3min→4℃/min→150℃、0min→30℃/min→280℃、25min
【0044】
<指標化合物の回収(保持率)率の計算>
・回収率の計算式
回収溶液中のTrcBzおよびTecBzの濃度を、内部標準物質として1,2−ジクロロベンゼンを用いた内部標準法によりGCにて定量して求め、回収溶液中の含有量(μg)を計算した。
回収溶液中の含有量(μg)=回収溶液量(g)×回収液の含有量(重量ppm)
回収率は、最初に1段目の固相抽出用カートリッジに添加した量:TrcBzおよびTecBzそれぞれ200μg(1段目の固相抽出用カートリッジにTrcBzおよびTecBzの10g/Lヘキサン溶液20μLをマイクロシリンジにより注入したため)に対するそれぞれの固相抽出用カートリッジからの回収溶液中の含有量(μg)の重量百分率である。
回収率(%)= 固相抽出用カートリッジからの回収溶液中の含有量(μg)÷ 200×100
【0045】
表1に圧力損失の測定結果、表2に指標化合物の回収試験結果を、他の実施例、比較例とともにまとめて示した。
【0046】
(実施例2)
<スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−2の作製>
精製したスチレン39g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製DVB−H純度約80重量%)24g、トルエン70gの混合溶液に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを溶解して、油相を調製した。次に、0.6%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバールPVA−224)水溶液700mlに上記トルエン溶液を加えた。目的とした粒子径分布を持たせるために、油滴の最大粒径が200μmになるように高速攪拌して調整した。次いで攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行なった。生成した架橋共重合体粒子をろ取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。得られた粒子を篩にて分級して十分に乾燥させた後、目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。
【0047】
<固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定−2>
実施例1で使用した粒子の代わりに、平均粒子径が200μmであり、比表面積が680m2/gのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−2(上記製造品)を使用した以外は、実施例1と同様に固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、4.0KPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0048】
(比較例1)
実施例1で使用した粒子に代わり、数平均粒子径が120μmのシリカゲル粒子(International Sorbent Technology社製)を使用した以外は、実施例1と同様に固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、10.6KPaであった。平均粒子径が小さいと圧力損失が大きく、そのために気体流通時の圧力損失が大きいと思われた。3本直列に接続すると圧力損失が大きく20L/minの設定流量では安定した流通が困難であり、固相抽出用カートリッジとして実用性を欠いた。
【0049】
(比較例2)
<スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−3の作製>
精製したスチレン5g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製DVB 純度約55重量%)24gの混合溶液に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを溶解して、油相を調製した。次に0.6%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバールPVA−224)水溶液400mlに上記溶液を加えた。目的とした粒子径分布を持たせるために、油滴の最大粒径が300μmになるように高速攪拌して調整した。次いで攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行なった。生成した架橋重合体粒子を濾取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。得られた粒子を篩にて分級して、十分に乾燥させた後目的としたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。
【0050】
<固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定−3>
実施例1で使用した粒子の代わりに、平均粒子径が300μmであり、比表面積が20m2/gのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−3(上記製造品)を作製しこれを使用した以外は、実施例1と同様に固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、3.7kPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。比表面積が小さいと指標化合物はほとんど脱着された。
【0051】
(実施例3)
<固定液相をコーティングしたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の固相抽出用カートリッジの作製とその圧力損失の測定>
OV−17(ジーエルサイエンス社製)0.269gをエーテル20mlに溶解した。この溶液に実施例1で使用したものと同じスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子−1 5.000gを添加した。このスラリーを40℃の温浴上で十分に攪拌しながら窒素ガスを吹き付けてエーテルを蒸発させた。エーテルがほぼ揮発して粒子が乾いた状態になったところで、温浴上での攪拌と窒素ガスの吹き付けを終了した。この粒子を60℃、6時間減圧乾燥して、OV−17を塗布したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。仕込み比より計算されるこの液相担持率は、約5wt%である。この粒子を315mg充填した以外は実施例1と同様な方法で固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、3.6KPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0052】
