JP2020105578A - アルカリ水電解用隔膜 - Google Patents
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Abstract
Description
多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置の測定方法:
(1)隔膜の一方の表面に対し、垂直に切断し、切断面をイオンミリング加工して得られた断面において、走査型電子顕微鏡を用いて、それぞれ幅方向の長さが160μmである、任意の5つの領域を選択する。
(2)各領域について、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、隔膜の一方の表面部分の拡大写真上、隔膜の一方の表面側の、幅方向の中点より左側の領域における多孔性支持体の端部と、幅方向の中点より右側の領域における多孔性支持体の端部とを結び、両端部間の幅方向の長さが120μm以上である直線を基準線Aとする。
(3)(2)の拡大写真上、基準線Aに平行な線を、該隔膜の一方の表面側とは反対側から該隔膜の一方の表面側へ走査した際に、該平行線の長さに対する、該平行線上における空間部分の長さの合計の割合が10%以下である充填部が終結する境界線を充填線Bとする。
(4)基準線Aと充填線Bとの距離Xを算出する。多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置を、平行線の走査方向において、充填線Bが基準線Aの手前であるときは−Xとし、基準線Aを超えるときは+Xとする。
(5)各領域について、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、隔膜の一方の表面とは反対側の表面部分の拡大写真においても、(1)と同様にして任意の5つの領域を選択し、各領域において(2)〜(4)と同様にして基準線A′、充填線B′を求め、基準線A′と充填線B′との距離X′を算出し、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X′又は−X′を決める。
(6)各領域についての多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X又は−Xの平均値、及び、各領域についての多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X′又は−X′の平均値を、それぞれ、各表面での多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置とする。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、多孔性支持体、並びに、該多孔性支持体に有機ポリマー及び無機粒子を含む樹脂組成物を含浸して得られる樹脂組成物層を有し、隔膜の一方の表面では、上記方法で測定される、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置が+20μm以上、+100μm以下であり、隔膜の他方の表面では、該平均位置が−10μm以上、+10μm以下である。
このように、一方の面では、多孔性支持体表面上に実質的に20μm以上、100μm以下の厚みの樹脂組成物層(当該厚みの樹脂組成物層は、基本的に多孔性支持体を含まないことから、単膜層とも言う。)が存在し、他方の面は樹脂組成物層が多孔性支持体の界面付近まで適度に充填されたものとすることにより、いずれの面においても概ね同等のガスの低付着性を発揮できるとともに、単膜層が一方の表面のみに設けられていることで、イオン伝導性とガスバリア性とをバランス良く両立することができる。
また平行線上における空間部分の長さの合計とは、平行線上における空間部分が断続的に2箇所以上ある場合に、これら空間部分の長さを合計することを言う。なお、平行線の長さは、撮影画像で示される範囲内にわたる平行線全体の長さである。
上記の充填部は、拡大写真内で、1つだけ存在していても良いし、2つ以上存在していてもよい。充填部が2つ以上存在する場合、これに対応して充填部が終結する境界線も2つ以上存在することになるが、この場合、充填線Bは、充填部が終結する境界線のうち、基準線Aとの距離が最も近い線とする。
基準線Aと充填線Bを決定し、X値を測定する際の拡大写真の倍率は、適宜選択することができるが、好ましくは300倍以上であり、より好ましくは500倍以上である。また、該倍率は、好ましくは1200倍以下であり、より好ましくは1000倍以下である。
(有機ポリマー)
本発明に係る樹脂組成物は、有機ポリマーを含む。有機ポリマーは、通常、樹脂組成物中で後述の無機粒子を保持する。
