JP2017110738A - 車両のクラッチ装置 - Google Patents

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頼田 浩
Hiroshi Yorita
浩 頼田
知隆 杉下
Tomotaka Sugishita
知隆 杉下
新始 小松
Shinji Komatsu
新始 小松
竹林 紀貴
Noritaka Takebayashi
紀貴 竹林
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Abstract

【課題】クラッチピストンの摺動抵抗を増大させることなくクラッチピストンの傾きを抑制できる車両のクラッチ装置を提供することにある。【解決手段】クラッチピストン18がクラッチドラム14から離間する方向に移動する際、クラッチピストン18をクラッチドラム14に押し付ける方向の弾性力を付与するコイルスプリング24を備えるため、クラッチピストン18の摺動抵抗を増大することなく、クラッチピストン18の第2円筒部18cとクラッチドラム14の中間円筒部30との間で生じる摩擦力を増加することで、内外周部で生じる摩擦力の差を低減することができ、クラッチピストン18の傾きを抑制することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、車両に備えられるクラッチ装置に係り、特にクラッチピストンの傾き抑制に関するものである。
車両に備えられ、クラッチドラムと、そのクラッチドラムに設けられている摩擦係合要素と、その摩擦係合要素を押圧するクラッチピストンと、前記クラッチドラムと前記クラッチピストンとによって形成される油圧室と、前記クラッチピストンを前記摩擦係合要素から離れる方向に付勢する弾性部材とを、含んで構成されるクラッチ装置がよく知られている。特許文献1のクラッチがそれである。特許文献1のクラッチにあっては、油圧室が内周側と外周側とに設けられるとともに、クラッチトルク要求値が所定値未満の場合には、外周側の油圧室にのみ作動油が供給されるように構成されている。
上記のように構成されることで、クラッチピストンがクラッチドラムの回転軸線方向に摺動する際、外周側と内周側の油圧室で生じる摩擦力の差によって、通常であればクラッチピストンの外周側が傾くようになるが、外周側の油圧室に作動油が優先的に供給されることで、外周側と内周側との摩擦力の差が低減されてクラッチピストンの傾きが抑制される。
特開2004−251310号公報
ところで、特許文献1のクラッチにあっては、油圧室が内周側と外周側とで独立して形成されるため、シール材を追加する必要が生じ、追加したシール材でクラッチピストンの摺動抵抗が増大し、クラッチ制御中に必要となる作動油の油圧が増大する問題がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、クラッチピストンの摺動抵抗を増大させることなくクラッチピストンの傾きを抑制できる車両のクラッチ装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、(a)クラッチドラムと、該クラッチドラムに設けられている摩擦係合要素と、内周部および外周部がクラッチドラムに嵌め付けられて前記クラッチドラムの回転軸線方向に移動可能なクラッチピストンと、前記クラッチドラムと前記クラッチピストンとによって形成される油圧室とを、含んで構成される車両のクラッチ装置であって、(b)前記クラッチピストンが前記クラッチドラムから離間する方向に移動する際、前記クラッチピストンの外周部を前記クラッチドラムに押し付ける方向の弾性力を付与する弾性部材を備えることを特徴とする。
第1発明の車両のクラッチ装置によれば、クラッチピストンの摺動抵抗を増大することなく、クラッチピストンの外周部とクラッチドラムとの間で生じる摩擦力を増加することで、内外周部で生じる摩擦力の差を低減することができるため、クラッチピストンの傾きを抑制することができる。
本発明が適用された車両に備えられるクラッチ装置の断面図である。 本発明の他の実施例であるクラッチ装置の断面図である。 本発明のさらに他の実施例であるクラッチ装置の断面図である。 本発明のさらに他の実施例であるクラッチ装置の断面図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両に備えられるクラッチ装置10の断面図である。クラッチ装置10は、入力軸12と図示しない出力軸との間に設けられ、これら入力軸12および出力軸を断接可能に設けられている。
