JP2017106056A - イオン透過性隔膜とこれを備える電気化学セル - Google Patents
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Abstract
【課題】ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をより確実に保持できるイオン透過性隔膜を提供する。【解決手段】親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質のイオン透過性隔膜であって、第1および第2の多孔性補強材層をさらに備え、第1および第2の多孔性補強材層は、隔膜の膜厚方向に互いに離間するとともに、それぞれ隔膜の一方の主面および他方の主面から隔膜に埋没した状態にあるイオン透過性隔膜とする。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、電気分解、およびめっきなどの表面処理といった各種の電解プロセスに使用できるイオン透過性隔膜と、当該隔膜を備える電気化学セルとに関する。
電解(electrolysis)プロセスは、電気エネルギーを加えることにより進行する一種の電気化学プロセスであり、水溶液電解、溶融塩電解、めっきなどの表面処理、電解成形・加工などの材料加工、電気防食、電気透析、排水処理などの環境処理といった種々の分野に応用されている。電解プロセスは、例えば、電極(陽極および陰極)、ならびに電解質(水溶液、有機または無機の非水溶液、溶融塩など)から構成される電解槽で進行させることができる。具体的なプロセスの種類に応じて双方の電極間にイオン透過性を有する隔膜(イオン透過性隔膜)をさらに配置でき、隔膜の配置により、例えば、各電極での生成物を互いに分離できる。隔膜には濾過膜と密隔膜とがある。密隔膜では、陽極側の電解質と陰極側の電解質とが完全に分離されており、特定のイオンだけが選択的に当該膜を透過する。一方、濾過膜では、当該膜の多孔質空間に電解質が満たされており、この電解質を介してイオンが非選択的に当該膜を透過する。
電解プロセスの具体的な一例に、水を含む電解液を電気分解して水素を製造するプロセスがある。このプロセスによれば、例えば、余剰な再生可能エネルギーを水素に変換して貯蔵できる。このプロセスにイオン透過性隔膜を使用することにより、例えば、陰極(カソード)で生成した水素と陽極(アノード)で生成した気体(例えば酸素)とが分離され、両者の混合が抑制される。水素の利用を考慮すると、イオン透過性隔膜によるこのようなガス分離特性が重要である。
イオン透過性隔膜の一例に、親水性無機材料および有機結合材料から構成される多孔質の隔膜がある(例えば、特許文献1)。また、特許文献1には、伸張させた一層の有機繊維布を隔膜の内部に配置することが記載されている。
イオン透過性隔膜の内部に、特許文献1の有機繊維布のような多孔性層を配置すると、イオン透過性(膜厚方向のイオン透過性)を確保したまま隔膜の機械的強度を向上できる。
ここで、イオン透過性隔膜を使用する具体的な方法に、一対の電極(アノードおよびカソード)を隔膜に接触させた状態で使用する方法(ゼロギャップ法)がある。ゼロギャップ法では、例えば、効率良い電気分解が可能である。しかし、特許文献1の隔膜のように内部に一層のみ多孔性層が配置されているイオン透過性隔膜をゼロギャップ法に使用すると、一方の電極で発生した気体が他方の電極側に移動する、すなわち、イオン透過性隔膜のガス分離特性が低下したり、失われたりすることがある。
本発明の目的の一つは、ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をより確実に保持できるイオン透過性隔膜の提供を目的とする。
本発明のイオン透過性隔膜は、親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質のイオン透過性隔膜であって、第1の多孔性補強材層と第2の多孔性補強材層とをさらに備える。前記第1および第2の多孔性補強材層は、前記隔膜の膜厚方向に互いに離間するとともに、それぞれ前記隔膜の一方の主面および他方の主面から前記隔膜に埋没した状態にある。
本発明の電気化学セルは、上記本発明のイオン透過性隔膜と、前記隔膜を挟持する一対の電極とを備える。
本発明によれば、ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をより確実に保持できるイオン透過性隔膜が得られる。
[イオン透過性隔膜]
図1に、本発明のイオン透過性隔膜の一例を示す。図1に示すイオン透過性隔膜1は、親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質の膜である。より具体的に、隔膜1は、有機結合材料および親水性無機材料の複合体から構成されており、隔膜1には(当該複合体には)無数の微細な空間(孔空間)が存在している。隔膜1は微多孔体であるともいえる。孔空間は、全体として隔膜1の一方の主面(第1の主面)3aと他方の主面(第2の主面)3bとを接続しており、隔膜1を、例えば電解質が収容された電気化学セルに使用した場合、当該孔空間には電解質が配置されることとなり、この電解質を介してイオンが隔膜1の主面3a,3bの間を、すなわち隔膜1の厚さ方向(膜厚方向)に、透過する。電解質は、例えば、水溶液、有機または無機の非水溶液、溶融塩である。
図1に、本発明のイオン透過性隔膜の一例を示す。図1に示すイオン透過性隔膜1は、親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質の膜である。より具体的に、隔膜1は、有機結合材料および親水性無機材料の複合体から構成されており、隔膜1には(当該複合体には)無数の微細な空間(孔空間)が存在している。隔膜1は微多孔体であるともいえる。孔空間は、全体として隔膜1の一方の主面(第1の主面)3aと他方の主面(第2の主面)3bとを接続しており、隔膜1を、例えば電解質が収容された電気化学セルに使用した場合、当該孔空間には電解質が配置されることとなり、この電解質を介してイオンが隔膜1の主面3a,3bの間を、すなわち隔膜1の厚さ方向(膜厚方向)に、透過する。電解質は、例えば、水溶液、有機または無機の非水溶液、溶融塩である。
隔膜1は、第1の多孔性補強材層2aと、第2の多孔性補強材層2bとをさらに備える。多孔性補強材層2a,2bは、その厚さ方向に当該層を貫通する(当該層の双方の主面を接続する)経路を有しており、隔膜1では、当該経路に有機結合材料および親水性無機材料(の複合体)が配置されている。したがって隔膜1を、例えば電解質が収容された電気化学セルに使用した場合、多孔性補強材層2a,2bの上記経路内に配置された複合体の孔空間に存在する電解質を介して、多孔性補強材層2a,2bをその厚さ方向にイオンが透過する。
ここで、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、隔膜1の膜厚方向に互いに離間して配置されている。また、第1の多孔性補強材層2aは隔膜1の第1の主面3aから埋没した状態で、第2の多孔性補強材層2bは隔膜1の第2の主面3bから埋没した状態で各々配置されている。第1および第2の多孔性補強材層2a,2b間には、親水性無機材料および有機結合材料から構成される中央部4が存在する。隔膜1の第1の主面3aと第1の多孔性補強材層2aとの間には、親水性無機材料および有機結合材料から構成される第1の表層部5aが存在する。隔膜1の第2の主面3bと第2の多孔性補強材層2bとの間には、親水性無機材料および有機結合材料から構成される第2の表層部5bが存在する。第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは隔膜1の内部に配置されており、隔膜1の表面(主面3a,3b)に露出していない。隔膜1の表面には、第1および第2の表層部5a,5bが露出している。もっとも、隔膜1にイオン透過性隔膜として使用しない部分が存在する場合、当該部分に関してはこれらの限りではない。