上記有機ポリマーとしては、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されないが、アルカリ溶液中で実質的に膨潤しないものがより好ましい。
このような観点から、上記有機ポリマーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリスルホン、ポリスチレン等の芳香族炭化水素系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、更に耐熱性、耐アルカリ性に優れたアルカリ水電解用隔膜とすることができる点で、芳香族炭化水素系樹脂が好ましい。
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることで、得られるアルカリ水電解用隔膜のイオン伝導度が更に高くなり、また、耐アルカリ性が更に高くなることで、アルカリ溶液中で長時間使用した場合の寸法等の安定性により優れたものとなる。
本発明に係る樹脂組成物は、無機粒子を含む。本発明のアルカリ水電解用隔膜は、無機粒子を含むことにより、無機粒子と有機ポリマーとの空隙部分に電解液が満たされて高いイオン伝導性を発揮することができる。また、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、無機粒子を含むことにより親水化し、水の電気分解において発生する酸素ガスや水素ガスが隔膜に付着することによるイオン伝導度の低下を抑制することができる。
上記無機粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記無機粒子としては、天然物であっても合成物であってもよい。また、表面が未処理のものであってもよく、シランカップリング剤、ステアリン酸、オレイン酸、リン酸エステル等により表面処理したものであってもよい。
本明細書中、アスペクト比とは、最長径aと最短径bとの比(a/b)を意味し、無機粒子をSEMで観察し、得られた画像の任意の10粒子において、解析ソフト等を使用して、各粒子の最長径aと最短径bとの比(a/b)を測定し、それらの比の単純平均値をその粒子のアスペクト比として求めることができる。
上記最長径aとしては、例えば、粒子の形状が板状の場合、粒子の板面の長径を採用し、繊維状である場合は、繊維の長さを採用する。また、最長径aの中点を通って最長径と直行する径のうちの最も短い径を最短径bとする。上記最短径bとしては、例えば、粒子の形状が板状の場合は、粒子の厚みを採用し、繊維状である場合は、繊維の太さを採用する。粒子の厚み及び繊維の太さとしては、最長径aの中点における厚み、太さをそれぞれ採用する。
本明細書中、平均粒子径は、無機粒子と0.2質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いて分散処理を行った無機粒子分散液を用いて、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定から求められる体積平均粒子径(d50)である。上記無機粒子の平均粒子径が上述の範囲であると、イオン伝導性、ガスバリア性により優れたアルカリ水電解用隔膜とすることができる。
本明細書中、比表面積は、粉体状の無機粒子について液体窒素を用いたBET法により測定される。アルカリ水電解用隔膜におけるイオンパスは、主に無機粒子の親水性の高い表面により形成されるため、上記無機粒子の比表面積が上述の範囲であると、イオン伝導性により一層優れたアルカリ水電解用隔膜とすることができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、更に、多孔性支持体を有する。上記多孔性支持体は、多孔質であり、イオン透過性を有し、アルカリ水電解用隔膜の支持体となり得る部材である。上記多孔性支持体は、シート状の部材であることが好ましい。
上記多孔性支持体の厚みは、実施例の方法を用いて測定されるものである。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は更に、添加剤成分として、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストラン等の水溶性ポリマー;界面活性剤;グリセリン;糖類等の有機化合物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム等の無機化合物等のその他の成分を含んでいてもよい。
本発明のアルカリ水電解用隔膜におけるその他の成分の含有割合は、隔膜の耐久性の観点から隔膜100質量%中、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは2質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。
