本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(概略構成について)
はじめに、図1〜図4を参照して、本実施の形態に係る住宅1の概略構成について説明する。
図1には、正面側から見た住宅1の外観が示されている。住宅1の正面とは、外観上において象徴的な面(ファサード)を表わし、典型的には屋外の通路に面する。本実施の形態では、たとえば、玄関扉50aが設けられた外壁の表面側を正面側という。
住宅1は、たとえば、都市部など比較的狭小地に建てられる3階建ての建物である。本実施の形態の住宅1は、敷地の略全体に建てられており、住宅1の周囲に、専用の庭は存在しないと想定する。
図2〜図4には、住宅1の1〜3階それぞれの間取り例が示されている。各階の居住空間の構成は、たとえば次の通りである。図1および図2に示されるように、住宅1の1階には、玄関(土間)50、玄関ホール51、および居室52が設けられている。玄関50および玄関ホール51は非居室である。図1および図3に示されるように、住宅1の2階には、居室としてのキッチン53およびリビング54、ならびに、非居室としてのパウダールーム55などが設けられている。図1および図4に示されるように、住宅1の3階には、ベッドルーム等、4つの居室56〜59が設けられている。居住空間は、外壁に囲まれた建物本体の屋内に位置する空間であり、居室および非居室を含む。
本実施の形態に係る住宅1は、そのファサード、および、エントランス空間に特徴を有している。また、住宅1は、3階分の高さを有する半屋外吹抜け空間63を備えている。これらの特徴点について、以下に詳細に説明する。
(ファサードについて)
正面から見た住宅1の外観について説明する。図1等において、住宅1の横方向を矢印A1で示している。また、図2等において、住宅1の前後方向(奥行方向)のうち前方を矢印A2で示している。なお、本実施の形態において、正面側を前方あるいは手前側ともいい、その反対側を奥側、背面側、あるいは後方ともいう。また、正面から見て右側が横方向一方側、左側が横方向他方側であるものとして説明する。
住宅1は、2階と3階との間に、水平方向に延在する偏平形状の庇部(第1の庇部)41を有している。庇部41は、厚みの大きいスラブ状の大型庇である。庇部41は、正面外壁よりも両側方(横方向両側)に突出している。そのため、住宅1は、2階以下と3階とに分断されたような独創的なデザインとなっている。
住宅1の正面外壁は、庇部41の下方に配置される外壁11〜13と、庇部41の上方に配置される外壁14,15とで構成されている。
外壁11は、2階分の高さを有しており、1階部分に玄関扉50aが設けられている。外壁11の屋内側には、後述するように、玄関50を含むエントランス空間が配置されている。外壁11の表面は、住宅1の正面外壁の基準面であり、1階から2階まで段差なく連続している。以下、外壁11の表面を、基準外壁面(第1の外壁面)21という。外壁11(基準外壁面21)の2階部分には、透光性を有する窓部210が設けられている。窓部210は、たとえば開閉できないフィックス窓である。
外壁12および外壁13は、外壁11の右隣に配置されている。外壁12は、外壁13よりも上方位置に配置されている。外壁12の屋内側には、2階の居住空間(たとえばキッチン53およびリビング54)が配置されている。外壁13の屋内側には、1階の居住空間(たとえば居室52)が配置されている。
ここで、外壁12の表面は、庇部41から吊下げられるように設けられた箱状体30の表面(正面)を構成している。以下、外壁12の表面を、2階外壁面(第2の外壁面)22という。2階外壁面22は、基準外壁面21よりも手前に位置している。図5には、前後方向における基準外壁面21の位置がラインL1で示され、前後方向における2階外壁面22の位置がラインL2で示されている。2階外壁面22は、基準外壁面21の位置から90cm以上前方に張り出している。
箱状体30は、2階外壁面22と、地面から上方に離間して位置する底面31とを含む。底面31は、2階外壁面22の下端部と直交(交差)する。なお、地面は、住宅1のグランドレベルよりも嵩上げされたコンクリートの上面であってもよい。