従来、内部に多孔性層が配置されているイオン透過性隔膜をゼロギャップ法に使用すると、例えば、一方の電極で発生した気体が他方の電極側に移動し、隔膜のガス分離特性が低下したり、失われたりすることがある。本発明者らの検討の結果、これは、以下の理由に基づくことが判明した。
ゼロギャップ法は、イオン透過性隔膜と電極との間の間隔(ギャップ)を可能な限り小さくして(理想的にはギャップをゼロとして)、電解プロセスを実施する手法である。ゼロギャップ法では、一対の電極(アノードおよびカソード)でイオン透過性隔膜を挟み、これらが互いに接触する方向に圧力が加えられる。圧力は、例えば板バネやガスケットの弾性力(復元力)により加えられるが、イオン透過性隔膜および電極の積層体に対して均一に圧力を加えることは困難であり、隔膜に加わる圧力は不均一となる。これに加えて、電解プロセスに使用される電極は、例えば当該プロセスにより生成したガスを回収するために、メッシュや多孔体といった主面が平坦ではない複雑な形状であることが多く、これにより、すなわち電解プロセスに特有の電極形状により、隔膜に加わる圧力はさらに不均一となる。不均一に加わる圧力は隔膜に対する部分的な応力集中を招き、応力集中部にクラックなどの欠陥部が生じることがある。電解プロセスによるガスの発生などによってイオン透過性隔膜および電極の積層体に微細な振動が発生することも、隔膜におけるこのような欠陥部の発生を助長する。欠陥部は、電極が接触するイオン透過性隔膜の双方の主面に発生しうる。そして欠陥部には、電極の表面に配置された電極材料が侵入しうる。
ここで特許文献1のイオン透過性隔膜では、内部に一層のみ多孔性層が配置されている。図2に示すように、このようなイオン透過性隔膜101では、双方の主面から欠陥部103が延びて各々多孔性層102にまで達すると、一方の当該欠陥部103に侵入したガス、例えば隔膜101の内部に食い込んだ電極材料で発生したガスが多孔性層102の表面を伝わって他方の欠陥部103にまで達する(リークパス104をガスが伝達する)ことがある。この現象が、従来のイオン透過性隔膜においてみられるガス分離特性の低下や喪失に相当する。なお、図2はあくまでも模式図であり、当該図では、説明を分かり易くするために欠陥部103を極端に強調して示している。
一方、本発明のイオン透過性隔膜1は第1および第2の多孔性補強材層2a,2bを備え、第1および第2の多孔性補強材層2a,2b間には中央部4が存在する。このため、図3に示すように、仮に隔膜1の双方の主面に欠陥部6が生じたとしても、各々の欠陥部6は第1または第2の多孔性補強材層2a,2bにまでしか達しないため、リークパス7a,7bが隔膜1の双方の主面3a,3b間を接続するように延びることが抑制される。すなわち、中央部4の存在により、一方の電極で発生したガスの他方の電極側への移動が抑制される。また、ガス分離特性以外にも、中央部4の存在によって、仮に電極材料が多孔性補強材層2aおよび/または多孔性補強材層2bにまで食い込んだ場合においても、イオン透過性隔膜としての機能をより確実に保持できる。すなわち隔膜1は、ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をより確実に保持できる隔膜である。
隔膜1における欠陥部6の発生およびそれに伴う隔膜1内への電極材料の食い込みについて、仮にこれらの現象が発生した場合においても、当該現象は隔膜1の表層部5aおよび/または表層部5bに留まり中央部4にまで達しない、と換言することもできる。この観点からは、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、隔膜1の補強層としての機能だけではなく、欠陥部6の隔膜1内部への(中央部4への)伸張および電極材料の隔膜1内部への(中央部4への)食い込みを防ぐ機能をさらに有しているといえる。
図1に示す例では、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、その主面が隔膜1の第1および第2の主面3a,3bに対して平行となるように隔膜1の内部に配置されている。また、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、双方の層の主面が互いに平行となるように隔膜1の内部に配置されている。本発明のイオン透過性隔膜において、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、必ずしもこのような状態で配置されていなくてもよく、例えば、上記の各位置関係が略平行であってもよいし、一方または双方の多孔性補強材層が、隔膜1の断面(図1に示すような膜厚方向に切断した断面)で見たときに、蛇行した状態で配置されていてもよい。ただし、第1の多孔性補強材層2aと第2の多孔性補強材層2bとが互いに離間して配置されており、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bが、隔膜1の第1および第2の主面3a,3bからそれぞれ埋没して配置されている必要がある。上述した本発明の効果をより確実に達成できることから、蛇行の程度は小さいことが好ましく、上記の各位置関係が略平行であることがより好ましく、上記の各位置関係が平行であることがさらに好ましい。
なお、多孔性補強材層が上記の各位置関係にして略平行に配置されている場合、あるいは蛇行している場合、後述する中央部4の厚さおよび表層部5a,5bの厚さは、その平均値、例えば隔膜1における任意の5点におけるそれぞれの厚さの平均値とする。また、多孔性補強材層の表面には多少の凹凸があるため、中央部4の厚さおよび表層部5a,5bの厚さとしてこのような平均値を採用することにより、多孔性補強材層の表面の凹凸の影響を抑えた値とすることができる。
本発明のイオン透過性隔膜1は、第1および第2の多孔性補強材層2a,2b以外のさらなる多孔性層(多孔性補強材層を含む。以下、同じ)を備えていてもよく、当該さらなる多孔性層は、中央部4に配置されていても、表層部5aおよび/または表層部5bに配置されていてもよい。ただし、さらなる多孔性層は、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bと離間して(非接触で)配置されていることが好ましく、また、隔膜1の表面に露出しないように(隔膜1に埋没して)配置されていることが好ましい。本発明のイオン透過性隔膜1は、第1および第2の多孔性補強材層2a,2b以外のさらなる多孔性層を備えない(多孔性層として第1および第2の多孔性補強材層2a,2bのみを備える)ことが好ましく、この場合、上述した本発明の効果をより確実に達成できる。特に、表層部5a,5bに、さらなる多孔性層を備えないことが好ましい。隔膜1がさらなる多孔性層を備える場合、当該さらなる多孔性層においても、その孔部、少なくとも多孔性層における一方の主面と他方の主面とを接続する孔部、には、親水性無機材料と有機結合材料と(の複合体)が配置されていることが好ましい。
隔膜1において第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの間に位置する中央部4の厚さは限定されないが、隔膜1の厚さの10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。中央部4の厚さがこれらの範囲にある場合、上述した本発明の効果をより確実に達成できる。隔膜1の厚さに対する中央部4の厚さの割合の上限は限定されず、例えば90%である。