(実施例4)
OV−17の代わりに、Silicone SE−30(ジーエルサイエンス社製)0.270gを用いた以外は実施例3と同様な方法を用いて、Silicone SE−30を塗布したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を得た。仕込み比より計算されるこの液相担持率は、約5wt%である。この粒子を315mg充填した以外は実施例1と同様な方法で固相抽出用カートリッジを作製しその圧力損失を測定したところ、4.2KPaであった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0053】
(参考比較例1)
実施例1で使用した固相抽出用カートリッジに代わり、ウォーターズ社製 商品名 Sep−Pak PS Airを使用した以外は、実施例1と同様の装置を用いて圧力損失を測定したところ、10.0KPaであった。この製品はプラスタイプというカートリッジに吸着剤が圧縮されて充填してあり、そのために気体流通時の圧力損失が大きいと思われた。3本直列に接続すると圧力損失が大きく20L/minの設定流量では安定した流通が困難であった。さらにこの固相抽出用カートリッジを用いた指標化合物の回収試験を、空気を6L/minで通気した(流通時間は11時間7分であった)以外は実施例1と同様な条件で行った結果を表1に示した。
【0054】
実施例1において、空気流速を約3.3倍にした場合にも上流側から2番目のカートリッジまでで添加した指標化合物をすべて保持していた。つまり実施例1で作製したカートリッジは、参考比較例1(従来法)に比べて同体積の大気量を約1/3の時間で処理可能であり、気体中に含まれる残留性有機汚染物質をより迅速に捕捉できる固相抽出用カートリッジカラムといえる。
【0055】
実施例3よび4より、シロキサン化合物類をスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の塗布した場合においても、参考比較例1と比べて空気流速を約3.3倍にした場合にも上流側から2番目のカートリッジまでで添加した指標化合物をすべて保持し、さらに実施例1と比較し最上流側のカートリッジに保持されている指標化合物が多かった。つまり実施例3および4で作製したカートリッジについても、従来法に比べて同体積の大気量を約1/3の時間で処理可能であり、気体中に含まれる残留性有機汚染物質をより迅速に捕捉できる固相抽出用カートリッジカラムといえる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の固相抽出用カートリッジカラムは気体中に含まれるダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、環境ホルモンなどのPOPsと総称される残留性有機汚染物質などの被測定物質の精製および/または濃縮を短時間で行うことができる。
Claims (12)
- 気体中に含まれる残留性有機汚染物質を吸着体に吸着したのち、溶出して当該物質を濃縮する用途に使用する固相抽出用カートリッジカラムにおいて、吸着体の数平均粒子径が150μm以上、700μm以下であり、かつ比表面積が50m2/g以上であることを特徴とする固相抽出用カートリッジカラム。
- 吸着体が有機ポリマー樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- 有機ポリマー樹脂が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- 吸着体に有機化合物がコーティングされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- コーティングが有機化合物の吸着体への塗布によって行われることを特徴とする請求項4に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- コーティングが有機化合物と吸着体表面とのカップリング反応もしくは重合反応によって行われることを特徴とする請求項4に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- コーティングされる有機化合物が不揮発性の有機液体または有機ポリマーであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- 不揮発性の有機液体または有機ポリマーが、シロキサン化合物またはシリコーン化合物であることを特徴とする請求項7に記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- 残留性有機汚染物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)より選ばれる1種または2種以上の化合物であるあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- 吸着体に流通させる気体の流速を6L/minとしたときの吸着体前後の静圧の差(圧力損失)が6.5kPa以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の固相抽出用カートリッジカラム。
- 気体中に含まれる残留性有機汚染物質を請求項1〜10のいずれか一つの固相抽出用カートリッジカラムの吸着体にいったん吸着させた後、溶媒を用いて溶出させることを特徴とする残留性有機汚染物質の濃縮方法。
- 残留性有機汚染物質がダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類、有機塩素系農薬、有機塩素系農薬を生産・使用・廃棄する際に非意図的に生成する有機塩素芳香族化合物または有機塩素環状脂肪族化合物、多環芳香族炭化水素(PAHs)より選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項11に記載の残留性有機汚染物質の濃縮方法。
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