JP7391325B2 - 制動装置、および制動装置を備えた引戸 - Google Patents

制動装置、および制動装置を備えた引戸 Download PDF

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本発明は、回転速度の違いに基づいて動力を断続するクラッチ機構を備えている制動装置と、制動装置を備えた引戸に関する。引戸に適用した制動装置は、例えば戸パネルの荒締まりや、戸パネルが急開閉されるのを制動する。
この種の制動装置は、本出願人の提案に係る特許文献1に開示されている。特許文献1における制動装置は、4個のギヤと、1個のロータリーダンパーと、1個のクラッチで構成されており、閾値を越えて移動する戸パネルを応答良く速やかに制動できる。クラッチは、ギヤの回転動力を受け継ぐ爪ディスクおよびウェイトと、爪ディスクで支持されるクラッチ爪と、クラッチ爪を動力遮断姿勢に移動付勢するクラッチばねと、内周面に一群のクラッチ歯が形成されたクラッチドラムなどで構成される。爪ディスクが閾値を越える速度で回転すると、クラッチ爪がクラッチばねのばね力に抗して動力伝動姿勢に切換り、クラッチドラムを回転させて出力ギヤ、および制動ギヤを介してロータリーダンパーに回転動力が伝動され制動される。
特開2019-65551号公報
特許文献1の制動装置は、戸パネルが所定値を越える速い速度で移動するときの回転動力をロータリーダンパーで制動して、戸パネルの荒締まりを防止する。しかし、戸パネルが所定速度に達する直近の速度で開閉移動される場合には、クラッチ機構が動力伝動姿勢に切換らない。そのため、戸パネルの開閉速度が閾値未満であったとしても、閾値速度に近い速度で開閉される場合にはロータリーダンパーは作動せず、戸パネルが開口枠に衝突して手指や衣服の一部が挟まれるおそれがある。とくに、重量が大きな戸パネルの場合には運動慣性力が大きくなるため、安全性を確保するうえで問題があった。
本発明の目的は、従来の制動装置と同様に、閾値を越えて移動する戸パネルなどの可動体を応答良く速やかに制動できるのはもちろん、可動体が閾値未満の速度で開閉される場合にも、適度の制動作用を発揮して可動体が固定体に衝突するのを緩和できる制動装置と、制動装置を備えた引戸を提供することにある。
本発明に係る制動装置は、可動体2と固定体1のいずれか一方に設けられるラック体9と、可動体2と固定体1の他方に設けられてラック体9と噛み合いながら相対移動するダンパーユニット8とを備える。ダンパーユニット8は動力制動系統と、動力断続系統と、これらを収容するハウジング10とを備えている。動力制動系統は、ラック体9に噛み合うピニオンギヤ12と、ピニオンギヤ12の特定方向の回転動力を伝動する一方向クラッチ13と、一方向クラッチ13の回転動力を制動するダンパー機構17と、動力断続系統から出力された回転動力をダンパー機構17に伝動する終段ギヤ14とを備えている。動力断続系統は、ピニオンギヤ12に噛み合う入力ギヤ15と、入力ギヤ15の回転動力を断続するクラッチ機構11と、クラッチ機構11の回転動力を終段ギヤ14に伝動する出力ギヤ16とを備えている。ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、入力ギヤ15の回転動力を受けたクラッチ機構11が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ16と終段ギヤ14を介してダンパー機構17に回転動力を伝動する。ピニオンギヤ12が予め設定された閾値未満で回転駆動される状態では、クラッチ機構11は動力遮断状態を維持し、ピニオンギヤ12の回転動力が一方向クラッチ13を介してダンパー機構17に伝動されて、同ダンパー機構17がピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮することを特徴とする。
ピニオンギヤ12の歯数が入力ギヤ15の歯数より大きく設定されている。出力ギヤ16の歯数が終段ギヤ14の歯数より大きく設定されている。
ピニオンギヤ12と一方向クラッチ13とダンパー機構17と終段ギヤ14が、ハウジング10に設けた第1軸18で支持されている。一方向クラッチ13とダンパー機構17、および終段ギヤ14とダンパー機構17は、それぞれ同行回転可能に連結されている。ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態において、一方向クラッチ13が終段ギヤ14の駆動回転数とピニオンギヤ12の駆動回転数の差を吸収している。
クラッチ機構11は、ピニオンギヤ12の回転動力を受継いで同行回転する爪ディスク31およびウェイト32と、爪ディスク31に設けたクラッチ爪33を介して爪ディスク31の回転動力を受継ぐ、一群のクラッチ歯34を備えたクラッチドラム35を備えている。クラッチ爪33は、爪ディスク31で動力遮断姿勢と動力伝動姿勢の間で揺動可能に支持されて、クラッチばね38で動力遮断姿勢に向かって付勢されている。クラッチ爪33とウェイト32は、クラッチ爪33とウェイト32のいずれか一方に固定される爪軸41と、他方に形成されて爪軸41と係合するクラッチ溝42を介して、相対移動可能な状態で同行回転可能に連結されている。ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態において、ウェイト32に作用する回転トルクが、クラッチばね38のばね力を越えた時点で、クラッチ爪33が動力伝動姿勢に切換わってクラッチ歯34と係合し、出力ギヤ16の回転動力をクラッチドラム35および終段ギヤ14に伝動する。
ダンパー機構17はロータリーダンパー25で構成されている。