隔膜1において第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの間に位置する中央部4の具体的な厚さは、例えば、5μm以上1000μm以下であり、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。中央部4の厚さがこれらの範囲にある場合、上述した本発明の効果をより確実に達成できる。
隔膜1における、第1の主面3aと第1の多孔性補強材層2aとの距離、すなわち第1の表層部5aの厚さ、および第2の主面3bと第2の多孔性補強材層2bとの距離、すなわち第2の表層部5bの厚さは、ともに特に限定されないが、例えば5μm以上であり、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。第1および第2の表層部5a,5bの厚さがこれらの範囲にある場合、上述した本発明の効果をより確実に達成できる。第1の表層部5aの厚さと第2の表層部5bの厚さとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
隔膜1の厚さは限定されず、例えば10〜2000μmであり、100〜1000μmが好ましく、200〜700μmがより好ましい。
親水性無機材料は、隔膜1を電解プロセスに使用した場合に、当該プロセスの電解質(典型的には電解液)と親和性が高い材料である。親和性は、例えば、電解質に対する濡れ性により評価できる。上述のように本発明の隔膜1では、多孔質である隔膜1の孔空間に配置された電解質を介してイオンが隔膜1を透過する。親水性無機材料は、その電解質との親和性の高さによって、電解プロセスへの使用時に隔膜1の孔空間に電解質が充填される程度を向上させ、隔膜1の膜厚方向のイオン透過性を向上させる作用を有する。
具体的な親水性無機材料は限定されず、従来のイオン透過性隔膜、特に親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質のイオン透過性隔膜、に使用されている親水性無機材料と同様の材料でありうる。親水性無機材料は、例えば金属化合物であり、より具体的な例は、金属の酸化物、水酸化物、フッ化物およびリン酸化合物である。金属は、例えばアルカリ土類金属、遷移金属、ケイ素であり、より具体的な例は、カルシウム、ジルコニウム、ビスマス、チタン、セリウム、ケイ素およびアンチモンから選ばれる少なくとも1種である。親水性無機材料は、例えば、フッ化カルシウム、フルオロアパタイト(化学式の一例はCa10F2(PO4)6)、ヒドロキシアパタイト(化学式の一例はCa5(PO4)3(OH))、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アンチモンであり、なかでも耐酸化性および化学的安定性に優れることから、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化アンチモンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
親水性無機材料の形態は限定されないが、例えば粒子あるいは繊維状である。このとき隔膜1は、親水性無機材料の粒子および/または繊維と有機結合材料とから構成され、親水性無機材料の粒子および/または繊維が有機結合材料により互いに結着した構造、あるいは有機結合材料中に親水性無機材料の粒子および/または繊維が分散した構造を有する。粒子の形状は、球、回転楕円体、楕円体でありうるし、これらの凝集体、またはこれらの形状以外の形状(不定形を含む)でありうる。粒子の平均粒径は特に限定されないが、隔膜1におけるイオンの透過(伝達)がより効率的となることから、例えば5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。粒子の平均粒径が小さくなると、例えば、多孔質である隔膜1の孔空間の径を小さくすることができ、隔膜1のガス分離特性(ガス遮断特性)をより向上できる。粒子の平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば0.01μmである。親水性無機材料の粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(より具体的な装置の例として堀場製作所製LA−920)により評価できる。
有機結合材料は、多孔質である隔膜1の孔空間を形成し、親水性無機材料を保持する役割を果たす。隔膜1の形状を保持する役割を有機結合材料が担うことも可能であり、この観点から有機結合材料は、隔膜1の使用時に当該隔膜1に接触するガスの分離特性(遮断特性)に優れるとともに、隔膜1が使用される環境への耐久性、例えば隔膜1をアルカリ型の電気化学セルに使用する場合(アルカリ電解に使用する場合)にはアルカリ雰囲気への耐久性、を有する材料が好ましい。
具体的な有機結合材料は限定されず、従来のイオン透過性隔膜、特に、親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質のイオン透過性隔膜、に使用されている有機結合材料と同様の材料でありうる。ガス分離特性および上記耐久性、ならびに親水性無機材料、特に粒子または繊維状である親水性無機材料の保持性に優れるとともに製膜性に優れることから、有機結合材料は、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンであり、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
隔膜1の態様の一例では、親水性無機材料の無数の粒子および/または繊維が有機結合材料により互いに結着しているとともに、この粒子および/または繊維と有機結合材料との複合体自身が有する自己形状保持性により、隔膜1の形状が保たれている。そして、隔膜1の内部に配置されている第1および第2の多孔性補強材層2a,2bによって、隔膜1の自己形状保持性および機械的強度が向上するとともに、隔膜としての機能、例えばガス分離特性、が向上している。
第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、その厚さ方向に当該層を貫通する(当該層の双方の主面を接続する)経路を有し、当該経路に有機結合材料および親水性無機材料(の複合体)を配置できる限り、任意の構成をとりうる。第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、例えばメッシュ、織布、不織布または多孔質膜から構成され、メッシュ、織布または不織布でありうる。
第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは絶縁性の材料から構成されることが好ましく、当該材料は、例えば樹脂である。樹脂は限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ナイロン(NY)などのポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)から選ばれる少なくとも1種である。これらの材料は、隔膜1が使用される環境への耐久性、例えば隔膜1をアルカリ型の電気化学セルに使用する場合にはアルカリ雰囲気への耐久性、を有する材料でもある。第1および第2の多孔性補強材層2a,2bは、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ナイロン(NY)などのポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)から選ばれる少なくとも1種のメッシュ、織布、不織布または多孔質膜から構成されうるし、これら少なくとも1種のメッシュ、織布または不織布から構成されうる。
