JP2017089852A - パーキングロック装置 - Google Patents

Abstract

【課題】 車両が前面衝突したり急制動したりして急減速したときの慣性力でパーキングロックが意図せずに作動するのを簡単な構造で防止する。
【解決手段】 作動軸１８の摺動により揺動してパーキングロックを作動および作動解除するリンク部材３１は、作動軸１８の軸方向の慣性力を打ち消すためのカウンタウエイト３７を備えるので、車両が前面衝突したり急制動したりして急減速したときに作動軸１８が慣性力で変速機ケース１２に対して軸方向に摺動しようとしても、カウンタウエイト３７の質量が前記慣性力に抵抗してリンク部材３１の揺動を阻止することで、パーキングロックが意図せずに作動してしまう事態を回避することができる。
【選択図】 図２

Description

本発明は、変速機ケースに回転自在に支持されて駆動源からの駆動力を駆動輪に伝達する回転軸と、前記回転軸に設けられたパーキングギヤと、前記変速機ケースに軸方向摺動自在に支持されて両端部が車体前後方向にずれた位置に配置される作動軸と、前記作動軸の摺動により揺動するリンク部材と、前記リンク部材の揺動により前記パーキングギヤに係合して前記回転軸を回転不能に拘束するパーキングポールとを備えるパーキングロック装置に関する。

かかるパーキングロック装置において、車両の衝突時や急制動時に発生する前後方向の慣性力で作動軸が軸方向に摺動してしまい、パーキングロック装置が突然作動するのを防止すべく、作動軸の一端部に該作動軸の軸方向の摺動を減衰する減衰手段を設けたものが、下記特許文献１により公知である。

特開２０１５−１２４８８１号公報

しかしながら、上記従来のものは、作動軸の軸方向の摺動を減衰する減衰手段が、作動軸を収容する第１空間と、隔壁を介して第１空間から分離された第２空間と、隔壁の第１空間側に形成されて作動軸の一端部を摺動自在に支持する支持孔と、支持孔の底部を第２空間に連通させる絞り孔と、作動軸の一端部および支持孔の底部間に形成された可変容積室とを備えるので、微小な絞り孔の径の設定や加工が面倒であるだけでなく、可変容積室をシールするためのシール部材が必要になってコストが増加する可能性があった。

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両が前面衝突したり急制動したりして急減速したときの慣性力でパーキングロックが意図せずに作動するのを簡単な構造で防止することを目的とする。

上記目的を達成するために、請求項１に記載された発明によれば、変速機ケースに回転自在に支持されて駆動源からの駆動力を駆動輪に伝達する回転軸と、前記回転軸に設けられたパーキングギヤと、前記変速機ケースに軸方向摺動自在に支持されて両端部が車体前後方向にずれた位置に配置される作動軸と、前記作動軸の摺動により揺動するリンク部材と、前記リンク部材の揺動により前記パーキングギヤに係合して前記回転軸を回転不能に拘束するパーキングポールとを備えるパーキングロック装置であって、前記リンク部材は前記作動軸の軸方向の慣性力を打ち消すためのカウンタウエイトを備えることを特徴とするパーキングロック装置が提案される。

また請求項２に記載された発明によれば、請求項１に構成に加えて、前記カウンタウエイトは防振ゴムからなることを特徴とするパーキングロック装置が提案される。

請求項１の構成によれば、パーキングロック装置は、変速機ケースに回転自在に支持されて駆動源からの駆動力を駆動輪に伝達する回転軸と、回転軸に設けられたパーキングギヤと、変速機ケースに軸方向摺動自在に支持されて両端部が車体前後方向にずれた位置に配置される作動軸と、作動軸の摺動により揺動するリンク部材と、リンク部材の揺動によりパーキングギヤに係合して回転軸を回転不能に拘束するパーキングポールとを備える。

リンク部材は作動軸の軸方向の慣性力を打ち消すためのカウンタウエイトを備えるので、車両が前面衝突したり急制動したりして急減速したときに作動軸が慣性力で変速機ケースに対して軸方向に摺動しようとしても、カウンタウエイトの質量が前記慣性力に抵抗してリンク部材の揺動を阻止することで、パーキングロックが意図せずに作動してしまう事態を回避することができる。

また請求項２の構成によれば、カウンタウエイトは防振ゴムからなるので、車両が急減速した衝撃がカウンタウエイトに伝達されたとき、カウンタウエイトが振動エネルギーを吸収することで騒音の発生を抑制することができる。

車両の変速機の平面図。 パーキングロック装置の斜視図。

以下、図１および図２に基づいて本発明の実施の形態を説明する。

図１は車両の変速機Ｔを上から見た平面図であり、変速機Ｔは図示せぬエンジンからの駆動力を減速し、車幅方向両側に延びる左右の車軸１１，１１を介して左右の駆動輪Ｗ，Ｗを駆動する。