2階外壁面22の横幅寸法は、基準外壁面21の横幅寸法よりも十分に大きく、2倍以上であることが望ましい。外壁12(2階外壁面22)には、透光性を有する窓部220が設けられている。窓部220は、外壁12の略全幅に亘って設けられている。窓部220は、たとえば、2階外壁面22の横幅方向に沿って連続して設けられた複数の窓(すなわち連窓)によって構成されている。各窓は、開閉可能であってもよいし、開閉不能であってもよい。箱状体30の具体的な構成例については、後述する。
外壁13の表面は、箱状体30の底面31に直交している。以下、外壁13の表面を1階外壁面(第4の外壁面)23という。1階外壁面23は、図5に示されるように、基準外壁面21よりもさらに奥側の位置に配置されている。また、1階外壁面23の横幅寸法は、2階外壁面22の横幅寸法よりも小さい。外壁13(1階外壁面23)にも、透光性を有する窓部230が設けられている。窓部230は、たとえば掃出し窓である。
外壁14は、庇部41を挟んで、外壁11の上に位置している。外壁14の屋内側には、3階の居住空間(たとえば居室57)が配置されている。図5に示されるように、前後方向における外壁14の表面の位置は、基準外壁面21と同じ位置であり、これらの面は、同一平面上に延在している。以下、外壁14の表面を3階外壁面24という。3階外壁面24の横幅寸法は、基準外壁面21の横幅寸法と略等しい。
外壁15は、外壁14の右隣であって、庇部41を挟んで外壁12の上方に位置している。外壁15の屋内側には、3階の居住空間(たとえば居室56)が配置されている。図5に示されるように、外壁15の表面は、3階外壁面24よりも手前に位置するが、2階外壁面22よりも奥側に位置している。以下、外壁15の表面を3階外壁面(第3の外壁面)25という。3階外壁面25の横幅寸法は、左横の3階外壁面24の横幅寸法よりも若干大きいが、2階外壁面22の横幅寸法よりも小さい。
外壁14(3階外壁面24)および外壁15(3階外壁面25)にも、透光性を有する窓部240,250がそれぞれ設けられている。外壁14および外壁15は、庇部41上に設けられたバルコニー68に面している。そのため、窓部240,250は、たとえば掃出し窓である。なお、本実施の形態において、バルコニーとは、床部を有する半屋外空間であり、ベランダを含む概念である。
住宅1は、正面側の外壁面の前後方向位置を異ならせているだけではなく、各外壁面に窓部を設けているため、開放的な明るい印象となっている。また、箱状体30の表面である2階外壁面22においては、その全幅に亘り、高さのある窓部220が設けられている。したがって、住宅1のファサードは、軽快なイメージとなっている。なお、窓部220は、2階外壁面22の横方向(幅方向)端部との間に多少の隙間(たとえば10cm以下)を有して配置されていてもよい。
ここで、2階外壁面22は、基準外壁面21と同様に平面状(フラット)である。そのため、箱状体30は、2階外壁面22および底面31と交差する側面32,33をさらに有している。図3に示されるように、側面32は、外壁12の右端部に直交する外壁(右側壁)81の表面を構成している。側面33は、外壁11の右端部と外壁12の左端部とに直交する外壁82の表面を構成している。
これらの外壁81,82にも、外壁12の窓部220と同じ高さの窓部320,330が設けられている。つまり、箱状体30においては、表面の窓部220および両側面の窓部320,330によって、平面視においてU字状(コの字状)の連窓が構成されている。そのため、外観上、箱状体30は、浮いたガラスの箱のように見え、軽快感が向上されている。また、箱状体30内の居住空間(リビング54)が、正面側だけでなく奥の方まで光溢れる明るい空間になるとともに、箱状体30内の居住空間においては、屋外の景色を270度見渡すことができる。
なお、2階外壁面22は、平面状でなくてもよく、たとえば円弧状など湾曲していてもよい。このような場合、箱状体30は、側面32,33を有していなくてもよい。