クラッチ装置10は、入力軸12に連結されているクラッチドラム14と、クラッチドラム14に設けられている摩擦係合要素と16と、摩擦係合要素16を押圧可能に設けられているクラッチピストン18と、クラッチドラム14およびクラッチピストン18によって形成される油圧室20と、リテーナ22と、リテーナ22とクラッチピストン18との間に介挿されているコイルスプリング24とを、含んで構成されている。
クラッチドラム14は、非回転部材であるハウジング26に形成されている円筒形状のボス26aに、円環形状のシールリング28を介して回転軸線C(以下、軸線C)まわりに回転可能に嵌め付けられている。クラッチドラム14は、有底二重円筒状に形成されている。具体的には、クラッチドラム14は、内周面がシールリング28の外周面と嵌合する内側円筒部14aと、内側円筒部14aの軸線C方向でハウジング26側の軸端から径方向に伸びる円盤形状の円盤部14bと、円盤部14の外周端部からハウジング26から遠ざかる側に軸線Cと平行に伸びる外側円筒部14cとから構成されている。また、円盤部14bは、屈曲されており、その一部に軸線Cに平行な中間円筒部30が形成されている。
入力軸12には、径方向に伸びる鍔部12aが形成されている。この鍔部12aの径方向の端部が、クラッチドラム14の内側円筒部14aに溶接によって接合されている。従って、入力軸12とクラッチドラム14とが一体的に回転させられる。
摩擦係合要素16は、クラッチドラム14の外側円筒部14cの内周側に設けられている。摩擦係合要素16は、外側円筒部14cの内周面に、相対回転不能、且つ、軸線C方向への移動可能にスプライン嵌合されている複数枚のドラム側摩擦板16aと、図示しない出力軸にスプライン嵌合されている複数枚の出力側摩擦板16bと、ドラム側摩擦板16aおよび出力側摩擦板16bの軸線C方向への移動を規制するスナップリング16cとから構成されている。ドラム側摩擦板16aと出力側摩擦板16bとは交互に積層されている。摩擦係合要素16が係合されると、クラッチドラム14と出力軸とが接続される。
クラッチピストン18は、クラッチドラム14に嵌め付けられた状態で、軸線C方向への移動可能に設けられている。クラッチピストン18は、クラッチドラム14の内側円筒部14aの外周面に摺動可能に嵌め付けられている第1円筒部18aと、第1円筒部18aの軸線C方向の端部に連結されるとともに径方向外側に向かって伸びる円盤形状の円盤部18bと、軸線C方向の一端が円盤部18bの外周端部に連結され、軸線Cと平行に伸びる第2円筒部18cと、第2円筒部18cの軸線C方向の他端に連結され、軸線C方向から見て外周端部が摩擦係合要素16と重なる位置まで伸びる押圧部18dとから構成されている。なお、クラッチピストン18の第1円筒部18aが、本発明のクラッチピストンの内周部に対応し、第2円筒部18cが、本発明のクラッチピストンの外周部に対応している。
クラッチピストン18の第1円筒部18aの内周面が、クラッチドラム14の内側円筒部14aの外周面に軸線C方向への移動可能(摺動可能)に嵌め付けられるとともに、第2円筒部18bの外周面が、クラッチドラム14の中間円筒部30の内周面に軸線C方向への移動可能(摺動可能)に嵌め付けられている。従って、クラッチピストン18は、軸線C方向への移動が可能となる。
また、内側円筒部14aの外周面と第1円筒部18aの内周面との間にOリング34が設けられることで、これらの間が油密に密閉されている。また、第2円筒部18cの外周側には、シール部材32が設けられており、第2円筒部18cと中間円筒部30との間が油密に密閉されている。
クラッチピストン18の円盤部18bの軸線C方向でリテーナ22の背面側に、油密な空間である油圧室20が形成されている。油圧室20は、クラッチピストン18の円盤部18bと、クラッチドラム14の内側円筒部14aおよび円盤部14bとから囲まれて形成される環状空間である。
油圧室20には、ハウジング26に形成されている供給油路36、シールリング28に形成されている第1径方向油路38、およびクラッチドラム14の内側円筒部14aに形成されている第2径方向油路40を介して作動油が供給されるようになっている。
リテーナ22は、円盤形状を有して構成されている。リテーナ22の内周側の端部が、内側円筒部14aの外周面に嵌め着けられているスナップリング42によって、軸線C方向でクラッチピストン18の円盤部18bから遠ざかる側への移動が規制されている。また、リテーナ22の外周端部は、クラッチピストン18の第2円筒部18cの内周面に摺動可能に嵌め付けられている。なお、リテーナ22とクラッチピストン18との間に形成される環状空間が、遠心油圧キャンセラ室として機能する。
