JP2017095893A - 防護柵 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワイヤロープ等の索体又は、金網等の網体を用いた防護柵であって、より衝突エネルギーの分散や吸収能力が高い防護柵の提供。【解決手段】複数の支柱(端末支柱111、中間支柱112)と、当該支柱間に設けられる索体131(又は網体141)と、を備える防護柵1であって、端末支柱111に対して摩擦力をもって摺動するブラケット材134を備え、当該ブラケット材134に索体131(又は網体141)を取り付ける。【選択図】図1

Description

本発明は、索体又は網体を用いた防護柵に関する。
対象物を所定領域に留め置くための防護柵として、ワイヤロープ等の索体を用いた防護柵や、金網等の網体を用いた防護柵(或いは索体及び網体の両方を用いた防護柵)が利用されている。
索体や網体を用いた防護柵には、例えば、傾斜地等において道路や家屋等を落石等から保護するために、保護対象である道路や家屋等より斜面側に設置される防護柵(落石防護柵)や、道路に設置されて車両の飛び出し等を抑止する道路防護柵などがある。
このような索体(又は網体)を用いた防護柵に関し、落石防護柵に関する従来技術が、特許文献1によって開示されおり、道路防護柵に関する従来技術が、特許文献2によって開示されている。
特開2008−150867号公報 特開2012−184594号公報
ワイヤロープ等の索体(又は網体)を用いた防護柵は、索体(又は網体)のもつ柔軟性に基づき衝突エネルギーを分散、吸収し、対象物(落石や車両など)を所定領域に留め置く機能を有する。
しかし、従来の、索体(又は網体)を用いた防護柵は、索体(又は網体)が支柱に剛結されているものであり、この索体(又は網体)と支柱の固定部分においては、衝突エネルギーの分散や吸収能力を有していないものであった。
本発明は、上記の点に鑑み、ワイヤロープ等の索体又は金網等の網体を用いた防護柵であって、より衝突エネルギーの分散や吸収能力が高い防護柵を提供することを目的とする。
(構成1)
複数の支柱と、前記支柱間に設けられる索体又は網体と、を備える防護柵であって、前記索体又は前記網体が前記支柱に固定させずに取り付けられていることを特徴とする防護柵。
(構成2)
前記支柱に対して摩擦力をもって摺動するブラケット材を備え、当該ブラケット材に前記索体又は前記網体が取り付けられていることを特徴とする構成1に記載の防護柵。
(構成3)
前記ブラケット材と前記支柱の間の摩擦力を調節する調節機構を備えることを特徴とする構成2に記載の防護柵。
(構成4)
前記支柱に、前記ブラケット材の移動範囲を制限するブラケットストッパーが設けられていることを特徴とする構成2又は構成3に記載の防護柵。
(構成5)
前記支柱間に設けられ、前記支柱間の間隔を保持するサポート材を備えることを特徴とする構成1から構成4の何れかに記載の防護柵。
(構成6)
前記支柱に対して回動させて取り付け可能なサポート用ブラケット材を備え、当該サポート用ブラケット材に前記サポート材が取り付けられていることを特徴とする構成5に記載の防護柵。
(構成7)
前記サポート用ブラケット材が、前記支柱に略直交する軸部材を備え、当該軸部材に対して前記サポート材が軸着されていることを特徴とする構成6に記載の防護柵。
(構成8)
前記サポート材が、前記支柱の上端付近に取り付けられていることを特徴とする構成5から構成7の何れかに記載の防護柵。
(構成9)
地中に埋設される鞘管を備え、前記支柱が前記鞘管に挿通されていることを特徴とする構成1から構成8の何れかに記載の防護柵。
(構成10)
前記支柱が、鋼管によって構成されることを特徴とする構成1から構成9の何れかに記載の防護柵。
(構成11)
前記鋼管の内部に充填剤が充填されていることを特徴とする構成10に記載の防護柵。
(構成12)
前記支柱が、両端部において立設されている端末支柱と、前記端末支柱間に設けられている中間支柱を有し、前記索体間の間隔を保持する間隔保持材を備えることを特徴とする構成1から構成11の何れかに記載の防護柵。
本発明の防護柵によれば、索体(又は網体)が支柱に固定させずに取り付けられるため、索体(又は網体)と支柱の取り付け部分においても衝突エネルギーの分散や吸収能力を有することができ、衝突エネルギーの分散や吸収能力がより高い防護柵を提供することができる。