箱状体30は、袖壁43,44によって下方から支持されている。袖壁43,44は、地面から箱状体30の底面31にまで上方に延在する支持体である。支持体は、柱であってもよい。袖壁43は、1階外壁面23よりも前方位置であって、箱状体30の底面31の右端部に接続されている。袖壁44は、1階外壁面23よりも前方位置であって、箱状体30の底面31の左端部に接続されている。袖壁43,44の厚みおよび横幅は同じであり、これらは互いに平行に配置されている。
袖壁43,44間には支持体がなく、袖壁43,44によって挟まれる箱状体30の下方空間は、ピロティ空間60となっている。ピロティ空間60は、少なくとも正面側において屋外空間に向けて開放されている。ピロティ空間60の一部は、インナーガレージとしての機能を果たしており、敷地を有効利用することができる。ピロティ空間60は、一部分において、背面側にも抜けている。
袖壁43,44は、2階外壁面22よりも少し奥側の位置に配置されている。また、袖壁43,44の色は、2階外壁面22(および他の外壁面21,23〜25)よりも暗色である。したがって、正面から住宅1を見た場合、箱状体30が地面から浮き上がったような浮遊感を強調することができる。なお、色に限らず、袖壁43,44の外表面の素材を2階外壁面22と異ならせていてもよい。
箱状体30の表面には、窓部220として、同じ高さ寸法の縦長の窓が横一列に並べられている。窓部220の上端位置は、庇部41の下面412に近接している。たとえば、窓部220の上端高さと庇部41の下面高さ(外壁12の上端高さ)との差が、10cm以下である。これに対し、窓部220の下端位置は、外壁12の下端位置から比較的大きく離れている。つまり、図1に示されるように、窓部220は、外壁12において、上方に偏って設けられている。
ここで、窓部220の下端位置と2階外壁面22の下端位置との間の高さ寸法H2は、庇部41の厚み寸法H1と略等しいことが望ましい。具体的には、これらの寸法に差が無いか、あったとしても10cm以下、あるいは、2割以下である。なお、庇部41の厚み寸法とは、その前端面(正面)411の高さ寸法を表わすものとする。庇部41の厚み寸法は、たとえば40cm以上である。
住宅1は、さらに、3階外壁面25の上端部から前方に突出する庇部(第2の庇部)42を備えている。この庇部42も、庇部41と同様に偏平形状であり、その厚み寸法H3も、庇部41の厚み寸法H1と略等しい。庇部42は、3階外壁面25の左右端部よりも両側方に突出しているが、庇部42の横幅は、庇部41よりも短い。庇部42の前端面421の位置は、庇部41の前端面411よりも奥である。住宅1の屋根は、典型的には陸屋根であり、本実施の形態における庇部42は、陸屋根から部分的に突出した軒として構成されている。
このように、2階外壁面22のうち窓部220がない下端部分の高さ寸法H2と、屋根付近の庇部42の厚み寸法存H3とを、存在感のある庇部41の厚み寸法H1と同等にすることで、外観において、軽快感を生じさせつつ、安定感のある落ち着いた印象も生じさせることができる。
庇部41は、基準外壁面21および2階外壁面22の上端部から前方に突出しているが、図1に示されるように、庇部41の前端面411は、左端部から右端部まで真直ぐに延びる平面状である。そのため、庇部41の前方への突出寸法は、2階外壁面22からの突出寸法よりも、基準外壁面21からの突出寸法の方が十分に大きい。
そこで、庇部41のうち、基準外壁面21に交差する奥行きの大きい部分は、2階分の高さを有する袖壁45によって、下方から支持されている。袖壁45は、地面から庇部41の下面412にまで上方に延びる支持体である。支持体は、柱であってもよい。袖壁45は、箱状体30下の袖壁43,44と平行に配置されている。袖壁45の外表面の色または素材は、袖壁43,44と同じである。そのため、高さのある袖壁45が設けられていても、違和感なく全体の雰囲気に馴染んでいる。袖壁45の前端位置は、2階外壁面22よりも手前に位置していてもよい。