第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの厚さ(各々の厚さ)は、隔膜1の厚さに対して、例えば5〜40%であり、10〜20%が好ましい。これらの範囲において、隔膜1の良好なイオン透過性を確保しながら、多孔性補強材層2a,2bによる隔膜1の補強がより確実となる。また、これらの範囲において、隔膜1の使用時に多孔性補強材層2a,2bが隔膜1の主面に露出したり、多孔性補強材層2a,2b同士が接触したりすることが抑制され、ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をさらに確実に保持できる。これに加えて、これらの範囲では、後述する製造方法による隔膜1の製造をより確実に実施できる。
第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの具体的な厚さ(各々の厚さ)は、例えば2〜800μmであり、10〜300μmが好ましい。これらの範囲において、隔膜1の良好なイオン透過性を確保しながら、多孔性補強材層2a,2bによる隔膜1の補強がより確実となる。また、これらの範囲において、隔膜1の使用時に多孔性補強材層2a,2bが隔膜1の主面に露出したり、多孔性補強材層2a,2b同士が接触したりすることが抑制され、ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をさらに確実に保持できる。これに加えて、これらの範囲では、後述する製造方法による隔膜1の製造をより確実に実施できる。
第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの厚さ方向の通気度は、例えばJIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数(フラジール通気度)にて1〜1000mL/(cm2・秒)であり、50〜200mL/(cm2・秒)が好ましい。これらの範囲において、多孔性補強材層2a,2bの当該経路に親水性無機材料および有機結合材料を、隔膜1の良好なイオン透過性を確保できる程度にまで十分に配置できる。また、これらの範囲では、後述する製造方法による隔膜1の製造をより確実に実施できる。
第1の多孔性補強材層2aと第2の多孔性補強材層2bとは、同一の構成を有していても、互いに異なる構成を有していてもよい。
隔膜1がさらなる多孔性層を備える場合、当該多孔性層の構成は特に限定されない。当該多孔性層は、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bと同一の構成をとりうる。
隔膜1において、一方の主面3aおよび他方の主面3bにおける平均孔径は、例えば0.01μm以上50μm以下であり、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上5μm以下がより好ましい。これらの範囲において、隔膜1のガス分離特性をより確実に確保できる。なお、隔膜1には、平均孔径が50μmを超える、当該隔膜1を厚さ方向に貫通する経路が存在しないことが好ましい。隔膜1の主面における平均孔径は、当該主面を走査型電子顕微鏡(SEM)により、孔空間の開口が100個程度観察できる範囲で3箇所撮影し、各撮影像において選択した50個の開口の長軸長および短軸長を測定して平均長軸長および平均短軸長を求め、求めた平均長軸長および平均短軸長の相乗平均として評価することができる。
本発明のイオン透過性隔膜は、イオン透過性隔膜として機能するとともに本発明の効果が得られる限り、親水性無機材料および有機結合材料以外の材料を含んでいてもよい。また、本発明のイオン透過性隔膜は、イオン透過性隔膜として機能するとともに本発明の効果が得られる限り、上述した以外の任意の部材を備えていてもよい。
本発明のイオン透過性隔膜は、例えば、以下に示す特性を有する。
ガス分離特性について、本発明のイオン透過性隔膜のバブルポイント圧(JIS K3832の規定に準拠して測定したバブルポイント圧)は、隔膜の厚さ400μmのときに、例えば150kPa以上である。バブルポイント圧は、隔膜の膜厚方向に貫通する孔の最大孔径に影響され、例えばピンホールのような欠陥部を有する隔膜では極端に低下する。隔膜のバブルポイント圧が高いことは、電解プロセス、特にゼロギャップ法に使用した際に、当該隔膜のガス分離特性が低下し難いことを意味している。
機械的強度について、本発明のイオン透過性隔膜の突き刺し強度は、隔膜の厚さを400μmとし、フランス刺繍針No.8を突き刺し針に用い、突き刺し速度を2mm/秒としたときの最大突き刺し荷重の値にして、例えば150gf以上であり、隔膜の構成によっては、200gf以上、250gf以上、さらには300gf以上の値をとりうる。隔膜の突き刺し強度の値が大きいと、例えば当該隔膜をゼロギャップ法に使用した際に、不均一に加わる電極からの圧力による欠陥部の発生および電極材料の隔膜への食い込みが抑制される。また、隔膜の突き刺し強度の値が大きいと、当該隔膜を電解プロセスに(電気化学セルに)使用した際に、当該隔膜における電気的な短絡(内部ショート)を抑制できる。内部ショートによってもガス分離特性の低下がおこりうるため、この観点からも、突き刺し強度の値が大きいほど耐短絡性およびガス分離特性に優れるイオン透過性隔膜であるといえる。
イオン透過性について、本発明のイオン透過性隔膜の膜抵抗(電気抵抗)は、濃度25重量%のKOH溶液中、25℃の測定温度、隔膜の厚さ400μm、1kHzの交流抵抗の値にして、例えば500mΩ・cm2以下であり、隔膜の構成によっては、300mΩ・cm2以下、さらには150mΩ・cm2以下の値をとりうる。
本発明のイオン透過性隔膜は、従来のイオン透過性隔膜と同様の用途に使用できる。用途は、例えば電解プロセスの隔膜、より具体的な例は電気化学セルの隔膜である。本発明のイオン透過性隔膜を使用可能な電解プロセスは限定されず、例えば、水溶液電解、溶融塩電解、めっきなどの表面処理、電解成形・加工などの材料加工、電気防食、電気透析、排水処理などの環境処理である。水溶液電解の一例は、アルカリ性の電解液(一例として水酸化物イオンを含有する電解液)を電解するアルカリ水電解である。アルカリ水電解は、本発明のイオン透過性隔膜を配置したアルカリ型の電気化学セルにより実施できる。このとき、本発明のイオン透過性隔膜は、アニオン(例えば水酸化物イオン)を膜厚方向に伝達する。
上述のように本発明のイオン透過性隔膜はゼロギャップ法に対応しており、ゼロギャップ法に使用した場合においても、イオン透過性隔膜としての機能、特にガス分離特性、をより確実に保持できる。本発明のイオン透過性隔膜は、ゼロギャップ法以外の手法にも適用できる。
本発明のイオン透過性隔膜を製造する方法は限定されず、例えば、以下に示す方法(本開示の製造方法)により製造できる。
[イオン透過性隔膜の製造方法]
本発明のイオン透過性隔膜を製造する方法の一例を、図4を参照しながら説明する。本発明のイオン透過性隔膜の製造方法は、この例に限定されない。
本発明のイオン透過性隔膜を製造する方法の一例を、図4を参照しながら説明する。本発明のイオン透過性隔膜の製造方法は、この例に限定されない。
図4に示す成膜方法では、所定の間隔(ギャップ)13をおいて配置され、間隔13より上部にスラリー液を保持した(スラリー液の液溜まり11が形成された)一対のガイド12a,12bを通して、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bを走行させる。このとき、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bにはその走行方向に張力を加えるとともに、ガイド12a,12bを通過して走行方向が下方に変化した後は、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bが一定の間隔、典型的には間隔13、で互いに離間したまま走行する状態を保つ。スラリー液は、親水性無機材料および有機結合材料を含んでいる。液溜まり11のスラリー液は、走行する多孔性補強材層2a,2bとともにガイド12a,12b間の間隔13を通過した後、多孔性補強材層2a,2bのそれぞれの層を厚さ方向に浸透して(多孔性補強材層2a,2bの厚さ方向の経路を介して)、各々の多孔性補強材層2a,2bにおける互いに向かい合っていない側の主面に所定の厚さで染み出す。この状態を固定すれば、ガイド12a,12bを通過した後の多孔性補強材層2a,2b間の上記一定の間隔、典型的には間隔13、を中央部4の厚さとし、染み出した液の厚さを表層部5a,5bの厚さとする、図1に示すようなイオン透過性隔膜1を形成できる。