本発明に係る防護柵を示す図 支柱(端末支柱、中間支柱)を示す図 支柱に備えられるストッパーを示す図 端末支柱付近を拡大した図 ブラケット材を示す図 サポート材を示す図 サポート用ブラケット材を示す図
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
図1は、本発明に係る実施形態の防護柵を示す図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)が正面図である。
本実施形態の防護柵1は、傾斜地等において、道路や家屋等を落石等から保護するために、保護対象である道路や家屋等より斜面側に設けられる落石防護柵である。
図1に示されるように、防護柵1は、両端部において立設される端末支柱111と、端末支柱111の間に設けられる1本若しくは複数の中間支柱112と、各支柱を受け入れて支持するために地中に埋設される鞘管113と、各支柱の間(端末支柱111の間、若しくは、端末支柱111と中間支柱112の間、中間支柱112の間)において設けられる複数の索体131と、各支柱の間隔を保持するサポート材121と、を備える。
また、各支柱の間(端末支柱111の間、若しくは、端末支柱111と中間支柱112の間、中間支柱112の間)において設けられる網体141や、防護柵の下端(地面との間)部分をカバーする下部網体142を備え、各索体131の間隔を保持するための間隔保持材151などを備える。
図2は、端末支柱111と中間支柱112を示す図であり、図2(a1)は端末支柱111の正面図、図2(a2)は端末支柱111の側面図、図2(b1)は中間支柱112の正面図、図2(b2)は中間支柱112の側面図である。
本実施形態の端末支柱111と中間支柱112は、何れも鋼管によって形成され、施工時には、内部に充填剤(モルタル)が充填される。また、端末支柱111と中間支柱112に充填剤を充填する場合には、これらの支柱を支える鞘管113にも充填剤が充填される。
図2(a1)、(a2)に示されるように、端末支柱111は、サポート用ストッパー114と、複数のブラケットストッパー115と、底部用ストッパー116と、を備える。
ブラケットストッパー115は、図3に示されるように、内径が端末支柱111の外形と略同一かやや大きいリング状に形成され、これが鋼管である端末支柱111に挿通されて、それぞれ所定の位置で固着(溶接等)される。ブラケットストッパー115は、後に説明する各索体131が取り付けられるブラケット材134を下から支持するものであり、従って、索体131と同じ数だけ設けられる。
なお、本実施形態ではサポート用ストッパー114及び底部用ストッパー116も、ブラケットストッパー115(図3)と同様の構成である。
サポート用ストッパー114は、端末支柱111に挿通されて上端付近に固着(溶接等)され、後に説明するサポート材121が取り付けられるサポート用ブラケット材122を下から支持するものである。
底部用ストッパー116は、端末支柱111を鞘管113に入れて立てる際に、鞘管113に突きあたって支持するためのものである。
このように、本実施形態の端末支柱111は、鋼管に対して各ストッパーが溶接等によって固着されており、地中に埋設される鞘管113に挿通されて立設されるものである。
図2(b1)、(b2)に示されるように、中間支柱112は、サポート用ストッパー114と、複数の索体支持フック117と、底部用ストッパー116と、を備える。
サポート用ストッパー114と、底部用ストッパー116は、端末支柱111に取り付けられるものと同様である。
索体支持フック117は、索体131が挿通されてこれを摺動可能に支持するためのものであり、U字状のフックが固着(溶接等)されることで形成される。
中間支柱112も端末支柱111と同様に、鋼管に対して各ストッパーや支持フックが溶接等によって固着されており、地中に埋設される鞘管113に挿通されて立設されるものである。
従って、鞘管113は地中に埋設されてその上部側において端末支柱111及び中間支柱112を内部に挿通・支持できる内径を有しており、防護柵として必要な強度(仕様による)が得られる長さ(深さ)を有するものである。
図4は、防護柵1の一端側(端末支柱111付近)を示す図である。