袖壁45は、庇部41の左端部を支持し、箱状体30の側面33およびその下の袖壁44から離れた位置に配置されている。これにより、基準外壁面21の前方には、2階分の高さを有する屋外吹抜け空間61が形成される。屋外吹抜け空間61は、基準外壁面21と、袖壁45と、箱状体30の側面33および袖壁44とによって、三方が囲まれた空間である。袖壁45は、正面から見て玄関扉50aおよび窓部210とは重ならない位置に配置されている。袖壁45は、基準外壁面21から前方に離れて配置されていてもよい。
このように、住宅1の玄関前空間には、2階分の高さを有する袖壁45が、外壁11から独立して立設されており、この袖壁45に隣接して屋外吹抜け空間61が配置されている。したがって、住宅1の玄関前空間は、開放的な雰囲気とともに重厚感あるいは高級感が生じ、上質な暮らしを予感させることができる。また、袖壁45は敷地境界に沿って配置されるため、袖壁45によって隣地の居住者の視線を遮ることができる。
なお、屋外吹抜け空間61は、上部が庇部41で覆われ、かつ、基準外壁面21と袖壁45と箱状体30の側面33および袖壁44とによって三方が囲まれた空間であることとしたが、限定的ではない。屋外吹抜け空間は、基準外壁面21に面し、かつ、上部が庇部41で覆われており、さらに、少なくともその左右一方側が壁面で区切られた空間であればよい。
(エントランス空間について)
住宅1のエントランス空間について説明する。
玄関扉50aが設けられた外壁11の屋内側に位置するエントランス空間は、2階分の高さを有する吹抜け空間となっている。具体的には、図2および図3に示されるように、1階の玄関50および玄関ホール51とその上方空間とが、屋内吹抜け空間62を形成している。つまり、屋内吹抜け空間62は、玄関50および玄関ホール51の床面から2階天井面まで上方に延在し、住宅1のエントランス空間を構成している。このように、外壁11は、屋外吹抜け空間61と屋内吹抜け空間62との間に位置しているため、住宅1の建物本体に入る前だけでなく入った後も、開放的な雰囲気を味わうことができる。
図6には、正面側から見た屋外吹抜け空間61と、外壁11の奥に広がる屋内吹抜け空間62とが概念的に示されている。なお、図6には、理解の容易のために、外壁11から玄関扉50aおよび窓部210が取り除かれた状態が示されている。
図6に示されるように、屋内吹抜け空間62の天井面622と、屋外吹抜け空間61の天井面としての庇部41の下面412とは、略面一である。具体的には、これらの面の高さに差が無いか、あったとしても10cm以下である。これにより、屋外吹抜け空間61と屋内吹抜け空間62との間に一体感が生じる。
また、屋内吹抜け空間62の天井面622と庇部41の下面412とは、視覚的に一続きとなるように、屋内吹抜け空間62の天井面622の色または柄は、庇部41の下面412の色または柄と連続していることが望ましい。典型的には、これらの面の色は同一であり、これらの面を構成する柄(たとえば木目)が同じ規則性を持って連続的に表れている。本実施の形態では、庇部41の下面412および屋内吹抜け空間62の天井面622の柄は、所定幅の板の継ぎ目が屋外側から屋内側へ向かって真っすぐ延びるように形成されている。なお、これらの面の素材は異なっていてもよい。
さらに、図1および図6に示されるように、外壁11の窓部210の上端位置は、庇部41の下面412に近接している。たとえば、窓部210の上端高さと庇部41の下面高さ(外壁11の上端高さ)との差が、10cm以下である。窓部210は、たとえば大型のフィックス窓によって構成される。したがって、屋外吹抜け空間61側から住宅1を見た場合、この窓部210を通して屋内吹抜け空間62への拡がりが期待でき、贅沢な雰囲気を演出することができる。
ここで、図2、図3、および図6に示されるように、屋内吹抜け空間62には、1階の居住空間と2階の居住空間との間の移動のために階段71が配置されている。階段71は、屋内吹抜け空間62の床面621(玄関ホール51の床面)から、渡り廊下72へと繋がっている。つまり、階段71の上り口は玄関ホール51に設けられ、階段71の下り口は渡り廊下72に設けられている。階段71は、たとえば直線状であり、外壁11の左端部に直交する外壁(左側壁)83に沿って配置されている。
