以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車室の後部座席の下側に電池パックが配置されるものとしたが、これは例示であって、車両の仕様等によって適宜変更が可能である。以下では、電池パックに内蔵される冷却ファンを2台としたが、これも例示であって、電池パックに要求される冷却性能に応じ、3台以上とすることもできる。
以下で述べる形状等は、説明のための例示であって、車両用電池パックの仕様に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、車両10において車両用電池パック20が配置される位置を示す図である。以下では、車両用電池パック20を、特に断らない限り電池パック20と呼ぶ。車両10の内部の空間の広さは限られているので、図1の例では、後部座席12の下側に電池パック20が配置される。電池パック20は、パックケース22の内部に、電池スタック24と、2台の冷却ファン26,28と、を含んで構成される。
図2は、電池パック20の斜視図である。図3は、電池パック20の平面図と側面図である。図2、図3に、直交する3方向として、長手方向と幅方向と高さ方向とを示す。
パックケース22は、ケース本体部30と、ケース本体部30を覆うケースカバー32で構成される。図2では、ケースカバー32をケース本体部30から分離して電池スタック24が見える状態を示し、図3では、ケース本体部30とケースカバー32とを一体化した電池パック20の状態を示す。なお、図2、図3では、電池パック20に設けられる電極配線、電池電圧センサ、電池温度センサ等の他の部材の図示を省略した。
パックケース22の内部に収容される電池スタック24は、複数の単電池を直列及び並列に接続して、車両搭載の電気機器に必要な高電圧、大電流を出力可能とした組電池である。単電池としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を用いることができる。
冷却ファン26,28は、電池パック20に内蔵される冷却用の送風機である。内蔵が可能な冷却用の送風機は小型となるので、複数台の冷却用の送風機を用いる必要がある。図2の例では、2台の冷却ファン26,28を用いる。冷却ファン26,28は、軸方向に吸気して径方向に吐出して吹き出すシロッコファンを用いる。冷却ファン26,28は同じ外形仕様であるが、回転体に取り付けられる羽根である動翼の数が互いに異なる。
冷却ファン26,28の動翼数を互いに異ならせる理由を以下に述べる。冷却ファン26,28の送風騒音は周波数特性を有し、特定の周波数で送風騒音のレベルが最大となる。この送風騒音が最大となる騒音のピーク周波数を騒音の基本周波数と呼ぶと、冷却ファン26,28のそれぞれについての騒音の基本周波数が近接すると、唸り音が生じる。騒音の基本周波数は、回転体の回転数と動翼数の積で定まる。そこで、冷却ファン26,28の動翼数を互いに異ならせることで、冷却ファン26,28の騒音の基本周波数を異ならせることができる。例えば、冷却ファン26,28の間で動翼数を約10%異ならせると、動翼数が同じで回転体の回転数を約10%異ならせるのと同等に唸り音を抑制する効果を生じる。これにより、2台の冷却ファン26,28の間で回転数を互いに変更する等の特別な制御を行うことなく、唸り音を抑制することができる。
パックケース22は、電池パック20の外形を形づくり、車体に接続して固定するための複数の接続部34a,34b,34c,34d(図3参照)を有するケース体である。
ケース本体部30は、2台の冷却ファン26,28を配置して収容するファン収容部40と、電池スタック24を収容する電池収容部42とで構成される。ファン収容部40と電池収容部42とは、ケース本体部30の長手方向に沿って配置される。
電池収容部42は、上方側に開口を有し、底部44と、底部44から立ち上がる側壁部46,48と、電池収容部42との間の境界壁を形成する一方壁部50と、一方壁部50に向かい合う他方壁部52とを有する。一方壁部50には、2つの開口部60,62が設けられる。開口部60は、冷却ファン26の吹出口59に接続され、開口部62は、冷却ファン28の吹出口61に接続される。
電池収容部42において、底部44の底面を基準とすると、他方壁部52の高さH52は一方壁部50の高さH50よりも低い。側壁部46,48の高さH46は、他方壁部52の高さH52よりもさらに低く設定される。すなわち、H50>H52>H46の関係を有する。
ケースカバー32は、天井部54と、天井部54の両側から立ち下がる側壁部56,58とを有し、天井部54に向かい合う側と長手方向の両端側とには壁部を有さないトンネル形状の部材である。ケースカバー32の長手方向に沿った長さは、ケース本体部30の一方壁部50と他方壁部52が互いに向かい合う長手方向の間隔と同じかやや小さめに設定される。天井部54の下面を基準としたケースカバー32の側壁部56,58の高さH56は、H56=(H50−H46)に設定される。換言すると、(H56+H46)=H50である。