上記アルカリ水電解用隔膜の厚みは、実施例の方法を用いて測定されるものである。
上記空隙率は、実施例に記載の方法に従い、測定することができる。
また本発明のアルカリ水電解用隔膜は、一方の面と他方の面で、水中での空気の接触角の差が10°以下であることが好ましく、4°以下であることがより好ましい。
上記水中での空気の接触角は、実施例に記載の方法に従い、測定することができる。
上記イオン伝導度は、実施例に記載の方法に従い、測定することができる。
上記バブルポイント値は、実施例に記載の方法に従い、測定することができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜を製造する方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができるが、アルカリ溶液中での無機成分の溶出が抑制され、更にイオン伝導性、ガスバリア性に優れたアルカリ水電解用隔膜を効率良く製造できる点で、非溶媒誘起相分離法、蒸気誘起相分離法が好ましい。
上記アルカリ水電解隔膜を製造する方法としては、具体的には下記の工程(1)〜(3)を含むことが好ましい。
(1)無機粒子及び溶媒を含む分散液を調製する工程、
(2)上記分散液と上記有機ポリマーを混合して樹脂混合液を調製する工程、及び、
(3)上記樹脂混合液を用いて膜を形成する工程
以下に、各工程について説明する。
上記製造方法では、無機粒子を上記有機ポリマーと混合する場合、無機粒子を固形のまま混合してもよく、無機粒子を溶媒に分散させた分散液(スラリー)を調製してから混合してもよいが、無機粒子を溶媒に分散させた分散液を調製してから混合することが好ましい。無機粒子の分散液を調製してから上記有機ポリマーと混合することで、無機粒子と上記有機ポリマーとをより均一に混合することができ、これにより、無機粒子が上記有機ポリマーによって形成された隔壁内に均一に分布、固定化され、無機成分の溶出がより充分に抑制されたアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。上記分散液には、分散剤を添加しても良い。
上記分散液中の無機粒子の含有量は、20質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。該無機粒子の含有量は、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは45質量%以上である。また、該無機粒子の含有量は、より好ましくは65質量%以下である。このようにすることにより、最終的に得られる膜の中の微細孔の径を制御でき、イオン伝導性とガスバリア性が両立されたアルカリ水電解用隔膜とすることができる。
工程(1)で調製された分散液に上記有機ポリマーを混合する方法としては、分散液と有機ポリマーを充分に混合することができる方法であれば特に限定されず、分散液に有機ポリマーをそのまま混合してもよいし、予め有機ポリマーを溶媒に溶解させた樹脂溶液を調製して、樹脂溶液と分散液とを混合してもよい。中でも、無機粒子と有機ポリマーをより均一に分散・混合できる点で、樹脂溶液を調製して、樹脂溶液と分散液とを混合する方法が好ましい。
上記樹脂溶液を調製する場合に使用する溶媒としては、上記有機ポリマーを溶解する性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。中でも、上記無機粒子と上記有機ポリマーがより均一に分散・混合できる点で、上記分散液の調製に使用した溶媒と同じ溶媒が好ましい。
上記混合する方法としては、工程(1)で記載した混合分散の手段と同様の手段が挙げられる。
工程(2)で得られた樹脂混合液を用いて膜を形成する。
上記膜を形成する方法としては、アルカリ溶液中での無機成分の溶出がより一層抑制されたアルカリ水電解用隔膜を容易に製造することができる点で、下記の工程(3−a)、(3−b)を含むことが好ましい。
(3−a)上記樹脂混合液の塗膜を形成する工程、及び、
(3−b)上記塗膜を非溶媒と接触させることにより上記塗膜を凝固させ、多孔質膜を得る工程
以下に、各工程について説明する。
上記樹脂混合液の塗膜を形成する方法としては、例えば、上記で得られた樹脂混合液を基材上に塗布する方法や、上記樹脂混合液中に基材を浸漬させ、上記樹脂混合液が含浸した基材を得る方法等が挙げられる。中でも、簡便に塗膜を形成できる点で、上記樹脂混合液を基材上に塗布する方法が好ましい。
上記樹脂混合液を基材上に塗布する方法としては、特に限定されず、ダイコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いる方法等の公知の塗布手段を適用することができる。