図3および図6に示されるように、渡り廊下72は、屋内吹抜け空間62を横切るように、外壁11に沿って配置されている。渡り廊下72の一方の端部は、外壁(左側壁)83に接続され、渡り廊下72の他方の端部は、2階の居住空間(たとえばリビング54)の床部に接続されている。
また、階段71は、渡り廊下72の一方の端部側に接続されている。より具体的には、階段71の下り口は、渡り廊下72の両側部のうち、奥側の側部72aに設けられている。渡り廊下72は、外壁11から離間して配置されていることが望ましい。この場合、渡り廊下72の手前側の側部72bには、たとえば、落下を防止するための手摺が設けられる。
このように、渡り廊下72は、玄関50または玄関ホール51上であって、外壁11に設けられた窓部210の奥に配置されている。そのため、居住者が渡り廊下72に立つと、窓部210を介して、外壁11の向こうにある屋外吹抜け空間61全体を眺めることができる。
本実施の形態の階段71は、直線状であり、玄関ホール51の奥から手前に向かって上り切る形状となっている。また、外壁11の窓部210が、階段71の上り切り方向の延長線上に配置されている。そのため、階段71を上っている途中から、外壁11の窓部210を通して空(屋外吹抜け空間61の上方部分)が見える。また、階段71を上り切ると、窓部210越しに屋外吹抜け空間61全体を自然と望むことができ、ゆったりとした気分を味わうことができる。
さらに、外壁11の窓部210は、屋内吹抜け空間62の天井面622(つまり、庇部41の下面412)付近にまで上方に延在しており、屋内吹抜け空間62の天井面622と庇部41の下面412とが一体感を有している。そのため、階段71を上り切って渡り廊下72に立つと、屋内吹抜け空間62の天井面622が窓部210を超えて屋外にまで延出しているように見え、居住者は屋内(居住空間)においても開放感を得ることができる。
なお、階段71は、直線状でなくてもよく、たとえば折返し階段などであってもよい。その場合であっても、階段71の上り切り方向の延長線上に窓部210が配置されていることが望ましい。具体的には、階段71の下り口は、渡り廊下72の奥側の側部72aに設けられていることが望ましい。言い換えると、1階の玄関ホール51(屋内吹抜け空間62の床)から階段71を上り切ると、窓部210(外壁11)側に視線が向く位置に、渡り廊下72が配置されていることが望ましい。
また、階段71は渡り廊下72に接続されていることとしたが、限定的ではない。すなわち、階段71を上り切った場所で窓部210を望めることができれば、階段71の下り口のある2階の床面は、渡り廊下72の床面でなくてもよい。
また、本実施の形態では、階段71の下り口の先に(すなわち、階段71の上り切り方向の延長線上に)窓部210が配置されている構成を示したが、階段71を上り切った所に窓部210が位置していればよく、たとえば、階段71の下り口の横に窓部210が配置されていてもよい。
(半屋外吹抜け空間について)
住宅1が備える半屋外吹抜け空間63について説明する。
図1〜図4に示されるように、半屋外吹抜け空間63は、複数階に亘って上下方向に延在し、上部が屋外空間(空)に向けて開放された吹抜け空間である。
半屋外吹抜け空間63は、地面から3階部分にまで上下方向に延在する外郭側壁46に隣接して配置されている。外郭側壁46は、半屋外吹抜け空間63の右側に位置し、住宅1の敷地境界に沿って設けられている。また、外郭側壁46は、住宅1の背面側の端部に配置されている。外郭側壁46は、屋外空間から見た場合、屋根付近の庇部42の高さまで上方に延在している。
外郭側壁46は、2階正面の外壁12よりも奥側に配置されており、正面側から見て外壁12によって隠されている。具体的には、図3を参照して、外郭側壁46は、外壁12に平行な外壁84に直交するように配置されている。外壁84は、箱状体30を構成する2階右側面の外壁81に直交している。また、外郭側壁46は、箱状体30を支持する袖壁43と平面視において同一ライン上に(前後方向に沿って)配置されており、外郭側壁46の外表面の色または素材は、袖壁43と同じであってもよい。