リテーナ22とクラッチピストン18の円盤部18bとの間には、複数個(例えば8個)のコイルスプリング24が設けられている。コイルスプリング24は、等角度間隔に配置されており、リテーナ22および円盤部18bに形成されている円柱状の突起(44、46)と嵌合することで、脱落が防止されている。コイルスプリング24は、油圧室に作動油が供給されない状態で、自然長となるように、その長さが設定されている。なお、コイルスプリング24が、本発明の弾性部材に対応している。
クラッチピストン18が、軸線C方向で摩擦係合要素16を押圧する側(クラッチドラム14から離間する方向、軸線C方向でリテーナ22側)に移動するとコイルスプリング24が圧縮させられ、リテーナ22とクラッチピストン18とを離間させる方向の反力が発生する。
上記のように構成されるクラッチ装置14において、油圧室20に油圧が供給されない状態では、コイルスプリング24が自然長となり、クラッチピストン18とリテーナ22とが軸線C方向で離隔した状態となる。このとき、クラッチピストン18の押圧部18dが、摩擦係合要素16から離れた状態となり、摩擦係合要素16が開放され、入力軸12と出力軸との間の動力伝達が遮断される。
一方、供給油路36、第1径方向油路38、第2径方向油路40を経由して作動油が油圧室20内に供給されると、油圧室20の油圧が上昇し、クラッチピストン18が軸線C方向でリテーナ22側(クラッチドラム14から離間する方向)に移動させられる。このとき、クラッチピストン18の押圧部18dが摩擦係合要素16を押圧することで、入力軸12の動力がクラッチドラム14および摩擦係合要素16を介して出力軸に伝達される。
ここで、本実施例のコイルスプリング24にあっては、その中心線が軸線Cに対して傾くように配置されている。リテーナ22のコイルスプリング24の一端を保持する突起44が、クラッチピストン18のコイルスプリング24の他端を保持する突起46よりも径方向で内側に形成されている。すなわち、コイルスプリング24のクラッチピストン18による保持部が、コイルスプリング24のリテーナ22による保持部よりも径方向で外側に位置することとなる。従って、コイルスプリング24は、軸線Cに対して所定の傾斜角(例えば15度)だけ傾いて配置される。
これより、クラッチピストン18が軸線C方向でリテーナ22側に移動すると、コイルスプリング24が圧縮させられて反力(弾性力)が生じることから、コイルスプリング24とクラッチピストン18との当接面において、クラッチピストン18を軸線C方向でクラッチドラム14側に押し付けるとともに、クラッチピストン18を径方向外側に押し付ける弾性力(押圧力)が付与される。従って、クラッチピストン18の第2円筒部18cが、クラッチドラム14の中間円筒部30を径方向外側に押圧する力が増加する。これに関連して、第2円筒部18cの外周面と中間円筒部30の内周面との間で生じる摩擦力が増加する。このように、第2円筒部18cと中間円筒部30との間で生じる摩擦力が増加することで、第1円筒部18aと内側円筒部14aとの間で生じる摩擦力との摩擦力の差が低減され、クラッチピストン18の傾きが抑制される。
また、クラッチピストン18は、第2円筒部18cの外周面と中間円筒部30の内周面との間で発生する摩擦力にばらつきによって傾きが生じる。例えば、クラッチピストン18の変位が、摩擦力の小さい部位で大きくなり、摩擦力の大きい部位で小さくなり、クラッチピストン18の変位差に起因して傾きが生じる。これに対して、コイルスプリング24による弾性力(反力)は、クラッチピストン18の変位の大きい部位では、(中間円筒部30を押し付ける力が)大きくなり、変位の小さい部位では、(中間円筒部30を押し付ける力が)小さくなることから、変位のばらつきが低減されてクラッチピストン18の傾きが抑制される。
上述のように、本実施例によれば、クラッチピストン18の摺動抵抗を増大することなく、クラッチピストン18の第2円筒部18cとクラッチドラム14の中間円筒部30との間で生じる摩擦力を増加することで、内外周部で生じる摩擦力の差を低減することができるため、クラッチピストン18の傾きを抑制することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図2は、本発明の他の実施例であるクラッチ装置60の断面図である。クラッチ装置60は、入力軸12に連結されているクラッチドラム62と、クラッチドラム62に設けられている摩擦係合要素と16と、摩擦係合要素16を押圧可能に設けられているクラッチピストン64と、クラッチドラム62およびクラッチピストン64によって形成される油圧室66と、リテーナ68と、リテーナ68とクラッチピストン64との間に介挿されているコイルスプリング70とを、含んで構成されている。