本発明に係る別の制動装置は、可動体2と固定体1のいずれか一方に設けられるラック体9と、可動体2と固定体1の他方に設けられてラック体9と噛み合いながら相対移動するダンパーユニット8とを備えている。ダンパーユニット8は第1動力制動系統と第2動力制動系統を備えている。第1動力制動系統は、ラック体9に噛み合うピニオンギヤ12と、ピニオンギヤ12の回転動力を制動する第1ダンパー機構17を備えている。第2動力制動系統は、ピニオンギヤ12に噛み合う入力ギヤ15と、入力ギヤ15の回転動力を断続するクラッチ機構11と、クラッチ機構11の回転動力を制動ギヤ51に伝動する出力ギヤ16と、制動ギヤ51の回転動力を制動する第2ダンパー機構52を備えている。ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、第1ダンパー機構17が制動力を発揮し、かつ、入力ギヤ15の回転動力を受けたクラッチ機構11が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ16と制動ギヤ51を介して第2ダンパー機構52が制動力を発揮している。ピニオンギヤ12が予め設定された閾値未満で回転駆動される状態では、クラッチ機構11は動力遮断状態を維持し、ピニオンギヤ12の回転動力がダンパー機構17に伝動されて、同ダンパー機構17がピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮することを特徴とする。
第2ダンパー機構52の制動力が、第1ダンパー機構17の制動力より大きく設定してある。
制動装置が引戸に適用されて、ダンパーユニット8とラック体9のいずれか一方が戸パネル2に、他方が開口枠1に設けられている。一方向クラッチ13は、戸パネル2が閉じ操作されるときにピニオンギヤ12の回転動力をダンパー機構17に伝動する。
本発明に係る制動装置においては、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、入力ギヤ15の回転動力を受けたクラッチ機構11が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ16と終段ギヤ14を介してダンパー機構17に回転動力を伝動して、可動体2の移動をダンパー機構17で制動できるようにした。また、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値未満で回転駆動される状態では、クラッチ機構11は動力遮断状態を維持し、ピニオンギヤ12の回転動力が一方向クラッチ13を介してダンパー機構17に伝動されて、同ダンパー機構17がピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮するようにした。
こうした制動装置によれば、閾値を越えて移動する可動体2を応答良く速やかに制動できる。さらに、可動体2が閾値未満の速度で開閉される場合には、ピニオンギヤ12の回転動力が一方向クラッチ13を介してダンパー機構17に伝動されて、同ダンパー機構17がピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮できる。従って、可動体2が閾値未満ではあるものの、閾値に近い速度で開閉されるような場合に、ダンパー機構17を作動させて可動体2を制動でき、可動体2が高速度で移動するのを確実に防止して、従来の制動装置に比べて安全性を向上できる。
ピニオンギヤ12の歯数を入力ギヤ15の歯数より大きく設定し、出力ギヤ16の歯数を終段ギヤ14の歯数より大きく設定するようにした。こうした制動装置によれば、ピニオンギヤ12の駆動回転数を増幅した状態でクラッチ機構11に伝動して、クラッチ機構11の動力断続時の応答度を高めることができる。また、出力ギヤ16の駆動回転数を増幅した状態でダンパー機構17に伝動して、ダンパー機構17の制動力を増強できる。従って、制動装置の応答度と制動能力を大幅に向上して、重量や運動慣性力が大きな可動体2であっても支障なく制動装置を適用できる。
動力制動系統を構成するピニオンギヤ12と一方向クラッチ13とダンパー機構17と終段ギヤ14を第1軸18で支持し、一方向クラッチ13とダンパー機構17、および終段ギヤ14とダンパー機構17は、それぞれ同行回転可能に連結した。こうした制動装置によれば、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態においては、終段ギヤ14とダンパー機構17が同行回転して可動体2を制動する。このとき、一方向クラッチ13の回転動力もダンパー機構17に伝わろうとする。しかし、終段ギヤ14の回転速度がピニオンギヤ12の回転速度より充分に大きいので、ダンパー機構17は終段ギヤ14と同行回転して可動体2を制動する。つまり、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態においては、見かけ上、一方向クラッチ13が終段ギヤ14の駆動回転数とピニオンギヤ12の駆動回転数の差を吸収していることになる。従って、ピニオンギヤ12と終段ギヤ14の駆動回転数が異なっているにも拘らず、ダンパー機構17を正常に作動させて、終段ギヤ14の駆動回転数に応じた制動力を発揮できる。
クラッチ機構11は、爪ディスク31およびウェイト32と、クラッチ爪33を介して爪ディスク31の回転動力を受継ぐクラッチドラム35を備えるようにした。こうしたクラッチ機構11によれば、予め設定された閾値を越える角加速度が爪ディスク31およびクラッチ爪33に作用する状態において、ウェイト32に作用する回転トルクが、クラッチばね38のばね力を越えた時点で、クラッチ爪33が動力伝動姿勢に切換ってクラッチドラム35のクラッチ歯34と係合し、入力ギヤ15の回転動力をクラッチドラム35に伝動できる。このとき、クラッチ爪33が揺動を開始してからクラッチ歯34と係合するまでに要する爪ディスク31の回転量はごく僅かでしかなく、クラッチ爪33を極めて迅速に動力伝動姿勢に切換えることができる。従って、閾値を越えて移動する可動体2をダンパー機構17で応答良く速やかに制動して荒閉りや急開閉を防止できる。4個のギヤ12・14・15・16と、1個のダンパー機構17と、1個のクラッチ機構11などで制動装置を構成するので、制動装置の構成部品点数を減らして全体構造を簡素化し、コンパクト化できる。また、クラッチ爪33を瞬時に動力伝動姿勢に切換えることができるので、制動が開始されるまでの可動体2の助走距離を小さくできる。