外郭側壁46は、1〜3階それぞれにおいて、半屋外吹抜け空間63を挟み、建物本体の外壁85,86,87に対面している。すなわち、半屋外吹抜け空間63は、1階の外壁85に面する1階空間63aと、2階の外壁86に面する2階空間63bと、3階の外壁87に面するおよび3階空間63cとで構成されている。
図2を参照して、1階の外壁85は、1階の正面外壁13と、背面の外壁とに直交している。1階の外壁85と外郭側壁46とで挟まれた空間のうち、前方側の部分に半屋外吹抜け空間63の1階空間63aが形成されており、残りの部分に、1階テラス部64が設けられている。そのため、半屋外吹抜け空間63の1階空間63aは、前方側および後方側の双方において、屋外空間に向けて開放されている。なお、1階テラス部64は、後述する2階バルコニー65の床部の下方に位置する空間である。1階テラス部64と半屋外空間63の1階空間63aとで、1階庭空間が形成されている。
具体的には、半屋外吹抜け空間63の1階空間63aの前方には、箱状体30下のピロティ空間60が仕切りなく配置され、1階空間63aの後方には、1階テラス部64が仕切りなく配置されている。図2に示されるように、1階の外壁85には、少なくとも半屋外吹抜け空間63の1階空間63aに面する位置に、透光性を有する窓部850(たとえば掃出し窓)が設けられている。
住宅1の1階をこのような構成とすることにより、1階テラス部64も、ピロティ空間60の一部のように見せることができる。また、ピロティ空間60においてその天井面(箱状体30の底面31を含む)を見た場合、天井面が一部、刳り貫かれたような斬新な構成となっている。
図3を参照して、2階の外壁86は、上述の外壁84と、背面の外壁とに直交している。2階の外壁86と外郭側壁46とで挟まれた空間のうち、後壁84側の部分に半屋外吹抜け空間63の2階空間63bが形成されており、残りの部分に、2階バルコニー65が設けられている。つまり、半屋外吹抜け空間63の2階空間63bは、後方側において屋外空間に向けて開放されている。
2階の外壁86は、半屋外吹抜け空間63に面する位置に窓部860a(たとえばフィックス窓)を有し、2階バルコニー65に面する位置に窓部860b(掃出し窓)を有している。2階バルコニー65は、後述する3階バルコニー67の床部の下方に位置している。つまり、3階バルコニー67の床部が2階バルコニー65の屋根となっている。
図4を参照して、3階の外壁87は、上述の正面外壁15と、背面の外壁とに直交している。3階の外壁87と外郭側壁46とで挟まれた空間のうち、中央部に半屋外吹抜け空間63の3階空間63cが形成されており、残りの部分(前方部分および後方部分)に3階バルコニー66,67が設けられている。つまり、半屋外吹抜け空間63の3階空間63cは、前方側および後方側の双方において、屋外空間に向けて開放されている。
外郭側壁46の横幅(住宅1の前後方向の長さ寸法)は、3階部においてのみ他よりも大きくなっている。外郭側壁46の3階部における正面側への延長部分46aが、側方にまで回り込んだ庇部41の上面413上に立設されている。正面側の3階バルコニー66は、この延長部分46aに面している。
3階の外壁87は、半屋外吹抜け空間63に面する位置に窓部870a(たとえばフィックス窓)を有し、正面側の3階バルコニー66に面する位置に窓部870b(掃出し窓)を有し、背面側の3階バルコニー67に面する位置に窓部870c(掃出し窓)を有している。
半屋外吹抜け空間63に隣接する2階および3階のバルコニー65〜67の床面は、それぞれ、外壁86,87に隣接する2階および3階の居住空間の床面と略面一となっている。したがって、外壁86,87を基準とした屋内外において床が連続しているような一体感が生じ、居住空間を開放感のある広い空間のように印象付けることができる。