本実施例のクラッチ装置60にあっては、リテーナ68とクラッチピストン64との間に介挿されるコイルスプリング70の配置構造が、前述の実施例のクラッチ装置10と相違し、他の構成については基本的には変わらない。以下、前述の実施例と相違する構造を中心に説明する。
クラッチドラム62は、有底二重円筒状に形成されており、内周面がシールリング28と嵌合する内側円筒部62aと、内側円筒部62aの軸線C方向でハウジング26側の軸端から径方向外側に伸びる円盤形状の円盤部62bと、円盤部62bの外周端部から軸線Cと平行に伸びる外側円筒部62cとから構成されている。また、円盤部62bは屈曲されており、その一部に軸線Cと平行な中間円筒部72が形成されている。
クラッチピストン64は、クラッチドラム62の内側円筒部62aおよび中間円筒部72に嵌め付けられた状態で、軸線C方向への移動可能に設けられている。クラッチピストン64は、クラッチドラム62の内側円筒部62aの外周面に摺動可能に嵌め付けられている第1円筒部64aと、第1円筒部64aの軸端に連結され径方向外側に向かって伸びる円盤形状の円盤部64bと、円盤部64bの外周端部に連結されるとともに、ハウジング26から遠ざかる方向に軸線Cと平行に伸びる第2円筒部64cと、第2円筒部64cの軸線C方向の端部に連結され、軸線C方向から見て外周端部が摩擦係合要素16と重なる位置まで伸びる押圧部64dとから構成されている。第2円筒部64cは、中間円筒部72の内周面に摺動可能に嵌め付けられている。なお、クラッチピストン64の第1円筒部64aが、本発明のクラッチピストンの内周部に対応し、第2円筒部64cが、本発明のクラッチピストンの外周部に対応している。
油圧室66は、クラッチピストン64の円盤部64bと、クラッチドラム62の内側円筒部62aおよび円盤部62とで囲まれることで形成される環状空間である。
リテーナ68は、円盤形状を有して構成されている。リテーナ68の内周端部が、クラッチドラム62の内側円筒部62aに嵌め着けられているスナップリング74によって、軸線C方向でクラッチピストン64から遠ざかる側への移動が規制されている。また、リテーナ68の外周端部は、クラッチピストン64の第2円筒部64cの内周面に摺動可能に嵌め付けられている。
リテーナ68とクラッチピストン64の円盤部64bとの間には、複数個のコイルスプリング70が介挿されている。リテーナ68には、コイルスプリング70の一端を収容する円筒状の円筒突起76が形成されており、その円筒突起76内にコイルスプリング70の一端が収容されている。円筒突起76は、軸線Cに対して平行に形成されている。なお、コイルスプリング70が、本発明の弾性部材に対応している。
コイルスプリング70の他端とクラッチピストン64との間に、スプリングローダ78が設けられている。クラッチピストン64の円盤部64bのスプリングローダ78と当接する面は、軸線Cに垂直な面に対して所定の角度だけ傾斜している。具体的には、径方向外側に向かうほど、リテーナ68に近づく方向に傾斜している。また、スプリングローダ78の円盤部64bと当接する面についても、軸線Cに垂直な面に対して所定の角度だけ傾斜させられている。具体的には、径方向外側に向かうほど、リテーナ68に近づく方向に傾斜している。これら互いに傾斜する円盤部64bおよびスプリングローダ78の当接面が当接した状態では、スプリングローダ78のコイルスプリング70が当接する面が、軸線Cに垂直な面と平行になるように、互いの傾斜面の傾斜角が設定されている。
スプリングローダ78のコイルスプリング70が当接する面には、コイルスプリング78を保持するための円柱状の円柱突起80が形成されている。コイルスプリング70は、一端がリテーナ68の円筒突起76に収容されるとともに、他端がスプリングローダ78の円筒突起80に嵌め付けられることで、脱落不能に保持されている。また、リテーナ68の円筒突起76の中心と、スプリングローダ78の円柱突起80の中心とが、軸線C方向からみて重なる位置に設定されている。従ってコイルスプリング70は、その中心軸が軸線Cと平行に配置されている。
上記のように構成されるクラッチ装置60において、油圧室66内に作動油が供給されると、油圧室66内の作動油の油圧が上昇し、クラッチピストン64が軸線C方向でリテーナ68側(クラッチドラム62から離間する方向)に移動させられる。このとき、コイルスプリング70が圧縮させられることから、リテーナ68とスプリングローダ78とを、軸線C方向へ互いに離間する方向の反力(弾性力)が発生する。