ダンパー機構17はロータリーダンパー25で構成するようにした。こうした制動装置によれば、制動開始時の回転動作をロータリーダンパー25で吸収しながら、可動体2の移動を的確に制動できる。従って、制動開始時にクラッチ機構11やダンパー機構17に衝撃力が作用するのを解消して、制動装置の耐久性を向上できるうえ、比較的軽量の可動体2から、大面積で重量が大きな可動体2にわたって制動装置を広く適用できる。
本発明に係る別の制動装置においては、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、第1ダンパー機構17が制動力を発揮し、かつ、入力ギヤ15の回転動力を受けたクラッチ機構11が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ16と制動ギヤ51を介して第2ダンパー機構52が制動力を発揮できるようにした。また、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値未満で回転駆動される状態では、クラッチ機構11は動力遮断状態を維持し、ピニオンギヤ12の回転動力がダンパー機構17に伝動されて、同ダンパー機構17がピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮するようにした。
こうした制動装置によれば、閾値を越えて移動する可動体2に、第1ダンパー機構17の制動力と、第2ダンパー機構52の制動力を同時作用させて制動することができる。このように、可動体2に各ダンパー機構17・52の制動力の合計値を作用させると、ダンパー機構17のみで制動を行う制動装置に比べて、閾値を越えて移動する可動体2を各ダンパー機構17・52で応答良く速やかに制動して、荒閉りや急開閉をさらに効果的に防止できる。また、可動体2が閾値未満の速度で開閉される場合には、ピニオンギヤ12の回転動力が第1ダンパー機構17に伝動されて、同ダンパー機構17がピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮する。従って、可動体2が閾値未満ではあるものの、閾値に近い速度で開閉されるような場合に、第1ダンパー機構17を作動させて可動体2を制動でき、可動体2が高速度で移動するのを確実に防止して、従来の制動装置に比べて安全性を向上できる。
第2ダンパー機構52の制動力が第1ダンパー機構17の制動力より大きく設定してあると、可動体2が閾値を越えて移動するときの各ダンパー機構17・52の制動力の合計値を、1個のダンパー機構17のみで制動を行う制動装置に比べて、充分に大きくすることができる。従って、可動体2を応答良く速やかに制動して、荒閉りや急開閉をさらに効果的に防止できる。
引戸に適用される制動装置においては、ダンパーユニット8とラック体9のいずれか一方が戸パネル2に、他方が開口枠1に設けられる。一方向クラッチ13は、戸パネル2が閉じ操作されるときにピニオンギヤ12の回転動力をダンパー機構17に伝動するようにした。こうした引戸によれば、戸パネル2が乱暴に閉じ操作される場合に、戸パネル2が開口枠1に衝突して大きな衝突音や衝撃を生じ、あるいは誤って手指や衣服の一部が挟み込まれるのを解消できる。また、ピニオンギヤ12が閾値に近い回転速度で回転駆動される場合には、ピニオンギヤ12の回転動力が一方向クラッチ13を介してダンパー機構17に伝動されるので、ダンパー機構17はピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮して、戸パネル2が開口枠1に衝突するのを防止できる。
本発明に係る制動装置を構成するクラッチ機構を示す横断平面図である。 本発明に係る制動装置が適用された引戸を示す正面図である。 ダンパーユニットの動力制動系統を示す縦断側面図である。 ダンパーユニットの動力断続系統を示す縦断側面図である。 ダンパーユニットの縦断正面図である。 ダンパーユニットの分解斜視図である。 動力断続系統を示す分解斜視図である。 クラッチ機構を示す横断平面図であり、(a)は動力遮断状態を、(b)は動力伝動状態を示している。 ダンパーユニットの動力伝動形態を示す説明図であり、(a)は回転動力が一方向クラッチを経由して伝動される状態を、(b)は回転動力がクラッチ機構を経由して伝動される状態を示している。 本発明に係る制動装置の別の実施例を示す横断平面図である。 別の実施例に係るダンパーユニットの動力伝動形態を示す説明図であり、(a)は回転動力が第1ダンパー機構に伝動される状態を、(b)は回転動力がクラッチ機構を経由して第2ダンパー機構に伝動される状態を示している。
(実施例1) 図1ないし図9は本発明に係る制動装置を引戸に適用した実施例1を示している。本発明における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2において、引戸は開口枠(固定体)1と、開口枠1に沿って左右に開閉操作される1個の戸パネル(可動体)2とを備えている。開口枠1の左半部分には戸パネル2を閉じた状態において室外を見渡すことが可能な板ガラス3が固定されている。この板ガラス3の外面側が全開放された戸パネル2の戸袋として機能する。戸パネル2の下面左右には、開口枠1の下枠に固定したガイドレール4に沿って転動する戸車5が設けられている。また、図示していないが戸パネル2の上面には、開口枠1の上枠に設けた振止めレールで案内されるスライド溝が凹み形成されている。戸パネル2は、アルミニウム条材を四角枠状に組んだパネル枠と、パネル枠に嵌め込まれた複層構造の板ガラスを備えたガラス戸として構成されており、その単体重量は約200kgである。図示していないが、パネル枠には戸パネル2を開閉するための把手が一体に設けられている。
