JP2017091923A - リチウムイオン二次電池の容量回復方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の容量回復方法 Download PDF

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響子 菊池
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忍 岡山
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Tomoko Iwatani
智子 岩谷
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勝彦 永谷
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Abstract

【課題】第3電極を用いて効果的な容量回復を実現するリチウムイオン二次電池容量回復方法を提供する。【解決手段】ここで開示される容量回復方法では、容量回復処理を実施している間、正極と第3電極との間の電位差(V)を測定し、該測定電位差が所定の停止基準値に至ったことを条件に容量回復処理を停止する。ここで停止基準値として、予め容量回復対象のリチウムイオン二次電池と同じ構成の基準リチウムイオン二次電池を用いて正極と第3電極とを導通させ、当該導通開始時から時間経過とともに低下する前記正極と第3電極との間の電位差(V)をモニタリングし、該モニタリングした電位差から時間(hr)の経過に伴う電位差の変動を判定し、その電位差変動から電位差下降変動期、電位差変動過渡期、電位差下降安定期を決定し、その電位差変動過渡期に対応する電位差が採用される。【選択図】図6

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の容量回復方法に関し、詳しくは、リチウムイオン供給源となる第3電極からリチウムイオンを電極に供給することによってリチウムイオン二次電池の容量を回復する方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、既存の電池に比べて軽量かつエネルギー密度が高いことから、近年はパソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源に加えて車両駆動用電源としての利用が急速に普及している。特に、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両の駆動用高出力電源として、リチウムイオン二次電池のさらなる高性能化、高容量化が今後ますます期待されている。
リチウムイオン二次電池は、長期にわたって充放電が繰り返されると電池の容量が減少することが知られている。かかる電池容量の減少の一因として、充放電の際の副反応によりリチウムが消費され、可動なリチウムイオンが減少することが挙げられる。
このような理由による電池容量の減少に対して、リチウムイオン二次電池にリチウムイオン供給源となる第3電極を設ける技術が提案されている。例えば、特許文献1には、リチウムイオン供給用電極としてのリチウム箔を電極群の最外周に巻くことを特徴とするリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献2には、帯状集電板に金属リチウムを取り付けた平板状第3電極を、該第3電極の平面が捲回電極体の捲回軸に垂直となるように配置したことを特徴とするリチウムイオン二次電池が記載されている。
これらの第3電極が設けられた電池では、可動なリチウムイオンの減少に伴って電池容量が減少した場合に、正極または負極と第3電極とを通電することによって第3電極からリチウムイオンを放出させることができる。その結果、電池内にリチウムイオンを補充することができ、電池容量を回復させることができる。
特開平8−190934号公報 特開2002−324585号公報
しかしながら、上述したような第3電極からのリチウムイオンの供給によって電池の容量を回復する従来の方法には、まだまだ改善の余地がある。例えば、容量回復の対象である電池の状態によっては、容量回復処理の方法が適切に行われない場合、第3電極から供給されたリチウムイオンが当該第3電極に対向する負極の表面に金属リチウムとして析出する虞がある。このようなリチウム析出は、容量の回復に役立たないばかりか、電池内の短絡の要因ともなり得るため、好ましくない。
そこで本発明は、第3電極からのリチウムイオンの供給による電池容量回復方法に関する従来の課題を解決するべく創出されたものであり、その目的は、第3電極を用いた容量回復プロセス中に金属リチウムが析出するのを防止しつつ効果的に容量の回復を実現する電池容量回復方法を提供することである。