また、上記基材として上記多孔性支持体を使用し、上記多孔性支持体上に塗膜を形成すると共に、上記樹脂混合液を上記多孔性支持体に含浸させてもよい。
上記樹脂混合液の塗布量としては、特に限定されず、上記隔膜が、上述した効果が発揮できる厚みを有するよう適宜設定すればよい。
上記塗膜を非溶媒と接触させることにより、上記塗膜中に非溶媒が拡散し、非溶媒に溶解しない上記有機ポリマーが凝固する。一方、非溶媒に溶解しうる塗膜中の溶媒は、塗膜から溶出する。このように相分離が生じることにより、上記有機ポリマー(及び無機粒子)が凝固し、本発明のアルカリ水電解用隔膜が形成される。
上記塗膜と非溶媒とを接触させる方法としては、上記塗膜を上記非溶媒中に浸漬させる方法(凝固浴)、上記塗膜を上記非溶媒蒸気雰囲気中に晒す方法等が挙げられる。
上記非溶媒としては、上記有機ポリマーを実質的に溶解しない性質を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、イオン交換水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、中でも経済性と廃液処理の観点からイオン交換水が好ましい。また上記非溶媒には、上述した成分以外に、塗膜中に含まれる溶媒と同様の溶媒を少量含んでいてもよい。
更に、非溶媒を除去するために、前記工程で凝固した塗膜を乾燥させて、隔膜を得てもよい。
上記塗膜の乾燥温度としては、60〜120℃が好ましい。
乾燥時間としては、0.5〜120分が好ましく、1〜60分がより好ましく、1〜30分が更に好ましい。
このように、上述した工程(1)〜(3)により、本発明のアルカリ水電解用隔膜を簡便に製造することができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜を含んで構成されるアルカリ水電解装置も本発明の一つである。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ溶液中で無機成分が溶出しにくいものであり、耐アルカリ性に優れるものである。また、より高いイオン伝導性、より高いガスバリア性を両立する。そのため、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ性水溶液を電解液とした水の電気分解用の隔膜として好適に使用することができる。このような本発明のアルカリ水電解用隔膜を含んで構成されるアルカリ水電解装置は、アルカリ水電解用隔膜にもとづく効果を発揮できる。
上記陽極及び上記陰極としては、特に限定されず、公知の電極を使用できるが、例えばニッケル又はニッケル合金等を含む導電性基体を含むものが挙げられる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜を含むアルカリ水電解装置を用いて行う水の電気分解の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、上述した本発明のアルカリ水電解用隔膜を含むアルカリ水電解装置に、電解液を充填し、電解液中で電流を印加することにより行うことができる。
上記電解液としては、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等の電解質を溶解したアルカリ性水溶液が用いられる。上記電解液における電解質の濃度は、特に限定されないが、電解効率がより一層向上し得る点で、20〜40質量%であることが好ましい。
また、電気分解を行う場合の温度としては、電解液のイオン電導性がより向上し、電解効率がより一層向上し得る点で、50〜120℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。電流の印加条件は、公知の条件・方法で行うことができる。
無機粒子(粉体)と0.2質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を混合し、超音波洗浄機を用いて分散処理を行った無機粒子分散液について、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(商品名:LA−920、堀場製作所社製)を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準の粒度分布におけるメジアン径(d50)を無機粒子の平均粒子径(μm)とした。
無機粒子の比表面積は、BET比表面積計(商品名:Macsorb HM model−1210、マウンテック社製)を用いて測定した。具体的には、測定試料として無機粒子(粉体)をセルに仕込み、セル内に窒素ガスを流通しながら、200℃で脱気処理を行った。脱気処理後、セル内に窒素ガスを流通しながら、セルを液体窒素に浸漬して−196℃の温度下にて測定試料に窒素を吸着させた。次いで、セルを常温下に保ち、脱離する窒素量を測定することでBET法による比表面積を測定した。測定は一試料につき3回行い、その平均値を無機粒子の比表面積(m2/g)とした。