上記のように比較的大きな重量の戸パネル2が乱暴に閉じ操作されると、戸パネル2が開口枠1に衝突して大きな衝突音や衝撃を生じ、あるいは誤って手指や衣服の一部が挟み込まれるおそれがある。こうした戸パネル2の荒閉りを防ぎ、さらに戸パネル2が閾値未満の速度で開閉される場合にも、適度の制動作用を発揮して戸パネル2が開口枠1に衝突するのを緩和するために、開口枠1と戸パネル2の間に制動装置を設けている。図3および図4において制動装置は、開口枠1の上枠の下面に固定されるダンパーユニット8と、ダンパーユニット8に対応して戸パネル2の上枠の前面に固定されるラック体9とを備えており、ラック体9が戸パネル2と同行移動するときの移動動作を利用してダンパーユニット8を作動させる。
図3ないし図6においてダンパーユニット8は、動力制動系統と、動力断続系統と、これらを収容するハウジング10とを備えている。動力制動系統は、ラック体9に噛み合うピニオンギヤ12と、戸パネル2が閉じ操作されるときのピニオンギヤ12の回転動力(特定方向の回転動力)をダンパー機構に伝える一方向クラッチ13と、一方向クラッチ13の回転動力を制動するダンパー機構17と、動力断続系統から出力された回転動力をダンパー機構17に伝動する終段ギヤ14とを備えている。終段ギヤ14と、ダンパー機構17と、一方向クラッチ13と、ピニオンギヤ12は、ハウジング10に設けた第1軸18に記載順に組付けられている。
動力断続系統は、ピニオンギヤ12と常時噛み合う入力ギヤ15と、入力ギヤ15の回転動力を断続する角加速度反応式のクラッチ機構11と、クラッチ機構11の回転動力を終段ギヤ14に伝動する出力ギヤ16を備えている。出力ギヤ16とクラッチ機構11と入力ギヤ15は、ハウジング10に設けた第2軸19に記載順に組付けられている。
ハウジング10は、第1軸18と第2軸19の上下両端を支持する一対のケース板20と、一対のケース板20の間に挟持固定されて各ギヤ12・14・15・16の周囲を囲む左右の遮音ブロック21・22とを備えている。ピニオンギヤ12がラック体9と噛み合うときの各ギヤ12・14・15・16の噛合騒音を低減し、ダンパーユニット8が作動するときの騒音を低下させるために、ピニオンギヤ12、入力ギヤ15、出力ギヤ16、クラッチドラム35を含む終段ギヤ14、および遮音ブロック21・22は、それぞれエンジニアリングプラスチック材で形成されている。図3において符号23は化粧カバーを示す。
上記のように、各ギヤ12・14・15・16、および遮音ブロック21・22がエンジニアリングプラスチック材で形成されていると、各ギヤ12・14・15・16が金属材で形成してある場合に比べて、ピニオンギヤ12がラック体9と噛み合うときの各ギヤ12・14・15・16の噛合騒音を効果的に低減できるうえ、噛合騒音がダンパーユニット8の外へ漏洩するのを遮音ブロック21・22で軽減できるので、静粛性に優れた制動装置を得ることができる。
動力制動系統におけるダンパー機構17は、市販のロータリーダンパー25で構成されており、ピニオンギヤ12の回転動力、あるいは終段ギヤ14の回転動力を受けて、ローターを備えたダンパー軸26が回転駆動され、そのときのオイルの粘性抵抗で制動力を発揮する。ロータリーダンパー25は、重量が200kgの戸パネル2に対して0.5N・mの定格トルクを発揮して、戸パネル2の荒閉りや、戸パネル2が予め設定された閾値未満の速度で移動するのを制動する。なお、ピニオンギヤ12におけるダンパートルクは0.8N・mである。第1軸18の過半下部に形成した角軸部に終段ギヤ14とロータリーダンパー25が係合連結され、角軸部より上側の丸軸部に一方向クラッチ13が係合連結されている。第1軸18の上下端は、上下のケース板20で回転自在に支持されている。
ロータリーダンパー25のダンパーケースの周囲2個所には締結座27が設けられており、一対の締結座27は片方の遮音ブロック21と下側のケース板20に固定した受座28で支持されて、ピン29で受座28にかしめ固定されている。これにより、ロータリーダンパー25のダンパーケースを、ハウジング10に確りと固定することができるので、ダンパー軸26が終段ギヤ14に同行して高速で回転駆動される場合に、ダンパーケースは回転不能に固定保持され、ロータリーダンパー25は終段ギヤ14の駆動回転数に応じた制動力を発揮する。また、遮音ブロック21を利用して、片方の受座28を形成するので、その分だけロータリーダンパー25の取付け構造を簡素化できる。
図4および図7に示すように、動力断続系統におけるクラッチ機構11は、入力ギヤ15と同行回転する爪ディスク31およびウェイト32と、爪ディスク31に設けたクラッチ爪33を介して爪ディスク31の回転動力を受継ぐ、一群のクラッチ歯34を備えたクラッチドラム35などを備えている。入力ギヤ15と爪ディスク31は、爪ディスク31を貫通する4個のリベット(締結体)36で同行回転可能に連結されている。クラッチ爪33は、爪ディスク31に固定した揺動軸37で動力遮断姿勢と動力伝動姿勢の間で揺動可能に支持されて、クラッチばね38で動力遮断姿勢に向かって付勢されている(図8参照)。出力ギヤ16はクラッチドラム35の下開口面の周囲に形成してある。クラッチ爪33を除く回転体がハウジング10に固定した第2軸19で回転自在に軸支されている。
爪ディスク31はできるだけ重量を小さくするために、薄い鋼板で円板状に形成されており、その下面側にポリアセタール製のクラッチ爪33が揺動軸37で揺動可能に軸支されている。クラッチ爪33の揺動先端には、クラッチ歯34と係脱する係合爪40が形成されている。係合爪40はくさび状に形成されており、くさび先端の交差部はクラッチ歯34との係脱を円滑に行うために丸めてある。図8(a)に示すようにクラッチ爪33が動力遮断姿勢に切換った状態では、係合爪40がクラッチ歯34から分離するので、爪ディスク31が入力ギヤ15と同行回転するのに対して、クラッチドラム35は静止している。また、図8(b)に示すように、クラッチ爪33が動力伝動姿勢に切換った状態では、係合爪40がクラッチ歯34と係合して、爪ディスク31の回転動力をクラッチドラム35および出力ギヤ16に伝動する。クラッチ爪33の揺動軸37より先端寄りの爪体の下面側に爪軸41が固定されており、この爪軸41とウェイト32に形成したクラッチ溝42が係合することで、クラッチ爪33はウェイト32に対して相対移動可能な状態で同行回転可能に連結されている。