上記課題を解決するべく創出された発明は、正極活物質を含む正極および負極活物質を含む負極を有する電極体と、上記電極体の正極と可逆的に導通可能な状態で、上記電極体の負極にリチウムイオンを供給し得る位置に配置された、リチウムイオン供給源を有する第3電極と、を備えるリチウムイオン二次電池の容量を回復する方法である。
ここで開示されるリチウムイオン二次電池容量回復方法は、以下の工程を包含する。即ち、
容量回復対象のリチウムイオン二次電池における上記正極と上記第3電極とを導通させることにより、該第3電極から上記負極へのリチウムイオン供給を伴う容量回復処理を行うこと、
上記容量回復処理の間、上記正極と上記第3電極との間の電位差(V)を測定すること、および、
上記測定電位差(V)が、所定の停止基準値に至ったことを条件に上記容量回復処理を停止すること、
である。
さらに、ここで開示されるリチウムイオン二次電池の容量を回復する方法では、上記停止基準値として、以下の手順(1)〜(3):
(1)上記容量回復対象のリチウムイオン二次電池と同じ構成の基準リチウムイオン二次電池(即ち、正負極および第3電極を構成する材料および容量が同じであり且つスタート電圧(初期の満充電時の電圧をいう。以下同じ。)が同じに設定されるリチウムイオン二次電池)を用いて正極と第3電極とを導通させ、当該導通開始時から時間経過とともに低下する上記正極と第3電極との間の電位差(V)をモニタリングする。;
(2)上記モニタリングした電位差に基づき、上記導通開始から時間(hr)の経過に伴う上記電位差の変動を判定する。;
(3)上記判定した電位差の時間経過に伴う変動に基づき、電位差下降変動期、電位差変動過渡期、および、電位差下降安定期を、決定する。ここで、
上記電位差下降変動期は、上記導通開始後から現れる期間であって、相対的に上記電位差下降安定期よりも電位差の下降速度が高く且つ一定しない期間として規定され、
上記電位差下降安定期は、上記電位差下降変動期の後から現れる期間であって、相対的に上記電位差下降変動期よりも電位差の下降速度が低く且つ安定的である期間として規定され、
そして、上記電位差変動過渡期は、上記電位差下降変動期と電位差下降安定期との間に現れる電位差が急下降する電位差変動過渡期として規定される。
によって決定された上記電位差変動過渡期に対応する電位差が採用されることを特徴とする。
本願の発明者は、第3電極からリチウムイオンを供給することを包含する容量回復処理の改善を検討し、正極と第3電極との導通開始時(即ちリチウムイオン二次電池の電極体の正極と第3電極とを電気的に接続したとき)から時間経過とともに低下する正極と第3電極との間の電位差(以下、単に「正極−第3電極間電位」ともいう。)をモニタリングし、当該導通開始時からの時間経過に伴う正極−第3電極間電位の変動の状態を当該正極−第3電極間電位が0V付近(具体的には0.1V未満)となるまで調べた。
そして、モニタリングした電位差に基づき、上記導通開始から時間(hr)の経過に伴う電位差の変動を判定することによって、上記導通容量回復処理の開始時からの正極と第3電極との間の電位差の下降状態(正極−第3電極間電位の下がり方)が、常に一定ではないことが判った。
具体的には、上記導通開始時から暫くの間、正極−第3電極間電位の下がり方が相対的に急であり、その電位差下降速度が一定しない期間(ここでは「電位差下降変動期」という。)が現れること、ならびに、当該電位差下降変動期を経た後、正極−第3電極間電位が0.1V以下に達するまでの暫くの間、正極−第3電極間電位の下がり方が相対的に緩やかであり且つその電位差下降速度がほぼ一定で安定している期間(ここでは「電位差下降安定期」という。)が現れることを確認した。
さらに、かかる二つの電位差下降変動期と、電位差下降安定期との間の過渡期として、電位差下降変動期よりも急激に電位差が下降する電位差変動過渡期がごく短い期間であるが現れることも確認した(後述する変動曲線グラフ参照)。
そして、かかる電位差変動過渡期に達したとき(換言すれば電位差変動過渡期における正極−第3電極間電位(V)となったとき)に容量回復処理を終了することによって、効果的な容量回復、即ち第3電極のリチウムイオン供給源から電極体へのリチウムイオンの効果的な補給と、電極体の負極表面にリチウムが析出するのを確実に防止することをともに実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、上記構成のここで開示されるリチウムイオン二次電池容量回復方法によると、過剰なリチウムイオンの第3電極から電極体(具体的には第3電極に対向する負極)への移動が抑制され、第3電極に対向する負極にリチウムが析出するのを防止しつつ効果的な電池容量の回復を行うことができる。