無機粒子(粉体)を走査型電子顕微鏡(FE−SEM、商品名:JSM−7600F、日本電子社製)により倍率2万倍での観察画像を得た。得られた画像の任意の10粒子において、解析ソフト(Image−Pro Premier)を使用して、各粒子の最長径aと最短径bとの比(a/b)を測定し、それらの比の加算平均を算出し、無機粒子のアスペクト比とした。
上記最長径aとしては、例えば、粒子の形状が板状の場合、粒子の板面の長径を採用し、繊維状である場合は、繊維の長さを採用した。また、最長径aの中点を通って最長径と直行する径のうちの最も短い径を最短径bとする。上記最短径bとしては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合は、粒子の厚みを採用し、繊維状である場合は、繊維の太さを採用する。粒子の厚み及び繊維の太さとしては、最長径aの中点における厚み、太さをそれぞれ採用した。
得られた無機粒子分散液0.1質量部を分散媒2質量部により希釈した無機粒子分散液の希釈液について、動的光散乱法による粒度分布測定器(商品名:FPAR−1000、大塚電子社製)を用いて、無機粒子分散液中に分散した無機粒子の粒子径測定を行い、キュムラント法解析により得られた平均粒子径を無機粒子分散液中に分散した無機粒子の平均粒子径とした。
多孔性支持体について、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて、任意の10点を測定し、その平均値を算出し、多孔性支持体の厚みとした。
5箇所の測定箇所について、下記に示す方法により、基準線A、充填線B、基準線Aと充填線Bとの距離であるX値、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X又は−X、及び基準線A′、充填線B′、基準線A′と充填線B′との距離であるX′値、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X′又は−X′を求めた。また、充填線B及び充填線B′との距離より隔膜の厚みTを求めた。なお、位置+X又は−Xの平均値、位置+X′又は−X′の平均値は、それぞれ、5箇所の測定箇所の平均値である。
得られたアルカリ水電解用隔膜の一方の表面に対し、垂直に切断し、切断面をイオンミリング加工して得られた断面のうち、幅の長さが160μmの領域について、走査型電子顕微鏡を用いて800倍の拡大写真を撮影した。視野は隔膜片側の表面から隔膜の全厚の20%以上となるようにした。
得られた拡大写真における多孔性支持体部分のうち、幅方向の中点より左側の領域における隔膜の表面に最も近い点と、該中点より右側の領域における隔膜の表面に最も近い点とを結び、両端部間の幅方向の長さが120μm以上である直線を基準線Aとした。なお、隔膜の表面に最も近い点とは、隔膜の表面が樹脂組成物から構成されている場合、当該表面に最も近い多孔性支持体部分の端部の点であり、隔膜の表面が多孔性支持体部分の端部から構成されている場合、隔膜の表面を構成する多孔性支持体部分の端部が隔膜の表面に最も近い点(隔膜の表面との距離が0)となるため、隔膜の表面を構成する多孔性支持体部分の端部の任意の点である。
基準線Aに平行な線を、基準線Aの表面側とは反対側から基準線Aの表面側へ順に走査した際に、該平行線の長さに対する、該平行線上における空間部分(不織布繊維等の多孔性基材も組成物も無い部分)の長さ合計の割合が10%以下となる充填部が終結する境界線を充填線Bとした。なお、充填部が2つ以上存在する場合、充填線Bは、充填部が終結する境界線のうち、基準線Aとの距離が最も近い線とした。
基準線Aと充填線Bとの距離をX値として、撮影画像から算出した。多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置は、平行線の走査方向において、充填線Bが基準線Aの手前であるとき(膜の内側であるとき)は−X、基準線Aを超えるとき(膜の外側であるとき)は+Xとした。
次に、他方の表面に向けて、厚み方向に撮像視野を移動した後、他方の表面についても、同様にして基準線A′、充填線B′を求め、その距離X′、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X′又は−X′を求めた。
一方の表面での基準線A、充填線B、その間の距離X、基準線Aと充填線Bとの位置関係、及び、他方の表面での、基準線A′、充填線B′、その間の距離X′、基準線A′と充填線B′との位置関係を求めた後、厚み方向に、隔膜の全体が確認できる倍率まで倍率を下げて、基準線B及びB′を判定し、その間の距離を隔膜の厚みTとして、撮影画像から算出した。