ここで、スプリングローダ78は、コイルスプリング70の反力によって軸線C方向でハウジング26側に付勢されるが、スプリングローダ78とクラッチピストン64との当接面にあっては、面に対して垂直に力が作用する。従って、クラッチピストン64が、その当接面に対して垂直な方向に付勢されることから、クラッチピストン64が軸線C方向および軸線Cの径方向外側に付勢される。よって、クラッチピストン64の第2円筒部64cが中間円筒部72の内周壁を押圧することとなり、クラッチピストン64が移動した際に、第2円筒部64cの外周面と中間円筒部72の内周面との間で発生する摩擦力が増加することとなる。このように、第2円筒部64cの外周面と中間円筒部72の内周面との間で生じる摩擦力が増加することで、第1円筒部64aと内側円筒部62aとの間で生じる摩擦力との摩擦力の差が低減され、クラッチピストン64の傾きが抑制される。
上述のように、本実施例においても、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。
図3は、本発明のさらの他の実施例であるクラッチ装置100の断面図である。クラッチ装置100は、入力軸12に連結されているクラッチドラム102と、クラッチドラム102に設けられている摩擦係合要素16と、摩擦係合要素16を押圧可能に設けられているクラッチピストン104と、クラッチドラム102およびクラッチピストン104によって形成される油圧室106と、リテーナ108と、リテーナ108とクラッチピストン104との間に介挿されているコイルスプリング110とを、含んで構成されている。
本実施例のクラッチ装置100にあっても、リテーナ108とクラッチピストン104との間に介挿されるコイルスプリング110の配置構造が、前述の実施例のクラッチ装置10と相違し、他の構造については基本的には変わらない。以下、前述の実施例と相違する構造を中心に説明する。
クラッチドラム102は、有底二重円筒状に形成されており、内周面がシールリング28と嵌合する内側円筒部102aと、内側円筒部102aの軸線C方向でハウジング26側の端部から径方向外側に伸びる円盤形状の円盤部102bと、円盤部102bの外周端部から軸線Cと平行に伸びる外側円筒部102cとから構成されている。また、円盤部102bは屈曲されており、その一部に軸線Cと平行な中間円筒部112が形成されている。
クラッチピストン104は、クラッチドラム102の内側円筒部102aおよび中間円筒部112に嵌め付けられた状態で、軸線C方向への移動可能に設けられている。クラッチピストン104は、クラッチドラム102の内側円筒部102aの外周面に摺動可能に嵌め付けられている第1円筒部104aと、第1円筒部104aの軸端に連結され径方向外側に向かって伸びる円盤形状の円盤部104bと、円盤部104bの外周端部に連結されるとともに、ハウジング26から遠ざかる方向に軸線Cと平行に伸びる第2円筒部104cと、第2円筒部104cの軸線C方向の端部に連結されるとともに、軸線C方向から見て外周端部が摩擦係合要素16と重なる位置まで伸びる押圧部104dとから構成されている。第2円筒部104cは、中間円筒部112の内周面に摺動可能に嵌め付けられている。なお、クラッチピストン104の第1円筒部104aが、本発明のクラッチピストンの内周部に対応し、第2円筒部104cが、本発明のクラッチピストンの外周部に対応している。
油圧室106は、クラッチピストン104の円盤部104bと、クラッチドラム102の内側円筒部102aおよび円盤部102bとで囲まれて形成される環状空間である。
リテーナ108は、円盤形状を有して構成されている。リテーナ108の内周端部は、クラッチドラム102の内側円筒部102aの外周面に嵌め着けられているスナップリング114によって、軸線C方向でクラッチピストン104から遠ざかる側への移動が規制されている。また、リテーナ108の外周端部は、クラッチピストン104の第2円筒部104cの内周面に摺動可能に嵌め付けられている。
リテーナ108とクラッチピストン104の円盤部104bとの間に、複数個のコイルスプリング110が介挿されている。リテーナ108には、コイルスプリング110の一端を収容する収容部116が形成されている。また、コイルスプリング110の他端とクラッチピストン104との間に、スプリングローダ118が介挿されている。スプリングローダ118には、コイルスプリング110を保持するための円柱突起120が形成されている。コイルスプリング110の一端が、収容部116に収容されるともに、他端がスプリングローダ118の円柱突起120に嵌め付けられることで、脱落不能に保持される。なお、コイルスプリング110が、本発明の弾性部材に対応している。