ここで開示されるリチウムイオン二次電池容量回復方法の好ましい態様では、上記容量回復処理後に、容量回復対象のリチウムイオン二次電池のSOC(充電率)を30%以下(より好ましくは10%以下、例えば0%〜5%)とすることを特徴とする。
上記容量回復処理後に、当該容量回復対象のリチウムイオン二次電池を低SOCレベルとした状態で保持(放置)することによって、第3電極に対向する負極(具体的には負極活物質)において第3電極から受け入れたリチウムイオンをよりスムーズに当該対向する負極の表面から電極体内部へ拡散することが容易となり、電池の容量回復に要する時間を短縮することができる。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。 図1のII−II線断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極体の外側に配置される絶縁フィルムおよび第3電極を模式的に示す斜視図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の容量回復方法の概要を示す制御フロー図である。 他の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の容量回復方法の概要を示す制御フロー図である。 容量回復処理時間(hr)を横軸、正極−第3電極間電位(V)を縦軸として作成した正極と第3電極との間の電位差(V)の変動曲線グラフの一例である。 容量回復処理後のSOCの違いが容量回復速度に及ぼす影響を示したグラフである。 容量回復処理後の電池温度の違いが容量回復速度に及ぼす影響を示したグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明による一実施形態を説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
なお、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンの移動により充放電が実現される二次電池をいう。
また、本明細書において「正極活物質」または「負極活物質」とは、リチウムイオン二次電池において電荷担体となる化学種(すなわちリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および脱離)可能な活物質(正極活物質または負極活物質)をいう。また、第3電極とは、リチウムイオン二次電池の正極と可逆的に導通可能(即ち電気的に接続可能)に設けられている電極部材であって、容量回復処理時のリチウムイオン供給源を備える。
以下、扁平形状の捲回電極体を角型の電池ケースに収納した形態のリチウムイオン二次電池を例にして、本発明について詳細に説明する。なお、本発明をかかる形態のリチウムイオン二次電池を対象としたものに限定することを意図したものではない。
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の外観を模式的に示す斜視図である。図2は、電池内部を示す図1のII−II線断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の電池ケース30は、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料製であり、図1に示すように内部空間が扁平形状の捲回電極体80に対応する箱状となるように形成された、いわゆる角型(典型的には直方体形状)のケースである。電池ケース30の本体32は、一側面(上面)が開口した扁平な箱型の容器であり、蓋体34は当該ケース本体32の開口(上面の開口)に取り付けられて当該開口を塞ぐ部材である。
図2に示すように、この電池ケース30の内部空間には捲回電極体80が収容されている。蓋体34には正極集電端子92および負極集電端子94が取り付けられており、それぞれの一部は、正極端子42および負極端子44として蓋体34を貫通して電池ケース30の外部に突出している。また、蓋体34には安全弁35が設けられている。安全弁35の隣には、電池製造時に非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。蓋体34とケース本体32の合わせ目32aは、レーザ溶接等によって封止されている。
図2に示す捲回電極体80は、長尺シート状の正極(正極シート)50、長尺シート状の負極(負極シート)60および2枚の長尺シート状のセパレータ70,72が積層され、正極50よりも外周側に負極60が位置するように捲回されて構成されたものである。本実施形態では、捲回電極体80の最外周はセパレータ70であるが、セパレータ70の長さを調整して最外周を負極60としてもよい。