上記のように、半屋外吹抜け空間63は、横方向において外壁85〜87と外郭側壁46との間に形成されている。また、2階および3階に、半屋外吹抜け空間63の後方側に隣接するバルコニー65,67がそれぞれ配置され、3階に半屋外吹抜け空間63の正面側に隣接するバルコニー66が配置されている。そのため、半屋外吹抜け空間63は、各階の境界部において、周囲が壁部で囲まれている。たとえば、1階と2階の境界部(2階の下端部)においては、半屋外吹抜け空間63は、右側の外郭側壁46、手前の外壁84、左側の外壁86、および奥側の2階バルコニー65の床部側壁によって、四周が囲まれている。なお、半屋外吹抜け空間63は、高さ方向(上下方向)における少なくとも一部が、壁部に囲まれていてればよい。
半屋外吹抜け空間63に面する各階の外壁85〜87には、透光性を有する窓部がそれぞれ設けられている。上述のように、半屋外吹抜け空間63は屋根がないため、半屋外吹抜け空間63に射し込まれた光は、窓部850,860a,870aを介してそれぞれの階の居住空間にまで採り入れられる。また、これらの窓部自体が開閉可能であるか、あるいは、その隣の窓部が開閉可能であるため、都市においても、光、風、空を身近に感じることができる。
たとえば、半屋外吹抜け空間63に樹木73が植えられている場合、1階の外壁85に隣接する居住空間(居室52)において、樹木73の幹を望むことができる。そのため、外壁85際の居住空間を、余暇を愉しめる落ち着いた居場所とすることができる。また、2階の外壁86に隣接する居住空間(リビング54等)においては、樹木73の葉によって光や風の揺らぎを感じることができる。したがって、外壁86際の居住空間を、家族と集う心地良い居場所とすることができる。また、3階の外壁87に隣接する居住空間(居室56,59等)において、空に延びる樹木73の息吹を感じることができる。そのため、外壁87際の居住空間を、リラックスできる爽快な居場所とすることができる。
また、窓部850,860a,870aに対面する位置に外郭側壁46が設けられているため、隣人の視線を気にすることなく半屋外吹抜け空間63に設けた樹木73を鑑賞することができる。また、外郭側壁46に現れる外壁85〜87の陰影により、半屋外吹抜け空間63の情景をより身近に感じることができる。
このように、本実施の形態の住宅1によれば、家族は様々な角度から自然を愉しみ、互いに気配を感じながら暮らすことができる。つまり、1階から3階まで上下方向に延在する半屋外吹抜け空間63と、各階において前後方向のうち少なくともいずれか一方に、屋外空間に繋がる半屋外空間(ピロティ空間60、1階テラス部64、バルコニー65〜68)が隣接して配置されている。そのため、半屋外吹抜け空間63とこれら半屋外空間とが、各階において自然と家族とをつなぐ立体庭園として位置付けられている。
さらに、半屋外吹抜け空間63の1階空間63aおよび3階空間63cは、前後方向双方において屋外空間に向けて開放されているのに対し、2階空間63bは後方側のみ屋外空間に向けて開放されている。すなわち、屋外吹抜け空間63の2階空間63bは、正面外壁12に隣接して配置される居住空間(たとえばキッチン53)よりも奥側に配置されている。したがって、正面から住宅1を見た場合に、半屋外吹抜け空間63の2階空間63bは正面外壁12(箱状体30)によって隠されるため、半屋外吹抜け空間63の存在が目立たず、バランスのよい外観となっている。
また、半屋外吹抜け空間63に背の高い樹木73を設けている場合には、樹木73の幹は正面から見えるため、樹木73が住宅1の2階の居住空間を突き抜けているような、面白味のある雰囲気を演出することができる。なお、半屋外吹抜け空間63の1階空間63aは、少なくとも正面側が屋外空間に向けて開放されていればよく、背面側には外壁が配置されていてもよい。
さらに、正面側の庇部42は、正面側の3階バルコニー67を超えて外郭側壁46よりも側方に突出している。つまり、庇部42は、バルコニー67の上方空間を一部覆っていてもよい。また、庇部42は、外郭側壁46の上端部から側方に向けて突出する側面側の庇部47と一体的に連結されている。そのため、正面から見た場合に、3階上部に配置されたL字状の庇部42,47によって、半屋外吹抜け空間63の3階空間63cの存在感も抑えられている。また、3階上部の庇部42,47をこのように配置することで、箱状体30上の存在感のある庇部41とのバランスも良い。したがって、本実施の形態の住宅1によれば、軽快さと重厚感とを両立させることができる。