リテーナ108のコイルスプリング110の一端と当接する当接面122は、軸線Cに垂直な面に対して所定の角度(本実施例では45度程度)だけ傾斜している。具体的には、当接面122は、軸線C方向でクラッチピストン104の円盤部104bから遠ざかるほど、径方向外側に向かって傾斜している。また、クラッチピストン104の円盤部104bのスプリングローダ118と当接する当接面124についても、軸線Cに垂直な面に対して所定の角度(本実施例では45度程度)だけ傾斜させられている。具体的には、円盤部104bのスプリングローダ118と当接する当接面124は、軸線C方向でクラッチピストン104の円盤部104bから遠ざかるほど、径方向外側に向かって傾斜している。そして、これら当接面122、124は、互いに向かい合うとともに略平行に形成されている。
上記のように構成されるクラッチ装置100において、油圧室106内に作動油が供給されると、油圧室106内の油圧が上昇し、クラッチピストン104が軸線C方向でリテーナ108側(クラッチドラム102から離間する方向)に移動させられる。このとき、コイルスプリング110が圧縮させられることから、リテーナ108とスプリングローダ118とを互いに離間させる反力(弾性力)が発生する。また、スプリングローダ118は、当接面124に当接することから、コイルスプリング110の反力がスプリングローダ118を介して当接面124に伝達される。当接面124に伝達される反力は、その当接面124に対して垂直に作用することから、クラッチピストン104は、軸線C方向および軸線Cの径方向外側に付勢される。よって、クラッチピストン104の第2円筒部104cが、中間円筒部112の内周面を押圧することとなり、クラッチピストン104がクラッチドラム102から離間する方向に移動する際、第2円筒部64cの外周面と中間円筒部112との間で発生する摩擦力が増加することとなる。このように、第2円筒部104cの外周面と中間円筒部112の内周面との間で生じる摩擦力が増加することで、第1円筒部104aと内側円筒部102aとの間で生じる摩擦力との摩擦力の差が低減され、クラッチピストン104の傾きが抑制される。
上述のように、本実施例においても、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。
図4は、本発明のさらに他の実施例であるクラッチ装置140の断面図である。クラッチ装置140は、入力軸12に連結されているクラッチドラム142と、クラッチドラム142に設けられている摩擦係合要素16と、摩擦係合要素16を押圧可能に設けられているクラッチピストン144と、クラッチドラム142およびクラッチピストン144によって形成される油圧室146と、リテーナ148と、リテーナ148とクラッチピストン144との間に介挿されているコイルスプリング150とを、含んで構成されている。
本実施例のクラッチ装置140にあっても、リテーナ148とクラッチピストン144との間に介挿されるコイルスプリング150の配置構造が前述の実施例のクラッチ装置10と相違し、他の構造については基本的には変わらない。以下、前述の実施例と相違する構造を中心に説明する。
クラッチドラム142は、有底二重円筒状に形成されており、内周面がシールリング28と嵌合する内側円筒部142aと、内側円筒部142aの軸線C方向でハウジング26側の端部から径方向外側に伸びる円盤形状の円盤部142bと、円盤部142bの外周端部から軸線Cと平行に伸びる外側円筒部142cとから構成されている。また、円盤部142bは屈曲されており、その一部に軸線Cと平行な中間円筒部152が形成されている。
クラッチピストン144は、クラッチドラム142の内周円筒部142aおよび中間円筒部152に嵌め付けられた状態で、軸線C方向への移動可能に設けられている。クラッチピストン144は、クラッチドラム142の内側円筒部142aの外周面に摺動可能に嵌め付けられている第1円筒部144aと、第1円筒部144aの軸端に連結され径方向外側に向かって伸びる円盤部144bと、円盤部144bの外周端部に連結され、外周面が中間円筒部152に摺動可能に嵌め付けられている第2円筒部144cと、第2円筒部144cの外周端部に連結され、外周端部が軸線C方向から見て摩擦係合要素16と重なる位置まで伸びる押圧部144dとから構成されている。なお、クラッチピストン144の第1円筒部144aが、本発明のクラッチピストンの内周部に対応し、第2円筒部144cが、本発明のクラッチピストンの外周部に対応している。