得られたアルカリ水電解用隔膜の空隙率は、下記に示す方法により測定された隔膜の実測密度値、及び各々の組成成分の密度値を用いて組成比より算出される計算密度値より、下記式から算出した。
空隙率(%)=[1−(実測密度値)/(計算密度値)]×100
実測密度値は、得られた隔膜の任意の場所から切り出した試験片について、質量と体積を測定し、質量を体積で除すことにより算出した。体積は、試験片の縦方向の長さ、横方向の長さを、ノギスを用いて測定、膜厚を上記膜厚測定方法に基づき測定することにより算出した。また、試験片の質量は、体積を測定した試験片について小数点4桁の精密天秤を用いて測定した。
得られたアルカリ水電解用隔膜の表面における水中での空気の接触角は、該隔膜を23℃の純水に浸漬した後、三態系キット(協和界面科学社製)により、純水中で該隔膜の表面に約2μlの気泡(空気)を付着させ、気泡(空気)を付着させてから30秒後の接触角について、接触角計(固液界面解析装置DropMaster700、協和界面科学社製)を用いて測定した。ここで、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置の測定におけるX値を求めた表面における水中での空気の接触角をCA(X)、X′値を求めた表面における水中での空気の接触角をCA(X′)として、それぞれの接触角を求めた。
以下のセル構成で形成したセルを25℃の恒温槽内で30分静置した後、以下の測定条件で交流インピーダンス測定を行い、得られた切片成分(Ra)と測定サンプルを入れない場合の切片成分(Rb)及び上記膜厚測定方法により得られた膜厚を用いて、下記式によりイオン伝導度を測定点数2点の平均値として算出した。
[イオン伝導度(mS/cm)]=[膜厚(cm)]÷[(Ra−Rb)×1000×1.77]
(測定条件)
・セル構成
作用極:Ni板
対極 :Ni板
電解液:30質量%水酸化カリウム水溶液
サンプル前処理:上記電解液に1晩浸漬
測定有効面積:1.77cm2
・交流インピーダンス測定条件
印加電圧:10mV vs.開回路電圧
周波数領域:100kHz〜100Hz
得られたアルカリ水電解用隔膜について、リキッドポロシメーター(Porous Materials社製)を用いてバブルポイント値を測定した。具体的には、2.5cmφの隔膜をイオン交換水中に室温で1時間浸漬させて十分に湿潤させた後、フッ素系溶剤であるGalwick(Porous Materials社製)を隔膜上に満たした。隔膜に対するガス圧を昇圧させていき、水の液膜が破壊されて、Galwickが膜を透過して天秤でその重量を観測した時点のガス圧をバブルポイント値とした。
バブルポイント値が大きい値である方が、ガス透過の抑制効果が高いことを示す。
水酸化マグネシウム粒子(板状、平均粒子径0.36μm、比表面積:10m2/g、アスペクト比4.7)200質量部、N−メチル−2−ピロリドン(三菱ケミカル社製)150質量部、分散剤としてポリビニルピロリドン5質量部を混合し、ジルコニアビーズを用いてビーズミルにより30分間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを除去することにより、水酸化マグネシウム粒子分散液を得た。得られた水酸化マグネシウム粒子分散液中の水酸化マグネシウム粒子の平均粒子径は280nmであった。
得られた水酸化マグネシウム粒子分散液200質量部、ポリスルホン樹脂(商品名:ウルトラゾーンS3010、BASF社製)を35質量%の濃度で80〜100℃にてN−メチル−2−ピロリドン(三菱ケミカル社製)に熱溶解させることにより得られたポリスルホン樹脂溶液100質量部を計り取り、自転公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎ARE−500、シンキー社製)を用いて、室温にて、回転数1000min−1で約10分間混合した後、ろ過を行い、成膜用組成物を得た。
水酸化マグネシウム粒子(板状、平均粒子径0.36μm、比表面積:10m2/g、アスペクト比4.7)200質量部、N−メチル−2−ピロリドン(三菱ケミカル社製)150質量部、分散剤としてポリビニルピロリドン5質量部を混合し、ジルコニアビーズを用いてビーズミルにより30分間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを除去することにより、水酸化マグネシウム粒子分散液を得た。得られた水酸化マグネシウム粒子分散液中の水酸化マグネシウム粒子の平均粒子径は280nmであった。