図7においてウェイト32は多段盤状に形成されており、大きな運動慣性力や静止慣性力を発揮できるよう全体が金属材で形成されている。ウェイト32の上面には、クラッチ爪33を収容する爪収容部43が切欠き形成されており、ウェイト32の下面にはクラッチばね38を収容する長方形状のばね凹部44が凹み形成されている。ばね凹部44の一側端にはクラッチばね38用の掛止ピン45が固定されている(図8参照)。クラッチばね38は引張りコイルばねからなり、その一端がクラッチ溝42を貫通してばね凹部44に臨む爪軸41に掛止され、他端は掛止ピン45に掛止されている。
ピニオンギヤ12の歯数は入力ギヤ15の歯数より大きく設定されていて、ピニオンギヤ12の回転動力を増速した状態でクラッチ機構11に伝動する。同様に出力ギヤ16の歯数は終段ギヤ14の歯数より大きく設定されていて、クラッチ機構11から出力される回転動力を増速した状態でダンパー機構17に伝動する。この実施例では、ピニオンギヤ12の歯数と入力ギヤ15の歯数は20対13とし、出力ギヤ16の歯数と終段ギヤ14の歯数は40対26とした。
上記のように、ピニオンギヤ12の回転動力を増速した状態でクラッチ機構11に伝動することにより、爪ディスク31をより高速度で回転駆動して、同ディスク31とウェイト32の角加速度の差を大きくすることができる。詳しくは、ピニオンギヤ12の回転動力が増速した状態で入力ギヤ15に伝動されるため、爪ディスク31およびクラッチ爪33はピニオンギヤ12より高速度で回転駆動される。その一方で、爪ディスク31に比べて重量が大きなウェイト32には、大きな運動慣性力または静止慣性力が作用するため、ウェイト32が爪ディスク31に直ちに同行して回転することはなく、爪ディスク31はウェイト32に先行した状態で回転する。このときの角加速度の差によって、クラッチ爪33をより迅速に動力伝動姿勢に切換えて、入力ギヤ15の回転動力をクラッチ機構11と出力ギヤ16を介して終段ギヤ14へ伝動できる。つまり、ピニオンギヤ12の回転動力を増速した状態でクラッチ機構11に伝動することで、クラッチ機構11の応答度を高めることができる。また、出力ギヤ16の駆動回転数を増幅した状態で終段ギヤ14に伝動するので、ロータリーダンパー25の回転速度を高めて、より大きな制動力を発揮させ、ダンパー機構17の制動力を増強できる。従って、制動装置の応答度と制動能力を大幅に向上して、重量や運動慣性力が大きな戸パネル2であっても支障なく適用できる制動装置を提供できる。
次に制動装置の作動状況を説明する。戸パネル2が任意位置にあるとき、爪ディスク31は静止しているので、クラッチ爪33は図8(a)に示すようにクラッチばね38の付勢力を受けて動力遮断姿勢に保持されている。この状態の爪軸41はクラッチ溝42の内端に位置しており、爪軸41の中心と、揺動軸37の中心と、掛止ピン45の中心は同一直線上に位置している。開放されていた戸パネル2を閉じ操作すると、ラック体9がピニオンギヤ12と噛合って、ピニオンギヤ12が回転駆動される。
このとき、戸パネル2が比較的低速で移動する状態では、図9(a)に示すように、ピニオンギヤ12の回転動力が一方向クラッチ13を介してロータリーダンパー25に伝動されローターに回転抵抗が作用する。しかし、ローターの回転速度は小さいので、戸パネル2には弱い制動力が働くのみで、閉じ操作に支障をきたすことはない。ピニオンギヤ12の回転動力は入力ギヤ15を介して動力断続系統にも同時に伝えられるので、入力ギヤ15および爪ディスク31はラック体9の移動速度に応じた低速度で回転する。また、爪ディスク31が回転する状態では、同ディスク31の回転トルクが爪軸41とクラッチ溝42を介してウェイト32に作用するので、ウェイト32は爪ディスク31に同行して回転する。
戸パネル2が強い力で閉じ操作される状況では、クラッチ爪33に作用する角加速度が急激に大きくなるので、クラッチ爪33はクラッチばね38のばね力に抗しながら揺動して動力伝動姿勢に切換わり、その係合爪40がクラッチ歯34と係合する。その結果、入力ギヤ15の回転動力は図9(b)に示すように、クラッチ機構11と出力ギヤ16を介して終段ギヤ14へ伝動され、ロータリーダンパー25が作動して低速時より強い制動力を発揮するので、戸パネル2の閉じ移動動作を急速に制動して荒閉りを解消することができる。このとき、クラッチ爪33が揺動を開始してからクラッチ歯34と係合するまでに要する爪ディスク31の回転量はごく僅かでしかなく、クラッチ爪33を極めて迅速に動力伝動姿勢に切換えることができる。従って、閾値を越えて移動する戸パネル2をダンパー機構17で応答良く速やかに制動して荒閉りや急開閉を防止できる。4個のギヤ12・14・15・16と、1個のダンパー機構と、1個のクラッチ機構11などで制動装置を構成するので、制動装置の構成部品点数を減らして全体構造を簡素化し、コンパクト化できる。また、クラッチ爪33を瞬時に動力伝動姿勢に切換えることができるので、制動が開始されるまでの戸パネル2の助走距離を小さくできる。