正極シート50は、アルミニウム箔等からなる長尺状の正極集電体52を備え、該正極集電体52は、正極活物質層非形成部分(非塗工部)53と、正極活物質を含む正極活物質層54とを有している。正極活物質層非形成部分53は正極集電体52の幅方向(長尺方向に直交する方向をいう。以下同じ。)の片側の縁部に沿って設けられている。本実施形態では正極活物質層54は、正極集電体52の両面に形成されているが、正極集電体52の一方の面のみに形成されていてもよい。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料であって、リチウム元素と一種または二種以上の遷移金属元素とを含むリチウム含有化合物(例、リチウム遷移金属複合酸化物)を好適に用いることができる。
負極シート60は、銅箔等からなる長尺状の負極集電体62を備え、該負極集電体62は、負極活物質層非形成部分(非塗工部)63と、負極活物質を含む負極活物質層64とを有している。図示されるように、負極活物質層非形成部分63は負極集電体62の幅方向の片側(正極活物質層非形成部分53とは幅方向の反対側)に沿って設けられている。本実施形態では負極活物質層64は、負極集電体62の両面に形成されているが、負極集電体62の一方の面のみに形成されていてもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料であればよく、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)等の炭素材料が挙げられる。特に好適な負極活物質として、非晶質炭素被覆黒鉛が挙げられる。
なお、正極活物質層54および負極活物質層64には、各々の活物質以外の成分、例えば、バインダや導電材等を含み得るが、従来のリチウムイオン二次電池と同様でよく、電池ケース30内に注入される非水電解液についても従来のリチウムイオン二次電池と同様でよい。これらは本発明を特徴付けるものでもないため、詳細な説明は省略する。
セパレータ70、72は、正極シート50と負極シート60とを隔てる部材であり、リチウムイオンが通過でき、非水電解質の保持機能やシャットダウン機能を備えるように構成される。セパレータ70、72としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂製の多孔質膜、あるいは不織布を用いることができる。セパレータ70、72の負極側に面する面に、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
而して捲回電極体80は、正極活物質層54と負極活物質層64との間にセパレータ70、72を介在させつつ、正極シート50と負極シート60とを積層し、長尺方向に捲回した後、得られた捲回体を側面方向から押圧して扁平形状に拉げさせることによって作製され得る。
図3に示すように、第3電極10は捲回電極体80の外側に配置される。このとき第3電極10は、捲回電極体80の負極60のうちの最外周を構成する負極60の外表面と対向する部分および捲回電極体80の捲回軸方向における端面である捲回電極体開口端面84aと対向する部分を有している。具体的には、第3電極10は、帯状シート状に形成されており、捲回電極体80の負極60のうちの最外周を構成する負極60の外表面として捲回電極体80の二つの扁平面82に対向し、且つ、捲回電極体開口端面84aに対向するように、捲回電極体80の外周に配置される。なお、第3電極10は、捲回電極体80の扁平面82の全面に対して余すところ無く対向している必要はなく、一部と対向していればよい。また、第3電極10は、捲回電極体開口端面84aの全面と対向している必要はなく、一部と対向していればよい。例えば、捲回軸方向の両端にある捲回電極体開口端面84aのうちの一方の捲回電極体開口端面とだけ対向していてもよい。
第3電極10は、リチウムイオンを供給可能なリチウムイオン供給源を有する。かかるリチウムイオン供給源としては、例えば、金属リチウムが挙げられるが、より好ましいリチウムイオン供給源として上述したような正極活物質として利用可能な物質が挙げられる。したがって、好適な第3電極の形態として、アルミニウム箔等の金属薄板からなる基材の表面(即ち捲回電極体80に対向する表面)に正極活物質を含む活物質層(以下「第3電極活物質層」という。)を有する構成のものが挙げられる。例えば、第3電極活物質層は、捲回電極体80の正極活物質層54と同様の構成であってよい。