この方法では、例えば、ガイド12a,12b間の間隔13の調整および/またはガイド12a,12bを通過した後の第1および第2の多孔性補強材層2a,2b間の間隔の調整により、形成するイオン透過性隔膜1の中央部4の厚さを制御できる。また、表層部5a,5bの厚さは、多孔性補強材層2a,2bの材質および平均孔径、スラリー液の組成および粘度、多孔性補強材層2a,2bの走行速度、ならびにガイド12a,12b通過から上記固定までに要する時間などによっても制御できる。さらに、この方法では、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bが互いに略平行あるいは平行の位置関係にあるイオン透過性隔膜1を、より確実に形成できる。このためには、例えば、多孔性補強材層2a,2bに加える張力を制御すればよい。またさらにこの方法は、多孔性補強材層2a,2bの構成、ならびに親水性無機材料および有機結合材料の種類を問わず実施できる。
本発明のイオン透過性隔膜を製造する方法の別の一例を、図5を参照しながら説明する。図5に示す方法では、図4に示す方法においてガイド12a,12bを通過した第1および第2の多孔性補強材層2a,2bを、さらにスラリー液の液溜まり14に導入して通過させる。液溜まり14の下部には、所定の間隔15をおいて一対のガイド16a,16bが配置されている。間隔15は、ガイド16a,16b間を通過する第1および第2の多孔性補強材層2a,2b間の間隔よりも大きく設定されている。この方法では、さらに、形成するイオン透過性隔膜1の表層部5a,5bの厚さの制御が容易となり、例えば、表層部5aおよび/または表層部5bの厚さをより大きくすることができる。図5に示す方法において表層部5a,5bの厚さは、図4に示す方法の説明において上述した事項に加えて、例えば、ガイド16a,16b間の間隔15によってもさらに制御できる。図5に示す方法は、図4に示す方法に、スラリー液を双方の主面に塗布して表層部5a,5bの厚さを増加させる工程を加えた方法ととらえることもできる。
図4,5に示す方法においてガイド12a,12bおよびガイド16a,16bには、任意の部材、例えば、棒状の部材(より具体的な例は、断面が円である棒状の部材)、ローラーなどを使用できる。スラリー液の液溜まり11,14は、任意の部材を用いた任意の方法により形成できる。図4,5に示す例において液溜まり11は、ガイド(多孔性補強材層のガイド)12a,12bを通過する多孔性補強材層2a,2b間にスラリー液を流下することにより自然に形成される。図5に示す例において液溜まり14は、ガイド(スラリー液のガイド)16a,16bが間隔15をもって互いに離間した状態で下部に配置されるとともに第1および第2の多孔性補強材層2a,2bが通過できる開口を下部に有するスラリー液槽17により形成されている。
スラリー液は、親水性無機材料および有機結合材料を含む限り限定されない。より安定した隔膜1の形成が可能となることから、スラリー液は、有機結合材料が溶解した溶液に親水性無機材料、例えば親水性無機材料の粒子および/または繊維、が分散した液が好ましい。このようなスラリー液は、親水性無機材料、有機結合材料および有機結合材料を溶解する溶媒を用いて、公知の方法により形成できる。溶媒は、例えば有機溶媒であり、より具体的な例は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンである。スラリー液における有機結合材料の濃度は、例えば20〜80重量%であり、30〜60重量%が好ましい。スラリー液における親水性無機材料の含有量は、例えば20〜60重量%であり、20〜40重量%が好ましい。スラリー液は、必要に応じて、親水性無機材料、有機結合材料および有機結合材料を溶解する溶媒以外の任意の材料を含んでいてもよい。
走行する第1および第2の多孔性補強材層2a,2b間に液溜まり11から流出する単位時間あたりのスラリー液の量、ならびに液溜まり14から第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの走行とともに流出する単位時間あたりのスラリー液の量は、第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの走行速度に応じて、ならびに望む厚さのイオン透過性隔膜1、中央部4および/または表層部5a,5bが形成されるように、制御できる。
多孔性補強材層2a,2bの走行速度および多孔性補強材層2a,2bに加える張力は、望む厚さのイオン透過性隔膜1、中央部4および/または表層部5a,5bが形成されるように、また、形成された隔膜1の内部における第1および第2の多孔性補強材層2a,2bの望む配置の状態に応じて、制御できる。例えば、形成された隔膜1の内部において第1および第2の多孔性補強材層2a,2bが互いに略平行または平行に離間した状態となるためには、ある程度の大きさ以上の張力を多孔性補強材層2a,2bに加えることが必要である。具体的に必要な張力の値は、スラリー液の組成および粘度、ならびに当該液の多孔性補強材層への浸透速度などに応じて異なる。
この方法において、多孔性補強材層2a,2bを供給する方法(ガイド12a,12bに供給する方法)は限定されない。例えば、帯状の多孔性補強材層2a,2bを供給してもよいし、より具体的に、帯状の多孔性補強材層2a,2bを、ロール(繰出ロール)に巻回した状態から順に送り出すことで供給してもよい。
上記状態を固定する方法は限定されない。方法の一例は、凝固浴の利用である。凝固浴の利用の一例では、図4,5に示す、スラリー液が染み出した状態の多孔性補強材層2a,2bを走行させて凝固浴に導入する。そして凝固浴においてスラリー液を凝固させて、隔膜1を形成する。凝固浴を利用すると、多孔質である隔膜1の形成がより確実となる。凝固浴は、例えば水浴である。凝固浴を通過させた後、他の処理、例えば乾燥処理を実施してもよい。乾燥には加熱を併用できる。
上記状態を固定する方法の別の一例は、乾燥である。乾燥は、有機結合材料が自己形状保持性を獲得し、これにより隔膜1が形成される任意の条件および任意の方法で実施すればよい。乾燥には加熱を併用できる。
形成された隔膜1が帯状である場合、当該帯状の隔膜1を巻取ロールに巻回してもよい。本開示の製造方法では、帯状の多孔性補強材層2a,2bを供給して、帯状の隔膜1を形成できる。
本開示の製造方法は、本発明のイオン透過性隔膜が得られる限り、上述した以外の任意の工程を有しうる。例えば、図4,5に示す方法について、イオン透過性隔膜1が得られる限り任意の変更が可能である。
[電気化学セル]
本発明の電気化学セルは、本発明のイオン透過性隔膜1と、当該隔膜1を挟持する一対の電極(アノードおよびカソード)とを備える。本発明の電気化学セルにおいて、隔膜1と一対の電極とは互いに接していなくてもよいし、一対の電極が隔膜1と接した状態で隔膜1を挟持していてもよい。後者は、隔膜1をゼロギャップ法に使用している態様に対応する。
本発明の電気化学セルは、本発明のイオン透過性隔膜1と、当該隔膜1を挟持する一対の電極(アノードおよびカソード)とを備える。本発明の電気化学セルにおいて、隔膜1と一対の電極とは互いに接していなくてもよいし、一対の電極が隔膜1と接した状態で隔膜1を挟持していてもよい。後者は、隔膜1をゼロギャップ法に使用している態様に対応する。