同図に示されるように、各索体131は、巻付グリップ132とターンバックル133を介して、ブラケット材134に接続される。各ブラケット材134は、端末支柱111に対して取り付けられる。また、各索体131は中間支柱112の索体支持フック117に挿通され、各支柱間において、間隔保持材151が取り付けられる(図1参照)。
これらにより、各索体131が各支柱(端末支柱111、中間支柱112)に支持され、各索体131間の間隔が間隔保持材151によって保持される。
図5は、ブラケット材134を示す図である。
図5(b)に示されるように、それぞれ半月状の部材134Aと134Bとを合わせてボルト134Dにて締結することで、端末支柱111への取り付け及び、索体131(ターンバックル133)の接続が行われるものである。
半月状の部材134Bは、図5(a1)の上面図と図5(a2)の正面図に示されるように、中央付近が半円状にかつ両端部分がフランジ状となるように鋼板を曲げ加工することによって形成され、両端のフランジ部分にボルト134Dを挿通させるための孔h1、h2が形成される。また、後に説明する丸棒144を挿通するためのU字フック134Cが、半円状部分の側面に固着(溶接等)される。
なお、半月状の部材134Aは、U字フック134Cが無いだけで、それ以外は半月状の部材134Bと同様のものである。
本実施形態のブラケット材134は、その内径が、端末支柱111の外形と同等若しくは少し大きく形成されている。即ち、ボルト134Dによって、索体131(ターンバックル133)を接続しつつ、端末支柱111への取り付けをした際に、ブラケット材134が端末支柱111の所定の位置にがっちりと締結されるものではなく(固定させずに取り付けられ)、上下に摺動させることができるものである。
防護柵1の他端側の端末支柱111においても、同様に、端末支柱111に対して固定させずに取り付けられるブラケット材134によって、索体131が取り付けられる。なお、本実施形態においては、他端側では、ターンバックル133を用いずに、巻付グリップ132をブラケット材134に取り付けるものを例としている(図1参照)。巻付グリップ132やターンバックル133は、索体131の端末加工等の一例であり、これらに限るものではない(ブラケット材134に索体131を取り付けることができ、所定の張力で索体131を張ることができるものであればよい)。
図6は、サポート材121を示す図であり、図6(a1)は正面図、図6(a2)は上面図である。
サポート材121は、各支柱(端末支柱111、中間支柱112)の間隔を保持するものであり、本実施形態では鋼管で形成される。本実施形態のサポート材121は、図6に示されるように、その両端部分に孔h3、h4が形成され、ボルトを挿通可能とされる。
図7は、サポート用ブラケット材122と123を示す図であり、図7(a1)はサポート用ブラケット材122の上面図、図7(a2)はサポート用ブラケット材122の正面図、図7(b1)はサポート用ブラケット材123の上面図、図2(b2)はサポート用ブラケット材123の正面図である。
サポート用ブラケット材122は、端末支柱111に対してサポート材121を取り付けるための部材であり、図7(a1)、(a2)に示されるように、U字状に曲げ加工された鋼板の内側に、円弧状に曲げ加工された鋼板122Aが固着(溶接等)されることによって、内径が端末支柱111と略同一若しくは少し大きい支柱挿通部が構成され、U字状の両端部側面において長穴h5が形成される。
サポート用ブラケット材123は、中間支柱112に対してサポート材121を取り付けるための部材であり、基本的にはサポート用ブラケット材122と同様の構成であるが、図7(b2)に示されるように、U字状の底部分であって円弧状に曲げ加工された鋼板123Aが固着される箇所(支柱挿通部)の厚さが半分に形成される。中間支柱112では、両側からサポート材121が取り付けられるため、中間支柱112に取り付ける部分である支柱挿通部の厚さを半分にしているものである(図1参照)。
サポート用ブラケット材122、123の長穴h5、h6及びサポート材121の孔h3、h4にボルト(図示せず)を通すことによって、サポート材121がサポート用ブラケット材122、123に取り付けられ、端末支柱111、中間支柱112に対してそれぞれ支柱挿通部を通すことによって各支柱に取り付けられる。