あるいは、第3電極10は、電池ケース30の表面に第3電極活物質層を設けることにより形成されていてもよい。例えば、電池ケース30内に、正極活物質と導電材とバインダとを適当な溶媒に分散させてなるスラリー(ペースト)状正極合材を満たす。次に電池ケース30を約60℃の温浴装置に約30分間入れ、その後電池ケース30から正極合材を排出させる。電池ケース30を乾燥機に入れて約120℃で約10分程度乾燥させると、電池ケース30の表面に第3電極活物質層が形成される。
捲回電極体80と第3電極10との間には、捲回電極体80と第3電極10とを隔離する絶縁フィルム20であってリチウムイオンが通過可能なポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の多孔質膜または不織布から形成された絶縁フィルム20が配置されている。上記セパレータと同じ材料でよい。絶縁フィルム20の形状は、電極体80と第3電極10とを隔離できる限り特に限定はない。例えば図示されるように、絶縁フィルム20は袋状(特に上端側(蓋体34側)が開口した有底の袋状)の形状を有する。
かかる構成の第3電極10を備えた本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、図示しない外部回路によって、正極50(正極端子42)と、第3電極10とを電気的に接続する。第3電極10に電池ケース外に突出する端子(外部回路接続用端子)が設けられていてもよいが、本実施形態では、上記金属材料製の電池ケース30が導電性を有しており、第3電極10は電池ケース30と導通可能に電池ケース30内に収容されている。具体的には、電池ケース30内部において、第3電極10の少なくとも一部は、電池ケース30の内壁と接触して配置されている。このように構成すれば、外部回路により正極50(正極端子42)と電池ケース30とを接続するだけで容易に、正極50と第3電極10とが電気的に接続可能にすることができ、リチウムイオン二次電池100へのリチウムイオンの補充操作(容量回復方法)の実行が容易となる。
通常のリチウムイオン二次電池100は、充放電を繰り返すうちに可動なリチウムイオンが減少し、電池容量が減少する場合がある。そこで、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、電池容量が減少した場合に、正極50(正極端子42)と第3電極10とを電気的に接続することにより、第3電極10からリチウムイオンを放出させて、リチウムイオン二次電池100にリチウムイオンを補充することができる。具体的には、第3電極10から電極体80における第3電極10に対向する負極60にリチウムイオンを補充することができる。リチウムイオンの放出は、第3電極10と捲回電極体80との電位差を駆動力としてなされるものである。電位差が駆動力であるため、外部電源を用いることなく、リチウムイオン二次電池100のリチウムイオンの補充を行うことができる。
具体的には、リチウムイオン二次電池100と、リチウムイオン二次電池100の電池容量、正負極間の電位差(電圧)等を監視する監視装置と、リチウムイオン二次電池100における正極50と第3電極10とを電気的に接続する容量回復回路と、制御部とを備えた電池容量回復システム(図示せず)を構築する。なお、電池容量回復システム自体の構成は、従来のものと同様でよいため、これ以上の詳細な説明は省略する。
監視装置により、リチウムイオン二次電池100の電池容量が、電圧値または電流値に基づいてモニタリングされる。電池容量が所定の閾値以上あるときは、容量回復回路は遮断されている。即ち、正極50(正極端子42)と第3電極10とは電気的に接続されていない。
一方、監視装置により、リチウムイオン二次電池100の電池容量が所定の閾値を下回ったこと、あるいは、使用開始後からの通算使用時間が所定の時間を超えたことなど、予め設定された容量回復処理開始のための閾値に至った際、制御部は当該リチウムイオン二次電池100を容量回復処理の対象とする。例えば、当該リチウムイオン二次電池100の容量が初期容量(即ち未使用新品状態の電池容量)の3/4以下(好ましくは2/3以下、特に好ましくは1/2以下)になった時点で、当該リチウムイオン二次電池100を容量回復処理の対象とすることができる。
次に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池容量回復方法の態様について、図4に示す制御フロー図を参考にしつつ、具体的に説明する。
制御部は、上記のように電池容量が低下したリチウムイオン二次電池を容量回復処理の対象として容量回復処理を開始する。
先ず、正極と第3電極を電気的に接続して容量回復処理を開始する(ステップS101)。