得られた水酸化マグネシウム粒子分散液200質量部、ポリスルホン樹脂(商品名:ウルトラゾーンS3010、BASF社製)を35質量%の濃度で80〜100℃にてN−メチル−2−ピロリドン(三菱ケミカル社製)に熱溶解させることにより得られたポリスルホン樹脂溶液100質量部、N−メチル−2−ピロリドン(三菱ケミカル社製)45質量部を計り取り、自転公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎ARE−500、シンキー社製)を用いて、室温にて、回転数1000min−1で約10分間混合した後、ろ過を行い、成膜用組成物を得た。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケーターにて調製例1で得られた成膜用組成物を秤量値が22mg/cm2になるように塗布し、その上にポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布(目付:100g/m2、厚み:205μm)を接触させることで、不織布に成膜用組成物を完全に含浸させた。その後、成膜用組成物を含浸させた不織布を、室温にて10分間水浴させることで塗布膜を凝固させた後、水中でPETフィルムから不織布ごと塗布膜を剥離することにより、水酸化マグネシウム粒子、ポリスルホン樹脂及び不織布からなる含水膜を得た。得られた膜を、乾燥機にて80℃で30分間乾燥し、アルカリ水電解用隔膜を得た。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケーターに調製例2で得られた成膜用組成物を秤量値が28mg/cm2になるように塗布し、その上にポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布(目付:100g/m2、厚み:205μm)を接触させることで、不織布に成膜用組成物を完全に含浸させた。その後、成膜用組成物を含浸させた不織布を、室温にて10分間水浴させることで塗布膜を凝固させた後、水中でPETフィルムから不織布ごと塗布膜を剥離することにより、水酸化マグネシウム粒子、ポリスルホン樹脂及び不織布からなる含水膜を得た。得られた膜を、乾燥機にて80℃で30分間乾燥し、アルカリ水電解用隔膜を得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜の厚みTは249μm、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置Xの平均値は+3μm、X′の平均値は+38μm、空隙率は49%、水中での空気の接触角CA(X)は158°、CA(X′)は162°、イオン伝導度は145mS/cm、バブルポイント値は650kPaであった。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケーターにて調製例1で得られた成膜用組成物を秤量値が24mg/cm2になるように塗布し、その上にポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布(目付:100g/m2、厚み:205μm)を接触させ、直後に、室温にて水浴させ、そのまま室温にて10分間水浴させることで塗布膜を凝固させた。その後、水中でPETフィルムから不織布ごと塗布膜を剥離することにより、水酸化マグネシウム粒子、ポリスルホン樹脂及び不織布からなる含水膜を得た。得られた膜を、乾燥機にて80℃で30分間乾燥し、アルカリ水電解用隔膜を得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜の厚みTは256μm、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置Xの平均値は−18μm、X′の平均値は+52μm、空隙率は55%、水中での空気の接触角CA(X)は140°、CA(X′)は159°、イオン伝導度は120mS/cm、バブルポイント値は270kPaであった。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケーターにて調製例2で得られた成膜用組成物を秤量値が26mg/cm2になるように塗布し、その上に樹脂組成物層を上側にして比較例1で得られたアルカリ水電解用隔膜を接触させ、成膜用組成物を含浸させた。その後、成膜用組成物を含浸させた隔膜を、室温にて10分間水浴させることで塗布膜を凝固させた後、水中でPETフィルムから不織布ごと塗布膜を剥離して得られた水酸化マグネシウム粒子、ポリスルホン樹脂及び不織布からなる含水膜を、乾燥機にて80℃で30分間乾燥することにより、両面に水酸化マグネシウム粒子とポリスルホン樹脂からなる層を有するアルカリ水電解用隔膜を得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜の厚みTは264μm、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置Xの平均値は+25μm、X′の平均値は+45μm、空隙率は53%、水中での空気の接触角CA(X)は152°、CA(X′)は156°、イオン伝導度は56mS/cm、バブルポイント値は460kPaであった。