終段ギヤ14からロータリーダンパー25に回転動力が伝動されるとき、一方向クラッチ13の回転動力もロータリーダンパー25に伝わろうとするが、終段ギヤ14の回転速度がピニオンギヤ12の回転速度より充分に大きいので、ロータリーダンパー25は終段ギヤ14と同行回転して制動力を発揮する。つまり、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態においては、見かけ上、一方向クラッチ13が終段ギヤ14の駆動回転数とピニオンギヤ12の駆動回転数の差を吸収していることになる。こうした制動装置によれば、制動開始時の回転動作をロータリーダンパー25で吸収しながら、戸パネル2の移動を的確に制動できる。また、制動開始時にクラッチ機構11やダンパー機構17に衝撃力が作用するのを解消できるので、制動装置の耐久性を向上できるうえ、比較的軽量の戸パネル2から、大面積で重量が大きな戸パネル2にわたって制動装置を広く適用できる。さらに、ピニオンギヤ12と終段ギヤ14の駆動回転数が異なっているにも拘らず、ロータリーダンパー25を正常に作動させて、終段ギヤ14の駆動回転数に応じた制動力を発揮させることができる。
上記のように、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、入力ギヤ15の回転動力を受けたクラッチ機構11が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ16と終段ギヤ14を介してダンパー機構17に回転動力を伝動する。また、クラッチ爪33が動力伝動姿勢に切換わった状態の爪軸41は、クラッチ溝42の外端で受止められているので、それ以上クラッチ爪33とウェイト32が相対移動することはなく、ウェイト32は爪ディスク31に同行して回転する。このように、一連の動力伝動動作は、予め設定された閾値を越える角加速度が爪ディスク31およびクラッチ爪33に作用する状態において、ウェイト32に作用する回転トルクがクラッチばね38のばね力を越えた時点で、クラッチ爪33がクラッチ歯34と係合し、入力ギヤ15の回転動力をクラッチドラム35に伝動する、と言うことができる。
戸パネル2が乱暴に閉じ操作されて、ピニオンギヤ12が閾値に近い回転速度で回転駆動されることがあるが、その場合にクラッチ機構11が動力伝動状態に切換ることはない。しかし、ピニオンギヤ12の回転動力は一方向クラッチ13を介してロータリーダンパー25に伝動され続けるので、ロータリーダンパー25はピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮して、戸パネル2が開口枠1に衝突するのを防止できる。このように制動装置は、戸パネル2が閾値未満の速度で開閉される場合にも、適度の制動作用を発揮して戸パネル2が開口枠に衝突するのを緩和し、従来の制動装置に比べて安全性を向上できる。
上記のように、角加速度の違いで回転動力を断続するクラッチ機構11によれば、クラッチ爪33を瞬時に動力伝動姿勢に切換えることができるので、制動が開始されるときの戸パネル2の助走距離を小さくでき、その分だけラック体9の全長を短くして、引戸の制動装置のコンパクト化に寄与できる。例えば、閉じ端から200mm前後離れた位置まで戸パネル2が開放されている状況を想定するとき、遠心クラッチを使用した従来の制動装置の場合には、助走距離が不足するため遠心クラッチを動力伝動状態に切換えることができず制動作用を発揮できない。しかし、上記のクラッチ機構11によれば、クラッチ爪33を瞬時に動力伝動姿勢に切換えることができるので、戸パネル2が200mm移動する間に、ロータリーダンパー25を作動させて荒閉りを防止できる。また、制動開始時の衝撃的な回転動作をロータリーダンパー25で吸収しながら、戸パネル2の移動を制動するので、制動開始時に大きな衝撃が作用することがない。従って、制動開始時にクラッチ機構11やダンパー機構17に衝撃力が作用するのを解消して、引戸の制動装置の耐久性を向上できる。実用上は、戸パネル2の重量に対応する定格トルクを備えたロータリーダンパー25を適宜選定し使用することにより、比較的軽量の戸パネル2から、大面積で重量が大きな戸パネル2にわたって制動装置を広く適用できる。
ロータリーダンパー25で制動された戸パネル2は急激に移動速度が低下し、戸パネル2に加えられた閉じ操作力にもよるが、最終的には戸パネル2がゆっくりと開口枠1に衝突して停止するか、戸パネル2が閉じ端に達する直前に停止する。これに伴い、爪ディスク31およびクラッチドラム35は回転を停止し、クラッチ爪33の係合爪40の先端とクラッチ歯34に作用していた押圧力(制動力)が解放され、クラッチ爪33にはクラッチばね38の付勢力のみが作用する。そのため、クラッチドラム35が回転を停止するのと同時に、クラッチ爪33を動力伝動姿勢から動力遮断姿勢へ自動的に復帰揺動させることができる。従って、戸パネル2が停止するごとにクラッチ爪33を動力遮断姿勢にリセットするための機構を付加し、あるいは同機構を操作する手間を省くことができ、クラッチ機構11の簡素化に寄与できる。さらに、クラッチ爪33が動力伝動姿勢に切換った状態では、係合爪40をクラッチ歯34のフラット歯面で受止めるので、動力伝動時のクラッチ爪33とクラッチ歯34の係合姿勢を一定にして、クラッチドラム35に対する回転動力の伝動を常に安定した状態で適確に行える。
閉じ位置にあった戸パネル2が開放操作されるとき、ピニオンギヤ12はラック体9で、閉じ操作時とは逆向きに回転駆動され、これに伴い入力ギヤ15および爪ディスク31も閉じ操作時とは逆向きに回転する。爪ディスク31の回転力は、爪軸41とクラッチ溝42を介してウェイト32に作用するが、このときの爪軸41はクラッチ溝42の内端に係合している。そのため、たとえ戸パネル2が強い力で開放操作されたとしても、クラッチ爪33はウェイト32を爪軸41とクラッチ溝42を介して引きずるようにして同行回転させるので、クラッチ爪33が動力伝動姿勢の側へ向かって揺動することはない。また、ピニオンギヤ12の回転動作は、一方向クラッチ13で遮断されるので、開放操作される戸パネル2に対してロータリーダンパー25の制動力が作用することはなく、戸パネル2を軽快に開放操作できる。