隔膜1をゼロギャップ法に使用する場合、隔膜1と一対の電極とは、例えば図6に示す状態にある。図6に示す積層体21は、隔膜1と、アノード22aおよびカソード22bとを備えており、隔膜1は、アノード22aおよびカソード22bと接した状態で、アノード22aおよびカソード22bにより挟持されている。ゼロギャップ法において積層体21には、隔膜1および電極22a,22bが互いに接触する方向に圧力が加えられる。圧力の印加には、ゼロギャップ法における公知の方法を適用でき、例えば板バネやガスケットなどによる弾性力(復元力)を利用できる。
アノード22aおよびカソード22bは限定されず、公知のアノードおよびカソードを使用できる。アノード22aおよびカソード22bに含まれる電極材料は、例えば、ニッケル、白金、金、酸化マンガン、酸化ニッケルである。
本発明の電気化学セルの一例を図7に示す。図7に示す電気化学セル31は、電解質32に電圧を印加して電解する電解セルである。電気化学セル31では、電解質32が電解槽33内に収容され、電解質32は、同じく電解槽33内に収容された隔膜1によって、アノード22a側の領域とカソード22b側の領域とに区分されている。隔膜1には、当該隔膜1の各々の主面に接してアノード22aおよびカソード22bがそれぞれ配置されている。図7に示す電解セルは、隔膜1を電解隔膜としてゼロギャップ法を適用した電解セルである。アノード22aおよびカソード22bは、電源(図示せず)に接続されている。隔膜1、アノード22aおよびカソード22bに対して互いに接触する方向に圧力を加える機構の図示は省略する。
電気化学セル31において、アノード22aおよびカソード22b間に電解質32の電解電圧以上の電位差を印加すると、電解質32が電気分解される。すなわち、電気化学セル31が電解セルとして機能する。
電解質32は限定されず、例えば、水溶液、有機または無機の非水溶液、溶融塩である。水溶液である電解質32の例は、アルカリ性の、より具体的には水酸化物イオンを含む電解液である。このような電解液の一例は、水酸化カリウム水溶液である。
電解質32の種類により、電気分解により生成する気体の種類が異なる。図7に示す例では、水酸化カリウム水溶液を電解質32に使用しており、電気分解によってアノード22aから酸素が、カソード22bから水素がそれぞれ生成する。そして隔膜1の配置による上記領域の分離により、生成した気体の混合が抑制され、例えば純度の高い水素が得られる。
電気化学セル31の具体的な運転方法は限定されず、公知の方法に従えばよい。
本発明の電気化学セルの構成は、本発明のイオン透過性隔膜1と一対の電極22a,22bとを備える限り図7に示す例に限定されず、任意の構成をとりうる。例えば、本発明の電気化学セルは、上述した以外の任意の部材を有しうる。
図7に示す電気化学セルはアルカリ型の電解セルであるが、本発明の電気化学セルは他の型の電解セルであってもよいし、電解セル以外の他の電気化学セルであってもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
最初に、本実施例において作製したイオン透過性隔膜の評価方法を示す。
[厚さ]
作製したイオン透過性隔膜の厚さは、厚み計(尾崎製作所製、デジタルアプライトゲージR1−205、測定子の直径5mm、測定力1.1N以下)により求めた。
作製したイオン透過性隔膜の厚さは、厚み計(尾崎製作所製、デジタルアプライトゲージR1−205、測定子の直径5mm、測定力1.1N以下)により求めた。
[バブルポイント圧]
作製したイオン透過性隔膜のバブルポイント圧は、JIS K3832の規定に準拠して評価した。
作製したイオン透過性隔膜のバブルポイント圧は、JIS K3832の規定に準拠して評価した。
評価に供した試験片は、作製直後のイオン透過性隔膜を、その幅方向におおよそ均等な5箇所においてそれぞれ直径25mmの円形に打ち抜いて準備した。また、これとは別に、作製直後のイオン透過性隔膜の双方の主面を紙やすり(Struers製、#200)によって厚さ20μmずつ研磨した隔膜について、同様に、直径25mmの円形に打ち抜いて得た試験片を準備した。求めたバブルポイント圧は、これら5箇所で採取した試験片に対して評価した値の平均値である。なお、紙やすりによる研磨は、ゼロギャップ法にイオン透過性隔膜を使用した際に、隔膜および電極の積層体に振動が加わることなどによって当該隔膜に生じる電極材料との擦れが強く進行した状態を想定している。
試験ガスには窒素ガスを使用した。また、試験片を1時間純水に浸漬した後に、バブルポイント圧を評価した。
[突き刺し強度]
作製したイオン透過性隔膜の突き刺し強度は、カトーテック製ハンディー圧縮試験機(KES−G5)に突き刺し針としてフランス刺繍針(Clover製、No.8、太さ0.61mm)を固定し、突き刺し速度2mm/秒にて、作製直後のイオン透過性隔膜に突き刺し試験を実施して求めた。突き刺し試験により得た最大突き刺し荷重(gf)を、イオン透過性隔膜の突き刺し強度とした。なお、突き刺し強度は、同一の隔膜について場所を変えながら5回突き刺し試験を実施した平均値である。
作製したイオン透過性隔膜の突き刺し強度は、カトーテック製ハンディー圧縮試験機(KES−G5)に突き刺し針としてフランス刺繍針(Clover製、No.8、太さ0.61mm)を固定し、突き刺し速度2mm/秒にて、作製直後のイオン透過性隔膜に突き刺し試験を実施して求めた。突き刺し試験により得た最大突き刺し荷重(gf)を、イオン透過性隔膜の突き刺し強度とした。なお、突き刺し強度は、同一の隔膜について場所を変えながら5回突き刺し試験を実施した平均値である。
[膜抵抗(電気抵抗)]
作製したイオン透過性隔膜の膜抵抗(電気抵抗)は、JIS C2313:1995(鉛蓄電池用隔離板)の規定に準拠して求めた。その際、電解液には濃度25重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、電極には白金板を用いた。また、膜抵抗を測定する際の電解液の温度は25℃とし、測定は、隔膜を上記電解液に10分間浸漬させた後に行った。
作製したイオン透過性隔膜の膜抵抗(電気抵抗)は、JIS C2313:1995(鉛蓄電池用隔離板)の規定に準拠して求めた。その際、電解液には濃度25重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、電極には白金板を用いた。また、膜抵抗を測定する際の電解液の温度は25℃とし、測定は、隔膜を上記電解液に10分間浸漬させた後に行った。
[電解電圧]
作製したイオン透過性隔膜による電解液の電解電圧は以下のようにして求めた。ガラス製のH型セルを準備し、当該セルにおけるアノード槽とカソード槽とを接続する部分(「H」の横棒の部分)に、作製したイオン透過性隔膜を一対のニッケル電極により挟持した状態で配置した。なお、ニッケル電極により挟持する前にイオン透過性隔膜を1時間純水に浸漬させ、ニッケル電極とイオン透過性隔膜とが互いに接するように積層方向に板バネにより圧力をかけて挟持した。次に、H型セルのアノード槽およびカソード槽に濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を収容し、全体を25℃に保持して1時間放置した。次に、一対の電極間に定電流(電流密度0.2A/cm2)を印加し、1時間にわたって電流の印加を続けた。電流の印加を開始してから50分経過した後、一対の電極間に発生している電位差の測定を開始し、電流の印加終了(電流の印加を開始してから1時間)に至るまで測定した電位差の平均値を電解電圧(濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対する電解電圧)として求めた。