図7から理解されるように、サポート用ブラケット材122、123は、それぞれ端末支柱111、中間支柱112に対して回動させて取り付けることが可能である。
また、サポート用ブラケット材122、123にサポート材121を取り付けるための図示しないボルト(軸部材)によって、軸着される。このボルト(軸部材)は、各支柱に対して略直交する軸となるため、サポート材121は、各支柱に対して略直交する軸に軸着されることとなる。
これらにより、サポート材121は、各支柱に対して、その軸回り及びこれと直交する軸回りの双方について回動させて取り付けることが可能であり、多様な設置環境に適した施工を容易に行うことができる。即ち、防護柵1が設置される環境は山間部等が多いため、図1に略示されるような水平面上に一直線状の柵を設置できることは稀で、上下方向にも水平方向にも蛇行して設置しなければならない場合が多い。サポート材121は鋼管等の直線状の部材であるが、上記構成のサポート用ブラケット材122、123を介して各支柱に取り付けることにより、“上下方向にも水平方向にも蛇行”に対応することができ、施工性も優れるものである。
図1や図4では、図の見易さの観点から、網体141を部分的にのみ表示しているが、網体141は防護柵1に全面的に設けられるものである。
網体141は、その上端側において、サポート材121に吊リング143によって保持される吊板145によって吊られ、且つ、その両端部において、各ブラケット材134のU字フック134Cに挿通される丸棒144に取り付けられる。これによって、網体141は防護柵1に全面的に設けられ、比較的小さな落石なども捕捉するものである。
なお、網体141も、上記のごとくその両端において、丸棒144を介して各ブラケット材134に対して取り付けられることとなるため、端末支柱111に対して、固定されずに取り付けられるものである。
以上の構成を有する本実施形態の防護柵1によれば、索体131(及び網体141)が端末支柱111に対して固定させずに取り付けられるため、索体や網体と支柱の取り付け部分においても衝突エネルギーの分散や吸収能力を有することができ、衝突エネルギーの分散や吸収能力がより高い防護柵を提供することができる。
従来、索体(又は網体)は端末支柱等に対して固定して取り付けられており、落石等によるエネルギーが索体(又は網体)から支柱に直接的に加わるもの(支柱への曲げモーメントとして働くもの)であった。これに対し、本実施形態の防護柵1によれば、端末支柱111に対して摺動可能なブラケット材134を介して索体131(及び網体141)が取り付けられているため、索体131(及び網体141)から伝わる落石等による衝突エネルギーを、ブラケット材134と端末支柱111の間の摩擦エネルギーとして消費させることができる。これによって支柱に加わる曲げモーメントや索体や網体に加わる張力を低減することができ、防護柵全体としての緩衝能力を向上することができるものである。
本実施形態では、ブラケット材134の内径が、端末支柱111の外形と同等若しくは少し大きく形成されているものを例としている。即ち、フリーの状態(索体131に張力が無い状態)では、端末支柱111とブラケット材134の間に摩擦力はあまり生じず、上下方向にほとんど抵抗なくスライドさせることができるものであるが、落石等を受けた状態では、索体131や網体141に生じる張力に基づき端末支柱111とブラケット材134が密接し、これらの間に摩擦力が生じるものである。
なお、端末支柱111とブラケット材134の間に予め所定の摩擦力を生じさせておくものとしても良いし、摩擦力調節用の調節機構を備えさせてもよい。
例えば、ブラケット材134について、ボルト134Dの締付けに伴い、その内径が端末支柱111の外形と同等以下となるような構成としておくことにより、端末支柱111への取り付け時に端末支柱111とブラケット材134の間に所定の摩擦力を生じさせておく(調節する)ものであってもよい。
また、ブラケット材134の側面にネジ穴を形成し、ここにボルトをねじ込んでボルト先端と支柱が当接する構成とし、ボルトのねじ込み具合(支柱との密着具合)を調節することで、端末支柱111への取り付け時に端末支柱111とブラケット材134の間に所定の摩擦力を生じさせておく(調節する)もの等であってもよいし、ブラケット材134の内面側に(又は支柱の外面に)、摩擦力発生(又は調整)部材(たとえばゴムなど)を備えさせるようなものであってもよい。