ここで開示される方法では、容量回復処理を開始後、導通させた正極と第3電極との間の電位差(V)を経時的に測定し、当該測定電位差(電圧:V)が予め設定されている所定の停止基準値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。そして、測定電位差(V)が停止基準値以下であると判定されると、正極と第3電極との間の電気的接続を解除(遮断)して容量回復処理を終了する(ステップS103)。
ここで停止基準値とは、容量回復処理に供する対象リチウムイオン二次電池の構成により定まる基準値であり、容量回復処理に供するリチウムイオン二次電池の構成(例えば、正極活物質、負極活物質、第3電極のリチウムイオン供給源を構成する材料)が異なれば、それに応じて異なり得る電圧値である。従って、かかる停止基準値は、予め容量回復対象のリチウムイオン二次電池と同じ構成の基準リチウムイオン二次電池を用いて同様の処理を行い、設定することが求められる。具体的には、以下の手順により求めることができる。即ち、以下の(1)〜(3)のプロセスを行うことにより、停止基準値を求めることができる。
(1)先ず、容量回復対象のリチウムイオン二次電池と同じ構成の基準リチウムイオン二次電池を用い、正負極間の電圧を当該容量回復対象のリチウムイオン二次電池と同じスタート電圧に調整するとともに正極と第3電極とを導通させ、当該導通開始時から時間経過とともに低下する正極−第3電極間電位(V)をモニタリングする。
(2)次いで、導通開始からの処理時間(hr)を横軸とし且つ正極−第3電極間電位を縦軸として、上記モニタリングした電位差の変動曲線グラフを作成する(図6参照)。
(3)そして、上記作成した変動曲線グラフ(図6参照)に基づき、上記電位差の変動曲線から、導通開始から現れる電位差下降変動期と、電位差下降変動期の後に現れる電位差下降安定期と、当該電位差下降変動期と電位差下降安定期との間に現れる急激に電位差が下降する電位差変動過渡期と、を決定する。
このようにして決定された電位差変動過渡期に対応する電位差(電圧値)を停止基準値とすることができる。
図6は、後述する実施例に係るリチウムイオン二次電池について正極と第3電極とを導通させて容量回復処理を開始し、当該開始時から時間経過とともに低下する正極−第3電極間電位(V)をプロットした電位差の変動曲線グラフである。
このグラフから明らかなように、正極と第3電極とを導通後、先ず、正極−第3電極間電位が急速に且つ不規則に低下していく電位差下降変動期が現れる。図6に示す例では、容量回復処理開始直後から約2時間が経過した時点までが電位差下降変動期である。その後、一旦急速に正極−第3電極間電位が下降する電位差変動過渡期が現れる。図6に示す例では、容量回復処理開始から約2時間経過した時点(即ち電位差下降変動期が終了した時点)から凡そ30分間が電位差変動過渡期に相当する。
その後、正極−第3電極間電位が時間の経過とともに緩慢に安定的に低下していく電位差下降安定期が現れる。図6から明らかなように、電位差下降安定期が現れた後は、正極−第3電極間電位が0.1V以下となった時点で容量回復処理を終了するまで、正極−第3電極間電位は緩慢に安定的に低下していくことが認められる。図6から明らかなように、導通開始時から時間経過とともに低下する正極−第3電極間電位(V)をプロットした電位差の変動曲線グラフによると、先ず、容易に電位差下降安定期が特定され、その電位差下降安定期の直前の電位差が急下降する期間として、電位差変動過渡期が特定される。換言すれば、かかる変動曲線グラフによると、正極−第3電極間電位が緩慢に安定的に低下していくことが認められる電位差下降安定期に至り、そのことから電位差下降安定期が特定されれば、その直前の電位差が急下降する短い期間として電位差変動過渡期が必然に特定されるため、電位差変動過渡期に関しては、その終期を厳密に特定する必要はない。
このようにして特定された電位差変動過渡期に対応する正極−第3電極間電位を、容量回復処理の停止基準値として採用することができる。図6に示す例では、0.25Vを停止基準値として、ここで開示されるリチウムイオン二次電池容量回復方法を実施することができる。
ここで開示されるリチウムイオン二次電池容量回復方法では、上記のようにして決定した電位差変動過渡期における正極−第3電極間電位(V)を停止基準値として容量回復処理を終了することを特徴とする。これによって、第3電極のリチウムイオン供給源から電極体へのリチウムイオンの効果的な補給と、電極体の負極表面にリチウムが析出するのを確実に防止することをともに実現することができる。