変速機ケース１２の内部は車幅方向に延びる前部隔壁１３および後部隔壁１４により前後方向中央の第１空間１５と、第１空間１５の前方の第２空間１６と、第１空間１５の後方の第３空間１７とに区画されており、第１空間１５内に収容されたパーキングロック装置の作動軸１８が、前部隔壁１３および後部隔壁１４間に前後摺動自在に架設される。作動軸１８は、変速機Ｔの複数のシフトロッドのうちの１本である。

図２に示すように、シフトロッドである作動軸１８の軸方向中間部には、変速機Ｔの変速ギヤを変速軸に係脱するシンクロ装置２０を作動させるためのシフトフォーク２１と、作動軸１８を軸方向に駆動するための板状のシフトレール２２とが設けられる。変速機Ｔはシンクロ装置２０…の数と同数のシフトレール２２…を備えており、これら複数のシフトレール２２…は相互に重なり合うように配置される。シフトレール２２…が重なり合う方向に延びるシフト・セレクトロッド２３はシフトフィンガー２４を備えており、このシフトフィンガー２４は各シフトレール２２…に形成されたカム孔２２ａ…の内面に係合可能である。

従って、図示せぬアクチュエータでシフト・セレクトロッド２３を軸方向に移動させてシフトフィンガー２４を所望のシフトレール２２のカム孔２２ａに係合させた後に、アクチュエータでシフト・セレクトロッド２３を軸回りに回転させることで、カム孔２２ａの内面を押圧して所望のシフトロッド（作動軸１８）を軸方向に駆動し、そのシフトフォーク２１でシンクロ装置２０を作動させて所望の変速段を確立することができる。

変速機Ｔの出力軸を構成する回転軸２５に、外周面に複数の係止溝２６ａ…を備えるパーキングギヤ２６が固設される。支軸２７に中間部を揺動自在に枢支されたパーキングポール２８は、その一端に設けた係止爪２８ａがパーキングギヤ２６の係止溝２６ａ…から離反する方向にスプリング２９によって付勢される。

支軸３０に中間部を枢支されたリンク部材３１の一端に設けた突起部３１ａが、シフトレール２２から一体に延びるアーム部材３２の先端に設けた溝部３２ａに係合する。リンク部材３１の他端に一端を枢支されたパーキングロッド３３は、その他端にコーン状のカム部材３４を摺動自在に支持しており、カム部材３４はスプリング３５によってパーキングロッド３３の他端側に向けて付勢される。そして変速機ケース１２に固定した支持部材３６の固定カム面３６ａと、パーキングポール２８の他端に形成した可動カム面２８ｂとの間にカム部材３４が嵌合する。

従って、シフト・セレクトロッド２３を軸方向に移動させてシフトフィンガー２４を作動軸１８のシフトレール２２に係合させた状態で、シフト・セレクトロッド２３を軸まわりに回転させることで、作動軸１８をパーキングポジションに向けて図２の矢印Ａ方向に摺動させると、アーム部材３２の溝部３２ａに突起部３１ａを押圧されたリンク部材３１が矢印Ｂ方向に揺動し、パーキングロッド３３を矢印Ｃ方向に駆動する。その結果、支持部材３６の固定カム面３６ａとパーキングポール２８の可動カム面２８ｂとの間にカム部材３４が押し込まれ、パーキングポール２８が矢印Ｄ方向に揺動して係止爪２８ａがパーキングギヤ２６の係止溝２６ａ…の一つに係合することで、回転軸２５が回転不能に拘束されてパーキングロックが作動する。

上述とは逆にシフト・セレクトロッド２３で作動軸１８を矢印Ａ′方向に摺動させると、リンク部材３１およびパーキングロッド３３がそれぞれ矢印Ｂ′および矢印Ｃ′に移動し、スプリング２９の弾発力でパーキングポール２８が矢印Ｄ′方向に揺動して、パーキングポール２８の係止爪２８ａがパーキングギヤ２６の係止溝２６ａから離脱することで、回転軸２５の拘束が解かれてパーキングロックが作動解除する。

リンク部材３１は、支軸３０を挟んで突起部３１ａの反対側に、防振ゴムよりなるカウンタウエイト３７を備える。

次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。

車両が前面衝突したり急制動したりして急減速すると、前後方向に配置された作動軸１８に前向き（図２の矢印Ａ方向）の慣性力が作用する。作動軸１８にはシフトフォーク２１やシフトレール２２が設けられているため、その分だけ質量が増加して前記慣性力が大きくなり、作動軸１８が予期せずに矢印Ａ方向に摺動してパーキングポジションに入ってしまう可能性がある。