ただし、何れの場合にも、ブラケット材を支柱の所定の位置に固定させる(想定される衝突エネルギーが加わった際に、ブラケット材が動かない)ものではない。
本実施形態の防護柵1によれば、各支柱間の間隔を保持するサポート材121を備えることにより、従来必要だったサポート支柱を不要とすることができる。
索体を用いた防護柵においては、索体の張力によって端末支柱に曲げ応力がかかる状態となるため、これをサポートするためのサポート支柱(例えば、特許文献1の図3の11a)を設けるのが通常である。このようなサポート支柱に対しても基礎が必要であり、本実施形態のような鞘管方式の場合、サポート支柱に対する鞘管も必要となり、コスト・工期の面等で不利である。
これに対し、本実施形態の防護柵1によれば、サポート材121によって、端末支柱にかかる曲げ応力に対するサポートをすることができ、その施工性は良好であり、コスト低減も可能である。
本実施形態では、各支柱及び鞘管に充填剤を充填するものを例としているが、各支柱及び鞘管に充填剤を充填しないものであってもよい。この場合、鞘管113を地中に埋め込み、これに対して各支柱を立設させるものであるため、大きな落石等により、防護柵1が破損して交換等が必要となった場合等において、上物(各支柱や索体等)を入れ替えるだけで対応可能となるため、作業性に優れる。
本実施形態では、ブラケット材134を端末支柱111に設け、中間支柱112では索体支持フック117によって索体131を保持するものを例としているが、中間支柱112においても、中間支柱112に対して摺動可能なブラケット材を用いて、索体131や網体141を保持させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、ブラケット材134の下端を支持するブラケットストッパー115を端末支柱111に設けるものを例としているが、ブラケットストッパー115を設けないものであってもよい。
即ち、前述のように、端末支柱111とブラケット材134の間に予め所定の摩擦力を生じさせて取り付ける構成とした場合には、必ずしもブラケットストッパー115は必要ない。ただし、ブラケットストッパー115があった方が、端末支柱111にブラケット材134を取り付ける際の施工性は良い。
なお、ブラケットストッパー115は、ブラケット材134の下端を支持するという機能だけではなく、各ブラケット材134(即ち、各索体131)が上下に動く範囲を制限するという機能も有している。
即ち、ブラケットストッパー115が無い場合、落石等の衝突時に、各ブラケット材134(即ち、各索体131)が上下に動く範囲の制限が無くなることとなる。このような場合、「ブラケット材134と端末支柱111の間の摩擦による衝突エネルギーの吸収」という面では有利であるが、各索体131が動き過ぎることによる落石等の捕捉能力の低下(すき間が大きくなることによる落石のすり抜けの発生)を招く恐れもある。よって、ブラケットストッパー115を削除する場合において、これを全て削除するのではなく、例えば複数段おきに削除するようにしてもよい(求められる能力や、間隔保持材との兼ね合い等に応じて適宜定めればよい)。
本実施形態では、各ストッパーについて図3に示したものを例としているが、これに限られるものではなく、それぞれストッパーとして機能するものであればよい(サポート用ストッパー114、ブラケットストッパー115、底部用ストッパー116が同一の形状である必要もない)。
本実施形態では、サポート材121が各支柱の上端付近に取り付けられるものを例としているが、これに限るものではなく、任意の高さに取り付けるものであってよい(下端を除く)。ただし、上端付近に取り付けるものが施工性の面でも能力の面でも優れている。
また、サポート材121は1スパン(支柱間)に1本に限定されるものではなく、複数設けられるものであっても構わない。
本実施形態では、各支柱やサポート材が鋼管で形成されるものを例としているがこれに限られるものではなく、任意の部材(例えばH型鋼)で形成するものであってよい。即ち、支柱に対して摺動可能にブラケット材を取り付け可能なものであればよい。