作製したイオン透過性隔膜による電解液の電解電圧は以下のようにして求めた。ガラス製のH型セルを準備し、当該セルにおけるアノード槽とカソード槽とを接続する部分(「H」の横棒の部分)に、作製したイオン透過性隔膜を一対のニッケル電極により挟持した状態で配置した。なお、ニッケル電極により挟持する前にイオン透過性隔膜を1時間純水に浸漬させ、ニッケル電極とイオン透過性隔膜とが互いに接するように積層方向に板バネにより圧力をかけて挟持した。次に、H型セルのアノード槽およびカソード槽に濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を収容し、全体を25℃に保持して1時間放置した。次に、一対の電極間に定電流(電流密度0.2A/cm2)を印加し、1時間にわたって電流の印加を続けた。電流の印加を開始してから50分経過した後、一対の電極間に発生している電位差の測定を開始し、電流の印加終了(電流の印加を開始してから1時間)に至るまで測定した電位差の平均値を電解電圧(濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対する電解電圧)として求めた。
(実施例1)
有機結合材料としてポリスルホン(BASF製、Ultrason S6100 NAT)、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素化学工業製、EP酸化ジルコニウム、平均粒径2μm)、および有機結合材料の溶媒としてN−メチルピロリドンを混合し、60℃に加温してポリスルホンを溶媒に溶解させた後、得られた液を濾過(この濾過では酸化ジルコニウム粒子は除去されない)および脱泡して、隔膜成膜用スラリー液を得た。このスラリー液は、ポリスルホンのN−メチルピロリドン溶液に酸化ジルコニウム粒子が分散した液である。作製したスラリー液におけるポリスルホンの含有率は15.0重量%、酸化ジルコニウム粒子の含有率は35.0重量%、N−メチルピロリドンの含有率は50.0重量%とした。
有機結合材料としてポリスルホン(BASF製、Ultrason S6100 NAT)、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素化学工業製、EP酸化ジルコニウム、平均粒径2μm)、および有機結合材料の溶媒としてN−メチルピロリドンを混合し、60℃に加温してポリスルホンを溶媒に溶解させた後、得られた液を濾過(この濾過では酸化ジルコニウム粒子は除去されない)および脱泡して、隔膜成膜用スラリー液を得た。このスラリー液は、ポリスルホンのN−メチルピロリドン溶液に酸化ジルコニウム粒子が分散した液である。作製したスラリー液におけるポリスルホンの含有率は15.0重量%、酸化ジルコニウム粒子の含有率は35.0重量%、N−メチルピロリドンの含有率は50.0重量%とした。
これとは別に、多孔性補強材層として、ポリフェニレンサルファイドの不織布(廣瀬製紙製、坪量40g/m2、厚さ90μm、幅200mmの帯状、フラジール通気度58mL/(cm2・秒))を準備した。
このようにして準備した成膜用スラリー液および2つの多孔性補強材層を用いて、図4に示す方法によりイオン透過性隔膜を作製した。隔膜の作製にあたり、ガイド12a,12b間の間隔13を450μm、多孔性補強材層の走行速度を0.4m/分、液溜まり11におけるスラリー液の温度を40℃とした。スラリー液は、走行する多孔性補強材層とともに間隔13を通過した後、それぞれの多孔性補強材層を透過して当該層の反対側の表面に染み出し、当該表面においてスラリー液の層が形成される状態であった。
その後、スラリー液を受けた一対の多孔性補強材層を凝固浴(水浴)に導入し、ポリスルホンの凝固およびN−メチルピロリドンの抽出を実施した。これにより、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、互いに平行に離間した状態で埋没した一対の多孔性補強材層を備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ408μm)を得た。その主面における平均孔径は2μmであった。また、当該隔膜の中央部4の厚さは168μm、表層部5a,5bの厚さは20μmであった。
実施例1で作製したイオン透過性隔膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図8に示す。図8には、上述した隔膜の構造が示されている。
(実施例2)
間隔13を変更した以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、互いに平行に離間した状態で埋没した一対の多孔性補強材層を備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ360μm)を得た。実施例2で作製したイオン透過性隔膜は、中央部4の厚さが120μmであった以外は、実施例1で作製したイオン透過性隔膜と同じ特徴を有していた。
間隔13を変更した以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、互いに平行に離間した状態で埋没した一対の多孔性補強材層を備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ360μm)を得た。実施例2で作製したイオン透過性隔膜は、中央部4の厚さが120μmであった以外は、実施例1で作製したイオン透過性隔膜と同じ特徴を有していた。
(実施例3)
間隔13を変更するとともに、多孔性補強材層としてポリフェニレンサルファイドのメッシュ(くればぁ製、品名:開き200μm、糸径55μm、厚さ100μm、100メッシュ)を用いた以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、互いに平行に離間した状態で埋没した一対の多孔性補強材層を備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ380μm)を得た。実施例3で作製したイオン透過性隔膜は、中央部4の厚さが120μmであった以外は、実施例1で作製したイオン透過性隔膜と同じ特徴を有していた。
間隔13を変更するとともに、多孔性補強材層としてポリフェニレンサルファイドのメッシュ(くればぁ製、品名:開き200μm、糸径55μm、厚さ100μm、100メッシュ)を用いた以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、互いに平行に離間した状態で埋没した一対の多孔性補強材層を備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ380μm)を得た。実施例3で作製したイオン透過性隔膜は、中央部4の厚さが120μmであった以外は、実施例1で作製したイオン透過性隔膜と同じ特徴を有していた。
(実施例4)
実施例1で使用したスラリー液および多孔性補強材層を用いて、図5に示す方法によりイオン透過性隔膜を作製した。隔膜の作製にあたり、ガイド12a,12b間の間隔13を450μm、多孔性補強材層の走行速度を0.4m/分、液溜まり11におけるスラリー液の温度を40℃とした。すなわち、走行する一対の多孔性補強材層の間へのスラリー液の注入(スラリー液の塗布一段目)は、実施例1と同様に実施した。そして、スラリー液がそれぞれの多孔性補強材層を透過して当該層の反対側の表面に染み出し、当該表面においてスラリー液の層が形成された後、多孔性補強材層を同じスラリー液の液溜まり14に導入して、スラリー液の塗布二段目を行った。このとき、塗布二段目における多孔性補強材層の走行速度を一段目と同じ0.4m/分、ガイド16a,16b間の間隔15を500μm、液溜まり14におけるスラリー液の温度を40℃とした。