このような前向きの慣性力は、リンク部材３１やパーキングロッド３３にも作用するが、カウンタウエイト３７を除くリンク部材３１の本体部は略中央部を支軸３０で枢支されているため、リンク部材３１の本体部に作用する前向きの慣性力はリンク部材３１をパーキングロックが作動解除する方向に揺動させることはない。またパーキングロッド３３に作用する前向きの慣性力は、リンク部材３１をパーキングロックが作動解除する方向に揺動させようとするが、小径のパーキングロッド３３の質量は大径の作動軸１８の質量に比べて遥かに小さいため、パーキングロッド３３に作用する前向きの慣性力は作動軸１８に作用する前向きの慣性力を打ち消すには至らない。

特に本実施の形態では、シフト・セレクトロッド２３のシフトフィンガー２４がシフトレール２２のカム孔２２ａに選択的に係合する構造であるため、シフトフィンガー２４が作動軸１８に設けられたシフトレール２２に係合している場合には、シフトフィンガー２４とシフトレール２２との係合により作動軸１８の矢印Ａ方向に摺動が阻止される可能性があるが、シフトフィンガー２４が作動軸１８に設けられたシフトレール２２に係合していない場合には、作動軸１８が矢印Ａ方向に摺動してパーキングポジションに入ってしまう可能性が高くなる。

このようにして作動軸１８に作用する前向きの慣性力により、作動軸１８が矢印Ａ方向に摺動してパーキングポジションに入ると、リンク部材３１が矢印Ｂ方向に揺動し、パーキングロッド３３が矢印Ｃ方向に移動し、パーキングポール２８が矢印Ｄ方向に揺動してパーキングロックが作動するため、駆動輪Ｗ，Ｗがロックして車体や乗員に大きな衝撃が加わる可能性がある。

しかしながら、本実施の形態によれば、車両が前面衝突したり急制動したりして急減速すると、リンク部材３１に設けたカウンタウエイト３７にも前向きの慣性力が作用し、この慣性力はリンク部材３１をパーキングロックが作動解除する方向である矢印Ｂ′方向に揺動させようとするため、言い換えると、作動軸１８が矢印Ａ方向に摺動するのを阻止するように作用するため、リンク部材３１の矢印Ｂ方向の揺動が阻止されてパーキングロックが意図せずに作動するのを防止することができる。

このとき、リンク部材３１がパーキングロックが作動する方向である矢印Ｂ方向に揺動するのを確実に阻止するには、パーキングロッド３３およびカウンタウエイト３７に作用する慣性力がリンク部材３１を矢印Ｂ′方向に揺動させるモーメントが、作動軸１８に作用する慣性力がリンク部材３１を矢印Ｂ方向に揺動させるモーメントを上回るように、カウンタウエイト３７の質量を設定することが必要である。

またカウンタウエイト３７は防振ゴムで構成されているため、車両が急減速した衝撃がカウンタウエイト３７に伝達されたとき、カウンタウエイト３７が振動エネルギーを吸収することで騒音の発生を抑制することができる。

以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。

例えば、実施の形態では作動軸１８が前後方向に配置されているが、作動軸１８の配置方向は前後方向に限定されず、前後方向に対して９０゜以外の角度で傾斜する方向であっても良い。すなわち、作動軸１８が前後方向に対して９０゜の角度を持って車幅方向や上下方向に配置されている場合には、前後方向の慣性力が作用しても作動軸１８は軸方向に摺動しないため、パーキングロック装置の予期せぬ作動が発生することはない。本実施の形態の如く作動軸１８が前後方向に配置されている場合には、慣性力の全成分が作動軸１８を摺動させるように作用するため、本発明の効果が最も有効に発揮される。

また実施の形態では複数のシフトロッドのうちの１本をパーキングロック装置の作動軸１８として利用しているが、パーキングロック装置に専用の作動軸１８を設けても良い。

１２ 変速機ケース
１８ 作動軸
２５ 回転軸
２６ パーキングギヤ
２８ パーキングポール
３１ リンク部材
３７ カウンタウエイト
Ｗ 駆動輪

Claims (2)

1. 変速機ケース（１２）に回転自在に支持されて駆動源からの駆動力を駆動輪（Ｗ）に伝達する回転軸（２５）と、前記回転軸（２５）に設けられたパーキングギヤ（２６）と、前記変速機ケース（１２）に軸方向摺動自在に支持されて両端部が車体前後方向にずれた位置に配置される作動軸（１８）と、前記作動軸（１８）の摺動により揺動するリンク部材（３１）と、前記リンク部材（３１）の揺動により前記パーキングギヤ（２６）に係合して前記回転軸（２５）を回転不能に拘束するパーキングポール（２８）とを備えるパーキングロック装置であって、
   前記リンク部材（３１）は前記作動軸（１８）の軸方向の慣性力を打ち消すためのカウンタウエイト（３７）を備えることを特徴とするパーキングロック装置。
2. 前記カウンタウエイト（３７）は防振ゴムからなることを特徴とする、請求項１に記載のパーキングロック装置。
   

Images