本実施形態では、中間支柱を備えることにより複数スパンが連続している防護柵を例としているが、中間支柱を備えない1スパンのみのもの(これを連続的若しくは断続的に設置するもの)であってもよい。
また、本実施形態では、落石防護用のものを例としているが、ワイヤロープ等の索体を用いた防護柵であれば落石防護用以外のもの(例えば、道路に設置されて車両の飛び出し等を抑止する道路防護柵など)にも適用することができる。
また、本実施形態では、索体131及び網体141の双方が端末支柱111に対して固定されずに取り付けられるものを例として説明したが、何れか一方のみが端末支柱111に対して固定されずに取り付けられるものであってもよい(そもそも、索体131又は網体141の何れかを備えないものであってよい)。
<実験例>
本発明に係る防護柵について、実際の落石を模擬した衝撃荷重を加える実験を行った。
実験に使用した防護柵は、実施形態で説明した防護柵において1スパンのみとしたもの、即ち、中間支柱無しのものである。端末支柱間の間隔は6mで、等間隔に3本の間隔保持材(断面が4.5×6.5mmの鋼板)を設けた。また、柵高は2.5mで、等間隔に8本の索体(下記ロープ)を設けた。
各部材の規格は以下の表1の通りである。
Figure 2017095893
衝撃荷重は上記重錘を所定の速度で防護柵に衝突させることにより与えた。具体的には、30kJ,50kJ,100kJ相当の衝突エネルギーを与えるため、それぞれ、8.74m/s,11.42m/s,16.47m/sの速度で上記重錘を防護柵に衝突させた。
実験結果を下記の表2に示す。
Figure 2017095893
ケースNo.1は、サポート材として、直径が89.1mm、厚さが3.2mmの鋼管を使用した。
ケースNo.1では、目標エネルギー30kJに対して32kJのエネルギーであった。実験を録画した動画から計測した衝突時の最大張出量は0.8mであった。
上から6段目の索体(重錘が衝突した高さ付近の索体)の発生張力が最大となり、87kNの張力が確認された。
重錘は防護柵によって捕捉され、上記仕様の防護柵は可能吸収エネルギー30kJを保持していると判断される。
ケースNo.2は、サポート材として、直径が89.1mm、厚さが3.2mmの鋼管を使用した。
ケースNo.2では、目標エネルギー50kJに対して54kJのエネルギーであった。実験を録画した動画から計測した衝突時の最大張出量は1.1mであった。
上から5段目の索体(重錘が衝突した高さ付近の索体)の発生張力が最大となり、81kNの張力が確認された。
重錘は防護柵によって捕捉され、上記仕様の防護柵は可能吸収エネルギー50kJを保持していると判断される。
ケースNo.3は、サポート材として、直径が89.1mm、厚さが3.2mmの鋼管を使用した。
ケースNo.3では、目標エネルギー100kJに対して112kJのエネルギーであった。実験を録画した動画から計測した衝突時の最大張出量は2.0mであった。
上から4段目の索体(重錘が衝突した高さ付近の索体)の発生張力が最大となり、77kNの張力が確認された。
重錘は防護柵によって捕捉され、上記仕様の防護柵は可能吸収エネルギー100kJを保持していると判断される。
ケースNo.4は、No.3に対して、サポート材の規格をアップしたものであり、直径が114.3mm、厚さが4.5mmの鋼管を使用した。
ケースNo.4においてもケースNo.3と同様に112kJのエネルギーを与えた。
実験を録画した動画から計測した衝突時の最大張出量は1.7mであった。上から5段目の索体(重錘が衝突した高さ付近の索体)の発生張力が最大であり、72kNの張力が確認された。
重錘は捕捉され、この構造でも100kJの可能吸収エネルギーの確認ができた。ケースNo.3の条件からサポート材の規格をアップさせての実験であり、ケースNo.3と比較してサポート材の破損が軽減された。
ケースNo.1(30kJ相当)、No.2(50kJ相当)では、比較的衝突エネルギーが小さく、支柱の曲がり(残留傾斜)もあまりなかった。即ち、索体、金網、サポート材(サポート材には曲がりが見られた)によって十分にエネルギーが吸収されたと考えられる。
これに対し、ケースNo.3,4(100kJ相当)では、衝突エネルギーが大きく、支柱にも曲がり(残留傾斜)が見られたが、ケースNo.3,4における索体で計測された最大張力はそれぞれ77kN,72kNであり、ケースNo.1,2(30,50kJ相当)における索体で計測された最大張力87kN,81kNよりも小さかった。