また、実施例1、2のアルカリ水電解用隔膜では、他方の表面において、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置が+10μmよりも膜の外側となるように調製した比較例2のアルカリ水電解用隔膜との比較において、隔膜の両表面での接触角及びバブルポイント値から、隔膜両面のガス付着性は同等であるものの、ガス透過の抑制効果やイオン伝導性がより高い隔膜となることが認められた。
なお、比較例2のアルカリ水電解用隔膜は、実質的に両面に単膜層が形成されているものであるのに、実施例1、2と比べてガスバリア性が低くなった理由としては、以下の理由が考えられる。すなわち、比較例2の隔膜は、比較例1で得られたアルカリ水電解用隔膜を基材としているので、一度凝固したポリスルホンが、塗料と接触することで一部再溶解する。従って、比較例2では、元の塗料のポリスルホンの凝固と再溶解したポリスルホンの凝固が起こるが、ポリスルホンが再溶解した部分では、元々形成されていた微細構造が一度破壊され、微細構造により形成されていた細孔の径が変化した(結果から推察するに、大きくなった)ことによる影響が考えられる。
Claims (2)
- アルカリ水電解に用いられる隔膜であって、
該隔膜は、多孔性支持体、並びに、該多孔性支持体に有機ポリマー及び無機粒子を含む樹脂組成物を含浸して得られる樹脂組成物層を有し、隔膜の一方の表面では、下記方法で測定される、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置が+20μm以上、+100μm以下であり、隔膜の他方の表面では、該平均位置が−10μm以上、+10μm以下であることを特徴とするアルカリ水電解用隔膜。
多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置の測定方法:
(1)隔膜の一方の表面に対し、垂直に切断し、切断面をイオンミリング加工して得られた断面において、走査型電子顕微鏡を用いて、それぞれ幅方向の長さが160μmである、任意の5つの領域を選択する。
(2)各領域について、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、隔膜の一方の表面部分の拡大写真上、隔膜の一方の表面側の、幅方向の中点より左側の領域における多孔性支持体の端部と、幅方向の中点より右側の領域における多孔性支持体の端部とを結び、両端部間の幅方向の長さが120μm以上である直線を基準線Aとする。
(3)(2)の拡大写真上、基準線Aに平行な線を、該隔膜の一方の表面側とは反対側から該隔膜の一方の表面側へ走査した際に、該平行線の長さに対する、該平行線上における空間部分の長さの合計の割合が10%以下である充填部が終結する境界線を充填線Bとする。
(4)基準線Aと充填線Bとの距離Xを算出する。多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置を、平行線の走査方向において、充填線Bが基準線Aの手前であるときは−Xとし、基準線Aを超えるときは+Xとする。
(5)各領域について、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、隔膜の一方の表面とは反対側の表面部分の拡大写真においても、(1)と同様にして任意の5つの領域を選択し、各領域において(2)〜(4)と同様にして基準線A′、充填線B′を求め、基準線A′と充填線B′との距離X′を算出し、多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X′又は−X′を決める。
(6)各領域についての多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X又は−Xの平均値、及び、各領域についての多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の位置+X′又は−X′の平均値を、それぞれ、各表面での多孔性支持体表面を基準とした樹脂組成物層表面の平均位置とする。 - 請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜を含んで構成されることを特徴とするアルカリ水電解装置。
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