(実施例2) 図10および図11は本発明に係る制動装置の実施例2を示している。実施例2においては、ダンパーユニット8が第1動力制動系統と第2動力制動系統を備えるようにした。第1動力制動系統は、ラック体9に噛み合うピニオンギヤ12と、ピニオンギヤ12の回転動力を制動する第1ダンパー機構17を備えるようにした。第1ダンパー機構17は、実施例1におけるダンパー機構17と同様に、市販のロータリーダンパー25で構成されており、ピニオンギヤ12の回転動力を受けて、ローターを備えたダンパー軸26が回転駆動され、そのときのオイルの粘性抵抗で制動力を発揮する。第2動力制動系統は、ピニオンギヤ12に噛み合う入力ギヤ15と、入力ギヤ15の回転動力を断続するクラッチ機構11と、クラッチ機構11の回転動力を制動ギヤ51に伝動する出力ギヤ16と、制動ギヤ51の回転動力を制動する第2ダンパー機構52を備えるようにした。制動ギヤ51と第2ダンパー機構52は、第3軸53を介して同行回転可能に連結してある。第2ダンパー機構52の制動力は、第1ダンパー機構17の制動力より大きく設定してある。他は実施例1の制動装置と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
実施例2に係る制動装置の場合には、ピニオンギヤ12が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、図11(b)に示すように、入力ギヤ15の回転動力を受けたクラッチ機構11が動力伝動状態に切換り、回転動力が出力ギヤ16と制動ギヤ51を介して第2ダンパー機構52に伝動され、第2ダンパー機構52が制動力を発揮している。このときピニオンギヤ12の回転動力を受けた第1ダンパー機構17も同時に制動力を発揮する。従って、戸パネル2には各ダンパー機構17・52の制動力の合計値が作用するので、ダンパー機構17のみで制動を行う実施例1の制動装置に比べて、閾値を越えて移動する戸パネル2を各ダンパー機構17・52で応答良く速やかに制動して、荒閉りや急開閉をさらに効果的に防止できる。また、第2ダンパー機構52の制動力が第1ダンパー機構17の制動力より大きく設定してあるので、可動体2が閾値を越えて移動するときの各ダンパー機構17・52の制動力の合計値を、1個のダンパー機構17のみで制動を行う制動装置に比べて、充分に大きくすることができる。従って、可動体2の荒閉りや急開閉をさらに効果的に防止できる。
戸パネル2が乱暴に閉じ操作されて、ピニオンギヤ12が閾値に近い回転速度で回転駆動されることがあるが、その場合には、図11(a)に示すように、クラッチ機構11が動力伝動状態に切換ることはない。しかし、ピニオンギヤ12の回転動力は第1ダンパー機構17のロータリーダンパー25に伝動されるので、ロータリーダンパー25はピニオンギヤ12の駆動回転数に応じた制動力を発揮して、戸パネル2が開口枠1に衝突するのを防止できる。このように制動装置は、戸パネル2が閾値未満の速度で開閉される場合にも、適度の制動作用を発揮して戸パネル2が開口枠に衝突するのを緩和し、従来の制動装置に比べて安全性を向上できる。
実施例2における第1ダンパー機構17と第2ダンパー機構52の制動力は、同じであってもよく、第2ダンパー機構52の制動力が第1ダンパー機構17の制動力より小さく設定してあってもよい。要は、戸パネル2の大きさや重量などに応じて、第1ダンパー機構17の制動力と第2ダンパー機構52の制動力が適宜設定してあればよい。こうした制動装置によれば、ピニオンギヤ12と入力ギヤ15のギヤ比の違いで制動力を調整する場合に比べて、各ダンパー機構17・51のロータリーダンパー25を交換するだけで、制動力の設定をより簡便に行える。なお、第1ダンパー機構17のロータリーダンパー25は、一方向クラッチを備えているダンパーであってもよく、その場合には、戸パネル2の開放操作時にロータリーダンパー25が制動力を発揮するのを防止して、戸パネル2を軽快に開放操作できる。
上記以外に、本発明に係る制動装置は、ラック体9の配置位置を変更することにより、戸パネル2が急開閉されるのを防止するダンパーとして使用できる。また、ラック体9を複数個所に配置しておくことにより、荒閉り防止機能と急開閉防止機能を備えた引戸の制動装置とすることができる。必要があれば、ダンパーユニット8を複数個所に配置してもよい。本発明の引戸の制動装置は、実施例で説明したダンパーユニット8を、ケース板20が垂直面に沿う状態で配置して使用することができる。
ダンパーユニット8を戸パネル2に固定する場合には、ラック体9が開口枠1に固定してあってもよい。制動対象の重量が比較的小さい場合には、ピニオンギヤ12と入力ギヤ15のギヤ比と、出力ギヤ16と終段ギヤ14のギヤ比のいずれか一方は、1対1であってもよい。本発明に係る制動装置は、引戸以外にシートベルトのリトラクターや、成人用あるいは介護用の歩行器などに適用することができる。
1 固定体(開口枠)
2 可動体(戸パネル)
8 ダンパーユニット
9 ラック体
11 クラッチ機構
12 ピニオンギヤ
13 一方向クラッチ
14 終段ギヤ
15 入力ギヤ
16 出力ギヤ
17 ダンパー機構
18 第1軸
19 第2軸
20 ケース板
21・22 遮音ブロック
25 ロータリーダンパー
27 締結座
28 受座
29 ピン
31 爪ディスク
32 ウェイト
33 クラッチ爪
34 クラッチ歯
35 クラッチドラム
38 クラッチばね
41 爪軸
42 クラッチ溝

Claims (10)

  1. 可動体(2)と固定体(1)のいずれか一方に設けられるラック体(9)と、可動体(2)と固定体(1)の他方に設けられてラック体(9)と噛み合いながら相対移動するダンパーユニット(8)とを備えており、
    ダンパーユニット(8)は動力制動系統と、動力断続系統を備えており、
    動力制動系統は、ラック体(9)に噛み合うピニオンギヤ(12)と、ピニオンギヤ(12)の特定方向の回転動力を伝動する一方向クラッチ(13)と、一方向クラッチ(13)の回転動力を制動するダンパー機構(17)と、動力断続系統から出力された回転動力をダンパー機構に伝動する終段ギヤ(14)とを備えており、