これは、ブラケット材が支柱に固定されていないことにより、支柱の曲がりに伴いブラケット材が支柱と摩擦しながらスライドすることで、この部分での緩衝機能が追加的に発揮され、索体にかかる張力が低減されたものと考えられる。
なお、今回の実験では、重錘をほぼ水平に衝突させたため、ブラケット材のスライドが起こり難い条件であった。即ち、ケースNo.1,2のように比較的衝突エネルギーが小さく、索体、金網、サポート材によってエネルギーが吸収され、支柱が垂直状態を維持する場合には、ブラケット材のスライド方向と、力のかかる方向がほぼ直角となり、ブラケット材のスライドが起こり難い。
これに対し、実際の落石では、その衝突方向は様々であり、その衝突ベクトルに支柱に沿った成分が少なからず含まれているのが通常である。従って、このような落石の衝突ベクトルが有する“支柱に沿った成分”に基づいて、ブラケット材のスライドが誘起され、これによる緩衝機能が発揮される(ケースNo.1,2のように比較的衝突エネルギーが小さい場合においても、ブラケット材のスライドによる緩衝機能が発揮され得る)。
以上のごとく、本発明によれば、衝突エネルギーの分散や吸収能力がより高い防護柵が得られることが理解される。
1...防護柵
111...端末支柱
112...中間支柱
113...鞘管
115...ブラケットストッパー
121...サポート材
122、123...サポート用ブラケット材
131...索体
134...ブラケット材
141...網体
151...間隔保持材

Claims (12)

  1. 複数の支柱と、前記支柱間に設けられる索体又は網体と、を備える防護柵であって、
    前記索体又は前記網体が前記支柱に固定させずに取り付けられていることを特徴とする防護柵。
  2. 前記支柱に対して摩擦力をもって摺動するブラケット材を備え、当該ブラケット材に前記索体又は前記網体が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の防護柵。
  3. 前記ブラケット材と前記支柱の間の摩擦力を調節する調節機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の防護柵。
  4. 前記支柱に、前記ブラケット材の移動範囲を制限するブラケットストッパーが設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の防護柵。
  5. 前記支柱間に設けられ、前記支柱間の間隔を保持するサポート材を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の防護柵。
  6. 前記支柱に対して回動させて取り付け可能なサポート用ブラケット材を備え、当該サポート用ブラケット材に前記サポート材が取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の防護柵。
  7. 前記サポート用ブラケット材が、前記支柱に略直交する軸部材を備え、当該軸部材に対して前記サポート材が軸着されていることを特徴とする請求項6に記載の防護柵。
  8. 前記サポート材が、前記支柱の上端付近に取り付けられていることを特徴とする請求項5から請求項7の何れかに記載の防護柵。
  9. 地中に埋設される鞘管を備え、前記支柱が前記鞘管に挿通されていることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の防護柵。
  10. 前記支柱が、鋼管によって構成されることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の防護柵。
  11. 前記鋼管の内部に充填剤が充填されていることを特徴とする請求項10に記載の防護柵。
  12. 前記支柱が、両端部において立設されている端末支柱と、前記端末支柱間に設けられている中間支柱を有し、
    前記索体間の間隔を保持する間隔保持材を備えることを特徴とする請求項1から請求項11の何れかに記載の防護柵。
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