(変形例)
上記住宅1は、ファサードの特徴として、箱状体30が、庇部41に吊下げられるように設けられていたが、限定的ではない。つまり、箱状体30の直上に庇部41が配置されていなくてもよい。図7は、本実施の形態の変形例に係る住宅1Aの正面側の外観を示す図である。図8は、住宅1Aの各階の平面図である。図8においては、前後方向における箱状体30Aの正面(2階外壁面)の位置が想像線で示されている。
住宅1Aは、図1等に示した住宅1と同様に3階建てであるが、箱状体30A上の庇部41はなく、屋根付近に大型の庇部47が1つ設けられているだけである。箱状体30Aの正面の外壁12Aは、庇部と交差しておらず、箱状体30Aの上に3階のバルコニー95が設けられている。
また、変形例においては、住宅1Aの左端に、敷地境界に沿って、3階分以上の高さを有する外郭側壁46Aが立設されている。すなわち、外郭側壁46Aは、玄関扉50aが設けられた外壁11Aに交差して配置されている。外郭側壁46Aの高さは、住宅1Aの建物本体の屋根高さよりも高く、庇部47が外郭側壁46Aに突き当たるように、両者が直交している。
また、箱状体30Aの下には、底面31の右端部側に接続される袖壁43が配置されているが、底面31の左端部側に接続される袖壁は配置されていない。その代わりに、箱状体30Aの左側面を構成する外壁82Aから左方向に延びる胴差92が、外郭側壁46Aに接続されている。つまり、外壁82Aと外郭側壁46Aとの間に、胴差92が架け渡されている。より具体的には、2階床を支持する胴差92と、3階床を支持する胴差92とが、外壁82Aと外郭側壁46Aとの間の空間90を横切るように配置されている。
これらの胴差92は、縦格子91によって隠されている。縦格子91は、下側の胴差92の下端から上側の胴差92の上端にまで上方に延びており、側壁82Aと外郭側壁46Aとの間の空間90を覆っている。なお、図1に示した住宅1に備えられた屋外吹抜け空間61は、その前方を胴差が横切る構成ではないため、住宅1の玄関前空間は、住宅1Aの玄関前空間よりも明るく開放的である。
本変形例においては、玄関扉50aが設けられた外壁11Aは1階分の高さしかなく、外壁11Aの上に2階のバルコニー93の床部が配置される例を示しているが、上記実施形態の住宅1と同様に、玄関扉50aが設けられた外壁11Aは、1階から2階まで連続して設けられていてもよい。
また、2階のバルコニー93および3階のバルコニー94の奥側に、上部が屋外空間に開放された半屋外吹抜け空間63Aが配置されていることとしたが、上記実施の形態の住宅1と同様に、半屋外吹抜け空間63Aは、正面外壁に隣接して配置される居住空間よりも奥側に配置されていてもよい。
以上説明した本実施の形態およびその変形例によれば、プライバシーを確保しながら、建物内の居住空間において自然を身近に感じることができる。また、軽快感と重厚感とを兼ね備えたモダンかつ独創的な外観となっている。そのため、都市部においても、余暇を愉しむ贅沢な住まいを提供することができる。
なお、住宅1(1A)は、3階建てであることとしたが、複数階建てであればよく、たとえば、2階建または4階建であってもよい。この場合、箱状体30が設けられる階(特定階)は、地上階(1階)よりも上の階であれば、2階でなくてもよい。いずれの場合であっても、外郭側壁46および半屋外吹抜け空間63は、地上階(1階)から最上階まで延在していることが望ましい。
また、基準外壁面21(外壁11)を住宅1の正面側として説明したが、限定的ではない。つまり、図1に示した住宅1の外観は、たとえば、住宅1の側面の外観であってもよい。具体的には、図1に示した基準の外壁11に玄関扉50aが設けられていなくてもよく、その場合、上述の外壁面21〜25は、同じ方向を向いていればよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。