好ましくは、図5に示す制御フローのように、正極−第3電極間電位(V)が停止基準値に到達して容量回復処理を終了した後(即ち図5の制御フローにおけるステップS201〜S203は、それぞれ、図4の制御フローにおけるステップS101〜S103と同じである。)、当該容量回復処理対象のリチウムイオン二次電池のSOCを測定(推定)し、SOCが30%を上回る場合(ステップS204)は、SOCが30%以下となるまで放電処理(ステップS205、S206)を行う。換言すれば、容量回復処理の終了後は、当該リチウムイオン二次電池をSOC30%以下の低SOCレベル(より好ましくは10%以下、例えば0%〜5%程度であり得る。)で放置することが好ましい。なお、SOCの測定(推定)は、公知の方法(例えば電圧参照方式)で行えばよく、特に制限はない。
容量回復処理後のリチウムイオン二次電池を低SOCレベルとした状態で所定時間保持(放置)することによって、第3電極に対向する負極において、第3電極から受け入れたリチウムイオンをよりスムーズに当該対向する負極の表面から電極体内部へ拡散することが容易となり、電池の容量回復に要する時間を短縮することができる。
以下、ここで開示されるリチウムイオン二次電池容量回復方法についての好適な実施例を説明する。
[リチウムイオン二次電池の構築]
正極活物質:LiNi1/3Co1/3Mn1/3、導電材:アセチレンブラック、バインダ:ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、93/4/3の質量比でN−メチルピロリドン(NMP)に添加、混練し、正極活物質層形成用スラリー(正極合材)を調製した。このスラリーをアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗工して、乾燥後にプレス加工し、シート状正極集電体上に正極活物質層を備えた正極シートを作製した。
一方、負極活物質:黒鉛、バインダ:スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤:カルボキシメチルセルロース(CMC)を、98/1/1の質量比でイオン交換水に添加、混練し、負極活物質層形成用スラリー(負極合材)を調製した。このスラリーを銅箔(負極集電体)の両面に塗工して、乾燥後にロールプレスすることによって、シート状負極集電体上に負極活物質層を備えた負極シートを作製した。
また、PE製多孔質フィルムからなるセパレータシートを2枚準備した。
正極シート、セパレータシート、負極シート、セパレータシートの順で積層したものを捲回して押圧し、扁平形状の捲回電極体を準備した。なお、捲回の際には、負極が正極よりも外周側に位置するようにした。また、セパレータに使用したのと同じPE製多孔質フィルムを用いて、上面が開口している有底の袋状の絶縁フィルムを準備した。捲回電極体の正負極にそれぞれリード端子を溶着した後、袋状の絶縁フィルムに収納した。
リチウムイオン供給源として上記正極合材を使用した。即ち、上記正極合材をアルミニウム製の帯状の薄板の片面に塗工して、乾燥後にプレス加工し、第3電極を作製した。
そして、上述した図3に示すように、この帯状の第3電極を、捲回電極体が収納された絶縁フィルムの外側面に巻きつけ(外側面を囲うように配置し)、電池ケースに収納することにより、図1および図2に示すような角型リチウムイオン二次電池を作製した。
なお、電池容量(捲回電極体における放電容量)は5Ahとし、第3電極には利用可能容量として1Ah分のリチウムイオン供給源(正極活物質)を設けた。
非水電解液として、ECとDMCとEMCとを30/40/30の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。この非水電解液を電池ケースに注入し、本実施例に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
[容量回復処理]
まず、上記構築したリチウムイオン二次電池をコンディショニング処理後、パルス充放電を繰り返し、電池容量を初期値の5Ahから4Ahまで低下させた本実施例の供試リチウムイオン二次電池を作製した。
次いで、いったんSOCを100%とした供試リチウムイオン二次電池を用意し、図5に示す制御フローに基づき容量回復処理(図5のステップS201〜S203)を行った。このときの正極−第3電極間電位(V)の停止基準値は、図6に示すように、0.25Vに設定した。
そして、図6に示すように、約2.5時間の容量回復処理が終了した後、SOCの調整のための放電若しくは充電処理を行い、供試リチウムイオン二次電池のSOCを30%に調整した(図5のステップS204〜S206)。その後、40℃の環境下で当該電池を10時間放置した。
10時間の放置後、電池容量を測定し、初期値から低下した容量分のうちの50%以上の容量が回復した事実と、その容量回復速度を確認した。また、その後に電池を分解して捲回電極体の負極の表面を観察したところ、金属リチウムの析出は、全く認められなかった。一方、比較のために容量回復処理の停止基準値を0.1Vに設定して同様の容量回復処理を行ったリチウム二次電池では、捲回電極体の負極の表面に金属リチウムが析出していることが観察された。