実施例1で使用したスラリー液および多孔性補強材層を用いて、図5に示す方法によりイオン透過性隔膜を作製した。隔膜の作製にあたり、ガイド12a,12b間の間隔13を450μm、多孔性補強材層の走行速度を0.4m/分、液溜まり11におけるスラリー液の温度を40℃とした。すなわち、走行する一対の多孔性補強材層の間へのスラリー液の注入(スラリー液の塗布一段目)は、実施例1と同様に実施した。そして、スラリー液がそれぞれの多孔性補強材層を透過して当該層の反対側の表面に染み出し、当該表面においてスラリー液の層が形成された後、多孔性補強材層を同じスラリー液の液溜まり14に導入して、スラリー液の塗布二段目を行った。このとき、塗布二段目における多孔性補強材層の走行速度を一段目と同じ0.4m/分、ガイド16a,16b間の間隔15を500μm、液溜まり14におけるスラリー液の温度を40℃とした。
このようにして、表層部5a,5bの厚さが実施例1よりも大きい41μmであった以外は、実施例1で作製した隔膜と同じ特徴を有するイオン透過性隔膜(厚さ450μm)を得た。
(比較例1)
多孔性補強材層としてポリフェニレンサルファイドのメッシュ(くればぁ製、品名:開き358μm、糸径150μm、厚さ280μm、50メッシュ)を用い、この多孔性補強材層を1層のみ走行させた以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、1層の多孔性補強材層を内部に備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ410μm)を得た。その主面における平均孔径は2μmであった。
多孔性補強材層としてポリフェニレンサルファイドのメッシュ(くればぁ製、品名:開き358μm、糸径150μm、厚さ280μm、50メッシュ)を用い、この多孔性補強材層を1層のみ走行させた以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、1層の多孔性補強材層を内部に備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ410μm)を得た。その主面における平均孔径は2μmであった。
(比較例2)
多孔性補強材層を1層のみ走行させた以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、1層の多孔性補強材層を内部に備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ410μm)を得た。その主面における平均孔径は2μmであった。
多孔性補強材層を1層のみ走行させた以外は実施例1と同様にして、有機結合材料としてポリスルホンと、親水性無機材料として酸化ジルコニウム粒子とを含み、1層の多孔性補強材層を内部に備えた多孔質のイオン透過性隔膜(厚さ410μm)を得た。その主面における平均孔径は2μmであった。
実施例1〜3および比較例1〜2で作製したイオン透過性隔膜の評価結果を以下の表1に示す。表1における「−」は、未測定を示す。
表1に示すように、実施例で作製したイオン透過性隔膜では、比較例で作製したイオン透過性隔膜に比べて突き刺し強度(すなわち耐短絡性)およびバブルポイント圧が向上した。バブルポイント圧に関しては、作製直後の隔膜および表面を研磨した隔膜のいずれにおいても、実施例では比較例よりも高い値が達成された。一方、電解電圧については、2層の多孔性補強材層を備える実施例の隔膜においても、多孔性補強材層が1層のみである比較例の隔膜と同等の電解電圧を確保できた。また、実施例の隔膜が示す膜抵抗(電気抵抗)についても、多孔性補強材層を2層備えることによる大きな増加は見られなかった。
本発明のイオン透過性隔膜は、従来のイオン透過性隔膜と同様の用途に使用できる。
1 イオン透過性隔膜
2a 第1の多孔性補強材層
2b 第2の多孔性補強材層
3a 一方の(第1の)主面
3b 他方の(第2の)主面
4 (隔膜1の)中央部
5a,5b (隔膜1の)表層部
6 欠陥部
7a,7b リークパス
11 液溜まり
12a,12b ガイド
13 間隔(ギャップ)
14 液溜まり
15 間隔(ギャップ)
16a,16b ガイド
17 スラリー液槽
21 積層体
22a アノード
22b カソード
31 電気化学セル(電解セル)
32 電解質
33 電解槽
101 イオン透過性隔膜
102 多孔性層
103 欠陥部
104 リークパス
2a 第1の多孔性補強材層
2b 第2の多孔性補強材層
3a 一方の(第1の)主面
3b 他方の(第2の)主面
4 (隔膜1の)中央部
5a,5b (隔膜1の)表層部
6 欠陥部
7a,7b リークパス
11 液溜まり
12a,12b ガイド
13 間隔(ギャップ)
14 液溜まり
15 間隔(ギャップ)
16a,16b ガイド
17 スラリー液槽
21 積層体
22a アノード
22b カソード
31 電気化学セル(電解セル)
32 電解質
33 電解槽
101 イオン透過性隔膜
102 多孔性層
103 欠陥部
104 リークパス
Claims (11)
- 親水性無機材料と有機結合材料とから構成される多孔質のイオン透過性隔膜であって、
第1および第2の多孔性補強材層をさらに備え、
前記第1および第2の多孔性補強材層は、前記隔膜の膜厚方向に互いに離間するとともに、それぞれ前記隔膜の一方の主面および他方の主面から前記隔膜に埋没した状態にあるイオン透過性隔膜。 - 前記隔膜における、前記第1および第2の多孔性補強材層の間に位置する中央部の厚さが、当該隔膜の厚さの10%以上である請求項1に記載のイオン透過性隔膜。
- 前記隔膜における、前記第1および第2の多孔性補強材層の間に位置する中央部の厚さが、5μm以上1000μm以下である請求項1または2に記載のイオン透過性隔膜。
- 前記一方の主面と前記第1の多孔性補強材層との距離、および前記他方の主面と前記第2の多孔性補強材層との距離が5μm以上である請求項1〜3のいずれかに記載のイオン透過性隔膜。
- 前記一方の主面および前記他方の主面における平均孔径が0.01μm以上50μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のイオン透過性隔膜。
- 前記第1および第2の多孔性補強材層が、メッシュ、織布、または不織布から構成される請求項1〜5のいずれかに記載のイオン透過性隔膜。
- 前記第1および第2の多孔性補強材層が、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体およびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の材料により構成される請求項1〜6のいずれかに記載のイオン透過性隔膜。
- 前記有機結合材料が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のイオン透過性隔膜。
- 前記親水性無機粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化アンチモンから選ばれる少なくとも1種から構成される請求項1〜8のいずれかに記載のイオン透過性隔膜。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のイオン透過性隔膜と、
前記隔膜を挟持する一対の電極と、を備える電気化学セル。 - 前記一対の電極が、前記隔膜と接した状態で前記隔膜を挟持する請求項10に記載の電気化学セル。
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-
2015
- 2015-12-08 JP JP2015239281A patent/JP2017106056A/ja active Pending
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