    動力断続系統は、ピニオンギヤ(12)に噛み合う入力ギヤ(15)と、入力ギヤ(15)の回転動力を断続するクラッチ機構(11)と、クラッチ機構(11)の回転動力を終段ギヤ(14)に伝動する出力ギヤ(16)とを備えており、
    ピニオンギヤ(12)が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、入力ギヤ(15)の回転動力を受けたクラッチ機構(11)が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ(16)と終段ギヤ(14)を介してダンパー機構(17)に回転動力を伝動しており、
    ピニオンギヤ(12)が予め設定された閾値未満で回転駆動される状態では、クラッチ機構(11)は動力遮断状態を維持し、ピニオンギヤ(12)の回転動力が一方向クラッチ(13)を介してダンパー機構(17)に伝動されて、同ダンパー機構(17)がピニオンギヤ(12)の駆動回転数に応じた制動力を発揮することを特徴とする制動装置。
  2. ピニオンギヤ(12)の歯数が入力ギヤ(15)の歯数より大きく設定されており、
    出力ギヤ(16)の歯数が終段ギヤ(14)の歯数より大きく設定されている請求項1に記載の制動装置。
  3. ピニオンギヤ(12)と一方向クラッチ(13)とダンパー機構(17)と終段ギヤ(14)が、ハウジング(10)に設けた第1軸(18)で支持されており、
    一方向クラッチ(13)とダンパー機構(17)、および終段ギヤ(14)とダンパー機構(17)が、それぞれ同行回転可能に連結されており、
    ピニオンギヤ(12)が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態において、一方向クラッチ(13)が終段ギヤ(14)の駆動回転数とピニオンギヤ(12)の駆動回転数の差を吸収している請求項1、または2に記載の制動装置。
  4. クラッチ機構(11)は、ピニオンギヤ(12)の回転動力を受継いで同行回転する爪ディスク(31)およびウェイト(32)と、爪ディスク(31)に設けたクラッチ爪(33)を介して爪ディスク(31)の回転動力を受継ぐ、一群のクラッチ歯(34)を備えたクラッチドラム(35)を備えており、
    クラッチ爪(33)は、爪ディスク(31)で動力遮断姿勢と動力伝動姿勢の間で揺動可能に支持されて、クラッチばね(38)で動力遮断姿勢に向かって付勢されており、
    クラッチ爪(33)とウェイト(32)は、クラッチ爪(33)とウェイト(32)のいずれか一方に固定される爪軸(41)と、他方に形成されて爪軸(41)と係合するクラッチ溝(42)を介して、相対移動可能な状態で同行回転可能に連結されており、
    ピニオンギヤ(12)が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態において、ウェイト(32)に作用する回転トルクが、クラッチばね(38)のばね力を越えた時点で、クラッチ爪(33)が動力伝動姿勢に切換わってクラッチ歯(34)と係合し、出力ギヤ(16)の回転動力をクラッチドラム(35)および終段ギヤ(14)に伝動する請求項1から3のいずれかひとつに記載の制動装置。
  5. ダンパー機構(17)がロータリーダンパー(25)で構成されている請求項1から4のいずれかひとつに記載の制動装置。
  6. 可動体(2)と固定体(1)のいずれか一方に設けられるラック体(9)と、可動体(2)と固定体(1)の他方に設けられてラック体(9)と噛み合いながら相対移動するダンパーユニット(8)とを備えており、
    ダンパーユニット(8)は第1動力制動系統と第2動力制動系統を備えており、
    第1動力制動系統は、ラック体(9)に噛み合うピニオンギヤ(12)と、ピニオンギヤ(12)の回転動力を制動する第1ダンパー機構(17)を備えており、
    第2動力制動系統は、ピニオンギヤ(12)に噛み合う入力ギヤ(15)と、入力ギヤ(15)の回転動力を断続するクラッチ機構(11)と、クラッチ機構(11)の回転動力を制動ギヤ(51)に伝動する出力ギヤ(16)と、制動ギヤ(51)の回転動力を制動する第2ダンパー機構(52)を備えており、
    ピニオンギヤ(12)が予め設定された閾値を越えて回転駆動される状態では、第1ダンパー機構(17)が制動力を発揮し、かつ、入力ギヤ(15)の回転動力を受けたクラッチ機構(11)が動力伝動状態に切換り、出力ギヤ(16)と制動ギヤ(51)を介して第2ダンパー機構(52)が制動力を発揮しており、
    ピニオンギヤ(12)が予め設定された閾値未満で回転駆動される状態では、クラッチ機構(11)は動力遮断状態を維持し、ピニオンギヤ(12)の回転動力が第1ダンパー機構(17)に伝動されて、同ダンパー機構(17)がピニオンギヤ(12)の駆動回転数に応じた制動力を発揮することを特徴とする制動装置。
  7. 第2ダンパー機構(52)の制動力が、第1ダンパー機構(17)の制動力より大きく設定してある請求項6に記載の制動装置。
  8. 制動装置が引戸に適用されて、ダンパーユニット(8)とラック体(9)のいずれか一方が戸パネル(2)に、他方が開口枠(1)に設けられており、
    一方向クラッチ(13)は、戸パネル(2)が閉じ操作されるときにピニオンギヤ(12)の回転動力をダンパー機構(17)に伝動する請求項1からのいずれかひとつに記載の制動装置を備えた引戸。
  9. 制動装置が引戸に適用されて、ダンパーユニット(8)とラック体(9)のいずれか一方が戸パネル(2)に、他方が開口枠(1)に設けられており、
    請求項1から5のいずれかひとつに記載の制動装置を備えた引戸。
  10. 制動装置が引戸に適用されて、ダンパーユニット(8)とラック体(9)のいずれか一方が戸パネル(2)に、他方が開口枠(1)に設けられており、
    請求項6または7に記載の制動装置を備えた引戸。
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