ケース本体部30の一方壁部50と他方壁部52とが互いに向かい合う長手方向の間隔のところに、ケースカバー32を嵌め込むと、ケースカバー32の側壁部56,58の下面は、ケース本体部30の側壁部46,48の上面に載る。これにより、ケースカバー32はケース本体部30の電池収容部42の上方側の開口を覆う。ケースカバー32が電池収容部42を覆う状態に組付されると、図示しない適当な固定部材によってケースカバー32とケース本体部30とが固定される。
かかるケース本体部30とケースカバー32とは、適当な強度と電気絶縁性を有する材料を用いて所定の形状に成形したものが用いられる。材料としては、電気絶縁性の表面処理を施したアルミニウム合金等の金属や、プラスチックを用いることができる。
図4は、ケースカバー32がケース本体部30に組付された状態を示す斜視図である。ケースカバー32がケース本体部30に組付されると、ケース本体部30の一方壁部50の上面の高さと、ケースカバー32の一方端の上面の高さとが揃う。一方、ケース本体部30の他方壁部52の上面の高さ位置は、ケースカバー32の天井部54の下面の高さ位置よりも低いので、ケースカバー32の天井部54の下面とケース本体部30の他方壁部52の上面との間に隙間64が生じる。これは、ケースカバー32がケース本体部30に組付された状態において、ケース本体部30の底部44の底面を基準としたケースカバー32の天井部54の下面の高さ位置は、(H56+H46)=H50であり、H50はH52よりも高いためである。
図4を参照して、ケースカバー32がケース本体部30に組付された状態において、ケースカバー32、電池収容部42の底部44、側壁部46,48、一方壁部50、他方壁部52とで囲まれた空間66が形成される。空間66には、冷却対象である電池スタック24が配置され、電池スタック24を冷却するための冷却風が流れるので、以下では空間66を、冷却経路66と呼ぶ。
冷却経路66の長手方向に沿った一方端である一方壁部50には、冷却ファン26,28の吹出口59,61にそれぞれ接続される2つの開口部60,62が設けられる。2つの開口部60,62は、冷却経路66における吸気口に対応する。冷却経路66の長手方向に沿った他方端においては、他方壁部52とケースカバー32との間に隙間64が形成される。隙間64は、冷却経路66における排気口に対応する。
図4において、冷却ファン26,28の吸気口から吸いこまれる車室内の空気を供給空気70a,70bとして、その流れを白抜矢印で示す。電池スタック24の動作中の温度は車室内の空気の温度よりも高いので、供給空気70a,70bは、電池スタック24を冷却する冷媒として用いることができる。冷却ファン26,28を動作させることで、冷却経路66における吸気口である開口部60,62から供給空気70a,70bが所定の流速と所定の流量で冷却経路66内に吹きだす。冷却経路66において、電池スタック24を冷却しながら流れる空気の流れを冷却風72a,72bとして、破線の白抜矢印で示す。冷却風72a,72bは、冷却経路66の排気口である隙間64から車室内または車両10の外部に排出される。排出される冷却風72a,72bを、排気74a,74bとして、白抜矢印で示す。
冷却経路66は、吸気口である開口部60,62と排気口である隙間64とを有し、冷却対象である電池スタック24に冷却風72a,72bを供給する。冷却経路66の吸気口である開口部60,62には、電池パック20に内蔵される2台の冷却ファン26,28のそれぞれの吹出口59,61が接続される。この構成の電池パック20によれば、外部に冷却ファンもダクトも設ける必要がなく、小型化が図れる。小型化に伴い、2台の冷却ファン26,28を用いるが、2台の冷却ファン26,28の動翼数を互いに異ならせるので、2台の冷却ファン26,28を同時に並列に同じ回転数で運転しても、唸り音を抑制できる。
上記では、冷却経路66の断面の全面に渡って冷却風72a,72bを流すものとした。図5は、冷却経路66の冷却風の流し方の他の例を示す図である。
図5(a)の電池パック80では、冷却ファン26,28として、図2から図4で述べたシロッコファンを用い、電池パック80の上方側から供給空気70a,70bを吸い込み、冷却ファン26,28の径方向に向けて吹き出させる。冷却経路66の吸気口である2つの開口部81,82は、冷却経路66の幅方向の両端側にそれぞれ設けられる。冷却経路66内では、冷却経路66の両端側から中央側に向けて冷却風84が流れる。排気口86は、冷却経路66の中央側に設けられる。
図5(b)の電池パック90では、冷却ファン27,29として、シロッコファンでなくプロペラファンを用い、電池パック90の上方側から供給空気70a,70bを吸い込み、電池パック90の底部側に向かって吹き出させる。冷却経路66の吸気口である開口部92は、冷却経路66の底部側に設けられる。冷却経路66内では、冷却経路66の底部側から上方側に向けて冷却風94が流れる。排気口96は、冷却経路66の上方側に設けられる。
図5(a)、図5(b)の例においても、図2から図4で述べた構成と同様の作用と効果を奏する。