油圧室146は、クラッチピストン144の円盤部と、クラッチドラム142の内側円筒部142aおよび円盤部142bとで囲まれて形成される環状空間である。
リテーナ148は、円盤形状を有して構成されている。リテーナ148の内周端部は、クラッチドラム142の内側円筒部142aの外周面に嵌め着けられているスナップリング154によって、軸線C方向でクラッチピストン144から遠ざかる側への移動が規制されている。また、リテーナ148の外周端部は、第2円筒部144cに形成されている内周面に摺動可能に嵌め付けられている。また、リテーナ148には、コイルスプリング150の一端を収容するための保持壁156が形成されている。
リテーナ148とクラッチピストン144の第2円筒部144cとの間に、複数個のコイルスプリング150が介挿されている。コイルスプリング150は、軸線Cに対して垂直に配置されている。すなわち、軸線Cに対して90度傾斜させられた状態で保持されている。リテーナ148には、径方向に伸びる保持壁156が形成されており、コイルスプリング150の一端が、軸線C方向でリテーナ148と保持壁156との間に挟まれた状態で保持されている。また、コイルスプリング150の他端が、スプリングローダ158を介してクラッチピストン144の第2円筒部144cの内周面と当接している。スプリングローダ158には、円柱部が形成されており、その円柱部の外周面にコイルスプリング150が嵌め付けられている。なお、コイルスプリング150が、本発明の弾性部材に対応している。
上記より、クラッチピストン144が軸線C方向でリテーナ148側(クラッチドラム142から離間する方向)に移動すると、スプリングローダ158がクラッチピストン144との当接面に沿って移動することで、結果的にスプリングローダ158が径方向の内側に移動する。このとき、コイルスプリング150が圧縮させられることから、コイルスプリング150は、径方向に作用する反力(弾性力)を発生させる。従って、コイルスプリング150が径方向外側に付勢されることから、クラッチピストン144の第2円筒部144cの外周面が、クラッチドラム142の中間円筒部152の内周面に押し付けられ、第2円筒部144cの外周面と中間円筒部152との内周面との間で生じる摩擦力が増加する。このように、第2円筒部144cの外周面と中間円筒部152の内周面との間で生じる摩擦力が増加することで、第1円筒部144aと内側円筒部142aとの間で生じる摩擦力との摩擦力の差が低減され、クラッチピストン144の傾きが抑制される。
上述のように、本実施例においても、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。また、コイルスプリング150が軸線Cに対して垂直に配置されるため、リテーナ148とクラッチピストン144との間の軸線C方向の長さを短くすることができ、その分だけクラッチドラム142とクラッチピストン144との摺動部の長さを長くすることで、クラッチピストン144の傾きを一層抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、コイルスプリング24、70、110、150が適用されているが、例えば皿バネなど、弾性力を発生させるものであれば特に限定されない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10、60、100、140:クラッチ装置
14、62、102、142:クラッチドラム
16:摩擦係合要素
18、64、104、144:クラッチピストン
20、66、106、146:油圧室
24、70、110、150:コイルスプリング(弾性部材)

Claims (1)

  1. クラッチドラムと、該クラッチドラムに設けられている摩擦係合要素と、内周部および外周部がクラッチドラムに嵌め付けられて前記クラッチドラムの回転軸線方向に移動可能なクラッチピストンと、前記クラッチドラムと前記クラッチピストンとによって形成される油圧室とを、含んで構成される車両のクラッチ装置であって、
    前記クラッチピストンが前記クラッチドラムから離間する方向に移動する際、前記クラッチピストンの外周部を前記クラッチドラムに押し付ける方向の弾性力を付与する弾性部材を備える
    ことを特徴とする車両のクラッチ装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109751344A (zh) * 2017-11-03 2019-05-14 通用汽车环球科技运作有限责任公司 双路密封离合器

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