次に、比較試験として、約2.5時間の容量回復処理終了後、SOCの調整度合を異ならせたリチウムイオン二次電池を複数用意した。具体的には、上記実施例と同様の容量回復処理を終了した後のSOCを0%、60%、100%にそれぞれ調整したリチウムイオン二次電池を作製し、10時間放置後の電池容量を測定し、容量回復の事実とその容量回復速度を確認した。SOCの調整度合が容量回復速度に及ぼす影響を図7のグラフに示す。縦軸は、SOC0%としたものの容量回復速度を1としたときの相対値である。
図7のグラフから明らかなように、容量回復処理後に低SOCで放置したものほど容量回復速度が早くなる傾向が認められた。特にSOCが30%以下の場合に好適な容量回復速度を示した。
別の比較試験として、約2.5時間の容量回復処理終了後、SOCを30%に調整した後の温度条件を上記40℃の他、25℃および60℃に設定して10時間放置した試験を行った。そして、電池温度が容量回復速度に及ぼす影響を図8のグラフに示す。縦軸は、25℃の温度条件で電池を10時間放置したときの容量回復速度を1としたときの相対値である。図8のグラフから明らかなように、容量回復処理後の電池温度は、室温域(25℃付近)よりもやや高温となる域(例えば40℃〜60℃の温度域)に設定したほうが、容量回復速度が早くなることが認められた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、捲回電極体が、扁平な捲回電極体である場合について説明したが、円筒形の捲回電極体を用いることもできる。
10 第3電極
20 絶縁フィルム
30 電池ケース
32 ケース本体
34 蓋体
35 安全弁
42 正極端子
44 負極端子
50 正極
52 正極集電体
53 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
63 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70,72 セパレータ
80 電極体
82 扁平面
84a 開口端面
92 正極集電端子
94 負極集電端子
100 リチウムイオン二次電池

Claims (2)

  1. 正極活物質を含む正極および負極活物質を含む負極を有する電極体と、
    前記電極体の正極と可逆的に導通可能な状態で、前記電極体の負極にリチウムイオンを供給し得る位置に配置された、リチウムイオン供給源を有する第3電極と、
    を備えるリチウムイオン二次電池の容量を回復する方法であって、
    容量回復対象のリチウムイオン二次電池における前記正極と前記第3電極とを導通させることにより、該第3電極から前記負極へのリチウムイオン供給を伴う容量回復処理を行うこと、
    前記容量回復処理の間、前記正極と前記第3電極との間の電位差(V)を測定すること、
    前記測定電位差(V)が、所定の停止基準値に至ったことを条件に前記容量回復処理を停止すること、
    を包含し、ここで前記停止基準値には、以下の手順(1)〜(3):
    (1)前記容量回復対象のリチウムイオン二次電池と同じ構成の基準リチウムイオン二次電池を用いて正極と第3電極とを導通させ、当該導通開始時から時間経過とともに低下する前記正極と第3電極との間の電位差(V)をモニタリングする。;
    (2)前記モニタリングした電位差に基づき、前記導通開始から時間(hr)の経過に伴う前記電位差の変動を判定する。;
    (3)前記判定した電位差の時間経過に伴う変動に基づき、電位差下降変動期、電位差変動過渡期、および、電位差下降安定期を、決定する。
    ここで、前記電位差下降変動期は、前記導通開始後から現れる期間であって、相対的に前記電位差下降安定期よりも電位差の下降速度が高く且つ一定しない期間として規定され、
    前記電位差下降安定期は、前記電位差下降変動期の後から現れる期間であって、相対的に前記電位差下降変動期よりも電位差の下降速度が低く且つ安定的である期間として規定され、前記電位差変動過渡期は、前記電位差下降変動期と電位差下降安定期との間に現れる電位差が急下降する電位差変動過渡期として規定される。;
    によって決定された前記電位差変動過渡期に対応する電位差が採用されることを特徴とする、リチウムイオン二次電池の容量回復方法。
  2. 前記容量回復処理後に、前記容量回復対象のリチウムイオン二次電池のSOC(充電率)を30%以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の容量回復方法。
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